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特開2024-1172結合ペプチドを選択し検出するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001172
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】結合ペプチドを選択し検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20231226BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20231226BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231226BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20231226BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20231226BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20231226BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K1/13
C07K1/14
C40B40/10
C12N15/10 Z
C07K16/00
G01N33/53 M
G01N33/536 D
C12Q1/04
C12Q1/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173416
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2021559044の分割
【原出願日】2020-03-31
(31)【優先権主張番号】62/828,040
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】アフシャール,セピデー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】標的に結合するペプチドを選択し、検出し、および/または濃縮するための方法を提供する。
【解決手段】標的への結合ペプチドを検出し、又は選択するための方法であって、少なくとも1つの検出可能物質に結合したmRNA-DNA-ペプチド複合体を検出し、又は選択することを含む、方法である。前記検出可能物質が、フルオロフォアであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的への結合ペプチドを検出し、または選択するための方法であって、少なくとも1つの検出可能物質に結合したmRNA-DNA-ペプチド複合体を検出し、または選択することを含む、方法。
【請求項2】
前記検出可能物質が、フルオロフォアである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フルオロフォアが、有機色素、生物学的フルオロフォア、または量子ドットである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出可能物質が、Alexa Fluorである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出可能物質が、ピューロマイシンリンカーにコンジュゲートされている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出可能物質が、タグである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記タグが、ペプチドタグである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タグが、FLAG(登録商標)タグである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記タグが、蛍光分子によって検出される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光分子が、蛍光ペプチドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光分子が、蛍光抗体である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記標的が、ソーティングを可能にする材料上に固定化されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ソーティングを可能にする材料が、ビーズである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記標的が、ペプチド、タンパク質、核酸、糖、脂質、哺乳動物細胞、または哺乳動物細胞抽出物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記標的が、ペプチドまたはタンパク質である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結合ペプチドが、少なくとも1つの非天然アミノ酸を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記結合ペプチドが、前記検出可能物質によって検出され、または選