(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117149
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】血圧計測補助装置及び血圧計測システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240822BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240822BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240822BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61B5/022 400L
A61B5/022 400F
A61B5/02 310A
A61B5/0245 100B
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023072
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 佑也
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA10
4C017AA12
4C017AA20
4C017AB03
4C017AC26
4C017BC11
4C017BD04
4C017CC02
4C017DD17
4C017FF05
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038VB13
4C038VC02
(57)【要約】
【課題】非観血の血圧計測装置のように間隔をおいて血圧計測を行う場合に、心電図を用いなくても、適切なタイミングでの血圧測定を促すことができる、血圧計測補助装置及び血圧計測システムを提供すること。
【解決手段】血圧計測補助装置100は、脈波計測装置(パルスオキシメーター20)によって検出された脈波を二階微分して加速度脈波を得る加速度脈波取得部101と、得られた加速度脈波の特徴量(例えばa~e)に基づいて患者の血行動態の指標(例えばb/a、d/aの値)を算出する血行動態指標算出部102と、血行動態の指標(例えばb/a、d/aの値)に基づいて血圧計測の要否を判定する判定部103と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈波計測装置によって検出された脈波を二階微分して加速度脈波を得る加速度脈波取得部と、
得られた前記加速度脈波の特徴量に基づいて、患者の血行動態の指標を算出する血行動態指標算出部と、
前記血行動態の指標に基づいて、血圧計測の要否を判定する判定部と、
を備える血圧計測補助装置。
【請求項2】
前記判定部によって血圧計測が必要である判定結果が得られた場合、このことをユーザーに通知する通知部を、さらに備える、
請求項1に記載の血圧計測補助装置。
【請求項3】
血圧計測装置によって計測された血圧と、前記血圧計測装置によって計測されなかった期間の前記加速度脈波の特徴量に基づく前記血行動態の指標とを用いて、前記血圧計測装置によって計測されなかった期間の血圧の推定値を算出し、前記血圧計測装置によって計測されなかった期間の血圧を補間する補間部を、さらに備える、
請求項1に記載の血圧計測補助装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記補間部によって推定された前記推定値を用いて、血圧計測の要否を判定する、
請求項3に記載の血圧計測補助装置。
【請求項5】
前記血行動態指標算出部は、前記加速度脈波の特徴量に加えて、SpO2、PI値、PR値の少なくとも一つ以上に基づいて血行動態の指標を算出する、
請求項1に記載の血圧計測補助装置。
【請求項6】
前記脈波計測装置は、パルスオキシメーターであり、
前記加速度脈波取得部は、前記パルスオキシメーターからの光電脈波を前記脈波として入力して前記加速度脈波を得る、
請求項1に記載の血圧計測補助装置。
【請求項7】
血圧計測装置と、
脈波計測装置と、
前記脈波計測装置によって検出された脈波を二階微分して加速度脈波を得る加速度脈波取得部と、得られた前記加速度脈波の特徴量に基づいて患者の血行動態の指標を算出する血行動態指標算出部と、前記血行動態の指標に基づいて血圧計測の要否を判定する判定部と、有する血圧計測補助装置と、
を備え、
前記血圧計測装置は、前記判定部により得られた前記血圧計測の要否に基づいて血圧計測を行う、
血圧計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血圧計測補助装置及び血圧計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血圧の計測は、カフを用いた非観血の血圧計測装置を用いて行うことが一般的である。重症患者でなければ、血圧の計測は数カ月や数日単位で行われることが多い。
【0003】
一方、入院中の重症患者などの中には、できるだけ頻繁に血圧を計測すべき患者がいる。しかし、血圧計測時には、患者に最高血圧以上のカフ圧がかかるので、血圧計測の頻度が多くなると患者の負担になる。
【0004】
このような事情を考慮して、血圧の計測は、例えば重症患者であれば30分、軽症患者であれば8時間程度の間隔を空けて行われることが一般的である。しかし、血圧計測の間隔が空き過ぎると、患者の血圧が大きく変動したタイミング(換言すれば、患者の容態が急変したタイミング)を見逃す可能性があり、それが処置の遅れにも繋がり、好ましくない。
【0005】
特許文献1には、血圧計測が必要なときのみ血圧計測装置を起動させることにより、頻繁に非観血血圧計測装置が起動されることによる患者の負担を軽減することが可能な技術が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、実際に血圧測定が行われなかった期間の血圧の推定値を算出することで、血圧測定が行われなかった期間の血圧値を補間する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5443899号公報
