(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117110
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、および多色印刷物
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20240822BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240822BHJP
G03G 15/36 20060101ALI20240822BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G03G15/01 K
G03G15/01 J
G03G21/00 502
G03G15/36
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023012
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 友子
【テーマコード(参考)】
2C262
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2C262AA05
2C262AB17
2C262BA14
2C262BB17
2C262DA07
2C262DA18
2C262EA11
2H270KA04
2H270KA05
2H270KA28
2H270KA32
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2H300GG02
2H300GG12
2H300RR31
2H300TT02
2H300TT04
(57)【要約】
【課題】見栄えの良好な画像を透過性シートに対して形成することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】光透過性シートに対して画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部による画像形成を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記光透過性シートにおける観察者の観察方向から最も遠い位置に下引きとして反射性色材層を形成し、前記光透過性シートの両面または前記反射性色材層とは異なる面のみに演色画像を形成するように、前記画像形成部を制御し、前記反射性色材層が形成される面においては、前記反射性色材層の色材が定着可能なプロセス条件で前記画像形成部を制御し、前記反射性色材層が形成されない面においては、前記演色画像の色材が定着可能なプロセス条件で前記画像形成部を制御して多色印刷物を形成する画像形成装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性シートに対して画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部による画像形成を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記光透過性シートにおける観察者の観察方向から最も遠い位置に下引きとして反射性色材層を形成し、前記光透過性シートの両面または前記反射性色材層とは異なる面のみに演色画像を形成するように、前記画像形成部を制御し、
前記反射性色材層が形成される面においては、前記反射性色材層の色材が定着可能なプロセス条件で前記画像形成部を制御し、
前記反射性色材層が形成されない面においては、前記演色画像の色材が定着可能なプロセス条件で前記画像形成部を制御して多色印刷物を形成する
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記演色画像の濃度と前記プロセス条件とに基づいて、前記光透過性シートの両側面に前記演色画像を分配処理する分配処理部を有し、
前記画像形成部は、前記分配処理部での分配処理に基づいて、前記光透過性シートの両面に前記演色画像を形成する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記分配処理部は、前記演色画像の濃度が、前記光透過性シートに定着可能な濃度を超えた場合に、前記光透過性シートの両側面に前記演色画像を分配する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記光透過性シートの厚みを設定するための入力部を備え、
前記制御部は、前記入力部で設定された前記光透過性シートの厚みに基づいて、前記光透過性シートにおける前記観察方向と逆側の面に形成される演色画像の各部の形成領域を制限した画像形成を、前記画像形成部に対して指示する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記演色画像の濃度を前記光透過性シートに定着可能な濃度に補正し、前記画像形成部に対して前記光透過性シートの片面のみに前記演色画像を形成させる
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記多色印刷物を配置する先の背景色を取得するための入力部を備え
前記制御部は、前記多色印刷物を配置する先の背景色に応じて、前記演色画像の濃度および前記反射性色材層の濃度を前記演色画像の領域毎に調整し、前記画像形成部に対して調整した濃度に基づく画像形成を指示する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記演色画像の濃度および前記反射性色材層の濃度の調整に、カラープロファイルを用いる
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記演色画像の濃度および前記反射性色材層の濃度の調整において、前記背景色に対して重みづけ係数をかける
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記光透過性シートにおける観察方向に向かう面を設定するための入力部を備え、
前記制御部は、前記画像形成部に対して前記入力部での設定に基づく画像形成を指示する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記演色画像の形成領域に対し、前記反射性色材の形成領域を設定するための入力部を備え、
前記制御部は、前記画像形成部に対して前記入力部での設定に基づく画像形成を指示する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
光透過性シートに演色画像と下引きとなる反射性色材層と形成するための画像形成方法であって、
前記光透過性シートの観察方向から最も遠い位置に反射性色材層を形成し、
前記光透過性シートの両面または前記反射性色材層とは異なる面のみに演色画像を形成し、
前記反射性色材層が形成される面においては、前記反射性色材層の色材が定着可能なプロセス条件での画像形成を実施し、
