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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117132
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20240822BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240822BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023046
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今津 貴雅
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA21
3D241BA57
3D241CD07
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB02Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DD12Z
(57)【要約】
【課題】自動駐車制御を実行可能な駐車支援装置の利便性を向上させる。
【解決手段】駐車支援装置20は、車両10を駐車可能な駐車スロットPSが検出された場合に車両10を駐車スロットPSの入口に移動させ、駐車スロットPSの入口において、駐車スロットPSに設置されている特定物600により駐車スロットPSに車両10を駐車できない状態であることを示す中断条件が成立しているかを判定し、中断条件が成立していると判定した場合、駐車スロットPSの入口から駐車スロットPSへの走行を開始せず、かつ、中断条件が成立しているか否かの判定を継続し、その後に中断条件が成立していないと判定した場合、駐車スロットPSの入口から駐車スロットPSへの自動運転による車両10の走行を開始する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転により車両を駐車スロットに駐車するように前記車両を制御する自動駐車制御を実行可能な制御装置を有する駐車支援装置であって、前記制御装置は、
前記車両を駐車可能な駐車スロットを検出し、
前記検出した駐車スロットに前記車両が駐車されるように前記自動駐車制御を実行し、
前記検出した駐車スロットに設置されている特定物により前記駐車スロットに前記車両を駐車できない状態であることを示す中断条件が成立している場合に前記自動駐車制御の実行を中断し、
前記自動駐車制御の実行を中断した後に前記中断条件が成立していない場合に前記自動駐車制御の実行を再開する、
駐車支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駐車支援装置であって、
前記制御装置は、前記駐車スロットを検出した場合に前記車両を前記駐車スロットの入口に移動させ、
前記駐車スロットの入口において、前記中断条件が成立しているかを判定し、
前記中断条件が成立していると判定した場合、前記自動駐車制御の実行による前記駐車スロットの入口から前記駐車スロットへの前記自動運転による走行を開始せず、
前記中断条件が成立していると判断した後に前記中断条件が成立していないと判定した場合、前記自動駐車制御の実行による前記駐車スロットの入口から前記駐車スロットへの自動運転による前記車両の走行を開始する、
駐車支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の駐車支援装置であって、
前記中断条件が成立していると判定した場合に前記中断条件の成立を報知する処理を実行する、
駐車支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駐車支援装置であって、
前記中断条件が成立していると判定した後に前記中断条件が成立していないと判定した場合、前記車両の自動運転による前記駐車スロットへの走行が可能になったことを報知する処理を実行する、
駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車支援装置は、目標駐車位置に設定された駐車スロットに車両が駐車されるように車両の運転操作の少なくとも一部または全部を実行する自動駐車制御を実行可能に構成される。なお、1つの駐車スロットは1台の車両の駐車が想定されるスペースである。このような駐車支援装置に関連し、標準規格であるISO20900(Partially automated parking systems:PAPS)やISO16787(Assisted parking systems: APS)には、車両の駐車にかかわる車両制御について規定されている。
