(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117206
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】硬化膜製造装置及び硬化膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 1/04 20060101AFI20240822BHJP
B29C 35/10 20060101ALI20240822BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240822BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240822BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20240822BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240822BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20240822BHJP
B32B 37/10 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B05C1/04
B29C35/10
B05D7/00 A
B05D3/06 102Z
B05D3/12 C
B05D1/36 Z
B05C1/08
B32B37/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023161
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】大本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲顕
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F100
4F203
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC80
4D075AC88
4D075BB18Z
4D075BB24Z
4D075BB42Z
4D075BB53Z
4D075BB54Z
4D075BB57Z
4D075CA02
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075DA04
4D075DC24
4D075EA05
4D075EA21
4F040AA22
4F040AB04
4F040AC01
4F100AJ04
4F100AJ04A
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK02
4F100AK02A
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CC00
4F100CC00B
4F100EJ37
4F100EJ37A
4F100EJ42
4F100EJ53
4F100EJ53B
4F100EJ86
4F100EJ93
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JB12
4F100JB12B
4F100JB14
4F100JB14B
4F203AA44
4F203AC05
4F203AD05
4F203AD08
4F203AG01
4F203AM32
4F203AR07
4F203AR11
4F203AR12
4F203DA12
4F203DB02
4F203DC07
4F203DF24
4F203DH16
4F203DM12
4F203DN06
(57)【要約】
【課題】 長尺帯状のフィルムを搬送しながら硬化膜を形成するにあたって、フィルムの搬送不良を防止できる硬化膜製造装置を提供する。
【解決手段】 本発明の硬化膜製造装置Aは、長尺帯状のフィルム7を搬送する搬送装置6と、前記搬送されるフィルム7に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤を塗工して未硬化塗膜8を形成する塗工装置12と、前記未硬化塗膜8に活性エネルギー線を照射して前記未硬化塗膜8を硬化させて硬化膜9を形成する照射装置3と、を有し、前記照射装置3が、前記フィルム7の搬送方向に間隔を開けて複数設けられており、前記硬化膜9の幅方向両端部を少なくとも押圧する押さえロール5が、前記複数の照射装置3から選ばれる隣同士の1組の照射装置3の間に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状のフィルムを搬送する搬送装置と、
前記搬送されるフィルムに活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤を塗工して未硬化塗膜を形成する塗工装置と、