前記反射性色材層が形成されない面においては、前記演色画像の色材が定着可能なプロセス条件での画像形成を実施する
画像形成方法。
【請求項12】
光透過性シートと、
前記光透過性シートの観察方向から最も遠い位置に形成された下引きとしての反射性色材層と、
前記光透過性シートの両面または前記反射性色材層とは異なる面のみに形成された演色画像とを備え、
前記反射性色材層は、前記反射性色材層の色材が定着可能なプロセス条件で形成された層であり、
前記反射性色材層が形成されない面に設けられた前記演色画像は、前記演色画像の色材が定着可能なプロセス条件で形成された画像である
多色印刷物。
【請求項13】
前記演色画像は、前記光透過性シートの両側面に分配して設けられている
請求項12に記載の多色印刷物。
【請求項14】
前記光透過性シートの厚みに基づいて、前記光透過性シートにおける前記観察方向と逆側の面に形成される演色画像の各部の形成領域が制限されている
請求項13に記載の多色印刷物。
【請求項15】
配置される先の背景色に応じて、前記演色画像の濃度および前記反射性色材層の濃度が前記演色画像の領域毎に調整されている
請求項12に記載の多色印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、および多色印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な記録媒体にカラー画像を形成する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、「透明フィルムRの表面に原稿画像としての基本色トナー(CMYK)の画像が形成される。そして、透明フィルムRの裏面の最下層に下地画像としての白色トナー(W)の画像が形成され、その上に下地画像としてのシルバートナー(Si)の画像が形成される。…裏面側の白色トナー(W)の画像の上にはシルバートナー(Si)の画像が形成されているため、透明フィルムRの背後の物体の色の影響がシルバートナー(Si)の画像により隠蔽される。」と記載され、また「原稿画像の単位面積当たりの濃度に応じて、下地画像として形成するシルバートナーのトナー量と白色トナーのトナー量が異なるように制御し、これにより下地画像のトナー量を抑制して、画像形成の際の転写工程や定着工程における弊害を防止しつつ、隠蔽性を十分に確保して裏写りを防止することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、原稿画像の濃度が異なり濃度差が生じる部分毎に、下地画像のシルバートナーと白色トナーの量も異なる。このため、下地画像の部分的な濃度差が原稿画像に影響を及ぼし、観察者による印刷物の印象が異なり見栄えが低下する要因となっている。
【0005】
そこで本発明は、観測者によって印象が異なることを防ぎ、見栄えの良好な画像を透過性シートに対して形成することが可能な画像形成装置、画像形成方法、および多色印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、光透過性シートに対して画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部による画像形成を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記光透過性シートにおける観察者の観察方向から最も遠い位置に下引きとして反射性色材層を形成し、前記光透過性シートの両面または前記反射性色材層とは異なる面のみに演色画像を形成するように、前記画像形成部を制御し、前記反射性色材層が形成される面においては、前記反射性色材層の色材が定着可能なプロセス条件で前記画像形成部を制御し、前記反射性色材層が形成されない面においては、前記演色画像の色材が定着可能なプロセス条件で前記画像形成部を制御して多色印刷物を形成する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、見栄えの良好な画像を透過性シートに対して形成することが可能な画像形成装置、画像形成方法、および多色印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の全体構成図である。
【
図2】実施形態に係る画像形成装置における画像形成制御部の機能構成図である。
【
図3】実施形態に係る片面多色印刷物を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係る片面多色印刷物の色材濃度テーブル[T1]を示す図である。
【
図5】原稿濃度と演色画像濃度との関係を示すグラフである。
【
図6】実施形態に係る両面多色印刷物を示す断面図である。
【
図7】実施形態に係る両面多色印刷物の色材濃度テーブル[T11]を示す図である。
【
図8】実施形態に係る両面多色印刷物の色材濃度テーブル[T12]を示す図である。
【
図9】実施形態に係る両面多色印刷物の色材濃度テーブル[T13]を示す図である。
【
図10】実施形態に係る両面多色印刷物の色材濃度テーブル[T14]を示す図である。
【
図11】実施形態に係る画像形成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図12】両面多色印刷物における画像のブレを説明するための図である。
【
図13】実施形態に係る多色印刷物の変形例2を示す片面多色印刷物の断面図である。
【
図14】実施形態に係る多色印刷物の変形例2を示す片面多色印刷物の平面図である。
【
図15】変形例2の片面多色印刷物の効果を説明するための平面図である。
【
図16】実施形態に係る多色印刷物の変形例3を示す片面多色印刷物の断面図である。
【
図17】実施形態に係る多色印刷物の変形例4を示す片面多色印刷物の断面図である。
【
図18】変形例4の片面多色印刷物における反射性色材層の濃度を示すグラフである。
【
図19】実施形態に係る多色印刷物の変形例5を示す片面多色印刷物の平面図および断面図である。
【
図20】変形例5の片面多色印刷物における演色画像および反射性色材層の各色材の階調濃度(%)の背景部材色の影響による調整を説明するための図である。
【
図21】実施形態に係る画像形成装置の表示部に表示される設定画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の画像形成装置、画像形成方法、および多色印刷物の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各実施の形成において同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することとする。
【0010】
≪画像形成装置≫
図1は、実施形態に係る画像形成装置1の全体構成図である。この図に示す画像形成装置1は、光透過性シート101を記録媒体とし、この光透過性シート101に演色画像を形成するためのものである。このような画像形成装置1は、例えば第1画像形成装置10a、および第2画像形成装置10bを備えている。以下、これらの構成を説明する。
【0011】
