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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117182
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/06 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F15B15/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023123
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】田村 健
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081AA31
3H081CC23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造コストを抑制でき、全長を短くできるシリンダ装置を提供する。
【解決手段】シリンダ装置は、ボディ12に固定されたガイド部材18と、軸方向のみに変位するピストン部材20と、周方向及び軸方向に変位可能なピストンロッド14と、ピストン部材20の変位の一部を周方向の変位に変換する変換機構22と、を備え、変換機構22は、ガイド部材18に設けられたL字状の変位切換溝40と、ピストン部材20に設けられ、軸方向に対して傾斜した螺旋溝52と、ピストンロッド14に支持され、変位切換溝40と螺旋溝52に沿って移動するリンクピン46と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向及び軸方向に固定されたガイド部材と、
周方向に固定され軸方向に変位するピストン部材と、
周方向及び軸方向に変位するピストンロッドと、
前記ピストン部材の軸方向の一部の変位を周方向の変位に変換して前記ピストンロッドに伝える変換機構と、を備え、
前記変換機構は、前記ガイド部材と、前記ピストン部材と、前記ピストンロッドとが径方向に重なった部分に設けられており、
さらに、前記変換機構は、
前記ガイド部材と前記ピストン部材のいずれか一方に設けられ、軸方向に延びる軸方向部と周方向に延在する周方向部とがL字状に繋がった変位切換溝と、
前記ガイド部材と前記ピストン部材のいずれか他方に設けられ、前記変位切換溝と径方向に重なって配置され、軸方向に対して傾斜した螺旋溝と、
前記ピストンロッドに支持されて径方向に延び、前記変位切換溝及び前記螺旋溝に挿入されて前記変位切換溝及び前記螺旋溝に沿って移動するリンクピンと、
を有する、シリンダ装置。
【請求項2】
請求項1記載のシリンダ装置であって、前記変位切換溝の前記周方向部の角度範囲の少なくとも一部は前記螺旋溝の角度範囲と重なり、かつ、前記変位切換溝の前記軸方向部の周方向の角度は前記螺旋溝の周方向の角度範囲に含まれる、シリンダ装置。
【請求項3】
請求項2記載のシリンダ装置であって、
前記ガイド部材は、軸方向に延びるガイド孔を有し、
前記ガイド孔は前記ピストンロッド及び前記ピストン部材を収容する、シリンダ装置。
【請求項4】
請求項3記載のシリンダ装置であって、前記ピストン部材は、軸方向に貫通し、前記ピストンロッドが挿通するピストン孔を有する、シリンダ装置。
【請求項5】
請求項4記載のシリンダ装置であって、前記ガイド部材は、前記ガイド孔に前記ピストン部材を押圧可能な第3エア室を有する、シリンダ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシリンダ装置であって、
さらに、前記ピストンロッドに連結された増力ピストンを有する、シリンダ装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のシリンダ装置であって、前記ピストン部材は、非円形のピストンを有する、シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンロッドを軸方向と周方向とに変位させるシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の自動化ラインにおいて、対象物のクランプにクランプシリンダ(シリンダ装置)が用いられている。このようなシリンダ装置は、ピストンロッドの押出端での旋回動作とピストンロッドの引込端に向けた軸方向の直線動作とを利用して対象物をクランプする。
【0003】
クランプに用いられるシリンダ装置は、ピストンの軸方向の一部の変位を、周方向の変位に変換し、ピストンの軸方向の他の一部の変位を直線変位としてピストンロッドに伝える変換機構を備える。
【0004】
例えば、特許文献1の変換機構は、ピストンロッドに2つの溝を設け、それぞれの溝を摺動する2つのピンで、ピストンロッドとピストンとを連結する構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-227223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のシリンダ装置は、変換機構の構造が複雑であり、製造コストが増加するという問題がある。また、ピストンロッドに、2つの溝を軸方向に並べて配置する必要があるため、全長が長くなってしまい、小型化が難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の開示の一観点は、周方向及び軸方向に固定されたガイド部材と、周方向に固定され軸方向に変位するピストン部材と、周方向及び軸方向に変位するピストンロッドと、前記ピストン部材の軸方向の一部の変位を周方向の変位に変換して前記ピストンロッドに伝える変換機構と、を備え、前記変換機構は、前記ガイド部材と、前記ピストン部材と、前記ピストンロッドとが径方向に重なった部分に設けられており、さらに、前記変換機構は、前記ガイド部材と前記ピストン部材のいずれか一方に設けられ、軸方向に延びる軸方向部と周方向に延在する周方向部とがL字状に繋がった変位切換溝と、前記ガイド部材と前記ピストン部材のいずれか他方に設けられ、前記変位切換溝と径方向に重なって配置され、軸方向に対して傾斜した螺旋溝と、前記ピストンロッドに支持されて径方向に延び、前記変位切換溝及び前記螺旋溝に挿入されて前記変位切換溝及び前記螺旋溝に沿って移動するリンクピンと、を有する、シリンダ装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上述のシリンダ装置は、ガイド部材と、ピストン部材と、ピストンロッドとを1本のリンクピンで連結できるため、溝の数及びリンクピンの数を減らすことができ、製造コストを抑制できる。また、上述のシリンダ装置は、複数の溝を径方向に重ねて配置することで、シリンダ装置の全長を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係るシリンダ装置の斜視図である。
図2図2は、図1のシリンダ装置の断面図である。
図3図3は、図2のピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材を分解した状態で示す斜視図である。
図4図4Aは、図1のシリンダ装置の押出端での、ピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材の配置関係を示す説明図である。図4Bは、横軸にボディの周方向の位置(角度)を取り、縦軸に軸方向の位置を取って、変位切換溝と螺旋溝とリンクピンとの位置関係を示す図である。
図5図5Aは、図1のシリンダ装置の回転終了位置での断面図であり、図5B図5Aの状態における変位切換溝と螺旋溝とリンクピンとの位置関係を示す図である。
図6図6Aは、図1のシリンダ装置の引込端での断面図であり、図6B図6Aの状態における変位切換溝と螺旋溝とリンクピンとの位置関係を示す図である。
図7図7は、第2実施形態のシリンダ装置の断面図である。
図8図8は、図7のピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材を分解した状態で示す斜視図である。
図9図9Aは、図7のシリンダ装置の回転終了位置での断面図であり、図9B図7のシリンダ装置の引込端での断面図である。
図10図10Aは、第3実施形態に係るシリンダ装置の斜視図(透視図)であり、図10B図10Aのピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材の斜視図である。
図11図11は、第4実施形態に係るシリンダ装置の断面図である。
図12図12Aは、第5実施形態に係るシリンダ装置の断面図であり、図12B図12Aのロッドカバーとピストンロッドとの部分拡大断面図である。
図13図13は、図12Aのシリンダ装置の回転終了位置での断面図である。
図14図14Aは、図12Aのシリンダ装置の引込動作を説明する断面図であり、図14B図14Aのロッドカバーとピストンロッドとの部分拡大断面図である。
