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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117194
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20240822BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L23/48 Q
H01L21/60 321V
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023138
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 教文
(57)【要約】
【課題】半導体チップの主電極に接続されたリードフレームによる当該主電極に対する損傷を低減する。
【解決手段】リードフレーム13aは、平面視で外周を取り囲む端子側面に含まれる端子側面Pを有し、端子側面Pが電極側面を向いて出力電極12bに接合される主電極接合部13a1と、主電極接合部13a1の端子側面Pに形成され、端子側面Pから出力電極12bに対して上方に延伸する第1立ち上がり部13a2とを有する。接合部材14bは、出力電極12bと主電極接合部13a1とを接合する。この際、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、出力電極12bの中央Cから距離Dの40%以上、電極側面12b2側に離隔している。このため、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、加熱した半導体チップ12の出力電極12bからの熱の影響が低下し、第1立ち上がり部13a2の伸長が低減される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面に設けられた上面電極を有し、前記上面電極は平面視で前記上面電極の外周を取り囲む側面に含まれる第1電極側面を含み、前記第1電極側面は前記上面電極の中央から最短距離で所定の長さ、離隔している半導体チップと、
平面視で外周を取り囲む端子側面に含まれる第1端子側面を有し、前記第1端子側面が前記第1電極側面を向いて前記上面電極に接合される接合部と、前記接合部の前記第1端子側面に形成され、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸する立ち上がり部とを有するリードフレームと、
前記上面電極と前記接合部と接合する接合材と、
を備え、
前記立ち上がり部が形成された前記第1端子側面は、前記上面電極の前記中央から前記所定の長さの40%以上、前記第1電極側面側に離隔している、
半導体装置。
【請求項2】
前記所定の長さの40%は、4mmである、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記上面電極は平面視で長方形状を成し、前記第1電極側面は短辺であり、
前記リードフレームの前記接合部は平面視で長方形状を成し、前記第1端子側面は短辺である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記リードフレームの前記立ち上がり部は、側面視で、前記半導体チップに含まれる、前記上面電極の前記第1電極側面に面するチップ側面から前記半導体チップの耐電圧値に必要な絶縁距離以上、離隔して、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記リードフレームの前記立ち上がり部は、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に階段状を成して延伸している、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記リードフレームの前記立ち上がり部は、前記接合部の上面に対して所定の傾斜角度で傾斜して前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸している、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記傾斜角度は、130度以上、140度以下である、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記リードフレームの前記立ち上がり部が形成された前記第1端子側面は、前記半導体チップの外縁に設けられた配線構造部よりも前記中央側に寄って設けられている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記接合材は、前記半導体チップの前記配線構造部よりも内側に配置されている、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記リードフレームの前記立ち上がり部の前記第1端子側面に平行な幅は、前記第1端子側面の幅よりも狭い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記リードフレームの前記接合部の四隅の角部は平面視でR面取りされている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
おもて面に設けられた上面電極と平面視で前記おもて面の外周を取り囲む側面に含まれる第1電極側面とを有する半導体チップと、
平面視で外周を取り囲む端子側面に含まれる第1端子側面を含み、前記第1端子側面が前記第1電極側面を向いて前記上面電極に接合される接合部と、前記接合部の前記第1端子側面に形成され、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸する立ち上がり部とを有するリードフレームと、
前記上面電極と前記接合部と接合する接合材と、
を備え、
前記立ち上がり部は、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に階段状を成して延伸している、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、半導体チップのゲート電極にはんだを介して接合される電極接合部と電極接合部の端部から立ち上がる第1連結部と配線パターンにはんだを介して接合される基板接合部と基板接合部の端部から立ち上がる第2連結部とを含んでいる。このコネクタの電極接合部及び基板接合部の接合面はゲート電極及び配線パターンの被接合面に対して傾斜している(例えば、特許文献1を参照)。半導体チップと基板電極とを、半導体チップ及び基板電極との間を挟んで接合する上部配線のそれぞれ接合箇所から立ち上がり部分が傾斜している(例えば、特許文献2を参照)。半導体素子の上面電極に電気的に接続される金属配線板は、上面電極に接続される接合部と接合部の端部に接続されて、半導体素子の上面と離れる方向に延伸する立ち上がり部とを有する(例えば、特許文献3を参照)。
【0003】
また、所望の領域にめっき領域が形成された導電板を半導体素子にはんだにより接合することで、はんだと半導体素子との角度が鈍角になるように形成される(例えば、特許文献4を参照)。パワーモジュールは、一端が半導体チップのおもて面に接続され、他端が絶縁基板に接続される異方性な熱伝導率を備えるグラファイトブレードを含んでいる(例えば、特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/059882号
