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  • 特開-乗客コンベア 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011717
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/08 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B66B29/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113957
(22)【出願日】2022-07-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曹 春華
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321CE00
3F321GA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】踏段に乗る乗客がバランスを崩して転倒することを防止する事ができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗客コンベア1は、乗り口18から降り口17までの間を移動する複数のステップ30と、ステップ30の両側に設けられ、乗り口18から降り口17まで延びる欄干12とを備える。欄干12は、ステップ30の進行方向に従って欄干12の上面が漸次低くなるように傾斜する欄干勾配部12bを乗り口18側端部に備え、欄干勾配部12bの上部に沿って手摺りベルト15が乗り口18側から降り口17側に走行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口から降り口までの間を移動する複数のステップと、
前記ステップの両側に設けられ、前記乗り口から前記降り口まで延びる欄干と、
前記欄干の上部を前記ステップと同期して走行する手摺りベルトと、
を備え、
前記欄干は、前記ステップの進行方向に従って前記欄干の上面が漸次低くなるように傾斜する欄干勾配部を前記乗り口側端部に備え、
前記欄干勾配部の上部に沿って前記手摺りベルトが前記乗り口側から前記降り口側へと走行する乗客コンベア。
【請求項2】
前記ステップが建屋の上階と下階との間を移動する乗客コンベアであって、
前記欄干勾配部が前記欄干の下階側端部に設けられている、請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記乗り口に設けられた乗降板と、前記乗降板の乗客進入方向前端部に設けられたコムとを備え、
前記欄干勾配部は、前記コムよりも乗客進入方向後方の位置から前記コムよりも乗客進入方向前方の位置まで設けられている、請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記乗り口に設けられた乗降板と、前記乗降板の乗客進入方向前端部に設けられたコムとを備え、
前記乗降板は、乗客進入方向に沿って前記コムに近づくほど低くなるように傾斜する乗降板勾配部を備える、請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記欄干勾配部と前記乗降板勾配部とは、水平方向に対する傾斜角度が等しい請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記乗降板勾配部は、前記欄干よりも乗客進入方向後方の位置から前記コムまで設けられている、請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記欄干勾配部の傾斜角度が水平方向に対して1°以上3°以下である、請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記乗降板勾配部の傾斜角度が水平方向に対して1°以上3°以下である、請求項4に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアでは、乗降口からステップに乗り移る際に、乗客の足下のみが進行方向に加速されるため、自らの重心が進行方向後方へ移動してバランスを崩すおそれがある。特に、運動性能が衰えつつある高齢者等は、ステップに乗り移る際に生じる身体重心の移動を修正することが難しく、乗り口においてよろめいたり、転倒したりするおそれがある。
【0003】
そこで、乗客が乗降口と踏段との間を乗り降りする際にバランスを崩して転倒することを防止する安全対策がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-104674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、乗客コンベアに対して安全性向上の要請が益々高くなっており、乗り口から踏段に乗り移る際に乗客がバランスを崩して転倒することに対してもさらなる対策が求められている。
【0006】
そこで、乗り口から踏段へ乗り移る際に乗客がバランスを崩して転倒することをより確実に防止する事ができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る乗客コンベアは、乗り口から降り口までの間を移動する複数のステップと、前記ステップの両側に設けられ、前記乗り口から前記降り口まで延びる欄干と、前記欄干の上部を前記ステップと同期して走行する手摺りベルトと、を備え、前記欄干は、前記ステップの進行方向に従って前記欄干の上面が漸次低くなるように傾斜する欄干勾配部を前記乗り口側端部に備え、前記欄干勾配部の上部に沿って前記手摺りベルトが前記乗り口側から前記降り口側へと走行する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の乗客コンベアを概略的に示す側面図
