(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117181
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240822BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240822BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240822BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20240822BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240822BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/38
C08K3/013
C08L101/02
C08J5/24
B32B15/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023122
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中住 宜洋
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD13
4F072AD27
4F072AE01
4F072AE04
4F072AF05
4F072AG03
4F072AH02
4F072AL13
4F100AA00B
4F100AA14A
4F100AB33B
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK32A
4F100AK33A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK49A
4F100AK51A
4F100AK53A
4F100AK54A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA23A
4F100DH01A
4F100GB43
4F100JB13A
4F100JD01B
4F100JG05A
4F100YY00A
4J002BG03X
4J002CC03W
4J002CC04W
4J002CC05W
4J002CC06W
4J002CD01W
4J002CD02W
4J002CD03W
4J002CD04W
4J002CD05W
4J002CD06W
4J002CD07W
4J002CD11W
4J002CD13W
4J002CF11X
4J002CF19X
4J002CH02X
4J002CH03W
4J002CK02X
4J002CL00X
4J002CM01X
4J002CM02W
4J002CM04W
4J002DE077
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE117
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE187
4J002DF017
4J002DF027
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK006
4J002DK007
4J002DL007
4J002FA047
4J002FD017
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】窒化ホウ素を含む電子材料用の樹脂組成物において、樹脂組成物への窒化ホウ素の充填性に優れ、ワニス粘度が小さい樹脂組成物を提供する。
【解決手段】窒化ホウ素一次粒子(A)と、分散剤(B)と、熱硬化性樹脂(C)を含む樹脂組成物であって、前記窒化ホウ素一次粒子(A)の平均粒子径(D50)が2.5~12μmであり、前記窒化ホウ素一次粒子(A)のゼータ電位の絶対値が20mV以上である樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素一次粒子(A)と、分散剤(B)と、熱硬化性樹脂(C)を含む樹脂組成物であって、前記窒化ホウ素一次粒子(A)の平均粒子径(D50)が2.5~12μmであり、前記窒化ホウ素一次粒子(A)のゼータ電位の絶対値が20mV以上である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記分散剤(B)が、主鎖がポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミノアマイド系、ポリアクリル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、及びポリカプロラクトン系からなる群より選択される少なくとも1種の分子骨格を有し、側鎖として、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、及びヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の極性基又は塩を有する高分子化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記分散剤(B)の含有量が、前記窒化ホウ素一次粒子(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記窒化ホウ素一次粒子(A)の粒子径分布が、単一のピークを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記窒化ホウ素一次粒子(A)の含有量が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1~1600質量部である、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂(C)が、シアン酸エステル化合物(D)、エポキシ化合物(E)、マレイミド化合物(F)、フェノール化合物(G)、アルケニル置換ナジイミド化合物(H)、オキセタン樹脂(I)、ベンゾオキサジン化合物(J)、及び重合可能な不飽和基を有する化合物(K)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記窒化ホウ素一次粒子(A)以外の無機充填材を、さらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
電子材料用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
基材と、前記基材に含侵又は塗布された請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物とを有するプリプレグ。
【請求項10】
支持体と、前記支持体の表面に配された請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物から形成された層とを有する、樹脂シート。
【請求項11】
請求項9に記載のプリプレグ及び請求項10 に記載の樹脂シートからなる群より選択される1種以上から形成された積層板と、前記積層板の片面又は両面に配された金属箔とを有する、金属箔張積層板。
【請求項12】
絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び前記樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の回路の高速動作化・高集積化、及び発熱性電子部品のプリント配線板への実装密度の増加に伴って、電子機器内部の発熱密度は年々増加している。そのため、電子部品などによって発生する熱を効率よく拡散させる高い熱伝導率と電気絶縁性を有する部材が求められている。
【0003】
プリント配線板の絶縁層に用いられるエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂自体は熱伝導率が低い。そこで、プリント配線板として熱伝導率を向上させるため、熱硬化性樹脂に熱伝導性に優れた無機充填材を高充填する方法が知られている。例えば、特許文献1~4においては、熱伝導性に優れた無機充填材として窒化ホウ素を充填した熱硬化性樹脂が開示されている。しかし、熱硬化性樹脂に無機充填材を高充填すると、熱硬化性樹脂の体積比率が少なくなるため、成形性の悪化や、樹脂と無機充填材の間にクラックやボイドが発生しやすくなるという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6519965号公報