図15図15Aは、第6実施形態に係るシリンダ装置の断面図であり、図15B図15Aのシリンダ装置の回転終了位置での断面図である。
図16図16は、図15Aのシリンダ装置の引込動作を説明する断面図である。
図17図17は、第7実施形態に係るシリンダ装置の断面図である。
図18図18は、図17のピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材を分解した状態の斜視図である。
図19図19は、第8実施形態に係るシリンダ装置の断面図である。
図20図20は、図19のピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材を分解した状態の斜視図である。
図21図21は、第9実施形態に係るシリンダ装置の断面図である。
図22図22は、図21のピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材を分解した状態の斜視図である。
図23図23は、第10実施形態に係るシリンダ装置の断面図である。
図24図24は、図23のピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材を分解した状態の斜視図である。
図25図25は、第11実施形態に係るシリンダ装置の断面図である。
図26図26は、図25のピストンロッド、ピストン部材及びガイド部材を分解した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1に示される本実施形態に係るシリンダ装置10は、クランプシリンダとも呼ばれる。シリンダ装置10は、例えば、自動化ラインにおいて加工対象となるワークを固定するために使用される。シリンダ装置10は、ボディ12から突出したピストンロッド14と、ピストンロッド14の端部に装着されたクランプアーム15と、を備える。ピストンロッド14は、押出端(アンクランプ端)において旋回動作を行うとともに、旋回動作の後に引込端(クランプ端)に向けて直線的な変位を行う。クランプアーム15は、図1の二点鎖線に示されるアンクランプ位置と、実線で示されるクランプ位置との間で変位する。シリンダ装置10は、ピストンロッド14及びクランプアーム15の動作によって、ワークをクランプする。なお、本明細書においてピストンロッド14の延在方向は軸方向と呼ばれる。また、軸方向において、引込端に向かう方向は第1方向又はヘッド側と呼ばれ、押出端に向かう方向は第2方向又はロッド側と呼ばれる。
【0012】
図2に示されるように、シリンダ装置10は、ボディ12(シリンダチューブ)と、ピストンロッド14と、ロッドカバー16と、ガイド部材18と、ピストン部材20と、変換機構22と、を備える。
【0013】
図1に示されるように、ボディ12は、直方体状の外形形状を有する筒状の部材である。ボディ12は、例えば、金属等の材料によって形成される。ボディ12は、内部に軸方向に延びたシリンダ孔24を有する。シリンダ孔24は、ボディ12の内部に形成された空間を有する。シリンダ孔24は、軸方向に垂直な断面が円形、多角形、又は長円形等の形状を有する。
【0014】
図2に示されるように、シリンダ孔24は、第1方向の端部がボディ12の端部壁32によって閉塞されている。シリンダ孔24の第2方向の端部は、開口部24bとなっている。シリンダ孔24の開口部24bは、ロッドカバー16によって封じられている。シリンダ孔24の第1方向側には、ガイド部材18が配置されている。ガイド部材18は、ピストンロッド14の変位を案内する部材である。ガイド部材18は、後述される。
【0015】
シリンダ孔24は、ガイド部材18の第2方向に隣接して位置する第1シリンダ室26を有する。なお、本明細書において、シリンダ室は、ピストン50、50Bが配置される部屋である。第1シリンダ室26は、ピストン部材20のピストン50を収容する。第1シリンダ室26には、流体を給排する第1ポート28と第2ポート30とが開口する。第1ポート28は、ボディ12の側壁を貫通し、第1シリンダ室26の第1方向の端部(端部及びその近傍を含む)に開口する。第2ポート30は、ボディ12の側壁を貫通し、第1シリンダ室26の第2方向の端部(端部及びその近傍を含む)に開口する。第1ポート28及び第2ポート30は、それぞれに外部配管が接続される。第1ポート28及び第2ポート30は、第1シリンダ室26に流体を給排する。
【0016】
ロッドカバー16は、断面がT字状の部材であり、中心部にピストンロッド14が挿通するカバー孔16aを有する。カバー孔16aには、ロッドブッシュ16cが取り付けられている。ロッドブッシュ16cは、ピストンロッド14が挿通する筒状の部材であり、ピストンロッド14とロッドカバー16との隙間を通じた流体の流出を阻止する。カバー孔16a及びロッドブッシュ16cは、ピストンロッド14をロッドカバー16に対して回転可能かつ軸方向に変位可能に挿通させる。図1に示されるように、ロッドカバー16は、例えば、止め輪16bによってボディ12に固定される。
【0017】
図3に示されるように、ガイド部材18は円筒状の形状を有する。図2及び図3に示されるように、ガイド部材18は、止め孔18aと、ガイド孔38と、変位切換溝40と、回転規制溝42と、を有する。止め孔18aは、ガイド部材18の外周側に位置し、止めネジ36が挿入される孔である。止め孔18aは、ネジ構造を有し、止めネジ36と螺合する。止め孔18a及び止めネジ36は、ガイド部材18をボディ12に対して周方向及び軸方向に変位不能に固定する。図1に示されるように、止めネジ36は、ボディ12の側壁を貫通する固定孔34を通じて止め孔18aに取り付けられる。
【0018】
図2に示されるように、ガイド部材18の外周面18bは、ボディ12の内周面12aに当接する。ガイド孔38は、ガイド部材18の中心軸に沿ってガイド部材18を軸方向に貫通する。ガイド孔38は、ガイド部材18の内周面18cによって囲まれる。ガイド孔38は、軸方向に垂直な断面が円形であり、一定の内径を維持して軸方向に延在する。ガイド孔38の直径は、ピストン部材20のシャフト44が挿通可能な寸法を有する。
【0019】
図3に示されるように、変位切換溝40は、変換機構22の一部を構成し、側面視でL字状の溝である。変位切換溝40は、ガイド部材18の外周面18bから内周面18cまでを径方向に貫通する。変位切換溝40は、リンクピン46が挿通可能な幅を有している。変位切換溝40は、ガイド部材18の中心を挟んで、一対設けられている。一対の変位切換溝40は、周方向に180°離れて配置されている。一方の変位切換溝40には、リンクピン46の一端部46aが挿入され、他方の変位切換溝40にはリンクピン46の他端部46bが挿入される。
【0020】
各々の変位切換溝40は、軸方向に延びた軸方向部40aと、周方向に延びた周方向部40bとを有する。軸方向部40aは、ピストンロッド14の軸方向の変位を案内する溝である。軸方向部40aの軸方向の長さは、ピストンロッド14の引込ストロークの長さと同じ寸法に設定される。
【0021】
周方向部40bは、ピストンロッド14の旋回動作を案内する溝である。周方向部40bは、軸方向と垂直な周方向に延びる。ピストンロッド14の旋回動作の角度が例えば、90°の場合には、周方向部40bは周方向に90°の範囲に亘って延在する。周方向部40bの角度範囲は、必要に応じて適宜設定される。
【0022】
回転規制溝42は、内周面18cを凹状に切欠いた溝であり、軸方向に延在する。回転規制溝42は、変位切換溝40と周方向に重ならない位置に配置されている。回転規制溝42は、ピストン部材20のシャフト44に形成された突起部48を軸方向に変位可能に収容する。回転規制溝42は、突起部48と係合することで、ピストン部材20の周方向の変位を阻止する。
【0023】
ピストン部材20は、ピストン50と、シャフト44と、螺旋溝52と、ピストン孔54と、を有する。ピストン50は、円板形状を有する。図2に示されるように、ピストン50は、第1シリンダ室26に収容される。ピストン50は、外周部にパッキン50aを有する。パッキン50aは、ボディ12の内周面12aと液密及び気密に当接する。したがって、ピストン50は、第1シリンダ室26を第1方向側の第1エア室26aと、第2方向側の第2エア室26bとに気密に仕切る。ピストン50は、第1エア室26aと第2エア室26bとの圧力差によって軸方向の駆動力を発生させる。ピストン部材20は、ピストン50の駆動力により、軸方向に変位する。
【0024】
図3に示されるように、シャフト44は、ピストン50の中心部から第1方向に向けて延在する筒状の部材である。シャフト44は、ガイド部材18のガイド孔38に挿入され、ガイド部材18と径方向に重なる。シャフト44の外周面44aは、ガイド部材18の内周面18cと摺動する。シャフト44は、ガイド孔38に案内されて軸方向に変位する。シャフト44の突起部48は、シャフト44から外周側に突出した突起であり、軸方向に延びる。突起部48は、ガイド部材18の回転規制溝42に挿入され、ピストン部材20のボディ12に対する周方向の変位を阻止する。
【0025】
