(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011714
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】絶縁基板及びサーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113949
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC03
2C065JC09
(57)【要約】
【課題】セラミック層の外周縁にある主面上においてグレーズ層の隆起を抑制することが可能な絶縁基板を提供する。
【解決手段】絶縁基板100は、主面10aを有するセラミック層10と、主面10a上に配置されているグレーズ層20とを備えている。セラミック層10の外周縁10cにある主面10aには、外周溝11が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するセラミック層と、
前記主面上に配置されているグレーズ層とを備えており、
前記セラミック層の外周縁にある前記主面には、外周溝が形成されている、絶縁基板。
【請求項2】
前記グレーズ層の厚さは、150μm以上である、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項3】
前記外周溝の深さは、前記グレーズ層の厚さの0.2倍以上である、請求項2に記載の絶縁基板。
【請求項4】
前記外周溝の幅は、前記グレーズ層の厚さの60倍以上である、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項5】
前記主面には、複数の第1直線溝がさらに形成されており、
前記複数の第1直線溝は、前記セラミック層の長手方向である第1方向に延在し、かつ前記第1方向に直交している第2方向において間隔を空けて並んでいる、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項6】
前記主面には、複数の第2直線溝がさらに形成されており、
前記複数の第2直線溝は、前記第2方向に延在し、かつ前記第1方向において間隔を空けて並んでいる、請求項5に記載の絶縁基板。
【請求項7】
前記グレーズ層上に配置されている金属層をさらに備えている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の絶縁基板。
【請求項8】
主面を有するセラミック層と、
前記主面上に配置されているグレーズ層と、
前記グレーズ層上に配置されている共通電極及び個別電極と、
前記共通電極及び前記個別電極に電気的に接続されている発熱体とを備えており、
前記セラミック層の外周縁にある前記主面には、溝が形成されている、サーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記外周縁は、前記セラミック層の長手方向である第1方向に沿う第1辺及び第2辺と前記第1方向に直交している第2方向に沿う第3辺及び第4辺とを有している矩形状であり、
前記溝は、前記第1辺、前記第2辺、前記第3辺及び前記第4辺の少なくともいずれかにある前記主面に形成されている、請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁基板及びサーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2022-78589号公報(特許文献1)には、サーマルプリントヘッドが記載されている。特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドには、絶縁基板が用いられる。絶縁基板は、セラミック層と、グレーズ層とを有している。グレーズ層は、セラミック層の主面上に配置されている。グレーズ層は、ガラスを含有しているペーストをセラミックス層の主面上に塗布するとともに、当該ペーストを焼成することで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グレーズ層を形成する際、ペースト中の溶剤は、セラミック層の外周縁にある主面上において蒸発しやすい。そのため、ペースト中では、セラミック層の外周縁へと向かう溶剤の流れが生じる。この流れに伴い、ペーストに含まれているガラスが、セラミック層の外周縁にある主面上に運ばれる。このように、セラミック層の外周縁にある主面上においてグレーズ層が隆起する現象(コーヒーリング現象)が生じることがある。セラミック層の外周縁にある主面上においてグレーズ層が隆起すると、セラミック層の外周縁の近傍をサーマルプリントヘッドの製造に用いることが困難となる。