【特許文献2】特許第6319533号公報
【特許文献3】特許第6868203号公報
【特許文献4】特許第6955713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化ホウ素は熱伝導性に優れる材料して知られている。その一方で、窒化ホウ素は一般に樹脂や有機溶剤に対する分散性が悪く凝集しやすいという側面を有する。このため、熱伝導性の観点から窒化ホウ素を多用した場合には、樹脂成分と窒化ホウ素とが分離したり、樹脂組成物の成形性が低下する。これに対し、各種分散剤を併用して窒化ホウ素を樹脂に混合する試みが多くなされているが、通常用いられている分散剤では十分に窒化ホウ素を分散させることが難しい場合が多い。特に、熱伝導性を高めるために窒化ホウ素を多用すると、窒化ホウ素の凝集により十分な熱伝導率が得られないとともに、樹脂組成物の成形性が低下してしまうため、優れた熱伝導率及び成形性を両立できる樹脂組成物が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような問題を解決することを目的とするものであり、窒化ホウ素の充填性に優れ、ワニス粘度が小さい樹脂組成物、並びに、その樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、窒化ホウ素一次粒子(A)と 、分散剤(B)と、熱硬化性樹脂(C)とを含む樹脂組成物において、所定の窒化ホウ素一次粒子(A)を用いることにより、窒化ホウ素の充填性に優れ、ワニス粘度が小さい樹脂組成物を提供できる、新規な樹脂組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕窒化ホウ素一次粒子(A)と、分散剤(B)と、熱硬化性樹脂(C)を含む樹脂組成物であって、前記窒化ホウ素一次粒子(A)の平均粒子径(D50)が2.5~12μmであり、前記窒化ホウ素一次粒子(A)のゼータ電位の絶対値が20mV以上である、樹脂組成物。
〔2〕前記分散剤(B)が、主鎖がポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミノアマイド系、ポリアクリル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、及びポリカプロラクトン系からなる群より選択される少なくとも1種の分子骨格を有し、側鎖として、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、及びヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の極性基又は塩を有する高分子化合物である、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕前記分散剤(B)の含有量が、前記窒化ホウ素一次粒子(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕前記窒化ホウ素一次粒子(A)の粒子径分布が、単一のピークを有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔5〕前記窒化ホウ素一次粒子(A)の含有量が、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1~1600質量部である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕前記熱硬化性樹脂(C)が、シアン酸エステル化合物(D)、エポキシ化合物(E)、マレイミド化合物(F)、フェノール化合物(G)、アルケニル置換ナジイミド化合物(H)、オキセタン樹脂(I)、ベンゾオキサジン化合物(J)、及び重合可能な不飽和基を有する化合物(K)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔7〕前記窒化ホウ素一次粒子(A)以外の無機充填材を、さらに含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔8〕電子材料用である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔9〕基材と、前記基材に含侵又は塗布された〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の樹脂組成物とを有するプリプレグ。
〔10〕支持体と、前記支持体の表面に配された〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された層とを有する、樹脂シート。
〔11〕〔9〕に記載のプリプレグ及び〔10〕に記載の樹脂シートからなる群より選択される1種以上から形成された積層板と、前記積層板の片面又は両面に配された金属箔とを有する、金属箔張積層板。
〔12〕絶縁層と、該絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、窒化ホウ素の充填性に優れ、ワニス粘度が小さい樹脂組成物、並びに、その樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂シート、金属箔張積層板、及びプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例で用いた窒化ホウ素一次粒子A(河合石灰社製窒化ホウ素、エアブラウン社による表面処理品))の粒子径分布を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
本明細書において、「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における溶剤、窒化ホウ素一次粒子(A)、及び充填材を除いた成分をいう。また、「樹脂固形分100質量部」とは、樹脂組成物における溶剤、窒化ホウ素一次粒子(A)、及び充填材を除いた成分の合計が100質量部であることをいう。
【0013】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、窒化ホウ素一次粒子(A)と、分散剤(B)と、熱硬化性樹脂(C)を含む樹脂組成物であって、前記窒化ホウ素一次粒子(A)の平均粒子径(D50)が2.5~12μmであり、前記窒化ホウ素一次粒子(A)のゼータ電位の絶対値が20mV以上であることを特徴とする。このような形態とすることにより、熱硬化性樹脂(C)を含む樹脂組成物において、樹脂成分と窒化ホウ素の分離が抑制されるため、樹脂成分中への窒化ホウ素の充填性に優れつつも、樹脂組成物の最低溶融粘度(ワニス粘度)の上昇が抑制される。このため、本実施形態の樹脂組成物は、優れた熱伝導率と成形性とを両立することができる。
【0014】
上述したように、本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物への窒化ホウ素一次粒子(A)の充填性に優れるため、優れた熱伝導率とすることができる。また、樹脂組成物の最低溶融粘度が小さいため、成形性に優れる。本実施形態の樹脂組成物によってこれらの利点が得られる理由については、特に限定されるものではないが、本実施形態における窒化ホウ素一次粒子(A)は、平均粒子径(D50)が2.5~12μmと小さく、かつ、ゼータ電位の絶対値が20mV以上と比較的大きなゼータ電位を有し、さらに分散剤(B)を併用することにより、熱硬化性樹脂(C)に対する窒化ホウ素一次粒子(A)の分散性が高まることに起因している、と発明者は考えている。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物の用途は、特に限定されるものではないが、電子材料用途として好適に用いることができる。電子材料としては、例えば、プリプレグ、樹脂シート、ビルドアップ材、金属箔張積層板、プリント配線板などが挙げられる。
【0016】
〔窒化ホウ素一次粒子(A)〕
