(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117106
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】診断装置及び診断方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/09 20060101AFI20240822BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20240822BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20240822BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20240822BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240822BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B23Q17/09 A
B23Q17/12
B23Q3/155 E
G05B19/4155 V
G05B19/18 W
G05B23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023004
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】岡部 康雄
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
3C223
3C269
【Fターム(参考)】
3C002HH06
3C002KK02
3C002LL01
3C002LL02
3C029CC02
3C223AA12
3C223BA01
3C223BB09
3C223CC01
3C223EB02
3C223EB03
3C223FF08
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF35
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
3C269AB02
3C269AB31
3C269BB12
3C269MN19
3C269MN24
3C269MN44
3C269MN50
(57)【要約】
【課題】複数の工具を切替えながら機械加工を行う作業機に対して、工具毎の状態を診断する診断装置又は診断方法を提供する。
【解決手段】診断装置20は、マシニングセンタ10に対して、工具14の状態を診断する。診断装置20は、振動センサ29と、特定部22と、診断部25と、を備える。振動センサ29は、マシニングセンタ10がワーク100を加工する際の振動及び音響の少なくとも一方を測定する。特定部22は、振動センサ29により測定された測定データの上昇度合いの大きさに基づいて、マシニングセンタ10において工具14が切り替えられた切替タイミングを特定する。診断部25は、特定部22により特定された切替タイミングを用いて切り出された時間帯の測定データに基づいて、複数の工具14の状態を個別に診断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用する工具を切り替えつつワークを加工する加工機に対して、当該工具の状態を診断する診断装置であって、
前記加工機がワークを加工する際の振動及び音響の少なくとも一方を測定する測定部と、
前記測定部により測定された測定データの上昇度合いの大きさに基づいて、前記加工機において前記工具が切り替えられた切替タイミングを特定する特定部と、
前記特定部により特定された前記切替タイミングを用いて切り出された時間帯の前記測定データに基づいて、複数の前記工具の状態を個別に診断する診断部と、
を備えることを特徴とする診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の診断装置であって、
前記特定部は、前記測定データが所定範囲内にある状態が所定期間継続した後に、当該測定データが前記所定範囲の上限よりも大きい閾値を超えたタイミングが前記切替タイミングであると特定することを特徴とする診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の診断装置であって、
前記測定データのうち、対象となる前記工具の前記切替タイミングから所定時間経過後のデータである学習用部分データに含まれる学習用特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
対象となる前記工具に対して前記特徴量抽出部が抽出した前記学習用特徴量の集合である学習用データセットを用いて、当該工具の状態の診断に関する学習モデルを形成する学習制御部と、
を備えることを特徴とする診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の診断装置であって、
前記特徴量抽出部は、前記測定データのうち、対象となる前記工具の前記切替タイミングから所定時間経過後のデータである診断用部分データに含まれる診断用特徴量を抽出し、