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記結合ペプチドが、FACS、フローサイトメトリー、ELISA、分光光度法、蛍光分光法、または顕微鏡法によって検出され、または選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記結合ペプチドが、フローサイトメトリーによって検出される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記結合ペプチドが、FACSによって選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記結合ペプチドが、検出され、選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記結合ペプチドが、フローサイトメトリーによって検出される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記結合ペプチドが、FACSによって選択される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、
a)少なくとも1つの検出可能物質をmRNAライブラリに組み込んで、mRNA-検出可能物質の複合体を産生し、
b)前記mRNA-検出可能物質の複合体を翻訳して、mRNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を産生し、次いで
c)前記mRNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を逆転写して、mRNA-DNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を得ること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記mRNA-DNA-ペプチド-検出可能物質の複合体が、フローサイトメトリーによって検出される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記mRNA-DNA-ペプチド-検出可能物質の複合体が、FACSによって選択される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、テンプレートDNAライブラリを転写して、mRNAライブラリを得ることをさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
標的に結合していないmRNA-DNA-ペプチド複合体を除去することをさらに含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
標的からmRNA-DNA-ペプチド複合体を除去することをさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記mRNA-DNA-ペプチド複合体が、熱によって除去される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記除去されたmRNA-DNA-ペプチド複合体のDNAをPCRによって増幅することをさらに含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記DNAを転写して、mRNAライブラリを得ることをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記結合ペプチドのアミノ酸配列を決定することをさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記結合ペプチドの核酸配列を決定することをさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項に記載の方法によって検出され、または選択される、結合ペプチド。
【請求項36】
少なくとも1つの検出可能物質に結合した、mRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項37】
前記検出可能物質が、フルオロフォアである、請求項36に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項38】
前記フルオロフォアが、有機色素、生物学的フルオロフォア、または量子ドットである、請求項37に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項39】
前記検出可能物質が、Alexa Fluorである、請求項36~38のいずれか一項に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項40】
前記検出可能物質が、ピューロマイシンリンカーにコンジュゲートされている、請求項36~39のいずれか一項に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項41】
前記検出可能物質が、タグである、請求項36に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項42】
前記タグが、天然または非天然アミノ酸を含む、請求項41に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項43】
前記タグが、FLAG(商標)タグである、請求項41または42に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項44】