本実施形態において、窒化ホウ素一次粒子(A)の平均粒子径(D50)は、2.5~12μmである。平均粒子径(D50)が前記範囲内であることによって、本実施形態の樹脂組成物において窒化ホウ素一次粒子(A)が優れた分散性を有し、高充填化が可能となる。これにより、樹脂組成物の熱伝導性と成形性とを向上させることができる。なお、「平均粒子径(D50)」とは、最小粒子径を0.1μmとする体積基準の粒子径の累積分布において最小粒子径からの積算値が全体の50%に達したときの粒子径をいう。窒化ホウ素一次粒子(A)の平均粒子径(D50)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0017】
本実施形態において、窒化ホウ素一次粒子(A)の粒子径分布は、単一のピークを有することが好ましい。これにより、樹脂組成物において窒化ホウ素一次粒子(A)が優れた分散性を確保することができる。なお、「ピーク」とは、粒子径分布における極大値をいう。
【0018】
本実施形態において、窒化ホウ素一次粒子(A)のゼータ電位の絶対値は20mV以上である。窒化ホウ素一次粒子(A)のゼータ電位は、樹脂組成物中における窒化ホウ素一次粒子(A)の分散の安定性に関し、ゼータ電位は窒化ホウ素一次粒子(A)の粒子同士の反発力の水準を示す。窒化ホウ素一次粒子(A)のゼータ電位の絶対値が20mV以上であることにより、窒化ホウ素一次粒子(A)は樹脂組成物中において凝集せずに、分散性が良好となる。これにより、樹脂組成物の熱伝導性と成形性とを向上させることができる。本実施形態におけるゼータ電位は、窒化ホウ素一次粒子(A)100質量部と分散剤(B)15質量部の合計が分散媒(溶剤)に対して0.01wt%濃度となるように調整して、測定した値である。ゼータ電位は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物における、窒化ホウ素一次粒子(A)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、一層好ましくは20質量部以上であり、より一層好ましくは30質量部以上であり、特に好ましくは40質量部以上であり、60質量部以上であってもよい。窒化ホウ素一次粒子(A)の含有量が1質量部以上であることによって、熱伝導性の等方性がより向上するとともに、熱伝導率の絶対値が向上する傾向にある。また、窒化ホウ素一次粒子(A)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1600質量部以下であり、より好ましくは1000質量部以下であり、さらに好ましくは500質量部以下であり、一層好ましくは300質量部以下であり、より一層好ましくは200質量部以下であり、特に好ましくは100質量部以下である。窒化ホウ素一次粒子(A)の含有量が1600質量部以下であることによって、得られる硬化物の成形性がより向上する傾向にある。
【0020】
本実施形態において、窒化ホウ素一次粒子(A)は表面処理を施してもよい。表面処理により、粒子表面が活性化され、窒化ホウ素一次粒子(A)の樹脂成分への親和性が向上することで、樹脂組成物への窒化ホウ素一次粒子(A)の充填性が向上する。
【0021】
〔分散剤(B)〕
本実施形態の樹脂組成物は、分散剤(B)を含む。本実施形態において、分散剤とは、本実施形態の樹脂組成物中において、窒化ホウ素一次粒子(A)の分散性を高める機能を有する化合物をいう。分散剤(B)としては、塗料用に使用されている分散剤であれば特に限定されず、例えば、主鎖がポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミノアマイド系、ポリアクリル系、ポリエーテル系(例えば、ポリグリコールエーテル系)、ポリウレタン系、ポリアミン系又はポリカプロラクトン系などの分子骨格を有し、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基及びヒドロキシル基などの極性基又はこれらの塩を有する高分子化合物が挙げられる。分散剤(B)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本実施形態の樹脂組成物において、分散剤(B)の含有量は、特に限定されないが、窒化ホウ素一次粒子(A)の分散性及び熱伝導率の等方性等の観点から、窒化ホウ素一次粒子(A)100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、5~15質量部であることがより好ましく、7~15質量部であることが、さらに好ましい。
【0023】
〔熱硬化性樹脂(C)〕
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(C)を含む。熱硬化性樹脂(C)は、熱硬化性を有する成分であれば特に限定されず、一般に電子材料用の樹脂組成物に用いられている熱硬化性化合物を用いることができる。本実施形態において、熱硬化性樹脂(C)は、シアン酸エステル化合物(D)、エポキシ化合物(E)、マレイミド化合物(F)、フェノール化合物(G)、アルケニル置換ナジイミド化合物(H)、オキセタン樹脂(I)、ベンゾオキサジン化合物(J)、及び重合可能な不飽和基を有する化合物(K)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの熱硬化性樹脂(C)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
熱硬化性樹脂(C)を併用する場合の組み合わせとしては、特に制限されるものではないが、例えば、シアン酸エステル化合物(D)及びマレイミド化合物(F)を含む組合せ;シアン酸エステル化合物(D)、マレイミド化合物(F)、及びエポキシ化合物(E)を含む組合せ;フェノール化合物(G)及びエポキシ化合物(E)を含む組合せ;フェノール化合物(G)及び/又はエポキシ化合物(E)、及びマレイミド化合物(F)を含む組合せが挙げられる。
【0025】
(シアン酸エステル化合物(D))
シアン酸エステル化合物(D)は、1分子中に芳香環に直接結合したシアン酸エステル基(シアナト基)を2個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができる。
【0026】
このようなシアン酸エステル化合物(D)としては、特に制限されないが、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ノボラック型シアン酸エステル化合物、及びビスフェノールA型シアン酸エステル化合物が挙げられる。シアン酸エステル化合物(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0027】
このなかでも、成形性のほか、耐熱性、難燃性、低誘電率、低誘電正接等の観点から、シアン酸エステル化合物(D)は、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物を含むことが好ましい。
【0028】
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、n3は、1以上の整数を表す。)
【0029】
式(1)中、R3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。式(1)中、n3は、1以上の整数であり、1~50の整数であることが好ましく、1~20の整数であることがより好ましく、1~10の整数であることがさらに好ましく、1~6の整数であることが一層好ましい。
【0030】
熱硬化性樹脂(C)がシアン酸エステル化合物(D)を含む場合、シアン酸エステル化合物(D)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは10~90質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部であり、一層好ましくは30~70質量部である。シアン酸エステル化合物(D)の含有量が前記範囲内であることによって、耐熱性、低誘電率、低誘電正接等により優れる傾向にある。
【0031】
また、熱硬化性樹脂(C)がシアン酸エステル化合物(D)及びマレイミド化合物(F)を含む場合、シアン酸エステル化合物(D)の含有量は、シアン酸エステル化合物(D)及びマレイミド化合物(F)の総量100質量部に対して、好ましくは30~90質量部であり、より好ましくは40~80質量部であり、さらに好ましくは50~70質量部である。シアン酸エステル化合物(D)の含有量が前記範囲内であることによって、耐熱性、低誘電率、低誘電正接等に加え、熱伝導率の等方性、成形性、及び銅箔ピール強度がより向上する傾向にある。