【特許文献2】国際公開第2017-183580号
【特許文献3】特開2018-098283号公報
【特許文献4】特開2003-332393号公報
【特許文献5】特開2019-071399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、半導体チップの主電極に接続されたリードフレームによる当該主電極に対する損傷が低減された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、おもて面に設けられた上面電極を有し、前記上面電極は平面視で前記上面電極の外周を取り囲む側面に含まれる第1電極側面を含み、前記第1電極側面は前記上面電極の中央から最短距離で所定の長さ、離隔している半導体チップと、平面視で外周を取り囲む端子側面に含まれる第1端子側面を有し、前記第1端子側面が前記第1電極側面を向いて前記上面電極に接合される接合部と、前記接合部の前記第1端子側面に形成され、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸する立ち上がり部とを有するリードフレームと、前記上面電極と前記接合部と接合する接合材と、を備え、前記立ち上がり部が形成された前記第1端子側面は、前記上面電極の前記中央から前記所定の長さの40%以上、前記第1電極側面側に離隔している、半導体装置が提供される。
【0007】
前記所定の長さの40%は、4mmであってよい。
前記上面電極は平面視で長方形状を成し、前記第1電極側面は短辺であり、前記リードフレームの前記接合部は平面視で長方形状を成し、前記第1端子側面は短辺であってよい。
前記リードフレームの前記立ち上がり部は、側面視で、前記半導体チップに含まれる、前記上面電極の前記第1電極側面に面するチップ側面から前記半導体チップの耐電圧値に必要な絶縁距離以上、離隔して、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸してよい。
【0008】
前記リードフレームの前記立ち上がり部は、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に階段状を成して延伸してよい。
前記リードフレームの前記立ち上がり部は、前記接合部の上面に対して所定の傾斜角度で傾斜して前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸してよい。
【0009】
前記傾斜角度は、130度以上、140度以下であってよい。
前記リードフレームの前記立ち上がり部が形成された前記第1端子側面は、前記半導体チップの外縁に設けられた配線構造部よりも前記中央側に寄って設けられてよい。
前記接合材は、前記半導体チップの前記配線構造部よりも内側に配置されてよい。
【0010】
前記リードフレームの前記立ち上がり部の前記第1端子側面に平行な幅は、前記第1端子側面の幅よりも狭くてよい。
前記リードフレームの前記接合部の四隅の角部は平面視でR面取りされてよい。
【0011】
また、本発明の一観点によれば、おもて面に設けられた上面電極と平面視で前記おもて面の外周を取り囲む側面に含まれる第1電極側面とを有する半導体チップと、平面視で外周を取り囲む端子側面に含まれる第1端子側面を含み、前記第1端子側面が前記第1電極側面を向いて前記上面電極に接合される接合部と、前記接合部の前記第1端子側面に形成され、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に延伸する立ち上がり部とを有するリードフレームと、前記上面電極と前記接合部と接合する接合材と、を備え、前記立ち上がり部は、前記第1端子側面から前記上面電極に対して上方に階段状を成して延伸している、半導体装置が提供される。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0013】
開示の技術によれば、半導体チップの主電極に接続されたリードフレームによる当該主電極に対する損傷が低減されて、半導体装置の信頼性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態の半導体装置の平面図である。
図2】第1の実施の形態の半導体装置の側面図である。
図3】第1の実施の形態の半導体装置の断面図である。
図4】第1の実施の形態の半導体装置の裏面図である。
図5】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの平面図である。
図6】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの断面図である。
図7】参考例の半導体チップに対するリードフレームの接合を説明する図である。
図8】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる別の半導体チップの出力電極を説明する図である。
図9】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる別の半導体チップに接合されるリードフレームを説明する図である。
図10】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる別の半導体チップの出力電極の中央からの距離に対する温度及び歪みを説明するグラフである。
図11】第2の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの断面図である。
図12】第3の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも上記と同様の方向性を意味する。「高位」とは、図の半導体装置1において、上側(+Z方向)の位置を表す。同様に、「低位」とは、図の半導体装置1において、下側(-Z方向)の位置を表す。「おもて面」、「上面」、「上」と「裏面」、「下面」、「下」と「側面」とは、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。また、「略同一」とは、±10%以内の範囲であればよい。また、「垂直」並びに「直交」、「平行」とは、±10°以内の範囲であればよい。
【0016】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の半導体装置1について図1図4を用いて説明する。図1は、第1の実施の形態の半導体装置の平面図であり、図2は、第1の実施の形態の半導体装置の側面図である。また、図3は、第1の実施の形態の半導体装置の断面図であり、図4は、第1の実施の形態の半導体装置の裏面図である。なお、図1は、封止部材27の図示を省略している。図2は、図1においてY-Z面をX方向に見た側面図である。図3は、図1の一点鎖線X-Xにおける断面図である。図4は、図1の半導体装置1を側壁21a,21cの中心を通る中心線で回転させた裏面側の図である。
【0017】
半導体装置1は、半導体モジュール2と冷却装置3とを含む。半導体モジュール2は、半導体ユニット10a,10b,10cと半導体ユニット10a,10b,10cを収納するケース20とを含んでいる。半導体ユニット10a,10b,10cは冷却装置3に一列に配置されている。このような冷却装置3にケース20が配置されて、半導体ユニット10a,10b,10cがケース20に収納される。ケース20に収納された半導体ユニット10a,10b,10cは封止部材27により封止されている。なお、半導体ユニット10a,10b,10cは、いずれも同様の構成を成している。半導体ユニット10a,10b,10cは、区別しない場合には、半導体ユニット10として説明する。半導体ユニット10の詳細については後述する。