前記タグが、蛍光分子によって検出される、請求項41~43のいずれか一項に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項45】
前記蛍光分子が、フルオロフォアに結合したペプチドまたは抗体である、請求項44に記載のmRNA-DNA-ペプチド複合体。
【請求項46】
請求項36~45のいずれか一項に記載の1つより多いmRNA-DNA-ペプチド複合体を含む、ライブラリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、mRNAディスプレイ技術の分野のものである。より特定すると、本発明は、細胞発現または可溶性ペプチドに対してペプチドを、そして所望の機能特性を有するペプチドを、選択し、検出し、および/または濃縮するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メッセンジャーRNA(mRNA)ディスプレイは、可溶性ペプチドおよび可溶性タンパク質に対する選択技術である。(Szostak R.et al.,RNA-peptide fusions for the in vitro selection of peptides and proteins.Proc.Natl.Acad.Sci.94,12297-12302(1997))。メッセンジャーRNAディスプレイは、天然および非天然アミノ酸を含み得る高度に多様なペプチドライブラリの構築を可能にする。非天然アミノ酸の組み込みは、アンバーコドンのサプレッションおよび修飾tRNAの利用(非天然アミノ酸のtRNAへの化学的コンジュゲーション)を含む様々なアプローチによって、またはフレキシザイムと呼ばれる人工リボザイムで作られた高度に可動性のtRNAアミノアシル化酵素によって可能になる。(Niwa N.et al.,A flexizyme that selectively charges amino acids activated by a water-friendly leaving group.Bioorganic&Med.Chem.Letters 19(14),3892-3894(2009))。
【0003】
mRNAディスプレイを用いてペプチドを選択するプロセスは、伝統的に、DNAのバリアントプールからmRNAを転写すること、その3’末端でピューロマイシンにコンジュゲートされている短いDNAリンカーにmRNAバリアントをアニールさせることを含む(Ishizawa T.et al.,TRAP Display:A High-Speed Selection Method for the Generation of Functional Polypeptides.J.Am.Chem.Soc.135(14),5433-5440(2013))。これにより、mRNA:DNAリンカー-ピューロマイシンライブラリが作製される。翻訳は、細菌もしくはウサギ網状赤血球溶解物またはPure Express(登録商標)を添加することによって開始される。
【0004】
翻訳の間、リボソームは、各mRNAに沿って移動し、mRNA中に保存されている遺伝学的情報をペプチド配列に翻訳する。リボソームがペプチド配列の終結における操作されたTAG終止コドンに遭遇すると、それらは終結因子1の非存在下で失速し、ピューロマイシンがリボソーム部位Aに入ることを可能にする。その結果、ピューロマイシンはポリペプチド成長鎖とmRNAとの間に共有結合を作る。翻訳は停止し、ピューロマイシンに融合したDNAリンカーにハイブリダイズしたmRNAはここでペプチドに連結される。次いで、mRNAはcDNAに逆転写されて、PCR増幅を可能にし、選択の間の非特異的結合が低減した安定なDNA:RNA二重鎖を生成する。ライブラリは目的の標的に対して選択され、非特異的ペプチドは洗い流され、結合体は溶出される。選択効率は、定量的PCR(qPCR)によってモニターされる。次世代シーケンシングが、複数ラウンドのシーケンスの後に濃縮されるペプチド配列を決定するために使用される。
【0005】
mRNAライブラリの選択は、可溶性ペプチドに対する強く特異的な結合体を生成したが、mRNAディスプレイは、細胞発現標的に対する選択に適合性でない。したがって、タンパク質またはタンパク質アナログなどの細胞発現標的に対して選択する方法の必要性が依然として存在する。さらに、大部分の従来の方法は、qPCRを使用して、効率を決定するためのインプット分子に対するアウトプットの比率(回収割合)を決定する。しかしながら、選択されたペプチドは、特異的および非特異的の両方の結合体を含む。したがって、特異的結合体のみを選択する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、細胞発現および可溶性のペプチドまたはペプチドアナログに対してmRNAディスプレイライブラリを選択する方法を提供する。本発明はまた、効率決定のより正確な尺度となる、各選択ラウンドにおける標的特異的ペプチドの濃縮を定量的にモニターする手段を提供する。加えて、本発明の選択条件は、可溶性および細胞発現標的に対する選択のためにリアルタイムで得られるデータに基づいて変更され得る。さらに、本発明は、細胞発現および組換えタンパク質に対して標的特異的ペプチドを選択するためにFACSを組み込むことを可能にし、機能選択(細胞ベースのアッセイにおいて所望の機能を有するペプチドを選択すること)を可能にし、細胞内にインターナライズするペプチドを同定する能力を与える。
【0007】
