IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工メカトロシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-117160位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム
<>
  • 特開-位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム 図1
  • 特開-位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム 図2
  • 特開-位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム 図3
  • 特開-位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム 図4
  • 特開-位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム 図5
  • 特開-位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117160
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0201 20230101AFI20240822BHJP
   G06F 21/60 20130101ALI20240822BHJP
   G06F 21/62 20130101ALI20240822BHJP
【FI】
G06Q30/0201
G06F21/60 320
G06F21/62 345
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023093
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】立尾 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋幸
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB01
5L049BB01
(57)【要約】
【課題】位置情報の精度を可変とすることができる位置情報提供サーバを提供する。
【解決手段】位置情報提供サーバは、車両に搭載された車載器から、前記車両の位置を特定可能な位置情報を取得する取得部と、前記位置情報から特定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報の暗号化レベルを判定する判定部と、前記暗号化レベルに応じて前記位置情報の暗号化する範囲を変化させた出力情報を生成する出力情報生成部と、前記出力情報を利用者端末に送信する送信部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載器から、前記車両の位置を特定可能な位置情報を取得する取得部と、
前記位置情報から特定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報の暗号化レベルを判定する判定部と、
前記暗号化レベルに応じて前記位置情報の暗号化する範囲を変化させた出力情報を生成する出力情報生成部と、
前記出力情報を利用者端末に送信する送信部と、
を備える位置情報提供サーバ。
【請求項2】
前記判定部は、地図上の位置を秘匿性に応じて複数のエリアに分割した地図データと、前記位置情報とに基づいて、前記車両がいずれのエリアに含まれるか特定し、特定した前記エリアに応じて前記暗号化レベルを判定する、
請求項1に記載の位置情報提供サーバ。
【請求項3】
前記判定部は、特定した前記エリアが秘匿性の最も低い第1エリアである場合に、前記位置情報の暗号化レベルを第1レベルであると判定し、
前記出力情報生成部は、前記暗号化レベルが第1レベルである場合に、前記位置情報の全ての範囲を暗号化せずに前記出力情報を生成する、
請求項2に記載の位置情報提供サーバ。
【請求項4】
前記判定部は、特定した前記エリアが前記第1エリアよりも秘匿性が高い第2エリアである場合に、前記位置情報の暗号化レベルを第2レベルであると判定し、
前記出力情報生成部は、前記暗号化レベルが第2レベルである場合に、前記位置情報のうち、前記第2レベルに対応して予め設定された範囲を暗号化した前記出力情報を生成する、
請求項3に記載の位置情報提供サーバ。
【請求項5】
前記出力情報生成部は、複数の異なる暗号鍵を有し、前記位置情報の異なる範囲をそれぞれ異なる前記暗号鍵で暗号化した前記出力情報を生成する、
請求項1に記載の位置情報提供サーバ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の位置情報提供サーバと、
車両に搭載され、前記車両の位置を特定可能な位置情報を前記位置情報提供サーバに送信する車載器と、