<第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10b>
第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bは、例えば図示した電子写真方式のものであるか、またはインクジェット記録方式のものであってもよい。以下においては、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bが電子写真方式のものであることとして説明を行う。
【0012】
これらの第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bは、光透過性シート101に対して各色のトナーを定着させることで、光透過性シート101の表面または裏面に演色画像を形成する。これらの第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bは、それぞれが画像形成部11、画像形成制御部12、表示部13、および入力部14を備えている。そして、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bのぞれぞれは、外部装置2からの指示に基づいて、光透過性シート101に対してトナーを供給し、供給したトナーを光透過性シート101に定着させることで、演色画像を形成する。なお、外部装置2は、例えば表示部および入力部を備えたパーソナルコンピュータであって、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bによって形成する原稿画像および原稿画像の形成条件の入力と印刷指示を行う。
【0013】
これらの第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bは、光透過性シート101の搬送方向に対して直列に配置され、第1画像形成装置10aを通過した光透過性シート101が第2画像形成装置10bに搬送される構成となっている。
【0014】
また、第1画像形成装置10aには、媒体供給装置15が接続され、この媒体供給装置15から光透過性シート101が供給される構成となっている。媒体供給装置15は、枚葉式の供給装置であってもよいし、ロール状の光透過性シート101を供給するものであってもよい。なお、媒体供給装置15は、第1画像形成装置10aの構成要素であってもよい。
【0015】
[画像形成部11]
第1画像形成装置10aの画像形成部11は、例えば光透過性シート101に対して反射性トナーが供給され、その上部にCMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の各色の演色トナーが順に供給される構成である。演色トナーは、CMYKに限定されずOGV(オレンジ、グリーン、バイオレット)等であってもよい。反射性トナーは、例えば白色トナーまたはシルバー色トナー等であり、ここでは一例として白色(W)トナーを用いることとする。
【0016】
これに対し、第2画像形成装置10bの画像形成部11は、一例として光透過性シート101に対してYMCKの各色トナーが順に供給され、その上部に反射性トナー(ここでは白色トナー)が供給される構成となっている。なお、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bの画像形成部11は、演色トナーおよび反射性トナーの配置順を変更可能であってもよく、トナーの供給順が変更可能な構成であってもよい。
【0017】
なお、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bがインクジェット記録方式のものであれば、演色性色材として各色インクが用いられ、高反射性色材として白色インクを用いることができる。
【0018】
また図示した例において、画像形成部11は、中間転写ベルトを介して光透過性シート101に画像形成する構成としたが、光透過性シート101に対して直接、トナーを供給する構成であってもよい。また画像形成部11は、次に説明する画像形成制御部12で作成した画像データに基づいて、画像形成部11の各部の駆動を制御する駆動制御部(図示省略)を有する。
【0019】
[画像形成制御部12]
画像形成制御部12は、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部、さらにはネットワークインターフェースを備える。このような計算機によって構成された画像形成制御部12は、光透過性シート101に対して画像を形成するための画像形成プログラムを、不揮発性の記憶部に保存する。
【0020】
図2は、実施形態に係る画像形成装置1における画像形成制御部12の機能構成図である。なお
図1においては、画像形成制御部12は、光透過性シート101の搬送方向の上流側に位置する第1画像形成装置10aに配置された状態を示しているが、これに限定されることはなく、第2画像形成装置10bに配置されていてもよいし、これらと別体であってもよい。また、画像形成制御部12は、画像形成部11が有する駆動制御部と同一基板上に形成されていてもよい。
図2に示すように、この画像形成制御部12は、色材濃度テーブル記憶部12-1、変換処理部12-2、および分配処理部12-3を備える。以下、これらの各部を説明する。
【0021】
-色材濃度テーブル記憶部12-1-
色材濃度テーブル記憶部12-1は、演色画像としての原稿画像における色材濃度に対し、画像形成のプロセス条件を考慮した色材濃度を関連付けした色材濃度テーブルを保持する。この色材濃度テーブル記憶部12-1に保持される色材濃度テーブルの詳細は、以降の多色印刷物および画像形成方法において説明する。
【0022】
-変換処理部12-2-
変換処理部12-2は、例えば外部装置2から送信された原稿画像を、画像形成部11での印刷が可能な画像データに変換する。この原稿画像は、Adobeアプリケーション等により書き出されるPDFデータであったり、Microsoft Officeアプリケーションにより書き出されるXPSデータであったり、各種プリンタードライバーにより書き出される各種PDL(Print Description Language)データである。この変換処理部12-2による処理の手順は、以降の画像形成方法において詳細に説明する。
【0023】
なお、原稿画像は、例えば画像形成装置1に保存され、外部装置2の操作によって選択されたものであってもよい。画像形成装置1への原稿保存方法としては、外部装置2からプリンタードライバーを介して画像形成装置1へ原稿を保存する方法や、画像形成装置1が有するUSBポートから画像形成装置1へ原稿を保存する方法や、外部装置2のブラウザ上で動作するウエブアプリから画像形成装置10へ原稿を保存する方法等がある。また、ウエブアプリケーションからの印刷指示も可能であるため、画像形成装置10上でブラウザを起動し、そこから印刷指示を出すことも可能である。
【0024】
-分配処理部12-3-
