(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117131
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20240822BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A01D69/00 302B
A01B69/00 303M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023045
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上加 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 成祥
(72)【発明者】
【氏名】上田 晋
(72)【発明者】
【氏名】平賀 亮太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲之
【テーマコード(参考)】
2B043
2B076
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA02
2B043BB14
2B043DA17
2B043EA23
2B043EA32
2B043EA40
2B043EB05
2B043EB18
2B043ED12
2B043ED13
2B043EE02
2B043EE05
2B076AA03
2B076EA01
2B076EC14
2B076EC23
2B076ED01
2B076ED23
(57)【要約】
【課題】コンバインを良好な走行姿勢に維持して、刈取装置で刈り残した未刈穀稈を少なくすることができるコンバインを提供する。
【解決手段】操縦部(5)に、作業者が手動操舵して走行装置(2)を手動走行させる操作レバー(12)と、コンバインに搭載したコントローラ(30)が自動操舵して予め設定された設定経路(45)に沿って走行装置(2)を予め設定した設定走行速度で自動走行させる直線アシストスイッチ(13)と、コンバインの傾斜角度を測定する計測装置(16)を設け、直線アシストスイッチ(13)が入力操作中に、計測装置(16)で測定された傾斜角度が予め設定した第1設定角度以上で、且つ、予め設定した第1設定時間を経過した場合には、コントローラ(30)は走行装置(2)の走行速度を減速する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の下側に圃場を走行する走行装置(2)と、該機体フレーム(1)の前側に穀稈を刈取る刈取装置(3)と、該刈取装置(3)の後方に作業者が搭乗する操縦部(5)と、該操縦部(5)の後側に脱穀処理された穀粒を貯留するグレンタンク(7)を設けたコンバインにおいて、
前記操縦部(5)に、作業者が手動操舵して走行装置(2)を手動走行させる操作レバー(12)と、前記コンバインに搭載したコントローラ(30)が自動操舵して予め設定された設定経路(45)に沿って走行装置(2)を予め設定した設定走行速度で自動走行させる直線アシストスイッチ(13)と、前記コンバインの傾斜角度を測定する計測装置(16)を設け、
前記直線アシストスイッチ(13)が入力操作中に、前記計測装置(16)で測定された傾斜角度が予め設定した第1設定角度以上で、且つ、予め設定した第1設定時間を経過した場合には、前記コントローラ(30)は走行装置(2)の走行速度を減速することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記走行装置(2)の走行速度を減速した後に、前記計測装置(16)で測定された傾斜角度が予め設定した第2設定角度未満でで、且つ、予め設定した第2設定時間を経過した場合には、前記コントローラ(30)は走行装置(2)の走行速度を設定走行速度まで増速させる請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第2設定角度は第1設定角度よりも小さい角度に設定され、前記第2設定時間は第1設定時間よりも長い時間に設定された請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記コンバインが設定経路(45)の終端部に到達した場合には、前記コントローラ(30)は刈取装置(3)を所定の高さに上昇させる請求項1記載のコンバイン。
【請求項5】
前記操縦部(5)に設定経路(45)をコンバインの走行方向に対して直角方向に移動する経路シフトスイッチ(14)を設け、
該経路シフトスイッチ(14)が入力操作された場合には、前記コントローラ(30)は、次に前記コンバインを自動走行させる設定経路(45)をコンバインが自動走行してきた設定経路(45)側に所定の量移動させる請求項4記載のコンバイン。
【請求項6】
前記所定の量を前記圃場に植立された穀稈の条と条の間隔にする請求項5記載のコンバイン。
【請求項7】