前記位置情報の精度に関する利用者ごとの契約に対応して前記位置情報提供サーバから提供された復号鍵を使って、前記位置情報提供サーバから受信した前記出力情報を復号する利用者端末と、
を備える位置情報提供システム。
【請求項7】
車両に搭載された車載器から、前記車両の位置を特定可能な位置情報を取得するステップと、
前記位置情報から特定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報の暗号化レベルを判定するステップと、
前記暗号化レベルに応じて前記位置情報の暗号化する範囲を変化させた出力情報を生成するステップと、
前記出力情報を利用者端末に送信するステップと、
を有する位置情報提供方法。
【請求項8】
車両に搭載された車載器から、前記車両の位置を特定可能な位置情報を取得するステップと、
前記位置情報から特定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報の暗号化レベルを判定するステップと、
前記暗号化レベルに応じて前記位置情報の暗号化する範囲を変化させた出力情報を生成するステップと、
前記出力情報を利用者端末に送信するステップと、
を位置情報提供サーバに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行中の車両に搭載された車載器から位置情報(測位情報)を収集して、渋滞情報の生成を行う事業者などに提供するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-102680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の位置情報提供システムでは、単一の精度で車両の位置情報を提供し続けている。このことから、個人情報である位置情報が、事業者が本来必要とする精度以上の精度で提供される可能性がある。一方、位置情報はマーケティングで高い価値が見出されている。例えば、スマートフォンからの位置情報発信と他サービスとを組み合わせて、客層の傾向を把握することや、新たな知見を得ることが可能である。このため、個人情報保護とマーケティングの双方の面に対して有効となる位置情報提供システムの仕組みが望まれている。
【0005】
したがって、本開示の目的は、提供する位置情報の精度を可変とすることができる位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、位置情報提供サーバは、車両に搭載された車載器から、前記車両の位置を特定可能な位置情報を取得する取得部と、前記位置情報から特定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報の暗号化レベルを判定する判定部と、前記暗号化レベルに応じて前記位置情報の暗号化する範囲を変化させた出力情報を生成する出力情報生成部と、前記出力情報を利用者端末に送信する送信部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様によれば、位置情報提供システムは、上述の態様に係る位置情報提供サーバと、車両に搭載され、前記車両の位置を特定可能な位置情報を前記位置情報提供サーバに送信する車載器と、契約に応じて前記位置情報提供サーバから提供された復号鍵を使って、前記位置情報提供サーバから受信した前記出力情報を復号する利用者端末と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、位置情報提供方法は、車両に搭載された車載器から、前記車両の位置を特定可能な位置情報を取得するステップと、前記位置情報から特定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報の暗号化レベルを判定するステップと、前記暗号化レベルに応じて前記位置情報の暗号化する範囲を変化させた出力情報を生成するステップと、前記出力情報を利用者端末に送信するステップと、を有する。
【0009】
本開示の一態様によれば、プログラムは、車両に搭載された車載器から、前記車両の位置を特定可能な位置情報を取得するステップと、前記位置情報から特定される前記車両の位置に基づいて、前記位置情報の暗号化レベルを判定するステップと、前記暗号化レベルに応じて前記位置情報の暗号化する範囲を変化させた出力情報を生成するステップと、前記出力情報を利用者端末に送信するステップと、を位置情報提供サーバに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、提供する位置情報の精度を可変とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る位置情報提供システムの全体構成を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る位置情報提供サーバの機能構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態に係る位置情報提供サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
