(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117159
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】一定力発生器およびそれを備えた機器
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240822BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20240822BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K41/02 C
F16C32/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023092
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229645
【氏名又は名称】日本パルスモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐山 幸治
【テーマコード(参考)】
3J102
5H641
【Fターム(参考)】
3J102AA01
3J102BA06
3J102BA08
3J102BA18
3J102CA28
3J102DA02
3J102DA07
3J102DA12
3J102DA26
3J102DA28
3J102GA20
5H641BB06
5H641BB14
5H641GG02
5H641HH03
5H641JA07
(57)【要約】
【課題】 漏れ磁束を少なく抑えることができる、小型の一定力発生器を提供すること。
【解決手段】 一定力発生器は、軸方向に延在し、筒状の強磁性体から成るケースと、ケース内に配置された筒状のステータと、ステータ内にギャップを空けて配置された棒状のシャフトと、を含む。ステータは、(360/N)度の等角度間隔で、径方向に着磁して隣接して配置されたN(Nは2以上の整数)個の主磁石と、N個の主磁石の各々を周方向で両側から挟み込むように周方向に着磁して配置された偶数個の副磁石とを含む。偶数個の副磁石は、挟み込んだ主磁石の両側を、当該挟み込んだ主磁石の内径側の磁極と同じ極性の磁極となるように挟み込む。シャフトは、少なくとも磁性材料からなるシャフト部分を持つ。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在し、筒状の強磁性体から成るケースと、
前記軸方向に延在して、前記ケース内に配置された筒状のステータと、
前記軸方向に延在して、前記ステータ内にギャップを空けて配置された棒状のシャフトであって、前記ステータに対して移動可能なシャフトと、
を含む一定力発生器において、
前記ステータは、
(360/N)度の等角度間隔で、径方向に着磁して隣接して配置されたN(Nは2以上の整数)個の主磁石と、
該N個の主磁石の各々を周方向で両側から挟み込むように周方向に着磁して配置された偶数個の副磁石であって、挟み込んだ主磁石の両側を、当該挟み込んだ主磁石の内径側の磁極と同じ極性の磁極となるように挟み込む、前記偶数個の副磁石と、
を含み、
前記シャフトは、少なくとも磁性材料からなるシャフト部分を持つ、
ことを特徴とする一定力発生器。
【請求項2】
前記ステータは、前記ケースの内壁面に固着されている、請求項1に記載の一定力発生器。
【請求項3】
前記Nは偶数であり、
前記N個の主磁石は、互いに逆極性となるように径方向に着磁して隣接して配置されている、請求項1に記載の一定力発生器。
【請求項4】
前記Nは2であって、
前記ステータは、2個の主磁石と4個の副磁石とから成り、
前記シャフト部分は、前記2個の主磁石の前記内径側の磁極に対向して逆極性の磁極に着磁された1個の永久磁石を含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一定力発生器。
【請求項5】
前記シャフトは、
前記シャフト部分としての磁性シャフトと、
該磁性シャフトから連続して前記軸方向に延在する非磁性シャフトと、
を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一定力発生器。
【請求項6】
前記Nは4であって、
前記ステータは、4個の主磁石と4個の副磁石とから成り、
前記シャフト部分は、
棒状の強磁性体と、
該強磁性体の外周側面に、前記4個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置された、4個の永久磁石と、
から成る、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一定力発生器。
【請求項7】
前記棒状の強磁性体は、正四角形の断面を持ち、4つの側面を持ち、
前記4個の永久磁石は、前記強磁性体の前記4つの側面に、前記4個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置されている、
請求項6に記載の一定力発生器。
【請求項8】
前記Nは8であって、
前記ステータは、8個の主磁石と8個の副磁石とから成り、
前記シャフト部分は、
棒状の強磁性体と、
該強磁性体の外周側面に、前記8個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置された、8個の永久磁石と、
から成る、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一定力発生器。
【請求項9】
前記棒状の強磁性体は、正八角形の断面を持ち、8つの側面を持ち、
前記8個の永久磁石は、前記強磁性体の前記8つの側面に、前記8個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置されている、
請求項8に記載の一定力発生器。
【請求項10】
前記ケースは円筒状をしており、
前記ステータは円筒状をしており、
前記シャフトは円柱状をしている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一定力発生器。
【請求項11】
長手方向に延在する被駆動体と、
該被駆動体を長手方向に駆動するリニアモータと、
前記被駆動体に取り付けられ、前記長手方向が前記軸方向である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の一定力発生器と、
を備える機器。
【請求項12】
垂直方向に延在して、互いに対向する第1および第2の側面を持つ被駆動体と、
該被駆動体の前記第1の側面に取り付けられ、前記被駆動体を垂直方向に駆動するリニアモータと、