ピューロマイシンは、ピューロマイシン-DNAリンカーを得るために、短いDNAリンカーに結合する。次いで、フルオロフォアは、ピューロマイシン-DNAリンカーの5’末端に融合され、得られるDNAリンカーは、その3’末端でピューロマイシンに、その5’末端でフルオロフォアに融合される。その結果、ライブラリ中の各mRNA-DNA-ペプチド分子は、DNAリンカーにアニールすると自動的にフルオロフォアでタグ付けされ、これによりFACSおよびフローサイトメトリーの、mRNAディスプレイプラットフォームとの統合が可能になる。同様のアプローチで、タグに対する特異性を有する蛍光ペプチド、抗体、または他の蛍光分子がmRNA-DNA-ペプチド分子に結合するように、タグ(FLAG(商標)タグなど)をmRNA-DNA-ペプチド複合体に組み込んでもよく、これによりFACSおよびフローサイトメトリーの統合が可能になる。
【0008】
FACSおよびフローサイトメトリーのこの統合は、各選択ラウンドにおける標的特異的ペプチドの濃縮を定量的にモニターする手段を提供するが、従来の方法は、インプット分子に対するアウトプットの比率(回収割合)を決定するためにqPCRを使用する。本発明の方法は、qPCR回収割合決定を上回る利点を提供し、後者ついては、各選択ラウンドの間に、特異的および非特異的の両方の結合体が選択される。したがって、qPCR回収割合決定を使用した結果、各選択ラウンドにおいて特異的および非特異的の両方の結合体が測定される。しかしながら、フローサイトメトリーおよびFACSによる濃縮および選択により、大部分が特異的結合体の選択が可能になる。
【0009】
本発明の方法はまた、リアルタイムで得られるデータに基づいて選択条件を変更することができるので有利である。さらに、このアプローチは、細胞発現および組換えタンパク質に対して標的特異的ペプチドを選択するためにFACSを組み込むことを可能にし、機能選択を可能にし、細胞内にインターナライズするペプチドを同定する能力を与える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明は、標的への結合ペプチドを検出し、または選択するための方法を提供し、ここで、前記方法は、少なくとも1つの検出可能物質に結合したmRNA-DNA-ペプチド複合体を検出し、または選択することを含む。実施態様では、検出可能物質はフルオロフォアである。特定の実施態様では、フルオロフォアは、有機色素、生物学的フルオロフォア、または量子ドットである。特定の実施態様では、検出可能物質は、Alexa Fluorである。いくつかの実施態様では、検出可能物質は、ピューロマイシンリンカーにコンジュゲートされている。
【0011】
本発明はまた、標的への結合ペプチドを検出し、または選択するための方法を提供し、ここで、前記方法は、少なくとも1つの検出可能物質に結合したmRNA-DNA-ペプチド複合体を検出し、または選択することを含み、そして、ここで、検出可能物質は、タグである。実施態様では、タグは、天然または非天然のアミノ酸を含む。実施態様では、タグは、ペプチドタグである。特定の実施態様では、ペプチドタグは、FLAG(登録商標)タグである。実施態様では、タグは、蛍光分子によって検出される。特定の実施態様では、タグは、蛍光ペプチドによって検出される。別の特定の実施態様では、タグは、蛍光抗体によって検出される。
【0012】
実施態様では、本発明の方法は、ソーティングを可能にする材料上に固定化されている標的を含む。特定の実施態様では、ソーティングを可能にする材料は、ビーズである。実施態様では、標的は、ペプチド、タンパク質、核酸、糖、脂質、哺乳動物細胞、または哺乳動物細胞抽出物である。特定の実施態様では、標的は、ペプチドまたはタンパク質である。
【0013】
実施態様では、本発明の方法は、少なくとも1つの非天然アミノ酸を含む結合ペプチドを含む。
【0014】
別の実施態様では、本発明の方法の結合ペプチドは、検出可能物質によって検出され、または選択される。いくつかのそのような実施態様では、結合ペプチドは、フローサイトメトリーまたはFACSによって検出され、または選択される。他のそのような実施態様では、結合ペプチドは、ELISA、分光光度法、蛍光分光法、または顕微鏡法によって検出され、または選択される。好ましい実施態様では、結合ペプチドは、フローサイトメトリーによって検出される。別の好ましい実施態様では、結合ペプチドは、FACSによって選択される。実施態様では、結合ペプチドは、検出され、選択される。いくつかのそのような実施態様では、結合ペプチドは、フローサイトメトリーによって検出され、結合ペプチドは、FACSによって選択される。
【0015】
実施態様では、本発明の方法は、少なくとも1つの検出可能物質をmRNAライブラリに組み込んで、mRNA-検出可能物質の複合体を産生することを含む。さらなる実施態様では、本発明の方法は、mRNA-検出可能物質の複合体を翻訳して、mRNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を産生することを含む。さらなる実施態様では、本発明の方法は、mRNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を逆転写して、mRNA-DNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を得ることを含む。特定の実施態様では、本発明の方法は、少なくとも1つの検出可能物質をmRNAライブラリに組み込んで、mRNA-検出可能物質の複合体を産生し、mRNA-検出可能物質の複合体を翻訳して、mRNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を産生し、mRNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を逆転写して、mRNA-DNA-ペプチド-検出可能物質の複合体を得ることを含む。実施態様では、mRNA-DNA-ペプチド-検出可能物質の複合体は、フローサイトメトリーによって検出される。別の実施態様では、mRNA-DNA-ペプチド-検出可能物質の複合体は、FACSによって選択される。