図4】一実施形態に係る地図データの一例を示す図である。
図5】一実施形態に係るエリア、暗号化レベル、および出力情報の対応を示す図である。
図6】一実施形態に係る位置情報提供システムの機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(全体構成)
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、一実施形態に係る位置情報提供システムの全体構成を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、位置情報提供システム1は、位置情報提供サーバ10と、車載器20と、利用者端末30とを備える。
【0014】
位置情報提供サーバ10は、複数の車両Vそれぞれに搭載された車載器20から、各車両Vの位置情報D1を収集する。また、位置情報提供サーバ10は、位置情報D1が示す車両Vの位置に応じて位置情報D1の一部を暗号鍵EKで暗号化した出力情報D2を生成し、利用者端末30へ提供する。位置情報提供サーバ10の詳細については後述する。
【0015】
車載器20は、GNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)などの技術を利用して、自機が搭載された車両Vの位置情報D1(測位データ)を生成する。生成した位置情報D1は位置情報提供システム1に送信される。車載器20が位置情報D1を生成して位置情報提供サーバ10へ送信する技術は既知であるため、詳細な説明は省略する。
【0016】
利用者端末30は、各車両Vの位置情報を利用する利用者が有するコンピュータである。利用者は、例えば、商業施設(ショッピングモールなど)の運営会社、カーディーラー、運送会社などである。利用者端末30には、位置情報の精度に関する利用者ごとの契約に対応して、位置情報提供サーバ10から提供された復号鍵DKが保存されている。利用者端末30は、復号鍵DKを使って出力情報D2を復号して、各車両Vの位置情報D1を取得する。
【0017】
(位置情報提供サーバの機能構成)
図2は、一実施形態に係る位置情報提供サーバの機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、位置情報提供サーバ10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14とを備える。
【0018】
プロセッサ11は、所定のプログラムに従って動作することにより、取得部110、判定部111、出力情報生成部112、および送信部113としての機能を発揮する。
【0019】
取得部110は、車載器20から、車両Vの位置を特定可能な位置情報D1を取得する。
【0020】
判定部111は、位置情報D1が示す車両Vの位置に基づいて、位置情報D1の暗号化レベルを判定する。暗号化レベルとは、暗号化の対象とする情報について暗号化する範囲を段階的に定めたものである。
【0021】
出力情報生成部112は、暗号化レベルに応じて位置情報D1のうち暗号化する範囲を変化させた出力情報D2を生成する。
【0022】
送信部113は、出力情報D2を利用者に送信する。
【0023】
メモリ12は、プロセッサ11の動作に必要なメモリ領域を有する。
【0024】
ストレージ13は、いわゆる補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等である。ストレージ13には、プロセッサ11の各部が処理中に取得、生成、参照するデータが格納される。
【0025】
通信インタフェース14は、車載器20および利用者端末30との間で各種情報(信号)の送受信を行うためのインタフェースである。
【0026】
(位置情報提供サーバの処理フロー)
図3は、一実施形態に係る位置情報提供サーバの処理の一例を示すフローチャートである。
ここでは、図3を参照しながら、位置情報提供サーバの処理の流れについて詳細に説明する。
【0027】
取得部110は、車載器20から位置情報D1を取得する(ステップS01)。位置情報D1は、例えば緯度および経度を含む測位データである。また、位置情報D1には、車載器20(車両V)を特定可能な識別情報や、車両Vの車種情報などが付加されてもよい。
【0028】
次に、判定部111は、位置情報D1と地図データD3(図4)とに基づいて、車両Vがどのエリアに位置しているか特定する(ステップS02)。
【0029】
図4は、一実施形態に係る地図データの一例を示す図である。