【0018】
まず、ケース20は、外枠21と第1接続端子22a,22b,22cと第2接続端子23a,23b,23cとU相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cと制御端子25a,25b,25cとを含んでいる。
【0019】
外枠21は、平面視で矩形状を成しており、四方が側壁21a,21b,21c,21dにより囲まれている。なお、側壁21a,21cは、外枠21の長辺であって、側壁21b,21dは、外枠21の短辺である。また、平面視で、側壁21a,21b,21c,21dの接続箇所である角部は、必ずしも直角でなくてもよい。このような接続箇所は、例えば、図1に示されるように、R面取りされていてよい。外枠21(側壁21a,21b,21c,21d)の裏面は同一平面を成して、X-Y平面に平行を成してよい。
【0020】
外枠21のおもて面の角部に外枠21を貫通する取り付け孔21iがそれぞれ形成されている。なお、この取り付け孔21iは、外枠21のおもて面よりも下位に形成されていてよい。また、外枠21の側壁21a,21c側にさらに外枠21を貫通する取り付け孔21iがそれぞれ形成されてよい。
【0021】
外枠21は、おもて面の±Y方向の中央に側壁21a,21c(±X方向)に沿って、ユニット収納部21e,21f,21gを含んでいる。ユニット収納部21e,21f,21gは外枠21のおもて面がそれぞれ平面視で矩形状に画定され、開口されている。ユニット収納部21e,21f,21gには、半導体ユニット10a,10b,10cがそれぞれ収納される。したがって、ユニット収納部21e,21f,21gのサイズは、半導体ユニット10a,10b,10cが収納できるサイズであってよい。
【0022】
外枠21は、平面視で、おもて面の側壁21a側に側壁21a(±X方向)に沿って、第1接続端子22a,22b,22c及び第2接続端子23a,23b,23cを備えている。第1接続端子22a,22b,22cは、正極側入力端子(P端子)であってよい。また、第2接続端子23a,23b,23cは、負極側入力端子(N端子)であってよい。
【0023】
さらに、外枠21は、おもて面の側壁21c側に側壁21c(±X方向)に沿って、U相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cとをそれぞれ備えている。この際、第1接続端子22a及び第2接続端子23aとU相出力端子24aとは、ユニット収納部21eを挟んで設けられている。第1接続端子22b及び第2接続端子23bとV相出力端子24bとは、ユニット収納部21fを挟んで設けられている。第1接続端子22c及び第2接続端子23cとW相出力端子24cとは、ユニット収納部21gを挟んで設けられている。
【0024】
なお、外枠21のおもて面は、第1接続端子22a,22b,22c及び第2接続端子23a,23b,23cの開口の下方(-Z方向)に、当該開口に対向したナットが収納されている。また、同様に、外枠21のおもて面は、U相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cとの開口の下方(-Z方向)に、当該開口に対向したナットが収納されている。さらに、平面視で、外枠21のおもて面のユニット収納部21e,21f,21gと第1接続端子22a,22b,22c及び第2接続端子23a,23b,23cとの間に制御端子25a,25b,25cがそれぞれ設けられている。ここでは、制御端子25a,25b,25cは、それぞれ、ユニット収納部21e,21f,21gごとに2つに分かれて設けられてよい。
【0025】
このような外枠21は、第1接続端子22a,22b,22cと第2接続端子23a,23b,23cとU相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cと制御端子25a,25b,25cとを含み、熱可塑性樹脂を用いて射出成形により一体成形される。これにより、ケース20が構成される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂である。
【0026】
また、第1接続端子22a,22b,22cと第2接続端子23a,23b,23cとU相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cと制御端子25a,25b,25cとは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を主成分とする合金である。第1接続端子22a,22b,22cと第2接続端子23a,23b,23cとU相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cと制御端子25a,25b,25cとの表面に対して、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。めっき処理された第1接続端子22a,22b,22cと第2接続端子23a,23b,23cとU相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cと制御端子25a,25b,25cとは、耐食性が向上する。なお、以下では、第1接続端子22a,22b,22cを特に区別しない場合には、第1接続端子22と表す。第2接続端子23a,23b,23cについても同様に第2接続端子23と表し、U相出力端子24aとV相出力端子24bとW相出力端子24cとについても同様に出力端子24と表す。
【0027】
封止部材27は、熱硬化性樹脂であってよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、ポリエステル樹脂である。好ましくは、エポキシ樹脂である。さらに、封止部材27は、フィラーが添加されていてもよい。フィラーは、絶縁性で高熱伝導を有するセラミックスでよい。
【0028】
冷却装置3は、冷媒を内部に流入する流入口33aと内部を流通した冷媒を外部に流出する流出口33bとを備えている。冷却装置3、半導体ユニット10からの熱を冷媒を介して流出することで、半導体ユニット10を冷却する。ここで用いられる冷媒は、例えば、水、不凍液(エチレングリコール水溶液)、ロングライフクーラントが用いられる。また、冷却装置3は、ポンプと放熱装置(ラジエータ)とを備えてよい。ポンプは、冷却装置3の流入口33aに冷媒を流入し、流出口33bから流出した冷媒を再び流入口33aに流入して冷媒を循環させる。放熱装置は、冷却装置3から流出された冷媒を受け付けて、半導体ユニット10の熱が伝導された冷媒の熱を外部に放熱させる。
【0029】
このような冷却装置3は、天板31と、天板31の裏面に環状に接続された側壁32と、天板31に対向し、側壁32の裏面に接続された冷却底板33と、を有している。天板31は、平面視で長辺及び短辺で四方が囲まれた矩形状を成し、四隅に締結孔30eがそれぞれ形成されている。平面視で天板31の角部は、R面取りされていてよい。天板31のおもて面には、半導体ユニット10a,10b,10cが±X方向に沿って接合されている。側壁32は、天板31の裏面に環状を成して連続して形成されている。半導体ユニット10a,10b,10cが配置されている領域に対応する天板31の裏面の領域に複数の放熱フィン34が形成されている。