前記被駆動体の前記第2の側面に取り付けられ、前記垂直方向が前記軸方向である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の一定力発生器と、
を備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一定力発生器に関し、特に、被駆動体を垂直方向に駆動させて使用されるリニアモータに対して、重力に対抗する推力を補助するための推力補助機構として使用される一定力発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータを、被駆動体を垂直方向に駆動するために使用する場合がある。例えば、少量液体の吸引、吐出を行う分注装置では、被駆動体である分注ヘッドを上下移動(垂直方向に移動)させるためにリニアモータが使用される。
【0003】
このようなリニアモータは、例えば、垂直方向に延在する中心軸を持つモータシャフトと、このモータシャフトの周囲に配置された界磁コイルと、から構成される。モータシャフトは、中心軸方向に着磁した複数の永久磁石を、同磁極同士を対向させて直列に繋ぎ合せた状態で、固定したものである。界磁コイルは、モータシャフトを、ギャップを介して同心状に内包するように、複数の筒状のコイルを直列に繋ぎ合せたものである。このようなリニアモータは、例えば、モータシャフトが可動部、磁界コイルが固定部となるように構成される。このような構成のリニアモータは、コイル固定型リニアモータまたは磁石可動型リニアモータと呼ばれる。
【0004】
一方、上述したコイル固定型(磁石可動型)リニアモータとは異なり、モータシャフトが固定部、界磁コイルが可動部となるように構成された、リニアモータも知られている。このような構成のリニアモータは、磁石固定型リニアモータまたはコイル可動型リニアモータと呼ばれる。
【0005】
上述したコイル固定型(磁石可動型)リニアモータにおいて、界磁コイルは、リニアモータとして三相リニアモータを構成するために、U相、V相、W相の少なくとも3個のコイルから成る。そして、三相リニアモータでは、それぞれのコイルに電気的に120度の位相差を持つ交流電流を流し、各コイルへの通電を制御する。このように通電を制御することにより、三相リニアモータは、永久磁石から発生される磁界と、コイルに流される電流との作用(いわゆる、フレミングの左手規則)により、モータシャフトを中心軸方向(垂直方向)に駆動する推力が得られるように構成している。
【0006】
このような構成のコイル固定型(磁石可動型)リニアモータにおいては、界磁コイルに電流が流れていない場合、コイルと永久磁石との間に電磁力が働かない。そのため、リニアモータのモータシャフトは、被駆動体とともにそれらの重力により下方向に落ちてしまう。例えば、コイルに電流を流すための電源が急に落ちた場合などに、モータシャフトを含む被駆動体はストンと落下してしまう。この落下した被駆動体は、リニアモータの下に配置されていた機材などにぶつかり、その機材を破損させるおそれがある。
【0007】
尚、前述したように、リニアモータには、複数の種類が存在する。コイル固定型(磁石可動型)リニアモータであろうと、磁石固定型(コイル可動型)リニアモータであろうと、永久磁石をNS交互に直列に並べて、界磁コイルの磁界との吸引反発により動作する。したがって、磁石固定型(コイル可動型)リニアモータにおいても、コイルに通電されていないと、被駆動体はストンと落下してしまう。
【0008】
そこで、このような被駆動体の落下を防止するために、リニアモータを採用した機器には、被駆動体の重力に対抗する推力を補助するための推力補助機構が設けられている。このような落下防止用の推力補助機構としては、従来、圧縮/ひっぱりバネや空気圧縮機、カウンターウエイトなどが用いられている。
【0009】
なお、このような推力補助機構は、被駆動体の落下の防止ばかりでなく、リニアモータの駆動中において、重力に対抗する一定の推力を補助するためにも用いられる。特に、精密な位置制御が要求される上記分注装置においては、リニアモータとして、サーボ制御されるリニアモータ、つまりリニアサーボモータが使用されることが多い。リニアサーボモータをサーボ制御する場合、ゲイン調整という作業が必要になる。負荷が一定な場合には、ゲイン調整を容易に行なうことが可能である。しかしながら、負荷が変動する場合、ゲイン調整をすることが困難である。また、たとえゲイン調整をしたとても、リニアサーボモータは最適な動きをなかなかしないことが知られている。よって、一定の推力を補助する推力補助機構は、このようなリニアサーボモータを採用したときにメリットがある。
【0010】
しかしながら、このような従来の推力補助機能には、それぞれ、次に述べるような欠点がある。
【0011】
詳述すると、圧縮/ひっぱりバネは、たわみ量に比例して復元力が強くなり、力が一定ではない。また、圧縮/ひっぱりバネは、惰性変形するので、高負荷や長時間負荷等によりバネ定数が変化してしまう。さらに、圧縮/ひっぱりバネは、長いほどバネ定数が小さくなるため、たわみ量に対する力の変化が小さくなる。したがって、たわみ量に対する力の変化を小さくするためには、長手方向に十分に長いバネを使う必要がある。もし、長いストロークを駆動するリニアモータをバネで補助しようとした場合、たわみ量に対する力の変化を少なくするためには、かなり長手方向に長いバネを使用しなければならなくなる。
【0012】
空気圧縮機も、バネと同じように、ピストンの圧縮率に比例して力が強くなる。また、空気圧縮機では、空気漏れが発生し、経年による力の変化がある。
【0013】
カウンターバランスは、構造上かなりスペースを必要とする。また、カウンターバランスでは、ワイヤーなどが劣化してしまう。
【0014】
そこで、上述した欠点がない、リニアモータのストロークのどの位置でも一定の力を維持できる、一定力発生器が望まれる。
【0015】
特許文献1は、固定配置された部位と、この固定配置された部位に対して相対的に軸方向に移動可能に配置された部位と、を備えた、「一定力発生器」を開示している。二つの部位の少なくとも一方は、磁気的に伝導性のある領域または永久磁石領域から成る。他方の部位は、永久磁石領域から成る。その永久磁石の磁化は、少なくとも生成された磁束の部分が永久磁石領域から移動可能に配置された部位の運動の軸方向に直角に出て、磁気的に伝導性のある領域に入り、その中で導かれ、磁気的に伝導性のある領域から再び出て、永久磁石領域に帰る。特許文献1は、その実施形態として、中空円筒状の強磁性体からなるケースを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0004405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した特許文献1には、次に述べるような問題がある。