図4に例示するように、ストレージ13には、道路、施設、住宅などの位置(緯度および経度)や形状などを記録した地図データD3が格納されている。また、地図データD3は、位置の秘匿性に応じて複数のエリアに分割されている。例えば、本実施形態では、地図データD3は、高速道路を示す第1エリアA1、一般道路を示す第2エリアA2、私道を示す第3エリアA3、私有地(住宅など)を示す第4エリアA4の4つに分割されているとする。つまり、秘匿性とはエリアの公共性に応じて決定され、公共性が高いほど秘匿性が低く、公共性が低いほど秘匿性が高くなる。なお、他の実施形態ではさらに複数のエリアに分割されてもよい。また、車両Vのドライバーの自宅などが特定されにくい第1エリアA1は秘匿性が最も低く、車両Vのドライバーの自宅などが特定されやすい第4エリアA4は秘匿性が最も高い。判定部111は、位置情報D1に含まれる緯度および経度が、地図データD3のどのエリアの緯度、経度の範囲に含まれているかに基づいて、車両Vが位置するエリアを特定する。
【0030】
また、判定部111は、車両Vの位置(エリア)に基づいて、位置情報D1の暗号化レベルを判定する(ステップS03)。
【0031】
図5は、一実施形態に係るエリア、暗号化レベル、および出力情報の対応を示す図である。
図5に示すように、車両Vが位置するエリアに応じて、暗号化レベルが予め定められている。秘匿性が最も低い第1エリアA1に対しては、暗号化を必要としない暗号化レベル「1」(第1レベル)が割り当てられる。また、第1エリアA1よりも秘匿性が高い第2エリアA2~第4エリアA4に対しては、それぞれ暗号化を必要とする暗号化レベル「2」~「4」(第2レベル~第4レベル)が割り当てられる。また、暗号化を必要とする暗号化レベル「2」~「4」については、図5の例のように、暗号化レベルが高いほど、位置情報D1の暗号化される範囲が増加する。例えば、位置情報D1は緯度および経度であり、暗号化レベルに応じて、緯度および経度それぞれの下位の所定の桁数が暗号化される。
【0032】
例えば、判定部111は、位置情報D1から車両Vが第1エリアA1(高速道路)にいると特定した場合、この位置情報D1の暗号化レベルは「1」であると判定する。また、判定部111は、位置情報D1から車両Vが第4エリアA4(私有地)にいると特定した場合、この位置情報D1の暗号化レベルは「4」であると判定する。
【0033】
次に、出力情報生成部112は、判定部111が判定した暗号化レベルに基づいて、位置情報D1の暗号化する範囲を変化させた出力情報D2を生成する(ステップS04)。
【0034】
例えば、出力情報生成部112は、位置情報D1の暗号化レベルが「1」であると判定された場合、図5の例のように位置情報D1の全てを暗号化しない(全てが平文のままである)出力情報D2を生成する。また、出力情報生成部112は、位置情報D1の暗号化レベルが「2」~「4」のいずれかであると判定された場合、暗号化レベルに応じて出力情報D2の下位の所定の桁数を暗号化した出力情報D2(平文と暗号化データとを含むデータ)を生成する。
【0035】
また、出力情報生成部112は、複数の異なる暗号鍵を使って位置情報D1を暗号化してもよい。例えば、出力情報生成部112は、図5に示すように、第1暗号鍵EK1で暗号化した第1暗号化データと、第2暗号鍵EK2で暗号化した第2暗号化データとを含む出力情報D2を生成する。第1暗号鍵EK1は、下位のX1桁以降、X2桁より前の第1範囲を暗号化するための暗号鍵である。第2暗号鍵EK2は、X2桁以降から最終桁までの第2範囲を暗号化するための暗号鍵である。X1,X2の値は、暗号化レベルに応じて変化する。また、第2暗号鍵EK2は、第1暗号鍵EK1よりも暗号化強度の高い暗号化データを生成可能な暗号鍵であってもよい。他の実施形態では、3つ以上の暗号鍵を用いてもよい。
【0036】
位置情報提供サーバ10は、このように複数の暗号鍵を使って段階的な暗号化を行う場合、暗号鍵それぞれに対応する複数の復号鍵を用意する。第1暗号鍵EK1および第2暗号鍵EK2の2つの暗号鍵を使う場合、それぞれに対応する第1復号鍵DK1および第2復号鍵DK2の2つの復号鍵を用意する。このとき、位置情報提供サーバ10は、各利用者の位置情報の精度に関する契約に対応するように、第1復号鍵DK1のみを提供するか、第1復号鍵DK1および第2復号鍵DK2の両方を提供するかを変えてもよい。
【0037】
次に、送信部113は、ステップS04で生成された出力情報D2を、各利用者端末30に送信する(ステップS05)。
【0038】
図6は、一実施形態に係る位置情報提供システムの機能を説明するための図である。
例えば、図6に示すように、位置情報提供サーバ10の取得部110は、車両Vの車載器20から位置情報D1を取得する(図3のステップS01)。位置情報提供サーバ10の判定部111は、位置情報D1から車両Vが第2エリアA2(一般道路)に位置すると特定し(図3のステップS02)、この位置情報D1の暗号化レベルは「暗号化レベル2」であると判定する(図3のステップS03)。そうすると、位置情報提供サーバ10の出力情報生成部112は、暗号化レベル2に対応した出力情報D2を生成する(図3のステップS04)。図5および図6の例では、出力情報生成部112は、緯度および経度のX1桁よりも前は平文、X1桁以降を第1暗号鍵EK1で暗号化した第1暗号化データ、X2桁以降を第2暗号鍵EK2で暗号化した第2暗号化データからなる出力情報D2を生成する。また、位置情報提供サーバ10の送信部113は、出力情報D2を各利用者の利用者端末30に送信する(図3のステップS05)。