【0003】
特許文献1に記載の駐車支援装置は、車両の乗員の予定情報を取得し、取得した予定情報に基づいて、乗員が乗降しやすいように、乗員が乗車する際の車両の態様又は乗員が降車する際の車両の態様を決定するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-149225号公報
【発明の概要】
【0005】
駐車スロットにパイロンが設置してある場合や、駐車スロットの地上ロッカーが駐車を規制する状態である場合、その状態で車両を駐車スロットに駐車することはできない。この場合、運転者は、当該駐車スロットに駐車するために、降車してパイロンを撤去し、或いは地上ロッカーを車両の駐車を許容する状態に変更する。しかしながら、運転者が車両ドアを開放して車両から降車した場合には駐車支援制御が中止されるため、運転者は車両に乗車した後に駐車支援制御を開始するための操作を最初から行わなければならない。このため操作が煩わしいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決し得る駐車支援装置を提供することを目的とする。すなわち本発明は、駐車支援制御を実行可能な駐車支援装置の利便性を向上させることを目的とする。
【0007】
本発明に係る駐車支援装置は、自動運転により車両を駐車スロットに駐車するように前記車両を制御する自動駐車制御を実行可能な制御装置を有する駐車支援装置であって、前記制御装置は、前記車両を駐車可能な駐車スロットを検出し、前記検出した駐車スロットに前記車両が駐車されるように前記自動駐車制御を実行し、前記検出した駐車スロットに設置されている特定物により前記駐車スロットに前記車両を駐車できない状態であることを示す中断条件が成立している場合に前記自動駐車制御の実行を中断し、前記自動駐車制御の実行を中断した後に前記中断条件が成立していない場合に前記自動駐車制御の実行を再開する。なお、本発明において、「中断条件が成立している場合に自動駐車制御の実行を中断する」とは、自動駐車制御の実行中に中断条件が成立している場合に自動駐車制御の実行を中断することのみならず、自動駐車制御の実行前に中断条件が成立している場合に自動駐車制御の実行による車両の走行を開始しないことを含む概念である。
【0008】
本発明に係る駐車支援装置によれば、目標駐車位置である駐車スロットが特定物によって車両を駐車できない状態である場合、自動駐車制御の実行による車両の走行を開始しないかまたは一時的に中断する。そして、その後に車両を駐車できない状態が解消した場合、自動駐車制御による車両の走行を開始または再開できる。このように、本発明に係る駐車支援装置は、目標駐車位置である駐車スロットが特定物によって車両を駐車できない状態であっても駐車支援制御を中止(車両の駐車が完了する前の段階で駐車支援制御を終了することをいう)しないため、運転者は、駐車支援制御を開始する操作を最初から行うことなく、駐車支援制御を継続できる。したがって、駐車支援制御の利便性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、車両および駐車支援装置の構成を示す図である。
図2図2は、駐車スロットの例を示す模式図である。
図3図3(a)は車両が駐車スロットの間口で停止した状態を示し、図3(b)は図3(a)に対応する設定画像の例を示す図である。
図4図4は、中断画像の例を示す図である。
図5図5は、再開画像の例を示す図である。
図6図6は、駐車ECUのCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、車両10および車両10に搭載される駐車支援装置20の構成例を示す図である。駐車支援装置20は、自動運転機能を備える車両10に搭載される。駐車支援装置20は、駐車ECU201、PVM(パノラミックビューモニタ)・ECU202、駆動ECU203、SWB(シフトバイワイヤ)・ECU204、ブレーキECU205、EPS(エレクトリックパワーステアリング)・ECU206、NAVI(ナビゲーション装置)207、支援要求スイッチ210、周辺センサ(ソナーセンサ211およびカメラ212)、駆動装置240、シフト装置241、ブレーキ装置242、およびステアリング装置243を備える。なお、ECUは、エレクトロニックコントロールユニット(Electronic Control Unit)の略である。各ECUは、CPU、ROM、RAM、及びI/Fを含むマイクロコンピュータを主要構成として備える制御装置である。各ECUは、CPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを読み出し、RAMに展開して実行することにより、所定の制御を実現できるように構成される。各ECUは、CAN(Controller Area Network)を介して互いに信号を送受信可能に接続される。