【0018】
特許文献1に開示された一定力発生器では、永久磁石領域から発生された磁束が上記ケースから外部へ多く漏れるという問題がある。漏れ磁束が多い場合、一定力発生器を、上記機器に取り付ける際に、他の磁性体の部品に引き寄せる力が働く。このため、組み立てる際に非常に煩わしくなる。また、漏れ磁束が、リニアモータの駆動や磁気センサに悪影響を及ぼすというおそれもある。
【0019】
このような漏れ磁束を小さく抑えるために、一定力発生器の強磁性体からなるケースの厚みを厚くすることが考えられる。しかしながら、ケースの厚みを厚くすると、一定力発生器のサイズが大きくなってしまう。
【0020】
したがって、本発明の目的は、漏れ磁束を少なく抑えることができる、小型の一定力発生器およびそれを備えた機器を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【0022】
尚、本発明の説明で示される上方、上端、上部、上面の文言は、本発明に係る一定力発生器が搭載される機器(リニアモータ)における垂直方向(上下方向)のそれらを示し、下方、下端、下部、下面の文言は、本発明に係る一定力発生器が搭載される機器(リニアモータ)における垂直方向(上下方向)のそれらを示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の例示的な態様によれば、軸方向に延在し、筒状の強磁性体から成るケースと;前記軸方向に延在して、前記ケース内に配置された筒状のステータと;前記軸方向に延在して、前記ステータ内にギャップを空けて配置された棒状のシャフトであって、前記ステータに対して移動可能なシャフトと;を含む一定力発生器において、前記ステータは、(360/N)度の等角度間隔で、径方向に着磁して隣接して配置されたN(Nは2以上の整数)個の主磁石と;該N個の主磁石の各々を周方向で両側から挟み込むように周方向に着磁して配置された偶数個の副磁石であって、挟み込んだ主磁石の両側を、当該挟み込んだ主磁石の内径側の磁極と同じ極性の磁極となるように挟み込む、前記偶数個の副磁石と;を含み、前記シャフトは、少なくとも磁性材料からなるシャフト部分を持つ、ことを特徴とする一定力発生器が得られる。
【0024】
上記一定力発生器において、前記ステータは、前記ケースの内壁面に固着されてよい。また、前記Nは偶数であることが好ましい。この場合、前記N個の主磁石は、互いに逆極性となるように径方向に着磁して隣接して配置されることが望ましい。
【0025】
上記一定力発生器において、前記Nは2であってよい。この場合、前記ステータは、2個の主磁石と4個の副磁石とから成ってよく、前記シャフト部分は、前記2個の主磁石の前記内径側の磁極に対向して逆極性の磁極に着磁された1ポールの永久磁石を含んでよい。
【0026】
また、上記一定力発生器において、前記シャフトは、前記シャフト部分としての磁性シャフトと;該磁性シャフトから連続して前記軸方向に延在する非磁性シャフトと;を含んでもよい。
【0027】
上記一定力発生器において、前記Nは4であってもよい。この場合、前記ステータは、4個の主磁石と4個の副磁石とから成ってよく、前記シャフト部分は、棒状の強磁性体と;該強磁性体の外周側面に、前記4個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置された、4個の永久磁石と;から成ってよい。なお、このような構成の前記棒状の強磁性体は、正四角形の断面を持ち、4つの側面を持ってよい。この場合、前記4個の永久磁石は、前記強磁性体の前記4つの側面に、前記4個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置されることが好ましい。
【0028】
上記一定力発生器において、前記Nは8であってもよい。この場合、前記ステータは、8ポールの主磁石と8個の副磁石とから成ってよく、前記シャフト部分は、棒状の強磁性体と;該強磁性体の外周側面に、前記8個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置された、8個の永久磁石と;から成ってよい。なお、このような構成の前記棒状の強磁性体は、正八角形の断面を持ち、8つの側面を持ってよい。この場合、前記8個の永久磁石は、前記強磁性体の前記8つの側面に、前記8個の主磁石の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置されることが好ましい。
【0029】
上記一定力発生器において、前記ケースは円筒状をしており、前記ステータは円筒状をしており、前記シャフトは円柱状をしている、ことが好ましい。
【0030】
本発明の他の例示的な態様によれば、長手方向に延在する被駆動体と;該被駆動体を長手方向に駆動するリニアモータと;前記被駆動体に取り付けられ、前記長手方向が前記軸方向である、上記記載の一定力発生器と;を備える機器が得られる。
【0031】
本発明の更に他の例示的な態様によれば、垂直方向に延在して、互いに対向する第1および第2の側面を持つ被駆動体と;該被駆動体の前記第1の側面に取り付けられ、前記被駆動体を垂直方向に駆動するリニアモータと;前記被駆動体の前記第2の側面に取り付けられ、前記垂直方向が前記軸方向である、上記記載の一定力発生器と;を備える機器が得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、漏れ磁束を少なく抑えることができる、小型の一定力発生器およびそれを備えた機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る一定力発生器が搭載される機器を、斜め前方右上方から見た外観斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る一定力発生器の外観斜視図である。
【
図4】
図3に図示した一定力発生器の正面図である。
【
図5】
図3に図示した一定力発生器の平面図である。
【
図6】
図4の線VI-VIについての横断面図である。
【
図7】
図5の線VII-VIIについての縦断面図である。
【
図8】
図3に示した一定力発生器の分解斜視図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る一定力発生器の外観斜視図である。
【
図10】
図9に図示した一定力発生器の正面図である。
【
図11】
図9に図示した一定力発生器の平面図である。
【
図12】