前記診断部は、前記学習制御部による学習済みの前記学習モデルに基づいて、前記特徴量抽出部により抽出された前記診断用特徴量に対応する評価値を算出することを特徴とする診断装置。
【請求項5】
請求項1に記載の診断装置であって、
前記加工機は、工具を交換する作業を行う自動工具交換装置を備え、
前記加工機は、前記工具を回転させつつ、当該工具を前記ワークに接触させて当該ワークを加工するマシニングセンタであることを特徴とする診断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の診断装置であって、
前記加工機は、工具を交換する作業を行う自動工具交換装置を備え、
前記加工機は、前記ワークを回転させつつ、前記工具を当該ワークに接触させて当該ワークを加工する旋盤であることを特徴とする診断装置。
【請求項7】
使用する工具を切り替えつつワークを加工する加工機に対して、当該工具の状態を診断する診断方法であって、
前記加工機がワークを加工する際の振動及び音響の少なくとも一方を測定する測定工程と、
前記測定工程で測定された測定データの上昇度合いの大きさに基づいて、前記加工機において前記工具が切り替えられた切替タイミングを特定する特定工程と、
前記特定工程で特定された前記切替タイミングを用いて切り出された時間帯の前記測定データに基づいて、前記工具の状態を診断する診断工程と、
を含むことを特徴とする診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工機が使用する工具の状態を診断する診断装置及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、機械加工に用いられる工具の異常の予兆を検出する異常予兆検出装置を開示する。異常予兆検出装置は、データ収集部と、モデル構築部と、予兆検出部と、を備える。データ収集部は、機械加工中の工具の振動データを収集する。モデル構築部は、機械加工の開始当初の所定期間に収集された振動データを学習して判定モデルを構築する。予兆検出部は、検査対象の工具の振動データと、判定モデルと、に基づいて振動データが正常領域に含まれるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の工作機械は自動工具交換装置を備えており、機械加工の内容に応じて工具を自動で切替可能である。しかし、特許文献1の異常予兆検出装置は、工作機械の工具が自動で切り替えられたタイミングを検出できない。そのため、特許文献1の異常予兆検出装置は、複数の工具の異常の予兆を個別に検出することができない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、複数の工具を切替えながら機械加工を行う作業機に対して、工具毎の状態を診断する診断装置又は診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の診断装置が提供される。即ち、診断装置は、使用する工具を切り替えつつワークを加工する加工機に対して、当該工具の状態を診断する。診断装置は、測定部と、特定部と、診断部と、を備える。前記測定部は、前記加工機がワークを加工する際の振動及び音響の少なくとも一方を測定する。前記特定部は、前記測定部により測定された測定データの上昇度合いの大きさに基づいて、前記加工機において前記工具が切り替えられた切替タイミングを特定する。前記診断部は、前記特定部により特定された前記切替タイミングを用いて切り出された時間帯の前記測定データに基づいて、複数の前記工具の状態を個別に診断する。
【0008】
工具が切り替えられた切替タイミングで測定データの上昇度合いが大きくなるため、測定データに基づいて切替タイミングを特定できる。その結果、加工機から切替タイミングを示す情報が取得できない態様であっても、複数の工具の状態を個別に診断することができる。
【0009】
前記の診断装置においては、前記特定部は、前記測定データが所定範囲内にある状態が所定期間継続した後に、当該測定データが前記所定範囲の上限よりも大きい閾値を超えたタイミングが前記切替タイミングであると特定することが好ましい。
【0010】
これにより、工具が切り替えられた切替タイミングを一層的確に特定できる。
【0011】
前記の診断装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、診断装置は、特徴量抽出部と、学習制御部と、を備える。前記特徴量抽出部は、前記測定データのうち、対象となる前記工具の前記切替タイミングから所定時間経過後のデータである学習用部分データに含まれる学習用特徴量を抽出する。前記学習制御部は、対象となる前記工具に対して前記特徴量抽出部が抽出した前記学習用特徴量の集合である学習用データセットを用いて、当該工具の状態の診断に関する学習モデルを形成する。
【0012】
これにより、学習モデルを良好に取得できる。
【0013】
