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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117158
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】空調システムおよび空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/02 20190101AFI20240822BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20240822BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240822BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240822BHJP
   F24F 11/54 20180101ALI20240822BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240822BHJP
   F24F 140/12 20180101ALN20240822BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20240822BHJP
【FI】
F24F1/02 441C
F24F7/08 101Z
F24F7/08 101J
F24F7/007 B
F24F11/74
F24F11/54
F24F11/64
F24F140:12
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023090
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山根 宏昌
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BE01
3L260AB01
3L260AB15
3L260BA41
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA14
3L260CA15
3L260CA17
3L260CA37
3L260CB52
3L260CB53
3L260EA07
3L260FC02
3L260FC03
3L260JA24
(57)【要約】
【課題】 空調対象の室内から室外へ排気する空気から回収した熱エネルギーを利用して効率良く空調を行うための空調システムおよび空調制御方法を提供する。
【解決手段】 空調システム1Aは、空調対象の室内の第1方向側の側壁近傍に設置され、外気を導入して室内に給気する第1給気ファン16と、導入した外気を熱交換する第1熱交換器14と、室内の第1方向と対向する第2方向に設置され、室内の空気を導入して室外に排気する第1排気ファン22と、導入した室内の空気を熱交換する第2熱交換器21と、冷媒を圧縮する第1圧縮機11と、第1圧縮機11と第2熱交換器21との間で冷媒を移送する第1配管41と、第2熱交換器21と第1熱交換器14との間で冷媒を移送する第2配管42と、第1熱交換器14と第1圧縮機11との間で冷媒を移送する第3配管43とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象の室内の第1方向側の側壁近傍に設置され、外気を導入して前記室内に給気する給気ファンと、
前記給気ファンが導入した外気を熱交換する第1熱交換器と、
前記室内の前記第1方向と対向する第2方向に設置され、前記室内の空気を導入して室外に排気する排気ファンと、
前記排気ファンが導入した前記室内の空気を熱交換する第2熱交換器と、
前記第1熱交換器および前記第2熱交換器で熱交換に用いるために充填された冷媒を圧縮する第1圧縮機と、
前記第1圧縮機と前記第2熱交換器とに接続され、前記第1圧縮機と前記第2熱交換器との間で前記冷媒を移送する第1配管と、
前記第2熱交換器と前記第1熱交換器とに接続され、前記第2熱交換器と前記第1熱交換器との間で前記冷媒を移送する第2配管と、
前記第1熱交換器と前記第1圧縮機とに接続され、前記第1熱交換器と前記第1圧縮機との間で前記冷媒を移送する第3配管と、を備えた空調システム。
【請求項2】
前記室内と室外との空気の圧力差を検出する第1差圧センサと、
前記第1差圧センサで検出された圧力差に基づいて、前記給気ファンによる給気の風量または前記排気ファンによる排気の風量の少なくともいずれかを調整する風量制御部と、をさらに備えた請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記室内の空気の二酸化炭素濃度を検出する第1二酸化炭素濃度センサをさらに備え、
前記風量制御部は、前記第1差圧センサで検出された圧力差および前記第1二酸化炭素濃度センサで検出された二酸化炭素濃度に基づいて、前記給気ファンによる給気の風量または前記排気ファンによる排気の風量の少なくともいずれかを調整する、請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
空調対象の室内の第1方向側の側壁近傍に設置された第1空調設備と、前記室内の前記第1方向と対向する第2方向に設置された第2空調設備と、前記第1空調設備および前記第2空調設備に通信可能に接続された連携制御装置とを備え、
前記第1空調設備は、
外気を導入して前記室内に給気する第2給気ファンと、
前記第2給気ファンが導入した外気を熱交換する第3熱交換器と、
前記室内の空気を導入して室外に排気する第2排気ファンと、
前記第2排気ファンが導入した前記室内の空気を熱交換する第4熱交換器と、
前記第3熱交換器および前記第4熱交換器で熱交換に用いるために充填された冷媒を圧縮する第2圧縮機と、
前記第2圧縮機と前記第4熱交換器とに接続され、前記第2圧縮機と前記第4熱交換器との間で前記冷媒を移送する第4配管と、
前記第4熱交換器と前記第3熱交換器とに接続され、前記第4熱交換器と前記第3熱交換器との間で前記冷媒を移送する第5配管と、
前記第3熱交換器と前記第2圧縮機とに接続され、前記第3熱交換器と前記第2圧縮機との間で前記冷媒を移送する第6配管と、
前記室内と室外との空気の圧力差の情報を取得する第2差圧センサとを有し、
前記第2空調設備は、
前記第2排気ファンと対向する位置に設置され、外気を導入して前記室内に給気する第3給気ファンと、
前記第3給気ファンが導入した外気を熱交換する第5熱交換器と、
前記第2給気ファンと対向する位置に設置され、前記室内の空気を導入して室外に排気する第3排気ファンと、