前記操縦部(5)に前方の穀稈を撮影するカメラ(17)と警報を鳴らすブザー(18)を設け、
該カメラ(17)で撮影された穀稈が倒伏状態にある場合に、前記コントローラ(30)は、前記走行装置(2)の走行方向が倒伏された穀稈の株元から穂先方向に向いていない場合には、前記ブザー(18)を作動して警報を鳴らす請求項1記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された設定経路に沿って自動走行するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインを自動走行させる設定経路上に落石や倒木等の障害物が有る場合には、新たな設定経路を設定して障害物との衝突を回避する技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、圃場の湿田状態等によってコンバインの走行姿勢が所定以上にローリングした場合にあってもコンバインを一定速度で自動走行させるために、コンバインの走行姿勢が不安定になり、刈取装置で刈り残した未刈穀稈が多くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、コンバインを良好な走行姿勢に維持して、刈取装置で刈り残した未刈穀稈を少なくすることができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、機体フレーム(1)の下側に圃場を走行する走行装置(2)と、該機体フレーム(1)の前側に穀稈を刈取る刈取装置(3)と、該刈取装置(3)の後方に作業者が搭乗する操縦部(5)と、該操縦部(5)の後側に脱穀処理された穀粒を貯留するグレンタンク(7)を設けたコンバインにおいて、
前記操縦部(5)に、作業者が手動操舵して走行装置(2)を手動走行させる操作レバー(12)と、前記コンバインに搭載したコントローラ(30)が自動操舵して予め設定された設定経路(45)に沿って走行装置(2)を予め設定した設定走行速度で自動走行させる直線アシストスイッチ(13)と、前記コンバインの傾斜角度を測定する計測装置(16)を設け、前記直線アシストスイッチ(13)が入力操作中に、前記計測装置(16)で測定された傾斜角度が予め設定した第1設定角度以上で、且つ、予め設定した第1設定時間を経過した場合には、前記コントローラ(30)は走行装置(2)の走行速度を減速することを特徴とするコンバインである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記走行装置(2)の走行速度を減速した後に、前記計測装置(16)で測定された傾斜角度が予め設定した第2設定角度未満でで、且つ、予め設定した第2設定時間を経過した場合には、前記コントローラ(30)は走行装置(2)の走行速度を設定走行速度まで増速させる請求項1記載のコンバインである。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記第2設定角度は第1設定角度よりも小さい角度に設定され、前記第2設定時間は第1設定時間よりも長い時間に設定された請求項2記載のコンバインである。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記コンバインが設定経路(45)の終端部に到達した場合には、前記コントローラ(30)は刈取装置(3)を所定の高さに上昇させる請求項1記載のコンバインである。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記操縦部(5)に設定経路(45)をコンバインの走行方向に対して直角方向に移動する経路シフトスイッチ(14)を設け、該経路シフトスイッチ(14)が入力操作された場合には、前記コントローラ(30)は、次に前記コンバインを自動走行させる設定経路(45)をコンバインが自動走行してきた設定経路(45)側に所定の量移動させる請求項4記載のコンバインである。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記所定の量を前記圃場に植立された穀稈の条と条の間隔にする請求項5記載のコンバインである。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記操縦部(5)に前方の穀稈を撮影するカメラ(17)と警報を鳴らすブザー(18)を設け、該カメラ(17)で撮影された穀稈が倒伏状態にある場合に、前記コントローラ(30)は、前記走行装置(2)の走行方向が倒伏された穀稈の株元から穂先方向に向いていない場合には、前記ブザー(18)を作動して警報を鳴らす請求項1記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、操縦部(5)に、作業者が手動操舵して走行装置(2)を手動走行させる操作レバー(12)と、コンバインに搭載したコントローラ(30)が自動操舵して予め設定された設定経路(45)に沿って走行装置(2)を予め設定した設定走行