前記未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して前記未硬化塗膜を硬化させて硬化膜を形成する照射装置と、を有し、
前記照射装置が、前記フィルムの搬送方向に間隔を開けて複数設けられており、
前記硬化膜の幅方向両端部を少なくとも押圧する押さえロールが、前記複数の照射装置から選ばれる隣同士の1組の照射装置の間に設けられている、硬化膜製造装置。
【請求項2】
前記隣同士の1組の照射装置の一方が、前記フィルムの搬送方向の最も上流側に配置された第1照射装置であり、もう一方が、前記第1照射装置の隣に配置された第2照射装置である、請求項1に記載の硬化膜製造装置。
【請求項3】
前記押さえロールが、前記フィルムの搬送方向に間隔を開けて複数設けられている、請求項1または2に記載の硬化膜製造装置。
【請求項4】
前記押さえロールが、前記硬化膜の幅方向全体を押圧する、請求項1または2に記載の硬化膜製造装置。
【請求項5】
前記塗工装置が、前記フィルムの幅方向両端部を除いて前記フィルムに前記塗工剤を塗工する、請求項1または2に記載の硬化膜製造装置。
【請求項6】
前記押さえロールの軸長方向両縁が、前記フィルムの幅方向両縁に一致し又は前記フィルムの幅方向両縁から外方へ延出されている、請求項1または2に記載の硬化膜製造装置。
【請求項7】
前記押さえロールの前記硬化膜に対する押し込み量が、3mm以上である、請求項1または2に記載の硬化膜製造装置。
【請求項8】
前記第1照射装置による活性エネルギー線照射箇所から前記第1照射装置の下流側に設けられた前記押さえロールに到達するまでの前記フィルムの搬送時間が5秒以下となるように、前記搬送装置が前記フィルムを搬送する、請求項2に記載の硬化膜製造装置。
【請求項9】
前記塗工装置と前記第1照射装置の間に、前記未硬化塗膜に風を吹き付ける送風装置が設けられている、請求項2に記載の硬化膜製造装置。
【請求項10】
前記送風装置が、前記第1照射装置による活性エネルギー線照射箇所を含んで風を吹き付ける、請求項9に記載の硬化膜製造装置。
【請求項11】
搬送されるフィルムに活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤を塗工して未硬化塗膜を形成する工程、
前記未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して前記未硬化塗膜を硬化させて硬化膜を形成する工程、を有し、
前記活性エネルギー線を照射する工程において、前記フィルムの搬送方向において間隔を開けて設けられた複数の照射装置によって順に活性エネルギー線を照射し、前記活性エネルギー線を最初に照射して硬化膜を形成した後で且つ次の活性エネルギー線を照射する前に、押さえロールを用いて、前記硬化膜の少なくとも幅方向両端部に押圧力を付加する、硬化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む硬化膜をフィルムに形成する硬化膜製造装置及び硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムに硬化膜を形成する方法として、フィルムの表面に紫外線硬化型樹脂を含む塗工剤を塗工して未硬化塗膜を形成した後、前記未硬化塗膜に紫外線を照射して硬化させることが行われている。
例えば、特許文献1には、紫外線照射器と送風器が交互に2つずつ配置された紫外線硬化用照射装置を用い、枚葉状の試料をコンベアで搬送し、前記試料の表面の紫外線硬化型塗料を硬化させることが開示されている。特許文献1の装置は、枚葉状の試料(フィルム)の舞い上がりを防止しつつ、試料の表面温度を低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、長尺帯状のフィルムを長手方向に搬送し、その搬送過程で前記フィルムに紫外線硬化型樹脂を塗工し、これを硬化させて硬化膜を形成することもできる。
しかしながら、長尺帯状のフィルムを搬送しながら硬化膜を形成した場合、前記フィルムの搬送不良を生じるおそれがある。具体的には、未硬化塗膜を硬化させると、フィルムの幅方向端部が反り上がり、引いては、前記反り上がった端部が内側に折り込まれるおそれがある。