【0032】
(エポキシ化合物(E))
エポキシ化合物(E)は、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。エポキシ化合物(E)の1分子当たりのエポキシ基の数は、1以上であり、好ましくは2以上である。
【0033】
エポキシ化合物(E)としては、特に限定されず、従来公知のエポキシ化合物及びエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物、アントラキノン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ザイロック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、トリアジン骨格エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジル型エステル樹脂、ブタジエン等の二重結合含有化合物の二重結合をエポキシ化した化合物、及び水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。これらのなかで、熱伝導率の等方性、成形性、及び耐熱性の観点から、エポキシ化合物(E)は、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、及びナフチレンエーテル型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。エポキシ化合物(E)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0034】
熱硬化性樹脂(C)がエポキシ化合物(E)を含む場合、エポキシ化合物(E)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは10~90質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部であり、一層好ましくは30~70質量部である。エポキシ化合物(E)の含有量が前記範囲内であることによって、接着性や可撓性等により優れる傾向にある。
【0035】
(マレイミド化合物(F))
マレイミド化合物(F)は、1分子中にマレイミド基を1個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。マレイミド化合物(F)の1分子当たりのマレイミド基の数は、1以上であり、好ましくは2以上である。
【0036】
マレイミド化合物(F)としては、特に制限されないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(2)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(3)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、及び前記マレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられる。マレイミド化合物(F)は、1種を単独
で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0037】
このなかでも、マレイミド化合物(F)は、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(2)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(3)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが、耐熱性の観点から好ましい。
【化2】
(式(2)中、R1は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n1は1~10である。)
【化3】
(式(3)中、R2は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基を表し、n2は、平均値であり、1<n2≦5を表す。)
【0038】
熱硬化性樹脂(C)がマレイミド化合物(F)を含む場合、マレイミド化合物(F)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは10~90質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部であり、一層好ましくは30~70質量部である。マレイミド化合物(F)の含有量が前記範囲内であることによって、耐熱性等により優れる傾向にある。
【0039】
また、熱硬化性樹脂(C)がシアン酸エステル化合物(D)及びマレイミド化合物(F)を含む場合、マレイミド化合物(F)の含有量は、シアン酸エステル化合物(D)及びマレイミド化合物(E)の総量100質量部に対して、好ましくは10~70質量部であり、より好ましくは20~60質量部であり、さらに好ましくは30~50質量部である。マレイミド化合物(F)の含有量が前記範囲内であることによって、耐熱性に加え、熱伝導率の等方性、成形性、及び銅箔ピール強度がより向上する傾向にある。
【0040】
(フェノール化合物(G))
フェノール化合物(G)は、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。
【0041】
フェノール化合物(G)としては、特に制限されないが、例えば、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、下記式(4)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、下記式(5)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、及びポリビニルフェノール類等が挙げられる。フェノール化合物(G)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
これらのなかでも、熱伝導率の等方性、成形性及び耐熱性の観点から、フェノール化合物(G)は、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、下記式(4)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、下記式(5)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、及びナフタレン型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、下記式(4)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、及び/又は下記式(5)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂を含むことがより好ましい。
【化4】
(式(4)中、複数存在するR
4は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n4は1~10の整数である。)
【化5】
(式(5)中、R
5は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、n5は、1以上の整数を表す。)
【0043】
式(5)中、R5は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。式(5)中、n5は、1以上の整数であり、1~50の整数であることが好ましく、1~20の整数であることがより好ましく、1~10の整数であることがさらに好ましく、1~6の整数であることが一層好ましい。
【0044】
熱硬化性樹脂(C)がフェノール化合物(G)を含む場合、フェノール化合物(G)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは10~90質量部であり、さらに好ましくは20~80質量部であり、ことさら好ましくは30~70質量部である。フェノール化合物(G)の含有量が前記範囲内であることによって、接着性や可撓性等により優れる傾向にある。
【0045】