図10の線XII-XIIについての横断面図である。
【
図13】
図11の線XIII-XIIIについての縦断面図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る一定力発生器の横断面図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る一定力発生器の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および
図2を参照して、本発明の理解を容易にするために、本発明に係る一定力発生器が搭載される機器について説明する。
図1は機器100を斜め前方右上方から見た外観斜視図である。
図2は機器100の正面図である。
【0035】
ここでは、
図1および
図2に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。
図1および
図2に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向;垂直方向)である。
【0036】
機器100は、ステージ110を含む。ステージ110は、水平方向(X-Y平面と並行)に延在する基底部112と、この基底部112の前端から垂直方向(Y-Z平面と並行)に延在する取付板114とを含む。取付板114は、Y-Z平面と並行に、垂直方向に延在する前面114fを持つ。この取付板114の前面114fには、後述するような、本発明に係る一定力発生器10と、リニアモータ20とが取付けられる。
【0037】
機器100は、取付板114の前面114fからギャップを空けて対向する被駆動体120を備える。すなわち、被駆動体120の裏面(図示せず)は、取付板114の前面114fから所定距離離間して対向している。被駆動体120は、Y-Z平面と並行に、垂直方向に延在する実質的に板形状をしている。被駆動体120は、左右方向Yで互いに対向する、右側面120rsと左側面120lsとを持つ。右側面120rsおよび左側面120lsの各々は、上下方向Z(垂直方向)に延在している。左側面120lsは第1の側面とも呼ばれ、右側面120rsは第2の側面とも呼ばれる。
【0038】
上記リニアモータ20は、被駆動体120の左側面120lsに取り付けられている。一方、一定力発生器10は、被駆動体120の右側面120rsに取り付けられている。リニアモータ20および一定力発生器10の各々は、上下方向(垂直方向)Zに延在している。
【0039】
前述したように、リニアモータ20は、垂直方向Zに延在する中心軸CAを持つモータシャフト22と、このモータシャフト22の周囲に配置された界磁コイル(図示せず)と、から構成される。モータシャフト22は、中心軸CA方向に着磁した複数の永久磁石を、同磁極同士を対向させて直列に繋ぎ合せた状態で、固定したものである。界磁コイルは、モータシャフト22を、ギャップを介して同心状に内包するように、複数の筒状のコイルを直列に繋ぎ合せたものである。したがって、図示のリニアモータ20は、モータシャフト22が可動部、磁界コイルが固定部となるように構成される、コイル固定型(磁石可動型)リニアモータから成る。
【0040】
リニアモータ20は、上記界磁コイルを覆う円筒状のケース24を含む。すなわち、界磁コイルは、このケース24の内壁面に取り付けられている。ケース24は、図示しない固定部材を介して、取付板114の前面114fに固定されている。
【0041】
モータシャフト22の下端部は、下側連結部材27を介して、被駆動体120の左側面120lsの下端部に取り付け固定されている。一方、モータシャフト22の上端部は、上側連結部材28を介して、被駆動体120の左側面120lsの上端部に取り付け固定されている。それゆえ、モータシャフト22を上下動させるのに伴って、被駆動体120を上下動させることができる。
【0042】
一定力発生器10は、上下方向(垂直方向)Zと並行な軸方向Aを持つ。一定力発生器10は、軸方向Aに延在する棒状のシャフト12と、軸方向Aに延在する筒状のステータ(後述する)と、軸方向Aに延在するケース14とを含む。ケース14は、筒状の強磁性体からなる。筒状のステータは、このケース14内に配置されている。尚、図示の例では、筒状のステータは、ケース14の内壁面に固着されている。シャフト12は、ステータ内にギャップを空けて配置され、ステータに対して移動可能である。
【0043】
ケース14は、固定部材16を介して、取付板114の前面114fに固定されている。
【0044】
シャフト12の下端部は、下側連結部材17を介して、被駆動体120の右側面120rsの下端部に取り付け固定されている。一方、シャフト12の上端部は、上側連結部材18を介して、被駆動体120の右側面120rsの上端部に取り付け固定されている。
【0045】
このような構成の一定力発生器10は、前述したように、モータシャフト22を含む被駆動体120の落下を防止するためのものである。詳述すると、リニアモータ20の界磁コイルに電流を流すための電源が急に落ちたとする。この場合、モータシャフト22およびシャフト12を含む被駆動体120には、それらの自重により下方向に重力FGが作用する。一定力発生器10は、この重力FGに対抗する推力FTを発生するための推力補助機構として働く。前述したように、一定力発生器10は、リニアモータ20のストロークのどの位置でも一定の推力FTを維持できる。以下の説明では、モータシャフト22およびシャフト12を含む被駆動体120を、単に、被駆動体120と呼ぶことにする。
【0046】
また、前述したように、一定力発生器10は、被駆動体120の落下の防止ばかりでなく、リニアモータ20の駆動中において、重力FGに対抗する一定の推力FTを補助するための推力補助機構としても動作可能である。
【0047】
次に、推力補助機構として動作する一定力発生器10の使用方法について、詳細に説明する。先ず、この一定力発生器10が単独で、機器100に取り付けられていない状況を想定する。但し、一定力発生器10は、軸方向Aが上下方向(垂直方向)Zとなるように配置されているとする。このような状況では、一定力発生器10は、ステータとシャフト12とが磁気的に安定している位置(以下、単に「安定位置」と略称する)で止まっている、状態にある。ここで、安定位置とは、シャフト12の真ん中とステータの真ん中とが一致する点(位置)である。この安定位置において、一定力発生器10に対してシャフト12を上下方向(垂直方向)Zに押す力を作用させたとする。この場合、一定力発生器10には、上記安定位置まで戻ろうとする推力が発生する。具体的には、一定力発生器10に対してシャフト12を下方向に押す力を作用させたとする。この場合、一定力発生器10には、上記安定位置まで戻ろうとする、上方向の推力FTが発生する。
