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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117143
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/14 20060101AFI20240822BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F04B39/14
F04C29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023065
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】藤原 杏実
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 毅
(72)【発明者】
【氏名】高島 陽一
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB06
3H003AC03
3H003CD01
3H003CE02
3H003CF04
3H129AA02
3H129AA16
3H129AB03
3H129BB32
3H129CC09
(57)【要約】
【課題】ハウジングの分解容易性を維持しつつ、ハウジングの等電位化を実現可能な電動圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機構及びモータ機構7が収容されたハウジング1は、第1接合面15eと第1接合面15eに形成された第1ピン孔15gとを有する金属製の第1ハウジング部15と、第1接合面15eに対向する第2接合面3eと第2接合面3eにおける第1ピン孔15gに対向する位置に形成された第2ピン孔3hとを有する金属製の第2ハウジング部3と、第1ピン孔15gに圧入された圧入部511と第2ピン孔3hの内周面に当接する第1当接部51bが外周面51aから突出し、第2ピン孔3hに対して抜き差し可能に挿入された第1挿入部512とを有する金属製の連結ピン51と、第1接合面15eと第2接合面3eとの間に介在され、連結ピン51が挿通した第1ピン挿通孔61bを有する絶縁性の第1ガスケット61と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に圧縮機構及びモータ機構が収容された電動圧縮機において、
前記ハウジングは、第1接合面と、前記第1接合面に形成された第1ピン孔とを有する金属製の第1ハウジング部と、
前記第1接合面に対向する第2接合面と、前記第2接合面における前記第1ピン孔に対向する位置に形成された第2ピン孔とを有する金属製の第2ハウジング部と、
前記第1ピン孔に圧入された圧入部と、前記第2ピン孔の内周面に当接する第1当接部が外周面から突出し、前記第2ピン孔に対して抜き差し可能に挿入された第1挿入部とを有する金属製の連結ピンと、
前記第1接合面と前記第2接合面との間に介在され、前記連結ピンが挿通した第1ピン挿通孔を有する絶縁性の第1ガスケットと、を備えていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記第2ピン孔は前記第2ハウジング部を貫通し、
前記第2ハウジング部は前記第2接合面と反対側を向く第3接合面を有し、
前記ハウジングは、前記第3接合面に対向する第4接合面と、前記第4接合面における前記第2ピン孔に対向する位置に形成された第3ピン孔とを有する金属製の第3ハウジング部と、
前記第3接合面と前記第4接合面との間に介在され、前記連結ピンが挿通した第2ピン挿通孔を有する絶縁性の第2ガスケットと、
前記第2ハウジング部を間に挟んで前記第1ハウジング部と前記第3ハウジング部とを締結する金属製の締結部材と、をさらに備え、
前記連結ピンは、前記連結ピンの長手方向において前記第1挿入部に対して前記圧入部と反対側に配置された第2挿入部をさらに有し、
前記第2挿入部の外径は前記第3ピン孔の内径よりも小さい請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記第1当接部は、前記連結ピンの外周面に凹設された溝部と、前記外周面に凸設されるとともに前記溝部を挟んで前記連結ピンの周方向に並設された一対の突部とを有している請求項1又は2記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第1当接部は複数ある請求項1又は2記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記複数の第1当接部は前記連結ピンの周方向に等間隔で配置されている請求項4記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記第2ピン孔は前記第2ハウジング部を貫通し、
前記第2ハウジング部は前記第2接合面と反対側を向く第3接合面を有し、
前記ハウジングは、前記第3接合面に対向する第4接合面と、前記第4接合面における前記第2ピン孔に対向する位置に形成された第3ピン孔とを有する金属製の第3ハウジング部と、
前記第3接合面と前記第4接合面との間に介在され、前記連結ピンが挿通した第2ピン挿通孔を有する絶縁性の第2ガスケットと、をさらに備え、
前記連結ピンは、前記連結ピンの長手方向において前記第1挿入部に対して前記圧入部と反対側に配置された第2挿入部をさらいに有し、
前記第2挿入部は、前記第2挿入部の外周面から突出して前記第3ピン孔の内周面に当接する第2当接部を有するとともに、前記第3ピン孔に対して抜き差し可能に挿入されている請求項1記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機の一例が開示されている。この電動圧縮機では、ハウジング内に圧縮機構及びモータ機構が収容されている。
【0003】
ハウジングは、金属製の第1ハウジング部と、金属製の第2ハウジング部と、第1ハウジング部と第2ハウジング部との間に介在された絶縁性のガスケットと、金属製の挿入部材とを有している。