速度で自動走行させる直線アシストスイッチ(13)と、コンバインの傾斜角度を測定する計測装置(16)を設け、直線アシストスイッチ(13)が入力操作中に、計測装置(16)で測定された傾斜角度が予め設定した第1設定角度以上で、且つ、予め設定した第1設定時間を経過した場合には、コントローラ(30)は走行装置(2)の走行速度を減速するので、コンバインの大きな走行姿勢の乱れを防止して、圃場に植立する穀稈を効率良く刈取って未刈穀稈の量を抑制することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、走行装置(2)の走行速度を減速した後に、計測装置(16)で測定された傾斜角度が予め設定した第2設定角度未満でで、且つ、予め設定した第2設定時間を経過した場合には、コントローラ(30)は走行装置(2)の走行速度を設定走行速度まで増速させるので、圃場の湿地箇所を通過後に走行装置(2)の走行速度を増速して刈取作業の効率を高めることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、第2設定角度は第1設定角度よりも小さい角度に設定され、第2設定時間は第1設定時間よりも長い時間に設定されたので、コンバインの大きな走行姿勢の乱れをより防止して、圃場に植立する穀稈を効率良く刈取って未刈穀稈の量をより抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、コンバインが設定経路(45)の終端部に到達した場合には、コントローラ(30)は刈取装置(3)を所定の高さに上昇させるので、刈取装置(3)の下部が圃場の湿地箇所に接触するのを抑制して、刈取装置(3)の破損を防止することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明による効果に加えて、操縦部(5)に設定経路(45)をコンバインの走行方向に対して直角方向に移動する経路シフトスイッチ(14)を設け、経路シフトスイッチ(14)が入力操作された場合には、コントローラ(30)は、次にコンバインを自動走行させる設定経路(45)をコンバインが自動走行してきた設定経路(45)側に所定の量移動させるので、圃場の湿地箇所に植立する穀稈を刈取って圃場の湿地箇所に植立する未刈穀稈の量を抑制することができる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明による効果に加えて、所定の量を圃場に植立された穀稈の条と条の間隔にするので、圃場の湿地箇所に植立する穀稈をより刈取って圃場の湿地箇所に植立する未刈穀稈の量をより抑制することができる。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、操縦部(5)に前方の穀稈を撮影するカメラ(17)と警報を鳴らすブザー(18)を設け、カメラ(17)で撮影された穀稈が倒伏状態にある場合に、コントローラ(30)は、走行装置(2)の走行方向が倒伏された穀稈の株元から穂先方向に向いていない場合には、ブザー(18)を作動して警報を鳴らすので、刈取装置(3)に絡み付いた穀稈から脱粒する穀粒を防止して、刈取時における穀粒ロスの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図5】基準経路と基準経路に基づいて設定された設定経路の説明図である。
【
図7】コンバインを排出箇所に手動走行させる説明図である。
【
図8】コンバインの(a)は通常の4条刈りの旋回走行、(b)は1条を重複して刈取る4条刈りの旋回走行の説明図である。
【
図9】カメラで撮影した穀稈の倒伏状態の説明図である。
【
図10】第1実施形態のスクレーパの斜視図である。
【
図11】同スクレーパの(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図12】第2実施形態のスクレーパの斜視図である。
【
図13】同スクレーパの(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置3が設けられ、刈取装置3の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0022】
操縦部5の下側にはエンジンを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側には穀粒を外部に排出する上下方向に延在する揚穀部と前後方向に延在する横排出からなる排出オーガ8が設けられている。
【0023】
操縦部5の座席の前側のフロントパネルの中央部には、走行装置2の走行速度等を表示するモニタ11が設けられ、モニタ11の右側には、走行装置2を左右方向の旋回や刈取装置3の上下方向の移動等を操作する操作レバー12が設けられている。
【0024】
モニタ11と操作レバー12の間には、走行装置2を後述する直線状の基準経路41に沿って自動走行させる直線アシストスイッチ13が設けられ、モニタ11の左側には、後述する設定経路45を走行方向に対して直角方向に移動する経路シフトスイッチ14が設けられている。