【0039】
図6の例では、2つの利用者A,Bがそれぞれ契約を行い、位置情報D1(出力情報D2)の提供を受けている。上記したように、契約は利用者毎に異なっていてもよい。この契約は、利用者毎に希望する位置情報の精度を定めたものである。図6の例では、利用者Aは、位置情報提供サーバ10から最も高精度な位置情報を提供を受ける契約を結んでいる。利用者Aには、この契約に対応して、第1暗号化データおよび第2暗号化データの両方(全データ)の復号が可能となるように、第1復号鍵DK1および第2復号鍵DK2の両方が提供されている。一方、利用者Bは、利用者Aとは異なる契約を結んでいる。たとえば、利用者Bは、位置情報提供サーバ10から利用者Aよりも低精度な位置情報の提供を受ける契約を結んでいる。利用者Bには、この契約に対応して、第1暗号化データの復号が可能な第1復号鍵DK1のみが提供されている。
【0040】
利用者A,Bの利用者端末30は、それぞれ、位置情報提供サーバ10から同じ出力情報D2を受信する。利用者Aの利用者端末30は、第1復号鍵DK1および第2復号鍵DK2を所持しているので、出力情報D2の全データを復号して参照することが可能である。一方、利用者Bの利用者端末30は、第1復号鍵DK1のみを所持しているので、出力情報D2のうち、平文のままであるデータと、第1暗号化データを復号した復号データのみを参照可能である。利用者Bの利用者端末30は、第2暗号化データを復号できず参照することができない。緯度および経度は、下位の桁が分かっている方が、より精度よく(例えば数m単位の高精度で)位置を特定可能である。すなわち、利用者Aは、利用者Bよりも高精度の位置情報を参照することが可能である。
【0041】
このように、位置情報提供サーバ10は、複数の暗号鍵で位置情報D1を段階的に暗号化し、契約に対応して利用者ごとに提供する復号鍵を変えることにより、各利用者に送信する位置情報D1の精度を可変とすることができる。
【0042】
上記したように、利用者は、商業施設(ショッピングモールなど)の運営会社、カーディーラー、運送会社などである。
【0043】
例えば、商業施設の運営会社は、各車両Vの位置情報に基づいて、顧客の居住地域や経路などを把握し、顧客の居住地域や経路の周辺にある他施設との連携(ポイント相互付与など)や、新施設の建設候補地の選定などに利用することができる。また、カーディーラーは、各車両Vの車種および位置情報の組み合わせに基づいて、カーディーラー周辺地域における顧客候補の開拓などを行うことができる。このとき、例えば顧客の高精度な位置情報(例えば自宅位置)が不明であっても、どの地域(市町村)が居住地域であるか、どの地域の道路(一般道路や高速道路)の利用頻度が高いかなど、おおまかな範囲(例えば数kmの範囲)で絞り込むことができれば、十分に建設候補地の選定や顧客候補の開拓などを行うことができる場合がある。このような利用者は、精度が低い位置情報の提供を受ける契約を結んでもよい。
【0044】
一方で、例えば、運送会社は、配達車両である各車両Vの高精度な位置情報(配達先や営業所のピンポイント位置など)を知ることにより、各車両Vの配達状況の監視などを行うことができる。このような利用者は、精度が高い位置情報の提供を受ける契約を結んでもよい。
【0045】
したがって、位置情報提供サーバ10は、例えば位置情報の精度に応じて異なる料金形態の契約を提供することにより、利用者のニーズに応じたサービスを提供することができる。
【0046】
(作用、効果)
本実施形態に係る位置情報提供サーバ10は、車両Vに搭載された車載器20から、車両Vの位置を特定可能な位置情報D1を取得する取得部110と、位置情報D1が示す車両Vの位置に基づいて、位置情報D1の暗号化レベルを判定する判定部111と、暗号化レベルに応じて位置情報D1の暗号化する範囲を変化させた出力情報D2を生成する出力情報生成部112と、出力情報D2を利用者端末に送信する送信部113と、を備える。
【0047】
このように、位置情報提供サーバ10は、車両Vの位置に応じて位置情報D1の暗号化する範囲を変えることで、位置情報D1の精度を変えることができる。
【0048】
また、判定部111は、地図上の位置を秘匿性に応じて複数のエリアに分割した地図データD3と、位置情報D1とに基づいて、車両Vがいずれのエリアに含まれるか特定し、特定したエリアに応じて暗号化レベルを判定する。
【0049】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、車両Vの位置が秘匿性の高いエリアにいるか否かに応じて、位置情報D1の暗号化レベルを変え、位置情報D1の精度を変更することができる。