なお、シャフト44及び突起部48の形状は、図3の形状に限定されない。シャフト44は多角形の筒形状であってもよい。この場合には、シャフト44の多角形の稜線部分が回り止めとして機能するため、突起部48は形成されなくてもよい。
【0026】
ピストン孔54は、ピストン部材20の径方向の中心部に位置し、ピストン部材20のピストン50及びシャフト44を軸方向に貫通する。ピストン孔54は、軸方向に垂直な断面が円形に形成されている。ピストン孔54の内径は、ピストンロッド14が挿通可能な寸法を有する。図2に示されるように、ピストン孔54は、パッキン溝54aを有する。パッキン溝54aには、リング状のパッキン54bが装着される。パッキン54bは、ピストンロッド14とピストン孔54との隙間を封止し、ピストン孔54を通じた流体の漏洩を阻止する。
【0027】
図3に示されるように、螺旋溝52は、軸方向に対して傾斜して延びる溝であり、変換機構22の一部を構成する。螺旋溝52は、ピストン部材20の軸方向の変位を、ピストンロッド14の周方向の変位に変換する。螺旋溝52の軸方向の長さは、例えば、ピストン部材20のストローク長さの1/2とすることができる。螺旋溝52は、周方向に、例えば90°の角度範囲で延在する。この場合には、螺旋溝52はピストン部材20の軸方向の変位の1/2を使って、ピストンロッド14に90°の回転変位を生み出すことができる。なお、螺旋溝52の周方向の角度範囲及び軸方向の長さは上述の例に限定されない。
【0028】
螺旋溝52は、シャフト44の中心を挟んで一対設けられている。一方の螺旋溝52と他方の螺旋溝52とは、周方向に180°離れて配置される。一対の螺旋溝52にはリンクピン46が挿通する。
【0029】
図3に示されるように、ピストンロッド14は、円柱状の部材である。ピストンロッド14の第2方向側は、シリンダ装置10の出力軸としてボディ12及びロッドカバー16から第2方向に向けて突出する。ピストンロッド14の第2方向側には、図1に示されるようにクランプアーム15が取り付けられる。図2に示されるように、ピストンロッド14の第1方向側の一部は、ピストン部材20のピストン孔54に挿入される。ピストンロッド14は、ガイド部材18のガイド孔38の内部にまで延在する。すなわち、ピストンロッド14の第1方向側の一部は、ピストン部材20及びガイド部材18と径方向に重なっている。
【0030】
ピストンロッド14は、ピン孔14aを有する。ピン孔14aは、第1方向の端部寄りに位置する。ピン孔14aは、リンクピン46を軸方向と直交する径方向に保持する。リンクピン46は、ピストンロッド14と一体的に変位する。リンクピン46は、上述のように、変位切換溝40及び螺旋溝52に挿入され、変位切換溝40及び螺旋溝52に沿って摺動する。
【0031】
図4Aに示されるように、変換機構22は、変位切換溝40と、螺旋溝52とリンクピン46とを備える。ピストン部材20は、螺旋溝52の周方向の範囲(角度範囲)が、ガイド部材18の変位切換溝40の周方向部40bの周方向の範囲(角度範囲)と一致するように組み付けられる。リンクピン46は、螺旋溝52及び変位切換溝40に挿入される。
【0032】
図4Bに示されるように、螺旋溝52の周方向の範囲(角度範囲)は、周方向部40bの角度範囲と一致する。図示の場合では、周方向部40bの角度範囲と螺旋溝52の角度範囲とは、90°に設定されている。螺旋溝52の軸方向の範囲は(L1)、例えば、ピストン部材20のストローク長さ(軸方向の変位範囲)の1/2の長さとすることができる。この場合には、ピストン部材20のストローク長さの1/2がピストンロッド14の旋回動作に使用される。なお、上述の場合には、軸方向部40aの軸方向の長さL2は、ピストン部材20のストローク長さの1/2とすればよい。
【0033】
なお、螺旋溝52の周方向の角度範囲は、周方向部40bの角度範囲よりも広くてもよい。螺旋溝52の周方向の範囲が、周方向部40bの角度範囲よりも広ければ、ピストンロッド14の旋回動作に必要な回転角度を確保できる。
【0034】
また、螺旋溝52の周方向の中心位置は、周方向部40bの周方向の中心位置と一致してもよい。また、螺旋溝52の周方向の中心位置は、周方向部40bの周方向の中心位置と周方向にずれてもよい。この場合には、周方向部40bの一部は、螺旋溝52の周方向の一部と重なっていればよい。少なくとも、周方向部40bと螺旋溝52との重複する角度範囲でピストンロッド14を旋回させることができる。また、軸方向部40aは螺旋溝52の周方向の角度範囲に含まれていることが好ましい。このような構成とすることで、1本のリンクピン46であっても、ピストンロッド14を軸方向に変位させることができる。
【0035】
本実施形態のシリンダ装置10は、以上のように構成される。このシリンダ装置10は、以下のように動作する。
【0036】
図2は、シリンダ装置10の押出端位置での断面である。押出端位置では、ピストン部材20が押出端(第2方向)に位置する。押出端位置では、リンクピン46は、変位切換溝40及び螺旋溝52に対して、図4Bに示す位置にある。すなわち、リンクピン46の一端部46aは、螺旋溝52の第1方向側の端部に位置し、周方向部40bの0°に位置する。他端部46bは、他方の周方向部40bの180°の位置に位置する。なお、図4Bの横軸の角度は、ボディ12を基準とした周方向の位置を示している。シリンダ装置10の押出端位置に向けた変位は、押出ストローク又は復帰動作とも呼ばれる。復帰動作は、第1ポート28に圧力流体源を接続し、第2ポート30を排気部に接続して行われる。
【0037】
シリンダ装置10は、復帰動作の後に、ピストンロッド14が旋回動作及び引込動作(クランプ動作)を行う。ピストンロッド14の旋回動作は、第1ポート28を排気部に接続し、第2ポート30を圧力流体源に接続して行われる。図5Aに示されるように、第2ポート30から第2エア室26bに流入した流体によってピストン50が第1方向に向けて変位する。
【0038】
シャフト44は、ピストン50とともに第1方向に変位する。その結果、図5Bに示されるように、螺旋溝52の位置が第1方向に向けて変位する。リンクピン46は、螺旋溝52と変位切換溝40との交差部分の移動に追従し、周方向部40bに沿って周方向に移動する。ただし、周方向部40bは、リンクピン46の軸方向の変位を阻止する。したがって、リンクピン46は、周方向にのみ変位する。その結果、ピストンロッド14は、押出端の位置に保持されたまたま周方向に旋回動作を行う。
【0039】
ピストンロッド14の旋回動作は、リンクピン46が軸方向部40aに配置されるまで行われる。その間に、ピストン部材20は、引込動作の1/2の距離だけ、第1方向に向けて変位する。ピストンロッド14の旋回動作が終了する回転終了位置では、図示のようにリンクピン46は周方向部40bの周方向の他端に位置し、それ以上周方向に回転できない状態となる。回転終了位置では、リンクピン46は螺旋溝52の第2方向の端部に位置し、かつ、軸方向部40aの第2方向の端部に位置する。これにより、リンクピン46は、軸方向の変位が可能となる。
【0040】
引込動作は、旋回動作に引き続いて行われる。引込動作では、ピストン部材20が、回転終了位置よりもさらに第1方向に向けて変位する。
【0041】
図6Bに示されるように、ピストン部材20の第1方向の変位により、螺旋溝52が第1方向に変位する。リンクピン46は、螺旋溝52とともに、第1方向に変位する。すなわち、ピストン部材20の第1方向の変位は、螺旋溝52及びリンクピン46を介してピストンロッド14の第1方向に向けた軸方向の変位として伝達される。その結果、ピストンロッド14が引込端に向けて直線的に変位する引込動作が行われる。ピストン部材20が第1方向のストローク端部の引込端位置に到達するか、又はワークの厚みに応じた停止位置に到達すると、引込動作が完了する。引込端位置では、リンクピン46は、螺旋溝52の第2方向の端部に位置し、かつ変位切換溝40の軸方向部40aの第1方向の端部に位置する。停止位置は、ワークの厚みによって、ピストン部材20が引込端位置に到達する前に、ピストンロッド14が停止して引込動作が完了する位置である。停止位置において、リンクピン46は、ワークの厚みに応じた軸方向部40aの所定位置で停止する。以上の動作により、シリンダ装置10は、引込動作を完了する。シリンダ装置10の復帰動作は、上述の引込動作と逆の動作によって行われる。
【0042】
以上のように、本実施形態のシリンダ装置10は、変換機構22が、1本のリンクピン46と、ピストン部材20に設けられた螺旋溝52と、ガイド部材18に設けられた変位切換溝40とで済む。リンクピン46の本数が1本で済み、溝の数も減るため、変換機構22の構造が簡素化され、シリンダ装置10は、製造コストを抑制できる。また、シリンダ装置10は、螺旋溝52と変位切換溝40との2つの溝が径方向に重ねて配置されるため、従来のように螺旋溝52と変位切換溝40とを軸方向に並べる場合に比べて、全長を短縮できる。
【0043】
(第2実施形態)