【0030】
冷却底板33は、平板状を成し、平面視で、天板31と同一の形状を成している。すなわち、冷却底板33は、平面視で長辺30a,30c及び短辺30b,30dで四方が囲まれた矩形状を成し、四隅に天板31に対応した締結孔30eがそれぞれ形成されている。また、冷却底板33の角部もまたR面取りされていてもよい。また、冷却底板33は、おもて面及び底面33dが平行を成している。冷却底板33の底面33dは、段差がなく平坦面であって、同一平面を成している。さらに、冷却底板33の底面33dと天板31のおもて面も、平行であってよい。冷却底板33の底面33dは、冷媒が流入し、流出される流入口33a及び流出口33bがそれぞれ形成されている。なお、冷却底板33の底面33dの流入口33a及び流出口33bを囲んで流入口33a及び流出口33bの周囲にシール領域33a1,33b1が設けられている。流入口33a及び流出口33bには、流入口33a及び流出口33bの周りを取り囲むシール領域33a1,33b1に環状のゴムパッキンを介して、配水ヘッドが取り付けられる。配水ヘッドには、ポンプに接続された配水管が取り付けられる。
【0031】
次に、半導体ユニット10について図5及び図6を用いて説明する。図5は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの平面図であり、図6は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの断面図である。なお、図5では、半導体ユニット10に対して、ケース20が含まれる第1接続端子22と第2接続端子23と出力端子24とが接続されている場合を示している。図6は、図5の一点鎖線X-Xにおける断面図である。
【0032】
半導体ユニット10は、絶縁回路基板11と半導体チップ12とリードフレーム13a,13bとを含んでいる。半導体チップ12は接合部材14aを介して絶縁回路基板11に接合されている。リードフレーム13a,13bは半導体チップ12に接合部材14bを介して接合されている。
【0033】
絶縁回路基板11は、絶縁板11aと配線板11b1,11b2,11b3と金属板11cとを含んでいる。絶縁板11a及び金属板11cは、平面視で矩形状である。また、絶縁板11a及び金属板11cは、角部がR面取り、C面取りされていてよい。金属板11cのサイズは、平面視で、絶縁板11aのサイズより小さく、絶縁板11aの内側に形成されている。
【0034】
絶縁板11aは、絶縁性を備え、熱伝導性に優れた材質により構成されている。このような絶縁板11aは、セラミックスまたは絶縁樹脂により構成されてよい。セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化シリコンである。絶縁樹脂は、例えば、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板である。
【0035】
配線板11b1,11b2,11b3は、絶縁板11aのおもて面に形成されている。配線板11b1,11b2,11b3は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を主成分とする合金である。配線板11b1,11b2,11b3の表面に対して、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。めっき処理された配線板11b1,11b2,11b3は、耐食性が向上する。
【0036】
配線板11b1は、絶縁板11aのおもて面の+X方向の辺側の半分の領域であって、-Y方向の辺から+Y方向の辺に至る全体を占めている。配線板11b2は、絶縁板11aのおもて面の-X方向側の半分を占めている。さらに、配線板11b2は、+Y方向の辺から-Y方向の辺に向かって、-Y方向の辺に対して隙間を空けて形成されている。配線板11b3は、絶縁板11aのおもて面の配線板11b1,11b2で囲まれた領域を占めている。
【0037】
このような配線板11b1,11b2,11b3は、以下のようにして絶縁板11aのおもて面に形成される。絶縁板11aのおもて面に金属板を形成し、この金属板に対してエッチング等の処理を行って所定形状の配線板11b1,11b2,11b3が得られる。または、あらかじめ金属板から切り出した配線板11b1,11b2,11b3を絶縁板11aのおもて面に圧着させてもよい。なお、配線板11b1,11b2,11b3は一例である。必要に応じて、配線板11bの個数、形状、大きさ、位置を適宜選択してもよい。
【0038】
金属板11cは、絶縁板11aの裏面に形成されている。金属板11cは、矩形状を成している。金属板11cの平面視の面積は、絶縁板11aの面積よりも小さく、配線板11b1,11b2,11b3が形成されている領域の面積よりも広い。金属板11cの角部は、R面取り、C面取りされていてもよい。金属板11cは、絶縁板11aのサイズより小さく、絶縁板11aの縁部を除いた全面に形成されている。金属板11cは、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である金属板11cの表面に対して、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。めっき処理された金属板11cは、耐食性が向上する。
【0039】
このような構成を有する絶縁回路基板11として、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板、樹脂絶縁基板を用いてもよい。絶縁回路基板11は、冷却装置3の天板31のおもて面に接合部材(図示を省略)を介して取り付けてもよい。半導体チップ12で発生した熱を配線板11b1,11b2、絶縁板11a及び金属板11cを介して、冷却装置3に伝導させて放熱することができる。
【0040】
接合部材14a,14bは、はんだ、ろう材、または、金属焼結体である。はんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫、銀、銅、亜鉛、アンチモン、インジウム、ビスマスの少なくとも2つを含む合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンで挙げられる。はんだは、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。ろう材は、例えば、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金、ジルコニウム合金、シリコン合金の少なくともいずれかを主成分とする。絶縁回路基板11は冷却装置3に、このような接合部材を用いたろう付け加工で接合してよい。金属焼結体は、例えば、銀及び銀合金を主成分とする。または、接合部材は、サーマルインターフェースマテリアルであってよい。サーマルインターフェースマテリアルは、例えば、エラストマーシート、RTV(Room Temperature Vulcanization)ゴム、ゲル、フェイズチェンジ材等を含む接着材である。このようなろう材またはサーマルインターフェースマテリアルを介して冷却装置3に取り付けることで、半導体ユニット10の放熱性を向上させることができる。
【0041】
半導体チップ12は、シリコン構成されるパワーデバイス素子を含んでいる。パワーデバイス素子は、RC(Reverse-Conducting)-IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってよい。RC-IGBTは、スイッチング素子であるIGBTとダイオード素子であるFWD(Free Wheeling Diode)との機能を合わせ持つ。