【0004】
第1ハウジング部における第2ハウジング部との接合面には、挿入部材の一端部が挿入される第1挿入孔が形成されている。第2ハウジング部における第1ハウジング部との接合面には、第1挿入孔に対向する位置に挿入部材の他端部が挿入される第2挿入孔が形成されている。ガスケットには、第1挿入孔及び第2挿入孔と対応する位置に、挿入部材が挿通される挿通孔が形成されている。
【0005】
挿入部材は、薄板を円筒状に巻いて形成されており、軸方向から見て略C字状をなしている。挿入部材は、自然状態において、第1挿入孔及び第2挿入孔の内径よりも大きな外径を有している。
【0006】
この電動圧縮機では、第1挿入孔に挿入部材の一端部が弾性変形により縮径されつつ挿入されるとともに、第2挿入孔に挿入部材の他端部が弾性変形により縮径されつつ挿入される。これにより、第1挿入孔の内周面及び第2挿入孔の内周面に挿入部材の外周面が弾性力によって押圧される。その結果、第1ハウジング部と第2ハウジング部とが挿入部材を介して電気的に確実に接続され、第1ハウジング部と第2ハウジング部との等電位性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-70741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の電動圧縮機では、挿入部材が弾性変形しつつ第1挿入孔及び第2挿入孔に挿入されている。このため、仮にメンテナンス等の理由によりハウジングを分解しようとする場合、挿入部材の弾性力によっては第1ハウジング部に対して第2ハウジング部を取り外すのに大きな力を必要とし、その取り外し作業が困難になるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ハウジングの分解容易性を維持しつつ、ハウジングの等電位化を実現可能な電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動圧縮機は、ハウジング内に圧縮機構及びモータ機構が収容された電動圧縮機において、
前記ハウジングは、第1接合面と、前記第1接合面に形成された第1ピン孔とを有する金属製の第1ハウジング部と、
前記第1接合面に対向する第2接合面と、前記第2接合面における前記第1ピン孔に対向する位置に形成された第2ピン孔とを有する金属製の第2ハウジング部と、
前記第1ピン孔に圧入された圧入部と、前記第2ピン孔の内周面に当接する第1当接部が外周面から突出し、前記第2ピン孔に対して抜き差し可能に挿入された第1挿入部とを有する金属製の連結ピンと、
前記第1接合面と前記第2接合面との間に介在され、前記連結ピンが挿通した第1ピン挿通孔を有する絶縁性の第1ガスケットと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の電動圧縮機では、第2ハウジング部の第2ピン孔に連結ピンの第1挿入部が抜き差し可能に挿入されている。すなわち、第2ピン孔の内周面に第1挿入部の外周面が弾性力によって押圧されてはいない。このため、ハウジングを分解する際に、第2ピン孔から第1挿入部を容易に抜くことができる。また、第2ピン孔から第1挿入部を抜く際に、第1ハウジング部の第1ピン孔に圧入部が圧入された連結ピンが第1ピン孔から抜け落ちることもない。よって、第1ハウジング部に対して第2ハウジング部を容易に取り外すことができる。
【0012】
また、第1ピン孔に圧入部が圧入されることで第1ハウジング部と連結ピンとが電気的に接続され、かつ第2ピン孔の内周面に第1挿入部の第1当接部が当接することで第2ハウジング部と連結ピンとが電気的に接続される。このため、連結ピンを介して第1ハウジング部と第2ハウジング部とが等電位になる。
【0013】
したがって、本発明の電動圧縮機は、ハウジングの分解容易性を維持しつつ、ハウジングの等電位化を実現できる。
【0014】
第2ピン孔は第2ハウジング部を貫通するとともに、第2ハウジング部は第2接合面と反対側を向く第3接合面を有していることが好ましい。また、ハウジングは、金属製の第3ハウジング部と、絶縁性の第2ガスケットと、金属製の締結部材とをさらに備えていることが好ましい。第3ハウジング部は、第3接合面に対向する第4接合面と、第4接合面における第2ピン孔に対向する位置に形成された第3ピン孔とを有し得る。第2ガスケットは、第3接合面と第4接合面との間に介在され、連結ピンが挿通した第2ピン挿通孔を有し得る。締結部材は、第2ハウジング部を間に挟んで第1ハウジング部と第3ハウジングとを締結し得る。そして、連結ピンは、連結ピンの長手方向において第1挿入部に対して圧入部と反対側に配置された第2挿入部をさらに有していることが好ましい。第2挿入部の外径は第3ピン孔の内径よりも小さくすることが好ましい。
【0015】
この場合、ハウジングの分解時、締結部材の締結を外した後、第3ハウジング部の第3ピン孔の内径よりも小さな外径の連結ピンの第2挿入部を第3ピン孔から容易に抜くことができる。このため、第2ハウジング部に対して第3ハウジング部を容易に取り外すことができる。
【0016】
また、第1ハウジング部と第3ハウジング部とが締結部材により締結されているので、第1ハウジング部及び第3ハウジング部の一方に締結部材の頭部が当接することで前記一方と締結部材とが電気的に接続され、かつ第1ハウジング部及び第3ハウジング部の他方に締結部材のねじ部が当接することで前記他方と締結部材とが電気的に接続される。このため、締結部材を介して第1ハウジング部と第3ハウジング部とが等電位になる。そして、第1ハウジング部と第2ハウジング部とは連結ピンを介して等電位になるため、第1ハウジング部、第2ハウジング部及び第3ハウジング部が等電位になる。
【0017】
第1当接部は、連結ピンの外周面に凹設された溝部と、外周面に凸設されるとともに溝部を挟んで連結ピンの周方向に並設された一対の突部とを有していることが好ましい。
【0018】
この場合、連結ピンの外周面の所定位置に対してプレス加工を施して、溝部及び一対の突部を同時に成形することにより、連結ピンの第1当接部を容易に形成することができる。
【0019】
第1当接部は複数あることが好ましい。