【特許文献2】特開2022-18387号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】”Cuffless Blood Pressure Estimation Based on Photoplethysmography Signal and Its Second Derivative, International Journal of Computer Theory and Engineering”, Vol. 9, No. 3, June 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載された技術では脈波伝搬時間を用いて血圧計測の要否を判定するとともに、特許文献2に記載された技術では脈波伝搬時間を用いて血圧の推定値を算出するようになっており、いずれの技術においても、脈波伝搬時間を計測するために、心電図計測装置が必要である。その結果、全体のシステム構成が大型化する欠点がある。
【0010】
また、軽症患者の場合は、心電図を計測せずにSpO2のみを計測するケースもある。つまり、常時計測するのはSpO2のみであり、心電図は必要に応じて計測するケースもある。このようなケースでは、脈波伝播時間を常時計測しているわけではないので、特許文献1、2の方法を用いることが困難となる。
【0011】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、非観血の血圧計測装置のように間隔をおいて血圧計測を行う場合に、心電図を用いなくても、適切なタイミングでの血圧測定を促すことができる、血圧計測補助装置及び血圧計測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の血圧計測補助装置の一つの態様は、
脈波計測装置によって検出された脈波を二階微分して加速度脈波を得る加速度脈波取得部と、
得られた前記加速度脈波の特徴量に基づいて、患者の血行動態の指標を算出する血行動態指標算出部と、
前記血行動態の指標に基づいて、血圧計測の要否を判定する判定部と、
を備える。
【0013】
本開示の血圧計測システムの一つの態様は、
血圧計測装置と、
脈波計測装置と、
前記脈波計測装置によって検出された脈波を二階微分して加速度脈波を得る加速度脈波取得部と、得られた前記加速度脈波の特徴量に基づいて患者の血行動態の指標を算出する血行動態指標算出部と、前記血行動態の指標に基づいて血圧計測の要否を判定する判定部と、有する血圧計測補助装置と、
を備え、
前記血圧計測装置は、前記判定部により得られた前記血圧計測の要否に基づいて血圧計測を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非観血の血圧計測装置のように間隔をおいて血圧計測を行う場合に、心電図を用いなくても、適切なタイミングでの血圧測定を促すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態の血圧計測システムの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態の血圧計測システム1の構成を示すブロック図である。血圧計測システム1は、血圧計測装置10と、パルスオキシメーター20と、血圧計測補助装置100と、を有する。
【0018】
血圧計測装置10及びパルスオキシメーター20は、患者に装着されている。血圧計測装置10は、カフを加圧及び減圧して患者の血圧を非観血で計測するものである。パルスオキシメーター20は、患者のSpO2及び光電脈波を計測する。
【0019】
本実施の形態では、パルスオキシメーター20は患者の指などに装着されて、患者の光電脈波が常時計測されることを想定している。また、血圧計測装置10による血圧計測は、患者の症状によって異なるが、重症患者では30分おき、それ以外の患者では3時間~8時間おきなどの予定された間隔で行われることを想定している。
【0020】
血圧計測補助装置100の各機能は、例えばパソコンにより具現化されている。また、血圧計測補助装置100は、既存の生体情報モニターなどの医療機器に組み込まれる形で具現化されてもよいし、さらには、血圧計測装置10に接続された専用のデバイスとして具現化されてもよい。
【0021】
血圧計測補助装置100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えており、以下に説明する血圧計測補助装置100の各機能は、CPU、ROM、RAMの協働により実現される。つまり、CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して血圧計測補助装置100の各要素の動作を実現する。
【0022】
なお、血圧計測補助装置100の全部又は一部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードワイヤード回路で形成してもよい。
【0023】
血圧計測補助装置100の加速度脈波取得部101は、パルスオキシメーター20から光電脈波を入力する。加速度脈波取得部101は、光電脈波を二階微分することで、加速度脈波を得る。
図2は、脈波(
図2A)から加速度脈波(
図2B)を得る様子を示した図である。
【0024】
血行動態指標算出部102は、加速度脈波の特徴量に基づいて、患者の血行動態の指標を算出する。加速度脈波の特徴量とは、例えば、
図2Bに示したような、光電脈波のピーク点a、b、c、d、eの値や、ピーク点間の間隔である。血行動態の指標とは、例えば、b/a、d/aの値である。また、血行動態の指標とは、例えば、補間部105により得られた補間値である。加速度脈波の特徴量を用いた血行動態の指標については、例えば非特許文献1に記載されているので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0025】