【0042】
このような半導体チップ12のおもて面は平面視で矩形状を成し、当該おもて面には制御電極12a(ゲート電極)及び上面電極である出力電極12b(主電極:ソース電極)を備えている(図7(A)も参照)。ここでは、制御電極12aが半導体チップ12のおもて面の短辺側に形成されている場合を例示している。
【0043】
制御電極12aは、半導体チップ12のおもて面の一方の短辺側に、当該一方の短辺に沿って複数設けられている。制御電極12aには制御信号が入力される。出力電極12bは、平面視で矩形状を成している。なお、出力電極12bのおもて面は、図7(A)で説明するように、平面視で、電極側面12b1,12b2,12b3,12b4で四方が囲まれている。出力電極12bにおいて、電極側面12b1,12b3は長辺に対応し、電極側面12b2,12b4は短辺に対応する。また、電極側面12b2,12b4の長手方向の位置をそれぞれ位置E1,E2で表す。
【0044】
出力電極12bは、半導体チップ12のおもて面の他方の短辺側であって、制御電極12aに隣接して設けられている。出力電極12bの中央を中央Cとすると、中央Cは、電極側面12b2,12b4(位置E1,E2)の間の真ん中に位置する。中央Cから位置E1(電極側面12b2)までの最短距離は、例えば、距離Dとする。なお、同様に、中央Cから位置E2(電極側面12b4)までの最短距離も距離Dとなる。
【0045】
出力電極12bは、さらに、電極領域12cと配線構造部12dとを含む。電極領域12cは、半導体チップ12から電流が出力される領域である。電極領域12cにはめっき層が形成されていてよく、また、電極領域12cにはゲートランナを含んでよい。配線構造部12dは、出力電極12bの上面において、電極領域12cの外周を連続して取り囲んで設けられる。また、半導体チップ12の裏面には符号を省略する入力電極(主電極:コレクタ電極)を備えている。
【0046】
なお、半導体チップ12は、RC-IGBTに代わり、一組のスイッチング素子及びダイオード素子をそれぞれに用いてもよい。スイッチング素子は、例えば、IGBT、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。スイッチング素子を含む半導体チップ12のおもて面には制御電極(ゲート電極)及び出力電極(主電極:ソース電極、または、エミッタ電極)を備えている。半導体チップ12の裏面には入力電極(主電極:ドレイン電極、または、コレクタ電極)を備えている。ダイオード素子を含む半導体チップ12は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオードをFWDとして用いてよい。このような半導体チップ12のおもて面には入力電極(主電極:アノード電極)を備えている。半導体チップ12の裏面には出力電極(主電極:カソード電極)を備えている。
【0047】
また、半導体チップ12は、RC-IGBTに代わり、炭化シリコンにより構成されるパワーMOSFETを用いてよい。パワーMOSFETのボディダイオードが、RC-IGBTのFWDと同様の機能を果たしてよい。このような半導体チップ12のおもて面には制御電極(ゲート電極)及び出力電極(主電極:ソース電極)を備えている。また、半導体チップ12の裏面には入力電極(主電極:ドレイン電極)を備えている。
【0048】
半導体チップ12は、その裏面側が所定の配線板11b2,11b1上に接合部材14aを介して接合される。接合部材14aは、はんだ、または、金属焼結体である。はんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫、銀、銅、亜鉛、アンチモン、インジウム、ビスマスの少なくとも2つを含む合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンである。はんだは、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。金属焼結体で用いられる金属は、例えば、銀及び銀合金である。
【0049】
リードフレーム13a,13bは、半導体チップ12及び配線板11b2,11b3の間を電気的に接続して配線している。半導体ユニット10は、1相分のインバータ回路を構成する装置であってよい。リードフレーム13aは、(配線板11b2上の)半導体チップ12の出力電極と12bと配線板11b3とを直接接続している。リードフレーム13bは、(配線板11b1上の)半導体チップ12の出力電極12bと配線板11b2との間を接続している。
【0050】
また、リードフレーム13aは、主電極接合部13a1と第1立ち上がり部13a2と連係部13a3と第2立ち上がり部13a4と配線接合部13a5とを含んでいる。なお、リードフレーム13aは平板状を成し、後述するように金属を主成分としている。リードフレーム13aの厚さは、例えば、0.45mm以上、0.55mm以下であって、0.5mmであってよい。リードフレーム13aの(±X方向の)厚さは全体的に略均一である。リードフレーム13aのうち、少なくとも、第1立ち上がり部13a2と連係部13a3と第2立ち上がり部13a4との±X方向の幅は略均一であってよい。配線接合部13a5の同方向の幅は、第1立ち上がり部13a2と連係部13a3と第2立ち上がり部13a4との同方向の幅と同一、または、大きくてよい。
【0051】
主電極接合部13a1は、平面視でおもて面が矩形状を成し、おもて面の四方を端子側面で順に囲まれている。4つの端子側面は、主電極接合部13a1の短辺に対応する端子側面Pを含んでいる。主電極接合部13a1は、当該端子側面Pが半導体チップ12の短辺のチップ側面を向いて出力電極12bに接合部材14bを介して接合している。
【0052】
さらに、主電極接合部13a1の端子側面Pは、出力電極12bの中央Cから距離Dの長さの40%以上、電極側面12b2側に離隔している。例えば、出力電極12bの電極側面12b2,12b4(位置E1,E2)の間の長さが20mm程度である場合には、距離Dは10mm程度となる。したがって、主電極接合部13a1の端子側面Pは、出力電極12bの中央Cから4mm以上、電極側面12b2側に離隔することになる。さらに、主電極接合部13a1の端子側面Pは、出力電極12bの配線構造部12dよりも内側(中央C側)に位置してよい。
【0053】
第1立ち上がり部13a2は、主電極接合部13a1の端子側面Pに一体的に接合されて、端子側面Pから主電極接合部13a1に対して上方に延伸している。本実施の形態では、第1立ち上がり部13a2は主電極接合部13a1に対して略直交している。第1立ち上がり部13a2の(±Z方向の)高さは、所定の長さとする。また、第1立ち上がり部13a2の主電極接合部13a1に対する接続箇所(角部)の外側は、半導体チップ12の電極側面12b2側のチップ側面から所定の距離L、離隔している。距離Lは、例えば、1.0mm以上、1.5mm以下である。これにより、リードフレーム13aと半導体チップ12との耐電圧値に必要な沿面距離が維持される。
【0054】
連係部13a3は、第1立ち上がり部13a2の+Z方向の上端部に一体的に接続されて、絶縁回路基板11のおもて面に平行を成して、平面視で、配線板11b3まで(-Y方向に)延伸している。
【0055】