【0020】
この場合、第2ピン孔の内周面に第1挿入部の第1当接部が確実性高く当接するので、第2ハウジング部と連結ピンとが電気的に確実性高く接続される。
【0021】
複数の第1当接部は連結ピンの周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。
【0022】
この場合、各第1当接部の外接円の中心と第2ピン孔の中心とが一致し易くなる。このため、連結ピンにより第1ハウジング部に対して第2ハウジング部を位置決めする場合に、位置決め精度を高めるの有利となる。
【0023】
第2ピン孔は第2ハウジング部を貫通するとともに、第2ハウジング部は第2接合面と反対側を向く第3接合面を有していることが好ましい。また、ハウジングは、金属製の第3ハウジング部と、絶縁性の第2ガスケットとをさらに備えていることが好ましい。第3ハウジング部は、第3接合面に対向する第4接合面と、第4接合面における第2ピン孔に対向する位置に形成された第3ピン孔とを有し得る。第2ガスケットは、第3接合面と第4接合面との間に介在され、連結ピンが挿通した第2ピン挿通孔を有し得る。そして、連結ピンは、連結ピンの長手方向において第1挿入部に対して圧入部と反対側に配置された第2挿入部をさらに有していることが好ましい。第2挿入部は、第2挿入部の外周面から突出して第3ピン孔の内周面に当接する第2当接部を有するとともに、第3ピン孔に対して抜き差し可能に挿入されていることが好ましい。
【0024】
この場合、第3ハウジング部の第3ピン孔に連結ピンの第2挿入部が抜き差し可能に挿入されている。すなわち、第3ピン孔の内周面に第2挿入部の外周面が弾性力によって押圧されてはいない。このため、ハウジングの分解時、第3ピン孔から第2挿入部を容易に抜くことができる。その結果、第2ハウジング部に対して第3ハウジング部を容易に取り外すことができる。
【0025】
また、第3ピン孔の内周面に第2挿入部の第2当接部が当接することで第3ハウジング部と連結ピンとが電気的に接続される。そして、第1ハウジング部と第2ハウジング部とは連結ピンを介して電気的に接続される。その結果、第1ハウジング部、第2ハウジング部及び第3ハウジング部が連結ピンを介して電気的に接続されて等電位になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電動圧縮機は、ハウジングの分解容易性を維持しつつ、ハウジングの等電位化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施例1の電動圧縮機の断面図である。
図2図2は、実施例1の電動圧縮機に係り、連結ピンの正面図である。
図3図3は、実施例1の電動圧縮機に係り、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、実施例1の電動圧縮機に係り、連結ピン及びその近傍を拡大して示す部分断面図である。
図5図5は、実施例1の電動圧縮機に係り、締結部材及びその近傍を拡大して示す部分断面図である。
図6図6は、実施例1の電動圧縮機に係り、第1ハウジング部に連結ピンを挿入された状態を示す部分斜視図である。
図7図7は、実施例1の電動圧縮機に係り、ハウジングの等電位性を説明する模式図である。
図8図8は、実施例2の電動圧縮機に係り、ハウジングの等電位性を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1の電動圧縮機(以下、単に圧縮機と称する)は、図1に示すように、車両の空調装置用電動圧縮機である。この圧縮機は、ハウジング1と、駆動軸5と、モータ機構7と、固定スクロール9と、可動スクロール11と、弾性プレート47とを備えている。
【0030】
ハウジング1は、モータハウジング15と、第1ガスケット61と、軸支ハウジング3と、第2ガスケット63と、圧縮部ハウジング13と、連結ピン51と、ボルト25とを有している。
【0031】
モータハウジング15は、本発明における「第1ハウジング部」の一例である。軸支ハウジング3は、本発明における「第2ハウジング部」の一例である。圧縮部ハウジング13は、本発明における「第3ハウジング部」の一例である。駆動軸5、固定スクロール9、可動スクロール11及び弾性プレート47は、本発明における「圧縮機構」の一例である。ボルト25は、本発明における「締結部材」の一例である。
【0032】
本実施例では、図1に示すように、モータハウジング15が位置する側を圧縮機の前方側とし、圧縮部ハウジング13が位置する側を圧縮機の後方側として、圧縮機の前後方向を規定している。また、圧縮機の上下方向を規定している。なお、これらの各方向は説明の便宜上のための一例であり、圧縮機は、搭載される車両等に対応して、その姿勢が適宜変更される。
【0033】
図2図4に示すように、連結ピン51は、金属製であり、略円柱状をなしている。連結ピン51は、外径dを有する円柱状の外周面51aと、連結ピン51の長手方向の中央部に外周面51aから径方向外方に突出する3個の第1当接部51bとを有している。3個の第1当接部51bは、外周面51aの周方向に120度ピッチで等間隔に配置されている。3個の第1当接部51bの外接円C、すなわち各第1当接部51bの後述する各突部53の突出先端に接する外接円Cの直径Dは、外周面51aの外径dよりも大きい。
【0034】
各第1当接部51bは、外周面51aの所定位置に対してプレス加工を施すことで形成されている。各第1当接部51bは、外周面51aに凹設されて長手方向に延びる溝部52と、外周面51aに凸設されて長手方向に延びるとともに溝部52を挟んで外周面51aの周方向に並設された一対の突部53とを有している。
【0035】
連結ピン51は、圧入部511と、第1挿入部512と、第2挿入部513とを有しており、これらがこの順で長手方向の一端から他端に向かって配置されている。圧入部511及び第2挿入部513は、連結ピン51の長手方向の両端部の領域に、長手方向に一定の外径dで延びる所謂ストレート部として形成されている。第1挿入部512は、連結ピン51の長手方向の中央部の領域に形成されており、第1挿入部512の外周面51aに3個の第1当接部51bが形成されている。