【0011】
駐車ECU201は、自動駐車制御を含む駐車支援制御を実行可能に構成される制御装置である。自動駐車制御には、駐車ECU201が自動駐車制御の開始指示を検出した場合に、駆動装置240、シフト装置241、ブレーキ装置242、およびステアリング装置243の少なくとも1つを、運転者の操作によらずに制御することにより、駐車目標位置に設定された駐車スロットに車両10を駐車する制御が含まれる。従って、駆動装置240、シフト装置241、ブレーキ装置242、ステアリング装置243の全ての制御を運転者の操作によらずに実行する制御も自動駐車制御であり、例えばステアリング装置243のみの制御を運転者の操作によらずに実行する制御も自動駐車制御である。また、自動駐車制御は、後述する探索処理および自動運転を含む制御である。なお、駐車ECU201は、複数のECUにより構成されてもよい。
【0012】
支援要求スイッチ210は、乗員が駐車支援装置20に対して駐車支援制御の開始を指示する際に操作するスイッチである。支援要求スイッチ210は、車内の運転席に着座する運転者が操作しやすい位置に配置される。また、支援要求スイッチ210には、押し釦スイッチなどといったハードウェアスイッチが適用される。駐車ECU201は、支援要求スイッチ210に対する操作を検出できる。
【0013】
周辺センサは、車両10の周辺の情報(以下、「周辺情報」と記すことがある)を取得するためのセンサである。周辺情報は、車両10の周辺領域(車両10の位置から所定の距離の範囲内)に存在する物体(立体物)についての情報、車両10の周辺領域の路面上の表示(路面標示や区画線など)についての情報、および駐車スロットについての情報を含む。また、物体についての情報は、車両10と物体との間の距離、車両10から見た物体の方向を含む。駐車スロットについての情報は、駐車スロットの形状および寸法を示す情報、駐車スロットに設置されている特定物600(後述)についての情報を含む。周辺センサには、複数のソナーセンサ211および複数のカメラ212(なお、図1では簡略化のため1つのソナーセンサ211および1つのカメラ212を示す)が含まれる。
【0014】
各ソナーセンサ211は、超音波を間欠的に車両10の周辺領域に放射し、車両10の周辺領域に存在する物体で反射した超音波(反射波)を受信するように構成される。各ソナーセンサ211は、超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、車両10と物体との相対的な位置関係等を取得する。駐車ECU201は、各ソナーセンサ211により検出された周辺情報を取得できる。なお、複数のソナーセンサ211は、車両10の周辺の全ての方向について周辺情報を取得できるように(車両10のほぼ全周にわたる範囲に超音波を放射できるように)配置される。
【0015】
各カメラ212は、車両10の周辺領域を撮影して画像データを生成する。カメラ212は、例えば、CCD(charge coupled device)或いはCIS(CMOS image sensor)により構成される撮像素子を内蔵するデジタルカメラ212である。複数のカメラ212は、車両10の全方向の周辺領域を撮影することができるように配置される。PVM・ECU202は、各カメラ212が生成した画像データを継続的に取得できる。
【0016】
PVM・ECU202は、各カメラ212から取得した画像データに対して画像処理を施すことにより周辺情報を取得する。また、PVM・ECU202は、各カメラ212から取得した画像データに対して画像処理を施すことにより、検出された物体が特定物600であるか否かの判定、ならびに特定物600の種類および状態の判定が可能である。なお、PVM・ECU202は、各カメラ212からの画像データの取得と、取得した画像データに対する画像処理とを継続的に実行することにより、継続的に(換言すると略リアルタイムで)周辺情報の取得をできる。
【0017】