【0048】
上述したようにシャフト12を下方向に押した状態で、一定力発生器10を、
図1および
図2に示すように、機器100に取り付けたとする。この場合、一定力発生器10には、被駆動体120を上方向に押し上げようとする推力F
Tが発生する。したがって、リニアモータ20の界磁コイルに電流を流さない状況においては、一定力発生器10は、被駆動体120に作用する下方向の重力F
Gと上記推力F
Tとが等しくなる平衡位置で止まる、状態になる。このときの平衡位置とは、上記安定位置よりも、一定力発生器10のシャフト12が下方向にずれた位置であることは明らかである。
【0049】
上記平衡位置において、リニアモータ20の界磁コイルに電流を流して、リニアモータ20のモータシャフト22を上方向に移動させるように駆動し、その結果、被駆動体120を上方向に押し上げようとしたとする。この場合、もし一定力発生器10のシャフト12が上述した安定位置よりも上方向に移動してしまうと、一定力発生器10には、下方向の推力が発生してしまう。そこで、リニアモータ20のストローク範囲の上限位置は、上記安定位置に規定(制限)される。
【0050】
機器100に対する一定力発生器10の取り付けの仕方で、一定力発生器10を下方向に押すべきか、上方向に押すべきかが変わる。具体的に述べると、
図1および
図2に示す例では、一定力発生器10は、ステータ(ケース14)を取付板114に固定し、シャフト12を可動させる、シャフト可動型一定力発生器である。このようなシャフト可動型一定力発生器では、上述したように、シャフト12を下に押した状態で、シャフト可動型一定力発生器を機器100に取り付けることになる。
【0051】
一方、
図1および
図2に示すようなシャフト可動型一定力発生器とは異なり(逆に)、一定力発生器として、シャフト12を取付板114に固定し、ステータ(ケース14)を可動させる、シャフト固定型一定力発生器を用いてもよい。このようなシャフト固定型一定力発生器では、シャフト12を上に押した状態で、シャフト固定型一定力発生器を機器100に取り付けることになる。この場合にも、シャフト固定型一定力発生器には、被駆動体120を上方向に押し上げようとする推力F
Tが発生する。したがって、リニアモータ20の界磁コイルに電流を流さない状況においては、シャフト固定型一定力発生器は、被駆動体120に作用する下方向の重力F
Gと上記推力F
Tとが等しくなる平衡位置で止まる、状態になる。このときの平衡位置とは、上記安定位置よりも、シャフト固定型一定力発生器のシャフト12が上方向にずれた位置であることは明らかである。
【0052】
尚、
図1および
図2に示す機器100では、リニアモータ20として、モータシャフト22が可動部、磁界コイルが固定部となるように構成された、コイル固定型(磁石可動型)リニアモータを用いている。しかしながら、リニアモータとして、モータシャフト22が固定部、磁界コイルが可動部となるように構成された、磁石固定型(コイル可動型)リニアモータを用いてもよいのは勿論である。
【0053】
以上の説明を要約すると、以下のようになる。例えば、
図1および
図2に示したように、機器100の被駆動体120に1N(ニュートン)の重力F
Gが作用している場合に、この重力F
Gに対抗するために、一定力発生器10によって、この1Nに等しい力である推力F
Tで補助したとする。この場合、リニアモータ20の界磁コイルへの非通電時、一定力発生器10(被駆動体120)をどこの位置でも止めることができる。但し、前述したように、リニアモータ20のストローク範囲の上限位置は、上記安定位置に制限される。
【0054】
これに対して、一定力発生器10によって、1Nよりも大きな力である推力FTで補助したとする。この場合、一定力発生器10(被駆動体120)は、上記安定位置または上記安定位置までに設定した上方のエンドポイントで止まることになる。
【0055】
一方、一定力発生器10によって、1Nよりも小さな力である推力FTで補助したとする。この場合、一定力発生器10(被駆動体120)は、下方のエンドポイントで止まることになる。
【0056】
なお、一定力発生器10による上方向の推力FTは、界磁コイルへ電流を流すことによりリニアモータ20を駆動して、被駆動体120を下方向に動かす際には、一見すると余計な負荷となりえる。しかしながら、被駆動体120を下方向に動かす場合には、被駆動体120には常に(もともと)その自重により重力FGが作用している。したがって、リニアモータ20を、その差分(FG-FT)を差し引いた推力で駆動させればよいことになる。この事情は、被駆動体120を上方向に動かす場合も同様である。よって、一定力発生器10による上方向の推力FTのおかげで、リニアモータ20は、一定力発生器10がない場合に比較して、小さな推力で駆動させればよいことになる。つまり、一定力発生器10は、被駆動体120を上方へ駆動する場合に必要な、リニアモータ20の推力を補助するためのものであることが分かる。
【0057】
以上の説明から明らかなように、一定力発生器10を用いることにより、リニアモータ20を小型化することができる。何故なら、リニアモータの推力を大きくするためには、永久磁石の体積を大きくするか、コイルの巻き数を多くする必要があるため、リニアモータのサイズが大きくなってしまうからである。また、一般的に、リニアモータを構成する永久磁石としては、強い磁力を持つネオジム磁石が使用されている。しかしながら、ネオジム磁石は高価である。よって、永久磁石として、ネオジム磁石以外の安価な永久磁石を備えた、低推力なリニアモータ20を採用することが可能となり、コスト的にも安価になる。
【0058】
また、
図1および
図2に図示した機器100において、被駆動体120は、垂直方向Zに延在し、互いに対向する第1の側面(左側面120ls)と第2の側面(右側面120rs)とを持っている。そして、リニアモータ20は、被駆動体120の第1の側面(左側面120ls)に取り付けられ、被駆動体120を垂直方向Zに駆動している。一定力発生器10は、被駆動体120の第2の側面(右側面120rs)に取り付けられ、垂直方向Zが軸方向Aである。
【0059】
しかしながら、本発明が適用される機器は、
図1および
図2に図示した機器100に限定されない。一般的に、本発明が適用される機器は、長手方向に延在する被駆動体120と、この被駆動体120を長手方向に駆動するリニアモータ20と、被駆動体120に取り付けられ、長手方向が軸方向Aである一定力発生器10と、を備えるものであってよい。ここでの長手方向は、垂直方向(上下方向)Zに限定されず、任意の方向であってよい。
【0060】
[第1の実施形態]