特許文献1には、枚葉状の試料(フィルム)に硬化膜を形成することが開示されているが、長尺帯状のフィルムに硬化膜を形成することについては開示されておらず、さらに、前述のようなフィルムの搬送不良についても開示されていない。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、長尺帯状のフィルムを搬送しながら硬化膜を形成するにあたって、フィルムの搬送不良を防止できる硬化膜製造装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、長尺帯状のフィルムの搬送過程で、フィルムの幅方向端部が反り上がる原因について鋭意研究した。具体的には、未硬化塗膜が硬化して硬化膜に変わる過程、すなわち、活性エネルギー線硬化型樹脂が硬化する過程で未硬化塗膜が収縮する。この収縮により、フィルムの幅方向端部が引張られて反り上がる。長尺帯状のフィルムは、その長手方向にテンションが掛かっているため、長手方向の収縮は規制されるが、フィルムの幅方向の収縮は、余り規制されないため、前記のようにフィルムの幅方向端部が反り上がる原因となる。特に、フィルムの幅方向両端部を除いて硬化膜を形成する場合、前記端部の反り上がりが生じ易い傾向にある。端部が大きく反り上がると、前記フィルムの端部が内側に折れてフィルム面に重なり、フィルムの搬送不良の原因となる。かかる原因探究の下、本発明を完成した。
【0007】
本発明の第1の態様に係る硬化膜製造装置は、長尺帯状のフィルムを搬送する搬送装置と、前記搬送されるフィルムに活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤を塗工して未硬化塗膜を形成する塗工装置と、前記未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して前記未硬化塗膜を硬化させて硬化膜を形成する照射装置と、を有し、前記照射装置が、前記フィルムの搬送方向に間隔を開けて複数設けられており、前記硬化膜の幅方向両端部を少なくとも押圧する押さえロールが、前記複数の照射装置から選ばれる隣同士の1組の照射装置の間に設けられている。
【0008】
本発明の第2の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第1の態様に係る硬化膜製造装置において、前記隣同士の1組の照射装置の一方が、前記フィルムの搬送方向の最も上流側に配置された第1照射装置であり、もう一方が、前記第1照射装置の隣に配置された第2照射装置である。
本発明の第3の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第1又は第2の態様に係る硬化膜製造装置において、前記押さえロールが、前記フィルムの搬送方向に間隔を開けて複数設けられている。
本発明の第4の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第1乃至第3のいずれかの態様に係る硬化膜製造装置において、前記押さえロールが、前記硬化膜の幅方向全体を押圧する。
本発明の第5の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第1乃至第4のいずれかの態様に係る硬化膜製造装置において、前記塗工装置が、前記フィルムの幅方向両端部を除いて前記フィルムに前記塗工剤を塗工する。
本発明の第6の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第1乃至第5のいずれかの態様に係る硬化膜製造装置において、前記押さえロールの軸長方向両縁が、前記フィルムの幅方向両縁に一致し又は前記フィルムの幅方向両縁から外方へ延出されている。
本発明の第7の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第1乃至第6のいずれかの態様に係る硬化膜製造装置において、前記押さえロールの前記硬化膜に対する押し込み量が、3mm以上である。
本発明の第8の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第2乃至第7のいずれかの態様に係る硬化膜製造装置において、前記第1照射装置による活性エネルギー線照射箇所から前記第1照射装置の下流側に設けられた前記押さえロールに到達するまでの前記フィルムの搬送時間が5秒以下となるように、前記搬送装置が前記フィルムを搬送する。
本発明の第9の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第2乃至第8のいずれかの態様に係る硬化膜製造装置において、前記塗工装置と前記第1照射装置の間に、前記未硬化塗膜に風を吹き付ける送風装置が設けられている。
本発明の第10の態様に係る硬化膜製造装置は、前記第9の態様に係る硬化膜製造装置において、前記送風装置が、前記第1照射装置による活性エネルギー線照射箇所を含んで風を吹き付ける。
【0009】
本発明の別の局面によれば、硬化膜の製造方法を提供する。
