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特開2024-117170アキュームレータおよびベローズポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117170
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】アキュームレータおよびベローズポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/10 20060101AFI20240822BHJP
   F04B 11/00 20060101ALI20240822BHJP
   F04B 43/08 20060101ALI20240822BHJP
   F16K 1/32 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F04B53/10 Z
F04B11/00 Z
F04B43/08 A
F16K1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023106
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】乙野 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】西村 瞭我
【テーマコード(参考)】
3H052
3H071
3H075
3H077
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA01
3H052BA22
3H052CA02
3H052CA24
3H052CB03
3H052CD03
3H052EA02
3H071AA01
3H071BB01
3H071CC25
3H071CC26
3H071DD16
3H075AA09
3H075BB04
3H075BB14
3H075CC03
3H075CC16
3H075CC18
3H075DA05
3H075DA16
3H075DB10
3H075DB44
3H077AA08
3H077CC03
3H077CC07
3H077DD09
3H077EE04
3H077EE21
3H077EE23
3H077FF06
3H077FF23
3H077FF45
(57)【要約】
【課題】調圧バルブのシャフトの傾きを効果的に防止可能なアキュームレータを与える。
【解決手段】ベローズはシリンダの空洞を蓄圧室とエア室とに仕切る。蓄圧室は、ベローズの開口端を塞ぐヘッドを通してシリンダの外部に連通し、エア室は、シリンダの閉塞端に固定されている調圧バルブのシャフトホルダを通してシリンダの外部に連通している。弁体はシャフトホルダの流路を開閉可能である。シャフトは弁体からベローズの閉塞端へ向かって伸び、ベローズに押されると弁体に流路を開かせる。シャフトホルダの内周面には軸方向の溝があり、弁体の外周面からは突起が突出して溝まで伸びている。環状の溝側牽引部はシャフトのまわりで対称的であり、溝に対して固定されている。突起側牽引部は突起に固定されて溝側牽引部に対して引力を及ぼし、シャフトが弁体に流路を閉じさせている状態で傾いていなければ、溝側牽引部とシャフトのまわりで対称的に接触する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉じているシリンダと、
一端が閉じており、前記シリンダの空洞を内側の部屋と外側の部屋とに仕切った状態で前記シリンダの軸方向に伸縮可能であるベローズと、
前記シリンダの開口端と前記ベローズの開口端とを塞いでおり、前記ベローズの内側の部屋を前記シリンダの外部に連通させるための流路を含むヘッドと、
前記シリンダの閉塞端と前記ベローズの閉塞端との間に配置されている調圧バルブと
を備えているアキュームレータであって、
前記調圧バルブが、
一端が前記シリンダの閉塞端に固定されている筒状部材であり、前記ベローズの外側の部屋を前記シリンダの外部に連通させるための流路を含むシャフトホルダと、
前記シャフトホルダの流路を開く開位置と閉じる閉位置とへ移動可能である弁体と、
前記弁体から前記ベローズの閉塞端へ向かって伸びており、伸長した前記ベローズに押されると、前記弁体を前記開位置へ移動させるシャフトと、
前記シャフトホルダの内周面、または、前記弁体もしくは前記シャフトの外周面を前記シャフトホルダの軸方向に伸びている溝と、
前記弁体もしくは前記シャフトの外周面、または、前記シャフトホルダの内周面から前記シャフトホルダの径方向へ突出し、前記溝の中まで伸びている突起と、
前記シャフトのまわりで対称的な環状部材、または前記シャフトのまわりで対称的な配置の部材群であり、前記溝に対して固定されている溝側牽引部と、
前記シャフトが前記弁体を前記閉位置に静止させている状態で前記シャフトホルダの軸方向から傾いていなければ前記溝側牽引部と前記シャフトのまわりで対称的に接触し、または最接近するように前記突起に固定されており、前記溝側牽引部に対して引力を及ぼす突起側牽引部と
を含む
ことを特徴とするアキュームレータ。
【請求項2】
前記溝側牽引部と前記突起側牽引部とは、
前記シャフトのまわりで対称的な環状磁石、または前記シャフトのまわりで対称的な配置の磁石群であり、
前記シャフトが前記弁体を前記閉位置に静止させている状態で前記シャフトホルダの軸方向から傾いていなければ異なる磁極を互いに接触させ、または最接近させる、
請求項1に記載のアキュームレータ。
【請求項3】
前記溝側牽引部と前記突起側牽引部とは、前記シャフトのまわりで対称的な形状または配置のばねの両端を支持する部材であり、
前記ばねは、前記シャフトが前記弁体を前記閉位置に静止させている状態で前記シャフトホルダの軸方向から傾いていなければ復元力が最も弱いように構成されている、
請求項1に記載のアキュームレータ。
【請求項4】
一端が閉じている主シリンダと、
一端が閉じており、前記主シリンダの空洞を内側のポンプ室と外側の部屋とに仕切った状態で前記主シリンダの軸方向において伸縮可能である主ベローズと、
請求項1に記載のアキュームレータと、
前記主シリンダの開口端と前記主ベローズの開口端とを塞いでおり、前記ポンプ室と前記アキュームレータのヘッドの流路とを前記主シリンダの外部に連通させるための流路を含むポンプヘッドと
を備えているベローズポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアキュームレータに関し、特にベローズポンプに内蔵され、または外付けされるものに関する。
【背景技術】
【0002】
「ベローズポンプ」とは、流体の吸入と吐出とにベローズを利用するポンプをいう(たとえば、特許文献1参照)。「ベローズ」は、樹脂等の可撓性材料から成る筒状部材であり、周壁部に蛇腹を含む。この蛇腹により、ベローズは軸方向に伸縮可能である。ベローズポンプは、空気圧またはモータの力でベローズを強制的に伸縮させることにより、ベローズの空洞、すなわちポンプ室に輸送対象の流体を吸入し、その流体をポンプ室から吐出する。輸送対象の流体には、たとえば、半導体、液晶等の製造プロセスにおいて使用される様々な薬液または超純水が含まれる。
【0003】
ベローズが伸長する間はポンプ室から吐出される流れが止まる。これにより、ベローズポンプからの吐出流は一般に「脈動」と呼ばれる間欠的な変動を示す。吐出流の脈動は、流量、流圧が定常的でないという理由等で、流体の輸送先に様々な悪影響を及ぼす。たとえば半導体プロセスにおけるベローズポンプの利用では、薬液等がダイに塗布される際、脈動が液面を波立たせることにより、塗膜の厚さを過剰に不均一にさせかねない。また、流れの中に瞬間的に高濃度の箇所が生じて不純物等の溶質が凝集し、微粒子(パーティクル)を形成しかねない。パーティクルには、配管または流体機器を詰まらせ、更には、半導体製品を汚染して不良品を生じさせる危険性がある。これらの悪影響を回避する目的でベローズポンプには、脈動を抑制する手段が必要である。
【0004】