図3乃至
図8を参照して、本発明の第1の実施形態に係る一定力発生器10について説明する。
図3は一定力発生器10の外観斜視図である。
図4は一定力発生器10の正面図である。
図5は一定力発生器10の平面図である。
図6は
図4の線VI-VIについての横断面図である。
図7は
図5の線VII-VIIについての縦断面図である。
図8は一定力発生器10の分解斜視図である。
図3乃至
図8においても、上述した直交座標系(X,Y,Z)を使用している。
【0061】
図示の一定力発生器10は、2ポールの場合の一定力発生器である。図示の一定力発生器10は、円筒状のケース14と、円筒状のステータ13と、円柱状のシャフト12とを備える。なお、本明細書中において、「2ポール」とは、シャフト12と対向する磁極数を意味する。より具体的には、「2ポール」とは、ステータ13を構成する主磁石(後述する)の個数が2個である場合を意味する。
【0062】
図6に示されるように、ステータ13は、2個の主磁石13-2と、4個の副磁石13-4とを含む。副磁石13-4は補助磁石とも呼ばれる。詳述すると、2個の主磁石13-2は、180度の等角度間隔で、互いに逆極性となるように径方向に着磁して配置されている。各主磁石13-2は、平面視、径方向に一定の幅(厚さ)を持つ円弧状をしている。一方、4個の副磁石13-4は、2個の主磁石13-2の各々を周方向で両側から挟み込むように周方向に着磁して配置されている。各副磁石13-4も、平面視、径方向に一定の幅(厚さ)を持つ円弧状をしている。4個の副磁石13-4の一対は、挟み込んだ主磁石13-2の両側を、当該挟み込んだ主磁石13-2の内径側の磁極と同じ極性の磁極となるように挟み込んでいる。例えば、挟み込んだ主磁石13-2の内径側の磁極がN極であったとする。この場合、その両側の一対の副磁石13-4は、同じ極性のN極となるように、当該挟み込んだ主磁石13-2を挟み込んでいる。このように、ステータ13は、1つの主磁石13-2とそれを挟み込む一対の副磁石13-4とによって、ハルバッハ構造の永久磁石領域を形成している。ステータ13は、このようなハルバッハ構造の永久磁石領域以外に、非磁性体から成る一対のスペーサ13-6を含む。各スペーサ13-6も、平面視、径方向に一定の幅(厚さ)を持つ円弧状をしている。一対のスペーサ13-6と一対のハルバッハ構造の永久磁石領域とは、接着剤で接着されて、円筒形のステータ13が構成される。
【0063】
このような構成の円筒状のステータ13は、
図8に示されるように、強磁性体から成る円筒状のケース14内に挿入されて、ケース14の内壁面に接着剤で接着される。これにより、
図7に示されるように、ケース14の内壁面にステータ13が固着される。その後、ケース14の両端部は、一対の円環状のエンドキャップ15-1、15-2で塞がれる。
図7から明らかなように、ケース14の軸方向Aの長さL1は、ステータ13の軸方向Aの長さL2よりも長い(L1>L2)。
【0064】
シャフト12は、少なくとも磁性材料からなるシャフト部分12-2を持つ。詳述すると、図示のシャフト12は、シャフト本体12-4と、シャフト部分12-2とから構成される。シャフト本体12-4は、シャフト部分12-2が挿入される開口12-4aを持つ。よって、シャフト部分12-2は、この開口12-4aに挿入された状態で、シャフト本体12-4に接着剤で接着される。
【0065】
図示のシャフト部分12-2は、
図6に示されるように、上記ステータ13の2個の主磁石13-2の内径側の磁極に対して逆極性の磁極に着磁された1個の永久磁石から成る。例えば、主磁石13-2の内径側の磁極がN極であったとする。この場合、それに対向する永久磁石13-2の磁極はS極である。
図7から明らかように、シャフト本体12-4の軸方向Aの長さL3は、ケース14の軸方向Aの長さL1よりも長い(L3>L1)。一方、1個の永久磁石12-2の軸方向Aの長さL4は、ケース14の軸方向Aの長さL1よりも短く、かつ、ステータ13の軸方向Aの長さL2よりも長い(L1>L4>L2)。また、シャフト12の直径D1は、ステータ13の内径D2よりも小さい(D1<D2)。これにより、シャフト12は、ステータ13内にギャップを空けて配置される。尚、
図4および
図7から明らかなように、シャフト12は、垂直方向(上下方向)Zにおいて、ケース14より上側に突出した上側部分がケース14より下側に突出した下側部分よりも長くなっている。これは、当該一定力発生器10を機器100(
図1および
図2参照)へ取り付ける際に、この上側部分をケース14内に押し込むことを想定しているからである。
【0066】
なお、
図1および
図2に図示して説明したように、当該一定力発生器10を機器100に取り付ける際に、上記ギャップが空くように精度よく位置決めされ取り付けられる。なお、例えば、特許文献1に開示されているように、ステータ13とシャフト12との間に摺動性の高い円筒部材を挿入することで、上記ギャップを形成するようにしてもよい。
【0067】
このような構成の一定力発生器10によれば、たとえケース14の厚さが薄くても、ステータ13の永久磁石領域から発生された磁束が、ケース14から外部へ漏れるのを抑えることができる。何故なら、前述したように、ステータ13の永久磁石領域はハルバッハ構造をしているからである。よって、漏れ磁束を少なく抑えることができる、小型の一定力発生器10を提供することができる。
【0068】
[第2の実施形態]
図9乃至
図13を参照して、本発明の第2の実施形態に係る一定力発生器10Aについて説明する。
図9は一定力発生器10Aの外観斜視図である。
図10は一定力発生器10Aの正面図である。
図11は一定力発生器10Aの平面図である。
図12は
図10の線XII-XIIについての横断面図である。
図13は
図11の線XIII-XIIIについての縦断面図である。
図9乃至
図13においても、上述した直交座標系(X,Y,Z)を使用している。
【0069】
図示の一定力発生器10Aも、2ポールの場合の一定力発生器である。図示の一定力発生器10Aは、シャフトの構成が相違する点を除いて、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10と、実質的に同様の構成を有し、動作をする。したがって、シャフトに12Aの参照符号を付している。一定力発生器10Aにおいて、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10の構成要素と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、以下では、説明の簡略化のために、相違点についてのみ説明する。
【0070】