【0050】
また、判定部111は、特定したエリアが秘匿性の最も低い第1エリアA1である場合に、位置情報D1の暗号化レベルを第1レベルであると判定し、出力情報生成部112は、暗号化レベルが第1レベルである場合に、位置情報D1の全ての範囲を暗号化せずに出力情報D2を生成する。
【0051】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、車両Vが例えば高速道路などの車両Vのドライバーの個人情報が特定しにくい第1エリアA1を走行中の場合は、精度の高い位置情報D1を利用者へ提供することができる。
【0052】
また、判定部111は、特定したエリアが第1エリアA1よりも秘匿性が高い第2エリアA2~第4エリアA4である場合に、位置情報D1の暗号化レベルを第2レベル~第4レベルであると判定し、出力情報生成部112は、暗号化レベルが第2レベル~第4レベルである場合に、位置情報D1のうち、第2レベル~第4レベルそれぞれに対応して予め設定された範囲を暗号化した出力情報D2を生成する。
【0053】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、車両Vが秘匿性の比較的高いエリア(第2エリアA2~第4エリアA4)を走行中の場合は、第1エリアA1を走行しているときよりも位置情報D1の精度を低くして利用者へ提供することができる。
【0054】
また、出力情報生成部112は、複数の異なる暗号鍵EK1,EK2を有し、位置情報D1の異なる範囲をそれぞれ異なる暗号鍵でEK1,EK2で暗号化した出力情報D2を生成する。
【0055】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、位置情報D1を段階的に暗号化することができる。また、位置情報提供サーバ10は、例えば各暗号鍵EK1,EK2に対応する復号鍵DK1,DK2を用意し、利用者ごとに提供する復号鍵の数を変えることにより、各利用者が同じ出力情報D2を受信したとしても、個々の利用者が得られる位置情報の精度を可変とすることができる。
【0056】
また、位置情報提供システム1は、位置情報提供サーバ10と、車両Vに搭載され、位置情報D1を位置情報提供サーバ10に送信する車載器20と、位置情報の精度に関する利用者ごとの契約に対応して位置情報提供サーバ10から提供された復号鍵DK1,DK2を使って、位置情報提供サーバ10から受信した出力情報D2を復号する利用者端末30と、を備える。
【0057】
このようにすることで、位置情報提供システム1は、位置情報提供サーバ10から各利用者に同じ出力情報D2を受信したとしても、契約に応じて個々の利用者が得られる位置情報の精度を可変とすることができる。
【0058】
以上のとおり、本開示に係る実施形態を説明したが、上記した実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0059】
例えば、上記した実施形態において、位置情報D1が緯度および経度を含む例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、位置情報D1は、住所(国、八方区分、都道府県、市、区、町、〇丁目、番地・号など)であってもよい。例えば、判定部111が位置情報D1および地図データD3に基づいて、車両Vの位置(緯度および経度)を住所で表したデータに変換し、出力情報生成部112が暗号化レベルに応じて所定の下位項目を暗号化した出力情報D2を生成してもよい。例えば、出力情報生成部112は、暗号化レベルが「2」であると判定された場合に、区、町に対応する項目を第1暗号鍵EK1で暗号化し、〇丁目、番地・号に対応する項目を第2暗号鍵EK2で暗号化する。暗号化レベルが「3」または「4」も場合、さらに上位の項目(例えば、八方区分、都道府県、市など)まで暗号化の範囲を増やす。このような態様であっても、上記した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
<付記>
上述の実施形態に記載の位置情報提供サーバ、位置情報提供システム、位置情報提供方法、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0061】
(1)第1の態様によれば、位置情報提供サーバ10は、車両Vに搭載された車載器20から、車両Vの位置を特定可能な位置情報D1を取得する取得部110と、位置情報D1から特定される車両Vの位置に基づいて、位置情報D1の暗号化レベルを判定する判定部111と、暗号化レベルに応じて位置情報D1の暗号化する範囲を変化させた出力情報D2を生成する出力情報生成部112と、出力情報D2を利用者端末30に送信する送信部113と、を備える。
【0062】
このように、位置情報提供サーバ10は、車両Vの位置に応じて位置情報D1の暗号化する範囲を変えることで、位置情報D1の精度を変えることができる。
【0063】