従来の脈動抑制手段としては、アキュームレータをベローズポンプに内蔵させ、または外付けすることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。「アキュームレータ」とは、所定の圧力の流体を蓄積しておいてその圧力を必要に応じて外部に供給する装置をいい、「蓄圧器」とも呼ばれる。特にベローズポンプに対して脈動抑制手段として利用されるアキュームレータは典型的には次のような装置である。シリンダの空洞がベローズで2つの部屋に分けられている。ベローズの内側の部屋はベローズポンプの吐出流路に連通しているので、ベローズは伸長すると吐出流路から流体を吸入し、短縮すると吐出流路へ流体を吐出する。ベローズの外側の部屋(以下、「エア室」という。)には、ベローズポンプの輸送対象とは別の流体、典型的には空気または窒素ガスが閉じ込められており、その流体の圧力がベローズポンプの吐出圧の目標値に維持されている。ベローズポンプの吐出行程では、吐出圧が目標値を超えかけるとアキュームレータのベローズが内外の圧力差で伸長し、吐出流の一部を吸入して蓄積するので、吐出圧が目標値に留まる。一方、ベローズポンプの吸入行程では、吐出圧が目標値を下回りかけるとアキュームレータのベローズが内外の圧力差で短縮し、蓄積していた流体を吐出するので、吐出圧が目標値に留まる。こうして、ベローズポンプの吐出と吸入との全行程にわたって吐出圧が目標値に保たれ、すなわち吐出流の脈動が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-317449号公報
【特許文献2】特開平10-169558号公報
【特許文献3】特開2016-065631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベローズポンプに内蔵され、または外付けされるアキュームレータは、エア室内の流体の圧力をベローズポンプの吐出圧の目標値に維持しなければならない。この維持に必要な操作(以下、「調圧」という。)には、たとえば、次のようなバルブ(以下、「調圧バルブ」という。)が利用される(たとえば、特許文献1参照)。筒状のシャフトホルダが、エア室を外部に連通させるための流路を含む。その流路には外部からエア室内の流体と同じ流体(すなわち、空気または窒素ガス)が、吐出圧の目標値よりも高い圧力で供給される。その流路には弁体が設置されており、流路を開く位置、すなわち開位置と、流路を閉じる位置、すなわち閉位置との間で移動可能である。弁体からはベローズへ向かってシャフト(または、「ステム」とも呼ばれる。)がシャフトホルダの軸方向に伸びている。エア室内の流体の圧力が吐出圧の目標値に等しい間はベローズが伸長してもシャフトまでは届かないので、弁体が閉位置に静止し続ける。しかし、エア室内の流体の圧力が吐出圧の目標値を下回るとベローズがシャフトまで届いてそれを押すので、弁体が閉位置から開位置へ移動する。これにより、シャフトホルダの流路が開き、外部からエア室へ流体が流れ込む。その結果、エア室内の流体の圧力が吐出圧の目標値まで上昇する。
【0007】
調圧バルブを高精度に動作させるには、シャフトとシャフトホルダとの間の過剰な摩擦を抑えてシャフトを滑らかに往復動させる必要がある。それには、シャフトとシャフトホルダとの間のクリアランス(隙間)が十分に広く確保されねばならない。しかし、クリアランスが過大であると、外部からの振動、衝撃、または摩擦のバランスの崩れでシャフトがシャフトホルダの軸方向から傾く危険性が高い。その傾きが過大であると、シャフトの往復動が不正確になるので、調圧の高精度化が妨げられる。さらに、閉位置の弁体とシャフトホルダとの隙間を塞ぐOリング等のシール部材に対して弁体から加わる圧力に周方向における過大な偏りが生じかねない。その結果、エア室内の流体の圧力が吐出圧の目標値に等しくても外部からエア室へ流体が流れ込み、エア室内の流体の圧力に吐出圧の目標値を超えさせる危険性がある。
【0008】
往復動するシャフトまたはピストン等を利用するバルブ等の流体機器においてシャフト等の傾きを防ぐ従来の手段としては、たとえば、次の2つが知られている。第1に、特許文献2に開示されている圧縮機では、シリンダボア(31)の中をその軸方向においてピストン(32)が往復動する際、シリンダボア(31)の内周面に設けられているガイド凹部(61)に沿って、ピストン(32)の本体(35)に設けられているガイド凸部(62)が摺動する(特許文献2の明細書段落[0030]参照)。ガイド凹部(61)にガイド凸部(62)が嵌まり続けることにより、シリンダボア(31)の軸方向からのピストン(32)の本体(35)の傾きが阻まれる。第2に、特許文献3に開示されている弁では、円筒状の弁体(13)が円筒状のガイド(14)の内側を軸方向に往復動する。その往復動に伴い、弁体(13)の外周面に設けられている非強磁性金属製の円筒(21)が、ガイド(14)の内周面に設けられている円筒状の磁石(22)の磁場を通過すると、円筒(21)に電流が誘導される。このときに弁体(13)がガイド(14)の径方向にも動いていると、誘導電流と磁石(22)の磁場との相互作用により、径方向の動きとは逆方向の電磁力が弁体(13)に加わる。その結果、弁体(13)の揺れ(径方向の振動)が抑制される(特許文献3の明細書段落[0030]-[0031]参照)。
【0009】
しかし、いずれの手段もベローズポンプ用アキュームレータの調圧バルブでの利用には次の点で不十分である。第1の手段では、ピストン(32)を滑らかに往復動させる目的でガイド凹部(61)とガイド凸部(62)との間に十分なクリアランスが確保されねばならず、ピストン(32)が傾く危険性を完全には抑えられない。また、ピストン(32)が一旦傾くと、その傾きが自動的には元へ戻らない。第2の手段では、まず、弁体(13)が往復動していないと円筒(21)に電流が誘導されない。さらに、円筒(21)が磁石(22)の磁場を通過する間に弁体(13)が径方向に揺れないと、逆方向の電磁力が作用しない。したがって、弁体(13)が一旦、ガイド(14)の軸方向から傾いた状態で静止すると電磁力を受けようがないので、弁体(13)の傾きが自動的には元へ戻らない。
【0010】
本発明の目的は上記の課題を解決することであり、特に、調圧バルブのシャフトの傾きを更に効果的に防ぐことのできるアキュームレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの観点によるアキュームレータは、シリンダ、ベローズ、ヘッド、および調圧バルブを備えている。シリンダは一端が閉じている。ベローズは一端が閉じており、シリンダの空洞を内側の部屋と外側の部屋とに仕切った状態でシリンダの軸方向に伸縮可能である。ヘッドはシリンダの開口端とベローズの開口端とを塞いでおり、ベローズの内側の部屋をシリンダの外部に連通させるための流路を含む。調圧バルブはシリンダの閉塞端とベローズの閉塞端との間に配置されており、シャフトホルダ、弁体、シャフト、溝、突起、溝側牽引部、および、突起側牽引部を含む。シャフトホルダは、一端がシリンダの閉塞端に固定されている筒状部材であり、ベローズの外側の部屋をシリンダの外部に連通させるための流路を含む。弁体は、シャフトホルダの流路を開く開位置と、閉じる閉位置とへ移動可能である。シャフトは弁体からベローズの閉塞端へ向かって伸びており、伸長したベローズに押されると、弁体を開位置へ移動させる。溝はシャフトホルダの内周面、または、弁体もしくはシャフトの外周面をシャフトホルダの軸方向に伸びている。突起は弁体もしくはシャフトの外周面、または、シャフトホルダの内周面からシャフトホルダの径方向へ突出し、溝の中まで伸びている。溝側牽引部は、シャフトのまわりで対称的な環状部材、またはシャフトのまわりで対称的な配置の部材群であり、溝に対して固定されている。突起側牽引部は、シャフトが弁体を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダの軸方向から傾いていなければ溝側牽引部とシャフトのまわりで対称的に接触し、または最接近するように突起に固定されており、溝側牽引部に対して引力を及ぼす。
【0012】
溝側牽引部と突起側牽引部とが、シャフトのまわりで対称的な環状磁石、またはシャフトのまわりで対称的な配置の磁石群であってもよい。この場合、溝側牽引部と突起側牽引部とは、シャフトが弁体を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダの軸方向から傾いていなければ異なる磁極を互いに接触させ、または最接近させる。
【0013】
溝側牽引部と突起側牽引部とが、シャフトのまわりで対称的な形状または配置のばねの両端を支持する部材であってもよい。この場合、ばねは、シャフトが弁体を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダの軸方向から傾いていなければ復元力が最も弱いように構成されている。
【0014】