図13に示されるように、シャフト12Aは、シャフト部分としての磁性シャフト12A-2と、非磁性シャフト12A-4とから構成される。非磁性シャフト12A-4は、磁性シャフト12A-2から連続して軸方向Aに延在している。詳述すると、磁性シャフト12A-2は、その一端部(上端部)に、雄ネジ12A-2aが設けられている。一方、非磁性シャフト12A-4は、磁性シャフト12A-2の一端部(上端部)と対向する、一端部(下端部)に、雌ネジ12A-4aが切られている。よって、 磁性シャフト12A-2の雄ネジ12A-2aを、非磁性シャフト12A-4の雌ネジ12A-4aに螺合することによって、シャフト12Aが形成(構成)される。尚、本第2の実施形態では、締結手段としてネジ部材を用いているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、接着剤を用いた接着や、圧着などの他の締結手段によって、磁性シャフト12A-2と非磁性シャフト12A-4とを締結してもよい。なお、磁性シャフト12A-2は、例えば、鉄等から構成される。一方、非磁性シャフト12A-4は、非磁性材料、例えば、ステンレス鋼(SUS303)から構成される。
【0071】
したがって、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10との主な相違点は、一定力発生器10Aは、シャフト部分として、1個の永久磁石12-2の代わりに、磁性シャフト12A-2を使用していることである。シャフト部分として磁性シャフト12A-2を用いているので、一定力発生器10Aから発生する推力FTは、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10のそれに比較して弱くなる。しかしながら、このような構成の一定力発生器10Aでも、一定の推力FTを維持することができる。
【0072】
このような構成の一定力発生器10Aによれば、たとえケース14の厚みが薄くても、ステータ13の永久磁石領域から発生された磁束が、ケース14から外部へ漏れるのを抑えることができる。何故なら、前述したように、ステータ13の永久磁石領域はハルバッハ構造をしているからである。よって、漏れ磁束を少なく抑えることができる、小型の一定力発生器10Aを提供することができる。
【0073】
なお、図示の一定力発生器10Aは、2ポールの(すなわち、2個の主磁石を備えた)ステータ13を備えた一定力発生器であるが、後述する実施形態のような、4ポールや8ポールのステータを備えた一定力発生器にも適用されてもよい。すなわち、そのような4ポールや8ポールのステータに対して、シャフト12Aを備えるようにしてもよい。なお、「4ポール」とは、ステータを構成する主磁石の個数が4個である場合を意味し、「8ポール」とは、ステータを構成する主磁石の個数が8個である場合を意味する。
【0074】
[第3の実施形態]
図14を参照して、本発明の第3の実施形態に係る一定力発生器10Bについて説明する。
図14は一定力発生器10Bの横断面図である。
図14においても、上述した直交座標系(X,Y,Z)を使用している。
【0075】
図示の一定力発生器10Bは、4ポールの場合の一定力発生器である。図示の一定力発生器10Bは、シャフトおよびステータの構成が相違する点を除いて、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10と、実質的に同様の構成を有し、動作をする。したがって、シャフトおよびステータを、それぞれ、12Bおよび13Bの参照符号で示すことにする。一定力発生器10Bにおいて、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10の構成要素と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、以下では、説明の簡略化のために、相違点についてのみ説明する。
【0076】
図示のステータ13Bは、4個の主磁石13B-2と、4個の副磁石13B-4とから成る。4個の主磁石13B-2は、90度の等角度間隔で、互いに逆極性となるように径方向に着磁して隣接して配置されている。各主磁石13B-2は、平面視、径方向に一定の幅(厚さ)を持つ円弧状をしている。4個の副磁石13B-4は、4個の主磁石13B-2の各々を周方向で両側から挟み込むように配置されている。各副磁石13-Bも、平面視、径方向に一定の幅(厚さ)を持つ円弧状をしている。4個の副磁石13B-4の隣接する一対は、挟み込んだ主磁石13B-2の両側を、当該挟み込んだ主磁石13B-2の内径側の磁極と同じ極性の磁極となるように挟み込んでいる。だたし、第1の実施形態に係るステータ13とは異なり、ステータ13Bはスペーサを有していない。このようにステータ13Bも、ハルバッハ構造の永久磁石領域を備えている。
【0077】
図示のシャフト12Bは、シャフト部分の構成が相違する点を除いて、第1の実施形態に係るシャフト12と同様の構成を有する。したがって、シャフト部分に12B-2の参照符号を付してある。
【0078】
図示のシャフト部分12B-2は、棒状の強磁性体12B-22と、4個の永久磁石12B-24とから構成されている。
図14に示されるように、棒状の強磁性体12B-22は、平面視、正四角形の断面を持ち、4つの側面を持つ。4個の永久磁石12B-24は、強磁性体12B-22の4つの側面に配置される。各永久磁石12B-24は、平面視、蒲鉾形をしている。具体的には、4個の永久磁石12B-24は、強磁性体12B-22の4つの側面に接着剤で接着され、固着されている。4個の永久磁石12B-24は、ステータ13Bの4個の主磁石13B-2の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置されている。
【0079】
このように、シャフト部分12B-2として、強磁性体12B-22と4個の永久磁石12B-24との組み合わせを用いているので、一定力発生器10Bから発生する推力FTを、第1の実施形態に係る一定力発生器10に比較して強くすることができる。そして、このような構成の一定力発生器10Bにおいても、リニアモータ20のストロークのどの位置でも一定の推力FTを維持することができる。
【0080】
このような構成の一定力発生器10Bによれば、たとえケース14の厚みが薄くても、ステータ13Bの永久磁石領域から発生された磁束が、ケース14から外部へ漏れるのを抑えることができる。何故なら、前述したように、ステータ13Bの永久磁石領域はハルバッハ構造をしているからである。よって、漏れ磁束を少なく抑えることができる、小型の一定力発生器10Bを提供することができる。
