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  • 特開-通信ケーブルおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117146
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】通信ケーブルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/02 20060101AFI20240822BHJP
   H01B 13/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01B11/02
H01B13/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023068
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一郎
【テーマコード(参考)】
5G319
5G325
【Fターム(参考)】
5G319DA04
5G319DB01
5G319DC01
5G325BB01
5G325BD03
(57)【要約】
【課題】耐屈曲性に優れ、複数個所を繰り返し折り曲げたり折り返したりしても電気特性に変化が生じ難い通信ケーブル提供する。
【解決手段】上記課題を解決する通信ケーブルは、一対の絶縁電線が対撚りされた対撚線を複数含み、かつ複数の前記対撚線が互いに撚り合わせられたケーブル心を有し、複数の前記対撚線の対撚りピッチが、いずれも前記対撚線の外径に対していずれも15倍以下であり前記ケーブル心の撚りピッチが前記ケーブル心の外径に対して14倍以上17倍以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の絶縁電線が対撚りされた対撚線を複数含み、かつ複数の前記対撚線が互いに撚り合わせられたケーブル心を有し、
複数の前記対撚線の対撚りピッチが、前記対撚線の外径に対していずれも15倍以下であ
前記ケーブル心の撚りピッチが、前記ケーブル心の外径に対して14倍以上17倍以下である、
通信ケーブル。
【請求項2】
複数の絶縁電線を準備する工程と、
前記絶縁電線を所定の本数ずつ対撚りし、複数の対撚線を得る工程と
前記複数の対撚線を撚り合わせ、ケーブル心を得る工程と、
を有し、
前記複数の対撚線を得る工程における、各前記対撚線の対撚りピッチが、当該対撚線の外径に対して15倍以下であり
前記ケーブル心を得る工程における、前記ケーブル心の撚りピッチが、当該ケーブル心の外径に対して14倍以上17倍以下である、
通信ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信ケーブルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LAN(Local Area Network)ケーブル等の通信ケーブルは、サーバどうしの間や、サーバとスイッチとの間、サーバとパーソナルコンピュータとの間等、様々な機器の接続に使用されている。このような通信ケーブルとして、図1に示すように、2本の絶縁電線6を含む対撚線8を、4対撚り合わせたケーブル心10を含む通信ケーブル1が知られている。当該通信ケーブル1では、ケーブル心10の外周に、内被層20や遮蔽層30、外被40が配置されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-041568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、LANケーブルは、より幅広い分野で使用されるようになっている。例えばLANケーブルが、産業用デバイスの駆動部位やそれに付随する部位などに多用されることがあり、このような箇所では、LANケーブルが繰り返し屈曲させられたりする。そのため、LANケーブルには、屈曲を繰り返しても電気特性が変化しない性能(本明細書において、「耐屈曲性」とも称する)が求められている。