前記の診断装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記特徴量抽出部は、前記測定データのうち、対象となる前記工具の前記切替タイミングから所定時間経過後のデータである診断用部分データに含まれる診断用特徴量を抽出する。前記診断部は、前記学習制御部による学習済みの前記学習モデルに基づいて、前記特徴量抽出部により抽出された前記診断用特徴量に対応する評価値を算出する。
【0014】
これにより、学習モデルを用いて評価値を算出できる。
【0015】
前記の診断装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記加工機は、工具を交換する作業を行う自動工具交換装置を備える。前記加工機は、前記工具を回転させつつ、当該工具を前記ワークに接触させて当該ワークを加工するマシニングセンタである。
【0016】
これにより、マシニングセンタで用いられる工具に対して、工具毎の状態を診断できる。
【0017】
前記の診断装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記加工機は、工具を交換する作業を行う自動工具交換装置を備える。前記加工機は、前記ワークを回転させつつ、前記工具を当該ワークに接触させて当該ワークを加工する旋盤である。
【0018】
これにより、旋盤で用いられる工具に対して、工具毎の状態を診断できる。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、以下の診断方法が提供される。即ち、診断方法は、使用する工具を切り替えつつワークを加工する加工機に対して、当該工具の状態を診断する。診断方法は、測定工程と、特定工程と、診断工程と、を含む。前記測定工程では、前記加工機がワークを加工する際の振動及び音響の少なくとも一方を測定する。前記特定工程では、前記測定工程で測定された測定データの上昇度合いの大きさに基づいて、前記加工機において前記工具が切り替えられた切替タイミングを特定する。前記診断工程では、前記特定工程で特定された前記切替タイミングを用いて切り出された時間帯の前記測定データに基づいて、前記工具の状態を診断する。
【0020】
工具が切り替えられた切替タイミングで測定データの上昇度合いが大きくなるため、測定データに基づいて切替タイミングを特定できる。その結果、加工機から切替タイミングを示す情報が取得できない態様であっても、複数の工具の状態を個別に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】マシニングセンタの概略図及び診断装置のブロック図。
【
図4】学習用データセットを取得する処理を示すフローチャート。
【
図6】工具の状態の判定を行う処理を示すフローチャート。
【
図7】工具の使用に伴う評価値の時間変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、マシニングセンタ(加工機)10の概略図及び診断装置20のブロック図である。
【0023】
マシニングセンタ10は、使用する工具を切り替えつつ、ワーク100を加工する。
図1に示すように、マシニングセンタ10は、テーブル11と、可動部12と、主軸部13と、工具14と、自動工具交換装置15と、操作パネル16と、制御装置17と、を備える。
【0024】
テーブル11は、ワーク100を載せるための部材である。可動部12は、テーブル11に対向する位置に配置されている。可動部12は、図略のモータを動力源として3軸方向に移動可能である。可動部12には、主軸部13が取り付けられている。主軸部13は、工具14を着脱可能に構成されている。また、主軸部13は、図略のモータから伝達された動力を用いて工具14を回転させる。本実施形態のマシニングセンタ10は、主軸部13の軸方向が鉛直方向に平行である。ただし、主軸部13の軸方向が水平方向に平行であってもよい。
【0025】
自動工具交換装置15は、マガジン及びチェンジアームを備える。マガジンには、複数種類の工具14が収容される。自動工具交換装置15は、マガジンを駆動することにより、指定された工具14を主軸部13の近傍に移動させる。チェンジアームは、主軸部13に取り付けられた工具14を外す作業と、主軸部13に工具14を取り付ける作業と、を行う。以上により、自動工具交換装置15は、主軸部13に取り付ける工具14を切り替えることができる。なお、自動工具交換装置15はマガジン式に限られず、タレット式であってもよい。
【0026】
操作パネル16は、キー及びディスプレイを備える。オペレータは、キーを操作することにより、加工の開始、又は、加工に関する設定等を行うことができる。ディスプレイは、オペレータが指示した情報を表示する。制御装置17は、CPU等の演算装置と、データを記憶する記憶装置と、を備える。記憶装置には、加工プログラムが記憶されている。演算装置が加工プログラムを実行することにより、加工プログラムで指定された内容に沿って、工具14を用いたワーク100の加工が行われる。特に、本実施形態では、自動工具交換装置15を用いて工具14を切り替えながらワーク100が加工される。
【0027】