【0036】
図5に示すように、ボルト25は、金属製であり、頭部25aと軸部25bとが一体に形成されている。軸部25bの先端には雄ねじ部25cが設けられている。
【0037】
図1に示すように、モータハウジング15は、有底の筒状をなしており、前壁15aと第1周壁15bとを有している。前壁15aは、モータハウジング15の前端に位置しており、モータハウジング15の径方向に延びている。第1周壁15bは、前壁15aから駆動軸5の駆動軸心O方向で後方に向かって延びている。これらの前壁15aと第1周壁15bとにより、モータハウジング15内には、モータ室17が形成されている。なお、駆動軸心Oは、圧縮機の前後方向と平行である。
【0038】
モータハウジング15の第1周壁15bには、モータ室17に通じる吸入口15cが形成されている。吸入口15cは、図示しない蒸発器と接続されており、蒸発器を経た流体である冷媒をモータ室17内に吸入させる。つまり、モータ室17は、吸入室を兼ねている。
【0039】
モータハウジング15の前壁15aには、前壁15aからモータ室17内に向かって突出する支持部15dが形成されている。支持部15dは、円筒状をなしており、内部に第1ラジアル軸受19が設けられている。
【0040】
図4図7に示すように、第1周壁15bの後端面15eには、ボルト25の雄ねじ部25cが螺合する6個の有底の雌ねじ孔15fが形成されている。後端面15eは、本発明における「第1接合面」の一例である。各雌ねじ孔15fは、第1周壁15bの周方向に等間隔で、すなわち60度ピッチで配置されている。また、第1周壁15bの後端面15eには、2個の有底の第1ピン孔15gが形成されている。各第1ピン孔15gは、第1周壁15bの周方向に180度ピッチで配置されている。各第1ピン孔15gは、断面円形であり、連結ピン51の外周面51aの外径d、すなわち圧入部511の外周面51aの外径dよりも小さい内径を有している。すなわち、連結ピン51の圧入部511は第1ピン孔15gに圧入されている。
【0041】
図1に示すように、軸支ハウジング3は、モータハウジング15と圧縮部ハウジング13との間に設けられている。軸支ハウジング3の外周縁部には、第1周壁15bの各雌ねじ孔15fと周方向において対応する位置に、6個の第1ボルト挿通孔3gが形成されている。各第1ボルト挿通孔3gは、軸支ハウジング3を前後方向に貫通している。各第1ボルト挿通孔3gは、ボルト25の軸部25bの外径よりも大きい内径を有している。
【0042】
また、軸支ハウジング3の外周縁部には、第1周壁15bの各第1ピン孔15gと周方向において対応する位置に、2個の第2ピン孔3hが形成されている。各第2ピン孔3hは、軸支ハウジング3を前後方向に貫通している。各第2ピン孔3hは、断面円形であり、連結ピン51の外周面51aの外径dよりも大きく、かつ各第1当接部51bの外接円Cの直径Dと同等の内径を有している。すなわち、連結ピン51の第1挿入部512における第1当接部51bの突部53が第2ピン孔3hの内周面に当接するとともに、第1挿入部512が第2ピン孔3hに対して抜き差し可能に挿入されている。
【0043】
圧縮部ハウジング13は、有底の筒状をなしており、後壁13aと第2周壁13bとを有している。後壁13aは、圧縮部ハウジング13の後端に位置しており、圧縮部ハウジング13の径方向に延びている。第2周壁13bは、後壁13aから駆動軸心O方向で前方に向かって延びている。
【0044】
圧縮部ハウジング13の第2周壁13bにも、第1周壁15bの各雌ねじ孔15fと周方向において対応する位置に、6個の第2ボルト挿通孔13gが形成されている。各第2ボルト挿通孔13gは、圧縮部ハウジング13を前後方向に貫通している。各第2ボルト挿通孔13gは、ボルト25の軸部25bの外径よりも大きい内径を有している。また、圧縮部ハウジング13の第2周壁13bにも、第1周壁15bの各第1ピン孔15gと周方向において対応する位置に、2個の有底の第3ピン孔13hが形成されている。各第3ピン孔13hは、断面円形であり、連結ピン51の外周面51aの外径dよりも大きい内径を有している。
【0045】
圧縮部ハウジング13には、油分離室13cと、吐出口13fとが形成されている。油分離室13c内には、円筒状の分離筒21が固定されている。分離筒21の外周面と油分離室13cの内周面とによって、セパレータが構成されている。吐出口13fは、油分離室13cに通じるとともに、図示しない凝縮器と接続されている。
【0046】
第1ガスケット61及び第2ガスケット63は、少なくとも表層が合成ゴムで形成されており、絶縁性を有している。第1ガスケット61は、モータハウジング15の後端面15eと、この後端面15eと前後方向に対向する軸支ハウジング3の前端面3eとの間に介在されて、モータハウジング15と軸支ハウジング3との間をシールする。第2ガスケット63は、軸支ハウジング3の後端面3dと、この後端面3dと前後方向に対向する圧縮部ハウジング13の前端面13iとの間に介在されて、軸支ハウジング3と圧縮部ハウジング13との間をシールする。軸支ハウジング3の前端面3eは、本発明における「第2接合面」の一例である。軸支ハウジング3の後端面3dは、本発明における「第3接合面」の一例である。圧縮部ハウジング13の前端面13iは、本発明における「第4接合面」の一例である。
【0047】
第1ガスケット61には、第1周壁15bの各雌ねじ孔15fと周方向において対応する位置に、6個のボルト挿通孔61aが形成されている。また、第1ガスケット61には、第1周壁15bの各第1ピン孔15gと周方向において対応する位置に、2個の第1ピン挿通孔61bが形成されている。同様に、第2ガスケット63にも、第1周壁15bの各雌ねじ孔15fと周方向において対応する位置に、6個のボルト挿通孔63aが形成されている。また、第2ガスケット63にも、第1周壁15bの各第1ピン孔15gと周方向において対応する位置に、2個の第2ピン挿通孔63bが形成されている。ボルト挿通孔61aの内径及びボルト挿通孔63aの内径は、ボルト25の軸部25bの外径よりも大きい。第1ピン挿通孔61bの内径及び第2ピン挿通孔63bの内径は連結ピン51の外周面51aの外径dよりも大きい。