図7に示すように、本実施形態のシリンダ装置10Aは、ボディ12と、ピストンロッド14と、ロッドカバー16と、ガイド部材18Aと、ピストン部材20Aと、変換機構22とを有する。本実施形態のシリンダ装置10Aは、ガイド部材18Aと、ピストン部材20Aとの軸方向の配置関係において、図1図6を参照しつつ説明したシリンダ装置10と異なっている。なお、シリンダ装置10Aの構成において、シリンダ装置10と同様の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略される。
【0044】
図示のように、ガイド部材18Aは、シリンダ孔24の第2方向側に位置し、第1シリンダ室26Aがガイド部材18Aの第1方向に隣接して位置する。ボディ12は、第1シリンダ室26Aに流体を供給するべく、第1ポート28A及び第2ポート30Aを有する。第1ポート28Aは、第1シリンダ室26Aの第1方向の端部又はその近傍に開口する。第1ポート28Aは、ボディ12の端部壁32の近くに位置する。第2ポート30Aは、第1シリンダ室26Aの第2方向の端部又はその近傍に開口する。すなわち第2ポート30Aは、ボディ12の軸方向の中央寄りに位置する。
【0045】
ピストン部材20Aは、ピストン50とシャフト44Aと、ピストン孔54とを有する。ピストン50は、第1シリンダ室26Aに配置される。シャフト44Aは、ピストン50に連結されるとともに、ピストン50から第2方向に向けて延在する。シャフト44Aは、ガイド部材18Aのガイド孔38に挿入される。シャフト44Aは、突起部48を有する。突起部48は、シャフト44Aを、ガイド部材18A及びボディ12に対して周方向に固定する。ピストン孔54は、ピストン部材20Aの中心部を軸方向に貫通する。
【0046】
ピストンロッド14及びロッドカバー16の構成は、図2を参照しつつ説明したピストンロッド14及びロッドカバー16と同様である。
【0047】
図8に示されるように、ピストンロッド14は、変換機構22の一部を構成するリンクピン46を有する。ガイド部材18Aには、変換機構22の一部を構成する変位切換溝40が形成されている。ピストン部材20Aのシャフト44Aには、変換機構22の一部を構成する螺旋溝52が形成されている。変位切換溝40と、螺旋溝52との形状及びそれらの配置関係は、図2図6を参照しつつ説明した配置関係と同様である。したがって、本実施形態のシリンダ装置10Aにおいて変換機構22は、シリンダ装置10の変換機構22と同様である。
【0048】
シリンダ装置10Aは、図7のピストン部材20Aが押出端位置から引込端位置(又は停止位置)に変位する途中で、ピストンロッド14が旋回動作を行う。図9Aに示す回転終了位置までの間、螺旋溝52の軸方向の変位により、リンクピン46の周方向の位置が変化する。図9Aの回転終了位置のピストンロッド14は、図7の押出端位置のピストンロッド14に対して90°周方向に変位(回転)する。
【0049】
その後、図9Bに示されるように、シリンダ装置10Aは、ピストンロッド14を第1方向に向けて直線的に引き込む引込動作を行う。ピストン部材20Aの第1方向に向けた変位は、螺旋溝52及びリンクピン46を介してピストンロッド14に伝えられる。図示のように、ピストン部材20Aが端部壁32に当接するか、リンクピン46が軸方向部40aの端部に到達すると引込動作が完了する。なお、ワークを挟持する場合には、ワークの厚みに応じた所定位置で、ピストン部材20Aが停止して引込動作が完了する。
【0050】
以上のように、本実施形態のシリンダ装置10Aは、変換機構22は1本のリンクピン46で構成できるため、簡素化され、組立コストを抑制できる。また、螺旋溝52と変位切換溝40との2つの溝が径方向に重ねて配置されるため、シリンダ装置10Aは全長を短縮できる。
【0051】
(第3実施形態)
図10Aに示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Bは、軸方向から見て長方形状のボディ12Bを有する。ボディ12Bは、軸方向から見て長円形状のシリンダ孔24Bを有する。シリンダ孔24Bの第2方向側の端部は、長円形状のロッドカバー16Bで塞がれている。ボディ12Bの第2方向側の端部付近には、第2ポート30が形成され、ボディ12Bの軸方向の中央付近には第1ポート28が形成されている。ボディ12Bの側壁には、ガイド部材18B(図10B参照)の軸方向の変位を防止するべく、固定孔34が形成されている。固定孔34には止めネジ36が取り付けられている。
【0052】
図10Bに示されるように、ピストンロッド14は、ロッドカバー16Bのカバー孔16aを挿通する。ピストンロッド14は、リンクピン46を有する。シリンダ装置10Bのピストンロッド14及びリンクピン46は、シリンダ装置10のピストンロッド14及びリンクピン46(図2及び図3参照)と同様に構成される。
【0053】
シリンダ装置10Bは、軸方向から見て長円形状のガイド部材18Bと長円形状のピストン部材20Bとを備える。ガイド部材18Bは、シリンダ孔24Bの第1方向側に配置される。ガイド部材18Bは、ガイド孔38と、変位切換溝40とを有する。ガイド孔38は、円形の断面形状を有し、ガイド部材18Bの中心に位置する。変位切換溝40は、側面視でL字状を有し、図4Bを参照しつつ説明した変位切換溝40と同様の形状を有する。
【0054】
ピストン部材20Bは、ピストン50Bとシャフト44とを有する。ピストン50Bは、長円形状を有し、長円形状のシリンダ孔24Bを仕切る。シャフト44は、円筒状に形成され、第2方向からガイド部材18Bのガイド孔38に挿入されている。シャフト44には、螺旋溝52が形成されている。螺旋溝52の形状は、図4Bを参照しつつ説明した螺旋溝52と同様である。
【0055】
本実施形態の変換機構22は、変位切換溝40と、螺旋溝52と、変位切換溝40及び螺旋溝52に挿入され変位切換溝40及び螺旋溝52に沿って移動するリンクピン46によって構成される。シリンダ装置10Bの変換機構22の動作は、第1実施形態のシリンダ装置10の変換機構22の動作と同様である。
【0056】
本実施形態では、ピストン部材20Bのピストン50Bが非円形で有るため、ピストン部材20Bの回転を止める突起部48(図3)と、ガイド孔38の回転規制溝42(図3)が不要となる。本実施形態のシリンダ装置10Bは、構造が簡素な変換機構22を有するため、組立コストを抑制できる。また、シリンダ装置10Bは、変位切換溝40及び螺旋溝52を径方向に重ねて配置することで、全長を短縮できる。
【0057】
(第4実施形態)
図11に示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Cは、ガイド部材18Cと、ピストン部材20Cと、を備える。ガイド部材18Cは、図2に示されるガイド部材18と同様の変位切換溝40を有する。ガイド部材18Cは、シリンダ孔24Cの第1方向側に位置し、止めネジ36によってボディ12Cに周方向及び軸方向に変位不能に固定されている。
【0058】
ガイド部材18Cは、軸方向の長さが図2のガイド部材18よりも長い。したがって、ガイド部材18Cは、軸方向に延長されたガイド孔38Cを有する。ガイド孔38Cは、ガイド孔38Cの第1方向の端部38aから変位切換溝40までの長さL1が、ピストン部材20Cの軸方向のストローク長さよりも長い寸法に設定されている。ガイド孔38Cを囲むガイド部材18Cの内周面18cは、平滑面によって形成される。ガイド部材18Cは、外周面18bにパッキン59を有する。パッキン59は、ガイド部材18Cとボディ12Cとの隙間に沿った流体の漏洩を阻止する。
【0059】
ピストン部材20Cのシャフト44Cは、軸方向に延長されている。シャフト44Cの第1方向の端部44cは、図示の押出端位置において、変位切換溝40よりも第1方向側に位置する。シャフト44Cの第1方向の端部44cの近くの外周部には、パッキン56aが取り付けられている。シャフト44Cは、パッキン56aによって、ガイド孔38Cの第1方向側の一部を液密及び気密に閉塞する。
【0060】
ピストン部材20Cは、さらに内周パッキン62を有する。内周パッキン62は、シャフト44Cの内周面44bに位置する。内周パッキン62は、ピストンロッド14とピストン孔54との隙間を通じた流体の漏洩を阻止する。シャフト44Cの第1方向のガイド孔38Cは、シャフト44Cと端部壁32との間に第3エア室56を形成する。第3エア室56は、パッキン56aと、内周パッキン62と、パッキン59とによって封止される。
【0061】
ボディ12Cは、第1ポート28と、第2ポート30とに加えて、呼吸孔58を有する。第1ポート28は、第3エア室56に連通し、第2ポート30は第2エア室26bに連通する。呼吸孔58は、第1エア室26aに連通する。呼吸孔58は、大気開放されているため、第1エア室26aは大気圧に保たれる。
【0062】
本実施形態のシリンダ装置10Cのその他の構成は、図1図6Bを参照しつつ説明したシリンダ装置10と同様である。
【0063】
本実施形態のシリンダ装置10Cは、第3エア室56の流体圧を利用してピストンロッド14及びピストン部材20Cを押出端位置に復帰させることができる。第3エア室56の容積は、第1シリンダ室26(第2エア室26b)の容積よりも小さいため、より少ない流体でシリンダ装置10Cの復帰工程を行える。したがって、本実施形態のシリンダ装置10Cは、図1のシリンダ装置10に比べて、エアの消費量を抑制でき、エネルギーの消費量を抑制できる。