【0025】
操作レバー12には、湿田走行スイッチ12Aが設けられており、湿田走行スイッチ12Aを入力操作すると刈取装置3の基部に装着されている油圧シリンダ3Aが作動して刈取装置3を所定の高さまで上昇させることができる。これにより、刈取装置3の下部が圃場に突込んで破損するのを防止することができる。また、操作レバー12の姿勢は、操作レバー12の基部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ12Sによって測定されている。
【0026】
操縦部5の座席の左側のサイドパネルの前部には、走行装置2の走行速度の増減速を行う変速レバー15が設けられ、変速レバー15の後側には慣性計測装置(請求項の「計測装置」)16が設けられている。これにより、機体フレーム1のヨーイング角度、ローリング角度、ピッチング角度を測定することができる。なお、平面視において、慣性計測装置16は、コンバインの前後方向と左右方向の中心部に設けるのが好ましい。
【0027】
走行装置2には走行装置2の走行速度を測定する速度センサ2Sが装着され、操縦部5の前部には圃場の穀稈の倒伏状態を測定するカメラ17が設けられ、操縦部5の座席の前側には追刈りに走行方向の変更を促す警報を鳴らすブザー18が設けられ、グレンタンク7の内周部には穀粒の貯留量を測定する穀粒センサ7Sが装着されている。本実施形態では、穀粒がグレンタンク7の容量の50%なったことを測定する穀粒センサ7SAと、75%になったことを測定する穀粒センサ7SBと、100%、すなわち満杯になったことを測定する穀粒センサ7SCの3個の穀粒センサ7Sが装着されている。
【0028】
図3に示すように、RTK-GPS測位方式である測位ユニット20は、測位衛星21と、既知の位置に設けられた基地局22と、コンバインに設けられた移動局26で構成されている。これにより、測位衛星21から移動局26に送信されてくる位置情報と基地局22から移動局26に送信されてくる補正用の位置情報からコンバインの走行位置を正確に得ることができる。
【0029】
基地局22は、固定用の通信機23と、測位衛星21からの位置情報を受信する固定用のGPSアンテナ24と、移動局26に補正用の位置情報を送信する固定用のデータ送信アンテナ25で構成されている。
【0030】
移動局26は、移動用の通信機27と、測位衛星21からの位置情報を受信する移動用のGPSアンテナ28と、基地局22からの補正用の位置情報を受信する移動用のデータ送信アンテナ29で構成されている。
【0031】
図4に示すように、コンバインのコントローラ30は、CPU等からなる処理部31と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部32と、外部とのデータ通信用の通信部33と、経過時間を測定するタイマ34から形成されている。
【0032】
処理部31は、後述する第1基準点42と第2基準点43の位置に基づいて、第1基準点42と第2基準点43を結ぶ直線状の基準経路41を設定したり、走行装置2の走行状態の判断等を行う。
【0033】
記憶部32は、処理部31で算出された第1基準点42と第2基準点43の位置の保存等を行う。
【0034】
コントローラ30の入力側には、走行装置2の走行速度を測定する速度センサ2Sと、第1基準点42の設定を行う第1基準点設定スイッチ11Aと、第2基準点43の設定を行う第2基準点設定スイッチ11Bと、第3基準点44の設定を行う第3基準点設定スイッチ11Cと、刈取装置3を上昇させる湿田走行スイッチ12Aと、操作レバー12の姿勢を測定する角度センサ12Sと、基準経路41や設定経路45に沿ってコンバインを自動走行させる直線アシストスイッチ13と、設定経路45を走行方向に対して直角方向に移動する経路シフトスイッチ14と、機体フレーム1のピッチング角度やローリング角度等を測定する慣性計測装置16と、穀稈の倒伏状態を測定するカメラ17と、測位衛星21からの位置情報を受信するGPSアンテナ28と、基地局22からの補正用の位置情報を受信するデータ送信アンテナ29が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0035】
コントローラ30の出力側には、刈取装置3を昇降させる油圧シリンダ3Aと、カメラ17で撮影された穀稈を表示するモニタ11と、走行方向の変更を促す警報を鳴らすブザー18と、基準経路41に沿ってコンバインを自動走行させる自動操縦スイッチ35と、操作レバー12の操作に基づいて走行装置2の左右一対のクローラを制動するブレーキ36が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0036】
<基準経路と設定経路の設定>
図5には、圃場40の上部に設定された上下方向に延在する基準経路41と、基準経路41と左右方向に所定の間隔を隔てて、基準経路41と平行に設定された設定経路45を図示している。