【0016】
実施態様では、本発明の方法は、テンプレートDNAライブラリを転写して、mRNAライブラリを得ることを含む。
【0017】
実施態様では、本発明の方法は、標的に結合していないmRNA-DNA-ペプチド複合体を除去することをさらに含む。
【0018】
実施態様では、本発明の方法は、標的からmRNA-DNA-ペプチド複合体を除去することを含む。特定の実施態様では、mRNA-DNA-ペプチド複合体は、酸または熱を加えることによって除去される。特定の実施態様では、mRNA-DNA-ペプチド複合体は、熱によって除去される。実施態様では、方法は、除去されたmRNA-DNA-ペプチド複合体のDNAをPCRによって増幅することをさらに含む。実施態様では、方法は、増幅されたDNAを転写して、mRNAライブラリを得ることをさらに含む。
【0019】
実施態様では、本発明の方法は、結合ペプチドのアミノ酸配列を決定することを含む。実施態様では、本発明の方法は、結合ペプチドの核酸配列を決定することをさらに含む。
【0020】
実施態様では、本発明は、本発明の方法によって検出され、または選択される結合ペプチドを提供する。
【0021】
本発明はまた、少なくとも1つの検出可能物質に結合したmRNA-DNA-ペプチド複合体を提供する。実施態様では、本発明は、少なくとも1つの検出可能物質に結合したmRNA-DNA-ペプチド複合体のライブラリを提供する。実施態様では、検出可能物質は、フルオロフォアである。実施態様では、フルオロフォアは、有機色素、生物学的フルオロフォア、または量子ドットである。特定の実施態様では、検出可能物質は、Alexa Fluorである。実施態様では、検出可能物質は、ピューロマイシンリンカーにコンジュゲートされている。別の実施態様では、検出可能物質は、タグである。いくつかのそのような実施態様では、タグは、天然または非天然アミノ酸を含む。実施態様では、タグは、ペプチドタグである。いくつかのそのような実施態様では、タグは、FLAG(登録商標)タグである。実施態様では、タグは、蛍光分子によって検出される。特定の実施態様では、蛍光分子は、フルオロフォアに結合したペプチドまたは抗体である。
【0022】
「ペプチド」には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、および抗体融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。「ペプチド」は、ポリペプチド、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、および抗体融合タンパク質と互換的に使用され得る。本明細書で使用される「結合ペプチド」は、標的に結合するペプチド(ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、および抗体融合タンパク質を含む)を指す。
【0023】
本明細書で使用される「リンカー」は、翻訳産物に結合することができる試薬を指す。リンカーには、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ピューロマイシン、およびピューロマイシンアナログが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、リンカーは、その3’末端でピューロマイシンまたはピューロマイシンアナログなどのアミノヌクレオシドに融合したオリゴヌクレオチドである。
【0024】
本明細書で使用される「標的」は、翻訳産物と相互作用することができる分子を指す。標的は、結合ペプチドに結合する能力を有するペプチド、タンパク質、核酸(DNAもしくはRNA)、糖、脂質、哺乳動物細胞、哺乳動物細胞抽出物、または別の分子であり得る。標的は、精製(部分精製を含む)、細胞膜中への挿入、ファージ上のディスプレイ、酵母上のディスプレイ、バキュロウイルス上のディスプレイ、または細胞上のディスプレイをされ得る。標的はまた、ナノディスク(Nano disc)、アンフィポール(Amphipol)、またはリポソーム上に提示される哺乳動物細胞発現タンパク質であり得る。ナノディスクおよびアンフィポールは、膜結合タンパク質を安定化するために使用される。
【0025】
DNAリンカーに結合した(組み込まれた)フルオロフォア、またはmRNA-DNA-ペプチド複合体に組み込まれたタグは、各々、mRNA-DNA-ペプチド複合体に組み込まれる「検出可能物質」の例である。「結合する」および「組み込む」(およびそれらの派生語)は、検出可能物質を含む分子または他のそのような構造に関係する場合、本明細書で互換的に使用され得る。
【0026】
当業者は、例えば、FLAG(登録商標)タグが、ペプチド配列DYKDDDKによって与えられることを認識することができる。FLAG(登録商標)タグに加えて、本発明の方法において使用され得る他のペプチドタグの例には、HAタグ、Hisタグ、c-mycタグ、およびSタグが含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