【0064】
(第5実施形態)
図12Aに示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Dは、ピストンロッド14Dの引込ストロークにおいて、ピストンロッド14Dの駆動力を増加させる増力ピストン64及び増力シリンダ室66を備える。なお、シリンダ装置10Dの構成において、図1図11を参照しつつ説明したシリンダ装置10~10Cの構成と同様の構成には、同一符号を付してその詳細な説明は省略される。
【0065】
シリンダ装置10Dは、ボディ12Dと、ピストンロッド14Dと、ロッドカバー16Dと、ガイド部材18Cと、ピストン部材20Cと、変換機構22と、増力ピストン64と、増力シリンダ室66とを備える。
【0066】
ボディ12Dは、軸方向の第1方向側から、第1本体部68と、隔壁部70と、第2本体部72とを有する。第1本体部68は、内部に増力シリンダ室66を有する、筒状の部材である。第1本体部68は、増力シリンダ室66の第1方向側の端部を閉塞する端部壁68aを有する。第1本体部68の第2方向側には、隔壁部70が連結される。増力シリンダ室66の第2方向側の端部は、隔壁部70によって閉塞される。
【0067】
第1本体部68は、さらに呼吸孔74と増力流路76とを有する。呼吸孔74は、第1本体部68の第1方向の端部寄りに位置し、増力シリンダ室66の第1方向の端部に開口する。呼吸孔74は、大気開放されており、増力シリンダ室66の第1方向側の第4エア室66aの圧力を大気圧に維持する。
【0068】
増力流路76は、第1本体部68、隔壁部70、第2本体部72及びロッドカバー16Dの内部に延びる流路である。増力流路76は、第1方向の端部が増力シリンダ室66の第2方向側の端部に開口する。すなわち、増力流路76は、増力シリンダ室66の第5エア室66bに連通し、第5エア室66bにエアを給排する。
【0069】
増力ピストン64は、増力シリンダ室66に配置される。増力ピストン64は、増力シリンダ室66の内周面66cと気密に接触し、増力シリンダ室66を第1方向側の第4エア室66aと、第2方向側の第5エア室66bとに仕切る。増力ピストン64は、ピストンロッド14Dの第1方向の端部に連結されている。増力ピストン64は、第5エア室66bに流体が供給されると、第4エア室66aとの圧力差により、第1方向に向けた駆動力を発生させる。
【0070】
隔壁部70は、第1本体部68と第2本体部72との間に位置する。隔壁部70は、第1本体部68の増力シリンダ室66と、第2本体部72のシリンダ孔24Cとを仕切る。隔壁部70は、隔壁孔70aと、接続孔70bと、第1ポート28と、を有する。隔壁孔70aは、軸方向に延びる。隔壁孔70aには、ピストンロッド14Dが軸方向に変位可能に挿通する。隔壁孔70aは、パッキン70cを有する。パッキン70cは、隔壁孔70aを通じた流体の漏洩を阻止する。
【0071】
接続孔70bは、隔壁孔70aの第2方向に隣接して位置する。接続孔70bは、軸方向に延びる断面が円形の孔である。接続孔70bは、例えばガイド部材18Cのガイド孔38Cと同じ大きさの内径を有し、ガイド孔38Cの第1方向の端部に繋がる。接続孔70bは、ガイド孔38Cとともに、第3エア室56を構成する。
【0072】
第1ポート28は、第3エア室56に連通する。第1ポート28には、エアを供給する配管が接続される。第1ポート28の内側の端部は、接続孔70bを介して、第3エア室56にエアを給排する。
【0073】
第2本体部72は、軸方向に延びるシリンダ孔24Cを有する筒状の部材である。第2本体部72は、呼吸孔58を有する。本実施形態の呼吸孔58は、第1エア室26aに連通する。呼吸孔58は、大気開放されており、第1エア室26aを大気圧に保つ。
【0074】
ロッドカバー16Dは、第2本体部72の第2方向側に位置し、シリンダ孔24Cの第2方向側の端部を閉塞する。ロッドカバー16Dは、カバー孔16aと、第2ポート30Dと、接続流路80と、増力流路76の一部とを有する。カバー孔16aは、ロッドカバー16Dの中心軸に沿って延び、ロッドカバー16Dを軸方向に貫通する。カバー孔16aは、ピストンロッド14Dを軸方向に変位可能に挿通させる。
【0075】
第2ポート30Dは、ロッドカバー16Dの径方向に延びる孔であり、配管が接続可能である。第2ポート30Dは、内側にカバー孔16aの所定位置に開口する開口部30aを有する。
【0076】
接続流路80は、軸方向に延びる流路である。接続流路80の第2方向の端部は第2ポート30Dに連通する。接続流路80の第1方向の端部は、第1シリンダ室26の第2エア室26bに連通する。
【0077】
増力流路76は、ロッドカバー16Dの内部で屈曲して延びる。増力流路76はロッドカバー16Dを径方向に延び、増力流路76の第1端部76aは、カバー孔16aに接続される。増力流路76の第2端部76bは、増力シリンダ室66の第5エア室66bに開口する。増力流路76の第1端部76aは、第2ポート30Dの開口部30aよりも第1方向側に離れて位置する。
【0078】
カバー孔16aは、軸方向の所定位置に第1パッキン82aと、第2パッキン82bとを有する。第1パッキン82aは、第1シリンダ室26と増力流路76の第1端部76aとの間に位置する。第1パッキン82aは、第1シリンダ室26と増力流路76との間を液密及び気密に封止する。第2パッキン82bは、増力流路76の第1端部76aと、第2ポート30Dとの間に位置する。第2パッキン82bは、ピストンロッド14Dとカバー孔16aとの隙間を通じた流体の漏洩を阻止する。
【0079】
ガイド部材18C及びピストン部材20Cは、シリンダ孔24Cに配置される。本実施形態のガイド部材18C及びピストン部材20Cは、図11を参照しつつ説明したガイド部材18C及びピストン部材20Cと同様に構成される。ピストン部材20Cの第1方向には、第3エア室56が形成される。第3エア室56には、第1ポート28を介してエアが給排される。第3エア室56は、ピストンロッド14D及びピストン部材20Cを押出端位置に復帰させる際に流体が導入される。第3エア室56は、復帰工程の際に、ピストン部材20C及びピストンロッド14Dを変位させる。
【0080】
ピストンロッド14Dは、ロッドカバー16Dのカバー孔16aを挿通する。また、ピストンロッド14Dは、隔壁部70の隔壁孔70aを挿通する。ピストンロッド14Dの第1方向の端部は、増力シリンダ室66に挿入され、増力ピストン64に連結されている。
【0081】
ピストンロッド14Dは、図3図4Bを参照しつつ説明した変換機構22によって、旋回動作及び軸方向の変位を行う。
【0082】
ピストンロッド14Dは、図12Bに示されるように、ロッドカバー16Dに挿通する部分に、連通溝84を有する。連通溝84は、例えば、ピストンロッド14Dの周方向の全周に亘って延在する環状の溝である。図12Aに示すように、ピストンロッド14Dが押出端位置から旋回動作が終了するまでの間、連通溝84は、第2パッキン82bよりも第2方向側に位置する。連通溝84及び第2パッキン82bは、ピストンロッド14Dの旋回動作の際に、増力シリンダ室66への流体の供給を阻止する切換弁機構83を構成する。
【0083】
シリンダ装置10Dは、以下のように動作する。
【0084】
図13に示されるように、シリンダ装置10Dの引込ストロークは、第2ポート30Dに流体を供給して行われる。その際に、第1ポート28には排気部が接続される。図12Aを参照しつつ説明したように、ピストン部材20Cが第1方向に移動する。ピストン部材20Cの変位は、螺旋溝52に沿ってリンクピン46が変位することで、ピストンロッド14Dの回転変位に変換される。これにより、ピストンロッド14Dが旋回動作を行う。
【0085】
図12Bに示されるように、ピストンロッド14Dの旋回動作が終了するまでの間、連通溝84は、第2パッキン82bよりも第2方向側に位置する。この場合、第2ポート30Dと増力流路76とは、第2パッキン82bによって封止される。したがって、ピストンロッド14Dが第1方向に引き込まれる変位を行うまで、増力シリンダ室66へのエアの供給は阻止される。そのため、シリンダ装置10Dは、旋回動作において、増力ピストン64はピストンロッド14Dに増力用の駆動力を発生させない。このようなシリンダ装置10Dは、変換機構22に増力用の駆動力が加わらないため、変換機構22の摩耗を抑制できる。
【0086】
ピストンロッド14Dの旋回動作が終了すると、図14Aに示されるように、ピストンロッド14Dの軸方向の変位が開始される。ピストンロッド14Dが、第1方向に引き込まれると、連通溝84が第2パッキン82bよりも第1方向側に変位する。その結果、第2パッキン82bによる封止状態が破られ、第2ポート30Dと増力流路76とが連通溝84を通じて連通する。この場合には、増力流路76を通じて増力シリンダ室66の第5エア室66bに流体が導入され、増力ピストン64が第1方向に向けた駆動力を発生させる。増力ピストン64の駆動力が、ピストン部材20Cの駆動力に追加されることで、ピストンロッド14Dは、引込ストロークの途中で駆動力が増加する。