【0048】
モータハウジング15と軸支ハウジング3と圧縮部ハウジング13とは、モータハウジング15と軸支ハウジング3との間に第1ガスケット61を介在させるとともに、軸支ハウジング3と圧縮部ハウジング13との間に第2ガスケット63を介在させつつ、圧縮部ハウジング13側から複数(本実施例では6個)のボルト25によって締結されている。
【0049】
軸支ハウジング3を挟んでモータハウジング15と圧縮部ハウジング13とがボルト25によって締結された締結状態では、各ボルト25の頭部25aが圧縮部ハウジング13に当接し、各ボルト25の軸部25bが圧縮部ハウジング13の各第2ボルト挿通孔13g及び軸支ハウジング3の各第1ボルト挿通孔3gに非接触で挿通し、かつ各ボルト25の雄ねじ部25cがモータハウジング15の各雌ねじ孔15fに螺合している。なお、各ボルト25の軸部25bは、第1ガスケット61の各ボルト挿通孔61a及び第2ガスケット63の各ボルト挿通孔63aに非接触で挿通している。
【0050】
また、上記締結状態では、各連結ピン51の圧入部511がモータハウジング15の各第1ピン孔15gに圧入され、各連結ピン51の第1挿入部512の各第1当接部51bの各突部53が軸支ハウジング3の各第2ピン孔3hの内周面に当接し、かつ各連結ピン51の第2挿入部513が圧縮部ハウジング13の各第3ピン孔13hの内周面に非接触で挿入されている。
【0051】
軸支ハウジング3には、モータ室17内に向かって突出するボス3aが形成されている。軸支ハウジング3の後面側には、軸支ハウジング3から後方に向かって延びる複数の自転阻止ピン31が固定されている。また、軸支ハウジング3の外周部には、軸支ハウジング3を前後方向に貫通する第1吸入通路3cが形成されている。
【0052】
駆動軸5は、駆動軸心O方向に延びており、前端側の小径部5aと、後端側の大径部5bとを有している。大径部5bの後端面には、駆動軸心Oから偏心した位置で後方に向かって延びる偏心ピン50が固定されている。偏心ピン50は、ボス3a内でブッシュ50aに嵌合している。
【0053】
駆動軸5の小径部5aは、第1ラジアル軸受19を介して、モータハウジング15の支持部15dに回転可能に支承されている。大径部5bの後端側は、ボス3a内において、第2ラジアル軸受27に回転可能に支承されている。駆動軸5は、ハウジング1内で駆動軸心O周りに回転可能となっている。
【0054】
モータ機構7は、モータ室17内に収容されている。モータ機構7は、ステータ7aとロータ7bとを有している。ステータ7aは、第1周壁15bの内周面に固定されている。ステータ7aは、モータハウジング15の外部に設けられたインバータ(図示略)と接続されている。
【0055】
ロータ7bは、ステータ7a内に配置されており、駆動軸5の大径部5bに固定されている。ロータ7bは、ステータ7a内で回転することにより、駆動軸5を駆動軸心O周りで回転させる。
【0056】
固定スクロール9は、圧縮部ハウジング13に固定されており、第2周壁13bの内周側に配置されている。固定スクロール9は、固定基板9aと、固定渦巻壁9bと、環状の外周壁9cとを有している。固定基板9aは、固定スクロール9の後端に位置しており、円盤状に形成されている。固定渦巻壁9bは、外周壁9cの径方向内方側に配置され、固定基板9aから前方に向かって延びている。
【0057】
固定基板9aの後面と、圧縮部ハウジング13の後壁13aの前面との間には吐出室35が形成されている。固定基板9aには、固定基板9aを貫通する吐出ポート9dが形成されている。吐出ポート9dは、吐出室35と後述する圧縮室45とを連通している。吐出室35は、吐出通路13eを通じて油分離室13cと連通している。
【0058】
固定基板9aには、吐出リード弁37とリテーナ39とが取り付けられている。吐出リード弁37及びリテーナ39は、吐出室35内に配置されている。吐出リード弁37は、弾性変形することにより、吐出ポート9dの開閉を行う。リテーナ39は、吐出リード弁37の弾性変形量を調整する。
【0059】
外周壁9cと圧縮部ハウジング13の第2周壁13bとの間には第2吸入通路9eが形成されている。外周壁9cには、第2吸入通路9eと後述する圧縮室45とを連通する吸入ポート9fが形成されている。
【0060】
可動スクロール11は、圧縮部ハウジング13内に設けられており、固定スクロール9と軸支ハウジング3との間に位置している。可動スクロール11は、可動基板11aと、可動渦巻壁11bとを有している。可動基板11aは、可動スクロール11の前端に位置しており、円盤状に形成されている。可動基板11aには、第3ラジアル軸受41を介してブッシュ50aが回転可能に支持されている。これにより、可動スクロール11は、ブッシュ50a及び偏心ピン50を通じて、駆動軸心Oから偏心した位置で駆動軸5と接続されている。
【0061】
また、可動基板11aには、各自転阻止ピン31の先端部を遊嵌状態で受ける自転阻止孔11cが凹設されている。各自転阻止孔11cには円筒状のリング43が遊嵌されている。各自転阻止ピン31がリング43の内周面を摺動しつつ転動することにより、可動スクロール11は自転が規制されて公転可能となっている。
【0062】
可動渦巻壁11bは、可動基板11aの前面から固定基板9aに向かって延びている。可動渦巻壁11bの中心近傍には、可動渦巻壁11bの前端に開口しつつ、可動渦巻壁11b内を前後方向に延びて可動基板11aまで貫通する給気孔11dが貫設されている。
【0063】
固定スクロール9と可動スクロール11とは互いに噛み合わされている。これにより、固定スクロール9と可動スクロール11との間には、固定基板9a、固定渦巻壁9b、可動基板11a及び可動渦巻壁11bによって、圧縮室45が形成されている。圧縮室45は、第1吸入通路3c、第2吸入通路9e及び吸入ポート9fを介して吸入室として機能するモータ室17に連通されている。
【0064】
固定スクロール9及び可動スクロール11と、軸支ハウジング3との間には、金属製の薄板よりなる弾性プレート47が設けられている。可動スクロール11は、弾性プレート47の弾性変形時の復元力によって、固定スクロール9側に付勢されている。