【0037】
基準経路41は、圃場40のコンバイン等の搬入場所40Aの下側に設けられた第1基準点42と、第1基準点42の走行方向の下側に位置する第2基準点43を通る直線を上下方向に延在させて設定される。
【0038】
第1基準点42の位置は、作業者がモニタ11のタッチパネル上に表示される第1基準点設定スイッチ11Aを入力操作すると、コントローラ30の処理部31が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星21と基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて算出した後に記憶部32に保存される。
【0039】
第2基準点43の位置は、作業者がモニタ11のタッチパネル上に表示される第2基準点設定スイッチ11Bを入力操作すると、コントローラ30の処理部31が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星21と基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて算出した後に記憶部32に保存される。
【0040】
基準経路41は、第1基準点42と第2基準点43を通る上下方向に延在した直線における第1基準点42と第3基準点44の間に位置する部位である。
【0041】
第3基準点44の位置は、作業者がモニタ11のタッチパネル上に表示される第3基準点設定スイッチ11Cを入力操作すると、コントローラ30の処理部31が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星21と基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて算出した後に記憶部32に保存される。
【0042】
基準経路41における第1基準点42と第2基準点43の間の経路では、作業者がコンバインを手動操縦して手動走行させる。また、基準経路41における第2基準点43と第3基準点44の間の経路では、作業者が直線アシストスイッチ13を入力操作して処理部31がコンバインを自動操縦して基準経路41に沿って自動走行させる。これにより、コンバインの蛇行走行を抑制して、コンバインの蛇行走行による隣接する条に植立された穀稈を踏み倒すのを防止することができる。
【0043】
コンバインが第3基準点44に到達した場合には、作業者は、操作レバー12を操作しコンバインを下方左側から上方左側に向かって略半円弧状に旋回させて、コンバインを基準経路41の第3基準点44から離脱させた後に、コンバインを基準経路41の左側に設定された設定経路45の下端部に移動させる。これにより、直線アシストスイッチ13の入力は解除されて、処理部31の自動操縦から作業者の操縦に切替わる。
【0044】
作業者は、コンバインを設定経路45の下端部に移動させた後に、直線アシストスイッチ13を入力操作すると処理部31がコンバインを自動操縦して設定経路45に沿って自動走行させる。これにより、コンバインの蛇行走行を抑制して、コンバインの蛇行走行による隣接する条に植立された穀稈を踏み倒すのを防止することができる。なお、設定経路45は、基準経路41と平行に設定され、その設定経路45の経路長さも基準経路41の経路長さ、すなわち第1基準点42から第3基準点44の長さと同一長さに設定される。
【0045】
グレンタンク7に装着された穀粒センサ7SCによって満杯になった場合には、自動走行を停止して、作業者が手動操縦してコンバインを圃場に設けられた排出場所46に手動走行させる。
【0046】
<コンバインの操舵方法>
図6に示すように ステップS1で、コントローラ30の処理部31は、直線アシストスイッチ13が入力操作されたか否か判断する。直線アシストスイッチ13が入力操作されていると判断した場合には自動操縦スイッチ35を入力操作してステップS2に進み、直線アシストスイッチ13が入力操作されていないと判断した場合にはステップS1を繰返す。自動操縦スイッチ35を入力操作されると走行装置2は予め設定された設定走行速度で設定経路45等に沿って自動走行を開始する。なお、ステップS1の直前では、作業者が手動操縦してコンバインを手動走行させている。
【0047】
ステップS2で、処理部31は、慣性計測装置16の測定値であるピッチング角度やローリング角度が予め設定した第1設定角度以上であるか否か判断する。ピッチング角度等が第1設定角度以上であると判断した場合にはステップS3に進み、ピッチング角度等が第1設定角度未満であると判断した場合にはステップS1に戻る。これにより、コンバインが水溜まり等が多い圃場を走行しているか否か判断することができる。なお、第1設定角度は-5~5度に設定するのが好ましい。
【0048】