また、本実施形態では、ワーク100を加工中に発生する振動に基づいて、工具14の状態が診断される。具体的には、主軸部13に振動センサ(測定部)29が取り付けられている。振動センサ29は例えば圧電式であるが異なる形式であってもよい。工具14がワーク100に接触してワーク100を加工する際に発生する振動は、主軸部13に伝達される。そのため、主軸部13に取り付けられた振動センサ29を用いて、着目する振動を取得できる。以下では、振動センサ29が測定して取得したデータ及びそれをAD変換したデータを測定データと称する。
【0028】
振動に代えて、ワーク100を加工中に発生する音響に基づいて、工具14の状態を診断してもよい。音響は振動に起因して発生するため、振動と音響は相関性が高い。そのため、以下で説明する振動を用いた診断方法は、音響に対してもそのまま適用できる。この場合、振動センサに代えて音響センサが用いられる。また、振動と音響の両方に基づいて、工具14の状態を判定してもよい。
【0029】
振動センサ29が計測して取得した測定データは、有線ケーブル又は無線通信を介して出力される。また、診断装置20は、CPU等の演算装置と、HDD、SDD、又はフラッシュメモリ等の記憶装置と、RAMと、を備えるコンピュータを含む。記憶装置に記憶されたプログラムを演算装置がRAMに読み出して実行することにより、診断装置20は、工具14の診断に関する様々な処理を実行できる。本実施形態の診断装置20は、1台のコンピュータであるが、複数台のコンピュータが共同して診断装置20を構成してもよい。
【0030】
図1に示すように、診断装置20は、上述した振動センサ29に加え、AD変換部21と、特定部22と、特徴量抽出部23と、学習制御部24と、診断部25と、を備える。
図2に示すように、AD変換部21は、振動センサ29が取得したアナログ形式の測定データをデジタル形式に変換する。特定部22、特徴量抽出部23、学習制御部24、及び診断部25は、診断装置20がプログラムを実行することにより実現する機能毎に名称を付したものである。
【0031】
特定部22は、デジタル形式の測定データから所定期間のデータを切り出すことにより、学習用部分データ又は診断用部分データを生成する。以下、
図3を参照して詳細に説明する。
図3は、測定データを示すグラフである。
【0032】
図3のグラフの横軸は時刻であり、縦軸は振動加速度である。以下では、振動加速度が小さい又は大きいと称した場合、振動加速度の絶対値が小さい又は大きいことを示すものとする。時刻T1が工具Aを用いた加工の開始時刻であり、時刻T2が工具Bを用いた加工の開始時刻であり、時刻T3が工具Cを用いた加工の開始時刻である。
【0033】
本実施形態では、診断装置20は、マシニングセンタ10から制御信号(詳細には工具14の切替タイミングを示す信号)を受信していない。なお、マシニングセンタ10によっては、制御信号を外部に出力する機能を有していないことがあるため、マシニングセンタ10から制御信号を受信することが困難な場合がある。また、マシニングセンタ10が制御信号を外部に出力する機能を有している場合であっても、マシニングセンタ10と診断装置20のメーカーが異なる場合は信号の形式が特定できずに、制御信号を適切に処理できない可能性がある。この点、本実施形態の診断装置20は、制御信号を用いずに、測定データに基づいて、工具14の切替タイミングを特定する。そのため、様々な種類のマシニングセンタ10に容易に診断装置20を適用できる。更に、設置済みのマシニングセンタ10に、新たに診断装置20を適用することも容易である。
【0034】
本願の発明者らは、測定データを解析することにより、工具14の切替時に振動加速度の上昇度合いが大きくなることを発見した。例えば、
図3のグラフにおいて、時刻T1、時刻T2、及び時刻T3において、振動加速度が急峻に上昇している。例えば工具Aを用いてワーク100を加工する際には、初めに、工具Aをワーク100に接触させる。このとき、未加工のワーク100の表面に加工が行われるため、ワーク100が大きく振動し易い。工具Aを用いた2回目以降の加工では、加工済みの面に追加で加工が行われるため、ワーク100の振動は1回目よりは小さくなる傾向がある。その後、マシニングセンタ10は、工具Aから工具Bに切り替える。工具Aから工具Bに切り替える間は、ワーク100の加工が行われないため、振動加速度は小さくなる傾向がある。その後、マシニングセンタ10は、工具Bをワーク100に接触させる。このとき、ワーク100に新たな種類の加工(工具Aを用いた加工とは異なる加工)が行われるため、工具14が大きく振動し易い。工具Bを用いた2回目以降の加工では、加工済みの面に同種の加工が行われるため、工具14の振動は1回目よりは小さくなる傾向がある。
【0035】
つまり、工具14の交換時の振動加速度が小さいことと、工具14の交換後のワーク100への1回目の接触時の振動加速度が大きいことと、を利用して、言い換えれば、測定データの上昇度合いの大きさに基づいて、診断装置20の特定部22は、工具14の切替タイミングを特定する。具体的には、特定部22は、以下の条件1及び条件2を満たす場合に、工具14が切り替えられたと判定する。
条件1:振動加速度が所定範囲内にある状態が所定期間継続したこと、
条件2:条件1の達成後に、振動加速度が閾値を超えたこと
【0036】