【0065】
可動基板11a及び弾性プレート47により、軸支ハウジング3のボス3a内には、背圧室49が形成されている。背圧室49は給気孔11dと連通している。
【0066】
この圧縮機では、インバータによって制御されつつ、モータ機構7が作動することにより、駆動軸5が駆動軸心O周りで回転して可動スクロール11が回転する。これにより、吸入口15cからモータ室17内に導入された冷媒が第1吸入通路3c、第2吸入通路9e及び吸入ポート9fを経て圧縮室45内に吸入される。そして、圧縮室45は、可動スクロール11の回転によって、容積を減少させつつ、内部の冷媒を圧縮する。また、可動スクロール11の回転によって、圧縮室45内の高圧の冷媒の一部が給気孔11dを経て背圧室49内に流入し、背圧室49が高圧となる。このため、弾性プレート47及び背圧室49の圧力によって、可動スクロール11が固定スクロール9側に付勢され、圧縮室45が好適に封止される。
【0067】
圧縮室45で圧縮された高圧の冷媒は、吐出ポート9dから吐出室35に吐出され、さらに、吐出室35から、吐出通路13eを経て油分離室13cに至る。そして、この高圧の冷媒は、油分離室13c内で潤滑油を分離しつつ、分離筒21の内部を流通して吐出口13fから吐出される。冷媒から分離された潤滑油は、図示しないフィルタ及び給油通路を流通することにより、固定スクロール9と可動スクロール11との摺動箇所等に供給される。
【0068】
上記構成を有するこの圧縮機では、モータハウジング15と圧縮部ハウジング13とがボルト25により締結されている。このため、ボルト25の頭部25aと圧縮部ハウジング13とが当接することでボルト25と圧縮部ハウジング13とが電気的に接続され、かつボルト25の雄ねじ部25cがモータハウジング15の雌ねじ孔15fに螺合することでボルト25とモータハウジング15とが電気的に接続されている。これにより、ボルト25を介してモータハウジング15と圧縮部ハウジング13とが電気的に接続されて等電位になっている。
【0069】
また、モータハウジング15の第1ピン孔15gに連結ピン51の圧入部511が圧入され、かつ軸支ハウジング3の第2ピン孔3hの内周面に連結ピン51の各第1当接部51bの各突部53が当接している。これにより、連結ピン51を介してモータハウジング15と軸支ハウジング3とが電気的に接続されて等電位になっている。
【0070】
こうして、モータハウジング15、軸支ハウジング3及び圧縮部ハウジング13が連結ピン51及びボルト25を介して等電位になっている。
【0071】
そして、この圧縮機では、メンテナンス等の理由によりハウジング1を分解する場合、まず圧縮部ハウジング13とモータハウジング15とを締結しているボルト25を外す。そして、モータハウジング15及び軸支ハウジング3から圧縮部ハウジング13を取り外す。この際、連結ピン51の第2挿入部513の外径dは圧縮部ハウジング13の第3ピン孔13hの内径よりも小さく、第2挿入部513と第3ピン孔13hの内周面とが接触していないため、第2挿入部513を第3ピン孔13hから容易に抜くことができる。すなわち、圧縮部ハウジング13の取り外し作業を連結ピン51が邪魔することはない。
【0072】
続いて、モータハウジング15から軸支ハウジング3を取り外す。連結ピン51の第1挿入部512における各第1当接部51bの外接円Cの直径Dは第2ピン孔3hの内径と同等であり、第1挿入部512は第2ピン孔3hに対して抜き差し可能である。このため、第1挿入部512が第2ピン孔3hの内周面を弾性力によって押圧することはなく、軸支ハウジング3の取り外し作業を連結ピン51が邪魔することはない。またこのとき、連結ピン51の圧入部511がモータハウジング15の第1ピン孔15gに圧入により固定されているため、連結ピン51がモータハウジング15から抜け落ちることもない。
【0073】
こうして、モータハウジング15から圧縮部ハウジング13及び軸支ハウジング3を容易に取り外すことができる。
【0074】
したがって、この圧縮機は、ハウジング1の分解容易性を維持しつつ、ハウジング1の等電位化を実現できる。
【0075】
特にこの圧縮機では、モータハウジング15に対して軸支ハウジング3及び圧縮部ハウジング13を組み付ける際に、各連結ピン51が位置決めピンとして好適に機能する。すなわち、ハウジング1の組み立ての際、図6に示すように、先ず各連結ピン51をモータハウジング15の第1ピン孔15gに圧入する。これにより、連結ピン51と第1ピン孔15gとの同心性を良好に確保しつつ、第1ピン孔15gに対して連結ピン51を大きな保持力で固定することができる。このため、モータハウジング15に対する各連結ピン51の位置精度及び姿勢が安定する。その結果、モータハウジング15に対して軸支ハウジング3及び圧縮部ハウジング13を組み付ける作業を正確かつ容易に行うことができ、ハウジング1の組付性が向上する。
【0076】
また、連結ピン51の第1当接部51bは溝部52と一対の突部53とを有している。このため、第1当接部51bは、プレス加工により容易に形成することができる。
【0077】
さらに、連結ピン51においては、3個の第1当接部51bが外周面51aの周方向に等間隔で設けられている。このため、軸支ハウジング3の第2ピン孔3hの内周面に第1当接部51bが確実性高く当接するので、軸支ハウジング3と連結ピン51とが電気的に確実性高く接続される。また、各第1当接部51bの外接円Cの中心と第2ピン孔3hの中心とが一致し易くなり、モータハウジング15に対して軸支ハウジング3を位置決めする際の位置決め精度を高めるの有利となる。
【0078】
(実施例2)
図8に示すように、実施例2の圧縮機では、実施例1の圧縮機におけるボルト25及び連結ピン51の構成を変更している。
【0079】
実施例2の圧縮機におけるボルト26は、樹脂製であり絶縁性を有している。ボルト26は、ボルト25と同様、頭部26aと、軸部26bと、雄ねじ部26cとを有している。
【0080】