また、本発明者らの鋭意検討によれば、1本のケーブルの1か所のみを繰り返し屈曲させる場合と、複数個所を繰り返し屈曲させる場合とでは、後者の方が経時で電気特性が低くなりやすいことが明らかとなった。
本発明は、1本のケーブルの複数個所について、繰り返し屈曲させたとしても、良好な電気特性が得られる通信ケーブル、およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の一態様によれば、
一対の絶縁電線が対撚りされた対撚線を複数含み、かつ複数の前記対撚線が互いに撚り合わせられたケーブル心を有し、
複数の前記対撚線の対撚りピッチが、前記対撚線の外径に対していずれも15倍以下であり、
前記ケーブル心の撚りピッチが、前記ケーブル心の外径に対して14倍以上17倍以下である、
通信ケーブルが提供される。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の他の態様によれば、
複数の絶縁電線を準備する工程と、
前記絶縁電線を所定の本数ずつ対撚りし、複数の対撚線を得る工程と
前記複数の対撚線を撚り合わせ、ケーブル心を得る工程と、
を有し、
前記複数の対撚線を得る工程における、各前記対撚線の対撚りピッチがそれぞれ、当該対撚線の外径に対して15倍以下であり
前記ケーブル心を得る工程における、前記ケーブル心の撚りピッチが、当該ケーブル心の外径に対して14倍以上17倍以下である、
通信ケーブルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の通信ケーブルは、耐屈曲性に優れ、複数個所を繰り返し折り曲げたり折り返したりしても電気特性に変化が生じ難い。さらに本発明の通信ケーブルの製造方法によれば、耐屈曲性に優れる通信ケーブルを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】通信ケーブルの構造を示す概略断面図である。
図2】絶縁電線の概略拡大断面図を示す模式図である。
図3】屈曲試験の方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態にかかる通信ケーブルについて説明する。本実施形態の通信ケーブルはいわゆるLAN(Local Area Network)用ツイストペアケーブルから構成された通信ケーブルである。
【0010】
本実施形態の通信ケーブルは、ケーブル心と、その周囲に配置された外被層とを有するものであればよく、その他の構成を含んでいてもよい。以下、図1に示す通信ケーブル1、すなわち、ケーブル心10、内被層20、遮蔽層30、および外被層40を有する通信ケーブル1を例に説明する。ただし、本実施形態に係る通信ケーブルは、当該構造に限定されない。
【0011】
ケーブル心10は複数(ここでは4組)の対撚線8と、当該複数の対撚線8を互いに隔離するための十字介在9とで構成されている。十字介在9および対撚線8は、通信ケーブル1の長さ方向に沿って、一定の方向に、後述の撚りピッチで撚られている。
各対撚線8は、一対(ここでは2本)の絶縁電線6から構成されており、これらは一定方向に、後述の対撚りピッチで撚り合わせられている。対撚線8の対撚り方向と、ケーブル心10の撚り方向は、同一方向であってもよく、異なる方向であってもよい。対撚線8中の各絶縁電線6は、図1に示すように、導体2および絶縁体4から構成され、導体2の周囲が、絶縁体4によって被覆されている。
導体2は図2に示すように複数本(ここでは30本)の素線2aで構成されており、各素線2aは、銅合金等からなる軟銅線である。導体2は、例えば図2に示すように、複数の素線2aを撚り合わせただけの非圧縮導体であってもよく、複数の素線2aを撚り合わせた後、所望の形状に圧縮した圧縮導体であってもよい。導体2の外径は通常、0.2mm以上0.7mm以下である。
一方、絶縁体4はポリエチレン等の樹脂で構成されている。
また、十字介在9はポリエチレン等の樹脂で構成されている。十字介在9は通信ケーブル1の長さ方向に延在し、対撚線8同士を非接触状態で分離するための部材である。
【0012】