また、熱硬化性樹脂(C)が、フェノール化合物(G)及びエポキシ化合物(E)を含む場合、フェノール化合物(G)の含有量は、フェノール化合物(G)及びエポキシ化合物(E)の総量100質量部に対して、好ましくは20~80質量部であり、より好ましくは30~70質量部であり、さらに好ましくは40~60質量部である。フェノール化合物(G)の含有量が前記範囲内であることによって、接着性や可撓性等に加え、熱伝導率の等方性、及び成形性がより向上する傾向にある。
【0046】
(アルケニル置換ナジイミド化合物(H))
アルケニル置換ナジイミド化合物(H)は、1分子中に1つ以上のアルケニル基置換ナジイミド基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(2d)で表される化合物が挙げられる。本実施形態の樹脂組成物は、アルケニル置換ナジイミド化合物(H)を含有することにより、耐熱性が向上する傾向にある。
【0047】
【0048】
式(2d)中、複数のR1は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基又はエチル基)を表し、R2は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記式(6)若しくは下記式(7)で表される基を表す。
【0049】
【0050】
式(6)中、R3は、メチレン基、イソプロピリデン基、CO、O、S又はSO2を表す。
【0051】
【0052】
式(7)中、複数のR4は、各々独立に、炭素数1~4のアルキレン基又は炭素数5~8のシクロアルキレン基を表す。
【0053】
式(6)又は式(7)で表されるアルケニル置換ナジイミド化合物は、市販品を用いてもよく、公知の方法に準じて製造した製造品を用いてもよい。市販品としては、丸善石油化学株式会社製品の「BANI-M」、及び「BANI-X」が挙げられる。
【0054】
本実施形態の樹脂組成物がアルケニル置換ナジイミド化合物(H)を含む場合、アルケニル置換ナジイミド化合物(H)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは3~90質量部であり、さらに好ましくは5~80質量部であり、10~70質量部、20~60質量部、30~50質量部であってもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物(H)の含有量が上記範囲内であることにより、耐熱性等により優れる傾向にある。
【0055】
(オキセタン樹脂(I))
オキセタン樹脂(I)としては、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。その具体例としては、オキセタン、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3-ジ(トリフルオロメチル)オキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT-101(東亞合成製商品名)、OXT-121(東亞合成製商品名)等が挙げられる。これらのオキセタン樹脂(G)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物がオキセタン樹脂(I)を含む場合、オキセタン樹脂(I)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは3~90質量部であり、さらに好ましくは5~80質量部である。オキセタン樹脂(I)の含有量が前記範囲内であることによって、耐熱性等により優れる傾向にある。
【0057】
(ベンゾオキサジン化合物(J))
本実施形態の樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物(J)を含むことにより、難燃性、耐熱性、低吸水性、低誘電率、低誘電正接等により優れる傾向にある。ベンゾオキサジン化合物(J)としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA-BXZ(小西化学製商品名)ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ(小西化学製商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ(小西化学製商品名)等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物(J)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物がベンゾオキサジン化合物(J)を含む場合、ベンゾオキサジン化合物(J)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは3~90質量部であり、さらに好ましくは5~80質量部である。ベンゾオキサジン化合物(J)の含有量が前記範囲内であることによって、耐熱性等により優れる傾向にある。
【0059】
(重合可能な不飽和基を有する化合物(K))
重合可能な不飽和基を有する化合物(K)としては、一般に公知のものを使用でき、その種類は特に限定されない。その具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類;ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類;アリルクロライド、酢酸アリル、アリルエーテル、プロピレン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル化合物;ベンゾシクロブテン樹脂が挙げられる。これらの重合可能な不飽和基を有する化合物(K)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物が重合可能な不飽和基を有する化合物(K)を含む場合、重合可能な不飽和基を有する化合物(K)の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1~99質量部であり、より好ましくは3~90質量部であり、さらに好ましくは5~80質量部である。重合可能な不飽和基を有する化合物(K)の含有量が前記範囲内であることによって、耐熱性や靱性等により優れる傾向にある。
【0061】
(その他の樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、所望に応じて、熱硬化性樹脂(C)以外の他の樹脂、例えば、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。このような熱可塑性樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。本実施形態において、熱硬化性樹脂(C)と熱可塑性樹脂とを併用する場合、本発明の効果を十分に発揮する観点から、熱可塑性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂(C)と熱可塑性樹脂の総量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0062】
〔その他の充填材〕
本実施形態の樹脂組成物は、窒化ホウ素一次粒子(A)以外の充填材(本明細書では、「他の充填材」ともいう)をさらに含有してもよい。このような充填材としては、特に限定されないが、例えば、無機充填材及び有機充填材が挙げられる。充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカなどのシリカ類;ホワイトカーボンなどのケイ素化合物;チタンホワイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムなどの金属酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの窒化物;硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウムなどの金属酸化物の水和物;酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛などのモリブデン化合物;ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛などの亜鉛化合物;アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、Eガラス、Aガラス、NEガラス、Cガラス、Lガラス、Dガラス、Sガラス、MガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラスなどのガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなどが挙げられる。