分配処理部12-3は、例えば外部装置2または第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bの入力部14から入力された各種の設定と、変換処理部12-2で変換されたCMYKの原稿画像とに基づいて、原稿画像における画像濃度の分配処理を実施する。このような分配処理部12-3による処理の手順は、以降の画像形成方法において詳細に説明する。
【0025】
≪多色印刷物≫
次に、上述した画像形成装置1によって作製される多色印刷物として、片面多色印刷物と、両面多色印刷物の構成を説明する。
【0026】
<片面多色印刷物>
図3は、実施形態に係る片面多色印刷物を示す断面図である。
図3に示す片面多色印刷物100は、光透過性シート101における観察面101aに演色画像102を有し、裏面101bに反射性色材層103を有する。
【0027】
光透過性シート101は、光を透過する透明または半透明な基材であって薄紙を含み、画像形成装置1(
図1参照)による画像形成が可能な記録媒体である。光透過性シート101における観察面101aとは、光透過性シート101の2つの主面のうち観察方向の面であって、観察者[P]が片面多色印刷物100を観察する側の面であり、その逆の面を裏面101bとする。なお、光透過性シート101は、光透過率が限定されるものではなく、またロール紙であってもカット紙であってもよい。
【0028】
そして、この片面多色印刷物100は、観察方向から最も遠い側に反射性色材層103が配置され、光透過性シート101を挟んで反射性色材層103とは別の面(観察面101a)のみに演色画像102を有する。
【0029】
演色画像102は、複数の演色性色材を用いて形成されるカラー画像である。演色性色材は、画像形成装置1が電子写真方式のものであれば各色の色トナーであり、画像形成装置1がインクジェット記録装置であれば各色インクである。
【0030】
反射性色材層103は、高反射性色材からなるベタ膜の層であることとする。高反射性色材は、画像形成装置1が電子写真方式のものであれば、白色トナーおよびシルバー色トナーの少なくとも一方である。また画像形成装置1がインクジェット記録装置であれば、高反射性色材として、白色インクを用いることができる。
【0031】
また特に、観察面101aに形成された演色画像102における各色を合計した演色性色材の量は、各色の演色性色材が、光透過性シート101の観察面101aに演色性色材の定着が可能なプロセス条件の範囲に設定されている。プロセス条件によって設定される各色トナーの最大供給量を濃度100%とした場合、CMYKの4色の色トナーの最大濃度は400%となる。しかしながら、画像形成装置1(
図1参照)においては、最大濃度400%のトナーを印刷しようとした場合、定着不良を起こすため、トナー濃度に制限を設けて定着不良を防止している。
【0032】
さらに、裏面101bに形成された反射性色材層103における高反射性色材の量も、演色性色材の量と同様に、光透過性シート101の裏面101bに高反射性色材の定着が可能なプロセス条件の範囲に設定されている。ただし、反射性色材層103における高反射性色材の量は、このプロセス条件の範囲における所定の一定値に設定されている。
【0033】
図4は、実施形態に係る片面多色印刷物100の色材濃度テーブル[T1]を示す図であって、
図3に示した片面多色印刷物100の色材濃度の構成を示す図である。この色材濃度テーブル[T1]は、
図2を用いて説明した色材濃度テーブル記憶部12-1に保持されていることとする。
図4に示す色材濃度テーブル[T1]は、原稿画像における色材濃度の合計である(1)原稿濃度に対し、(2)演色画像濃度(C+M+Y+K)および(3)反射性色材濃度(W)を関連付けしたものである。
【0034】
なお、ここでの色材の濃度とは、原稿画像を構成する各画素について算出された諧調濃度(%)であって、以下において同様である。例えば8bit諧調(0~255)である場合において、8bit諧調の濃度を%表記するには、当該画素の階調値を[x]とすると([x]/255)×100から求まる。また、色材濃度テーブル[T1]における各数値は、例えば(1)原稿濃度のCMYK合計値が80%であれば、(2)観察面のCMYK合計値は制限がかかり48%となる。このように、(1)原稿濃度のCMYK合計値400%の時点で最大値の240%を超えないように、各数値は制限がかけられた値となる。これは、以降に示す色材濃度テーブルにおいても同様である。
【0035】
このうち(2)演色画像濃度は、光透過性シート101の観察面101aに形成される演色画像102(
図3参照)の演色性色材の合計濃度である。この色材濃度テーブル[T1]においては、プロセス条件として、演色性色材の合計濃度の最大値が240(%)に設定されている。このような色材濃度テーブル[T1]においては、(1)原稿濃度0(%)~400(%)の各段階に対し、(2)演色画像濃度0(%)~240(%)を段階的に振り分けて対応させている。
【0036】
図5は、(1)原稿濃度と(2)演色画像濃度との関係を示すグラフである。
図5の第1ライン[C1]に示すように、(2)演色画像濃度は、(1)原稿濃度に対して比例させてもよい。また、第2ライン[C2]に示すように、(2)演色画像濃度は、(1)原稿濃度の高濃度側において増加率を緩やかにしてもよく、中濃度または低濃度で緩やかにしてもよい。さらに第3ライン[C3]に示すように、(2)演色画像濃度は、一定濃度において増加率を変化させてもよいし、それ以外であってもよい。なお、(2)演色画像濃度の各範囲内においての各色材の濃度の振り分けは、均等であることに限定されず、例えばK色材をCMY色材よりも多くしてもよい。
【0037】
図4に戻り、(3)反射性色材濃度は、裏面101bに形成される反射性色材層103(
図3参照)の反射性色材の濃度である。裏面101bには、反射性色材として白色トナーを用いた反射性色材層103のみが形成されるため、反射性色材の濃度の最大値100(%)の一定値としているが、それ以下の一定値であってもよい。なお、反射性色材層103が、反射性色材として白色トナーとシルバートナーとを用いる場合、(3)反射性色材濃度は、白色トナーとシルバートナーとの合計の最大量である200%以下の一定値に設定されることとする。
【0038】
以上のような色材濃度テーブル[T1]の各値は、例えば
図1に示した外部装置2からの入力、または画像形成装置1の表示部13および入力部14からの入力によって、設定された値であってよい。
【0039】
<両面多色印刷物>
図6は、実施形態に係る両面多色印刷物100’を示す断面図である。
図6に示す両面多色印刷物100’は、光透過性シート101における観察面101aと裏面101bの両面に演色画像102を有し、裏面101bにおいて観察者[P]側から最も遠い位置に反射性色材層103を有する。光透過性シート101、演色画像102、および反射性色材層103の構成は、
図3を用いて説明したものと同様である。
【0040】
また特に、演色画像102のうち、観察面101aに形成された観察面側演色画像102aを構成する各色の演色性色材の合計濃度は、光透過性シート101の観察面101aに演色性色材の定着が可能なプロセス条件の範囲に設定されている。
【0041】