【0005】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、セラミック層の外周縁にある主面上においてグレーズ層の隆起を抑制することが可能な絶縁基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の絶縁基板は、主面を有するセラミック層と、主面上に配置されているグレーズ層とを備えている。セラミック層の外周縁にある主面には、外周溝が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の絶縁基板によると、セラミック層の外周縁にある主面上においてグレーズ層の隆起を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
【
図4】変形例1に係る絶縁基板100の平面図である。
【
図5】変形例2に係る絶縁基板100の平面図である。
【
図6】絶縁基板100の製造方法を示す工程図である。
【
図7】サーマルプリントヘッド200の平面図である。
【
図8】
図7中のVIII-VIIIにおける断面図である。
【
図10】変形例1に係るサーマルプリントヘッド200の平面図である。
【
図11】変形例2に係るサーマルプリントヘッド200の平面図である。
【
図12】変形例3に係るサーマルプリントヘッド200の平面図である。
【
図13】サーマルプリントヘッド200の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態に係る絶縁基板を絶縁基板100とし、実施形態に係るサーマルプリントヘッドをサーマルプリントヘッド200とする。
【0010】
(絶縁基板100の構成)
以下に、絶縁基板100の構成を説明する。
【0011】
図1は、絶縁基板100の平面図である。
図2は、
図1中のII-IIにおける断面図である。
図3は、
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
図1から
図3に示されるように、絶縁基板100は、セラミック層10と、グレーズ層20と、金属層30とを有している。
【0012】
セラミック層10は、主面10aと、主面10bとを有している。主面10a及び主面10bは、セラミック層10の厚さ方向における端面である。主面10bは、主面10aの反対面である。セラミック層10は、平面視において、例えば矩形状である。平面視とは、主面10aの法線方向に沿って主面10a側から見た場合を言う。セラミック層10は、平面視において、外周縁10cを有している。外周縁10cは、第1辺10caと、第2辺10cbと、第3辺10ccと、第4辺10cdとを有している。
【0013】
セラミック層10の長手方向を、第1方向DR1とする。第1方向DR1に直交している方向を、第2方向DR2とする。第1辺10ca及び第2辺10cbは、第1方向DR1に沿っている。第3辺10cc及び第4辺10cdは、第2方向DR2に沿っている。
【0014】
主面10aには、外周溝11が形成されている。外周溝11は、外周縁10cにある主面10aに形成されている。外周溝11において、主面10aは、主面10b側に向かって凹んでいる。外周溝11の深さを、深さDとする。深さDは、外周溝11の底面と外周溝11が形成されていない主面10aの部分との間の距離である。外周溝11の幅を、幅Wとする。幅Wは、外周溝11の延在方向に直交している方向において測定される。より具体的には、幅Wは、第1辺10ca又は第2辺10cbにある外周溝11の部分では第2方向DR2において測定され、第3辺10cc又は第4辺10cdにある外周溝11の部分では第1方向DR1において測定される。
【0015】
セラミック層10は、例えば、アルミナ(Al2O3)等のセラミックを主成分とする材料で形成されている。セラミックを主成分とする材料で形成されているとは、セラミック層10の構成材料中におけるセラミックの含有量が50質量パーセント超であることを言う。なお、セラミック層10の構成材料中におけるセラミックの含有量は、70質量パーセント以上であってもよく、80質量パーセント以上であってもよい。
【0016】
グレーズ層20は、主面10a上に配置されている。グレーズ層20は、外周溝11内にも配置されている。グレーズ層20は、例えば、ガラスを主成分とする材料で形成されている。ガラスを主成分とする材料で形成されているとは、グレーズ層20の構成材料中におけるガラスの含有量が50質量パーセント超であることを言う。なお、グレーズ層20の構成材料中におけるガラスの含有量は、70質量パーセント以上であってもよく、80質量パーセント以上であってもよい。
【0017】
グレーズ層20の厚さを、厚さTとする。厚さTは、外周溝11が形成されていない主面10a上にあるグレーズ層20の部分において測定される。厚さTは、例えば、150μm以上である。厚さTは、200μm以上であってもよい。深さDは、厚さTの0.2倍以上であることが好ましい。幅Wは、厚さTの60倍以上であることが好ましい。