また、この圧縮機における連結ピン55は、連結ピン51と同様、金属製であり、外径dの円柱状の外周面55aを有している。連結ピン55は、圧入部551と、第1挿入部552と、第2挿入部553とを有しており、これらがこの順で長手方向の一端から他端に向かって配置されている。
【0081】
圧入部551は、連結ピン55の長手方向の一端部の領域に、長手方向に一定の外径dで延びる所謂ストレート部として形成されている。
【0082】
第1挿入部552は、連結ピン51の長手方向の中央部の領域に形成されている。第1挿入部552の外周面55aには、外周面55aから径方向外方に突出する3個の第1当接部55bが形成されている。3個の第1当接部55bは、外周面55aの周方向に120度ピッチで等間隔に配置されている。
【0083】
第2挿入部553は、連結ピン51の長手方向の他端部の領域に形成されている。第2挿入部553の外周面55aには、外周面55aから径方向外方に突出する3個の第2当接部55cが形成されている。3個の第2当接部55cは、外周面55aの周方向に120度ピッチで等間隔に配置されている。
【0084】
各第1当接部55b及び各第2当接部55cは、実施例1の圧縮機における第1当接部51bと同様、溝部と一対の突部とを有している。各第2当接部55cの外接円Cの直径Dは、各第1当接部55bの外接円Cの直径Dの同等以下とされている。
【0085】
モータハウジング15には、実施例1の圧縮機と同様、ボルト26の雄ねじ部26cが螺合する6個の雌ねじ孔15fと、連結ピン55の圧入部551が圧入される2個の第1ピン孔15gとが形成されている。
【0086】
軸支ハウジング3には、実施例1の圧縮機と同様、ボルト26の軸部26bが挿通する第1ボルト挿通孔3gと、連結ピン55の第1挿入部552における各第1当接部55bが当接する2個の第2ピン孔3hとが形成されている。各第2ピン孔3hは、断面円形であり、第1挿入部552の各第1当接部55bの外接円Cの直径Dと同等の内径を有している。これにより、第2ピン孔3hに対して、第1挿入部552及び第2挿入部553が抜き差し可能とされている。
【0087】
圧縮部ハウジング13は、実施例1の圧縮機と同様、ボルト26の軸部26bが挿通する第2ボルト挿通孔13gと、連結ピン55の第2挿入部553における各第2当接部55cが当接する2個の第3ピン孔13hとが形成されている。各第3ピン孔13hは、断面円形であり、第2挿入部553の各第2当接部55cの外接円Cの直径Dと同等の内径を有している。これにより、第3ピン孔13hに対して、第2挿入部553が抜き差し可能とされている。
【0088】
実施例2の圧縮機では、モータハウジング15と圧縮部ハウジング13とを締結するボルト26が絶縁性である。このため、ボルト26によっては、モータハウジング15と圧縮部ハウジング13とを電気的に接続することができない。
【0089】
この点、この圧縮機では、連結ピン55の第2挿入部553における各第2当接部55cが圧縮部ハウジング13の各第3ピン孔13hの内周面に当接している。また、実施例1の圧縮機における連結ピン51と同様、連結ピン55の圧入部551がモータハウジング15の第1ピン孔15gに圧入されるとともに、連結ピン55の第1挿入部552の各第1当接部55bが軸支ハウジング3の第2ピン孔3hの内周面に当接している。これにより、連結ピン55を介してモータハウジング15と軸支ハウジング3と圧縮部ハウジング13とが電気的に接続される。
【0090】
そして、軸支ハウジング3の第2ピン孔3hの内径は、連結ピン55の各第1当接部55bの外接円Cの直径Dと同等であり、かつ、連結ピン55の各第2当接部55cの外接円Cの直径Dの同等以上である。このため、軸支ハウジング3の第2ピン孔3hに対して、連結ピン55の第1挿入部552及び第2挿入部553は抜き差し可能である。
【0091】
また、圧縮部ハウジング13の第3ピン孔13hの内径は、連結ピン55の各第2当接部55cの外接円Cの直径Dと同等である。このため、圧縮部ハウジング13の第3ピン孔13hに対して、連結ピン55の第2挿入部553は抜き差し可能である。
【0092】
よって、モータハウジング15に対して、軸支ハウジング3及び圧縮部ハウジング13を容易に取り外すことができる。
【0093】
実施例2の圧縮機におけるその他の構成及び作用効果は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0094】
以上において、本発明を実施例1及び2に即して説明したが、本発明は上記実施例1及び2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0095】
実施例1及び2の圧縮機では、第1当接部の外接円の直径と第2ピン孔の内径とを同等としたり、第2当接部の外接円の直径と第3ピン孔の内径とを同等としたりしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1当接部(又は第2当接部)の外接円の直径と第2ピン孔(又は第3ピン孔)の内径とが略同等であり、第2ピン孔(又は第3ピン孔)に対して第1当接部(又は第2当接部)が抜き差しに支障をきたさない程度の小さな圧入代で弱圧入されていてもよい。
【0096】
実施例1及び2の圧縮機では、第1ハウジング部をモータハウジング15、第2ハウジング部を軸支ハウジング3、第3ハウジング部を圧縮部ハウジング13としているが、本発明はこれに限定されず、圧縮機構及びモータ機構を収容するハウジングであれば、ハウジングを構成する第1ハウジング部、第2ハウジング部及び第3ハウジング部等の数や種類は特に限定されない。
【0097】
例えば、第1ハウジング部を圧縮部ハウジング13、第2ハウジング部を軸支ハウジング3、第3ハウジング部をモータハウジング15としてもよい。
【0098】
また、ハウジングが、モータハウジング15と、圧縮部ハウジング13と、モータハウジング15と圧縮部ハウジング13との間に介在された第1ガスケット61とを備え、モータハウジング15と圧縮部ハウジング13とが絶縁性を有する締結部材によって締結されているような第3ハウジング部を有していない圧縮機に本発明を適用してもよい。この場合、長手方向の一端側に形成された圧入部と長手方向の他端側に形成された第1当接部を有する第1挿入部とからなる連結ピンを採用し、モータハウジング15の第1ピン孔15gに圧入部を圧入させるとともに圧縮部ハウジング13の第3ピン孔13hに第1当接部を当接させつつ第1挿入部を抜き差し可能に挿入すればよい。