ここで本実施形態に係る特定物600について説明する。特定物600は、駐車スロットPSに設置される物体および設備であり、例えば、特定の車両の駐車を許容するがそれ以外の車両の駐車を禁止することを示すために用いられる。特定物600には、駐車スロットPSに設置される可搬物、および駐車スロットPSに設置され当該駐車スロットPSへの駐車を許容する状態(駐車許容状態)と当該駐車スロットPSへの駐車を規制する状態(駐車規制状態)とに変更可能な設備が含まれる。特定物600としての可搬物には、パイロン、バリアポップサイン(駐車場バリア)、およびフロアサインなど、人力で移動可能な物体が含まれる。また、特定物600としての設備には、地上ロッカー(駐車場ロック、駐車場バリア、駐車場パイル、駐車杭などと称されることもある)が含まれる。地上ロッカーは、駐車スロットPSへの車両10の駐車を規制(禁止)する駐車規制状態と、駐車場への車両10の駐車を許容する駐車許容状態と、に切り替え可能に構成される設備である。例えば、地上ロッカーは、駐車スロットPSの路面に対して回転可能に設けられる部材を備え、当該部材を路面に対して起立させることにより駐車規制状態になり、当該部材を倒す(路面に沿うように寝かせる)ことにより駐車許容状態になるように構成される。
【0018】
そして、PVM・ECU202は、検出された物体が特定物600であるか否かを判定できるとともに、検出された物体が特定物600としての設備である場合には、当該設備が駐車許容状態であるか駐車規制状態であるかを判定できる。駐車ECU201は、PVM・ECU202から当該判定結果を取得できる。
【0019】
NAVI207は、NAVI・ECU222および表示装置223を備える。NAVI・ECU222は表示装置223を制御する。表示装置223は、各種情報を表示すると共に運転者が各種指示を入力可能なタッチパネル式の表示装置である。駐車ECU201は、NAVI・ECU222を介して表示装置223に各種の画像を表示させることができるとともに、表示装置223の画面に対する操作(タップなど)を検出できる。
【0020】
車速センサ213は、車両10の走行速度を検出できる。駐車ECU201は、車速センサ213が検出した車両10の走行速度を継続的に取得できる。駆動ECU203は車速センサ213に接続されており、車速センサ213により検出された車速を取得できる。
【0021】
駆動ECU203は、駆動装置240を制御するように構成される制御装置である。駆動装置240は、車両10の走行用の駆動力源215と、この駆動力源215を制御する駆動アクチュエータ214とを備える。そして、駆動ECU203は、駐車ECU201から送信される指令に応じて駆動アクチュエータ214を駆動できるように構成される。
【0022】
SBW・ECU204は、シフト装置241を制御するように構成される制御装置である。シフト装置241は、駆動力源215の出力する駆動力をシフトレンジに応じて調整して駆動輪に伝達するトランスミッション217と、駆動することによりトランスミッション217のシフトレンジを変更するSBWアクチュエータ216とを備える。そして、SBW・ECU204は、駐車ECU201から送信される指令に応じてSBWアクチュエータ216を制御することによりトランスミッション217のシフトレンジを変更できるように構成される。
【0023】
ブレーキECU205は、ブレーキ装置242を制御するように構成される制御装置である。ブレーキ装置242は、動作することにより車輪に対して制動力を付与するブレーキ機構219と、ブレーキ機構219を動作させるブレーキアクチュエータ218とを備える。そして、ブレーキECU205は、駐車ECU201から送信される指令に応じてブレーキアクチュエータ218を駆動することにより、ブレーキ機構219による車両10の制動力を制御できる。
【0024】
EPS・ECU206は、ステアリング装置243を制御するように構成される制御装置である。ステアリング装置243は、車両10の操舵輪を操舵するための装置であり、動作することにより操舵輪の舵角を変更する転舵モータ221と、転舵モータ221を駆動する転舵モータドライバ220とを備える。そして、EPS・ECU206は、駐車ECU201から送信される指令に応じて転舵モータドライバ220を制御して転舵モータ221を駆動することにより、車両10の操舵輪の舵角を制御できる。
【0025】
次に、駐車支援制御の内容について説明する。ここでは、図2に示すように、並列に設けられる複数の駐車スロットPSのうちの1つに車両10を駐車する例を示す。この場合、車両10の運転者は、複数の駐車スロットPSが設けられた駐車場に車両10を進入させて停止させ、その後、支援要求スイッチ210を操作する。駐車支援装置20は、支援要求スイッチ210への操作を検出すると駐車支援制御を開始する。