第2立ち上がり部13a4は、連係部13a3の配線板11b3側(-Y方向)の端部に一体的に接続されて、配線板11b3(-Z方向)に延伸している。配線接合部13a5は、例えば、平面視で矩形状を成し、配線板11b3に接合されている。配線接合部13a5の配線板11b2側の端部と、連係部13a3の配線板11b3側(-Y方向)の端部とが第2立ち上がり部13a4により一体的に接続されている。この際、第2立ち上がり部13a4は配線接合部13a5に対して略直交している。
【0056】
なお、詳細な説明は省略するものの、リードフレーム13bも、リードフレーム13aと同様に、主電極接合部と第1立ち上がり部と連係部と第2立ち上がり部と配線接合部とを含んでよい。リードフレーム13bもまた、主電極接合部は、リードフレーム13aと同様に、主電極接合部の端子側面は、出力電極12bの中央Cから距離Dの長さの40%以上、電極側面12b2(位置E1)側に離隔している。また、リードフレーム13bでも、第1立ち上がり部は、主電極接合部の出力電極12bの短辺側の端子側面Pに接続されている。リードフレーム13bの連係部は、平面視で、第1立ち上がり部から配線板11b2に延伸している。
【0057】
このような半導体ユニット10がユニット収納部21e,21f,21gに収納される。第1接続端子22のユニット収納部21e,21f,21g内に延伸している内端部は、配線板11b1に直接接続される。第2接続端子23のユニット収納部21e,21f,21g内に延伸している内端部は、配線板11b3に直接接続される。出力端子24のユニット収納部21e,21f,21g内に延伸している内端部は、配線板11b2に直接接続される。なお、第1接続端子22と第2接続端子23と出力端子24とは、配線板11b1,11b3,11b2に対して、既述の接合部材により接合してよい。または、第1接続端子22と第2接続端子23と出力端子24は、配線板11b1,11b3,11b2に対して、例えば、レーザ溶接、超音波による溶接により直接接合されてもよい。また、ユニット収納部21e,21f,21gに収納された半導体チップ12の制御電極が制御端子25a,25b,25cとワイヤ26により直接接続される。ワイヤ26は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金により構成されてよい。
【0058】
このようなリードフレーム13a,13bは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、リードフレーム13a,13bの表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。めっき処理された金属板11cは、耐食性が向上する。
【0059】
リードフレーム13a,13bは、配線板11b3,11b2に対して、既述の接合部材(図示を省略)により接合されてよい。接合部材は、既述のはんだまたは焼結体であってよい。または、リードフレーム13a,13bは、配線板11b3,11b2に対して、例えば、レーザ溶接、超音波による溶接により直接接合されてもよい。リードフレーム13a,13bは、半導体チップ12の出力電極に接合部材14bを介して接合される。接合部材14bは、接合部材14aと同様の材質により構成されている。
【0060】
ここで、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面Pが、本実施の形態の場合よりも、半導体チップ12の出力電極12bの中央Cの近くに位置する場合について、図7を用いて説明する。図7は、参考例の半導体チップに対するリードフレームの接合を説明する図である。なお、図7(A)は、半導体チップ12の出力電極12bのおもて面の温度分布を示している。図7(B)は、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面Pが、本実施の形態の場合よりも、半導体チップ12の出力電極12bの中央Cの近くに位置する場合の断面図である。
【0061】
まず、動作中の半導体チップ12の出力電極12bのおもて面の温度分布について説明する。半導体チップ12は、出力電極12bから出力電流を出力する。この際、出力電極12bは発熱する。図7(A)は、この際の出力電極12bのおもて面において、同じ温度の点の集まりを破線で結んで温度分布を示している。ここでは、温度t1の範囲が一番高温であって、温度t2、温度t3、温度t4の範囲の順に温度が下がっていく。すなわち、半導体チップ12の出力電極12bのおもて面は中央Cの付近が最も高温となる。半導体チップ12の出力電極12bのおもて面は中央Cから配線構造部12dに向かうに連れて(中央Cから出力電極12bの外周に向かうに連れて)温度が下がっていくことが分かる。
【0062】
このような半導体チップ12の出力電極12bに配置されたリードフレーム13aについて説明する。この際、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面Pは、半導体チップ12の出力電極12bの中央Cの近傍に位置する。第1立ち上がり部13a2は、主電極接合部13a1に対して略垂直に立ち上がっている。このため、リードフレーム13aの第1立ち上がり部13a2は加熱されて垂直方向に沿って伸長する。
【0063】
また、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面Pは、例えば、出力電極12bの温度t1の範囲に位置する。リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面Pが出力電極12bで最高温の領域に位置することで、第1立ち上がり部13a2の伸長量も増加する。このため、第1立ち上がり部13a2(端子側面P)の直下の接合部材14bにクラックが発生し、場合によっては、さらにその直下の出力電極12bが損傷を受けてしまう場合がある。
【0064】
ここで、本実施の形態において、別の半導体チップを用いた場合について図8及び図9を用いて説明する。図8は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる別の半導体チップの出力電極を説明する図である。図9は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる別の半導体チップに接合されるリードフレームを説明する図である。なお、図8(A)は、別の半導体チップ12の平面図であり、図8(B)は別の半導体チップ12の出力電極12bのおもて面の温度分布を示している。図9(A),(B)は、第1立ち上がり部13a2が異なる箇所に接合されたリードフレーム13a(主電極接合部13a1)をそれぞれ示している。
【0065】
図8に示す半導体チップ12のおもて面もまた平面視で矩形状を成し、当該おもて面には、既出の制御電極12a及び出力電極12bを備えている。但し、ここでは、制御電極12aが半導体チップ12のおもて面の長辺側に形成されている。
【0066】
制御電極12aは、半導体チップ12のおもて面の一方の長辺側に、当該一方の長辺に沿って複数設けられている。出力電極12bは、平面視で矩形状を成し、おもて面の四方を電極側面12b1,12b2,12b3,12b4でそれぞれ囲まれている。出力電極12bにおいて、電極側面12b1,12b3は長辺に、電極側面12b2,12b4は短辺にそれぞれ対応する。出力電極12bは、半導体チップ12のおもて面の他方の長辺側であって、制御電極12aに隣接して設けられている。出力電極12bの中央を中央Cとすると、中央Cは、電極側面12b1,12b3の間の真ん中であって、電極側面12b2,12b4の間の真ん中に位置する。