ステップS3で、処理部31は、タイマ34の測定値である経過時間が予め設定した第1設定時間以上であるか否か判断する。経過時間が第1設定時間以上であると判断した場合にはステップS4に進み、経過時間が第1設定時間未満であると判断した場合にはステップS1に戻る。これにより、コンバインが水溜まり等が多い圃場を走行しているか否かより正確に判断することができる。なお、第1設定時間は3~5秒に設定するのが好ましい。
【0049】
ステップS4で、処理部31は、エンジンの出力回転やエンジンと走行装置2の間に設けられた無段変速装置の出力回転を減速して走行装置2の走行速度を設定走行速度から減速してステップS5に進む。これにより、走行装置2のクローラがスリップ等を起こしてコンバインが設定経路45から大きく外れるのを抑制することができる。なお、減速された走行装置2の走行速度は圃場と共にコントローラ30の記憶部32に保存される。これにより、再度、同じ圃場の刈取作業を行う場合には、処理部31は走行装置2の走行速度を記憶部32に保存された走行速度に容易に設定することができる。
【0050】
ステップS5で、処理部31は、慣性計測装置16の測定値であるピッチング角度やローリング角度が予め設定した第2設定角度未満であるか否か判断する。ピッチング角度等が第2設定角度未満であると判断した場合にはステップS6に進み、ピッチング角度等が第2設定角度以上であると判断した場合にはステップS8に進む。これにより、コンバインが水溜まり等が多い圃場の箇所を通過して走行していることを判断することができる。なお、第2設定角度は第1設定角度よりも小さい-3~3度に設定するのが好ましい。
【0051】
ステップS6で、処理部31は、タイマ34の測定値である経過時間が予め設定した第2設定時間以上であるか否か判断する。経過時間が第2設定時間以上であると判断した場合にはステップS7に進み、経過時間が第2設定時間未満であると判断した場合にはステップS8に進む。これにより、コンバインが水溜まり等が多い圃場の箇所を通過して走行していることをより正確に判断することができる。なお、第2設定時間は第1設定時間よりも長い5~10秒に設定するのが好ましい。
【0052】
ステップS7で、処理部31は、エンジンの出力回転やエンジンと走行装置2の間に設けられた無段変速装置の出力回転を増速して走行装置2の走行速度を設定走行速度まで増速してステップS2に戻る。これにより、走行装置2を走行速度を増速して刈取作業の効率を高めることができる。
【0053】
ステップS8で、処理部31は、GPSアンテナ28やデータ送信アンテナ29で受信した位置情報に基づいてコンバインが基準経路41や設定経路45の終端部に位置しているか否か判断する。コンバインが設定経路45等の終端部に到達していると判断した場合にはステップS9に進み、コンバインが設定経路45等の終端部に到達していないと判断した場合にはステップS2に戻る。
【0054】
ステップS9で、処理部31は、刈取装置3の基部に装着されている油圧シリンダ3Aを作動させて刈取装置3を所定の高さ上昇させてステップS10に進む。これにより、コンバインを手動旋回走行中に、刈取装置3の下部が圃場の突出部に衝突を防止して刈取装置3の高さセンサ等が破損するのを防止することができる。
【0055】
ステップS10で、処理部31は、自動操縦スイッチ35の入力操作を解除してステップS11に進む。これにより、自動操縦が停止して作業者による手動操縦によってコンバインを手動走行させることができる。
【0056】
ステップS11で、作業者は、貯留された穀粒がグレンタンク7の容量の75%以上であるか否か判断する。穀粒がグレンタンク7の容量の75%以上、すなわち、穀粒センサ7SBの入力値がONになっている場合にはステップS12に進み、穀粒がグレンタンク7の容量の75%未満、すなわち、穀粒センサ7SBの入力値がOFFになっている場合にはステップS13に進む。なお、穀粒がグレンタンク7の容量の75%以上になった場合に穀粒センサ7SBの入力値をONに設定しているが、70~90%の範囲で設定するのが好ましい。
【0057】
ステップS12で、作業者は、
図7に示すように、設定経路45等の終端部から排出場所46にコンバインを手動走行させ、排出オーガ8を駆動してグレンタンク7に貯留された穀粒をトラックの荷台に排出した後に、排出場所46から次の設定経路45の始端部にコンバインを手動走行させてステップS1に戻る。これにより、設定経路45等の中間部で刈取作業を中断して排出場所46にコンバインを手動走行して刈取作業の効率が低下するのを防止することができる。
【0058】
ステップS13で、処理部31は、作業者が経路シフトスイッチ14を入力操作されていないか否か判断する。経路シフトスイッチ14が入力操作されていないと判断した場合には、ステップS14に進み、経路シフトスイッチ14が入力操作されていると判断した場合には、ステップS15に進む。
【0059】
ステップS14で、作業者は、
図8(a)に示すように、走行装置2の左右一対のクローラに所定の回転速度差を与えて走行装置2を緩やかに手動旋回走行させてステップS1に戻る。これにより、圃場における設定経路45等の終端部や始端部の外側の部位を平坦に維持することができる。なお、