【0087】
なお、シリンダ装置10Dの押出ストローク(復帰動作)は、第1ポート28に流体を供給し、第2ポート30Dを排気部に接続して行われる。第3エア室56の容積は、第1シリンダ室26(第2エア室26b)の容積よりも小さいため、シリンダ装置10Dは、より少ない流体でピストンロッド14Dを押出端位置に復帰できる。
【0088】
以上のように、本実施形態のシリンダ装置10Dは、ピストンロッド14Dの引込ストロークでの駆動力を増加させることができる。
【0089】
(第6実施形態)
図15Aに示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Eは、増力ピストン64E及び増力シリンダ室66が、第1シリンダ室26の第2方向側に位置する。なお、シリンダ装置10Eの構成において、図12Aのシリンダ装置10Dと同様の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略される。
【0090】
シリンダ装置10Eは、ボディ12Eと、ピストンロッド14Eと、を有する。ボディ12Eは、ロッドカバー16Dと、第1本体部68E(隔壁部70E)と、第2本体部72Eとを有する。ロッドカバー16Dは、図12Aのロッドカバー16Dと同様である。第1本体部68Eは、ロッドカバー16Dの第1方向側に隣接して配置される。第1本体部68Eは、ロッドカバー16Dと第2本体部72Eとの間に位置する。第1本体部68Eは、内部に増力シリンダ室66を有する。増力シリンダ室66には、増力ピストン64Eが配置される。
【0091】
増力シリンダ室66は、増力ピストン64Eによって第1方向側の第4エア室66aと第2方向側の第5エア室66bとに仕切られる。第5エア室66bには、増力流路76Eが連通する。第4エア室66aには、呼吸孔67が連通する。呼吸孔67は、第4エア室66aを大気圧に保つ。増力シリンダ室66(第4エア室66a)の第1方向側は、隔壁部70Eによって閉塞されている。隔壁部70Eは、例えば第1本体部68Eと一体的に繋がる。
【0092】
隔壁部70Eは、第1本体部68Eと第2本体部72Eとの連結部分に位置する。隔壁部70Eは、第1本体部68Eの増力シリンダ室66と、第2本体部72Eの第1シリンダ室26とを液密及び気密に隔てる。隔壁部70Eは、中心部にピストンロッド14Eが挿通する隔壁孔70aを有する。
【0093】
第2本体部72Eは、第1方向の端部が端部壁68aで閉塞された筒形状を有する。第2本体部72Eは、内部にシリンダ孔24Cを有する。シリンダ孔24Cの第1方向は端部壁68aで閉塞され、シリンダ孔24Cの第2方向は隔壁部70Eで閉塞される。シリンダ孔24Cには、ガイド部材18Cが配置される。ガイド部材18Cは、シリンダ孔24Cの第1方向側に配置される。隔壁部70Eとガイド部材18Cとの間に第1シリンダ室26が形成される。
【0094】
第1シリンダ室26には、ピストン部材20Cのピストン50が配置される。第1シリンダ室26は、ピストン50によって第1エア室26aと第2エア室26bとに仕切られる。第1エア室26aは、呼吸孔58と連通し、大気圧に保たれる。第2エア室26bは、接続流路80Eを介して第2ポート30Dと連通する。接続流路80Eは、第2本体部72E、第1本体部68E及びロッドカバー16Dの内部に形成されている。
【0095】
ガイド部材18Cのガイド孔38Cの内部には、第3エア室56が形成される。第3エア室56は、第1ポート28と連通する。
【0096】
ピストンロッド14Eは、第1ロッド部14bと、第2ロッド部14cとを有する。第1ロッド部14bは、増力ピストン64Eの第1方向側に連結されている。第1ロッド部14bは、増力ピストン64Eから第1方向に向けて延在する。第2ロッド部14cは、増力ピストン64Eの第2方向側に連結されている。第2ロッド部14cは、増力ピストン64Eの第2方向に向けて延在する。
【0097】
第2ロッド部14cは、カバー孔16aを挿通する。第2ロッド部14cは、連通溝84を有する。ロッドカバー16Dは、図12Aのロッドカバー16Dと同様である。
【0098】
本実施形態のシリンダ装置10Eは、以上のように構成される。図15Aのシリンダ装置10Eは、第2ポート30Dに流体を供給し、第1ポート28を排気部に接続すると、ピストン部材20Cが引込ストロークを開始する。変換機構22は、ピストン部材20Cの第1方向に向けた変位を、ピストンロッド14Eの回転変位に変換する。その結果、図15Bに示される回転終了位置に達するまで、ピストンロッド14Eは押出端位置で旋回動作を行う。
【0099】
ピストン部材20Cは、図15Bに示される回転終了位置から、さらに第1方向に変位する。その結果、変換機構22は、ピストン部材20Cの第1方向の変位をそのままピストンロッド14Eに伝える。ピストンロッド14Eは、ピストン部材20Cとともに第1方向に向けて変位する。ピストンロッド14Eが第1方向に所定距離移動すると、連通溝84が第2パッキン82bを乗り越える。
【0100】
その結果、図16に示されるように、第2ポート30Dと増力流路76Eとが、連通溝84を介して連通する。第2ポート30Dの流体は、連通溝84及び増力流路76Eを通って増力シリンダ室66(第5エア室66b)に流入し、増力ピストン64Eに駆動力を発生させる。ピストンロッド14Eには、ピストン部材20Cの駆動力に、増力ピストン64Eの駆動力が追加される。
【0101】
以上のように、本実施形態のシリンダ装置10Eによっても、シリンダ装置10Dと同様の効果が得られる。
【0102】
(第7実施形態)
図17に示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Fは、ボディ12と、ピストンロッド14Fと、ロッドカバー16と、ガイド部材18Fと、ピストン部材20Fと、変換機構22Fと、を備える。なお、シリンダ装置10Fにおいて、図7のシリンダ装置10Aと同様の構成には、同一符号が付され、その詳細な説明は省略される。
【0103】
ボディ12は、軸方向に延びるシリンダ孔24を有する。ボディ12は、シリンダ孔24の第1方向側に第1シリンダ室26を有し、第2方向側にガイド部材18Fを有する。第1シリンダ室26には、ピストン部材20Fのピストン50が設けられている。第1シリンダ室26は、ピストン50によって第1方向側の第1エア室26aと第2方向側の第2エア室26bとに仕切られる。ボディ12は、第1エア室26aに連通する第1ポート28Aと、第2エア室26bに連通する第2ポート30Aとを有する。
【0104】
ピストンロッド14Fは、シリンダ装置10Fの中心軸に沿って軸方向に延在する。ピストンロッド14Fの第2方向の一部は、ロッドカバー16のカバー孔16aを挿通してロッドカバー16の外側(第2方向側)に突出する。ピストンロッド14Fの第1方向の一部は、ガイド部材18Fのガイド孔38に収容される。ピストンロッド14Fの外周面14dは、ガイド部材18Fの内周面18cと摺動する。ピストンロッド14Fは、ガイド部材18Fによって軸方向に移動可能に支持される。
【0105】
図18に示されるように、ピストンロッド14Fは、ピン孔14aと、ロッド孔86と、を有する。ロッド孔86は、ピストンロッド14Fの第1方向側に位置し、ピストンロッド14Fの中心に沿って軸方向に延びる。ロッド孔86は、第1方向の端部が開口する。ロッド孔86は、ピストン部材20Fのシャフト44Fを軸方向に摺動可能に収容する。ピストンロッド14Fは、ロッド孔86において、ピストン部材20Fのシャフト44Fに対して径方向の外側から重なる。
【0106】
ピン孔14aは、ピストンロッド14Fを径方向に貫通する。ピン孔14aは、ロッド孔86と重なる位置に配置される。ピン孔14aには、リンクピン46が挿通する。
【0107】
ガイド部材18Fは、ロッドカバー16に隣接して配置される。ガイド部材18Fは、筒状の部材であり、ガイド孔38と、変位切換溝40とを有する。ガイド孔38は、ガイド部材18Fの中心を軸方向に貫通する。ガイド孔38は、ピストンロッド14Fを軸方向及び周方向に摺動可能に収容する。変位切換溝40は、図3を参照しつつ説明した変位切換溝40と同様であり、軸方向に延びる軸方向部40aと、周方向に延びる周方向部40bとを有する。変位切換溝40には、リンクピン46が挿入される。ガイド部材18Fは、止めネジ36によって、ボディ12に対して軸方向及び周方向に変位不能に固定されている。
【0108】
ピストン部材20Fは、ピストン50と、シャフト44Fとを有する。ピストン50は、第1シリンダ室26に配置され、第1シリンダ室26を軸方向に移動する。シャフト44Fは、ピストン50の中心に連結されるとともに、ピストン50から第2方向に向けて軸方向に延在する。シャフト44Fは、ピストンロッド14Fのロッド孔86に収容される。シャフト44Fは、軸方向に傾斜して延びる螺旋溝52を有する。螺旋溝52には、リンクピン46が挿通する。ピストン部材20Fは、リンクピン46を介してピストンロッド14Fに連結されている。ピストン部材20Fは、図示しない回転止め部材によって、ボディ12に対して周方向に回転不能に取り付けられる。ピストン部材20Fは、ピストン50のストローク範囲において、軸方向に変位する。