前記第3排気ファンが導入した前記室内の空気を熱交換する第6熱交換器と、
前記第5熱交換器および前記第6熱交換器で熱交換に用いるために充填された冷媒を圧縮する第3圧縮機と、
前記第3圧縮機と前記第6熱交換器とに接続され、前記第3圧縮機と前記第6熱交換器との間で前記冷媒を移送する第7配管と、
前記第6熱交換器と前記第5熱交換器とに接続され、前記第6熱交換器と前記第5熱交換器との間で前記冷媒を移送する第8配管と、
前記第5熱交換器と前記第3圧縮機とに接続され、前記第5熱交換器と前記第3圧縮機との間で前記冷媒を移送する第9配管と、
前記室内と室外との空気の圧力差を検出する第3差圧センサとを有し、
前記連携制御装置は、
前記第2差圧センサまたは第3差圧センサで検出された圧力差に基づいて、前記第2給気ファンによる給気の風量、前記第3給気ファンによる給気の風量、前記第2排気ファンによる排気の風量、または前記第3排気ファンによる排気の風量の少なくともいずれかを調整する風量制御部を有する、空調システム。
【請求項5】
前記第1空調設備は、前記室内の空気の二酸化炭素濃度を検出する第2二酸化炭素濃度センサをさらに備え、
前記第2空調設備は、前記室内の空気の二酸化炭素濃度を検出する第3二酸化炭素濃度センサをさらに備え、
前記連携制御装置の風量制御部は、前記第2差圧センサで検出された圧力差と、前記第3差圧センサで取得された圧力差と、前記第2二酸化炭素濃度センサで検出された二酸化炭素濃度と、前記第3二酸化炭素濃度センサで取得された二酸化炭素濃度とに基づいて、前記第2給気ファンによる給気の風量、前記第3給気ファンによる給気の風量、前記第2排気ファンによる排気の風量、または前記第3排気ファンによる排気の風量の少なくともいずれかを調整する、請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
空調対象の室内の第1方向側の側壁近傍に設置され、外気を導入して前記室内に給気する給気ファンと、
前記給気ファンが導入した外気を熱交換する第1熱交換器と、
前記室内の前記第1方向と対向する第2方向に設置され、前記室内の空気を導入して室外に排気する排気ファンと、
前記排気ファンが導入した前記室内の空気を熱交換する第2熱交換器と、
前記第1方向側の側壁近傍に設置され、前記第1熱交換器または前記第2熱交換器で熱交換に用いるために充填された冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と前記第2熱交換器とに接続され、前記圧縮機と前記第2熱交換器との間で前記冷媒を移送する第1配管と、
前記第2熱交換器と前記第1熱交換器とに接続され、前記第2熱交換器と前記第1熱交換器との間で前記冷媒を移送する第2配管と、
前記第1熱交換器と前記圧縮機とに接続され、前記第1熱交換器と前記圧縮機との間で前記冷媒を移送する第3配管と、
前記室内と室外との空気の圧力差を検出する第1差圧センサと、を備えた空調システムが、
前記第1差圧センサで検出された圧力差に基づいて、前記給気ファンによる給気の風量または前記排気ファンによる排気の風量の少なくともいずれかを調整する、空調制御方法。
【請求項7】
空調対象の室内の第1方向側の側壁近傍に設置され、
外気を導入して前記室内に給気する第2給気ファンと、
前記第2給気ファンが導入した外気を熱交換する第3熱交換器と、
前記室内の空気を導入して室外に排気する第2排気ファンと、
前記第2排気ファンが導入した前記室内の空気を熱交換する第4熱交換器と、
前記第3熱交換器および前記第4熱交換器で熱交換に用いるために充填された冷媒を圧縮する第2圧縮機と、
前記第2圧縮機と前記第4熱交換器とに接続され、前記第2圧縮機と前記第4熱交換器との間で前記冷媒を移送する第4配管と、
前記第4熱交換器と前記第3熱交換器とに接続され、前記第4熱交換器と前記第3熱交換器との間で前記冷媒を移送する第5配管と、
前記第3熱交換器と前記第2圧縮機とに接続され、前記第3熱交換器と前記第2圧縮機との間で前記冷媒を移送する第6配管と、
前記室内と室外との空気の圧力差の情報を取得する第2差圧センサと、
を有する第1空調設備と、
前記室内の前記第1方向と対向する第2方向に設置され、
前記第2排気ファンと対向する位置に設置され、外気を導入して前記室内に給気する第3給気ファンと、
前記第3給気ファンが導入した外気を熱交換する第5熱交換器と、
前記第2給気ファンと対向する位置に設置され、前記室内の空気を導入して室外に排気する第3排気ファンと、
前記第3排気ファンが導入した前記室内の空気を熱交換する第6熱交換器と、
前記第5熱交換器および前記第6熱交換器で熱交換に用いるために充填された冷媒を圧縮する第3圧縮機と、
前記第3圧縮機と前記第6熱交換器とに接続され、前記第3圧縮機と前記第6熱交換器との間で前記冷媒を移送する第7配管と、
前記第6熱交換器と前記第5熱交換器とに接続され、前記第6熱交換器と前記第5熱交換器との間で前記冷媒を移送する第8配管と、
前記第5熱交換器と前記第3圧縮機とに接続され、前記第5熱交換器と前記第3圧縮機との間で前記冷媒を移送する第9配管と、
前記室内と室外との空気の圧力差を検出する第3差圧センサと、
を有する第2空調設備とに通信可能に接続された連携制御装置が、
前記第2差圧センサまたは第3差圧センサで検出された圧力差に基づいて、前記第2給気ファンによる給気の風量、前記第3給気ファンによる給気の風量、前記第2排気ファンによる排気の風量、または前記第3排気ファンによる排気の風量の少なくともいずれかを調整する、空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調システムおよび空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型の施設に設置される空調システムは、外気を導入して熱交換を行い、空調対象の室内に給気する外気処理ユニットと、室内の空気の熱回収を行って室外に排気する熱回収ユニットとを備えている。
【0003】