「翻訳産物」は、mRNA翻訳の産物を指す。好ましくは、翻訳産物は、標的に結合することができるペプチドである。
【0028】
本明細書で使用される「選択」およびその派生語は、ライブラリ中の他の分子から特定の分子を実質的に単離することを指す。複数の選択ラウンドの後、所望の表現型を有する分子がライブラリにおいて濃縮されることが期待される。
【0029】
本明細書で使用される「天然アミノ酸」は、標準的な翻訳において使用されるαアミノカルボン酸(または置換αアミノカルボン酸)である20種類のアミノ酸を指す。これには、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、プラリン(praline)(Pro)、トリプトファン(Trp)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、グリシン(Gly)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、チロシン(Tyr)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、およびグルタミン酸酸(Glu)が含まれる。
【0030】
本明細書で使用される「非天然アミノ酸」は、一般に、天然の翻訳の間に使用される20種類の天然アミノ酸とは構造が異なるアミノ酸を指す。非天然アミノ酸は、修飾官能基を有する天然に生じるアミノ酸を含み得る。これには、D-アミノ酸、N-メチルアミノ酸、α-メチルアミノ酸、N-アシルアミノ酸、B(ベータ)-アミノ酸、Y(ガンマ)-アミノ酸、およびO(デルタ)-アミノ酸を含むがこれらに限定されない、すべての非天然アミノ酸または人工アミノ酸が含まれる。デルタアミノ酸は、その側鎖構造が一部で化学的に変化/修飾されている天然アミノ酸、またはアミノ酸骨格上のアミノ基もしくはカルボキシル基が置換されている構造を有する誘導体である。非天然アミノ酸が導入されている、または本明細書で「非天然ペプチド」というプチドには、これらの種々の非天然アミノ酸を構成要素として有するポリマーが含まれる。非天然ペプチドは、部分的にまたは完全に非天然アミノ酸から構成され得る。したがって、非天然ペプチドは、その構造が標準的なアミド結合と異なる主鎖を有し得る。
【0031】
本明細書で使用される「ライブラリ」は、複数の核酸、翻訳産物、産物/リンカー/mRNA複合体、および翻訳産物/リンカー/mRNA-cDNA複合体分子などの複数の分子の群を指す。ライブラリの多様性は、異なる遺伝子配列として表され得る。DNAまたはRNAライブラリは、ペプチドライブラリをコードするDNAライブラリまたはRNAライブラリを指す。
【実施例0032】
実施例:mRNA-DNA-ペプチド複合体の標的への結合の検出
mRNA-DNA-ペプチド検出可能複合体においてそのmRNAに結合したペプチド(本明細書で「ペプチドA」という)を使用して、ペプチドのその標的(本明細書で「標的A」という)への結合を検出するためにフローサイトメトリーを利用し得るかどうかを決定する。標的Aは、AVIタグ(ビオチンリガーゼ(BirA)酵素によるインビボでのその部位特異的ビオチン化を促進するために目的のペプチドに組換え的に融合されるタグ)に融合した組換えタンパク質であり得る。
【0033】
各ペプチドをコードするメッセンジャーRNAを、フルオロフォア(例えば、Alexa Fluor 647)コンジュゲートピューロマイシンリンカーにアニールさせる。次いで、PDPSを使用してインビトロ翻訳(IVT)を開始し、mRNAを逆転写し、mRNA-DNA-ペプチドA複合体を得る。mRNA-DNA-ペプチドA複合体を、ビオチン化標的A-Aviタグに添加して、結合させる。ストレプトアビジンでコーティングされたビーズをIVTミックス(標的A-Aviタグを含む)に添加し、mRNA-DNA-ペプチド複合体に結合したビオチン化標的Aとのストレプトアビジンでコーティングされたビーズの複合体をプルダウンし、洗浄し、フローサイトメトリーを行う前にFACSバッファー中で希釈する。アミノ酸およびアミノアシルtRNAシンテターゼ(ARS)を欠くインビトロ転写翻訳ミックス(IVTミックス)[IVT(-)]と混合したストレプトアビジンビーズを陰性対照として使用して、フローサイトメトリーによって観察される結合が、標的A-Aviタグ結合ペプチドに特異的であることを確実にする。
【0034】
本質的に本実施例において上記した手順に従って、その標的(標的A)へのmRNA-DNA-ペプチド複合体の強い結合が検出されることが予想される。
【0035】
本質的に本実施例において上記した手順に従って、その標的(標的A)へのmRNA-DNA-ペプチド複合体の強い結合が検出された。
【0036】
実施例:mRNAライブラリ選択の間の標的特異的濃縮
フローサイトメトリーを、標的特異的ペプチドの濃縮を検出することによる選択をモニターするために使用し得るかどうかを決定するために、ストレプトアビジンビーズにコンジュゲートされた組換え標的A-Aviに対する選択ラウンドを調べることができる。
【0037】
翻訳を開始し、C末端操作されたシステイン残基との安定なチオエーテル結合を作製するために、クロロアセチルフェニルアラニンを使用する。選択を、qPCRによって回収パーセントを決定することによってモニターする。非特異的なストレプトアビジン結合体を排除するために、ストレプトアビジンビーズに対するネガティブ選択を各ラウンドに組み込む。回収パーセントの増加は、後のラウンドにおいて最も顕著になると予想され、同定される標的A結合体の集団における濃縮を示唆する。