【0109】
変換機構22Fは、ピストン部材20Fの螺旋溝52と、ピストンロッド14Fのリンクピン46と、ガイド部材18Fの変位切換溝40とで構成される。変換機構22Fにおいて、変位切換溝40と、螺旋溝52と、リンクピン46の周方向の位置関係は、図4Bを参照しつつ説明した通りである。
【0110】
変換機構22Fは、シャフト44Fを内周側に配置し、ピストンロッド14Fを外周側に配置した点で、図8の変換機構22と異なっている。変換機構22Fの動作は、変換機構22と同様である。すなわち、変換機構22Fは、ピストン部材20Fの軸方向の一部の変位をピストンロッド14Fの回転変位に変換し、ピストン部材20Fの軸方向の残りの変位をピストンロッド14Fの軸方向の変位として伝える。
【0111】
本実施形態のシリンダ装置10Fは、図1のシリンダ装置10と同様の効果を発揮する。
【0112】
(第8実施形態)
図19及び図20に示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Gは、ボディ12Bと、ピストンロッド14Gと、ロッドカバー16と、ガイド部材18Gと、ピストン部材20Gと、変換機構22Gとを備える。なお、本実施形態のシリンダ装置10Gにおいて、図10Aのシリンダ装置10Bと同様の構成には、同一の符号が付されて、その詳細な説明は省略される。
【0113】
本実施形態のシリンダ装置10Gでは、ピストンロッド14Gは、径方向の最も内側に位置する。ピストンロッド14Gは、ボディ12Bに対して、軸方向及び周方向に変位可能である。図20に示されるように、ピストンロッド14Gは、リンクピン46を有している。リンクピン46は、ピストンロッド14Gとピストン部材20Gとを連結する。
【0114】
ガイド部材18Gは、径方向において、ピストンロッド14Gと、ピストン部材20Gとの間に位置する。ガイド部材18Gは、円筒状に形成されており、内部にガイド孔38を有する。ガイド孔38には、ピストンロッド14Gが軸方向に摺動可能に配置される。ガイド部材18Gは、軸方向の一端が端部壁32に接合されており、ボディ12Bに対して軸方向及び周方向に変位不能に固定されている。ガイド部材18Gは、ピストン部材20Gのピストン孔88の内部に配置される。ガイド部材18Gは、L字状の変位切換溝40を有する。変位切換溝40には、リンクピン46が挿通する。リンクピン46は、変位切換溝40に沿って摺動する。
【0115】
シリンダ孔24Gは、ガイド部材18Gとボディ12Bとの間に、第1シリンダ室26Gが形成される。ピストン部材20Gは、ガイド部材18Gの外周側に位置する。ピストン部材20Gは、断面が非円形(長円形)であり、同じく断面が非円形(長円形)のシリンダ孔24Gを塞ぎつつ軸方向に変位する。ピストン部材20Gは、第1シリンダ室26Gに配置される。ピストン部材20Gは、外周面20aがボディ12Bの内周面12aに摺動可能に当接する。ピストン部材20Gは、ガイド部材18Gを通すピストン孔88を有する。ピストン部材20Gは、ピストン孔88の内周面20bがガイド部材18Gと摺動する。
【0116】
ピストン部材20Gは、外周面20aと内周面20bとに、それぞれパッキン90を有する。パッキン90を有するピストン部材20Gは、第1シリンダ室26Gを第1エア室26aと、第2エア室26bとに仕切る。第1エア室26aは、第1ポート28と連通し、第2エア室26bは第2ポート30と連通する。ピストン部材20Gは、第1エア室26aと第2エア室26bとの圧力差で軸方向に変位する。ピストン部材20Gは、軸方向に傾斜した螺旋溝52を有する。リンクピン46は、螺旋溝52に挿入され、螺旋溝52に沿って摺動する。ピストン部材20Gは、非円形であるため、ボディ12Bに対して周方向に変位不能であり、軸方向に変位可能である。
【0117】
変換機構22Gは、径方向の外側に位置する螺旋溝52と、径方向の中間に位置する変位切換溝40と、径方向の内側のピストンロッド14Gから延び出たリンクピン46とで構成される。本実施形態の変換機構22Gにおいて、リンクピン46、螺旋溝52及び変位切換溝40の配置関係は、図4Bを参照しつつ説明した配置関係と同様である。
【0118】
本実施形態のシリンダ装置10Gは、図1のシリンダ装置10と同様の効果を奏する。
【0119】
(第9実施形態)
図21及び図22に示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Hは、図19のシリンダ装置10Gと同様であるが、ピストンロッド14Hとガイド部材18Hの径方向の配置関係において、シリンダ装置10Gと異なっている。なお、シリンダ装置10Hにおいて、シリンダ装置10Gと同様の構成には、同一符号が付されてその詳細な説明は省略される。
【0120】
図21及び図22に示されるように、シリンダ装置10Hは、ピストン部材20Gが径方向の外周に位置し、ピストンロッド14Hは径方向の中間に位置し、ガイド部材18Hが径方向の内側に位置する。ピストンロッド14Hは、ガイド部材18Hを収容する、ロッド孔94を有する。ピストンロッド14Hは、ロッド孔94の内周面94aにパッキン92を有する。パッキン92は、ピストンロッド14Hとガイド部材18Hとの隙間に沿ったエアの漏洩を阻止する。
【0121】
ガイド部材18Hは、ピストンロッド14Hの内周側に位置する。ガイド部材18Hは、L字状の変位切換溝40を有する。変位切換溝40は、ピストンロッド14Hに支持されたリンクピン46の移動を案内する。ガイド部材18Hは、第1方向の端部において、ボディ12Bの端部壁32に接合されている。したがって、ガイド部材18Hはボディ12Bに対して軸方向及び周方向に変位不能に固定されている。
【0122】
ピストン部材20Gは、図20を参照しつつ説明したピストン部材20Gと同様に長円形の断面形状を有する。このピストン部材20Gは、ボディ12Bに対して回転不能である。ピストン部材20Gは、リンクピン46を案内する螺旋溝52を有する。
【0123】
本実施形態の変換機構22Hは、径方向の外周側に位置する螺旋溝52と、径方向の中間に位置するピストンロッド14H及びリンクピン46と、径方向の内周側に位置する変位切換溝40とで構成される。リンクピン46、螺旋溝52及び変位切換溝40の軸方向及び周方向の位置関係は、図4Bと同様である。
【0124】
本実施形態のシリンダ装置10Hは、図1のシリンダ装置10と同様の効果を奏する。
【0125】
(第10実施形態)
図23及び図24に示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Iは、ボディ12と、ピストンロッド14Iと、ガイド部材18Iと、ピストン部材20Iと、変換機構22Iとを備える。なお、本実施形態のシリンダ装置10Iにおいて、図1のシリンダ装置10と同様の構成には、同一の符号が付されて、その詳細な説明は省略される。
【0126】
ピストンロッド14Iは、ボディ12の外側に配置されており、ガイド部材18Iによって支持されている。ピストンロッド14Iは、ロッド孔98と、ピン孔14aとを有する。ロッド孔98は、ピストンロッド14Iの中心に位置し軸方向に延在する断面円形の孔であり、第1方向の端部が開口する。ロッド孔98は、ガイド部材18Iを収容する。ピストンロッド14Iは、ロッド孔98を通じて、ガイド部材18Iに対して軸方向及び径方向に摺動する。ピン孔14aには、リンクピン46が径方向に貫通するように取り付けられる。リンクピン46は、ガイド部材18Iの変位切換溝40に沿って摺動する。
【0127】
ガイド部材18Iは、円筒状の部材であり、ピストンロッド14Iの内周側に位置する。ガイド部材18IはL字状の変位切換溝40を有する。また、ガイド部材18Iは、その中心に軸方向に延びるガイド孔38を有する。ガイド孔38は、ガイド部材18Iを軸方向に貫通する。ガイド孔38は、ピストン部材20Iのシャフト44Iを収容する。ガイド部材18Iは、第1方向の端部が、ロッドカバー16に固定されている。したがって、ガイド部材18Iは、ボディ12に対して軸方向及び周方向に変位不能に固定されている。ガイド部材18Iのガイド孔38には、パッキン100が取り付けられている。パッキン100は、シャフト44Iとガイド孔38との隙間を通じた流体の漏洩を阻止する。
【0128】