一方、演色画像102のうち、裏面101bに形成された裏面側演色画像102bを構成する演色性色材の合計量は、反射性色材層103を有する条件下において、演色性色材の定着可能なプロセス条件の範囲に設定されている。つまり、光透過性シート101の裏面101bには、高反射性色材の定着が可能なプロセス条件を優先して反射性色材層103が設けられており、これを除外した範囲で、裏面側演色画像102bを構成する演色性色材の合計量が設定されている。なお、裏面101bに形成されている反射性色材層103を構成する高反射性色材の合計量は、高反射性色材の定着が可能なプロセス条件の範囲の一定値に設定されている。
【0042】
図7は、実施形態に係る両面多色印刷物100’の色材濃度テーブル[T11]を示す図であって、
図6に示した両面多色印刷物100’の色材濃度の構成を示す図である。この色材濃度テーブル[T11]は、
図2を用いて説明した色材濃度テーブル記憶部12-1に保持されていることとする。
図7に示す色材濃度テーブル[T11]は、原稿画像における色材の濃度の合計量である(1)原稿濃度に対し、(2)観察面側演色画像濃度、(2)’裏面側演色画像濃度、および(3)反射性色材濃度(W)を関連付けしたものである。
【0043】
このうち(2)観察面側演色画像濃度は、光透過性シート101の観察面101aに形成される観察面側演色画像102a(
図6参照)の演色性色材の合計濃度である。また(2)’裏面側演色画像濃度は、光透過性シート101の裏面101bに形成される裏面側演色画像102b(
図6参照)の演色性色材の合計濃度である。(3)反射性色材濃度は、裏面101bに形成される反射性色材層103(
図6参照)の反射性色材濃度である。
図7の色材濃度テーブル[T11]においては、プロセス条件として、観察面101a側の演色性色材の合計濃度の最大値が240(%)に設定されている場合を示している。
【0044】
この場合、(2)観察面側演色画像濃度は、240%を最大値とし、(1)原稿濃度が240%に達するまでは(1)原稿濃度に一致させ、(1)原稿濃度が240%を超えた場合に240%の一定としている。
【0045】
また(2)’裏面側演色画像濃度は、(2)観察面側演色画像濃度が240%を超えた範囲において、その超過分が振り分けられた濃度となっている。つまり、(2)観察面側演色画像濃度と(2)’裏面側演色画像濃度の合計が、(1)原稿濃度となっている。なお、(2)’裏面側演色画像濃度の最大値は、(3)反射性色材濃度が定着可能なプロセス条件での最大値であって、例えば168(%)である。
【0046】
また(3)反射性色材濃度は、反射性色材の濃度の最大値100(%)の一定値としているが、それ以下の一定値であってもよいことは、
図4の色材濃度テーブル[T1]と同様である。
【0047】
なお、光透過性シート101の観察面101aと裏面101bとの両面に演色画像102を振り分ける場合、(2)観察面側演色画像濃度と(2)’裏面側演色画像濃度との配分は、
図7に示した配分に限定されることはない。
図8~
図10は、実施形態に係る両面多色印刷物100’の色材濃度テーブル[T12]~[T14]を示す図であり、(2)観察面側演色画像濃度と、(2)’裏面側演色濃度との配分の他の例を示している。
【0048】
図8の色材濃度テーブル[T12]に示すように、(2)観察面側演色画像濃度と(2)’裏面側演色画像濃度とは、同一配分であってもよい。この場合、(2)’裏面側演色濃度が最大値(ここでは168)を超えた場合には、超過分を(2)観察面側演色画像濃度に振り分けて追加する。
【0049】
図9の色材濃度テーブル[T13]に示すように、(2)観察面側演色画像濃度と(2)’裏面側演色画像濃度とは、(1)原稿濃度に対するそれぞれの最大値の割合で分配されていてもよい。
図9の例において、(2)観察面側演色画像濃度は、(1)原稿濃度に対して0.58(232/400)の割合で配分されている。また(2)’裏面側演色画像濃度は、(1)原稿濃度に対して0.42(168/400)の割合で配分されている。
【0050】
図10の色材濃度テーブル[T14]に示すように、(2)観察面側演色画像濃度と(2)’裏面側演色画像濃度とは、(2)’裏面側演色画像濃度を優先する配分であってもよい。すなわち、(2)’裏面側演色画像濃度は、168(%)を最大値とし、(1)原稿濃度が168(%)に達するまで(1)原稿濃度に一致させ、(1)原稿濃度が168(%)を超えた範囲では、最大値168(%)の一定としている。そして、(2)観察面側演色画像濃度は、(2)’裏面側演色画像濃度が168(%)を超えた範囲において、その超過分が振り分けられた濃度となっている。
【0051】
なお、(2)観察面側演色画像濃度と(2)’裏面側演色画像濃度との配分は、それぞれの最大値を超えない範囲で分配されていれば、
図7~
図10に示した配分例に限定されることはない。
【0052】
≪画像形成方法≫
次に、第1実施形態の画像形成方法を説明する。第1実施形態の画像形成方法は、
図3に示した片面多色印刷物100、または
図6に示した両面多色印刷物100’を形成するための方法である。
【0053】
図11は、第1実施形態に係る画像形成方法を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す画像形成方法は、
図1を用いて説明した画像形成装置1における画像形成制御部12が保持する画像形成プログラムによって実施される画像形成方法の手順を示している。以下、
図11のフローチャートに沿って、先の
図1、
図2、および他の図を参照しつつ、第1実施形態の画像形成方法を説明する。
【0054】
[ステップS100]
ステップS100において、画像形成制御部12は、例えば外部装置2から入力された原稿画像に関し、PDLおよび印刷設定の解析を実施する。印刷設定は、原稿サイズ(A4,B4、8.5×11inch…)の種別、用紙サイズ(A3,B4,11×17inch…)の種別、面付け(2in1、無線閉じ、小冊子、2リピート…)の種別、給紙トレイ番号、カラーモード(モノクロ、フルカラー、フルカラー+白あり…)の種別などがある。給紙トレイ番号は、例えば紙種(材質、坪量)の設定によって選択される。
【0055】
[ステップS101]
ステップS101において、画像形成制御部12の変換処理部12-2は、例えば外部装置2から入力された原稿画像を、ラスタライズ処理する。この際変換処理部12-2は、画像形成部11による印刷画像の形成が可能な画素毎のCMYKの画像データに変換する。
【0056】
[ステップS102]
ステップS102において、分配処理部12-3は、ステップS100において解析した印刷設定に基づいて、演色性色材を両面に形成するか否かの判断を実施する。両面に形成する(YES)と判断した場合にはステップS103に進み、両面に形成しない(NO)と判断した場合にはステップS105に進む。
【0057】
[ステップS103]
ステップS103において、分配処理部12-3は、色材濃度テーブル記憶部12-1に保持された両面多色印刷物用の色材濃度テーブル[T11]~[T14](
図7~