【0064】
また、有機充填材としては、特に限定されないが、例えば、スチレン型パウダー、ブタジエン型パウダー、アクリル型パウダーなどのゴムパウダー;コアシェル型ゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー;シリコーンゴムパウダー;シリコーン複合パウダーなどが挙げられる。
【0065】
他の充填材の含有量は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは10~500質量部であり、より好ましくは50~300質量部であり、さらに好ましくは100~200質量部である。
【0066】
〔溶剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、溶剤をさらに含んでもよい。溶剤としては、電子材料用樹脂組成物の調製において一般的に用いられているものを使用することができる。溶剤を含むことにより、樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性がより向上するとともに後述する基材への含浸性がより向上する傾向にある。溶剤としては、樹脂組成物中の樹脂成分の一部又は全部を溶解可能であれば、特に限定されない。例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアルデヒド等)、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテート等が挙げられる。
【0067】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素一次粒子(A)と、分散剤(B)と、熱硬化性樹脂(C)と、上述した他の充填材等の任意成分とを順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。その際、各成分を均一に溶解或いは分散させるため、攪拌、混合、混練処理などの公知の処理を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物における窒化ホウ素一次粒子(A)、充填材の分散性を向上させることができる。上述の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。また、樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて溶剤を使用することができる。溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されない。
【0068】
〔ワニス粘度〕
本実施形態の樹脂組成物のワニス粘度は、特に限定されるものではないが、プリプレグ、樹脂シート等への成形性が低下するため、2,000mPa・s以下であることが好ましく、1,000mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、樹脂組成物のワニス粘度の下限については特に限定はないが、硬化物の耐熱性、樹脂組成物の成形性等の観点から、50mPa・s以上であることが好ましく、100mPa・s以上であることがさらに好ましい。樹脂組成物のワニス融粘度は、後述する実施例に記載の測定方法によって測定することができる。
【0069】
〔用途〕
上述のように本実施形態の樹脂組成物は、電子材料用途に好適に用いることができる。電子材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、プリプレグ、樹脂シート、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板、ビルドアップ材料が挙げられる。以下、これらについて説明する。
【0070】
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、基材と、前記基材に含浸又は塗布された上述した本実施形態の樹脂組成物とを有する。プリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、本実施形態における樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の乾燥機中で1~30分間加熱するなどして半硬化(Bステ-ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することができる。
【0071】
本実施形態のプリプレグにおける樹脂組成物(窒化ホウ素一次粒子(A)、他の充填材を含む。)の含有量は、プリプレグの総量に対して、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは35~85質量%であり、さらに好ましくは40~80質量%である。樹脂組成物の含有量が前記範囲内であることによって、成形性がより向上する傾向にある。
【0072】
基材としては、特に限定されず、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。基材を構成する繊維の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツなどのガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン(株)製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ(株)製)などの全芳香族ポリアミド;2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、(株)クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)などのポリエステル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績(株)製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これら基材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
これらのなかでも、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0074】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m2以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、及びTガラスのガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0075】
〔樹脂シート〕
本実施形態の樹脂シートは、支持体と、前記支持体の表面に配された上述した本実施形態の樹脂組成物から形成された層とを有する。樹脂シートは、薄葉化の1つの手段として用いられるもので、例えば、銅箔や樹脂フィルムなどの支持体に、直接、樹脂組成物を塗布及び乾燥して製造することができる。樹脂シートは、金属箔張積層板やプリント配線板等の絶縁層を形成するために用いることができる。
【0076】
支持体としては、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている公知の物を使用することができる。例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔などの導体箔、ガラス板、SUS板、FPR等の板状の無機系フィルムが挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフィルムが好ましい。
【0077】
塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。
【0078】
樹脂シートは、本実施形態の樹脂組成物を支持体に塗布後、半硬化(Bステ-ジ化)させたものであることが好ましい。具体的には、例えば、上述した樹脂組成物を銅箔などの支持体に塗布した後、100~200℃の乾燥機中で、1~60分間加熱させる方法などにより半硬化させ、樹脂シートを製造する方法などが挙げられる。支持体に対する樹脂組成物の付着量は、樹脂シートの樹脂厚で1~300μmの範囲が好ましい。