【0038】
次いで、後のラウンドからのペプチド配列を、Illumina(登録商標)次世代シーケンシングを使用して決定する。高頻度の少数のペプチドは、それらの特定のペプチドの濃縮を実証し得る。観察される回収パーセントの増加が非特異的結合体の選択に起因し得るかどうかを決定するために、後のラウンドからのペプチド配列を前のラウンドからのペプチド配列と比較する。非特異的結合体は、qPCR方法を使用して後のラウンドで濃縮されることが予想される。これらの非特異的結合体は、1つまたは2つのアミノ酸で構成される短縮された配列を有するペプチドを含み得る。
【0039】
本質的に上記の手順に従って、高頻度の少数のペプチドは、それらの特定のペプチドの濃縮を示した。後のラウンドからのペプチド配列の前のラウンドとの比較により、高度に濃縮されたペプチドが、1つまたは2つのアミノ酸で構成される短縮された配列であることが明らかになった。大部分の場合、選択ラウンドが増加するに従って、非特異的結合体が後のラウンドで濃縮される。qPCRは、アウトプットDNA分子の数を無差別に定量し、したがって、この方法を使用して真のペプチドと非特異的ペプチドとを差別化することはできない。したがって、特異的結合体の選択を改善するために、qPCR以外の手段を用いるべきである。
【0040】
異なる選択ラウンドからの標的A結合ペプチドの濃縮を追跡するために、フローサイトメトリーを使用する。異なるラウンドのアウトプットからのDNAを単離し、PCRによって増幅して、フルオロフォアコンジュゲートピューロマイシンリンカーを有する各ペプチドプールを再構成し、フローサイトメトリーによる標的A-AVIへの各プールの結合を評価する。ストレプトアビジン+IVT(-)サンプルを、ゲーティングのためにそして陰性対照として使用する。qPCRによる回収パーセントの増加が予想されるにもかかわらず、フローサイトメトリーによる異なるラウンドからの結合の増加は、存在するとしても、最小であると予想される。これは、部分的には、フローサイトメトリーから回収される非特異的結合体の選択の低減に起因し得る。
【0041】
本質的に上記の手順に従って、qPCRによる回収パーセントの増加は、後のラウンドが標的をずっと強く結合するはずであることを示唆する。しかしながら、フローサイトメトリーによる標的へのペプチドプールの特異的結合は観察されなかった。フローサイトメトリーによる標的へのペプチドプールの結合の欠如は、後の選択ラウンドにおける短縮された非特異的ペプチドの濃縮を裏付ける。
【0042】
実施例:mRNAライブラリから標的特異的結合体を単離するためのFACSの使用
標的A-AVIに対してスクリーニングされたライブラリをFACSによってソーティングし得るかどうかを決定するために、後のラウンドのアウトプットからのDNAを、Alexa Flour 647などのフルオロフォアに融合したピューロマイシンリンカーを使用して転写および翻訳し、フローサイトメトリーを行って、結合を検出する。ゲーティングは、ストレプトアビジンビーズと複合体形成した標的A-AVIの周囲であり、低い割合のペプチドが標的Aに結合することが予想される(ソーティング前プール)。陽性集団をフローサイトメトリーによってソーティングし、ソーティングされたラウンドからのペプチドプールの、ペプチドA-AVIへの結合を、フローサイトメトリーによって評価する。結果が、ソーティング前プールと比較して、ソーティングされたプールの結合の有意な増加を示すことが予想される。結果がまた、FACSによる選択が、伝統的なmRNA選択方法の使用と比較して、標的A結合ペプチドのより大きな濃縮をもたらすこと、およびFACSによる選択が、バックグラウンド結合体を排除し、特異的ペプチドを単離するための効率的な方法であることを実証することが予想される。
【0043】
本質的に上記の手順に従って、低い割合のペプチドが標的Aに結合した(ソーティング前プール)。陽性集団をフローサイトメトリーによってソーティングし、ソーティングされたラウンドからのペプチドプールの、標的A-AVIへの結合を、フローサイトメトリーによって評価した。結果は、ソーティング前プールと比較して、ソーティングされたプールの結合の有意な増加を示した。結果はまた、FACSによる選択が、伝統的な回収パーセント方法の使用と比較して、標的A特異的結合ペプチドのより大きな濃縮をもたらすこと、およびFACSによる選択が、バックグラウンド結合体を排除し、特異的ペプチドを単離するための効率的な方法であることを実証した。
【0044】
回収パーセントによる選択が、特異的および非特異的の両方の結合体の濃縮をもたらし得るかどうかをさらに決定するために、ソーティングされたラウンドのペプチド配列を、対応するソーティングされていないラウンドのペプチド配列と比較する。ソーティングされたラウンドの最高頻度の配列のいくつかは、ソーティングされていないラウンドとは異なることが予想される。加えて、特異的ペプチドの頻度は、FACSによるソーティングの後に増加することが予想される。これは、修飾ピューロマイシンリンカーを使用したFACSによるmRNAディスプレイライブラリの選択が、強い結合親和性および特異性を有するペプチドの高度に効率的な単離をもたらすことを示唆する。
【0045】
本質的に上記の手順に従って、ソーティングされたラウンドからのペプチドの最高頻度の配列のいくつかは、ソーティングされていないラウンドとは異なる。特異的ペプチドの頻度は、FACSによるソーティングの後に増加した。これは、修飾ピューロマイシンリンカーを使用したFACSによるmRNAディスプレイライブラリの選択が、強い結合親和性および特異性を有するペプチドの高度に効率的な単離をもたらすことを示唆する。