本発明の1つの観点によるベローズポンプは、主シリンダ、主ベローズ、本発明による上記のアキュームレータ、およびポンプヘッドを備えている。主シリンダは一端が閉じている。主ベローズは一端が閉じており、主シリンダの空洞を内側のポンプ室と外側の部屋とに仕切った状態で主シリンダの軸方向に伸縮可能である。ポンプヘッドは主シリンダの開口端と主ベローズの開口端とを塞いでおり、ポンプ室とアキュームレータのヘッドの流路とを主シリンダの外部に連通させるための流路を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明による上記のアキュームレータでは、調圧バルブがシャフトホルダの内周面と弁体もしくはシャフトの外周面との一方に軸方向の溝を含み、他方に径方向の突起を含む。溝の中まで突起が伸びているので、シャフトがシャフトホルダの軸方向から傾きかけると溝に突起が接触してシャフトの傾きを阻止する。この調圧バルブでは更に、シャフトが弁体を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダの軸方向から傾いていなければ、突起側牽引部が溝側牽引部とシャフトのまわりで対称的に接触し、または最接近する。突起側牽引部は溝側牽引部に対して引力を及ぼすので、シャフトが弁体を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダの軸方向から傾きかけても、突起側牽引部の引力によって元の姿勢に自動的に戻される。こうして、本発明による上記のアキュームレータは調圧バルブのシャフトの傾きを更に効果的に防ぐことができる。
【0016】
溝側牽引部と突起側牽引部とが上記の磁石である場合、突起側牽引部の引力は、突起側牽引部が溝側牽引部とシャフトのまわりで対称的に接触し、または最接近している状態において最も強い。したがって、シャフトは、弁体を閉位置に静止させている状態において最も傾きにくい。さらに、突起側牽引部の引力がシャフトホルダの軸方向であれば、閉位置の弁体とシャフトホルダとの間のシールにも寄与する。これらの結果、閉位置の弁体とシャフトホルダとの間のシール性が高い。
【0017】
溝側牽引部と突起側牽引部とが、上記のばねの両端を支持する部材である場合、突起側牽引部のうち、シャフトホルダの軸方向における溝側牽引部との間隔が広い部分ほど、溝側牽引部に対する引力、すなわちばねの復元力が強い。したがって、シャフトが傾くと、その傾きを元へ戻す方向のトルクをばねがシャフトに対して加えるので、その傾きを自動的に元へ戻す効果が更に高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1によるベローズポンプのうち、アキュームレータを内蔵する部分の外観を模式的に示す斜視図である。
図2図1が示す直線II-IIに沿った、吐出行程を終えた直後のベローズポンプの縦断面図である。
図3図1が示す直線II-IIに沿った、吸入行程を終えた直後のベローズポンプの縦断面図である。
図4図3が示す調圧バルブの縦断面の拡大図である。
図5】(a)は、図4が示す調圧バルブに含まれる昇圧バルブの主要部の縦断面図である。(b)、(c)はそれぞれ、(a)が示すシャフトホルダの縦断面図と背面図である。(d)、(e)はそれぞれ、(a)が示す弁体とシャフトとの正面図と縦断面図である。
図6】(a)は本発明の実施形態1の第1変形例による昇圧バルブの主要部の縦断面図である。(b)、(c)はそれぞれ、(a)が示すシャフトホルダの縦断面図と背面図である。(d)、(e)はそれぞれ、(a)が示す弁体とシャフトとの正面図と縦断面図である。
図7】本発明の実施形態1の第2変形例による昇圧バルブの主要部の縦断面図である。
図8】(a)は本発明の実施形態2によるアキュームレータの縦断面図である。(b)は、(a)が示す直線b-bに沿った縦断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
《実施形態1》
本発明の実施形態1によるベローズポンプは、たとえば、半導体製造プロセスにおいて使用される様々な薬液または超純水(以下、「薬液等」と略す。)を輸送対象とするものであり、特に脈動抑制手段としてアキュームレータを内蔵する。
[ベローズポンプの構造]
【0020】
図1は、本発明の実施形態1によるベローズポンプ100のうち、アキュームレータ200を内蔵する部分の外観を模式的に示す斜視図である。図2は、図1が示す直線II-IIに沿ったベローズポンプ100の縦断面、すなわち中心軸を含む断面の図である。ベローズポンプ100は、主シリンダ110、主ベローズ120、およびポンプヘッド130を備え、更にアキュームレータ200を内蔵している。アキュームレータ200は、副シリンダ210、副ベローズ220、および調圧バルブ300を備えている。
【0021】
主シリンダ110と副シリンダ210とは、好ましくは内径が等しい円筒状であり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂から成る。主シリンダ110と副シリンダ210とはいずれも、一端111、211が閉じており、他端112、212が開いている。主シリンダ110の開口端112と副シリンダ210の開口端212とは同軸に向かい合っており、間にポンプヘッド130を同軸に挟んでいる。
【0022】
ポンプヘッド130は、好ましくは直径が主シリンダ110および副シリンダ210の内径よりも広い円盤状の部材であり、PTFEまたはPFA等のフッ素樹脂から成る。ポンプヘッド130は、片側(図1図2では左側)の円盤面では主シリンダ110の開口端112を塞ぎ、反対側(図1図2では右側)の円盤面では副シリンダ210の開口端212を塞いでいる。ポンプヘッド130は、内部には吸入流路131と吐出流路132とを含み、外周面の片側(図2では下側)には吸入流路131の入口、すなわち吸入口134を含み、外周面の反対側(図2では上側)には吐出流路132の出口、すなわち吐出口135を含む。吸入流路131は吸入口134を通し、吐出流路132は吐出口135を通し、それぞれ主シリンダ110の空洞を主シリンダ110の外部に連通させている。吸入口134は薬液等の供給源(図示せず。)に接続され、吐出口135は薬液等の輸送先(図示せず。)に接続される。吸入流路131の出口には吸入用逆止弁136が取り付けられ、吐出流路132の入口には吐出用逆止弁137が取り付けられている。吸入用逆止弁136は吸入口134から主シリンダ110の空洞へ向かう流れだけを通し、反対方向の流れを阻止する。吐出用逆止弁137は主シリンダ110の空洞から吐出口135へ向かう流れだけを通し、反対方向の流れを阻止する。ポンプヘッド130は更に、吐出流路132に副シリンダ210の空洞を連通させている枝路133も含む。
【0023】
主ベローズ120と副ベローズ220とは、外径が主シリンダ110および副シリンダ210の内径よりも狭い円筒状であり、好ましくはPTFEまたはPFA等のフッ素樹脂から成り、一端121、221が閉じており、他端122、222が開いている。主ベローズ120は主シリンダ110の空洞に同軸に配置されており、開口端121がポンプヘッド130によって塞がれている。これにより、主ベローズ120は主シリンダ110の空洞を内側の部屋123(以下、「ポンプ室」と呼ぶ。)と外側の部屋113(以下、「主エア室」と呼ぶ。)とに仕切った状態で、軸方向(図2では左右方向)に伸縮可能である。副ベローズ220は副シリンダ210の空洞に同軸に配置され、開口端221がポンプヘッド130によって塞がれている。これにより、副ベローズ220は副シリンダ210の空洞を内側の部屋223(以下、「蓄圧室」と呼ぶ。)と外側の部屋213(以下、「副エア室」と呼ぶ。)とに仕切った状態で、軸方向(図2では左右方向)に伸縮可能である。
【0024】