【0067】
出力電極12bは、図7の場合と同様に、電極領域12cと配線構造部12dとをおもて面に含み、入力電極(図示を省略)を裏面に含む。図8に示す半導体チップ12も出力電極12bから出力電流を出力すると、出力電極12bが発熱する。図8(B)に示されるように、半導体チップ12の出力電極12bのおもて面でもまた、温度が、中央Cからは配線構造部12dに向かうに連れて、温度t1から、温度t2、温度t3、温度t4と下がっていく。
【0068】
このため、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の第1立ち上がり部13a2が接続される端子側面は、出力電極12bの中央Cからできる限り離れていることを要する。また、第1立ち上がり部13a2は、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の短辺側または長辺側の端子側面に接続される。なお、図9(A)では、第1立ち上がり部13a2を主電極接合部13a1の端子側面P1(図9(A))、端子側面P2(図9(B))にそれぞれ接続している場合を例示している。
【0069】
次に、図6及び図8の場合における、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面P(第1立ち上がり部13a2の接続箇所)の半導体チップ12の出力電極12bのおもて面の中央Cからの距離に応じた温度並びに歪みについて、図10を用いて説明する。図10は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる別の半導体チップの出力電極の中央からの距離に対する温度及び歪みを説明するグラフである。
【0070】
なお、図10(A)は、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面P(第1立ち上がり部13a2の接続箇所)の半導体チップ12の出力電極12bの中央Cからの距離に応じた出力電極12bの温度を表すグラフである。横軸は、半導体チップ12の出力電極12bの中央Cから最短距離の電極側面までの距離に対する割合(%)を、縦軸はその位置での出力電極12bのおもて面の温度をそれぞれ示している。但し、温度T2~T6は温度T1を基準として、5℃ずつ上昇している。
【0071】
また、図10(B)は、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面P(第1立ち上がり部13a2の接続箇所)の半導体チップ12の出力電極12bの中央Cからの距離に応じた出力電極12bの歪みを表すグラフである。横軸は、図10(A)と同様の距離に対する割合(%)を、縦軸はその位置での出力電極12bのおもて面の歪み(%)をそれぞれ示している。但し、歪みD2~D6は、歪みD1を基準として、0.02%ずつ上昇している。
【0072】
また、図10(A),(B)のグラフの凡例について、〇(白丸)は、図8の半導体チップ12の出力電力が出力電力P1である場合を、●(黒丸)は、図8の半導体チップ12の出力電力が出力電力P1よりも大きい出力電力P2である場合をそれぞれ示している。残りの凡例は、図6の半導体チップ12の場合を示している。
【0073】
まず、図10(A)によれば、おおよそ、半導体チップ12の出力電極12bの中央Cから離れるに連れて温度が低下している。また、図10(B)によれば、いずれの場合も半導体チップ12の出力電極12bの中央Cから離れるに連れて歪みが低下している。これは温度の低下に応じて、第1立ち上がり部13a2の伸長量も低下し、その結果、第1立ち上がり部13a2(主電極接合部13a1の端子側面P)の直下の出力電極12bに対する歪みが低下したことが考えられる。図10の結果を鑑みると、半導体チップ12の出力電極12bの中央Cからの距離が40%以上となると温度並びに歪みの十分な低下が認められる。
【0074】
上記の半導体装置1は、半導体チップ12とリードフレーム13aと接合部材14bとを備えている。半導体チップ12は、おもて面に設けられた出力電極12bを有し、出力電極12bは平面視で出力電極12bの外周を取り囲む電極側面12b1,12b2,12b3,12b4に含まれる電極側面12b2を含み、電極側面12b2は出力電極の中央から最短距離で距離D、離隔している。リードフレーム13aは、平面視で外周を取り囲む端子側面に含まれる端子側面Pを有し、端子側面Pが電極側面12b2を向いて出力電極12bに接合される主電極接合部13a1と、第1立ち上がり部13a2の端子側面Pに形成され、端子側面Pから出力電極12bに対して上方に延伸する第1立ち上がり部13a2とを有する。接合部材14bは、出力電極12bと主電極接合部13a1とを接合する。この際、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、出力電極12bの中央Cから距離Dの40%以上、電極側面12b2側に離隔している。このため、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、加熱した半導体チップ12の出力電極12bからの熱の影響が低下し、第1立ち上がり部13a2の伸長が低減される。これにより、第1立ち上がり部13a2(主電極接合部13a1の端子側面P)の直下の接合部材14b並びに半導体チップ12の出力電極12bに対する応力が低減し、接合部材14b並びに半導体チップ12の出力電極12bに対する損傷の発生も低減される。したがって、半導体装置1の信頼性の低下が抑制される。
【0075】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態の半導体装置は、図示を省略するものの、第1の実施の形態の半導体装置1と同様の構成を成している。但し、半導体ユニット10に含まれるリードフレーム13a,13bが異なっている。以下では、このような半導体ユニット10について図11を用いて説明する。図11は、第2の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの断面図である。なお、図11は、図5の一点鎖線X-Xにおける断面図に対応する。
【0076】
図11に示される半導体ユニット10のリードフレーム13aでは、第1立ち上がり部13a2が主電極接合部13a1に対して傾斜して延伸している。なお、この際の傾斜角度は角度αとする。
【0077】
既述の通り、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面Pに接続された第1立ち上がり部13a2は、半導体チップ12の発熱した出力電極12bから加熱されて伸長する。第2の実施の形態では、第1立ち上がり部13a2は傾斜しているため、第1立ち上がり部13a2の伸長方向も出力電極12bに対して傾斜する。このため、付加された応力が、出力電極12bの端子側面Pに対して、+Y方向及び-Z方向にそれぞれ分解される。この際、第1立ち上がり部13a2(端子側面P)の直下の接合部材14b並びに出力電極12bには、-Z方向の応力が付加される。したがって、第1立ち上がり部13a2は傾斜することで、出力電極12bに(-Z方向に)付加される応力を低減することができる。
【0078】