この外気処理ユニットと熱回収ユニットとは、空調対象の室内の対向する壁面または窓枠近傍にそれぞれ設置することで、室内を効率良く空調することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-157282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの外気処理ユニットと熱回収ユニットとは別個に構成されて設置されるため、熱回収ユニットで回収された熱エネルギーを外気処理ユニットで有効利用することができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、空調対象の室内から室外へ排気する空気から回収した熱エネルギーを利用して効率良く空調を行うための空調システムおよび空調制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、空調システムは、空調対象の室内の第1方向側の側壁近傍に設置され、外気を導入して室内に給気する第1給気ファンと、導入した外気を熱交換する第1熱交換器と、室内の第1方向と対向する第2方向に設置され、室内の空気を導入して室外に排気する第1排気ファンと、導入した室内の空気を熱交換する第2熱交換器と、冷媒を圧縮する第1圧縮機と、第1圧縮機と第2熱交換器との間で冷媒を移送する第1配管と、第2熱交換器と第1熱交換器との間で冷媒を移送する第2配管と、第1熱交換器と第1圧縮機との間で冷媒を移送する第3配管とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態による空調システムの構成を示す全体図である。
図2】本発明の第1実施形態による空調システム内の第1外気処理制御器、第1熱回収制御器、および連携制御装置の詳細な構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態による空調システム内の連携制御装置が実行する風量制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態による空調システムの変形例を示す全体図である。
図5】本発明の第2実施形態による空調システムの構成を示す全体図である。
図6】本発明の第2実施形態による空調システム内の第2外気処理制御器、第3外気処理制御器、第1熱回収制御器、第2熱回収制御器、および連携制御装置の詳細な構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態による空調システム内の連携制御装置が実行する風量制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の空調システムの実施形態について、以下に図面を参照して説明する。
【0010】
《第1実施形態》
〈第1実施形態による空調システムの構成〉
図1は、本発明の第1実施形態による空調システム1Aの構成を示す全体図である。空調システム1Aは、組み立てラインを有する工場の室内Xを空調するためのシステムであり、第1外気処理ユニット10と、第1熱回収ユニット20と、連携制御装置30Aとを備える。第1外気処理ユニット10と第1熱回収ユニット20とは、空調対象の室内Xの対向する壁面または窓枠近傍にそれぞれ設置される。
【0011】
第1外気処理ユニット10は、室内Xの第1方向側の側壁近傍に設置され、外気を導入して熱交換を行い、空調対象の室内に給気するユニットである。第1外気処理ユニット10は、第1圧縮機11と、四方弁12と、膨張弁13と、第1熱交換器14と、再熱用熱交換器15と、第1給気ファン16と、第1差圧センサ17と、第1温湿度計18と、第1外気処理制御器19とを有する。
【0012】
第1差圧センサ17は、室内Xの空気と室外の空気との圧力差として、[室内X空気の圧力-室外空気の圧力]の値を算出する。第1温湿度計18は、室内Xの温度および湿度を計測する。第1外気処理制御器19の詳細な構成は、後述する。
【0013】
第1熱回収ユニット20は、室内Xの第1方向と対向する第2方向側の側壁近傍に設置され、室内Xの空気の熱回収を行って室外に排気するユニットであり、第2熱交換器21と、第1排気ファン22と、二酸化炭素(CO2)濃度センサ23と、第1熱回収制御器24とを有する。第1CO2濃度センサ23は、室内Xの空気のCO2濃度を検出する。第1熱回収制御器24の詳細な構成は、後述する。
【0014】
第1外気処理ユニット10の第1圧縮機11と第1熱回収ユニット20の第2熱交換器21とは、四方弁12を介して第1配管41で接続されている。また、第2熱交換器21と第1熱交換器14とは、第2配管42で接続されている。膨張弁13は、第2配管42内の第1熱交換器14の近傍に設置されている。また、第1圧縮機11と第1熱交換器14とが四方弁12を介して第3配管43で接続されている。また、再熱用熱交換器15が、第2配管42と第1配管41とに接続されている。
【0015】
図2は、第1外気処理制御器19、第1熱回収制御器24、および連携制御装置30Aの詳細な構成を示すブロック図である。
【0016】
第1外気処理制御器19は、第1動作制御部191と、第1通信部192とを有する。第1動作制御部191は、第1外気処理ユニット10内の機器である第1圧縮機11、四方弁12、膨張弁13、第1熱交換器14、再熱用熱交換器15、第1給気ファン16、第1差圧センサ17、および第1温湿度計18を制御する。第1通信部192は、連携制御装置30Aとの通信を行う。
【0017】
第1熱回収制御器24は、第2動作制御部241と、第2通信部242とを有する。第2動作制御部241は、第1熱回収ユニット20内の機器である第2熱交換器21、第1排気ファン22、および第1CO2濃度センサ23を制御する。第2通信部242は、連携制御装置30Aとの通信を行う。
【0018】
連携制御装置30Aは、第1外気処理制御器19および第1熱回収制御器24に通信可能に接続され、記憶部31と、第3通信部32Aと、CPU33Aとを有する。記憶部31は、設定値記憶部311と、閾値記憶部312とを有する。設定値記憶部311は、利用者から要求された設定温度、設定湿度、および設定風量の情報を記憶する。閾値記憶部312は、後述する風量制御処理において用いる第1閾値T1、第2閾値T2、および第3閾値T3を記憶する。
【0019】
第3通信部32Aは、第1外気処理制御器19および第1熱回収制御器24との通信を行う。
【0020】
CPU33Aは、圧力差取得部331Aと、CO2濃度取得部332Aと、風量制御部333Aとを有する。圧力差取得部331Aは、第1外気処理制御器19から、第1差圧センサ17で取得された室内Xと室外との圧力差の情報を取得する。CO2濃度取得部332Aは、第1熱回収制御器24から、第1CO2濃度センサ23で取得された室内Xの空気のCO2濃度の情報を取得する。
【0021】
風量制御部333Aは、圧力差取得部331Aで検出された圧力差の情報およびCO2濃度取得部332Aで検出されたCO2濃度の情報に基づいて、第1給気ファン16による給気の風量または第1排気ファン22による排気の風量の少なくともいずれかを調整する。
【0022】
〈第1実施形態による空調システムの動作〉