ここで、所定範囲とは、工具14がワーク100に接触している状態の振動加速度よりも小さい範囲である。所定範囲は、実験的に求めて予め診断装置20に記憶されている。所定期間は、工具14の交換に最低限必要な期間である。所定期間は、実験的に求めて予め診断装置20に記憶されている。閾値は、工具14がワーク100に2回目以降に接触している状態の振動加速度よりも大きく、工具14がワーク100に1回目に接触した状態の振動加速度よりも小さい値である。振動加速度には正負が存在するので、実際には正の上限閾値と負の下限閾値とが設定される。なお、上限閾値と下限閾値の何れか一方のみを用いてもよい。
【0037】
本実施形態では、全ての工具14に対して、共通の、所定範囲、所定期間、及び閾値を用いる。これに代えて、例えば工具14毎で発生する振動加速度の大きさが大幅に異なる場合等においては、工具14毎に個別の、所定範囲、所定期間、又は閾値を用いてもよい。
【0038】
また、工具14の切替タイミングを的確に特定できるのであれば、上記の条件1を省略してもよい。また、振動加速度の値ではなく、振動加速度の時間あたりの変化量を算出し、この変化量が閾値を超えたか否かに基づいて、工具14の切替タイミングを特定してもよい。
【0039】
特定部22は、上述した処理を行って、工具14の切替タイミングを特定する。その後、特定部22は、切替タイミングに基づいて、測定データを切り出す。具体的には、診断装置20は、工具Aについて、切替タイミングである時刻T1から測定データの切り出しを開始するまでの時間T1sを記憶するとともに、時刻T1sから測定データの切り出しを終了するまでの時間T1eを記憶する。時間T1sは測定データの切り出しの始点を規定するための情報であり、時間T1eは測定データの切り出しの時間幅を規定するための情報である。従って、特定部22は、特定した時刻T1に基づいて、工具Aについての所定の切出期間の測定データを切り出すことができる。このようにして切り出した測定データが、工具Aについての学習用部分データ又は診断用部分データである。
【0040】
時間T1s及び時間T1eは、工具Aの状態を診断するために適切な切出期間を設定できるように特定されている。例えば、工具Aとワーク100が接触している期間が切出期間となるように、時間T1s及び時間T1eが設定されている。
【0041】
また、診断装置20は、工具Bについても同様に、時間T2s及び時間T2eを記憶する。そのため、特定した時刻T2に基づいて、工具Bについての所定の切出期間の測定データを切り出すことができる(工具Cについても同様)。
【0042】
以上により、特定部22は、測定データに基づいて、工具14毎に、切出期間の測定データを切り出すことができる。
【0043】
なお、時間T1s及び時間T1eを記憶する方法に代えて、別の方法を用いて、切出期間を特定してもよい。例えば、工具Aでの加工期間で取得される典型的な測定データ(以下、基準データ)を予め診断装置20に記憶しておく。また、基準データには、切出期間が設定されている。特定部22は、振動センサ29が取得した測定データと、基準データと、を比較してマッチングを行い、測定データと基準データの時間軸を合わせる。その後、基準データの切出期間に対応する時間帯を、測定データの切出期間として設定する。以上により、工具14毎に、切出期間の測定データを切り出すことができる。
【0044】
特徴量抽出部23は、特定部22により切り出された学習用部分データ又は診断用部分データに含まれる周波数スペクトルを取得する。具体的に説明すると、特徴量抽出部23は、特定部22により切り出された学習用部分データ又は診断用部分データを対象として離散フーリエ変換処理を実行する。これにより、学習用部分データ又は診断用部分データを、周波数と、当該周波数にて振動する信号の強度と、の関係として表す周波数スペクトルが得られる。本実施形態では、この周波数スペクトルが特徴量(学習用特徴量又は診断用特徴量)として用いられる。詳細には、特徴量は、周波数スペクトルに含まれる周波数成分毎の信号の強さである。周波数スペクトルに対しては、適宜スムージングが行われる。スムージングの手法は様々であるが、例えばガウシアンフィルタを畳み込み積分する方法を挙げることができる。
【0045】
学習制御部24は、特徴量抽出部23から入力される多数の周波数スペクトルを機械学習することにより、学習モデルを形成する。本実施形態において、学習モデルは、周波数スペクトルを入力して評価値を出力する関数である。学習制御部24が行う機械学習の詳細は後述する。
【0046】
診断部25は、形成された学習モデルを用いて、特徴量抽出部23から入力される診断用特徴量から、評価値を計算する。この評価値は、機械学習によるものであるので、機械学習評価値と呼ぶことができる。学習モデルから得られた評価値が、工具14の状態の診断に用いられる。診断部25が行う診断の詳細は後述する。
【0047】
以下、学習モデルの構築について詳細に説明する。
図4は、学習用データセットを取得する処理を示すフローチャートである。
図5は、機械学習を行う処理を示すフローチャートである。
【0048】