図10)のうちから、ステップS100において解析した印刷設定に一致するテーブルを選択する。
【0058】
[ステップS104]
ステップS104において、分配処理部12-3は、ステップS103で選択した色材濃度テーブルに基づいて、ステップS101で変換したCMYKの原稿画像の濃度制限と裏面画像の生成を実施する。この際、色材濃度テーブルに基づいて、CMYKの原稿画像を、観察面101a用の分配画像と、裏面101b用の分配画像とに分配する。この分配処理は、選択した色材濃度テーブルに基づいて、画素毎に諧調濃度を分配することで実施される。そして、裏面101b用の分配画像に対し、反射性色材層103を追加することで裏面画像を生成する。その後、ステップS107に進む。
【0059】
[ステップS105]
一方ステップS105において、分配処理部12-3は、色材濃度テーブル記憶部12-1に保持された色材濃度テーブルの中から、裏面にCMYK画像の無い片面多色印刷物の色材濃度テーブル[T1](
図4)を選択する。
【0060】
[ステップS106]
ステップS106において、分配処理部12-3は、ステップS105で選択した色材濃度テーブルに基づいて、ステップS101で変換したCMYKの原稿画像の濃度制限と裏面画像の生成を実施する。この際、色材濃度テーブルに基づいて、CMYKのみの原稿画像を、観察面101a用の分配画像として生成する。そして、裏面101b用の分配画像は、反射性色材層103のみ生成される。その後、ステップS107に進む。
【0061】
[ステップS107]
ステップS107において、第1画像形成装置10aの画像形成部11は、白無プロセスモードにより、分配処理部12-3での処理に従って、光透過性シート101の観察面101aに観察面画像として演色画像を形成する。観察面101aに演色画像が形成された光透過性シート101は、第2画像形成装置10bに搬送される。
【0062】
[ステップS108]
ステップS108において、第2画像形成装置10bの画像形成部11は、白有プロセスモードにより、分配処理部12-3での処理に従って、光透過性シート101の裏面101bに裏面画像を形成する。ここで形成される裏面画像は、演色画像と反射性色材層とであるか、または反射性色材層である。
【0063】
以上により、
図3に示した片面多色印刷物100、または
図6に示した両面多色印刷物100’が得られ、画像形成処理を終了させる。
観察面側演色画像濃度と(2)’裏面側演色画像濃度
【0064】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、演色画像の画像濃度がプロセス条件の制限値を超えている場合、プロセス条件を考慮して原稿画像を光透過性シート101の両側面に分配することで、演色画像における演色性色材の定着性を確保しつつも、色再現性の良好な演色画像を得ることが可能となる。この結果、見栄えの良好な演色画像102を光透過性シート101に対して形成することが可能となる。
【0065】
≪多色印刷物の変形例1≫
次に、多色印刷物の変形例1として、
図6に示した両面多色印刷物100’の変形例を説明する。
図6に示した両面多色印刷物100’は、観察面側演色画像102aに対する裏面側演色画像102bの形成領域を、観察者[P]の観察方向を考慮して制限してもよい。
【0066】
図12は、両面多色印刷物における画像のぶれを説明するための図であって、光透過性シート101の観察面101aおよび裏面101bに対し、観察者[P]の観察方向が斜めである場合を示している。この場合、観察面側演色画像102aと裏面側演色画像102bとが観察方向に対してずれるため、観察者[P]には画像がぶれて見える。そこで、裏面側演色画像102bの形成領域を制限することで、観察者[P]から見た画像のブレの発生を防止する。
【0067】
この際、
図12において、光透過性シート101のシート厚[t1]、観察者[P]の視野角[θ4]、および観察者[P]と観察面側演色画像102aの中心との距離[d1]は、既知の値である。このうち視野角[θ4](=2°または10°)および距離[d1](=50cm)は、評価の際の固定値である。
【0068】
ここで、視野の中心線上における観察者[P]上の点[p1]および観察面側演色画像102aの中心点[p2]と、中心点[p2]を通る光透過性シート101の垂線と点[p1]を通る光透過性シート101に平行な面とが交わる点[p3]とで示される直角三角形を、第1三角形301(図中二点鎖線で示す)とする。また、点[p1]と、視野の最外郭線と光透過性シート101の裏面101bとが交わる点[p4]と、点[p4]を通る光透過性シート101の垂線と点[p1]を通る光透過性シート101に平行な面とが交わる点[p5]とで示される直角三角形を、第2三角形302(図中一点鎖線で示す)とする。この場合、二点鎖線で示す第1三角形301の内角は、下記式(1)で表される。また、一点鎖線で示す第2三角形302の内角は、下記式(2)で表される。そして、下記式(1)および式(2)を下記式(3)に代入することにより、下記式(3)’に示すように、既知の値を用いて第2三角形302の内角[θ1]が表される。
【0069】
【0070】
また第2三角形302の内角[θ1]を用いて、裏面側演色画像102bの形成可能領域[L1]が、下記式(4)のように求められる。なお、ここでの形成可能領域[L1]とは、演色画像102において類似色範囲内の略同一色を有する部分的な領域に関し、この部分的な領域を光透過性シート101の両面に分配した場合の裏面側演色画像102bの形成領域を示す。
【0071】
【0072】
これにより、斜め方向からであっても、光透過性シート101の両面に分配して形成された演色画像102をブレなく観察することが可能な両面多色印刷物100’を得ることが可能となる。
【0073】
≪多色印刷物の変形例2≫
多色印刷物の変形例2として、
図3に示した片面多色印刷物100の他の例を説明する。
図13は、実施形態に係る多色印刷物の変形例2を示す片面多色印刷物100aの断面図であり、
図14は、実施形態に係る多色印刷物の変形例2を示す片面多色印刷物100aの平面図である。これらの図に示す片面多色印刷物100aは、光透過性シート101’の一部を台紙100a”として用いた半透明シールであって、光透過性シート101’と、反射性色材層103aの構成が特徴的である。演色画像102は、
図3に示した片面多色印刷物100のものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
光透過性シート101’は、2枚の基材101-1,101-2の間に粘着層101-3を挟持した構成である。粘着層101-3は、反射性色材層103a側の基材101-2よりも演色画像102側の基材101-1に対して、より高い接着性を有する。これにより、演色画像102、演色画像102側の基材101-1、および粘着層101-3からなるシール部材100a’を、反射性色材層103aおよび反射性色材層103a側の基材101-2からなる台紙100a”から剥がし取ることができる。そして、剥がし取ったシール部材100a’を、目的とする下地面に貼り付けることが可能な構成である。