上述したように構成された空調システム1Aにおいて、第1配管41、第2配管42、および第3配管43を循環する冷媒が充填され、第1熱交換器14、第2熱交換器21、および再熱用熱交換器15で熱交換に用いられる。
【0023】
冷房運転が行われるときには、冷媒が第1圧縮機11で高温高圧に圧縮された後、四方弁12および第1配管41を介して第1熱回収ユニット20の第2熱交換器21に移送され、第2熱交換器21において室内から室外に排気する冷気を利用して熱回収され液化される。そして、液化された冷媒が第2配管42を介して第1外気処理ユニット10に移送され、膨張弁13により急激に膨張されて低温低圧にされる。この低温冷媒は、第1熱交換器14に供給される。
【0024】
このように、高温冷媒の冷却に排気を利用することで、従来のコンデンシングユニットように外気を利用する場合よりも効率良く小さいエネルギーで冷房時の外気処理を行うことができる。
【0025】
また、暖房運転が行われるときには、冷房運転の場合と逆方向に冷媒が移送され、第2熱交換器21において室内から室外に排気する暖気の熱回収が行われて冷媒が加熱される。このように冷媒の加熱に排気する暖気を利用することで、従来のエバユニットのように外気を利用する場合よりも効率良く小さいエネルギーで暖房時の外気処理を行うことができる。
【0026】
また、第1外気処理ユニット10と第1熱回収ユニット20とは室内Xの対向する壁面または窓枠近傍にそれぞれ設置されているため、第1外気処理ユニット10が室内Xに供給した調整空気が効率良く室内Xに拡散される。
【0027】
このように空調システム1A内を冷媒が循環している状態で、第1給気ファン16が回転すると、室外の外気が第1外気処理ユニット10に取り込まれて第1熱交換器14で熱交換により冷却および除湿される。取り込まれた外気に対して第1熱交換器14が十分な除湿を行うと温度が下がりすぎてしまい、そのまま室内Xに供給するとコールドドラフトが発生するおそれがある。そこで、再熱用熱交換器15が、第1熱交換器14が冷却および除湿した外気を再熱処理し、室温レベルまで上昇させた後、室内Xに給気する。
【0028】
また、第1排気ファン22が回転すると、室内Xの空気が第1熱回収ユニット20に取り込まれて第1排気ファン22で熱交換により冷媒の熱回収が行われる。
【0029】
空調システム1Aの稼動中に、連携制御装置30Aが実行する風量制御処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
空調システム1A内の機器の電源がON状態になると(S1の「YES」)、風量制御部333Aが設定値記憶部311から設定風量の情報を取得する。風量制御部333Aは、第1給気ファン16に対し、取得した設定風量による給気運転指示を生成して第3通信部32Aを介して第1外気処理制御器19に送信する。また風量制御部333Aは、第1排気ファン22に対し、取得した設定風量による排気運転指示を生成して第3通信部32Aを介して第1熱回収制御器24に送信する(S2)。
【0031】
第1外気処理制御器19では、連携制御装置30Aから送信された給気運転指示を第1通信部192から受信し、第1動作制御部191が、受信した給気運転指示で示される風量になるように第1給気ファン16の回転数を制御して動作させる。
【0032】
また第1熱回収制御器24では、連携制御装置30Aから送信された排気運転指示を第2通信部242から受信し、第2動作制御部241が、受信した給気運転指示で示される風量になるように第1排気ファン22の回転数を制御して動作させる。
【0033】
その後、第1動作制御部191は、第1差圧センサ17が算出した室内Xと室外との圧力差を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Aに送信する。第1動作制御部191が送信した圧力差の情報は、連携制御装置30Aの圧力差取得部331Aで取得される。
【0034】
また、第1動作制御部191は、第1温湿度計18が計測した室内Xの温度および湿度を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Aに送信する。第1動作制御部191が送信した室内Xの温度および湿度の情報は、連携制御装置30Aの風量制御部333Aで取得される。
【0035】
また、第2動作制御部241は、第1CO2濃度センサ23が検出した室内XのCO2濃度を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Aに送信する。第2動作制御部241が送信した室内XのCO2濃度の情報は、連携制御装置30Aの室内XのCO2濃度取得部332Aで取得される。
【0036】
連携制御装置30Aでは、風量制御部333Aが、第1外気処理制御器19から送信された室内Xの温度および湿度と、設定値記憶部311に記憶された設定温度および設定湿度とに基づいて、給気風量の変更が必要と判断すると、変更後の風量に基づく新たな給気運転指示を生成して第1外気処理制御器19に送信する。また風量制御部333Aは、新たな給気運転指示を生成して送信すると、これに追従するように、変更後の風量に基づく新たな排気運転指示を生成して第1熱回収制御器24に送信する。
【0037】
また連携制御装置30Aでは、風量制御部333Aが、圧力差取得部331Aで取得された室内Xと室外との圧力差の情報を取得する(S3)。風量制御部333Aは、取得した圧力差が、閾値記憶部312に記憶された第1閾値T1を超えるか否かを判定する(S4)。
【0038】
本実施形態において、室内Xは例えば、組み立てラインを有する工場に設けられており、外部から埃等の流入を防いで清浄度または衛生状態を良好に保つために、陽圧にする必要がある。この第1閾値T1は、室内Xが適切な陽圧に保たれているか否かを判定するために設定された値である。
【0039】
ここで、風量制御部333Aは、取得した圧力差が第1閾値T1以下であり、室内Xが適切な陽圧に保たれていないと判定すると(S4の「NO」)、排気風量を回転数n1分、下げるように排気運転指示を生成して第1熱回収制御器24に送信する(S5)。
【0040】
第1熱回収制御器24では、連携制御装置30Aから送信された排気運転指示を第2通信部242から受信し、第2動作制御部241が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第1排気ファン22の回転数を制御して動作させる。
【0041】
排気風量が下がり、室内Xの圧力が上がって、室内Xと室外との圧力差が第1閾値T1を超える状態になると(S4の「YES」)、風量制御部333Aは、CO2濃度取得部332Aで取得された室内XのCO2濃度を取得する(S6)。風量制御部333Aは、取得した室内XのCO2濃度が、閾値記憶部312に記憶された第2閾値T2未満であるか否かを判定する(S7)。