学習モデルの構築は、実際の工具14の診断に先立って行われる。先ず、診断装置20は、学習制御部24が学習モデルを形成するための学習用データセットを、
図4に示す処理によって収集する。
【0049】
初めに、振動センサ29は、工具が正常な状態での測定データを取得する(S101)。ここで取得する測定データは、1つのワーク100に対して工具14を切り替えながら行われる一連の加工で取得されるデータである。また、測定データは、上述したように、AD変換部21により、アナログ形式からデジタル形式に変換される。
【0050】
ここで、学習モデルは、一連の加工で用いられる全ての工具14毎に形成される。学習制御部24は、学習モデルを形成する対象の最初の工具14を決定する(S102)。
【0051】
次に、特定部22は、上述した処理を行うことにより、測定データから、対象の工具14の学習用部分データを切り出す(S103)。特徴量抽出部23は、特定部22が切り出した学習用部分データから学習用特徴量(周波数スペクトル)を抽出する(S104)。学習制御部24は、特徴量抽出部23が抽出した学習用特徴量を学習用データセットに追加する(S105)。学習用データセットは、複数の学習用特徴量から構成されるデータセットであり、診断装置20の記憶装置に記憶される。ただし、診断装置20の外部の記憶装置に学習用データセットが記憶されてもよい。
【0052】
次に、学習制御部24は、全ての工具14に対する処理が終了したか否かを判定する(S106)。例えば、工具Aについての学習用特徴量の追加が完了しており、工具Bについての学習用特徴量の追加が完了していない場合、学習制御部24は、全ての工具14に対する処理が終了していないと判定する。学習制御部24は、全ての工具14に対する処理が終了していない場合、対象の工具14を切り替えて(S107)、切替後の工具14に対して、ステップS103からステップS105の処理を再度行う。
【0053】
学習制御部24は、全ての工具14に対する処理が終了した場合、十分な数の学習用特徴量を収集済みか否かを判定する(S108)。十分な数か否かの判定は、例えば、閾値より多いか否かに基づいて判定できる。学習制御部24は、学習モデルを形成するために十分な数の学習用特徴量を収集できていないと判定した場合、ワーク100に対して再び同じ加工を行って、ステップS101からS107の処理を再度行う。学習制御部24は、学習モデルを形成するために十分な数の学習用特徴量を収集できたと判定した場合、学習用データセットを収集する作業を終了する。
【0054】
続いて、診断装置20は、得られた学習用データセットを用いて、
図5に示す処理により、学習制御部24による機械学習を行う。
図5の処理は、機械学習の訓練フェーズに相当する。
【0055】
最初に、診断装置20の学習制御部24は、工具14の状態を判別するための判別式のパラメータを、適宜初期化する(S201)。本実施形態では、判別式は以下のように表される。
【数1】
【0056】
上記の数式において、f(x)が判別式であり、本実施形態の学習モデルに相当する。判別式fへの入力であるxは、入力される周波数スペクトルを表すN次元のベクトルである。本実施形態では、Nは、周波数スペクトルを複数の周波数成分のそれぞれの信号の強さで表す場合に、その周波数成分の数を意味する。判別式fの出力は、評価値と呼ばれるスカラ値であり、詳細は後述する。
【0057】
K(xi,x)は、1クラスSVMの公知のカーネル関数である。カーネル関数は、周波数スペクトルが外れ値になる程原点の近くになるような、高次元空間への写像関数である。1クラスSVMでは、この高次元空間への写像において、原点からの距離が最大となる超平面を定める。この超平面が、外れ値を判定する基準となる。本実施形態では、カーネル関数としてガウシアンカーネルが用いられているが、カーネル関数はこれに限定されない。
【0058】
αi、xi、ρは、機械学習の対象となるパラメータである。本実施形態で、学習モデルの形成とは、αi、xi、ρの最適値を得て判別式を確定することに相当する。ステップS201では、このパラメータが初期化される。初期化に用いられる値(パラメータの初期値)は、例えば乱数値とすることができる。上記以外のパラメータであるσは、ハイパーパラメータと呼ばれ、設計者により適宜定められる。
【0059】
次に、学習制御部24は、学習用データセットに含まれている周波数スペクトルを1つ取り出し、N次元のベクトルxの形で判別式fに代入して、値f(x)を求める(S202)。そして、得られた値f(x)が0に近くなるように、αi、xi、ρを調整する(S203)。ステップS202及びステップS203の処理は、学習用データセットの全ての周波数スペクトルについて反復される(S204)。これにより、1エポック分の学習が完了する。エポックとは、学習用データセットに含まれる学習用データを1回学習することを示している。
【0060】
ステップS202~ステップS204の処理は、更に適宜の回数だけ繰り返される(S205)。これにより、複数エポック分の学習が実現する。1つの学習用データセットについて適切な回数だけ学習が繰り返して行われることで、性能の良い学習モデルが得られる。
【0061】