本発明の硬化膜の製造方法は、搬送されるフィルムに活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤を塗工して未硬化塗膜を形成する工程、前記未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して前記未硬化塗膜を硬化させて硬化膜を形成する工程、を有し、前記活性エネルギー線を照射する工程において、前記フィルムの搬送方向において間隔を開けて設けられた複数の照射装置によって順に活性エネルギー線を照射し、前記活性エネルギー線を最初に照射して硬化膜を形成した後で且つ次の活性エネルギー線を照射する前に、押さえロールを用いて、前記硬化膜の少なくとも幅方向両端部に押圧力を付加する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化膜製造装置及び硬化膜の製造方法によれば、長尺帯状のフィルムの搬送不良を防止しつつ、前記フィルムに良好な硬化膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1つの態様に係る硬化膜製造装置の側面図。
【
図5】本発明の他の態様に係る硬化膜製造装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、硬化膜製造装置及び硬化膜の製造方法の説明上、長尺帯状のフィルムが送られる側を「搬送方向下流側」又は「下流側」といい、その反対側を「搬送方向上流側」又は「上流側」という。また、長尺帯状のフィルムは、その長手方向に搬送されるので、フィルムの長手方向と搬送方向とは同義である。フィルムの幅方向は、フィルムの面内において長手方向と直交する方向をいう。本明細書において、「略」という表現は、本発明の技術分野で許容される範囲を含むことを意味する。さらに、本明細書において、「下限値以上上限値以下」で表される数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上任意の上限値以下」を設定できるものとする。
【0013】
[硬化膜製造装置の概要]
本発明の硬化膜製造装置は、長尺帯状のフィルムを長手方向に搬送する搬送装置と、前記フィルムに活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤を塗工して未硬化塗膜を形成する塗工装置と、前記未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して前記未硬化塗膜を硬化させて硬化膜を形成する照射装置と、を有する。
本発明は、フィルムの反り上がりを抑制するために、前記照射装置が複数設けられ、且つ、複数の照射装置から選ばれる隣同士の1組の照射装置の間に押さえロールが設けられている。前記押さえロールは、前記硬化膜のうち少なくとも幅方向両端部を押圧し、好ましくは、前記硬化膜の幅方向全体を押圧する。
【0014】
[フィルム]
フィルムは、形状の観点では、長尺帯状である。前記長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状のフィルムは、通常、ロール状に巻き取られて保管・運搬される。ロール状に巻かれたフィルムは、それに硬化膜を形成する際に、長手方向に巻き出される。
【0015】
前記フィルムは、層構成の観点では、単層でもよく、或いは、複層でもよい。フィルムが複層である場合、その層数は、2以上であり、その上限は特にないが、一般的には10以下である。
【0016】
単層フィルムは、光学機能を有するフィルム(以下、光学機能フィルムという)、又は、光学機能フィルム以外のフィルムからなる。前記光学機能フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、光反射フィルムなどが挙げられる。前記偏光フィルムは、特定の1つの方向に振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有するフィルムである。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などの延伸フィルムなどが挙げられる。光学機能フィルム以外のフィルムとしては、無色透明な樹脂フィルムなどが挙げられる。
複層フィルムは、光学機能フィルムが複数積層された積層フィルム、光学機能フィルム以外のフィルムが複数積層された積層フィルム、1層又は複数層の光学機能フィルムと1層又は複数層の光学機能フィルム以外のフィルムが積層された積層フィルムなどが挙げられる。
フィルムの厚みは、特に限定されず、例えば、50μm以上300μm以下である。
【0017】
<活性エネルギー線硬化型樹脂>
活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤は、任意の適切なものが用いられる。前記塗工剤は、塗工装置を用いて良好に塗工できる程度の粘度を有する液状である。
塗工剤は、活性エネルギー硬化型樹脂を含み、必要に応じて、溶媒、各種の添加剤を含む。前記活性エネルギー線硬化型樹脂は、電子線硬化型、紫外線硬化型、可視光線硬化型に大別できる。また、活性エネルギー線硬化型樹脂は、硬化のメカニズムの観点では、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物に大別できる。以下、活性エネルギー線硬化型樹脂を「硬化型樹脂」という場合がある。