図2が示すように、主シリンダ110の閉塞端111には第1吸排気口114と駆動室115とが設けられている。第1吸排気口114は、ベローズポンプ100の外部に設置されているエアコンプレッサ(図示せず。)から主エア室113へ圧縮空気または高圧の窒素ガス(以下、「圧縮空気等」という。)を導入することも、主エア室113から圧縮空気等を排出することも可能である。駆動室115は有底円筒状であり、主シリンダ110の閉塞端111の外側に主シリンダ110と同軸に設けられている。駆動室115の内部には円盤状のピストン116が同軸に収められ、駆動室115の内部を2つに仕切った状態で軸方向に往復動可能である。ピストン116の中心からは駆動軸117が突出し、その先端が主ベローズ120の閉塞端121に固定されている。これにより、ピストン116が軸方向(図2では左右方向)に往復動すると、主ベローズ120が強制的に伸縮させられる。駆動室115の側面には第2吸排気口と切換スイッチとが設けられている(図示せず)。第2吸排気口は、ベローズポンプ100の外部に設置されているエアコンプレッサ(図示せず。)から主シリンダ110の閉塞端111とピストン116との隙間118(以下、「ピストン室」と呼ぶ。)へ圧縮空気等を導入することも、ピストン室118から圧縮空気等を排出することも可能である。ピストン室118内の圧縮空気等の圧力がピストン116を往復動させる。切換スイッチは1対の近接センサとプローブ119とを含む。プローブ119は、ピストン116から外周方向(図2では上方)へ突出している棒状部材であり、ピストン116の往復動に伴ってピストン116の軸方向(図2では左右方向)に変位する。1対の近接センサは、一方がプローブ119の変位範囲の一端に位置し、他方が他端に位置し、それぞれがプローブ119と接触する度に所定の検出信号を出力する。検出信号は、ベローズポンプ100の外部に設置されている切換バルブ(図示せず。)に入力される。切換バルブは電磁弁であり、検出信号の入力に応じて第1吸排気口114と第2吸排気口とを交互にエアコンプレッサに接続し、エアコンプレッサに接続しない吸排気口を外気に開放する。
【0025】
図2が示すように、副シリンダ210の閉塞端211には第3吸排気口214と調圧バルブ300とが設けられている。第3吸排気口214は、ベローズポンプ100の外部に設置されているエアコンプレッサ(図示せず。)から副エア室213へ圧縮空気等を導入することも、副エア室213から圧縮空気等を排出することも可能である。副エア室213の中に導入される圧縮空気等の圧力は、ベローズポンプ100の外部に設置されているレギュレータにより、ベローズポンプ100の吐出圧(すなわち、吐出口135から流出する薬液等の圧力)の目標値に等しく調節されている。調圧バルブ300(「マスターバルブ」とも言う。)は副シリンダ210の閉塞端211と副ベローズ220の閉塞端221との間に配置されている。調圧バルブ300は1対のバルブ320、330を含み、これらが備えている1対の支持ばね321、331により、副シリンダ210の軸方向(図2では左右方向)に伸縮可能である。調圧バルブ300の詳細については後述する。
[ベローズポンプの動作]
【0026】
以下に説明されるように、近接センサからの検出信号に応じて切換バルブがエアコンプレッサの接続先を第1吸排気口114と第2吸排気口との間で切り換えることにより、主ベローズ120の伸縮が切り替わる。これにより、ベローズポンプ100の吸入行程と吐出行程とが切り替わる。さらに、この切り替わりに伴う吐出流路132内の薬液等の圧力変動が副ベローズ220を自動的に伸縮させる。これにより、ベローズポンプ100の吐出流の脈動が抑制される。
【0027】
図2が示すベローズポンプ100は、吐出行程を終えた直後の状態である。すなわち、主ベローズ120が最も短縮し、その閉塞端121がポンプヘッド130に最接近している(図2では最も右側に位置する)。以下、このときの閉塞端121の位置を「上死点」と呼ぶ。閉塞端121が上死点に到達すると、プローブ118が近接センサの一方に接触するので、その近接センサが検出信号を出力する。この検出信号に応じて切換バルブが第1吸排気口114を外気に開放し、第2吸排気口をエアコンプレッサに接続する。これにより、主エア室113から圧縮空気等が逃げ出す一方、ピストン室118へ圧縮空気等が導入される。したがって、ピストン116が主ベローズ120を伸長させる。この伸長に伴い、ポンプ室123へ薬液等が吸入口134から吸入流路131、吸入用逆止弁136を順に通って吸い込まれる。こうして、ベローズポンプ100の吸入行程が開始される。
【0028】
吸入行程の開始時、吐出流路132では吐出用逆止弁137からの薬液等の流出が止まるので、薬液等の圧力が吐出圧の目標値から下降しかける。しかし、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値に維持されているので、副エア室213と蓄圧室223との間での圧力差によって蓄圧室223内の薬液等が枝路133を通して吐出流路132へ引き出される。こうして、吐出口135へは、ポンプ室123に代わって蓄圧室223から薬液等が流出し続けるので、吐出圧が目標値に維持される。
【0029】
図3は、吸入行程を終えた直後のベローズポンプ100の縦断面図である。すなわち、主ベローズ120が最も伸長し、その閉塞端121がポンプヘッド130から最も離れている(図3では最も左側に位置する)。以下、このときの閉塞端121の位置を「下死点」と呼ぶ。閉塞端121が下死点に到達すると、プローブ118が近接センサの他方に接触するので、その近接センサが検出信号を出力する。この検出信号に応じて切換バルブが第1吸排気口114をエアコンプレッサに接続し、第2吸排気口を外気に開放する。これにより、主エア室113へ圧縮空気等が導入される一方、ピストン室118から圧縮空気等が逃げ出す。したがって、主エア室113内の圧縮空気等の圧力とピストン116の押圧力とが主ベローズ120を短縮させる。この短縮に伴い、ポンプ室123内の薬液等が吐出用逆止弁137から吐出流路132へ押し出され、吐出口135から流出する。こうして、ベローズポンプ100の吐出行程が開始される。
【0030】
吐出行程の開始時、吐出流路132では吐出用逆止弁137からの薬液等の流出が始まるので、薬液等の圧力が吐出圧の目標値から上昇しかける。しかし、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値に維持されているので、副エア室213と蓄圧室223との間での圧力差によって副ベローズ220が伸長し、吐出流路132内の薬液等の一部が枝路133を通して蓄圧室223内へ吸い込まれる。こうして、吐出圧が目標値に維持される。
【0031】
以上のとおり、主ベローズ120が吐出行程と吸入行程とを繰り返し、それに伴う吐出流路132の圧力変動により、副ベローズ220が伸縮を繰り返す。これにより、薬液等がポンプ室123と蓄圧室223とから交互に連続して吐出されるだけでなく、吐出圧が吐出と吸入との全行程にわたって目標値に維持される。すなわち、吐出口135から薬液等が連続的に、かつ過大な脈動を伴うことなく吐出される。
[調圧バルブ]
【0032】
吐出流の過大な脈動を抑えるには、副エア室213内の薬液等の圧力が吐出圧の目標値に安定に維持されなければならない。この維持にアクチュエータ200が利用する部材が調圧バルブ300である。
【0033】
図4は調圧バルブ300の縦断面の拡大図である。調圧バルブ300は、ケーシング310、昇圧バルブ320、降圧バルブ330、およびリング340を含む。いずれも好ましくはPTFEまたはPFA等のフッ素樹脂から成る。
-ケーシング-
【0034】
ケーシング310は実質的に円柱状の部材であり、副シリンダ210の閉塞端111に同軸に、かつ気密に嵌め込まれている。ケーシング310は、吸気路311、排気路312、およびフランジ313を含む。吸気路311と排気路312とは、ケーシング310の軸方向に伸びている2本の貫通穴である。吸気路311の入口314(図4では右端)には、外部に設置されているエアコンプレッサ(図示せず。)から吐出圧の目標値よりも高い圧力の圧縮空気等が供給される。吸気路311の出口315(図4では左端)には昇圧バルブ320が取り付けられ、排気路312の入口316(図4では左端)には降圧バルブ330が取り付けられている。排気路312の出口317(図4では右端)は外気に開放されている。フランジ313はケーシング310の軸方向の中央部から径方向へ張り出しており、主シリンダ110の閉塞端111の外面(図4では右側面)に固定されている。
-リング-
【0035】
リング340は円盤状の部材であり、片側の円盤面341に平底穴342と貫通穴343とが開けられている。平底穴342には昇圧バルブ320の支持ばね321の一端(図4では左端)が固定され、貫通穴343には降圧バルブ330の支持ばね331の一端(図4では左端)が固定されている。支持ばね321、331によってリング340は、片側の円盤面341をケーシング310の一端(図4では左端)に対向させている状態で支持されており、支持ばね321、331の伸縮によってケーシング310の一端との間隔が可変である。さらに、支持ばね321、331の復元力によってリング340は副ベローズ220の閉塞端222に押し付けられる(図2図3参照)。これにより、副ベローズ220の伸縮に伴ってリング340はケーシング310との間隔を変化させる。