図5の処理によりパラメータαi、xi、ρの値が得られ、当該パラメータの値は診断装置20の記憶部に記憶される。このパラメータαi、xi、ρの値が代入された上述の判別式fは、学習済モデルを表している。従って、得られたパラメータαi、xi、ρの値そのものが実質的に学習済モデルであると考えることもできる。
【0062】
1クラスSVMを用いた外れ値検出では、f(x)の値が0又はプラスであればxは外れ値でないことを意味する。f(x)の値がマイナスであればxは外れ値であることを意味し、f(x)の値が小さい程、値の外れの度合いが大きいことを示す。本実施形態の診断部25は、工具14に異常が生じているときの周波数スペクトルが、正常なときの周波数スペクトルに対して外れ値の関係にあることを利用して、工具14の正常/異常の診断を行う。
【0063】
実際に診断を行う場合、
図6に示す処理が行われる。
図6の処理は、機械学習の推論フェーズに相当する。
【0064】
初めに、振動センサ29は、マシニングセンタ10によるワーク100の加工中での測定データを取得する(S301)。本実施形態では、1つのワーク100に対する一連の加工の測定データを取得した後に、工具14毎の状態の診断が行われる。ただし、マシニングセンタ10によるワーク100の加工と並行して、工具14毎の状態の診断が行われてもよい。また、測定データは、上述したように、AD変換部21により、アナログ形式からデジタル形式に変換される。
【0065】
次に、診断部25は、状態を判定する対象の最初の工具14を決定する(S302)。その後、特定部22は、上述した処理を行うことにより、測定データから、対象の工具14の診断用部分データを切り出す(S303)。特徴量抽出部23は、特定部22が切り出した診断用部分データから診断用特徴量(周波数スペクトル)を抽出する(S304)。
【0066】
次に、診断部25は、ステップS304で得られた周波数スペクトルを判別式に入力して、評価値を算出する(S305)。このとき、判別式のパラメータαi、xi、ρとしては、
図5の処理により求められたパラメータが用いられる。従って、ステップS305で用いられる判別式は、学習済みの学習モデルと同義である。
【0067】
次に、診断部25は、算出された評価値が閾値v1未満であるか否かを判断する(S306)。閾値v1は、学習モデル(判別式)において
図5の訓練フェーズを完了させた後、工具14の稼動試験を実際に行うこと等により得ることができる。
図7は、工具14の使用に伴う評価値の時間変化を示すグラフである。
図7に示すように、工具14の使用に伴い、評価値が低下する。また、工具14が異常である状態と、工具14が正常である状態と、の境界における評価値が閾値v1である。閾値v1は、例えば、工具14が破損した際の評価値に対してマージンの分だけ大きい値である。評価値が閾値v1未満である場合、診断部25は、対象の工具14の状態が異常であると判別する(S307)。評価値が閾値v1以上である場合、診断部25は、対象の工具14の状態が正常であると判別する(S308)。
【0068】
次に、診断部25は、全ての工具14に対する処理が終了したか否かを判定する(S309)。全ての工具14とは、一連の加工で用いる全ての工具14を示す。例えば、工具Aと工具Bを用いて一連の加工が行われる状況において、工具Aについての状態の診断が完了しており、工具Bについての状態の診断が完了していない場合、診断部25は、全ての工具14に対する処理が終了していないと判定する。学習制御部24は、全ての工具14に対する処理が終了していない場合、対象の工具14を切り替えて(S310)、切替後の工具14に対して、ステップS303からステップS308の処理を再度行う。診断部25は、全ての工具14の状態の診断が行われたと判定した場合、工具14の状態の診断を終了する。
【0069】
なお、診断装置20は、工具14の工具毎の診断の結果を通知してもよい。通知対象は、例えば、マシニングセンタ10のオペレータ又は管理者である。通知方法は、診断装置20が有するディスプレイに診断結果を表示したり、オペレータ又は管理者所有する端末に診断結果を表示したり、マシニングセンタ10のディスプレイに診断結果を表示する方法がある。
【0070】
次に、
図8を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。
図8は、旋盤30の概略図及び診断装置20のブロック図である。
【0071】
本変形例は、診断対象が上記実施形態とは異なる。旋盤30は、ワーク100を回転させつつ、工具14をワーク100に接触させることにより、当該ワーク100を加工する。旋盤30は、支持部31と、主軸部32と、工具14と、工具台33と、自動工具交換装置34と、操作パネル35と、を備える。
【0072】
支持部31は、主軸部32を回転可能に支持する。主軸部32には、ワーク100が着脱可能である。主軸部32は、図略のモータから伝達された動力を用いてワーク100を回転させる。工具台33は、主軸部32に対して進退可能である。工具台33は工具14を有しており、工具をワーク100に接触させることにより、ワーク100を加工する。自動工具交換装置34は、上述した自動工具交換装置15と同様の構成である。操作パネル35は、上述した操作パネル16と同様の構成である。