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基などの炭素-炭素二重結合のラジカル重合性の官能基を有する化合物が挙げられる。また、単官能ラジカル重合性化合物又は二官能以上の多官能ラジカル重合性化合物のいずれも用いることができる。また、これらラジカル重合性化合物は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。前記ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ラジカル重合性化合物を用いる場合の重合開始剤は、活性エネルギー線に応じて適宜に選択される。紫外線又は可視光線により接着剤を硬化させる場合には、紫外線開裂又は可視光線開裂の重合開始剤が用いられる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ケトン化合物、アセトフェノン系化合物、芳香族ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げられる。
【0018】
カチオン重合性化合物としては、分子内にカチオン重合性官能基を1つ有する単官能カチオン重合性化合物、分子内にカチオン重合性官能基を2つ以上有する多官能カチオン重合性化合物などが挙げられる。前記カチオン重合性官能基としては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物などが挙げられる。オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。ビニルエーテル基を有するカチオン重合性化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
カチオン重合性化合物を用いる場合、カチオン重合開始剤が配合される。このカチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物のエポキシ基などと重合反応を開始する。カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤と光塩基発生剤を使用することができる。
【0019】
塗工剤は、溶媒を含んでいてもよく、或いは、溶媒を含んでいなくてもよい(無溶媒タイプ)。例えば、塗工剤は、硬化型樹脂及び溶媒を含み、必要に応じて、各種の添加剤を含む。溶媒は、硬化型樹脂及び必要に応じて添加される添加剤を溶解又は分散できる液状物であれば特に限定されない。溶媒としては、大別して、有機溶剤などの疎水性溶媒;水;親水性溶媒;が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF);ジオキサン;シクロヘキサノン;n-ヘキサン;トルエン;などが挙げられる。親水性溶媒は、水に略均一に溶解する溶媒であり、例えば、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;などが挙げられる。溶媒は、これらから選ばれる1種単独で、又は、2種以上併用できる。また、溶媒は、前記有機溶剤から選ばれる少なくとも1種と親水性溶媒から選ばれる少なくとも1種を併用してもよい。
【0020】
塗工剤の粘度は、特に限定されないが、余りに小さい又は大きいと、塗工剤をフィルムに塗工する際に塗工斑を生じるおそれがある。かかる観点から、塗工剤の23℃での粘度は、例えば、0.002Pa・s以上1.0Pa・s以下であり、好ましくは、0.01Pa・s以上0.5Pa・s以下である。
前記塗工剤の粘度は、25℃で市販のE型粘度計を用いて測定した値をいう。
【0021】
[硬化膜製造装置の詳細]
図1乃至
図4は、本発明の硬化膜製造装置Aの一例を示す。
図1は、硬化膜製造装置Aの概略側面図であり、
図2は、その一部の平面図である。
図3は、
図2のIII-III線で切断した断面図であり、
図4は、
図2のIV-IV’部を拡大して表した側面図である。
【0022】
硬化膜製造装置Aは、複数の装置から構成される。硬化膜製造装置Aは、搬送方向上流側から下流側に向かって順に、ロール状に巻かれたフィルム7を巻き出す巻出し部11と、前記フィルム7の表面に塗工剤84を塗工して未硬化塗膜8を形成する塗工装置12と、前記フィルム7の表面に形成された未硬化塗膜8を乾燥する乾燥装置13と、前記乾燥後の未硬化塗膜8を硬化させて硬化膜9を形成する複数の照射装置3と、複数の照射装置3の間に配置され且つ硬化膜9の幅方向両端部を押圧する押さえロール5と、前記塗工装置12と照射装置3の間に配置された送風装置2と、前記硬化膜9を有するフィルム7を巻き取る巻取り部14と、巻出し部11から巻取り部14までフィルム7を長手方向に搬送する搬送装置6と、を有する。
【0023】
<搬送装置>