【0046】
実施例:細胞発現ペプチドの検出および選択
従来のmRNAディスプレイ選択方法では、システムに固有の高いノイズによって非特異的ペプチドの選択がもたらされるため、細胞発現ペプチドを効率的に検出することはできない。組換えヘテロ二量体細胞発現タンパク質(本明細書で「タンパク質II」という;ビオチン化;ストレプトアビジンビーズに結合)に対してPDPSを使用して4回の選択ラウンドを完了する。ストレプトアビジンビーズを使用して、ペプチドのタンパク質IIとの複合体をプルダウンし、選択を、各ラウンドにおける回収パーセントを決定することによってモニターする。回収パーセントの有意な増加がラウンド4で観察され(表1)、したがって、部分的に、より強い結合体の単離に好都合になるように標的の濃度を低下させることによって、選択の厳密性が増加した。
【0047】
【表1】
【0048】
細胞発現タンパク質を、本発明の方法による標的として使用し得るかどうかを決定するために、フローサイトメトリーを、組換えまたは細胞発現のいずれかのタンパク質IIに対して使用して、選択の間のタンパク質II結合体の濃縮をモニターする。ラウンド2~5のアウトプットからのDNAを転写し、修飾ピューロマイシンリンカーにアニールさせ、翻訳して、各ラウンドについてフルオロフォアライブラリを構成する。各mRNA-DNA-ペプチドプールの組換えまたは細胞発現タンパク質IIへの結合を、フローサイトメトリーによって検出する。
【0049】
本質的に上記の手順に従って、フローサイトメトリーによって検出される、ラウンド2~ラウンド5のアウトプットは、組換えおよび細胞発現の両方のタンパク質IIに強く結合した(表2)。これらのデータは、本発明の方法を、組換えおよび細胞発現の両方のペプチドを選択するために使用することができることを実証する。
【0050】
【表2】
【0051】
次いで、ラウンド2のアウトプットからのDNAを、FACSを使用したタンパク質II結合体のソーティングのために使用する。組換え型のタンパク質を最初の選択ラウンドにおいて使用するので、標的の両方の型(組換えまたは細胞発現)に結合する大環状分子を単離するようにCHO細胞上で発現したタンパク質IIについてソーティングを行う。FACSによるソーティングがタンパク質II結合体の濃縮をもたらすかどうかを決定するために、ソーティング前およびソーティング後のペプチドプールのタンパク質IIへの結合を検討する。結果は、ソーティング後にフローサイトメトリーによって決定される特異的結合体の集団の濃縮を示す(ソーティング後の40%と比較して、ソーティング前の4%の結合体)。タンパク質IIの発現を欠く親CHO細胞へのソーティングされたプールの結合は最小であった。ラウンド2(ソーティングされた)ペプチドの次世代シーケンシングにより、ソーティング前および後の選択ラウンド(従来のmRNAディスプレイ選択方法によって行った)において検出可能なレベルでその配列が存在しなかった、新たなファミリーが出現したことが明らかになった。
【0052】
ラウンド5と比較して、ラウンド2(ソーティングされた)プールからの最も濃縮されたペプチドの結合および機能活性がどうかを決定するために、ラウンド2(ソーティングされた)プールから同定されたペプチドを化学合成し、細胞ベースの機能アッセイにおいて試験して、タンパク質IIのそのリガンドとの結合が、ソーティングされたペプチドによってブロックされ得るかどうかを決定する。ラウンド2(ソーティングされた)プール中に存在するペプチドが、タンパク質IIのそのリガンドとの相互作用を阻害することを、データが実証することが予想される。これらの結果は、初期の選択ラウンドにおけるFACSソーティングが、複数の選択ラウンドを行うことに起因して後のラウンドにおいてライブラリから枯渇させられ得る機能活性を有するペプチドの単離および同定をもたらすことを示す。
【0053】
本質的に上記の手順に従って、ラウンド2(ソーティングされた)プール中に存在するペプチドは、タンパク質IIのそのリガンドとの相互作用を阻害した。
【0054】
実施例:フルオロフォアにコンジュゲートされたDNAリンカーの設計および最適化
フルオロフォアを、ピューロマイシンリンカーの5’末端にコンジュゲート(結合)させて、フローサイトメトリーによるmRNA-DNA-ペプチド複合体の検出を可能にする。NHS Esterリンカーを使用して直接、または変動する長さのスペーサーを使用してのいずれかで、フルオロフォアをその5’末端でオリゴにコンジュゲートさせる。結合は、例えば、複数のヘキサエチレングリコールスペーサーを介した短いオリゴリンカーの3’末端へのピューロマイシンの共有結合によって生じ得る。複数回貫通膜タンパク質(GPCRおよびイオンチャネル)が標的である場合、またはペプチドがタンパク質の空洞または溝に結合している場合、スペーサーの長さを増加させることが最も有効であると考えられる。例えば、HEK細胞の細胞表面上に発現する、複数回貫通細胞発現タンパク質(本明細書で「タンパク質III」という)複合体へのmRNA-DNA-ペプチドの結合は、スペーサー長が増加するに従ってフローサイトメトリーによってより良く検出される(表3)。これは、リンカー長の増加に伴うフルオロフォアの接近可能性の増強に起因し得る。しかしながら、表3におけるデータはまた、フローサイトメトリーによる検出のためにスペーサーが必要とされない可能性があることを実証する。
【0055】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【外国語明細書】