【0042】
この第2閾値T2は、予め設定された、室内Xの作業員の体調を適正に保つことが可能な適正CO2濃度範囲の下限値である。
【0043】
風量制御部333Aは、取得した室内XのCO2濃度が第2閾値T2未満であると判定すると(S7の「YES」)、給気風量を下げるように給気運転指示を生成して第1外気処理制御器19に送信するとともに、排気風量を下げるように排気運転指示を生成して第1熱回収制御器24に送信する(S8)。
【0044】
第1外気処理制御器19では、連携制御装置30Aから送信された給気運転指示を第1通信部192から受信し、第1動作制御部191が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第1給気ファン16の回転数を制御して動作させる。
【0045】
また第1熱回収制御器24では、連携制御装置30Aから送信された排気運転指示を第2通信部242から受信し、第2動作制御部241が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第1排気ファン22の回転数を制御して動作させる。ここで、給気風量と排気風量は同一の風量を下げるように制御されるのが好ましく、例えば第1給気ファン16の回転数と第1排気ファンの回転数は同一の回転数n2だけ減少させる。これにより、室内Xの換気が抑制され、CO2濃度が上述した適正CO2濃度範囲内になる。
【0046】
ステップS7において、取得した室内XのCO2濃度が、閾値記憶部312に記憶された第2閾値T2以上であるときには(S7の「NO」)、風量制御部333Aは、取得した室内XのCO2濃度が、閾値記憶部312に記憶された第3閾値T3を超えるか否かを判定する(S9)。この第3閾値T3は、上述した適正CO2濃度範囲の上限値である。
【0047】
風量制御部333Aは、取得した室内XのCO2濃度が第3閾値T3を超えると判定すると(S9の「YES」)、給気風量を上げるように給気運転指示を生成して第1外気処理制御器19に送信するとともに、排気風量を上げるように排気運転指示を生成して第1熱回収制御器24に送信する(S10)。
【0048】
第1外気処理制御器19では、連携制御装置30Aから送信された給気運転指示を第1通信部192から受信し、第1動作制御部191が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第1給気ファン16の回転数を制御して動作させる。
【0049】
また第1熱回収制御器24では、連携制御装置30Aから送信された排気運転指示を第2通信部242から受信し、第2動作制御部241が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第1排気ファン22の回転数を制御して動作させる。ここで、給気風量と排気風量は同一の風量を上げるように制御されるのが好ましく、例えば第1給気ファン16の回転数と第1排気ファンの回転数は同一の回転数n3だけ上げる。これにより、室内Xの換気が促進され、CO2濃度が上述した適正CO2濃度範囲内になる。
【0050】
また、回転数の増減量は、n1≧n2>n3とするのが好ましい。換言すれば、圧力差を所定範囲とするために下げる排気の風量に対して、CO2濃度が所定値T2よりも低い場合に低下(減少)させる給気および排気の風量を略同一か低くし、CO2濃度が所定値T2よりも低い場合に低下(減少)させる風量よりもCO2濃度が所定値T3よりも高い場合に上昇(増加)させる風量を小さくすることが好ましい。これにより、室内Xの陽圧を確保しつつ充分な換気量を確保しながら、送風量を安定させ、風量制御のハンチングを抑えることができる。
【0051】
上述した処理により、室内Xが陽圧且つ適正CO2濃度範囲内になると(S9の「YES」)、風量制御部333Aは給気風量と排気風量を固定した状態で所定時間運転させる(S11、S12の「NO」)。風量固定後、所定時間が経過し(S12の「YES」)、電源ON状態が継続していれば(S13の「NO」)、ステップS6に戻る。電源OFF操作がされれば(S13の「YES」)、処理を終了する。
【0052】
以上の第1実施形態の空調システムによれば、空調対象の室内から室外へ排気する空気から回収した熱エネルギーを利用して室内に給気する空気の空調を効率良く行いつつ、給気風量と排気風量とを適切に連携させて室内を快適且つ衛生的に保つことができる。また本実施形態の空調システムでは、外気処理ユニットと熱回収ユニットとを空調対象の室内の対向する壁面または窓枠近傍にそれぞれ設置するため、室内全体を効率良く空調することができる。
【0053】
図4は、上述した第1実施形態の空調システム1Aの変形例である空調システム1Bの構成を示す全体図である。空調システム1Bでは、空調システム1Aで説明した第1外気処理ユニット10内の第1圧縮機11および四方弁12を圧縮機ユニット10aとして室外に配置し、それ以外の膨張弁13、第1熱交換器14、再熱用熱交換器15、第1給気ファン16、第1差圧センサ17、第1温湿度計18、および第1外気処理制御器19を換気ユニット10bとして建物の壁面または窓枠に配置する。
【0054】
このように第1外気処理ユニット10内の各機器を配置することで、第1圧縮機11から発生する騒音が気になるような用途で使用する場合や、第1外気処理ユニット10を建物の壁面または窓枠に設置したいが第1圧縮機11の重量またはサイズが大き過ぎる場合に、これらの問題を解決して空調システム1Bを稼動させることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では室内Xの空気と室外の空気との圧力差が第1閾値T1以上となるように制御したが、上限を設け所定範囲内となるように制御しても良い。
【0056】
《第2実施形態》
〈第2実施形態による空調システムの構成〉
図5は、本発明の第2実施形態による空調システム1Cの構成を示す全体図である。空調システム1Cは、組み立てラインを有する工場の室内Xを空調するためのシステムであり、第1空調設備100と、第2空調設備200と、第1空調設備100および第2空調設備200に通信可能に接続された連携制御装置30Cとを備える。第1空調設備100と第2空調設備200とは、室内Xの対向する壁面または窓枠近傍にそれぞれ設置される。
【0057】