上記ケーブル心10の周囲には、内被層20が形成されている。内被層20はポリエチレンを押出被覆した層であればよく、内被層20の厚みは、0.2mm以上0.4mm以下が好ましい。内被層20を有すると、ケーブル心10と後述の遮蔽テープとの距離が一定になりやすく、通信ケーブル1の高周波電気特性等が良好になりやすい。当該内被層20のJIS K7215(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)に準拠して圧子タイプDを用いて測定される、ショア硬度(ショアD硬度)は、32以上38以下が好ましい。内被層20が当該ショアD硬度を有すると、通信ケーブル1の電気特性が良好になる。
【0013】
内被層20の周囲には、遮蔽層30が配置されている。当該遮蔽層30は一層からなるものであってもよく、二層以上で構成されていてもよい。本実施形態では、遮蔽テープと編組線との二層で構成されている。遮蔽テープは、例えばアルミニウム箔(Al)をポリエチレンテレフタレート(PET)基板に貼り付けたAl/PETテープから構成されており、遮蔽テープはケーブル心10の長さ方向に沿って横巻きされ、内被層20の外周を被覆している。本明細書において、「横巻き」とは、長尺なテープをケーブル心10や内被層20の長さ方向に沿ってらせん状に巻き付ける意であって、テープの側縁部を先に巻き付けたテープに重ねながら巻き付ける、という意である。一方、編組線は外径0.1mmのスズメッキ軟銅線から構成され、これが遮蔽テープの外周を被覆している。
【0014】
遮蔽層30の周囲には、外被層40が配置されている。当該外被層40は、上述の遮蔽層30を覆うように配置された層であり、通信ケーブル1の最外層となる層である。外被層40の材料は、通信ケーブル1の用途や使用環境、所望の硬さに応じて適宜選択され、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン等から選択される。
本実施形態の通信ケーブル1は通常、外径が3.0mm以上20.0mm以下である。
【0015】
上述の通信ケーブル1における、対撚線8の対撚りピッチ、およびケーブル心10の撚りピッチについて、以下説明する。
従来の通信ケーブルでは、複数個所を繰り返し屈曲させて使用すると、経時でその電気特性が低下することがあった。本発明者らの検討によれば、通信ケーブルの複数の対撚線のうち、対撚りピッチが比較的大きい対撚線において、電気特性の低下が生じやすいことが明らかとなった。また、電気特性の低下した対撚線では、屈曲箇所において、対撚線の撚り状態に乱れが生じることも明らかとなった。その理由としては、通信ケーブルの複数個所を繰り返し屈曲させると、各対撚線に様々な方向から力が加わる。そして、対撚りピッチが大きい対撚線では、他の対撚線よりその影響を受けやすく、撚り状態に乱れが生じやすかったと考えられる。
そこで、本実施形態では、全ての対撚線8の対撚りピッチを当該対撚線8外径(本明細書では「コア径」とも称する)に対して、15倍以下とする。なお、当該比の下限は、特に制限されないが、通常7倍以上が好ましい。コア径とは、通信ケーブル1の断面における、各対撚線8のそれぞれの最大径であり、図1においてa1やa2で表す長さである。本実施形態におけるコア径の絶対値は特に制限されないが、一般的な通信ケーブル1におけるコア径は通常、0.4mm以上1.2mm以下であり、本実施形態でも同様にすることができる。一方、本明細書において、対撚りピッチとは、対撚線8の中心軸を中心に、絶縁電線6が一周するのに必要な対撚線8の長さをいう。
通信ケーブル1中の複数の対撚線8の対撚りピッチは、各導体2内を流れる信号の干渉を防ぐために、通常、互いに異なる値に設定される。したがって、本実施形態では、各コア径に対する対撚りピッチの値(対撚りピッチ/コア径)が、対撚線8ごとに異なり、4つの数値がある。本実施形態では、これらのうちの最大値が15以下になるように設定する。全ての対撚線8において、コア径に対する対撚りピッチの値が15以下であると、全ての対撚線8において撚り状態に乱れが生じ難く、通信ケーブル1の複数個所を屈曲させても、撚り状態が変化し難くなる。
【0016】