【0018】
金属層30は、グレーズ層20上に配置されている。金属層30は、金属材料で形成されている。金属層30は、例えば、金(Au)で形成されている。図示されていないが、金属層30は、複数の層で構成されていてもよい。
【0019】
<変形例1>
図4は、変形例1に係る絶縁基板100の平面図である。
図4に示されるように、主面10aには、複数の直線溝12がさらに形成されていてもよい。直線溝12は、平面視において、第1方向DR1に延在している。複数の直線溝12は、第2方向DR2において間隔を空けて並んでいる。第2方向DR2において隣り合う2つの直線溝12の間の間隔及び外周溝11とそれに隣り合う直線溝12との間の間隔は、例えば一定になっている。なお、直線溝12の深さ及び直線溝12の幅は、例えば、深さD及び幅Wにそれぞれ等しくてもよい。
【0020】
<変形例2>
図5は、変形例2に係る絶縁基板100の平面図である。
図5に示されるように、主面10aには、複数の直線溝13がさらに形成されていてもよい。直線溝13は、平面視において、第2方向DR2に延在している。複数の直線溝13は、第1方向DR1において間隔を空けて並んでいる。第1方向DR1において隣り合う2つの直線溝13の間の間隔及び外周溝11とそれに隣り合う直線溝13との間の間隔は、例えば一定になっている。なお、直線溝13の深さ及び直線溝13の幅は、例えば、深さD及び幅Wにそれぞれ等しくてもよい。
【0021】
(絶縁基板100の製造方法)
以下に、絶縁基板100の製造方法を説明する。
【0022】
図6は、絶縁基板100の製造方法を示す工程図である。
図6に示されるように、絶縁基板100の製造方法は、準備工程S1と、溝形成工程S2と、グレーズ層形成工程S3と、金属層形成工程S4とを有している。溝形成工程S2は、準備工程S1の後に行われる。グレーズ層形成工程S3は溝形成工程S2の後に行われ、金属層形成工程S4はグレーズ層形成工程S3の後に行われる。
【0023】
準備工程S1では、セラミック層10が準備される。準備工程S1の段階では、主面10aに外周溝11は形成されておらず、主面10a上にグレーズ層20は配置されていない。溝形成工程S2では、外周溝11が形成される。溝形成工程S2では、複数の直線溝12がさらに形成されてもよく、複数の直線溝13がさらに形成されてもよい。外周溝11は、例えば、レーザを主面10aに照射することにより形成される。但し、外周溝11の形成方法は、これに限られるものではない。
【0024】
グレーズ層形成工程S3では、主面10a上にグレーズ層20が形成される。グレーズ層20の形成においては、第1に、ガラスを含有するペーストが、主面10a上に塗布される。この際、ペーストは、外周溝11内にも塗布される。第2に、主面10a上にペーストが塗布されたセラミック層10が、加熱される。これにより、ペースト中の溶剤が蒸発されるとともにペースト中のガラスが互いに結合されることにより、グレーズ層20が形成される。金属層形成工程S4では、グレーズ層20上に金属層30が形成される。金属層30は、例えば、金属層30の構成材料を含むレジネートペーストをグレーズ層20上に塗布するとともに当該レジネートペーストを焼成することにより形成される。但し、金属層30の形成方法は、これに限られるものではない。
【0025】
以上により、
図1から
図3に示される構造の絶縁基板100が形成される。なお、主面10aに直線溝12及び直線溝13が形成される場合、直線溝12及び直線溝13は、溝形成工程S2において外周溝11と同様の方法により形成される。
【0026】
(サーマルプリントヘッド200の構成)
以下に、サーマルプリントヘッド200の構成を説明する。
【0027】
図7は、サーマルプリントヘッド200の平面図である。
図8は、
図7中のVIII-VIIIにおける断面図である。
図9は、
図7中のIX-IXにおける断面図である。
図7から
図9に示されているように、サーマルプリントヘッド200は、セラミック層10と、グレーズ層20と、共通電極31と、複数の個別電極32と、発熱体40とを有している。
【0028】
セラミック層10は、平面視において、外周縁10dを有している。外周縁10dは、第1辺10daと、第2辺10dbと、第3辺10dcと、第4辺10ddとを有している。第1辺10da及び第2辺10dbは、第1方向DR1に沿っている。なお、セラミック層10の長手方向は、第1方向DR1に沿っている。第3辺10dc及び第4辺10ddは、第2方向DR2に沿っている。外周縁10dにある主面10aには、溝14が形成されている。より具体的には、溝14は、第1辺10daに形成されている。主面10aは、溝14において主面10b側に凹んでいる。グレーズ層20は、主面10a上に配置されている。グレーズ層20は、溝14内にも配置されている。