【0026】
駐車支援制御を開始した場合、駐車ECU201は、車両10を自動運転により走行させながら探索処理を実行する。探索処理では、駐車ECU201は、駆動ECU203、SBW・ECU204、ブレーキECU205、およびEPS・ECU206と協働して車両10の駆動装置240、ブレーキ装置242、およびステアリング装置243を制御する(換言すると、駐車ECU201は、駆動ECU203、SBW・ECU204、ブレーキECU205、およびEPS・ECU206に対して車両10の駆動装置240、ブレーキ装置242、およびステアリング装置243を制御するための指令信号を送信する)。そして、駐車ECU201は、車両10を自動運転により走行させながら、周辺センサにより取得される周辺情報に基づいて駐車スロットPSを探索する。なお、探索処理の方法は公知である(例えば、特開2021-62736号公報や、特開2021-62715号公報を参照)。なお、駐車ECU201は、探索処理により駐車スロットPSが検出された後に車両10を自動運転により車両10を走行させてもよい。
【0027】
なお、駐車スロットPSは、車両10を駐車可能な寸法および形状を備えるが、特定物600の存在が原因で車両10を駐車できない状態である場合がある。例えば、特定物600としてパイロンや駐車バリアサインなどの可搬物が駐車スロットPSに設置されている場合、特定物600として駐車スロットPSに設置されている地上ロッカーが駐車規制状態である場合等には、駐車スロットPSに車両10を駐車することができない。このような場合、特定物600を撤去するか、特定物600の状態を駐車許容状態に変更することにより、車両10を当該駐車スロットPSに駐車できるようになる。探索処理では、このような「特定物600により車両10を駐車できない状態の駐車スロットPS」も、車両10を駐車可能な駐車スロットPSとして探索する。なお、特定物600に阻害されることなく車両10を駐車できる状態を「即時駐車可能」と記し、特定物600を撤去または特定物600の状態を変更すれば駐車できる状態を「条件付駐車可能」と記して区別することがある。また、単に「駐車可能」と記す場合には「即時駐車可能」と「条件付駐車可能」の両方が含まれる。
【0028】
駐車ECU201は、駐車可能な駐車スロットPSが検出された場合、当該駐車スロットPSの周辺領域内の所定位置に車両10を停止させるとともに探索処理を終了する。図3(a)は、検出された駐車可能な駐車スロットPSの周辺領域内の所定位置にて停車した車両10を示す図である。図3(a)に示す例では、検出された駐車可能な駐車スロットPSの間口(入口)に車両10の左側面が正対するように、駐車スロットPSの近傍位置に車両10が停車している。駐車スロットPSに対する車両10の停車位置は、車両10の運転席に着座している運転者が駐車スロットPSを目視確認できる位置であるとよい。
【0029】
駐車ECU201は、車両10を停止させた後、表示装置223に設定画像500を表示させる。図3(b)は、図3(a)に示す状態に対応する設定画像500の例を示す図である。設定画像500は、検出された駐車可能な駐車スロットPSを目標駐車位置として確定するための操作の受付け、および駐車支援制御に含まれる自動駐車制御の開始の指示の受付けのための画像である。設定画像500には、仮想視点画像501、車両図形画像502、シンボル図形画像503、および開始スイッチ図形画像504が含まれる。仮想視点画像501は、検出された駐車スロットPSを含む周辺領域を所定の仮想視点から見た画像であり、図3(a)では車両10の真上に位置する仮想視点から見た画像を示す。仮想視点画像501は、PVM・ECU202が各カメラ212から取得した画像データを用いて生成する。なお、仮想視点画像501の生成方法は従来公知である(例えば、特開2012-217000号公報、特開2016-192772号公報、および特開2018-107754号公報等を参照)。
【0030】
車両図形画像502は、車両10を示す図形である。車両図形画像502は、仮想視点画像501に重畳して表示されることにより、車両10と周辺の物体や路面標示等との位置関係を示す。シンボル図形画像503は、検出された駐車可能な駐車スロットPSの位置を示す画像(アイコン)であり、仮想視点画像501に含まれる駐車スロットPSに重畳して表示される。なお、駐車ECU201は、複数の駐車可能な駐車スロットPSを検出した場合には、複数の駐車スロットPSのそれぞれにシンボル図形画像503を重畳して表示する。開始スイッチ図形画像504は、自動運転により車両10の駐車スロットPSへの駐車の開始を指示するための画像(アイコン)である。