第1空調設備100は、室内Xの第1方向側の側壁近傍に設置され、第2外気処理ユニット50と、第2熱回収ユニット60とを有する。第2外気処理ユニット50と第2熱回収ユニット60とは、室内Xの同一側面の横方向(幅方向または奥行き方向)になるべく離れた位置にそれぞれ設置される。
【0058】
第2外気処理ユニット50は、第2圧縮機51と、四方弁52と、膨張弁53と、第3熱交換器54と、再熱用熱交換器55と、第2給気ファン56と、第2差圧センサ57と、温湿度計58と、第2外気処理制御器59とを有する。第2熱回収ユニット60は、第4熱交換器61と、第2排気ファン62と、第2CO2濃度センサ63と、第2熱回収制御器64とを有する。
【0059】
第2外気処理ユニット50の第2圧縮機51と第2熱回収ユニット60の第4熱交換器61とは、四方弁52を介して第4配管71で接続されている。また、第4熱交換器61と第3熱交換器54とは、第5配管72で接続されている。膨張弁53は、第5配管72内の第3熱交換器54の近傍に設置されている。また、第2圧縮機51と第3熱交換器54とが四方弁52を介して第6配管73で接続されている。また、再熱用熱交換器55が、第5配管72と第4配管71とに接続されている。
【0060】
また、第2空調設備200は、室内Xの第1方向と対向する第2方向側の側壁近傍に設置され、第3外気処理ユニット80と、第3熱回収ユニット90とを有する。第2空調設備200は、室内Xの第1空調設備100と対向する壁面または窓枠近傍に設置され、第3外気処理ユニット80は第2熱回収ユニット60と対向するように設置され、第3熱回収ユニット90は第2外気処理ユニット50と対向するように設置される。
【0061】
第3外気処理ユニット80は、第3圧縮機81と、四方弁82と、膨張弁83と、第5熱交換器84と、再熱用熱交換器85と、第3給気ファン86と、第3差圧センサ87と、温湿度計88と、第3外気処理制御器89とを有する。第3熱回収ユニット90は、第6熱交換器91と、第3排気ファン92と、第3CO2濃度センサ93と、第3熱回収制御器94とを有する。
【0062】
第3外気処理ユニット80の第3圧縮機81と第3熱回収ユニット90の第6熱交換器91とは、四方弁82を介して第7配管101で接続されている。また、第6熱交換器91と第5熱交換器84とは、第8配管102で接続されている。膨張弁83は、第8配管102内の第5熱交換器84の近傍に設置されている。また、第3圧縮機81と第5熱交換器84とが四方弁82を介して第9配管103で接続されている。また、再熱用熱交換器85が、第8配管102と第7配管101とに接続されている。
【0063】
第1空調設備100および第2空調設備200内の各機器は、それぞれ第1実施形態で説明した第1圧縮機11、四方弁12、膨張弁13、第1熱交換器14、再熱用熱交換器15、第1給気ファン16、第1差圧センサ17、第1温湿度計18、および第1外気処理制御器19と同様の機能を有するため、詳細な説明は省略する。
【0064】
図6は、第2外気処理制御器59、第2熱回収制御器64、第3外気処理制御器89、第3熱回収制御器94、および連携制御装置30Bの詳細な構成を示すブロック図である。
【0065】
第2外気処理制御器59および第3外気処理制御器89は、第1外気処理制御器19と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。第2熱回収制御器64および第3熱回収制御器94は、第1熱回収制御器24と同様の構成を有するため、詳細な説明は省略する。
【0066】
連携制御装置30Bは、連携制御装置30Aと同様の構成を有するため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0067】
本実施形態において第3通信部32Cは、第2外気処理制御器59、第2熱回収制御器64、第3外気処理制御器89、および第3熱回収制御器94との通信を行う。
【0068】
CPU33Cの圧力差取得部331Aは、第2外気処理制御器59から、第2差圧センサ57で取得された室内Xと室外との圧力差の情報を取得するとともに、第3外気処理制御器89から、第3差圧センサ87で取得された室内Xと室外との圧力差の情報を取得する。
【0069】
CO2濃度取得部332Cは、第2熱回収制御器64から、第2CO2濃度センサ63で取得された室内Xの空気のCO2濃度の情報を取得するとともに、第3熱回収制御器94から、第3CO2濃度センサ93で取得された室内Xの空気のCO2濃度の情報を取得する。
【0070】
風量制御部333Cは、圧力差取得部331Cで検出された圧力差の情報およびCO2濃度取得部332Cで検出されたCO2濃度の情報に基づいて、第2給気ファン56、第3給気ファン86による給気の風量、または第2排気ファン62、第3排気ファン92による排気の風量の少なくともいずれかを調整する。
【0071】
〈第2実施形態による空調システムの動作〉
上述したように構成された空調システム1Cが稼動すると、第1空調設備100および第2空調設備200それぞれにおいて、第1実施形態で説明した場合と同様に、循環する冷媒を用いて空調が行われる。
【0072】
その際、第1空調設備100の第2外気処理ユニット50と第2空調設備200の第3熱回収ユニット90とが対向する位置に設置されているため、第2外気処理ユニット50の第2給気ファン56から第3熱回収ユニット90の第3排気ファン92に向かって空気の流路が形成される。また、第1空調設備100の第2熱回収ユニット60と第2空調設備200の第3外気処理ユニット80とが対向する位置に設置されているため、第3外気処理ユニット80の第3給気ファン86から第2熱回収ユニット60の第2排気ファン62に向かって空気の流路が形成される。
【0073】
空調システム1Cの稼動中に、連携制御装置30Cが実行する風量制御処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
空調システム1C内の機器の電源がON状態になると(S21の「YES」)、風量制御部333Cが設定値記憶部311から設定風量の情報を取得する。風量制御部333Cは、第2給気ファン56に対して設定風量による給気運転指示を生成して第3通信部32Cを介して第2外気処理制御器59に送信するとともに、第3給気ファン86に対して設定風量による給気運転指示を生成して第3外気処理制御器89に送信する。また風量制御部333Cは、第1排気ファン22に対して設定風量による排気運転指示を生成して第3通信部32Cを介して第2熱回収制御器64に送信するとともに、第3排気ファン92に対して設定風量による排気運転指示を生成して第3熱回収制御器94に送信する(S22)。
【0075】