図2図1の乗客コンベアの乗り口付近を拡大して示す側面図
図3】本発明の変更例1の乗客コンベアの乗り口付近を拡大して示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態の乗客コンベア1について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態では、乗客コンベア1として、多数のステップ30(以下、「踏段30」ということがある)が上階側の乗降口17と下階側の乗降口18との間で循環移動するエスカレータについて説明するが、本発明は、ステップが水平方向に移動する動く歩道に対しても適用することができる。
【0011】
なお、以下の説明において、トラス2の長手方向を前後方向、トラス2の幅方向を左右方向ということがある。また、前後方向や左右方向は下階から上階を見たときの方向を示し、上階側が前側、下階側が後側であるものとする。
【0012】
(1)乗客コンベア1
図1に示すように、乗客コンベア1の枠組みである前後方向(踏段30の移動方向)に延びるトラス2が、建屋の上階と下階に跨がって支持アングル(不図示)を用いて支持されている。なお、図1では、乗客コンベア1の右側の部材を省略している。
【0013】
乗客コンベア1は、上下階の乗降口17,18付近に位置し、踏段30が水平方向へ移動する水平部と、所定の傾斜角度で踏段30が直線移動する中間傾斜部と、水平部と中間傾斜部とをなだらかに繋ぎ、踏段30が曲線状に移動する、上下一対の曲線部とから構成されている。
【0014】
踏段30は、その両側に配置された無端状の踏段チェーン11によって相互に連結されており、踏段チェーン11は建物の床下に設置されたトラス2内に配置されている。
【0015】
踏段30は、側面形状が略三角形状の左右一対の踏段フレーム31と、この踏段フレーム31の上面に形成されたクリート面32と、踏段フレーム31の後面に形成されたライザ面33とを備える。踏段フレーム31とクリート面32とライザ面33とは、アルミダイカストで一体に形成されている。
【0016】
クリート面32の表面、つまり、踏段30において乗客が搭乗する面には、踏段30の移動方向(前後方向)に沿って延びる複数本のクリート突条が所定間隔をあけて互いに平行に設けられ、隣接するクリート突条の間にクリート溝が形成されている。
【0017】
左右一対の踏段フレーム31の前端部には、踏段30の幅方向外方へ突出する支軸にベアリングを介して左右一対の前輪35が設けられている。また、左右一対の踏段フレーム31の後下端部には、踏段フレーム31と一体に形成された取付部の先端部の外側にベアリングを介して左右一対の後輪37が設けられている。前輪35及び後輪37は、トラス2に設けられた案内レール(不図示)を転動して踏段30の進行方向に移動する。
【0018】
トラス2の上端部にある上階側の機械室5内部には、踏段30を走行させる駆動装置6、左右一対の駆動スプロケット7、左右一対の手摺ベルトスプロケット(図示せず)、及び制御部16が設けられている。
【0019】
駆動装置6は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータと、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する踏段チェーン11と、モータの回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。駆動スプロケット7は駆動チェーン8により回転する。左右一対の駆動スプロケット7と左右一対の手摺ベルトスプロケットとは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。
【0020】
トラス2の下端部にある下階側の機械室9内部には、従動スプロケット10が設けられている。上階側の駆動スプロケット7と下階側の従動スプロケット10との間には、左右一対の無端の踏段チェーン11が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン11には、各踏段30の前輪35が等間隔に取り付けられている。
【0021】
駆動装置6から回転力を受けて駆動スプロケット7が回転すると、踏段チェーン11が駆動スプロケット7と従動スプロケット10との間を循環移動する。これに伴って、踏段30に設けられた前輪35及び後輪37が、トラス2に固定された案内レールを走行すると共に、駆動スプロケット7の外周部にある凹部と従動スプロケット10の外周部にある凹部に係合して、踏段30が上下に反転する。これにより、踏段30は、一方の乗降口(乗り口)17,18から他方の乗降口(降り口)18,17に向かって移動して乗客を搬送する往路と、往路の下方において降り口から乗り口に向かって移動する帰路とを交互に通って、上階側の乗降口17と下階側の乗降口18との間を循環移動する。
【0022】
上階側及び下階側の乗降口17,18には、機械室5,9の上面を覆うように乗降板19,20が設けられている。乗り口17,18において乗客が乗降板19,20から踏段30へ移動する方向を「乗客進入方向」、降り口17,18において乗客が踏段30から乗降板19,20へ移動する方向を「乗客退出方向」とすると、乗り口に設けられた乗降板19,20の乗客進入方向前端部、及び、降り口に設けられた乗降板19,20の乗客退出方向後端部には、複数の櫛歯が等間隔で突出するコム44,45が設けられている。この櫛歯は、先端側ほど細く下方へ傾斜し、端部が屈曲して丸みをおびており、踏段30に設けられたクリート突条と噛み合うことで、踏段30上の乗客の足や異物等を乗降板19,20上にすくい上げ、乗客の足や異物等が踏段30と乗降板19,20との間に挟まれることを防止している。