-昇圧バルブ-
【0036】
昇圧バルブ320は、支持ばね321に加え、シャフトホルダ322、弁体323、およびシャフト324を含む。
【0037】
シャフトホルダ322は実質的に円筒状の部材であり、一端部(図4では右端部)がケーシング310の吸気路311の出口315(図4では左端)に気密に固定され、シャフトホルダ322の空洞を吸気路311に連通させている。シャフトホルダ322の他端部(図4では左端部)には支持ばね321の一端(図4では右端)が固定されている。これにより、シャフトホルダ322とリング340との間隔が可変である。シャフトホルダ322の周壁には少なくとも2本の貫通穴325が開けられ、シャフトホルダ322の空洞を副エア室213に連通させている。すなわち、シャフトホルダ322の空洞と貫通穴325とが、副エア室213を吸気路311に連通させている流路として機能する。シャフトホルダ322の空洞の中間部では内周面からリブ326が張り出し、空洞の内径を狭めている。
【0038】
弁体323は円柱状の部材であり、シャフトホルダ322の空洞に同軸に配置され、軸方向に移動可能である。弁体323の外径はリブ326の内径よりも広いので、弁体323は吸気路311の出口315からリブ326の穴の縁までの間で移動可能であり、その縁の全周に接触するとリブ326の穴を完全に塞ぐ。すなわち、シャフトホルダ322の流路が閉じられる。以下、リブ326の穴を完全に塞ぐときの弁体323の位置を「閉位置」と呼び、その穴の縁から完全に離れているときの弁体323の位置を「開位置」と呼ぶ。好ましくは、弁体323とリブ326の穴の縁との隙間にはOリング327が挟まれており、吸気路311の出口315と弁体323との間には補助ばね328が接続されている。補助ばね328は、弁体323よりも直径の狭いコイルばねであり、その復元力によって弁体323をOリング327越しにリブ326の穴の縁に押し付ける。これにより弁体323とリブ326の穴の縁との隙間がシールされる。
【0039】
シャフト324は、リブ326の内径よりも直径が狭い軸であり、リブ326の内周側を弁体323からリング340の平底穴342へ向かって伸びている。ベローズポンプ100の吐出行程では副ベローズ220が伸長し、その閉塞端221がリング340を押すので、平底穴342の底面がシャフト324の先端に接近する。このとき、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が許容下限よりも高い限り平底穴342の底面がシャフト324の先端には届かないように、シャフト324の長さは設計されている。一方、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が許容下限以下まで降下していると、平底穴342の底面がシャフト324の先端を押し込む。これにより、シャフト324が吸気路311の出口315へ向かって(図4では右方へ)移動し、弁体323を閉位置から開位置へ移動させる。したがって、シャフトホルダ322の流路が開くので、吸気路311の入口314(図4では右端)から副エア室213へ圧縮空気等が供給される。その結果、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値まで上昇する。
【0040】
図5の(a)は昇圧バルブ320の主要部、すなわち、シャフトホルダ322、弁体323、およびシャフト324の縦断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ、シャフトホルダ322の縦断面図と背面図であり、(d)、(e)はそれぞれ、弁体323とシャフト324との正面図と縦断面図である。図5が示すように、シャフトホルダ322の内周面が4本の溝401を含み、弁体323の外周面が4本の突起402を含む。溝401はシャフトホルダ322の周方向に等間隔で設けられ(図5の(c)参照。)、それぞれがシャフトホルダ322の内周面を軸方向(図5の(b)では左右方向)に伸びている。突起402は弁体323の周方向に等間隔で配置され(図5の(d)参照。)、弁体323の外周面から径方向へ突出し(図5の(e)参照。)、先端を溝401の中まで伸ばしている(図5の(a)参照)。たとえば、溝401の内面と突起402の横断面、すなわち長手方向に対して垂直な断面はいずれも矩形である。シャフト324がリング340に押されて弁体323を閉位置から開位置へ移動させる際、突起402の先端が溝401に沿って移動する。シャフト324がシャフトホルダ322の軸方向(図5の(a)では左右方向)から傾くと、いずれかの突起402が溝401の内面に接触する。これにより、シャフト324の過大な傾きが阻止される。
【0041】
さらに、シャフトホルダ322の内周面が溝側牽引部403を含み、弁体323の外周面が突起側牽引部404を含む。溝側牽引部403は円環状の永久磁石であり、外径がシャフトホルダ322の空洞のうちリブ326の外側(図5の(b)では右側)の内径と実質的に等しい。図5の(b)、(c)が示すように、溝側牽引部403は、リブ326の穴の縁に沿ってシャフト324のまわりに対称的に配置された状態で、シャフトホルダ322の内周面に固定されている。これにより、溝側牽引部403の位置は溝401の位置に対して一定である。溝側牽引部403は軸方向の片側(図5の(b)では右側、図5の(c)では見えている円環面)が同じ磁極、たとえばN極である。突起側牽引部404は棒状の永久磁石であり、突起402の少なくとも背面(図5の(d)が示す面)を覆っている。突起側牽引部404は軸方向の片側(図5の(d)では見えている矩形面、図5の(e)では左側)が同じ磁極、たとえばS極である。図5の(a)が示すように、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ322の軸方向から傾いていなければ、突起側牽引部404のすべてが溝側牽引部403とシャフト324のまわりで対称的に接触する。このときに接触する溝側牽引部403の表面と突起側牽引部404の表面とが互いに反対の磁極である。したがって、突起側牽引部404は溝側牽引部403に対してシャフトホルダ322の軸方向(図5の(a)では右方)の引力を及ぼす。この引力は磁力であるので、溝側牽引部403と突起側牽引部404との間隔が狭いほど強い。それ故、シャフト324は、弁体323を閉位置に静止させている状態において最も傾きにくい。しかも、この状態では突起側牽引部404の引力が補助ばね328の復元力を補ってOリング327を潰すので、閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシールにも寄与する。これらの結果、閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシール性が高い。
-降圧バルブ-
【0042】
降圧バルブ330は、ばね331に加え、シャフトホルダ332、弁体333、およびシャフト334を含む。
【0043】
シャフトホルダ332は実質的に円環状の部材であり、全体がケーシング310に埋め込まれており、排気路312の入口316(図4では左端)と同軸に揃えられている。ケーシング310から露出しているシャフトホルダ332の端面(図4では左端面)には、支持ばね331の一端(図4では右端)が固定されている。これにより、シャフトホルダ332とリング340との間隔が可変である。シャフトホルダ332には軸方向の貫通穴335が少なくとも2本開けられており、排気路312の入口316を副エア室213に連通させている。
【0044】
弁体333は円柱状の部材であり、排気路312の入口316とシャフトホルダ332との間に同軸に配置され、軸方向に移動可能である。弁体333の外径は排気路312の入口316の直径よりも広いので、弁体333は排気路312の入口316からシャフトホルダ332までの間で移動可能であり、排気路312の入口316の全周に接触すると入口316を完全に塞ぐ。すなわち、排気路312が閉じられる。以下、排気路312の入口316を完全に塞ぐときの弁体333の位置を「閉位置」と呼び、入口316から完全に離れているときの弁体333の位置を「開位置」と呼ぶ。好ましくは、弁体333と排気路312の入口316との隙間にはOリング336が挟まれ、弁体333とシャフトホルダ332との間には補助ばね337が接続されている。補助ばね337は、弁体333よりも直径の狭いコイルばねであり、その復元力によって弁体333をOリング336越しに排気路312の入口316に押し付ける。これにより、弁体333と入口316との隙間がシールされる。