搬送装置6は、巻出し部11と、巻取り部14と、フィルム7の搬送をガイドするガイドロール61と、フィルム7を所定のテンションで送る駆動ロール(図示せず)と、を有する。前記巻出し部11は、巻出し軸を有する。フィルム7は、前記巻出し軸にロール状に巻き付けられている。巻取り部14は、例えば、ギア付きモーターなどのアクチュエーターを備えた巻取り軸を有する。硬化膜9が形成されたフィルム7は、前記巻取り軸に巻き取られる。ガイドロール61は、巻出し部11と巻取り部14の間のゾーンにおいて、所定間隔を開けて複数設けられている。ガイドロール61は、硬化膜製造装置Aのフレーム(図示せず)などに取り付けられた軸部69に、ベアリングを介して回転自在に取り付けられている。なお、ガイドロール61が前記軸部69に固定的に取り付けられ且つ前記軸部69が製造装置Aのフレームなどに回転自在に取り付けられていてもよい。駆動ロールとしては、特に限定されず、例えば、サクションロール、ニップロールなどを用いることができる。搬送装置6は、巻出し部11から巻取り部14まで、フィルム7を所定の搬送速度及びテンションで連続的に搬送する。フィルム7の搬送速度は、適宜設定され、例えば、5m/min以上40m/min以下であり、好ましくは、10m/min以上35m/min以下である。
【0024】
<塗工装置>
塗工装置12は、フィルム7の搬送経路上に設けられている。塗工装置12は、搬送方向上流側から搬送方向下流側に連続的に搬送されるフィルム7の表面に、塗工剤84を連続的に塗工する。塗工剤84を塗工することにより、フィルム7の表面に未硬化塗膜8が形成される。
フィルム7上に塗工された薄膜状の塗工剤が、未硬化塗膜8である。未硬化塗膜8は、フィルム7の表面の略全体に形成されていてもよく、或いは、フィルム7の幅方向両端部7aを除いて形成されていてもよい。図示例では、フィルム7の幅方向両端部7aを除いて、フィルム7の幅方向中央領域に塗工剤が塗工され、未硬化塗膜8が形成されている(
図2参照)。
塗工装置12は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、塗工装置12としては、ダイコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーターなどが挙げられる。図示例では、ダイコーターを例示している。塗工装置12は、製造装置Aのフレームなどに取り付けられている。
前記未硬化塗膜8の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは、0.5μm以上30μm以下である。
【0025】
<乾燥装置>
乾燥装置13は、未硬化塗膜8を乾燥させるために、塗工装置12の下流側に設けられている。乾燥装置13としては、代表的には、熱によって未硬化塗膜8を乾燥する熱乾燥機を用いることができる。前記熱乾燥機は、特に限定されず、オーブン、温風を吹き付けるヒーターなどを用いることができる。乾燥装置13は、製造装置Aのフレームなどに取り付けられている。未硬化塗膜8が形成されたフィルム7を乾燥装置13に通過させることにより、未硬化塗膜8中の溶媒を十分に揮発させることができる。なお、無溶媒タイプの塗工剤を用いる場合には、前記乾燥装置13を省略してもよい。
【0026】
<送風装置>
送風装置2は、未硬化塗膜8が硬化して硬化膜9に変わる際に発生する反応熱を冷やすために設けられている。送風装置2は、塗工装置12と照射装置3(後述する第1照射装置3)の間のゾーンに配置されている。前記乾燥装置13が設けられる場合、送風装置2は、乾燥装置13と照射装置3(後述する第1照射装置31)の間のゾーンに配置される。送風装置2は、製造装置Aのフレームなどに取り付けられている。
送風装置2は、未硬化塗膜8の表面に対して風を吹き付け、好ましくは、未硬化塗膜8の表面に対して搬送方向下流側に向けた風を吹き付ける。ここで、風は、ある方向に向かって動く気体の流れをいう。送風装置2は、強制的に風を生じさせて、それを未硬化塗膜8の表面に作用させる。
【0027】
送風装置2は、ブロアなどの送風機(図示せず)と、風を吹き出す吹出し口21を有するノズル部22と、前記送風機とノズル部22の間を繋ぐ送風管23(一部を省略)と、を有する。前記ノズル部22の吹出し口21は、搬送されるフィルム7の未硬化塗膜8の表面側に向けられている。前記ノズル部22の吹出し口21は、フィルム7の幅方向に延びるスリット状の開口でもよく、或いは、スポット的な点状の開口でもよい。吹出し口21が点状の開口である場合、フィルム7の幅方向に複数のノズル部22が配置される(図示せず)。図示例のノズル部22の吹出し口21は、スリット状であり(