【0031】
駐車ECU201は、検出した駐車スロットPSを目標駐車位置に設定する。なお、複数の駐車スロットPSが検出されている場合には、そのうちの一つの駐車スロットPSが目標駐車位置に設定される。この場合、駐車ECU201は、複数の駐車スロットPSに対応するシンボル図形画像503のいずれかに対する操作(具体的にはタップ)を検出すると、当該シンボル図形画像503に対応する駐車スロットPSを、目標駐車位置として選択する。駐車ECU201は、開始スイッチ図形画像504への操作(タップ)を検出すると、駐車目標位置に設定されている駐車スロットPSを、車両10を駐車する駐車スロットPSに確定する。
【0032】
さらに、駐車ECU201は、開始スイッチ図形画像504への操作を検出すると、車両10の現在の位置から目標駐車位置として確定された駐車スロットPSに車両10を駐車させるための車両10の誘導経路を演算するとともに、車両10を誘導経路に沿って駐車スロットPSに自動走行させるための操舵角パターンおよび速度パターンを演算する。誘導経路、操舵角パターンおよび速度パターンの演算方法には、公知の方法が適用できる(例えば、特開2015-3565号公報参照)。
【0033】
駐車ECU201は、開始スイッチ図形画像504への操作を検出した場合、PVM・ECU202から、駐車スロットPS内に特定物600が存在するか否かの判定結果を取得し、さらに特定物600が存在する場合には当該特定物600の種類および状態の判定結果を取得する。そして、駐車ECU201は、駐車スロットPS内に特定物600が存在し、かつ当該特定物600が可搬物である場合、または当該特定物600の状態が駐車規制状態である場合、自動駐車制御を一時的に中断する条件である中断条件が成立したと判定する。具体的には、駐車ECU201は、「駐車スロットPSに可搬物である特定物600が設置されている場合」、または「駐車スロットPSに地上ロッカー(特定物600)が設置されており、かつ、当該地上ロッカーが駐車規制状態である場合」に中断条件が成立していると判定する。
【0034】
駐車ECU201は、開始スイッチ図形画像504への操作の検出後に中断条件が成立していないと判定した場合(換言すると、駐車スロットPSが即時駐車可能な状態である場合)、駐車支援制御に含まれる自動駐車制御を開始する。すなわち、駐車ECU201は、演算した誘導経路に沿って車両10が走行するように、駆動ECU203、SBW・ECU216、ブレーキECU205、およびEPS・ECU206と協働して車両10の駆動装置240、ブレーキ装置242、およびステアリング装置243を制御する(すなわち、自動運転する)。これにより、車両10は目標駐車位置に特定された駐車スロットPSに収まるように走行を開始する。駐車ECU201は、車両10が自動運転により走行して目標駐車位置に到達した場合、車両10の走行を停止させる。そして、駐車ECU201は、駐車支援制御を終了する。
【0035】
一方、駐車ECU201は、開始スイッチ図形画像504への操作の検出後に中断条件が成立していると判定した場合、自動駐車制御を開始しない。そしてこの場合には、駐車ECU201は、中断条件の成立を報知する処理として、表示装置223に中断画像510を表示する。図4は中断画像510の例を示す図である。図4に示すように、中断画像510は、自動駐車制御を一時的に中断したことを報知する中断メッセージ511が含まれる画像である。運転者は、自動駐車制御を開始させるためには、いったん降車し、駐車スロットPSに設置されている特定物600を撤去するか、または特定物600の状態を駐車許容状態に変更する。
【0036】
駐車ECU201は、開始スイッチ図形画像504への操作を検出してから車両10が目標駐車位置に到達して停止するまでの間、表示装置223に中断画像510を表示している間も含み、中断条件が成立しているか否かの判定を継続する。PVM・ECU202は、「駐車スロットPSに特定物が存在するか否かの判断」および「特定物600が存在する場合には当該特定物の種類と状態の判断」を継続的に行うため、駐車ECU201は、「現時点で存在する特定物600の種類および状態」をリアルタイムで取得できる。このため、降車した運転者等が特定物600を撤去するなどして駐車スロットPSが即時駐車可能な状態になると、駐車ECU201は中断条件が成立していないと判定する。そして、駐車ECU201は、いったん中断条件が成立していると判定し、その後、中断条件が成立していないと判定した場合、駐車スロットPSへの走行が可能になったことを示す処理として、図5に示すように、中断画像510を消去し、再開画像520を表示する。再開画像520には、再開スイッチ図形画像521が含まれる。再開スイッチ図形画像521は、運転者が自動駐車制御の再開を指示するための画像である。