【0099】
さらに、実施例2の圧縮機に対して、圧縮部ハウジング13との間に第3ガスケットを挟んで金属製の第4ハウジング部が配設された圧縮機に本発明を適用してもよい。この場合、金属製のボルト25の軸部25bが挿通する第3ボルト挿通孔を第4ハウジング部に貫設し、絶縁性のボルト26の代わりに金属製のボルト25によって第4ハウジング部とモータハウジング15とを締結することにより、第4ハウジング部とモータハウジング15とを等電位にすればよい。
【0100】
実施例1及び実施例2の圧縮機では、連結ピン51や連結ピン55の数を2個としているが、本発明はこれに限定されず、連結ピンの数は1個でも3個以上でもよい。
【0101】
実施例1及び2の圧縮機では、第1当接部や第2当接部が溝部52と一対の突部53とを有する形状であるが、これに限られない。第1当接部や第2当接部の形状としては、第1当接部や第2当接部の外周面から径方向外方に突出して第2ピン孔や第3ピン孔の内周面に当接しうるものであればよく、例えば溝部を有しない単なる突部により第1当接部や第2当接部を形成してもよい。
【0102】
実施例1及び2の圧縮機では、第1当接部や第2当接部の数を3個としているが、第1当接部や第2当接部の数は特に限定されず、1個や2個でもよく、4個以上でもよい。
【0103】
実施例1及び実施例2の圧縮機では、圧縮機構としてスクロール型を採用しているが、ベーン型や斜板型等、他の型式の圧縮機構を採用してもよい。
【0104】
本明細書から以下の技術的思想も把握できる。
(付記1)
ハウジング内に圧縮機構及びモータ機構が収容された電動圧縮機において、
前記ハウジングは、第1接合面と、前記第1接合面に形成された第1ピン孔とを有する金属製の第1ハウジング部と、
前記第1接合面に対向する第2接合面と、前記第2接合面における前記第1ピン孔に対向する位置に形成された第2ピン孔とを有する金属製の第2ハウジング部と、
前記第1ピン孔に圧入された圧入部と、前記第2ピン孔の内周面に当接する第1当接部が外周面から突出し、前記第2ピン孔に対して抜き差し可能に挿入された第1挿入部とを有する金属製の連結ピンと、
前記第1接合面と前記第2接合面との間に介在され、前記連結ピンが挿通した第1ピン挿通孔を有する絶縁性の第1ガスケットと、を備えていることを特徴とする電動圧縮機。
【0105】
(付記2)
前記第2ピン孔は前記第2ハウジング部を貫通し、
前記第2ハウジング部は前記第2接合面と反対側を向く第3接合面を有し、
前記ハウジングは、前記第3接合面に対向する第4接合面と、前記第4接合面における前記第2ピン孔に対向する位置に形成された第3ピン孔とを有する金属製の第3ハウジング部と、
前記第3接合面と前記第4接合面との間に介在され、前記連結ピンが挿通した第2ピン挿通孔を有する絶縁性の第2ガスケットと、
前記第2ハウジング部を間に挟んで前記第1ハウジング部と前記第3ハウジングとを締結する金属製の締結部材と、をさらに備え、
前記連結ピンは、前記連結ピンの長手方向において前記第1挿入部に対して前記圧入部と反対側に配置された第2挿入部をさらに有し、
前記第2挿入部の外径は前記第3ピン孔の内径よりも小さい付記1記載の電動圧縮機。
【0106】
(付記3)
前記第2ピン孔は前記第2ハウジング部を貫通し、
前記第2ハウジング部は前記第2接合面と反対側を向く第3接合面を有し、
前記ハウジングは、前記第3接合面に対向する第4接合面と、前記第4接合面における前記第2ピン孔に対向する位置に形成された第3ピン孔とを有する金属製の第3ハウジング部と、
前記第3接合面と前記第4接合面との間に介在され、前記連結ピンが挿通した第2ピン挿通孔を有する絶縁性の第2ガスケットと、をさらに備え、
前記連結ピンは、前記連結ピンの長手方向において前記第1挿入部に対して前記圧入部と反対側に配置された第2挿入部をさらいに有し、
前記第2挿入部は、前記第2挿入部の外周面から突出して前記第3ピン孔の内周面に当接する第2当接部を有するとともに、前記第3ピン孔に対して抜き差し可能に挿入されている付記1記載の電動圧縮機。
(付記4)
前記第1当接部は、前記連結ピンの外周面に凹設された溝部と、前記外周面に凸設されるとともに前記溝部を挟んで前記連結ピンの周方向に並設された一対の突部とを有している付記1乃至3のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【0107】
(付記5)
前記第1当接部は複数ある付記1乃至4のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【0108】
(付記6)
前記複数の第1当接部は前記連結ピンの周方向に等間隔で配置されている付記5記載の電動圧縮機。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は車両等の空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1…ハウジング
3…軸支ハウジング(第2ハウジング部)
3e…前端面(第2接合面)
3d…後端面(第3接合面)
3h…第2ピン孔
5…駆動軸(圧縮機構)
7…モータ機構
9…固定スクロール(圧縮機構)
11…可動スクロール(圧縮機構)
13…圧縮部ハウジング(第3ハウジング部)
13h…第3ピン孔
13i…前端面(第4接合面)
15…モータハウジング(第1ハウジング部)
15e…後端面(第1接合面)
15g…第1ピン孔
25…ボルト(締結部材)
61…第1ガスケット
61b…第1ピン挿通孔
63…第2ガスケット
63b…第2ピン挿通孔
51、55…連結ピン
51a、55a…外周面
51b、55b…第1当接部
55c…第2当接部
511、551…圧入部
512、552…第1挿入部
513、553…第2挿入部
52…溝部
53…突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8