一方、本実施形態では、ケーブル心10の撚りピッチが、ケーブル心の外径(本明細書では、「撚合外径」とも称する)に対して14倍以上17倍以下に設定される。撚合外径は、ケーブル心10の外径であり、図1においてbで表す長さである。また、本明細書において、「撚りピッチ」とは、いわゆる集合撚りピッチであって、ケーブル心10の中心軸を中心に、対撚線8が一周するのに必要なケーブル心10の長さをいう。本実施形態において、ケーブル心の外径(撚合外径)は特に制限されないが、一般的な通信ケーブル1における撚合外径は通常、2.0mm以上8.0mm以下であり、本実施形態でも同様にすることができる。
上述のように、対撚線8の対撚りピッチを全てコア径の15倍以下に設定すると、対撚線8の対撚り状態は変化し難くなる。しかしながら、対撚りピッチを調整しただけでは、ケーブル心10の撚りピッチ次第で、電気特性が良好にならないことがある。そこで、本実施形態では、ケーブル心10の撚りピッチを、撚合外径の14倍以上17倍以下とすることで、電気特性を良好にする。
【0017】
次に上述の通信ケーブル1の製造方法について説明する。ただし、通信ケーブルの製造方法は、当該方法に限定されない。
まず、複数本(本実施形態では、30本)の軟銅線(素線2a)を束ね、これらを一定方向に撚り合わせて導体2とする。このとき、必要に応じて導体2を圧縮してもよい。その後、導体2を長さ方向に搬送しながら、その周囲にポリエチレンを押出し、導体2が絶縁体4で被覆された絶縁電線6を得る。
続いて、絶縁電線6を所定の本数ずつ(ここでは2本ずつ)まとめて、一定の方向に対撚りし、対撚線8を形成する。当該工程を繰り返し、複数(ここでは4組)の対撚線8を準備する。このとき、対撚りピッチが、作製する対撚線8の外径の15倍以下になるように、それぞれの対撚りピッチを調整する。
そして、複数(ここでは4組)の対撚線8をそれぞれ十字介在9に沿わせ、これらを撚り合わせ、ケーブル心10を得る。このとき、撚りピッチが、作製するケーブル心10の外径に対して14倍以上17倍以下になるように調整する。
【0018】
続いて、当該ケーブル心10を長さ方向に搬送しながら、その周囲にポリエチレンを押出して、ケーブル心10の周囲に内被層20を形成する。
その後、内被層20の周囲に、Al/PETテープを横巻きし、その周囲にさらに編組線を配置し、遮蔽層30を形成する。
さらに、内被層20および遮蔽層30を周囲に形成したケーブル心10を長さ方向に搬送しながら、その周囲にポリ塩化ビニルを押し出して外被層40を形成し、上述の通信ケーブル1を製造する。
【実施例0019】
(1)サンプルの準備
(1.1)サンプル1(比較例)
・絶縁電線の準備
外径0.08mmの軟銅線(素線)を30本、所定の方向に撚り合わせ、外径0.5mmの撚線導体を準備した。高密度ポリエチレンを準備し、これを押出機のダイスから押し出して撚線導体を絶縁体で被覆して絶縁電線を得た。同様の工程を繰り返し、複数の絶縁電線を得た。
【0020】
・対撚線の作製
2本の絶縁電線を、所望の第1の対撚線の外径(コア径)0.9mmに対して対撚りピッチが約9倍になるように対撚りし、第1の対撚線を作製した。同様に、絶縁電線を2本ずつ組み合わせ、第2の対撚線(対撚りピッチ=コア径の13倍)、第3の対撚線(対撚りピッチ=コア径10倍)、および第4の対撚線(対撚りピッチ=コア径の16倍)を作製した。
【0021】
・ケーブル心の作製
十字介在を準備し、4組の対撚線を十字介在に沿わせ、所望のケーブル心の外径(撚合ピッチ)4.5mmに対して撚りピッチが18倍になるように撚り合わせて、ケーブル心を得た。
【0022】
・内被層、遮蔽層、および外被層の作製
内被層としてポリエチレンを準備し、これを押出機のダイスから押し出してケーブル心の周囲に厚み0.3mmの内被層を形成した。続いて、遮蔽テープを準備し、これを内被層に横巻きした。さらに外径0.1mmのスズメッキ軟銅線を編組し、遮蔽テープおよび編組線からなる遮蔽層を形成した。さらに、外被層の材料としてポリ塩化ビニル(PVC)を準備し、これを押出機のダイスから押し出して遮蔽層の周囲に厚み0.4mmの外被層を形成した。
以上の工程により、外径7mmの通信ケーブルを製造した。
【0023】
(1.2)サンプル2(比較例)