【0045】
シャフト334は、シャフトホルダ332の内径よりも直径が狭い軸であり、シャフトホルダ332の内周側を弁体333からリング340の貫通穴343へ向かって伸びている。貫通穴343には釣り鐘状の抜け止め344が同軸に固定されており、抜け止め344の中心の穴345がシャフト334を通過させている。穴345の直径はシャフト334の先端部338の外径よりも狭いので、シャフト334は穴345からは抜けない。ベローズポンプ100の吸入行程では副ベローズ220が短縮し、その閉塞端221がリング340を押す力が弱まるので、1対の支持ばね321、331がリング340を押し退け、抜け止め344をシャフトホルダ332から遠ざける。このとき、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が許容上限よりも低い限り抜け止め344がシャフト334を引っ張らないように、シャフト334の長さは設計されている。一方、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が許容上限以上まで上昇していると、抜け止め344がシャフト334を引っ張る。これにより、弁体333が閉位置から開位置へ移動して排気路312の入口316を開くので、副エア室213から圧縮空気等が逃げ出す。その結果、副エア室213内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値まで降下する。
[実施形態1の利点]
【0046】
本発明の実施形態1によるアキュームレータ200はベローズポンプ100に内蔵されており、昇圧バルブ320がシャフトホルダ322の内周面に軸方向の溝401を含み、弁体323の外周面に径方向の突起402を含む。溝401の中まで突起402が伸びているので、シャフト324がシャフトホルダ322の軸方向から傾きかけると、溝401に突起402が接触してシャフト324の傾きを阻止する。昇圧バルブ320では更に、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ322の軸方向から傾いていなければ、突起側牽引部404が溝側牽引部403とシャフト324のまわりで対称的に接触する。突起側牽引部404は溝側牽引部403に対してシャフトホルダ322の軸方向の引力を及ぼすので、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ322の軸方向から傾きかけても、突起側牽引部404の引力によって元の姿勢に自動的に戻される。こうして、アキュームレータ200は昇圧バルブ320のシャフト324の傾きを更に効果的に防ぐことができる。
【0047】
溝側牽引部403と突起側牽引部404とは磁石であるので、突起側牽引部404の引力は、突起側牽引部404が溝側牽引部403とシャフト322のまわりで対称的に接触している状態において最も強い。したがって、シャフト322は、弁体324を閉位置に静止させている状態において最も傾きにくい。それに加え、突起側牽引部404の引力は閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシールにも寄与する。これらの結果として、閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシール性が高い。
[変形例]
【0048】
(1)昇圧バルブ320はシャフトホルダ322の内周面に溝401を含み、シャフト324の外周面に突起402を含む。溝401の内面と突起402の横断面とは、矩形に限らず、三角形または丸形等であってもよい。溝401と突起402との本数も“4”には限らず、他の数であってもよい。さらに、シャフトホルダの内周面に突起が配置され、シャフトの外周面に溝が設けられてもよい。
【0049】
図6の(a)は本発明の実施形態1の第1変形例による昇圧バルブの主要部、すなわちシャフトホルダ422、弁体423、およびシャフト324の縦断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ、シャフトホルダ422の縦断面図と背面図であり、(d)、(e)はそれぞれ、弁体423とシャフト324との正面図と縦断面図である。図6が示す昇圧バルブは、図5が示す昇圧バルブ320とは、シャフトホルダ422の内周面と弁体423の外周面とが異なる。図6では、図5が示す要素と共通の要素には、図5が示す符号と同じ符号が付されている。それら共通の要素の詳細については、図5の説明を援用する。
【0050】
図6が示す昇圧バルブ420では、図5が示す昇圧バルブ320とは異なり、シャフトホルダ422の内周面が4本の突起412を含み、弁体423の外周面が4本の溝411を含む。突起412はシャフトホルダ422の周方向に等間隔に配置され(図6の(c)参照。)、シャフトホルダ422の内周面から径方向へ突出し、内周面を軸方向(図6の(b)では左右方向)に伸びている。溝411は弁体423の周方向に等間隔に設けられ(図6の(d)参照。)、それぞれが弁体423の外周面を軸方向(図6の(e)では左右方向)に伸びている。溝411の全体に突起412が嵌まっている(図6の(a)参照)。リング340に押されてシャフト324が弁体423を閉位置から開位置へ移動させる際、溝411が突起412に沿って移動する。シャフト324がシャフトホルダ422の軸方向(図6の(a)では左右方向)から傾くと、いずれかの溝411の内面が突起412に接触する。これにより、シャフト324の過大な傾きが阻止される。
【0051】
(2)溝側牽引部403は単一の円環状磁石であり、突起側牽引部404は4個の棒状磁石である。その他に、溝側牽引部が、各溝401を個別に塞ぐ複数個の永久磁石であってもよく、突起側牽引部が、突起402の片側(図5の(e)では左側)に固定されている円環状の永久磁石であってもよい。また、溝側牽引部403または突起側牽引部404が電磁石であってもよい。
【0052】
図6が示す昇圧バルブでは、シャフトホルダ422の内周面が突起側牽引部414を含み、弁体423の外周面が溝側牽引部413を含む。図6の(b)、(c)が示すように、突起側牽引部414は円環状の永久磁石であり、シャフトホルダ422の突起412とリブ326との間にシャフト324のまわりに対称的に配置された状態でシャフトホルダ422の内周面に固定されている。突起側牽引部414は、内径が突起412間の内法と実質的に等しく、軸方向の片側(図6の(b)では右側、図6の(c)では見えている円環面)が同じ磁極、たとえばN極である。図6の(d)、(e)が示すように、溝側牽引部413は円弧状の永久磁石であり、弁体423の軸方向の一端(図6の(e)では左端)の外周面を周方向に各溝411から隣の溝411まで伸びている。溝側牽引部413の位置は溝411の位置に対して一定である。溝側牽引部413の軸方向の片側(図6の(d)では見えている円弧面、図6の(e)では左側)は同じ磁極、たとえばS極である。図6の(a)が示すように、シャフト324が弁体423を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ422の軸方向から傾いていなければ、溝側牽引部413のすべてが突起側牽引部414とシャフト324のまわりで対称的に接触する。このときに接触する溝側牽引部413の表面と突起側牽引部414の表面とが、互いに反対の磁極である。したがって、突起側牽引部414は溝側牽引部413に対してシャフトホルダ422の軸方向(図6の(a)では右方)の引力を及ぼす。この引力は磁力であるので、溝側牽引部413と突起側牽引部414との間隔が狭いほど強い。それ故、シャフト324は、弁体423を閉位置に静止させている状態において最も傾きにくい。しかも、この状態では、突起側牽引部414の引力が補助ばね328の復元力を補ってOリング327を潰すので、閉位置の弁体423とシャフトホルダ422との間のシールにも寄与する。これらの結果、閉位置の弁体423とシャフトホルダ422との間のシール性が高い。
【0053】