【0079】
本実施形態の樹脂シートの他の態様として単層樹脂シートが挙げられる。単層樹脂シートは、本実施形態の樹脂組成物を含む。単層樹脂シートは、本実施形態の樹脂組成物をシート状に成形してなるものである。単層樹脂シートの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、前記樹脂シートから、支持体を剥離又はエッチングすることにより得ることができる。または、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、シート基材を用いることなく単層樹脂シートを得ることもできる。
【0080】
〔積層板〕
本実施形態における積層板は、前記プリプレグ及び前記樹脂シートからなる群より選択される1種以上から形成された積層板である。より具体的には、前記プリプレグ及び前記樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねてなる積層板であって、前記プリプレグ及び前記樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む。本実施形態の積層板は、前記プリプレグ及び前記樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1種と、他層とを組み合わせて積層成形することによっても、得ることができる。他層としては、特に限定されないが、例えば、別途作製した内層用の配線板が挙げられる。
【0081】
〔金属箔張積層板〕
本実施形態の金属箔張積層板は、前記プリプレグ及び前記樹脂シートからなる群より選択される1種以上から形成された積層板と、前記積層板の片面又は両面に配された金属箔とを有する。すなわち、本実施形態の金属箔張積層板は、前記プリプレグと金属箔とを積層して硬化して得ることができる。前記プリプレグ及び前記樹脂シートからなる群より選択される1種以上は、2枚以上積層されていてもよい。
【0082】
金属箔とはしては、例えば、銅やアルミニウムなどが挙げられるが、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されない。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の手法が適用できる。ここで使用する銅箔等の金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、導体層の厚みは、特に限定されないが、1~70μmが好ましく、より好ましくは1.5~35μmである。
【0083】
金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形において、温度は100~350℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~350℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、上述のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0084】
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、前記樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層と、を有する。上述の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。そして、上述の金属箔張積層板は、良好な成形性及び耐薬品性を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0085】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、金属箔張積層板(例えば銅箔張積層板)を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を施し、次いでその内層回路表面に上述のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の銅箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の銅箔との間に、基材及び樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去するためデスミア処理が行われる。その後この穴の壁面に内層回路と外層回路用の銅箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の銅箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
【0086】
上述の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態の樹脂組成物の硬化物を含む構成となる、すなわち、上述のプリプレグ(基材及びこれに添着された上述の樹脂組成物)、金属箔張積層板の樹脂組成物層(上述の樹脂組成物からなる層)が、上述の樹脂組成物の硬化物を含む絶縁層を構成することになる。
【0087】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、前記プリプレグ、前記樹脂シート、又は前記樹脂組成物からなるものに、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0088】
〔ビルドアップ材料〕
本実施形態の樹脂組成物は、ビルドアップ材料として使用することができる。ここで、「ビルドアップ」とは、プリプレグ又は樹脂シートを積層すると共に、一層毎に孔あけ加工、配線形成などを繰り返すことによって、多層構造のプリント配線板を作製することを意味する。
【0089】
より具体的には、本実施形態の樹脂組成物を用いた、プリプレグ、樹脂シート、または金属箔張積層板を、プリント配線板のビルドアップ材料として使用することができる。本実施形態のプリプレグや樹脂シートを用いて形成されたプリント配線板においては、そのプリプレグや樹脂シートが、絶縁層を構成することになる。また、金属箔張積層板を用いて形成されたプリント配線板においては、金属箔張積層板の作製に用いられたプリプレグ(基材及びこれに添着された樹脂組成物)や樹脂シートが、絶縁層を構成することになる。
【0090】
具体的には、本実施形態のプリプレグをビルドアップ材料として用いる場合は、前記金属箔張積層板の製造方法によりプリプレグを用いて金属箔張積層板を作製してから、前記方法により本実施形態のプリント配線板を得ることができる。或いは、多層プリント配線板の材料として、プリプレグをそのままビルドアップ材料として使用してもよい。
【0091】
また、本実施形態の金属箔張積層板をビルドアップ材料として用いる場合は、常法により、金属箔張積層板の金属箔をエッチングした後、プリプレグからなる層(絶縁層)を表面処理し、絶縁層表面にめっきにより配線パターン(導体層)を形成することにより、本実施形態のプリント配線板を得ることができる。
【0092】
なお、何れの場合も、必要に応じてその他の各種の工程(例えば、ビアホール、スルーホール等を形成する穴加工処理等)を加えてもよい。
【実施例0093】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0094】
(窒化ホウ素一次粒子)
実施例及び比較例で用いた窒化ホウ素一次粒子を以下に示す。また、それぞれの測定方法についても後述する。
【0095】
・窒化ホウ素一次粒子A(河合石灰社製窒化ホウ素、エアブラウン社による表面処理品))
平均粒子径(D50):3.05μm
・窒化ホウ素一次粒子B(サンゴバン社製「PCT-UFB」表面処理あり)
平均粒子径(D50):10.71μm
・窒化ホウ素一次粒子C(サンゴバン社製「PCT-UFB」表面処理なし)
平均粒子径(D50):10.71μm
・窒化ホウ素一次粒子D(サンゴバン社製「PCTP2」表面処理あり)
平均粒子径(D50):1.59μm
・窒化ホウ素一次粒子E(サンゴバン社製「PCTP2」表面処理なし)
平均粒子径(D50):1.83μm
・窒化ホウ素一次粒子F(サンゴバン社製「PCTP05」表面処理あり)