【0029】
共通電極31は、グレーズ層20上に配置されている。共通電極31は、本体部31aと、複数の突出部31bとを有している。本体部31aは、第1方向DR1に延在している。本体部31aは、第1辺10da側に配置されている。突出部31bは、本体部31aの第2辺10db側を向いている辺から、第2方向DR2に突出している。複数の突出部31bは、第1方向DR1において間隔を空けて並んでいる。共通電極31は、金属材料で形成されている。共通電極31は、例えば、金で形成されている。
【0030】
個別電極32は、グレーズ層20上に配置されている。複数の個別電極32の各々は、互いに離間するように配置されている。個別電極32は、一方端において先端部32aを有しており、他方端においてボンディングパッド32bを有している。先端部32aは、第1方向DR1において隣り合う2つの突出部31bの間に配置されている。すなわち、突出部31b及び先端部32aは、第1方向DR1において交互に並んでいる。ボンディングパッド32bには、ドライバIC(図示せず)が電気的に接続される。個別電極32は、共通電極31と同一材料で形成されている。
【0031】
発熱体40は、第1方向DR1に延在している。発熱体40は、グレーズ層20上に配置されている部分と、突出部31b上に配置されている部分と、先端部32a上に配置されている部分を有している。これらの部分は、互いに連続している。これにより、発熱体40は、突出部31b及び先端部32aに電気的に接続されている。発熱体40は、ガラスと、ガラス中に混入されている複数の導電粒子とを有している。導電粒子は、例えば、酸化ルテニウム(RuO2)で形成されている。ドライバICにより、個別電極32に対して選択的に電圧が印加される。これにより、電圧が印加された個別電極32の先端部32aとその隣にある突出部31bとを電気的に接続している発熱体40の部分に電流が流れ、当該部分が抵抗発熱する。
【0032】
図示されていないが、グレーズ層20上には第1配線が配置されている。第1配線は、例えば銀(Ag)で形成されており、共通電極31(本体部31a)に電気的に接続されている。また、図示されていないが、第1配線上には、第2配線が配置されている。第2配線は、例えば銀で形成されている。さらに、図示されていないが、サーマルプリントヘッド200は、共通電極31、個別電極32、発熱体40、第1配線及び第2配線を覆う保護ガラスを有している。なお、保護ガラスからは、ボンディングパッド32bが露出している。
【0033】
<変形例>
図10は、変形例1に係るサーマルプリントヘッド200の平面図である。
図10に示されるように、溝14は、第2辺10dbに形成されていてもよい。
図11は、変形例2に係るサーマルプリントヘッド200の平面図である。
図11に示されるように、溝14は、第3辺10dcに形成されていてもよい。
図12は、変形例3に係るサーマルプリントヘッド200の平面図である。
図12に示されるように、溝14は、第4辺10ddに形成されていてもよい。図示されていないが、溝14は、第1辺10da、第2辺10db、第3辺10dc及び第4辺10ddのうちの2つ以上に形成されていてもよい。
【0034】
(サーマルプリントヘッド200の製造方法)
以下に、サーマルプリントヘッド200の製造方法を説明する。
【0035】
図13は、サーマルプリントヘッド200の製造方法を示す工程図である。
図13に示されるように、サーマルプリントヘッド200の製造方法は、準備工程S5と、配線パターンニング工程S6と、第1配線形成工程S7と、発熱体形成工程S8と、第2配線形成工程S9と、保護ガラス形成工程S10と、個片化工程S11とを有している。
【0036】
配線パターンニング工程S6は準備工程S5の後に行われ、第1配線形成工程S7は配線パターンニング工程S6の後に行われる。発熱体形成工程S8は第1配線形成工程S7の後に行われ、第2配線形成工程S9は発熱体形成工程S8の後に行われる。保護ガラス形成工程S10は第2配線形成工程S9の後に行われ、個片化工程S11は保護ガラス形成工程S10の後に行われる。
【0037】
準備工程S5では、絶縁基板100が準備される。配線パターンニング工程S6では、金属層30がパターンニングされることにより、共通電極31及び複数の個別電極32が形成される。配線パターンニング工程S6では、第1に、金属層30上にフォトレジストが塗布される。フォトレジストは、例えば、ロールコータを用いて塗布される。第2に、金属層30上に塗布されたフォトレジストが露光される。露光は、例えば、ガラスマスクを用いてUV(Ultra Violet)光を部分的にフォトレジストに照射することにより行われる。UV光が照射された部分のフォトレジストは、変質される。第3に、露光により変質されたフォトレジストの部分を溶解除去することにより、レジストパターンが形成される。第4に、レジストパターンをマスクとして金属層30をエッチングすることにより、共通電極31及び複数の個別電極32が形成される。なお、レジストパターンは、金属層30のエッチング後に溶解除去される。