(3)図5が示す溝側牽引部403と突起側牽引部404とは、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ322の軸方向から傾いていなければ直に接触する。その他に、同じ条件下において溝側牽引部と突起側牽引部とが、直には接触しないが、最接近するように構成されていてもよい。たとえば、溝側牽引部と突起側牽引部とがフッ素樹脂等、磁力を通す保護膜で覆われ、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態では、互いの保護膜を間に挟んで最接近してもよい。
【0054】
(4)図5が示す溝側牽引部403と突起側牽引部404とは、シャフトホルダ322の軸方向の片側が同じ磁極であり、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態において、互いに反対の磁極を接触させる。その他に、たとえば溝側牽引部403の内径が突起側牽引部404の外径以上であり、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態において、溝側牽引部403の内周側に突起側牽引部404が位置してもよい。この場合は、溝側牽引部403の内周面の全体が同じ磁極、たとえばN極であり、突起側牽引部404の外周面の全体が同じ磁極、たとえばS極である。これにより、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態においてシャフトホルダ322の軸方向から傾きかけても、溝側牽引部403に対する突起側牽引部404の引力によってシャフト324の傾きが阻止される。
【0055】
(5)図7は本発明の実施形態1の第2変形例による昇圧バルブの主要部、すなわち、シャフトホルダ322、弁体323、およびシャフト324の断面図である。図5が示す溝側牽引部403と突起側牽引部404とが磁石であるのとは異なり、溝側牽引部と突起側牽引部とは、図7が示すようなばね700の両端を支持する部材701、702であってもよい。溝側牽引部701は好ましくは円環板であり、溝401とリブ326との間にシャフトホルダ322と同軸に固定され、内径が弁体323の外径以上である。突起側牽引部は好ましくは突起702であり、図5が示す突起402と同様、弁体323の周方向に等間隔で配置され、弁体323の外周面から径方向へ突出し、先端を溝401の中まで伸ばしている。なお、突起側牽引部702は、図5が示す突起402よりもリブ326からの距離が遠い(図7では、図5よりも右方へ離れている)。ばね700は、好ましくは弁体323のまわりに同軸に巻かれている1本のコイルばねであり、一端(図7では左端)が溝側牽引部701に固定され、他端(図7では右端)が突起側牽引部702に固定されている。これにより、4本の突起側牽引部702の中では、シャフトホルダ322の軸方向における溝側牽引部701との間隔が広いもの(図7では右側に寄っているもの)ほどばね700を長く伸ばすので、溝側牽引部701に対する引力、すなわち、ばね700の復元力を強く受ける。したがって、シャフト324が傾くと、その傾きを元へ戻す方向のトルクをばね700がシャフト324に対して加える。したがって、その傾きを自動的に元へ戻す効果が更に高い。
《実施形態2》
【0056】
本発明の実施形態2によるアキュームレータは、たとえば、半導体製造プロセスにおいて使用されるベローズポンプに脈動抑制手段として外付けされる。
[アキュームレータの構造]
【0057】
図8の(a)は本発明の実施形態2によるアキュームレータ800の縦断面図である。アキュームレータ800は、シリンダ810、ベローズ820、ヘッド830、および調圧バルブ840を備えている。
【0058】
シリンダ810は円筒状であり、PTFEまたはPFA等のフッ素樹脂から成る。シリンダ810は一端811が閉じており、他端812が開いている。ベローズ820は、外径がシリンダ810の内径よりも狭い円筒状であり、好ましくはPTFEまたはPFA等のフッ素樹脂から成り、一端821が閉じており、他端822が開いている。ベローズ820はシリンダ810の空洞に同軸に配置されており、開口端822がヘッド830によって塞がれている。これにより、ベローズ820はシリンダ810の空洞を内側の部屋823(以下、「蓄圧室」と呼ぶ。)と外側の部屋813(以下、「エア室」と呼ぶ。)とに仕切った状態で、軸方向(図8では左右方向)に伸縮可能である。ヘッド830は、好ましくは直径がシリンダ810の内径よりも広い円盤状の部材であり、PTFEまたはPFA等のフッ素樹脂から成る。ヘッド830の片側(図8では右側)の円盤面はシリンダ810の開口端812を塞いでいる。ヘッド830の内部は流入路831と流出路832とを含み、ヘッド830の外周面の片側(図8では下側)は流入路831の入口、すなわち流入口834を含み、外周面の反対側(図8では上側)は流出路832の出口、すなわち流出口835を含む。流入路831は流入口834を通し、流出路832は流出口835を通し、それぞれ蓄圧室823をシリンダ810の外部に連通させている。流入口834はベローズポンプの吐出口(図示せず。)に接続され、流出口835は薬液等の輸送先(図示せず。)に接続される。
【0059】
シリンダ810の閉塞端811には吸排気口(図示せず。)と調圧バルブ840とが設けられている。吸排気口は、アキュームレータ800の外部に設置されているエアコンプレッサ(図示せず。)からエア室813へ圧縮空気等を導入することも、エア室813から圧縮空気等を排出することも可能である。エア室813の中に導入される圧縮空気等の圧力は、アキュームレータ800の外部に設置されているレギュレータにより、ベローズポンプの吐出圧の目標値に等しく調節されている。調圧バルブ840はシリンダ810の閉塞端811とベローズ820の閉塞端821との間に配置されている。
[アキュームレータの動作]
【0060】
以下に説明されるように、ベローズポンプの吸入行程と吐出行程との切り替わりに伴う流入路832内の薬液等の圧力変動がベローズ820を自動的に伸縮させるので、流出口835における吐出流の脈動が抑制される。
【0061】
ベローズポンプの吸入行程の開始時、流入路832からベローズ820への薬液等の流入が止まるので、蓄圧室823内の薬液等の圧力がベローズポンプの吐出圧の目標値から下降する。しかし、エア室813内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値に維持されているので、エア室813と蓄圧室823との間での圧力差によってベローズ820が短縮して蓄圧室823内の薬液等を流出路832へ押し出す。こうして、流出口835へは蓄圧室823から薬液等が流出し続けるので、吐出圧が目標値に維持される。
【0062】
ベローズポンプの吐出行程の開始時、ベローズポンプから流入路832を通して蓄圧室823へ薬液等が流入し始めるので、蓄圧室823内の薬液等の圧力が吐出圧の目標値から上昇しかける。しかし、エア室813内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値に維持されているので、エア室813と蓄圧室823との間での圧力差によってベローズ820が伸長し、流入路832から流れ込む薬液等の一部が蓄圧室223に留まる。こうして、吐出圧が目標値に維持される。
【0063】
以上のとおり、ベローズポンプの吐出行程と吸入行程との繰り返しに伴う流入路832の圧力変動により、ベローズ820が伸縮を繰り返す。これにより、薬液等が流出口835から連続して吐出されるだけでなく、吐出圧が吐出と吸入との全行程にわたって目標値に維持される。すなわち、流出口835から薬液等が連続的に、かつ過大な脈動を伴うことなく吐出される。
[調圧バルブ]
【0064】
吐出流の過大な脈動を抑えるには、エア室813内の薬液等の圧力が吐出圧の目標値に安定に維持されなければならない。この維持にアキュームレータ800が利用する部材が調圧バルブ840である。
【0065】
図8の(b)は調圧バルブ840の縦断面の拡大図である。調圧バルブ840は、図4が示す調圧バルブ300とは、ケーシング841のみが異なり、他の要素は構造が共通する。図8の(b)ではそれら共通の要素に、図4が示す符号と同じ符号が付されている。それら共通の要素の詳細については、図4の説明を援用する。
【0066】
ケーシング841は実質的に円柱状の部材であり、シリンダ810の閉塞端811に同軸に、かつ気密に嵌め込まれている。フランジ842はケーシング841の軸方向の一端部(図8の(b)では左端部)から径方向へ張り出しており、シリンダ810の閉塞端811の外面(図8の(a)では右側面)に固定されている。
-昇圧バルブ-
【0067】