(2)第2の態様によれば、第1の態様に係る位置情報提供サーバ10において、判定部111は、地図上の位置を秘匿性に応じて複数のエリアに分割した地図データD3と、位置情報D1とに基づいて、車両Vがいずれのエリアに含まれるか特定し、特定したエリアに応じて暗号化レベルを判定する。
【0064】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、車両Vの位置が秘匿性の高いエリアにいるか否かに応じて、位置情報D1の暗号化レベルを変え、位置情報D1の精度を変更することができる。
【0065】
(3)第3の態様によれば、第2の態様に係る位置情報提供サーバ10において、判定部111は、特定したエリアが秘匿性の最も低い第1エリアA1である場合に、位置情報D1の暗号化レベルを第1レベルであると判定し、出力情報生成部112は、暗号化レベルが第1レベルである場合に、位置情報D1の全ての範囲を暗号化せずに出力情報D2を生成する。
【0066】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、車両Vが例えば高速道路などの車両Vのドライバーの個人情報が特定しにくい第1エリアA1を走行中の場合は、精度の高い位置情報D1を利用者へ提供することができる。
【0067】
(4)第4の態様によれば、第3の態様に係る位置情報提供サーバ10において、判定部111は、特定したエリアが第1エリアA1よりも秘匿性が高い第2エリアA2である場合に、位置情報D1の暗号化レベルを第2レベルであると判定し、出力情報生成部112は、暗号化レベルが第2レベルである場合に、位置情報D1のうち、第2レベルに対応して予め設定された範囲を暗号化した出力情報D2を生成する。
【0068】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、車両Vが秘匿性の比較的高い第2エリアA2を走行中の場合は、第1エリアA1を走行しているときよりも位置情報D1の精度を低くして利用者へ提供することができる。
【0069】
(5)第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様に係る位置情報提供サーバ10において、出力情報生成部112は、複数の異なる暗号鍵EK1,EK2を有し、位置情報D1の異なる範囲をそれぞれ異なる暗号鍵EK1,EK2で暗号化した出力情報D2を生成する。
【0070】
このようにすることで、位置情報提供サーバ10は、位置情報D1を段階的に暗号化することができる。また、位置情報提供サーバ10は、例えば各暗号鍵EK1,EK2に対応する復号鍵DK1,DK2を用意し、利用者ごとに提供する復号鍵の数を変えることにより、各利用者が同じ出力情報D2を受信したとしても、個々の利用者が得られる位置情報の精度を可変とすることができる。
【0071】
(6)第6の態様によれば、位置情報提供システム1は、第1から第5のいずれか一の態様に係る位置情報提供サーバ10と、車両Vに搭載され、車両Vの位置を特定可能な位置情報D1を位置情報提供サーバ10に送信する車載器20と、位置情報の精度に関する利用者ごとの契約に対応して位置情報提供サーバ10から提供された復号鍵を使って、位置情報提供サーバ10から受信した出力情報D2を復号する利用者端末30と、を備える。
【0072】
このようにすることで、位置情報提供システム1は、位置情報提供サーバ10から各利用者に同じ出力情報D2を受信したとしても、契約に応じて個々の利用者が得られる位置情報の精度を可変とすることができる。
【0073】
(7)第7の態様によれば、位置情報提供方法は、車両Vに搭載された車載器20から、車両Vの位置を特定可能な位置情報D1を取得するステップと、位置情報D1から特定される車両Vの位置に基づいて、位置情報D1の暗号化レベルを判定するステップと、暗号化レベルに応じて位置情報D1の暗号化する範囲を変化させた出力情報D2を生成するステップと、出力情報D2を利用者端末30に送信するステップと、を有する。
【0074】
(8)第8の態様によれば、プログラムは、車両Vに搭載された車載器20から、車両Vの位置を特定可能な位置情報D1を取得するステップと、位置情報D1から特定される車両Vの位置に基づいて、位置情報D1の暗号化レベルを判定するステップと、暗号化レベルに応じて位置情報D1の暗号化する範囲を変化させた出力情報D2を生成するステップと、出力情報D2を利用者端末30に送信するステップと、を位置情報提供サーバ10に実行させる。
【符号の説明】
【0075】
1 位置情報提供システム
10 位置情報提供サーバ
11 プロセッサ
110 取得部
111 判定部
112 出力情報生成部
113 送信部
12 メモリ
13 ストレージ
14 通信インタフェース
20 車載器
30 利用者端末
D1 位置情報
D2 出力情報
D3 地図データ
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6