【0038】
第1配線形成工程S7では、第1配線が形成される。第1配線は、複数の銀粒子を含む導電性ペーストを塗布するとともに、塗布された導電性ペーストを焼成することにより形成される。発熱体形成工程S8では、発熱体40が形成される。発熱体40は、ガラス及び複数の酸化ルテニウム粒子を含む導電性ペーストを塗布するとともに、塗布された導電性ペーストを焼成することにより形成される。第2配線形成工程S9では、第2配線が形成される。第2配線は、複数の銀粒子を含む導電性ペーストを塗布するとともに、塗布された導電性ペーストを焼成することにより形成される。
【0039】
保護ガラス形成工程S10では、保護ガラスが形成される。保護ガラスは、ガラスのペーストを共通電極31、複数の個別電極32、第1配線、発熱体40及び第2配線を覆うように塗布するとともに塗布されたガラスのペーストを焼成することにより形成される。個片化工程S11では、例えば隣り合う2つのサーマルプリントヘッド200の境界に沿ってレーザを照射することにより、複数のサーマルプリントヘッド200が得られる。
【0040】
なお、外周縁10cに隣接している位置から個片化されたサーマルプリントヘッド200は、第1辺10da、第2辺10db、第3辺10dc及び第4辺10ddのいずれかにある主面10aに形成された溝14を有することになる。
【0041】
主面10aに複数の直線溝12がさらに形成されている場合、個片化されたサーマルプリントヘッド200は、第1辺10da及び第2辺10dbにある主面10aに形成された溝14を有することになる。この場合、第3辺10ccに隣接している位置から個片化されたサーマルプリントヘッド200は第3辺10dcにある主面10aに形成された溝14をさらに有することになり、第4辺10cdに隣接している位置から個片化されたサーマルプリントヘッド200は第4辺10ddにある主面10aに形成された溝14をさらに有することになる。また、主面10aに複数の直線溝12及び複数の直線溝13がさらに形成されている場合、個片化されたサーマルプリントヘッド200は、第1辺10da、第2辺10db、第3辺10dc及び第4辺10ddにある主面10aに形成された溝14を有することになる。
【0042】
(絶縁基板100の効果)
以下に、絶縁基板100の効果を説明する。
【0043】
グレーズ層形成工程S3における加熱が行われる際、外周縁10cにある主面10a上に塗布されているペースト中の溶剤は、蒸発されやすい。そのため、グレーズ層形成工程S3における加熱が行われる際、ペースト中において、外周縁10cにある主面10a上へと向かう溶剤の流れが生じ、当該流れに伴ってペースト中のガラスが外周縁10cにある主面10a上へ移動しようとする。その結果、外周縁10cにある主面10a上においてグレーズ層20が隆起しようとする。
【0044】
しかしながら、絶縁基板100では、外周縁10cにある主面10aに外周溝11が形成されているため、外周縁10cにある主面10a上にあるペーストの量が多く、上記のようなペースト中における溶剤の流れが生じにくい。その結果、絶縁基板100では、外周縁10cにある主面10a上においてグレーズ層20の隆起を抑制することが抑制されることになる。
【0045】
外周溝11を形成しない場合、厚さTが200μmであれば、13.5mm程度の幅の隆起部がグレーズ層20に生じた。また、この隆起部の高さの平均値は、33μm程度であった。深さDを厚さTの0.2倍以上とし、幅Wを厚さTの60倍以上とすれば、このようなグレーズ層20の隆起が十分に抑制される。
【0046】
以上のように本開示の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0047】
10 セラミック層、10a 主面、10b 主面、10c 外周縁、10ca 第1辺、10cb 第2辺、10cc 第3辺、10cd 第4辺、10d 外周縁、10da 第1辺、10db 第2辺、10dc 第3辺、10dd 第4辺、11 外周溝、12,13 直線溝、14 溝、20 グレーズ層、30 金属層、31 共通電極、31a 本体部、31b 突出部、32 個別電極、32a 先端部、32b ボンディングパッド、40 発熱体、100 絶縁基板、200 サーマルプリントヘッド、D 深さ、DR1 第1方向、DR2 第2方向、S1 準備工程、S2 溝形成工程、S3 グレーズ層形成工程、S4 金属層形成工程、S5 準備工程、S6 配線パターンニング工程、S7 第1配線形成工程、S8 発熱体形成工程、S9 第2配線形成工程、S10 保護ガラス形成工程、S11 個片化工程、T 厚さ、W 幅。