図8(a)は4条刈りを例にとって図示している。
【0060】
なお、走行装置2の左右一対のクローラに所定の回転速度差を与えて走行装置2を緩やかに旋回走行させるのをマイルドターンといい、走行装置2の左右一対のクローラのいずれか一方のクローラの回転速度を停止して旋回走行させるのをブレーキターンといい、走行装置2の左右一対のクローラのいずれか一方のクローラを逆回転速度させて急な旋回走行させるのをスピンターンという。
【0061】
ステップS15で、処理部31は、
図8(b)に示すように、次にコンバインを自動走行させる設定経路45をコンバインが自動走行してきた設定経路45方向に穀稈の条と条の間隔だけ移動させてステップS16に進む。なお、
図8(b)は4条刈りを例にとって図示している。
【0062】
本実施形態では、穀稈が植立された条と、それに隣接する条の間隔が30cmなので、次にコンバインを自動走行させる設定経路45をコンバインが自動走行してきた設定経路45方向に30cm移動させている。なお、条の間隔は30~50cmが好ましい。
【0063】
ステップS16で、作業者は、
図8(b)に示すように、走行装置2の左右一対のクローラに所定の回転速度差を与えて走行装置2を緩やかに手動旋回走行、または、走行装置2の左右一対のクローラのいずれか一方のクローラの回転速度を停止して旋回走行させてステップS1に戻る。これにより、圃場における設定経路45等の終端部や始端部の外側の部位を平坦に維持することができ、また、圃場に植立された穀稈を確実に刈取って未刈穀稈を削減することができる。
【0064】
図9に示すように、操縦部5に設けられたカメラ17で撮影された画像は、所定の画像処理が行われた後、穀稈の倒伏方向と、穀稈の姿勢がモニタ11に表示され。穀稈の姿勢は、穀稈が真っすぐに起立した姿勢P0から穀稈が完全に倒伏した姿勢P5まで6段階に層別されて表示される。
【0065】
カメラ17は走行装置2の走行速度が速い場合にはコンバインの前方の遠位部を撮影し、走行速度が遅い場合にはコンバインの前方の近位部を撮影する。なお、走行速度が2m/秒の場合にはコンバインの前方4mを撮影し、走行速度が1m/秒の場合にはコンバインの前方2mを撮影するのが好ましい。
【0066】
姿勢P0~P3の場合は、穀稈の穂先が穀稈の株元の切断高さよりも上方に位置しているので、コンバインを自動走行等させて穀稈を追い刈り、向い刈りすることができる。一方、姿勢P4,5の場合には、穀稈の穂先が穀稈の株元の切断高さよりも下方に位置しているので、コンバインを自動走行等させて穀稈を向い刈りした場合には、刈取装置3に多くの穀稈の穂先が絡み合って脱粒する。
【0067】
コントローラ30の処理部31は、姿勢P4、5の場合には、穀稈の倒伏方向と穀稈の姿勢に基づいて、コンバインの走行方向が穀稈の株元から穂先に向かう追刈り方向と一致していないと判断した場合にはブザー18を作動して警報を行う。これにより、刈取作業時に発生する穀粒ロスを低減することができる。
【0068】
<第1実施形態のスクレーパ>
図10,11に示すように、刈取装置3の下部に設けられた穀稈の株元を後方に搬送する外周部が波形状に形成されたスターホイール(図示省略)の下面には、スターホイールに絡み付いた穀稈の株元を剥がしとる第1実施形態のスクレーパ50が設けられている。
【0069】
スクレーパ50は、スターホイールの下側に設けられた支持部材に取り付けるフランジ部51と、スクレーパ本体52から形成されている。スクレーパ本体52は、前プレート52Aと、前プレート52Aの左部から後方左側に向かって延在する左プレート52Bと、前プレート52Aの右部から後方右側に向かって延在する右プレート52Cから形成されている。これにより、スターホイールに絡み付いた穀稈の株元を効率良く剥がしとって後方に搬送することができる。また、左プレート52Bと右プレート52Cにはそれぞれ後上がりの切欠き部が形成されている。
【0070】
<第2実施形態のスクレーパ>
図12,13には、第2実施形態のスクレーパ50が図示されている。第1実施形態のスクレーパ50と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
第2実施形態のスクレーパ50は、スクレーパ本体52の前プレート52Aの後側に矩形状のプレート55が設けられている。プレート55の上部はスプリン等の付勢部材56を介し左右方向に延在する支持パイプ57に支持され、支持パイプ57の両側部は、左プレート52Bと右プレート52Cに形成された開口部に挿通されている。これにより、スターホイールに絡み付いた穀稈の株元をより効率良く剥がしとって後方に搬送することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
5 操縦部
7 グレンタンク
12 操作レバー
13 直線アシストスイッチ
14 経路シフトスイッチ
16 慣性計測装置(計測装置)
17 カメラ
18 ブザー
30 コントローラ
45 設定経路