平均粒子径(D50):0.68μm
・窒化ホウ素一次粒子G(サンゴバン社製「PCTP05」表面処理なし)
平均粒子径(D50):0.94μm
【0096】
(窒化ホウ素一次粒子の平均粒子径(D50)の測定方法)
レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置を用い、メチルエチルケトンに分散させた窒化ホウ素一次粒子の粒子径分布を得た。得られた粒子径分布から、平均粒子径(D50)を求めた。なお、粒子径分布においては、最小粒子径を0.1μmとし、0.1μm以上の粒子径を有する粒子の粒子径分布を求めた。窒化ホウ素一次粒子Aの粒子径分布を
図1に示す。
た。
【0097】
[実施例1]
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(KAYAHARDGPH-103、日本化薬(株)製、水酸基当量:231g/eq.)42質量部と、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000H、エポキシ当量:290g/eq.日本化薬(株)社製)58質量部と、窒化ホウ素一次粒子A100質量部と、分散剤A(ビックケミー・ジャパン(株)製「ANTI-TERRA-U100」、不飽和アミノアミドとポリエステル酸の塩(酸価50.0mg-KOH/g、アミン価35.0mg-KOH/g))15質量部と、2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製、硬化促進剤)0.50質量部を、混合し、メチルエチルケトンで希釈することで樹脂ワニスを得た。各成分の配合量は、固形分換算値である。
別途、メチルエチルケトンを分散媒とし、窒化ホウ素一次粒子A100質量部と分散剤A15質量部の合計を分散媒に対して0.01wt%となるように調整し、ゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0098】
[実施例2]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子B100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及びゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0099】
[実施例3]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子C100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及びゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0100】
[比較例1]
実施例1において、分散剤Aの配合量を15質量部から0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを得た。別途、メチルエチルケトンを分散媒とし、窒化ホウ素一次粒子Aを分散媒に対して0.01wt%となるように調整し、ゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0101】
[比較例2]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子D100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及びゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0102】
[比較例3]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子D100質量部を用い、さらに分散剤Aの配合量を15質量部から0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを得た。別途、メチルエチルケトンを分散媒とし、窒化ホウ素一次粒子Dを分散媒に対して0.01wt%となるように調整し、ゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0103】
[比較例4]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子E100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及びゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0104】
[比較例5]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子E100質量部を用い、さらに分散剤Aの配合量を15質量部から0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを得た。別途、メチルエチルケトンを分散媒とし、窒化ホウ素一次粒子Eを分散媒に対して0.01wt%となるように調整し、ゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0105】
[比較例6]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子F100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及びゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0106】
[比較例7]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子E100質量部を用い、さらに分散剤Aの配合量を15質量部から0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを得た。別途、メチルエチルケトンを分散媒とし、窒化ホウ素一次粒子Fを分散媒に対して0.01wt%となるように調整し、ゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0107】
[比較例8]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子G100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニス及びゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0108】
[比較例9]
実施例1において、窒化ホウ素一次粒子A100質量部の代わりに窒化ホウ素一次粒子G100質量部を用い、さらに分散剤Aの配合量を15質量部から0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂ワニスを得た。別途、メチルエチルケトンを分散媒とし、窒化ホウ素一次粒子Gを分散媒に対して0.01wt%となるように調整し、ゼータ電位測定用の溶液を得た。
【0109】
〔ゼータ電位の評価方法〕
各実施例及び比較例で得られたゼータ電位測定用の溶液において、Malvern Instruments Ltd製のZetasizer Nanoを用い、電圧20V、室温(23℃±2℃)下にてゼータ電位を測定した。測定は3回行い、その平均値をゼータ電位(mV)とした。
【0110】
〔ワニス粘度評価〕
各実施例及び比較例で得られた樹脂ワニスを評価試料とし、エー・アンド・ディー(株)制音叉式粘度計SV-10Aにより、ワニス粘度を測定した。
結果を表1に示す。
【0111】
〔窒化ホウ素一次粒子の充填性評価〕
各実施例及び比較例で得られた樹脂ワニスを170℃のホットプレート上に載せ、硬化するまでの時間(ワニスゲルタイム)を測定した。ここで、硬化の基準としては、樹脂ワニスを攪拌棒により撹拌し、攪拌棒が回らなくなった時点を硬化したものとした。各樹脂ワニスについて、ワニスゲルタイムを評価することで、窒化ホウ素一次粒子の樹脂組成物への充填性を評価した。結果を表1に示す。
-評価基準-
〇:ワニスゲルタイムが測定可能であった。また、ワニスの攪拌棒への巻き付きや滑りがみられなかった。
△:ワニスゲルタイムが測定可能であった。また、ワニスの攪拌棒への巻き付きや滑りがみられた。
×:ワニスゲルタイムが測定できなかった。
【0112】