【0075】
また、反射性色材層103aは、一定濃度の高反射性色材からなるベタ膜の層に透過窓103aaを設けた構成のものである。透過窓103aaの大きさは特に限定されることはないが、観察者[P]が透過窓103aa上の演色画像102を容易に観察可能な大きさであることとする。
【0076】
また、反射性色材層103aの形成領域は、演色画像102の形成領域よりも一回り大きいこととする。これにより、観察者[P]は、演色画像102とは別に、反射性色材層103aが設けられていることを容易に認識することが可能となる。
【0077】
図15は、変形例2の片面多色印刷物100aの効果を説明するための平面図である。この図に示すように、片面多色印刷物100aは、シール部材100a’を台紙100a”(
図13参照)から剥がし取る前に、目的とする背景部材200に重ね合わせることで、演色画像102に対する背景部材200の影響を透過窓103aaから確認することができる。
【0078】
これにより、例えば半透明シールとしての片面多色印刷物100aを、商品として販売する場合、顧客は片面多色印刷物100aを購入する前に、反射性色材層103aの下地がある部分においてはデザインの確認ができ、透過窓103aaの部分においては貼り付け先となる背景部材200の色による最終的な演色画像102の色合いを確認することが可能となる。
【0079】
≪多色印刷物の変形例3≫
図16は、実施形態に係る多色印刷物の変形例3を示す片面多色印刷物100bの断面図である。この図に示す片面多色印刷物100bが、
図13に示した変形例2の片面多色印刷物100aと異なるところは、反射性色材層103a’の形成領域が、演色画像102の形成領域よりも一回り小さいことのみである。演色画像102の終端縁と、反射性色材層103a’の周端縁との差[d2]は、
図12および式(4)に示した長さ[L2]に相当する。
【0080】
これにより、演色画像102の下地である反射性色材層103a’が、演色画像102からはみ出して見えることを防止できる。なお、本変形例3は、
図3に示した片面多色印刷物100にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0081】
≪多色印刷物の変形例4≫
図17は、実施形態に係る多色印刷物の変形例4を示す片面多色印刷物100cの断面図である。この図に示す片面多色印刷物100cは、背景部材200上に載置して用いられるものであり、例えば、ここでの図示を省略した接着層によって背景部材200に対して貼り合わせて用いられるものである。このような片面多色印刷物100cが、
図3を用いて説明した片面多色印刷物100と異なるところは、反射性色材層103cの構成であり、その他の部材の構成は同様である。
【0082】
反射性色材層103cは、高反射性色材の濃度が、背景部材200の明度に対応した一定濃度に設定されている。
図18は、変形例4の片面多色印刷物100cの反射性色材層103cにおける高反射性色材の濃度を示すグラフであり、背景の明度(L*)と高反射性色材の濃度(%)との関係を示している。このグラフに示すように、反射性色材層103cを構成する高反射性色材の濃度(%)は、背景部材200の明度(L*)が高いほど、低い値となっている。
【0083】
なお、背景の明度(L*)と高反射性色材の濃度(%)との関係は、
図18に示した例に限定されることはなく、例えば
図18のラインを上に凸または下に凸としたラインであってもよい。また背景部材200の明度(L*)は、測色器を用いて測定した値であってよい。例えば背景部材200が白色のコート紙であれば、その明度(L*)は93程度である。
【0084】
このような構成の片面多色印刷物100cでは、背景部材200の明度(L*)を考慮して反射性色材層103cを構成する高反射性色材の濃度(%)を100%より低くすることができるため、反射性色材層103cを構成する高反射性色材の使用量を削減することができる。また、背景を利用した片面多色印刷物100cの表示が可能となる。
【0085】
なお、変形例4は、
図6を用いて説明した両面多色印刷物100’および変形例1の構成と組み合わせることも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0086】
≪多色印刷物の変形例5≫
図19は、実施形態に係る多色印刷物の変形例5を示す片面多色印刷物100dの平面図および断面図である。この図に示す片面多色印刷物100dは、背景部材200上に載置して用いられるものであり、例えば、ここでの図示を省略した接着剤によって背景部材200に対して密着させて用いられるものである。このような片面多色印刷物100dが、
図3を用いて説明した片面多色印刷物100と異なるところは、演色画像102dおよび反射性色材層103dの構成であり、光透過性シート101の構成は同様である。
【0087】
すなわち、片面多色印刷物100dの演色画像102dおよび反射性色材層103dは、透かし効果を利用し、背景部材200の色に対応して濃度調整されている。
図19は、例えば背景部材200としてのワインボトルに、片面多色印刷物100dを巻き付け、端部同士を接着しボトルに密着させた構成を、曲線ではなく直線状に図示している。片面多色印刷物100dは、ブドウの実102-1と葉102-2が描かれている演色画像102dと、円形の反射性色材層103dとを下引きとして重ねた構成のものである。この場合、演色画像102dの各部は、ブドウの原稿画像から、背景部材200であるワインボトルの色を差し引いて調整された各濃度を有する。また、反射性色材層103dの各部は、演色画像102dの濃度の調整値に基づいて設定された各濃度を有する。
【0088】
図20は、変形例5の片面多色印刷物100dにおける演色画像102dおよび反射性色材層103dの各色材の階調濃度(%)の背景部材色の影響による調整を説明するための図であり、一例として
図19に示すブドウの葉102-2の部分の各色材濃度を示している。
【0089】
図19および
図20を用いて説明すると、(1)濃度調整前の原稿画像のCMYK濃度、およびW濃度(高反射性色材濃度)は、(10)背景部材200の測色値(L*a*b*)に基づいて次の手順で調整される。先ず、(10)背景部材200の測色値(L*a*b*)を、(10)’CMYK濃度に変換する。この変換値は、プリンタCMYKとそのプリンタで出力された色を測定することで得られた色彩値(L*a*b*)との対応付けが記載されたデバイスプロファイルであるプリンタープロファイル(ICCプロファイル)から求められる。そして(1)濃度調整前の原稿画像のCMYK濃度の各値から、背景部材200における(10)’CMYK濃度の各値を差し引いくことで、(2)濃度調整後のCMYK濃度を得る。
【0090】
また、(2)濃度調整後の高反射性色材(W)の濃度は、(1)濃度調整前のCMYK濃度およびW濃度(高反射性色材濃度)と、(2)濃度調整後の原稿画像のCMYK濃度とから、以下の式(5)のようにして得る。
【0091】
【0092】