出力電極12bに対する第1立ち上がり部13a2の伸長による応力を低減するために、角度αはより大きいことが望まれる。しかしながら、角度αが大きすぎる場合には、リードフレーム13aの±Y方向の全体の長さが長くなってしまう。これは、半導体装置1のサイズの増大に繋がる。また、角度αが大きすぎる場合には、第1立ち上がり部13a2が、半導体チップ12の電極側面12b2側のチップ側面に接近してしまうおそれがある。第1の実施の形態で説明したように、第1立ち上がり部13a2は半導体チップ12の電極側面12b2側のチップ側面から距離L、離隔することを要する。このため、リードフレーム13aの±Y方向の全体の長さが増加しない程度であって、沿面距離が維持されるように、例えば、角度αは、130度以上、140度以下であってよい。
【0079】
第1立ち上がり部13a2は主電極接合部13a1に対する接続箇所が傾斜していればよい。このため、第1立ち上がり部13a2は必ずしも主電極接合部13a1と連係部13a3とを平坦に接続しなくてもよい。そこで、第1立ち上がり部13a2は主電極接合部13a1に対して、例えば、140°以上傾斜して、途中で屈曲して連係部13a3に延伸してもよい。
【0080】
このような第2の実施の形態では、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、出力電極12bの中央Cから距離Dの40%以上、電極側面12b2側に離隔している。このため、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、加熱した半導体チップ12の出力電極12bからの熱の影響が低下し、第1立ち上がり部13a2の伸長が低減される。これにより、第1立ち上がり部13a2(主電極接合部13a1の端子側面P)の直下の接合部材14b並びに半導体チップ12の出力電極12bに対する応力が低減する。さらに、第1立ち上がり部13a2は傾斜することで、出力電極12bに付加される応力を低減することができる。このため、第1の実施の形態よりも、接合部材14b並びに半導体チップ12の出力電極12bに対する損傷の発生も低減される。したがって、半導体装置1の信頼性の低下が抑制される。
【0081】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態の半導体装置も、図示を省略するものの、第1の実施の形態の半導体装置1と同様の構成を成している。但し、半導体ユニット10に含まれるリードフレーム13a,13bが異なっている。以下では、このような半導体ユニット10について図12を用いて説明する。図12は、第3の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの断面図である。なお、図12は、図5の一点鎖線X-Xにおける断面図に対応する。
【0082】
図12に示される半導体ユニット10のリードフレーム13aでは、第1立ち上がり部13a2が図6の第1立ち上がり部13a2よりも高さが短くなっている。このような第1立ち上がり部13a2の上端部と第2立ち上がり部13a4の上端部とを接続する連係部13a3が段差を成している。
【0083】
既述の通り、リードフレーム13aの主電極接合部13a1の端子側面Pに接続された第1立ち上がり部13a2は、半導体チップ12の発熱した出力電極12bから加熱されて、伸長する。第3の実施の形態では、第1立ち上がり部13a2は高さが低くなっており、図6の場合よりも体積が減少している。第1立ち上がり部13a2は体積の減少に伴い、加熱による伸長量も減少する。したがって、加熱された第1立ち上がり部13a2の伸長量が減少することで、出力電極12bに付加される応力を低減することができる。
【0084】
また、この際、連係部13a3が段差を成すことで、半導体チップ12の電極側面12b2側のチップ側面に接近してしまうおそれがある。第1の実施の形態で説明したように、第1立ち上がり部13a2並びに連係部13a3は半導体チップ12の電極側面12b2側のチップ側面から距離L、離隔させることを要する。第1立ち上がり部13a2の高さは、できる限り低いことが望ましいため、第1立ち上がり部13a2は、半導体チップ12の電極側面12b2側のチップ側面から距離Lが維持できる高さであってよい。
【0085】
また、連係部13a3は、半導体チップ12の電極側面12b2側のチップ側面からの距離Lを維持しつつ、第1立ち上がり部13a2と第2立ち上がり部13a4とを接続すればよい。図12の連係部13a3の段差は一例であって、段差の個数、高さはこの場合に限らない。また、連係部13a3は必ずしも段差を構成しなくてもよい。例えば、連係部13a3は、第1立ち上がり部13a2の上端部と第2立ち上がり部13a4の上端部とを平坦を成して接続してもよい。
【0086】
このような第3の実施の形態では、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、出力電極12bの中央Cから距離Dの40%以上、電極側面12b2側に離隔している。このため、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pは、加熱した半導体チップ12の出力電極12bからの熱の影響が低下し、第1立ち上がり部13a2の伸長が低減される。これにより、第1立ち上がり部13a2(主電極接合部13a1の端子側面P)の直下の接合部材14b並びに半導体チップ12の出力電極12bに対する応力が低減する。さらに、第1立ち上がり部13a2は高さが低く構成されることで、出力電極12bに付加される応力を低減することができる。このため、第1の実施の形態よりも、接合部材14b並びに半導体チップ12の出力電極12bに対する損傷の発生も低減される。したがって、半導体装置1の信頼性の低下が抑制される。
【0087】
なお、第2,第3の実施の形態では、第1の実施の形態に対して適用している場合を説明している。第2,第3の実施の形態は、第1立ち上がり部13a2が形成された端子側面Pが、出力電極12bの中央Cから距離Dの40%以上、電極側面12b2側に離隔していない場合にも適用できる。この場合でも、出力電極12bに付加される応力を低減することができ、半導体装置1の信頼性の低下が抑制される。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体装置
2 半導体モジュール
3 冷却装置
10,10a,10b,10c 半導体ユニット
11 絶縁回路基板
11a 絶縁板
11b1,11b2,11b3 配線板
11c 金属板
12 半導体チップ
12a 制御電極
12b 出力電極(主電極・出力電極)
12b1,12b2,12b3,12b4 電極側面
12c 電極領域
12d 配線構造部
13a,13b リードフレーム
13a1 主電極接合部
13a2 第1立ち上がり部
13a3 連係部
13a4 第2立ち上がり部
13a5 配線接合部
14a,14b 接合部材
20 ケース
21 外枠
21a,21b,21c,21d 側壁
21e,21f,21g ユニット収納部
21i 取り付け孔
22,22a,22b,22c 第1接続端子
23,23a,23b,23c 第2接続端子
24 出力端子
24a U相出力端子
24b V相出力端子
24c W相出力端子
25a,25b,25c 制御端子
26 ワイヤ
27 封止部材
30a,30c 長辺
30b,30d 短辺
30e 締結孔
31 天板
32 側壁
33 冷却底板
33a 流入口
33a1,33b1 シール領域
33b 流出口
33d 底面
34 放熱フィン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12