対撚線作製時の、第4の対撚線の対撚りピッチが所望のコア径0.9mmに対して15倍になるように、対撚りピッチを変更した以外は、サンプル1と同様に絶縁電線を作製した。
【0024】
(1.3)サンプル3(比較例)
ケーブル心の撚りピッチが所望の撚合外径4.5mmの13倍になるように、撚りピッチを変更した以外は、サンプル2と同様に絶縁電線を作製した。
【0025】
(1.4)サンプル4(実施例)
ケーブル心の撚りピッチが、所望の撚合外径4.5mmの16倍になるように、撚りピッチを変更した以外は、サンプル2と同様に絶縁電線を作製した。
【0026】
(1.5)サンプル5(実施例)
ケーブル心の撚りピッチが所望の撚合外径4.5mmの14倍になるように、撚りピッチを変更した以外は、サンプル2と同様に絶縁電線を作製した。
【0027】
(1.6)サンプル6(実施例)
ケーブル心の撚りピッチを所望の撚合外径4.5mmの17倍になるように、撚りピッチを変更した以外は、サンプル2と同様に絶縁電線を作製した。
【0028】
(2)評価
(2.1)電気特性の測定
各サンプルの信ケーブル1に対し、汎用のLANケーブル自動測定機器を用いて、反射減衰量(RL)、近端漏話減衰量(NEXT)、および遅延時間差(Delay)などを測定した。結果を表1に示す。
【0029】
(2.2)屈曲試験
長さ5mの上記各サンプル(通信ケーブル1)の両端にRJ45型のコネクタを設置し、当該両端を、図3に示すように、試験機の下方の固定部211にそれぞれ固定した。一方、通信ケーブル1の長さ方向中央部を、試験機の上方の把持部212にて把持し、通信ケーブル1に曲げ半径50mmの2つのU字状の屈曲箇所1aを設けた。そして、上述の把持部212を、サンプルの長さ方向に平行に、ストローク500mmで往復運動させた。速度は60往復/分とした。当該屈曲試験後の各サンプルの通信ケーブル1に対し、汎用のLANケーブル自動測定機器を用いて、反射減衰量(RL)を測定した。結果を表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
(3)まとめ
上記表1および表2に示すとおり、対撚りピッチがコア径に対して15倍を超える対撚線を含むサンプル1(比較例1)では、U字折り返し試験前の基本的な電気特性が、ANSI/TIA-568.2規格を満たすものの、U字折り返し試験後の反射減衰量(RL)が低かった。
一方、対撚りピッチをコア径に対して15倍以下に変更しても、サンプル2、3(比較例2、3)では、U字折り返し試験前の基本的な電気特性が、ANSI/TIA-568.2規格を満たさなかった。つまり、対撚りピッチをコア径に対して15倍以下に変更しても、(集合)撚りピッチをサンプル1から変更しなかった(撚合外径に対して18倍とした)場合や、(集合)撚りピッチを過度に小さくした(撚合外径に対して13倍とした)場合には、電気特性が低下した。
これに対し、サンプル4~6(実施例4~6)では、U字折り返し試験前の基本的な電気特性が、ANSI/TIA-568.2規格を満たし、かつU字折り返し試験後の反射減衰量(RL)も低下し難かった。つまり、全ての対撚りピッチをそれぞれのコア径の15倍以下とし、さらに(集合)撚りピッチを撚合外径の14倍以上17倍以下とした場合には、各電気特性が格段に良好になった。
以上から、対撚線の対撚りピッチを全て、対撚線の外径(コア径)に対して15倍以下とし、さらにケーブル心の撚りピッチをケーブル心の外径(撚合外径)の14倍以上17倍以下とすると、非常に優れた通信ケーブルが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の通信ケーブルは、耐屈曲性に優れ、複数個所を繰り返し屈曲させても電気特性に変化が生じ難い。したがって、当該通信ケーブルは、各種分野に使用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 通信ケーブル
1a 屈曲箇所
2 導体
2a 素線
4 絶縁体
6 絶縁電線
8 対撚線
9 十字介在
10 ケーブル心
20 内被層
30 遮蔽層
40 外被層
211 固定部
212 把持部
図1
図2
図3