第2外気処理制御器59では、連携制御装置30Cから送信された給気運転指示を第4通信部592から受信し、第4動作制御部591が、受信した給気運転指示で示される風量になるように第2給気ファン56の回転数を制御して動作させる。第3外気処理制御器89においても同様に、第6動作制御部891が第3給気ファン86の回転数を制御して動作させる。
【0076】
また第2熱回収制御器64では、連携制御装置30Cから送信された排気運転指示を第5通信部642から受信し、第5動作制御部641が、受信した給気運転指示で示される風量になるように第2排気ファン62の回転数を制御して動作させる。第3熱回収制御器94においても同様に、第7動作制御部941が第3排気ファン92の回転数を制御して動作させる。
【0077】
その後、第4動作制御部591は、第2差圧センサ57が算出した室内Xと室外との圧力差を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Cに送信する。また、第4動作制御部591は、温湿度計58が計測した室内Xの温度および湿度を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Cに送信する。また、第5動作制御部641は、第2CO2濃度センサ63が検出した室内XのCO2濃度を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Cに送信する。
【0078】
また、第6動作制御部891は、第3差圧センサ87が算出した室内Xと室外との圧力差を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Cに送信する。また、第6動作制御部891は、温湿度計88が計測した室内Xの温度および湿度を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Cに送信する。また、第7動作制御部941は、第3CO2濃度センサ93が検出した室内XのCO2濃度を所定時間間隔で取得し、連携制御装置30Cに送信する。
【0079】
第4動作制御部591および第6動作制御部891が送信した圧力差の情報は、連携制御装置30Cの圧力差取得部331Cで取得される。また、第4動作制御部591および第6動作制御部891が送信した室内Xの温度および湿度の情報は、連携制御装置30Cの風量制御部333Cで取得される。また、第5動作制御部641および第7動作制御部941が送信した室内XのCO2濃度の情報は、連携制御装置30Cの室内XのCO2濃度取得部332Cで取得される。
【0080】
連携制御装置30Cでは、風量制御部333Cが、第2外気処理制御器59および第3外気処理制御器89から送信された室内Xの温度および湿度と、設定値記憶部311に記憶された設定温度および設定湿度とに基づいて、給気風量の変更が必要と判断すると、変更後の風量に基づく新たな給気運転指示を生成して第2外気処理制御器59および第3外気処理制御器89に送信する。また風量制御部333Cは、新たな給気運転指示を生成して送信すると、これに追従するように、変更後の風量に基づく新たな排気運転指示を生成して第2熱回収制御器64および第3熱回収制御器94に送信する。
【0081】
また、風量制御部333Cは、第2外気処理制御器59および第3外気処理制御器89から送信された室内Xと室外との圧力差の情報を取得し、これらのうち値が小さい方の圧力差の情報を選択する(S23)。風量制御部333Cは、選択した圧力差が、閾値記憶部312に記憶された第1閾値T1を超えるか否かを判定する(S24)。
【0082】
選択した圧力差が第1閾値T1以下であるときには(S24の「NO」)、風量制御部333Cは、排気風量を回転数n1分、下げるように排気運転指示を生成して第2熱回収制御器64および第3熱回収制御器94に送信する(S25)。
【0083】
第2熱回収制御器64では、連携制御装置30Cから送信された排気運転指示を第5通信部642から受信し、第5動作制御部641が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第2排気ファン62の回転数を制御して動作させる。第3熱回収制御器94においても同様に、第7動作制御部941が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第3排気ファン92の回転数を制御して動作させる。
【0084】
排気風量が下がり、室内Xの圧力が上がって、室内Xと室外との圧力差が第1閾値T1を超える状態になると(S24の「YES」)、風量制御部333Cは、第2熱回収制御器64および第3熱回収制御器94から送信された室内XのCO2濃度を取得し、これらのうち値が大きい方のCO2濃度を選択する(S26)。風量制御部333Cは、選択した室内XのCO2濃度が、閾値記憶部312に記憶された第2閾値T2未満であるか否かを判定する(S27)。
【0085】
風量制御部333Cは、取得した室内XのCO2濃度が第2閾値T2未満であると判定すると(S27の「YES」)、給気風量を下げるように給気運転指示を生成して第2外気処理制御器59および第3外気処理制御器89に送信するとともに、排気風量を下げるように排気運転指示を生成して第2熱回収制御器64および第3熱回収制御器94に送信する(S28)。ここで、給気風量と排気風量は同一の風量を下げるように制御されるのが好ましく、例えば第1給気ファン16の回転数と第1排気ファンの回転数は同一の回転数n2だけ下げる。
【0086】
第2外気処理制御器59では、連携制御装置30Cから送信された給気運転指示を第4通信部592から受信し、第4動作制御部591が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第2給気ファン56の回転数を制御して動作させる。また第3外気処理制御器89においても同様に、第6動作制御部891が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第3給気ファン86の回転数を制御して動作させる。
【0087】
また第2熱回収制御器64では、連携制御装置30Cから送信された排気運転指示を第5通信部642から受信し、第5動作制御部641が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第2排気ファン62の回転数を制御して動作させる。また第3熱回収制御器94においても同様に、第7動作制御部941が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第3排気ファン92の回転数を制御して動作させる。ここで、給気風量と排気風量は同一の風量を上げるように制御されるのが好ましく、例えば第1給気ファン16の回転数と第1排気ファンの回転数は同一の回転数n3だけ上げる。これにより、室内Xの換気が抑制され、CO2濃度が上述した適正CO2濃度範囲内になる。