なお、(10)’CMYK濃度の各値には、重みづけ係数をかけてもよい。重みづけ係数は、(10)背景部材200の測色値(L*a*b*)の範囲に対応させて、予め設定さていることとする。また、(10)背景部材200の測色値(L*a*b*)は、色名、色相などを指定して入力してもよく、モニタに表示した複数色のバリエーションを含む見本色から選択指定させてもよく、複数色のバリエーションを含む色見本を印刷し、背景部材200の色に最も似ているパッチを表す番号(記号等)を入力してもよい。
【0093】
このような変形例5によれば、片面多色印刷物100dの背景部材200の色の透かし効果を利用して演色画像102dおよび反射性色材層103dの色材濃度を調整することで、色材濃度を減らすことができる。
【0094】
なお、この変形例5は、
図6に示した両面多色印刷物100’および変形例1と組み合わせることも可能であり、同様の効果を得ることが可能である。
【0095】
≪画像形成装置の設定画面≫
図21は、実施形態に係る画像形成装置の表示部に表示される設定画面21aを示す図である。この設定画面21aは、例えば
図1に示した外部装置2からの要求により、画像形成装置1の画像形成制御部12に設けられた設定制御部(図示省略)が、外部装置2の表示部に対して開示する画面である。この設定画面21aには、外部装置2の入力部での操作によって指定可能な各種の設定が表示される。このような設定画面21aは、第1画像形成装置10aまたは第2画像形成装置10bの表示部13に表示される画面であってもよい。以下、
図21に基づき、
図1を参照しつつ、実施形態の画像形成装置1による画像形成において設定可能な設定条件を説明する。
【0096】
この設定画面21aにおいては、媒体供給装置15から供給される光透過性シート101に対し、観察面101aを設定することができる。この場合、例えば媒体供給装置15から供給される光透過性シート101において、上方に向かう側の面を表面とし逆側の面を裏面とし、そのいずれかを観察面として指定する。画像形成装置1は、この指定に基づいて、少なくとも光透過性シート101の観察面101aに演色画像102が形成されるように、媒体供給装置15から第1画像形成装置10aに対して光透過性シート101を搬送させる。
【0097】
このように観察面101aを指定することが可能であることにより、画像形成装置1(
図1参照)に対してロール状の光透過性シート101のロールセット方向を間違えた場合、ロールをセットし直すことなく画像形成を実施することが可能である。ただし、例えば
図6に示したような両面多色印刷物100’を形成する場合、画像形成装置1(
図1参照)の第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bとも、光透過性シート101に近い側にCMYKの演色色材が形成され、その上部に高反射性色材(W)が形成されるように、画像形成部11が構成されていることとする。
【0098】
図21に戻り、設定画面21aにおいては、下引き量を設定することが可能である。この下引き量は、一例として
図16に示した片面多色印刷物100bの演色画像102の終端縁と、反射性色材層103a’の周端縁との差[d2]に相当する。これにより、画像形成装置1における画像形成制御部12は、設定した下引き量に基づいて、演色画像102に対して反射性色材層103を一回り小さく形成したり、一回り大きく形成することを、例えば第2画像形成装置10bに指示することができる。
【0099】
さらに設定画面21aにおいては、透かし効果を利用した画像形成を設定することができる。透かし効果を利用する場合、背景部材の色を、PCに接続された測色計にて測定し数値で指定するか、指定するための色見本を印刷するか、画面表示色から選択するかを設定することができる。画像形成装置1の画像形成制御部12は、この指定に基づいて設定された背景部材の色と、原稿画像の色とから、反射性色材層103dの各部および演色画像102dの各部の濃度を調整し、調整した値に基づいて画像形成を実施することが可能となる。これにより、
図19を用いて説明した変形例5の多色印刷物を得ることが可能となる。
【0100】
さらにまた、設定画面21aにおいては、原稿画像において、制限濃度を超過した制限超過色を両面に形成するか否かを設定することができる。この設定に基づいて、画像形成装置1の画像形成制御部12は、
図11に示した画像形成の手順におけるステップS102の判断を実施することができる。
【0101】
また、設定画面21aにおいては、制限超過色を両面に形成する場合に、ブレ見え抑制するか否かの指定が可能である。また、ブレ見え抑制を指定した場合に、裏面側演色画像の形成可能領域の算出に用いる光透過性シート101の厚みである透過性シート厚を設定することができる。この場合、画像形成装置1の画像形成制御部12は、
図12を用いて説明した変形例1の裏面側演色画像の形成可能領域を、設定に基づいて算出する。また、算出した結果を、例えば第2画像形成装置10bに指示し、裏面側演色画像の形成を実施する。これにより画像のブレを防止した両面多色印刷物を得ることが可能となる。
【0102】
なお、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、
図1に示した画像形成装置1は、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bの2つの画像形成装置を備えたものとして説明したが、何れか一方でもよい。この場合、記録媒体としての光透過性シート101を反転させて再び画像形成装置に供給する反転通紙機構を備えることとする。なお、光透過性シート101がロール紙の場合、ロール紙のセット方向を変えることで、ロール紙(光透過性シート101)の両面に画像形成を実施する。またこの場合、追い刷り用アイマーク印字とアイマークの読取機構および位置合わせ機構を有することが好ましい。
【0103】
さらに、第1画像形成装置10aに設けた画像形成制御部12は、先にも述べたように、第2画像形成装置10bに配置されていてもよいし、これらと別体であってもよい。また、画像形成制御部12は、画像形成部11が有する駆動制御部と同一基板上に形成されていてもよい。
【0104】
さらに、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bの各表示部13および入力部14は、何れか一方のみであってもよい。また外部装置2の表示部および入力部や、ネットワーク接続可能なタブレットやスマートフォン等のIoT装置の表示部および入力部を用いることで、第1画像形成装置10aおよび第2画像形成装置10bが表示部13および入力部14を不要とする構成であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
11…画像形成部
12…画像形成制御部
12-3…分配処理部
100,100a,100b,100,100d…片面多色印刷物
100’…両面多色印刷物
101,101’…光透過性シート
102,102d…演色画像
102a…観察面側演色画像
102b…裏面側演色画像
103,103a,103a’,103c,103d…反射性色材層