血行動態指標算出部102により得られた血行動態の指標は、判定部103及び補間部105に出力される。
【0026】
判定部103は、血行動態の指標に基づいて、血圧計測の要否を判定する。例えば、b/a、d/aの値が所定の閾値よりも大きい場合に、血圧計測が必要であると判定する。ここで、b/a、d/aの値が所定の閾値よりも大きいということは、血行動態が大きく変化していることを意味する。このような場合には血圧も大きく変化している可能性が高いので、判定部103は血圧計測が必要であると判定する。
【0027】
また、判定部103は、後述する補間部105により得られた補間値(推定値)を用いて血圧計測の要否を判定してもよい。例えば、判定部103は、補間値の値が前後の値と比較して所定の閾値よりも大きく変動している場合に、血圧計測が必要であると判定する。なお、判定部103は、例えば、b/a、d/aの値と補間値の両方に基づいて、血圧計測の要否を判定してもよい。
【0028】
通知部104は、判定部103の判定結果を入力し、判定部103によって血圧計測が必要である判定結果が得られた場合、このことを看護師などのユーザーに通知する。具体的には、通知部104は、表示部や音声出力部であり、血圧計測が必要であることを表示や音声によってユーザーに促す。
【0029】
補間部105は、血圧計測装置10からの血圧と、血行動態指標算出部102からの血行動態の指標と、を入力し、これらに基づいて、血圧を補間する。具体的には、補間部105は、血圧計測装置10によって計測された血圧と、血圧計測装置10によって計測されなかった期間の加速度脈波の特徴量に基づく血行動態の指標(例えばb/a、d/aの値)とを用いて、血圧計測装置10によって計測されなかった期間の血圧の推定値を補間値として算出する。
【0030】
補間部105は、補間値BP1を、計測された血圧値をBP0及び係数kを用いて、例えば、BP1=BP0×k×(b/a)により算出する。ここで、係数kは学習などにより予め決められた値である。勿論、補間の方法はこれに限らない。
【0031】
補間部105によって得られた補間値は血圧計測装置10及び判定部103に出力される。これにより、血圧計測装置10では、実際の計測値に加えて補間値も表示できるようになる。なお、補間部105は、血圧計測補助装置100ではなく、血圧計測装置10に設けられてもよい。
【0032】
図3は、実際の計測値(図中の黒丸)と補間値(図中の白丸)との様子を示した図である。実際の計測値は、例えば重症患者では30分おき、それ以外の患者では3時間~8時間おきなどに計測された値である。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、脈波計測装置(パルスオキシメーター20)によって検出された脈波を二階微分して加速度脈波を得る加速度脈波取得部101と、得られた加速度脈波の特徴量(例えばa~e)に基づいて患者の血行動態の指標(例えばb/a、d/aの値)を算出する血行動態指標算出部102と、血行動態の指標(例えばb/a、d/aの値)に基づいて血圧計測の要否を判定する判定部103と、を設けたことにより、非観血の血圧計測装置のように間隔をおいて血圧計測を行う場合に、心電図を用いなくても、適切なタイミングでの血圧測定を促すことができるようになる。
【0034】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0035】
上述の実施の形態では、判定部103の判定結果を通知部104に出力して、血圧計測が必要である判定結果が得られた場合にこのことをユーザーに通知する場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、判定部103の判定結果を血圧計測装置10に出力して、血圧計測が必要である判定結果が得られた場合に、血圧計測装置10が血圧計測を行うようにしてもよい。このようすることで、血圧計測装置10が適切なタイミングで血圧測定を行うことを促すことができる。この結果、血圧計測装置10は定期的な血圧計測以外にも必要に応じて血圧計測を行うことができる。
【0036】
上述の実施の形態では、脈波計測装置としてパルスオキシメーター20を用いた場合について述べたが、脈波計測装置としてパルスオキシメーター20以外のものを用いてもよい。例えば、脈波計測装置として血圧計測装置10を用いてもよい。つまり、血圧計測装置が脈波計測装置を兼ねていてもよい。
【0037】
ここで、脈波計測は血圧計測よりも低いカフ圧で行うことができることを考慮すると、血圧計測よりも高い頻度で脈波計測を行ったとしても患者に与える負担は小さい。よって、血圧計測装置10によって血圧計測よりも高い頻度で脈波計測を行い、計測した脈波を加速度脈波取得部101に出力してもよい。
【0038】
上述の実施の形態では、血行動態の指標としてb/a、d/aの値を用いたが、本発明の血行動態の指標はこれに限らない。要は、加速度脈波の特徴量から導出した血行動態の指標を用いればよい。さらに、血行動態の指標は、加速度脈波以外の要素を加えてもよい。血行動態の指標は、加速度脈波に加えて、例えば、SpO2やPI(Perfusion Index)値、PR(Pulse Rate)値に基づいて求めてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示の血圧計測補助装置及び血圧計測システムは、非観血の血圧計測装置のように間隔をおいて血圧計測を行う場合に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 血圧計測システム
10 血圧計測装置
20 パルスオキシメーター
100 血圧計測補助装置
101 加速度脈波取得部
102 血行動態指標算出部
103 判定部
104 通知部
105 補間部