【0088】
ステップS27において、取得した室内XのCO2濃度が、閾値記憶部312に記憶された第2閾値T2以上であるときには(S27の「NO」)、風量制御部333Cは、取得した室内XのCO2濃度が、閾値記憶部312に記憶された第3閾値T3を超えるか否かを判定する(S29)。
【0089】
風量制御部333Cは、取得した室内XのCO2濃度が第3閾値T3を超えると判定すると(S29の「YES」)、給気風量を上げるように給気運転指示を生成して第2外気処理制御器59および第3外気処理制御器89に送信するとともに、排気風量を上げるように排気運転指示を生成して第2熱回収制御器64および第3熱回収制御器94に送信する(S30)。
【0090】
第2外気処理制御器59では、連携制御装置30Cから送信された給気運転指示を第1通信部192から受信し、第4動作制御部591が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第2給気ファン56の回転数を制御して動作させる。また第3外気処理制御器89では、連携制御装置30Cから送信された給気運転指示を第6通信部892から受信し、第6動作制御部891が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第2給気ファン56の回転数を制御して動作させる。
【0091】
また第2熱回収制御器64では、連携制御装置30Cから送信された排気運転指示を第5通信部642から受信し、第5動作制御部641が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第2排気ファン62の回転数を制御して動作させる。また、第3熱回収制御器94では、連携制御装置30Cから送信された排気運転指示を第7通信部942から受信し、第7動作制御部941が、受信した給気運転指示で示される風量に変更するように第3排気ファン92の回転数を制御して動作させる。これにより、室内Xの換気が促進され、CO2濃度が上述した適正CO2濃度範囲内になる。
【0092】
また、回転数の増減量は、n1≧n2>n3とするのが好ましい。換言すれば、圧力差を所定範囲とするために下げる排気の風量に対して、CO2濃度が所定値T2よりも低い場合に低下(減少)させる給気および排気の風量を略同一か低くし、CO2濃度が所定値T2よりも低い場合に低下(減少)させる風量よりもCO2濃度が所定値T3よりも高い場合に上昇(増加)させる風量を小さくすることが好ましい。これにより、室内Xの陽圧を確保しつつ充分な換気量を確保しながら、送風量を安定させ、風量制御のハンチングを抑えることができる。
【0093】
上述した処理により、室内Xが陽圧且つ適正CO2濃度範囲内になると(S29の「YES」)、風量制御部333Cは給気風量と排気風量を固定した状態で所定時間運転させる(S31、S32の「NO」)。風量固定後、所定時間が経過し(S32の「YES」)、電源ON状態が継続していれば(S33の「NO」)、ステップS26に戻る。電源OFF操作がされれば(S33の「YES」)、処理を終了する。
【0094】
以上の第2実施形態の空調システムによれば、空調対象の室内から室外へ排気する空気から回収した熱エネルギーを利用して室内に給気する空気の空調を効率良く行いつつ、給気風量と排気風量とを適切に連携させて室内を快適且つ衛生的に保つことができる。また本実施形態では、室内Xの対向する壁間で空気の流路が形成されるため、対向する壁間に配管を設けることなく、簡易な構成で効率良く室内の空調を行うことができる。
【0095】
上述した第1および第2実施形態では、室内Xと室外の圧力差を調整するために排気ファンによる排気の風量を調整する場合について説明したが、給気ファンによる給気の風量を調整してもよい。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、上記実施形態では空調システム内の2つのユニットが、室内の幅方向の対向する位置に設置される場合について開示されているが、これには限定されず、部屋の対角線上の対向する位置に設置される等、種々の態様を含んでよい。
【0097】
この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1A,1B,1C…空調システム、10…第1外気処理ユニット、10a…圧縮機ユニット、10b…換気ユニット、11…第1圧縮機、12…四方弁、13…膨張弁、14…第1熱交換器、15…再熱用熱交換器、16…第1給気ファン、17…第1差圧センサ、18…第1温湿度計、19…第1外気処理制御器、20…第1熱回収ユニット、21…第2熱交換器、22…第1排気ファン、23…第1二酸化炭素(CO2)濃度センサ、24…第1熱回収制御器、30A,30B,30C…連携制御装置、31…記憶部、32A~32C…第3通信部、41…第1配管、42…第2配管、43…第3配管、50…第2外気処理ユニット、51…第2圧縮機、52…四方弁、53…膨張弁、54…第3熱交換器、55…再熱用熱交換器、56…第2給気ファン、57…第2差圧センサ、58…温湿度計、59…第2外気処理制御器、60…第2熱回収ユニット、61…第4熱交換器、62…第2排気ファン、63…第2二酸化炭素(CO2)濃度センサ、64…第2熱回収制御器、71…第4配管、72…第5配管、73…第6配管、80…第3外気処理ユニット、81…第3圧縮機、82…四方弁、83…膨張弁、84…第5熱交換器、85…再熱用熱交換器、86…第3給気ファン、87…第3差圧センサ、88…温湿度計、89…第3外気処理制御器、90…第3熱回収ユニット、91…第6熱交換器、92…第3排気ファン、93…第3二酸化炭素(CO2)濃度センサ、94…第3熱回収制御器、101…第7配管、102…第8配管、103…第9配管、191…第1動作制御部、192…第1通信部、241…第2動作制御部、242…第2通信部、311…設定値記憶部、312…閾値記憶部、331A~331C…圧力差取得部、332A~332C…CO2濃度取得部、333A~333C…風量制御部、591…第4動作制御部、592…第4通信部、641…第5動作制御部、642…第5通信部、891…第6動作制御部、892…第6通信部、941…第7動作制御部、942…第7通信部
図1
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図4
図5
図6
図7