【0037】
そして、駐車ECU201は、再開スイッチ図形画像521への操作を検出すると、自動駐車制御を開始する。これにより、車両10の自動駐車制御が開始する。駐車ECU201は、車両10が目標駐車位置に到達すると、車両10の走行を停止させ、駐車支援制御を終了する。
【0038】
なお、駐車ECU201は、開始スイッチ図形画像504に対する操作を検出した時点では特定物600が検出されなかったために中断条件が成立していないと判定したが、自動駐車制御の開始後(すなわち、車両10の自動運転による走行の開始後)に特定物600が検出されたため中断条件が成立していると判定することがある。このような場合には、駐車ECU201は、中断条件が成立していると判定した時点にて自動駐車制御の実行を中断し、車両10の走行を停止させ、表示装置223に中断画像510を表示する。そして、駐車ECU201は、その後に中断条件が成立しなくなったと判定した場合には、中断画像510を消去して再開画像520を表示する。そしてその後、駐車ECU201は、再開スイッチ図形画像521に対する操作を検出すると、自動駐車制御を再開する。したがって、自動駐車制御の開始後に中断条件が成立して自動駐車制御が中断(車両10の走行が停止)した場合にも、車両10の運転者は、降車して特定物600を撤去するか特定物600の状態を駐車許容状態に変更し、その後乗車して再開スイッチ図形画像521を操作することにより、自動駐車制御を再開させることができる。このように、駐車支援装置20は、中断条件が成立したと判定した場合、乗員が降車した場合(すなわち、車両ドアの開放が検出された場合)であっても、自動駐車制御を中止しない。なお、自動駐車制御の中止とは、車両10が目標駐車位置に確定された駐車スロットPSに到達するよりも前に(到達することなく)自動駐車制御を終了することをいう。
【0039】
次に、駐車支援装置20の具体的な動作の例について説明する。図6は、上記した自動駐車制御を実行するために、駐車ECU201のCPU(以下、「CPU」と称呼する。)が実行するルーチンの一例を示すフローチャートである。CPUは、開始スイッチに対する操作を検出すると、このフローチャートに示されるルーチンの実行を開始する。
【0040】
S101において、CPUは、自動運転による車両の走行および探索処理を開始し、既に開始している場合には継続する。そして、CPUは、処理をステップS102に進める。
【0041】
ステップS102において、CPUは、探索処理により車両10を駐車可能な駐車スロットPSが検出されたか否かを判定する。CPUは、車両10を駐車可能な駐車スロットPSが検出された場合には処理をステップS103に進め、検出されなかった場合には処理をステップS101に戻す。
【0042】
ステップS103において、CPUは、表示装置223に設定画像500を表示し、表示した設定画像500に含まれるシンボル図形画像503および開始スイッチ図形画像504への操作を受け付ける。そしてCPUは処理をステップS104に進める。
【0043】
ステップS104において、CPUは、開始スイッチ図形画像504への操作があったか否かを判定する。CPUは、開始スイッチ図形画像504への操作があった場合には処理をステップS105に進め、タップがない場合には処理をS103に戻す。
【0044】
ステップS105において、CPUは、選択されたシンボル図形画像503に対応する駐車スロットPSを目標駐車位置に設定する。そして、CPUは、誘導経路を演算するとともに、車両10を誘導経路に沿って走行させるための操舵角パターンおよび速度パターンを演算する。そしてCPUは、処理をステップS106に進める。
【0045】
ステップS106において、CPUは、中断条件が成立しているか否かを判定する。そして、CPUは、中断条件が成立していないと判定した場合には処理をステップS107に進め、中断条件が成立していると判定した場合には処理をステップS110に進める。なお、PVM・ECU202は、取得した画像データに基づいて駐車スロットPSに特定物600が存在するか否かの判定と、特定物600が存在する場合にはその種類および状態の特定とを、継続的に実行している。そして、CPUは、PVM・ECU202から、その結果を継続的に取得している。