【0081】
なお、シャフト部分12B-2の構造(構成)は、
図14に図示したものに限定されない。例えば、棒状の強磁性体として、円柱状の強磁性体を用いてもよい。その場合、4個の永久磁石の各々としては、平面視、瓦形状の永久磁石を、その円柱状の強磁性体の外周側面に張り付けて設ければよい。
【0082】
[第4の実施形態]
図15を参照して、本発明の第4の実施形態に係る一定力発生器10Cについて説明する。
図15は一定力発生器10Cの横断面図である。
図15においても、上述した直交座標系(X,Y,Z)を使用している。
【0083】
図示の一定力発生器10Cは、8ポールの場合の一定力発生器である。図示の一定力発生器10Cは、シャフトおよびステータの構成が相違する点を除いて、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10と、実質的に同様の構成を有し、動作をする。したがって、シャフトおよびステータを、それぞれ、12Cおよび13Cの参照符号で示すことにする。一定力発生器10Cにおいて、上述した第1の実施形態に係る一定力発生器10の構成要素と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、以下では、説明の簡略化のために、相違点についてのみ説明する。
【0084】
図示のステータ13Cは、8個の主磁石13C-2と、8個の副磁石13C-4とから成る。8個の主磁石13C-2は、45度の等角度間隔で、互いに逆極性となるように径方向に着磁して隣接して配置されている。各主磁石13-2は、平面視、径方向に一定の幅(厚さ)を持つ円弧状をしている。8個の副磁石13C-4は、8個の主磁石13C-2の各々を周方向で両側から挟み込むように配置されている。各副磁石13C-4も、平面視、径方向に一定の幅(厚さ)を持つ円弧状をしている。8個の副磁石13C-4の隣接する一対は、挟み込んだ主磁石13C-2の両側を、当該挟み込んだ主磁石13C-2の内径側の磁極と同じ極性の磁極となるように挟み込んでいる。だたし、第1の実施形態に係るステータ13とは異なり、ステータ13Cはスペーサを有していない。このようにステータ13Cも、ハルバッハ構造の永久磁石領域を備えている。
【0085】
図示のシャフト12Cは、シャフト部分の構成が相違する点を除いて、第1の実施形態に係るシャフト12と同様の構成を有する。したがって、シャフト部分に12C-2の参照符号を付してある。
【0086】
図示のシャフト部分12C-2は、棒状の強磁性体12C-22と、8個の永久磁石12C-24とから構成されている。
図15に示されるように、棒状の強磁性体12C-22は、平面視、正八角形の断面を持ち、8つの側面を持つ。8個の永久磁石12C-24は、強磁性体12C-22の8つの側面に配置される。各永久磁石12C-24は、平面視、略円弧状をしている。具体的には、強磁性体12C-22の8つの側面に、8個の永久磁石12C-24は接着剤で接着され、固着されている。8個の永久磁石12C-24は、ステータ13Cの8ポールの主磁石13C-2の内径側の磁極と逆極性の磁極に着磁して対向するようにそれぞれ配置されている。
【0087】
このように、シャフト部分12C-2として、強磁性体12C-22と8個の永久磁石12C-24との組み合わせを用いているので、一定力発生器10Cから発生する推力FTを、第1の実施形態に係る一定力発生器10に比較して強くすることができる。そして、このような構成の一定力発生器10Cにおいても、リニアモータ20のストロークのどの位置でも一定の推力FTを維持することができる。
【0088】
このような構成の一定力発生器10Cによれば、たとえケース14の厚さが薄くても、ステータ13Cの永久磁石領域から発生された磁束が、ケース14から外部へ漏れるのを抑えることができる。何故なら、前述したように、ステータ13Cの永久磁石領域はハルバッハ構造をしているからである。よって、漏れ磁束を少なく抑えることができる、小型の一定力発生器10Cを提供することができる。
【0089】
なお、シャフト部分12C-2の構造(構成)は、
図15に図示したものに限定されない。例えば、棒状の強磁性体として、円柱状の強磁性体を用いてもよい。その場合、8個の永久磁石の各々としては、平面視、瓦形状の永久磁石を、その円柱状の強磁性体の外周側面に張り付けて設ければよい。
【0090】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0091】
例えば、上述した第1乃至第4の実施形態に係る一定力発生器10~10Cでは、2ポール、4ポール、および8ポールの場合を例に挙げて説明したが、本発明は、一般的に、N(Nは2以上の整数)ポールの場合に適用可能である。その場合、ステータは、N個の主磁石と、偶数個の副磁石とを含む。N個の主磁石は、(360/N)度の等角度間隔で、径方向に着磁して隣接して配置される。そして、偶数個の副磁石は、N個の主磁石の各々を周方向で両側から挟み込むように周方向に着磁して配置される。偶数個の副磁石の一対は、挟み込んだ主磁石の両側を、当該挟み込んだ主磁石の内径側の磁極と同じ極性の磁極となるように挟み込む。なお、Nは偶数であることが好ましい。また、上述した第1乃至第4の実施形態に係る一定力発生器10~10Cでは、ケースおよびステータは円筒状をしており、シャフトは円柱状をしているが、本発明では、それらの形状はこれに限定されないのは勿論である。例えば、ケースおよびステータは筒状であればよく、シャフトは棒状であってよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る一定力発生器は、前述した推力補助機構としての利用にのみに限定されず、一定の推力を必要とする他の機構にも利用され得る。また、本発明に係る一定力発生器は、落下防止のためだけ、または推力補助だけのどちらか一方の用途でのみ使用することも可能である。
【符号の説明】
【0093】
10、10A、10B、10C 一定力発生器
12、12A、12C シャフト
12-2、12B-2、12C-2 シャフト部分
12A-2 磁性シャフト
12A-2a 雄ネジ
12B-22、12C-22 強磁性体
12B-24、12C-24 永久磁石
12-4 シャフト本体
12-4a 開口
12A-4 非磁性シャフト
12A-4a 雌ネジ
13、13C ステータ
13-2、13B-2、13C-2 主磁石
13-4、13B-4、13C-4 副磁石(補助磁石)
13-6 スペーサ
14 ケース
15-1、15-2 エンドキャップ
20 リニアモータ
A 軸方向
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向