図3参照)、フィルム7の幅方向に延在されている。送風装置2の吹出し口21の幅(この幅はフィルム7の幅方向に対応する吹出し口21の長さをいう)は、未硬化塗膜8の幅(この幅は未硬化塗膜8の幅方向の長さをいう)よりも小さくてもよく、或いは、未硬化塗膜8の幅と同等又はそれよりも大きくてもよい。未硬化塗膜8の幅方向全体に亘って風を吹き付けることができることが好ましいことから、吹出し口21の幅は、未硬化塗膜8の幅と同等又はそれよりも大きいことが好ましい。例えば、図示例では、フィルム7の幅よりも大きい吹出し口21を有する送風装置2が用いられており、この場合、吹出し口21の幅方向両縁が、フィルム7の幅方向両縁7bよりも外側に出張っている。
【0028】
送風装置2による風は、照射装置3(第1照射装置31)と未硬化塗膜8の間に吹き付けられ、好ましくは、照射装置3(第1照射装置31)による活性エネルギー線照射箇所P1に吹き付けられる。硬化型樹脂は活性エネルギー線が照射される箇所P1において最も活発に反応して反応熱を生じるが、前記箇所P1を目掛けて風を吹き付けることにより、未硬化塗膜8(硬化膜9)に生じる熱を効果的に下げることができる。従って、前記箇所P1に風が吹き付けられるように、送風装置2の吹出し口21の向きなどを設計する。例えば、図示例のように第1照射装置31から照射される活性エネルギー線が未硬化塗膜8に交差する箇所を、風を吹き付ける設計上の箇所とすることが好ましい。
図1及び
図4において、活性エネルギー線を小破線で表し、
図1、
図2及び
図4において、風を実線矢印で表し且つフィルム7の搬送方向を白抜き矢印で表している。
【0029】
また、送風装置2による風の吹き出し角度は、特に限定されないが、余りに角度が小さいと、未硬化塗膜8の活性エネルギー線照射箇所P1に強い風を当てることができないおそれがあり、余りに角度が大きいと、風が強く当たりすぎて、フィルム7がバタつくおそれがある。かかる観点から、風の吹き出し角度θは、20度以上60度以下であり、好ましくは、25度以上50度以下である。風の吹き出し角度θは、
図4に示す側面視で、風の向きと未硬化塗膜8の表面とが成す内角である。なお、吹出し口21から出た風は拡がるので、前記風の向きは、未硬化塗膜8の表面の、前記風を吹き付ける設計上の箇所である活性エネルギー線照射箇所P1と吹出し口21とを結んだ方向をいう。
【0030】
前記風の風速は、適宜設定される。硬化型樹脂の反応熱を冷却しつつフィルム7のバタつきを防止する観点から、送風装置2による風速は、10m/sec以上30m/sec以下であることが好ましく、15m/sec以上25m/sec以下であることがより好ましい。
送風装置2から吹き出される風は、冷却された風でもよく、或いは、硬化膜製造装置Aが設置されている場所の雰囲気でもよい。
【0031】
<照射装置>
照射装置3は、フィルム7の搬送方向において間隔を開けて複数設けられている。照射装置3を複数設けることにより、未硬化塗膜8中の硬化型樹脂を実質的に全て硬化させることができ、良好な硬化膜9を形成できる。照射装置3の数は、特に限定されず、2つ以上であり、好ましくは3つ以上である。また、照射装置3の数の上限は、通常、5つ以下である。
図示例では、フィルム7の搬送方向に3つの照射装置3が配置されている場合を例示している。本明細書において、説明上、複数の照射装置3を区別する必要がある場合、フィルム7の搬送方向上流側から順に、「第1照射装置31」、「第2照射装置32」及び「第3照射装置33」といい、これらを纏めて説明する場合に「照射装置3」という。
【0032】
照射装置3の活性エネルギー線の出力部は、未硬化塗膜8の表面に対向されており、照射装置3は、活性エネルギー線を未硬化塗膜8の表面に対して鉛直方向に照射する。照射装置3は、塗工剤の硬化態様に準じた適切なものが用いられる。例えば、硬化型樹脂が、紫外線硬化型樹脂である場合には、照射装置3として、紫外線照射装置3が用いられる。複数の照射装置3の照射条件は、同じでもよく、或いは、一部又は全部の条件が照射装置3毎に若干異なっていてもよい。例えば、複数の照射装置3の照射条件は、同じである。前記照射条件としては、波長、ピーク照度及び積算光量などが挙げられる。
【0033】
第1照射装置31は、フィルム7の搬送方向の最も上流側に配置された照射装置3であり、第2照射装置32は、前記第1照射装置31よりも下流側に配置され且つ第1照射装置31のすぐ隣に配置された照射装置3であり、第3照射装置33は、前記第2照射装置32よりも下流側に配置され且つ第2照射装置32のすぐ隣に配置された照射装置3である。第1照射装置31と第2照射装置32は、隣同士の1組の照射装置3の関係にあり、第2照射装置32と第3照射装置33は、隣同士の1組の照射装置3の関係にある。
複数の照射装置3(例えば第1乃至第3照射装置31,32,33)は、フィルム7の搬送方向に沿って所定の間隔(好ましくは一定間隔)を開けて配置されている。また、複数の照射装置3は、フィルム7の搬送経路のうち平坦状に搬送される経路(フィルム7を屈曲や方向転換させる経路以外の搬送経路)において、間隔を開けて配置されている。
【0034】
<押さえロール>