ピストン部材20Iは、ピストン50と、シャフト44Iとを有する。ピストン50は、ボディ12の内部のシリンダ孔24に配置される。ピストン50は、シリンダ孔24に形成された第1シリンダ室26を第1エア室26aと、第2エア室26bとに仕切る。ピストン50は、第1エア室26aと第2エア室26bとの圧力差によって軸方向に変位する。シャフト44Iは、ピストン50の中心から第2方向に延在する。シャフト44Iは、ガイド部材18Iのガイド孔38に挿入されて、ガイド部材18Iの内部を軸方向に変位する。ピストン部材20Iは、シャフト44Iに周方向の変位を阻止する回止突起97を有している。回止突起97は、ガイド部材18Iのガイド孔38に設けられた、図示しない回り止め溝と係合することで、ピストン部材20Iの回転を規制する。すなわち、シャフト44Iは、ボディ12に対して周方向に回転不能である。シャフト44Iは、軸方向に対して傾いた螺旋溝52を有する。螺旋溝52は、ロッドカバー16よりも第2方向側に位置する。螺旋溝52には、リンクピン46が挿入される。
【0129】
本実施形態の変換機構22Iは、ロッドカバー16の外側に位置する。変換機構22Iは、変位切換溝40と螺旋溝52と、リンクピン46とを有するピストンロッド14Iとで構成される。変換機構22Iでは、ピストンロッド14Iが径方向の外周側に位置し、変位切換溝40が径方向の中間に位置し、螺旋溝52が径方向の最も中心側に位置する。リンクピン46、変位切換溝40及び螺旋溝52の軸方向及び周方向の位置関係は、図4Bと同様である。
【0130】
本実施形態のシリンダ装置10Iは、図1のシリンダ装置10と同様の効果を奏する。
【0131】
(第11実施形態)
図25及び図26に示されるように、本実施形態のシリンダ装置10Jは、図23のシリンダ装置10Iと同様であるが、ピストン部材20Jとガイド部材18Jの配置関係において、シリンダ装置10Iと異なっている。なお、本実施形態のシリンダ装置10Jにおいて、図23のシリンダ装置10Iと同様の構成には、同一の符号が付されて、その詳細な説明は省略される。
【0132】
ピストンロッド14Iは、図23のピストンロッド14Iと同様に構成される。なお、本実施形態のピストンロッド14Iのロッド孔98には、ピストン部材20Jのシャフト44Jが摺動可能に収容される。
【0133】
ガイド部材18Jは、径方向の位置が最も内側である。ガイド部材18Jは、中心軸に沿って軸方向に筒状(又は棒状)に延びている。ガイド部材18Jは、第1方向の端部が、ボディ12の端部壁32に接合されている。ガイド部材18Jは、ボディ12に対して軸方向及び周方向に変位不能に固定される。ガイド部材18Jの第2方向側は、ロッドカバー16よりも第2方向側に突出する。ガイド部材18Jの第2方向側の端部の近くには、変位切換溝40が設けられている。変位切換溝40には、リンクピン46が挿入される。
【0134】
ピストン部材20Jは、径方向の位置が、ガイド部材18Jの外側に位置する。ピストン部材20Jのシャフト44Jは、ピストンロッド14Iの内側である。ピストン部材20Jは、ピストン50Bと、シャフト44Jと、ピストン孔102と、を有する。ピストン50Bは、シリンダ孔24の第1シリンダ室26に配置される。シャフト44Jは、ピストン50Bから第2方向に延在する。
【0135】
シャフト44Jは、ロッドカバー16のカバー孔16aを貫通してロッドカバー16の外側に突出する。シャフト44Jの一部は、ピストンロッド14Iのロッド孔98に収容される。シャフト44Jは、ピストンロッド14Iと径方向に重なる部分に、軸方向に対して傾斜した螺旋溝52を有する。螺旋溝52には、リンクピン46が挿入される。
【0136】
ピストン孔102は、ピストン部材20Jの中心軸に位置する。ピストン孔102は、ピストン部材20Jを軸方向に貫通する。ピストン孔102には、ガイド部材18Jが配置される。ピストン部材20Jは、ピストン孔102を通じてガイド部材18Jの外周部と摺動する。ピストン孔102には、パッキン104が設けられている。パッキン104は、ガイド部材18Jとピストン部材20Jとの隙間に沿った第1エア室26aからの流体の漏洩を阻止する。
【0137】
ピストン孔102には、長円形のピストン50Bが挿通する。ピストン孔102及びピストン50Bは、非円形であるため、ピストン部材20Jのボディ12に対する回転を規制する。したがって、ピストン部材20Jは、周方向に回転せず、軸方向にのみ変位可能である。
【0138】
本実施形態の変換機構22Jは、ロッドカバー16の外側に位置する。変換機構22Jは、変位切換溝40と、螺旋溝52と、リンクピン46とを有するピストンロッド14Iとで構成される。変換機構22Jでは、ピストンロッド14Iが径方向の外周側に位置し、螺旋溝52が径方向の中間に位置し、変位切換溝40が径方向の最も内側に位置する。リンクピン46は、変位切換溝40及び螺旋溝52に挿入され、これらに沿って摺動する。リンクピン46、変位切換溝40及び螺旋溝52の軸方向及び周方向の位置関係は、図4Bと同様である。
【0139】
本実施形態のシリンダ装置10Jは、図1のシリンダ装置10と同様の効果を奏する。
【0140】
以上の開示は、以下のようにまとめられる。
【0141】
一態様は、周方向及び軸方向に固定されたガイド部材18、18A、18B、18C、18F、18G、18H、18I、18Jと、周方向に固定され軸方向に変位するピストン部材20、20A、20B、20C、20F、20G、20I、20Jと、周方向及び軸方向に変位するピストンロッド14、14D、14E、14F、14G、14H、14Iと、前記ピストン部材の軸方向の一部の変位を周方向の変位に変換して前記ピストンロッドに伝える変換機構22、22F、22G、22H、22I、22Jと、を備え、前記変換機構は、前記ガイド部材と、前記ピストン部材と、前記ピストンロッドとが径方向に重なった部分に設けられており、さらに、前記変換機構は、前記ガイド部材と前記ピストン部材のいずれか一方に設けられ、軸方向に延びる軸方向部40aと周方向に延在する周方向部40bとがL字状に繋がった変位切換溝40と、前記ガイド部材と前記ピストン部材のいずれか他方に設けられ、前記変位切換溝と径方向に重なって配置され、軸方向に対して傾斜した螺旋溝52と、前記ピストンロッドに支持されて径方向に延び、前記変位切換溝及び前記螺旋溝に挿入されて前記変位切換溝及び前記螺旋溝に沿って移動するリンクピン46と、を有する、シリンダ装置10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I、10Jである。
【0142】
上述のシリンダ装置は、ガイド部材と、ピストン部材と、ピストンロッドとを1本のリンクピンで連結できるため、リンクピンの数を減らすことで、組み立てを容易にする。また、シリンダ装置は、螺旋溝と変位切換溝との2つの溝が径方向に重ねて配置されるため、従来のように螺旋溝と変位切換溝とを軸方向に並べる場合に比べて、全長を短縮できる。
【0143】
上述のシリンダ装置であって、前記変位切換溝の前記周方向部の角度範囲の少なくとも一部は前記螺旋溝の角度範囲と重なり、かつ、前記変位切換溝の前記軸方向部の周方向の角度は前記螺旋溝の周方向の角度範囲に含まれてもよい。このシリンダ装置は、1本のリンクピンでピストンロッドに回転変位と軸方向の変位とを発生させることができ、構造を簡素化できる。
【0144】
上述のシリンダ装置であって、前記ガイド部材は、軸方向に延びるガイド孔38、38Cを有し、前記ガイド孔は前記ピストンロッド及び前記ピストン部材を収容してもよい。このシリンダ装置は、ガイド部材を第1シリンダ室内に収容することで、ボディの外部に配置される部材を減らすことができ、構造を簡素化できる。また、変位切換溝を外周側に配置することで、軸方向の負荷をより広い面積に分散させることができ、変換機構の耐久性を高めることができる。
【0145】
上述のシリンダ装置であって、前記ピストン部材は、軸方向に貫通し、前記ピストンロッドが挿通するピストン孔54を有してもよい。このシリンダ装置は、ピストンロッドの外周側の螺旋溝で回転力を発生させるため、ピストンロッドに対して、より大きな回転力を発生させることができる。
【0146】
上述のシリンダ装置であって、前記ガイド部材は、前記ガイド孔に前記ピストン部材を押圧可能な第3エア室56を有してもよい。このシリンダ装置は、押出ストローク(復帰動作)での流体の消費量を抑制できる。
【0147】
上述のシリンダ装置は、さらに、前記ピストンロッドに連結された増力ピストン64、64Eを有してもよい。このシリンダ装置は、ピストンロッドの軸方向の駆動力の増加を可能とする。また、このシリンダ装置は、増力ピストンをピストン部材に連結する場合よりも、全長を短縮できる。
【0148】
上述のシリンダ装置であって、前記ピストン部材は、非円形のピストン50Bを有してもよい。このシリンダ装置は、ピストン部材の回転を防止できる。
【0149】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0150】
10~10J…シリンダ装置
14、14D~14I…ピストンロッド
18~18C、18F~18J…ガイド部材
20~20C、20F、20G、20I、20J…ピストン部材
22、22F~22J…変換機構
38、38C…ガイド孔 40…変位切換溝
40a…軸方向部 40b…周方向部
46…リンクピン 50、50B…ピストン
52…螺旋溝 54、88、102…ピストン孔
56…第3エア室 64、64E…増力ピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26