ベローズポンプの吐出行程ではベローズ820が伸長し、その閉塞端821がリング340を押すので、平底穴342の底面がシャフト324の先端に接近する。このとき、エア室813内の圧縮空気等の圧力が許容下限よりも高い限り平底穴342の底面がシャフト324の先端には届かないように、シャフト324の長さは設計されている。一方、エア室813内の圧縮空気等の圧力が許容下限以下まで降下していると、平底穴342の底面がシャフト324の先端を押し込む。これにより、シャフト324が吸気路311の出口315へ向かって(図8の(b)では右方へ)移動し、弁体323を閉位置から開位置へ移動させる。したがって、シャフトホルダ322の流路が開くので、吸気路311の入口314(図8の(b)では右端)からエア室813へ圧縮空気等が供給される。その結果、エア室813内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値まで上昇する。
【0068】
シャフト324がリング340に押されて弁体323を閉位置から開位置へ移動させる際、突起402の先端が溝401に沿って移動する。シャフト324がシャフトホルダ322の軸方向(図8の(b)では左右方向)から傾くと、いずれかの突起402が溝401の内面に接触する。これにより、シャフト324の過大な傾きが阻止される。
【0069】
図8の(b)が示すように、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ322の軸方向から傾いていなければ、突起側牽引部404のすべてが溝側牽引部403とシャフト324のまわりで対称的に接触する。このときに接触する溝側牽引部403の表面と突起側牽引部404の表面とが互いに反対の磁極である。したがって、突起側牽引部404は溝側牽引部403に対してシャフトホルダ322の軸方向(図8の(b)では右方)の引力を及ぼす。この引力は磁力であるので、溝側牽引部403と突起側牽引部404との間隔が狭いほど強い。それ故、シャフト324は、弁体323を閉位置に静止させている状態において最も傾きにくい。しかも、この状態では突起側牽引部404の引力が補助ばね328の復元力を補ってOリング327を潰すので、閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシールにも寄与する。これらの結果、閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシール性が高い。
-降圧バルブ-
【0070】
ベローズポンプの吸入行程ではベローズ820が短縮し、その閉塞端821がリング340を押す力が弱まるので、1対の支持ばね321、331がリング340を押し退け、抜け止め344をシャフトホルダ332から遠ざける。このとき、エア室813内の圧縮空気等の圧力が許容上限よりも低い限り抜け止め344がシャフト334を引っ張らないように、シャフト334の長さは設計されている。一方、エア室813内の圧縮空気等の圧力が許容上限以上まで上昇していると、抜け止め344がシャフト334を引っ張る。これにより、弁体333が閉位置から開位置へ移動して排気路312の入口316を開くので、エア室813から圧縮空気等が逃げ出す。その結果、エア室813内の圧縮空気等の圧力が吐出圧の目標値まで降下する。
[実施形態2の利点]
【0071】
本発明の実施形態2によるアキュームレータ800はベローズポンプに外付けされており、昇圧バルブ320がシャフトホルダ322の内周面に軸方向の溝401を含み、弁体323の外周面に径方向の突起402を含む。溝401の中まで突起402が伸びているので、シャフト324がシャフトホルダ322の軸方向から傾きかけると、溝401に突起402が接触してシャフト324の傾きを阻止する。昇圧バルブ320では更に、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ322の軸方向から傾いていなければ、突起側牽引部404が溝側牽引部403とシャフト324のまわりで対称的に接触する。突起側牽引部404は溝側牽引部403に対してシャフトホルダ322の軸方向の引力を及ぼすので、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態でシャフトホルダ322の軸方向から傾きかけても、突起側牽引部404の引力によって元の姿勢に自動的に戻される。こうして、アキュームレータ800は昇圧バルブ320のシャフト324の傾きを更に効果的に防ぐことができる。
【0072】
溝側牽引部403と突起側牽引部404とは磁石であるので、突起側牽引部404の引力は、突起側牽引部404が溝側牽引部403とシャフト322のまわりで対称的に接触している状態において最も強い。したがって、シャフト322は、弁体324を閉位置に静止させている状態において最も傾きにくい。それに加え、突起側牽引部404の引力は閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシールにも寄与する。これらの結果として、閉位置の弁体323とシャフトホルダ322との間のシール性が高い。
[変形例]
【0073】
(6)実施形態1と同様、実施形態2においても、昇圧バルブ320のシャフトホルダ322の溝401の内面と弁体323の突起402の横断面とは、矩形に限らず、三角形または丸形等であってもよい。溝401と突起402との本数も“4”には限らず、他の数であってもよい。さらに、シャフトホルダの内周面に突起が配置され、シャフトの外周面に溝が設けられてもよい。
【0074】
(7)実施形態1と同様、実施形態2においても、溝側牽引部が、各溝401を個別に塞ぐ複数個の永久磁石であってもよく、突起側牽引部が、突起402の片側(図8の(b)では左側)に固定されている円環状の永久磁石であってもよい。また、溝側牽引部403または突起側牽引部404が電磁石であってもよい。さらに、溝側牽引部403の内径が突起側牽引部404の外径以上であり、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態において、溝側牽引部403の内周側に突起側牽引部404が位置してもよい。この場合は、溝側牽引部403の内周面の全体が同じ磁極、たとえばN極であり、突起側牽引部404の外周面の全体が同じ磁極、たとえばS極である。これにより、シャフト324が弁体323を閉位置に静止させている状態においてシャフトホルダ322の軸方向から傾きかけても、溝側牽引部403に対する突起側牽引部404の引力によってシャフト324の傾きが阻止される。その他に、溝側牽引部と突起側牽引部とは、図7が示すようなばね700の両端を支持する部材701、402であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
100 ベローズポンプ
110 主シリンダ
111 主シリンダの閉塞端
112 主シリンダの開口端
113 主エア室
114 第1吸排気口
115 駆動室
116 ピストン
117 駆動軸
118 ピストン室
119 プローブ
120 主ベローズ
121 主ベローズの閉塞端
122 主ベローズの開口端
123 ポンプ室
130 ポンプヘッド
131 吸入流路
132 吐出流路
133 枝路
134 吸入口
135 吐出口
136 吸入用逆止弁
137 吐出用逆止弁
200 アキュームレータ
210 副シリンダ
211 副シリンダの閉塞端
212 副シリンダの開口端
213 副エア室
214 第3吸排気口
220 副ベローズ
221 副ベローズの閉塞端
222 副ベローズの開口端
223 蓄圧室
300 調圧バルブ
310 ケーシング
311 吸気路
312 排気路
313 フランジ
314 吸気路の入口
315 吸気路の出口
316 排気路の入口
317 排気路の出口
320 昇圧バルブ
321 支持ばね
322 シャフトホルダ
323 弁体
324 シャフト
325 貫通穴
326 リブ
327 Oリング
328 補助ばね
330 降圧バルブ
331 支持ばね
332 シャフトホルダ
333 弁体
334 シャフト
335 貫通穴
336 Oリング
337 補助ばね
338 シャフトの先端部
340 リング
341 リングの円盤面
342 平底穴
343 貫通穴
344 抜け止め
345 抜け止めの穴
401 溝
402 突起
403 溝側牽引部
404 突起側牽引部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8