【0023】
トラス2の左右両側には、上階側の乗降口17から下階側の乗降口18まで延びる左右一対の欄干12が立設されている。欄干12の上階側下部には操作盤46が設けられている。
【0024】
操作盤46には、乗客コンベア1を起動させるための不図示の起動スイッチが設けられている。この起動スイッチの操作によって運転指令信号が制御部16に出力される。制御部16は、運転指令信号を受けると、駆動装置6のモータを制御することで、乗客コンベア1の運転及び停止を切り替えたり、踏段30が下階側の乗降口18から上階側の乗降口17へ移動する上昇運転と、踏段30が上階側の乗降口17から下階側の乗降口18へ移動する下降運転とを切り替えたりする。
【0025】
なお、以下の説明では、踏段30が下階側の乗降口18から上階側の乗降口17へ移動し、下階側の乗降口18を乗り口、上階側の乗降口17を降り口とする上昇運転を行う場合について説明する。
【0026】
(2)欄干12
欄干12は、踏段30の両側に立設された欄干パネル13と、欄干パネル13の周縁に設けられた手摺りレール14と、手摺りレール14に保持され欄干12の上面を構成する手摺りベルト15とを備える。
【0027】
欄干パネル13は、例えば、ガラスやステンレスなどのパネルからなり、複数枚のパネルを踏段30の移動方向に沿ってつなぎ合わせることで構成されている。欄干パネル13の周縁には手摺りレール14が固定されている。手摺りレール14は手摺りベルト15を欄干パネル13の周縁に沿って摺動可能に保持する。
【0028】
欄干12の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード21が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード22が設けられている。上階側及び下階側の正面スカートガード21,22には、手摺りベルト15の出入口であるインレット部23,24がそれぞれ突出している。左右一対の欄干12の側面下部には、スカートガード25がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード25の間を踏段30が走行する。
【0029】
手摺りベルト15は、手摺ベルトスプロケットが駆動スプロケット7と共に回転することにより踏段30と同期して欄干パネル13の周縁を移動する。
【0030】
このような欄干12は、図1に示すように、下階側から上階側に向かって順番に、下階側反転部12a、下階側欄干勾配部12b、下階側湾曲部12c、中間傾斜部12d、上階側湾曲部12e、上階側水平部12f及び上階側反転部12gから構成されている。
【0031】
下階側反転部12aは、下階側の乗降板20の左右側方に配置され、欄干12の下階側端部をなす部分である。下階側反転部12aは、半円形の欄干パネル13の周縁に沿って手摺りベルト15を上下反転させる。
【0032】
上階側反転部12gは、上階側の乗降板19の左右側方に配置され、欄干12の上階側端部をなす部分である。上階側反転部12gは、半円形の欄干パネル13の周縁に沿って手摺りベルト15を上下反転させる。
【0033】
下階側欄干勾配部12bは、下階側のコム45よりも乗客進入方向後方の位置から、コム45よりも乗客進入方向前方の位置までの範囲に設けられている。具体的には、下階側欄干勾配部12bは、下階側のインレット部24が設けられた位置から踏段30が上昇を開始する位置までの、欄干12の下階側端部に設けられている。
【0034】
図2に示すように、下階側欄干勾配部12bでは、手摺りベルト15が斜め下方へ移動し、欄干12の上面が踏段30の進行方向に従って漸次低くなるように傾斜している。下階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15の上面は、水平方向に対する傾斜角度θ1が1°以上3°以下であることが好ましい。傾斜角度θ1を1°以上とすることで、下階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15を把持した乗客の重心Gを、乗客進入方向前方へ移動させることができ、下階側の乗降板20から踏段30へ乗り移る際に乗客がバランスを崩して転倒することを防止する事ができる。また、傾斜角度θ1を3°以下とすることで、下階側の乗降板20から踏段30へ乗り移る際に、下階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15を把持しても、乗客の身体重心Gが乗客進入方向前方へ過剰に移動することがなく、乗客が前のめりになって転倒することを防止できる。
【0035】
上階側水平部12fは、踏段30が上階側において水平方向に移動する範囲に設けられた部分である。上階側水平部12fでは、手摺りベルト15が水平方向へ移動し、欄干12の上面が水平面をなしている。
【0036】
中間傾斜部12dは、所定の傾斜角度で踏段30が直線移動する範囲に設けられた部分であって、手摺りベルト15が踏段30の移動方向と平行となるように所定の傾斜角度で直線移動する。
【0037】
下階側湾曲部12cは、下階側において踏段30が曲線状に移動する範囲に設けられ、下階側欄干勾配部12bと中間傾斜部12dとの間をなだらかに繋ぐ部分である。手摺りベルト15は、下階側欄干勾配部12bから中間傾斜部12dへ移動する際に、下階側湾曲部12cにおいて移動方向が斜め下方から斜め上方へ漸次変化する。