【0046】
ステップS107において、CPUは、自動運転により車両10を誘導経路に沿って走行させる。なお、CPUは、自動運転を既に開始している場合には、自動運転を継続する。そして、CPUは、処理をステップS108に進める。
【0047】
ステップS108にて、CPUは、車両10が目標駐車位置に到達したか否かを判定する。CPUは、車両10が目標駐車位置に到達していないと判定した場合、処理をステップS106に戻す。一方、CPUは、車両10が目標駐車位置に到達したと判定した場合、処理をステップS109に進める。
【0048】
ステップS109において、CPUは、車両10の走行を停止させ、この一連の処理を終了する。
【0049】
ステップS110において、CPUは、自動運転により車両10が走行している場合には車両10を停止させ、車両10が停止している場合には車両10の停止を継続する。そして、CPUは、表示装置223に中断画像510を表示する。そして、CPUは、処理をステップS111に進める。
【0050】
ステップS111において、CPUは、中断条件が成立しているか否かを判定する。そして、CPUは、成立していると判定した場合(ステップS106において成立していると判定した中断条件が現在も成立している場合も含む)、処理をステップS110に戻す。この場合、CPUは、車両10の走行の停止および中断画像510の表示を継続する。一方、CPUは、中断条件が成立していないと判定した場合、処理をステップS112に進める。
【0051】
ステップS112において、CPUは、中断画像510を消去し再開スイッチ図形画像521の表示を開始する。なお、CPUは、既に中断画像510の表示を開始している場合には表示を継続する。そしてCPUは、処理をステップS113に進める。
【0052】
ステップS113において、CPUは、再開スイッチ図形画像521への操作があったか否かを判定する。CPUは、再開スイッチ図形画像521への操作がないと判定した場合、処理をステップS112に戻す。一方、CPUは、再開スイッチ図形画像521への操作があったと判定した場合、処理をステップS107に進める。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る駐車支援装置20は、駐車支援制御の開始要求を検出すると、車両10を自動運転により走行させながら周辺センサにより車両10を駐車可能な駐車スロットPSを探索する探索処理を実行する。そして、駐車支援装置20は、探索処理により駐車可能な駐車スロットPSが検出された場合、自動運転により当該駐車スロットPSに車両10を駐車する自動駐車制御を実行する。この際、中断条件が成立していれば(すなわち、目標駐車位置として確定された駐車スロットPSが条件付駐車可能状態であれば)、自動駐車制御を開始せず、自動駐車制御の開始後であれば自動駐車制御を中断し、中断条件が成立しなくなるまで待機する。そして、駐車支援装置20は、中断条件が成立しなくなった場合、自動駐車制御を開始または再開する。
【0054】
本実施形態に係る駐車支援装置20によれば、目標駐車位置として確定した駐車スロットPSが特定物600によって駐車できない場合であっても、運転者等が降車して当該特定物600を撤去するか、または当該特定物600の状態を駐車許容状態に変更することにより、自動駐車制御を開始または再開できる。すなわち、駐車支援装置20は、目標駐車位置として確定した駐車スロットPSが特定物600によって駐車できない場合であっても、駐車支援制御を中止(終了)しない。このため、運転者は、駐車支援制御を開始する操作および、車両10を駐車する駐車スロットPSを確定する操作を最初から行うことなく、駐車支援制御を継続できる。したがって、駐車支援制御の利便性の向上を図ることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定解釈されるべきではない。また、本開示の技術は、標準規格であるISO20900(Partially automated parking systems:PAPS)やISO16787(Assisted parking systems:APS)に準拠する技術への適用が可能な技術である。
【符号の説明】
【0056】
10…車両、20…駐車支援装置、201…駐車ECU、202…PVM・ECU、203…駆動ECU、204…SBW・ECU、205…ブレーキECU、206…EPS・ECU、207…NAVI、210…支援要求スイッチ、222…NAVI・ECU、600…特定物、PS…駐車スロット
図1
図2
図3
図4
図5
図6