【0073】
本変形例では、振動センサ29は支持部31に取り付けられる。支持部31は、主軸部32を支持するため、ワーク100と工具14の接触に伴う振動を測定できるからである。更に、支持部31は主軸部32と一体的に回転しないので回転に伴う振動を測定しないからである。なお、振動センサ29の取付位置は一例であり、主軸部32又は工具台33に取り付けてもよい。
【0074】
本変形例においても、上記実施形態と同じ処理を行うことにより、工具14毎の状態を診断可能である。
【0075】
以上に説明したように、診断装置20は、マシニングセンタ10(又は旋盤30)に対して、工具14の状態を診断する。診断装置20は、振動センサ29と、特定部22と、診断部25と、を備える。振動センサ29は、マシニングセンタ10がワーク100を加工する際の振動及び音響の少なくとも一方を測定する。特定部22は、振動センサ29により測定された測定データの上昇度合いの大きさに基づいて、マシニングセンタ10において工具14が切り替えられた切替タイミングを特定する。診断部25は、特定部22により特定された切替タイミングを用いて切り出された時間帯の測定データに基づいて、複数の工具14の状態を個別に診断する。以上が特徴1である。
【0076】
これにより、工具14が切り替えられた切替タイミングで測定データの上昇度合いが大きくなるため、測定データに基づいて切替タイミングを特定できる。その結果、マシニングセンタ10から切替タイミングを示す情報が取得できない態様であっても、複数の工具14の状態を個別に診断することができる。
【0077】
本実施形態の診断装置20において、特定部22は、測定データが所定範囲内にある状態が所定期間継続した後に、測定データが所定範囲の上限よりも大きい閾値を超えたタイミングが切替タイミングであると特定する。以上が特徴2である。
【0078】
これにより、工具14が切り替えられた切替タイミングを一層的確に特定できる。
【0079】
本実施形態の診断装置20は、特徴量抽出部23と、学習制御部24と、を備える。特徴量抽出部23は、測定データのうち、対象となる工具14の切替タイミングから所定時間経過後のデータである学習用部分データに含まれる学習用特徴量を抽出する。学習制御部24は、対象となる工具14に対して特徴量抽出部23が抽出した学習用特徴量の集合である学習用データセットを用いて、工具14の状態の診断に関する学習モデルを形成する。以上が特徴3である。
【0080】
これにより、学習モデルを良好に取得できる。
【0081】
本実施形態の診断装置20において、特徴量抽出部23は、測定データのうち、対象となる工具14の切替タイミングから所定時間経過後のデータである診断用部分データに含まれる診断用特徴量を抽出する。診断部25は、学習制御部24による学習済みの学習モデルに基づいて、特徴量抽出部23により抽出された診断用特徴量に対応する評価値を算出する。以上が特徴4である。
【0082】
これにより、学習モデルを用いて評価値を算出できる。
【0083】
本実施形態の診断装置20において、マシニングセンタ10は、工具14を交換する作業を行う自動工具交換装置15を備える。マシニングセンタ10は、工具14を回転させつつ、工具14をワーク100に接触させてワーク100を加工する。以上が特徴5である。
【0084】
これにより、マシニングセンタ10で用いられる工具に対して、工具14毎の状態を診断できる。
【0085】
本変形例の診断装置20において、旋盤30は、工具14を交換する作業を行う自動工具交換装置34を備える。旋盤30は、ワーク100を回転させつつ、工具14をワーク100に接触させてワーク100を加工する。以上が特徴6である。
【0086】
これにより、旋盤30で用いられる工具14に対して、工具14毎の状態を診断できる。
【0087】
上述した特徴1から特徴6は矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることができる。例えば、特徴N(N=1,2,・・・,6)には、特徴1から特徴N-1までの少なくとも1つを適宜組み合わせることができる。
【0088】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0089】
上記の実施形態では、学習制御部24及び診断部25は、1つの診断装置20に備えられているが、異なる装置に備えられても良い。例えば、
図3の学習制御部24だけを取り出して、診断装置20とは別の装置にすることができる。
【0090】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。
【0091】
加工機の例としてマシニングセンタ10及び旋盤30を例に挙げて説明したが、他の加工機にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0092】
10 マシニングセンタ(加工機)
20 診断装置
21 AD変換部
22 特定部
23 特徴量抽出部
24 学習制御部
25 診断部
29 振動センサ(測定部)
30 旋盤(加工機)