上階側湾曲部12eは、上階側において踏段30が曲線状に移動する範囲に設けられ、中間傾斜部12dと上階側水平部12fとの間をなだらかに繋ぐ部分である。手摺りベルト15は、中間傾斜部12dから上階側水平部12fへ移動する際に、上階側湾曲部12eにおいて移動方向が斜め上方に向かう方向から水平方向へと漸次変化する。
【0038】
(3)効果
本実施形態では、欄干12の乗り口18側端部に、踏段30の進行方向に従って欄干12の上面が漸次低くなるように傾斜する下階側欄干勾配部12bが設けられている。そのため、図2に示すように、乗客が下階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15を把持すると、身体重心Gが乗客進入方向前方へ自然に移動し、下階側の乗降板20から踏段30へ乗り移る際に乗客がバランスを崩して転倒することを防止する事ができる。特に、図2の実線に示すような背中が曲がった高齢の乗客100の場合には、身体重心Gが後方にあるため、移動する踏段30に乗ると、さらに後方へ身体重心Gが移動して姿勢が不安定となるが、図2の二点鎖線に示すように階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15を乗客100が把持することにより身体重心Gが前方に移動し、後方へ転倒しにくくなる。
【0039】
本実施形態では、下階側欄干勾配部12bが、下階側のコム45よりも乗客進入方向後方の位置から、コム45よりも乗客進入方向前方の位置までの範囲に設けられているため、乗客は、下階側の乗降板20から踏段30へ乗り移る前から乗り移った後まで、下階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15を把持することができ、乗客進入方向前方へ重心Gを移動した姿勢を維持しながら踏段30に乗り込むことができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0041】
(変更例1)
図3に示すように、乗り口18の乗降板20に乗降板勾配部50を設けてもよい。この乗降板勾配部50は、乗客進入方向に沿ってコム45に近づくほど低くなるように傾斜する。
【0042】
乗降板勾配部50は、水平方向に対する傾斜角度θ2が1°以上3°以下であることが好ましい。乗降板勾配部50の傾斜角度θ2を1°以上とすることで、乗客が乗降板勾配部50に乗ると、踏段30へ乗り移る直前に乗客の身体重心Gを乗客進入方向前方へ移動させることができ、降り口に向かって低くなるように傾斜する手摺りベルト15を把持しやすくなる。そのため、下階側の乗降板20から踏段30へ乗り移る際に、手摺りベルト15を把持しやすくなり、乗客がバランスを崩して転倒することを防止する事ができる。傾斜角度θ2を3°以下とするとことで、踏段30へ乗り移る直前に乗客の身体重心Gが乗客進入方向前方へ過剰に移動することがなく、乗客が前のめりになって転倒することを防止できる。特に、図3の実線に示すような背中が曲がった高齢の乗客100の場合には、身体重心が後方にあるため、移動する踏段30に乗ると、身体重心Gがさらに後方へ移動して姿勢が不安定となるが、図3の二点鎖線に示すように、乗降板20の勾配で身体重心Gを前方に移動させ、階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15を把持することにより身体重心Gをさらに前方に移動させることにより、乗客100は転倒しにくくなる。
【0043】
乗降板勾配部50の傾斜角度θ2は、下階側欄干勾配部12bにおける欄干12の上面の傾斜角度θ1と等しいことが好ましい。乗降板勾配部50の傾斜角度θ2を、欄干12の上面の傾斜角度θ1と等しくすることで、違和感なく乗降板勾配部50から踏段30へ乗り移ることができる。
【0044】
また、乗降板勾配部50は、欄干12よりも乗客進入方向後方の位置からコム45までの範囲に亘って設けられていることが好ましい。乗降板勾配部50が、欄干12よりも乗客進入方向後方の位置に設けられていると、乗客が下階側欄干勾配部12bを移動する手摺りベルト15を把持する前に、乗客の身体重心Gを乗客進入方向前方へ移動させることができ、乗降板勾配部50から踏段30へスムーズに乗り移ることができる。
【0045】
また、乗降板勾配部50の乗客進入方向に沿った長さL、つまり、乗降板勾配部50の乗客進入方向後端からコム45の先端までの長さLは、人間の2歩以上の歩幅に相当する値とすることが好ましい。従って、長さLは、人間の歩幅を0.6mと想定すると、1.2m以上とすることが好ましい。このように長さLを設けることで、乗客が踏段30に乗り移る前に乗降板勾配部50を踏み損ねることがなく、乗客の身体重心Gを乗客進入方向前方へ移動することができる。
【0046】
(変更例2)
上記した実施形態では、欄干12の下階側に、欄干12の上面が傾斜する下階側欄干勾配部12bを設けたが、欄干12の上階側水平部12fについても、欄干12の上面を踏段30の進行方向に従って漸次低くなるように傾斜させてもよい。
【0047】
本変更例では、踏段30が上階側の乗降口17から下階側の乗降口18へ移動する下降運転時に、上階側の乗降板19から踏段30へ乗り移る乗客の身体重心Gを乗客進入方向前方へ自然に移動させることができるので、上階側の乗降板19から踏段30へ乗り移る際に乗客がバランスを崩して後方に転倒するのを防止する事ができる。
【符号の説明】
【0048】
1…乗客コンベア、2…トラス、12…欄干、12a…下階側反転部、12b…下階側欄干勾配部、12c…下階側湾曲部、12d…中間傾斜部、12e…上階側湾曲部、12f…上階側水平部、12g…上階側反転部、13…欄干パネル、14…手摺りレール、15…手摺りベルト、16…制御部、17…乗降口、18…乗降口、30…踏段(ステップ)、44…コム、45…コム、50…乗降板勾配部
図1
図2
図3