押さえロール5は、未硬化塗膜8を硬化させた際の収縮によってフィルム7の幅方向端部が反り上がることを抑制するために設けられている。押さえロール5は、製造ライン上に少なくとも1つ設けられ、好ましくは、複数設けられている。押さえロール5が複数設けられる場合、各押さえロール5は、フィルム7の搬送方向に間隔を開けて配置される。
照射装置3との関係では、押さえロール5は、複数の照射装置3から選ばれる隣同士の1組の照射装置3の間に少なくとも設けられている。図示例では、押さえロール5は、第1照射装置31の下流側であって当該第1照射装置31と第2照射装置32の間、及び、第2照射装置32の下流側であって当該第2照射装置32と第3照射装置33の間に、それぞれ設けられている。なお、必要に応じて、搬送方向の最も下流側に配置された照射装置3(図示例では第3照射装置33)の下流側に、押さえロールを設けてもよい(図示せず)。本明細書において、説明上、複数の押さえロール5を区別する必要がある場合、フィルム7の搬送方向上流側から順に、「第1押さえロール51」及び「第2押さえロール52」といい、これらを纏めて説明する場合に「押さえロール5」という。
ガイドロール61との関係では、押さえロール5は、一対のガイドロール61,61の間に設けられている。
【0035】
第1押さえロール51は、前記第1照射装置31の下流側に配置された押さえロールである。
前記第1押さえロール51は、前記第1及び第2照射装置31,32の中間部に配置されていてもよく、或いは、第1照射装置31寄り又は第2照射装置32寄りに配置されていてもよい。フィルム7の搬送との関係で、フィルム7が第1照射装置31による活性エネルギー線照射箇所P1から第1押さえロール51に到達するまでの搬送時間が5秒以下(好ましくは、3秒以下)となるように、第1押さえロール51が配置されていることが好ましい。
第2押さえロール52は、前記第2照射装置32の下流側に配置された押さえロールである。
前記第2押さえロール52は、前記第2及び第3照射装置32,33の中間部に配置されていてもよく、或いは、第2照射装置32寄り又は第3照射装置33寄りに配置されていてもよい。フィルム7の搬送との関係で、フィルム7が第2照射装置32による活性エネルギー線照射箇所P2から第2押さえロール52に到達するまでの搬送時間が5秒以下(好ましくは、3秒以下)となるように、第2押さえロール52が配置されていることが好ましい。
なお、前記各搬送時間は、搬送装置6によるフィルム7の搬送速度と第1及び第2押さえロール51,52の位置とから調整できる。
【0036】
押さえロール5は、照射装置3を通過した後に生じる硬化膜9の表面のうち少なくとも幅方向両端部9aを押圧する。好ましくは、押さえロール5は、少なくとも硬化膜9の幅方向両端部9a及びフィルム7の幅方向両端部7aを押圧する。換言すると、押さえロール5は、前記硬化膜9及びフィルム7の両端部9a,7aの表面を略鉛直方向に押し込み、前記各表面に対して押圧力を付加する。
押さえロール5の軸長方向の長さは、フィルム7の幅よりも小さくてもよく、或いは、フィルム7の幅と同じ又はそれよりも大きくてもよい。例えば、押さえロール5の軸長方向の長さは、フィルム7の幅と同じ又はそれよりも大きい。この場合、当該押さえロール5の軸長方向両縁5bは、フィルム7の幅方向両縁7bに一致し、又は、
図2に示すようにフィルム7の幅方向両縁7bから外方へ延出されている。このように押さえロール5の軸長方向両縁5bをフィルム7の幅方向両縁7bに一致し又はフィルム7の幅方向両縁7bから外方へ延出させることにより、押さえロール5によって硬化膜9の幅方向全体及びフィルム7の幅方向全体を押圧することができる。
【0037】
押さえロール5によって表面側から押圧されたフィルム7は、
図4に示すように、反対面側に撓むようになる。押さえロール5の硬化膜9に対する押し込み量は、適宜設定される。押し込み量が小さすぎると、フィルム7の端部の反りを十分に抑制できないおそれある。かかる観点から、押さえロール5の硬化膜9に対する押し込み量Hは、例えば、3mm以上であり、好ましくは5mm以上である。前記押し込み量Hの上限は特にないが、余りに大きすぎると、硬化膜9を損傷するおそれあることから、前記押し込み量Hは、例えば、15mm以下であり、好ましくは12mm以下である。前記押さえロール5の硬化膜9に対する押し込み量Hは、
図4に示すように、押さえロール5が接している硬化膜9の表面と、押さえロール5が無いと仮定した場合の硬化膜9の表面との落差に相当する。
【0038】
押さえロール5は、回転自在である。例えば、押さえロール5は、製造装置Aのフレームなどに取り付けられた軸部59に、ベアリングを介して回転自在に取り付けられている。なお、押さえロール5が前記軸部59に固定的に取り付けられ且つ前記軸部59が製造装置Aのフレームなどに回転自在に取り付けられていてもよい。
また、押さえロール5の押し込み量を調整するために、押さえロール5に移動機構が具備されていてもよい(図示せず)。前記移動機構は、押さえロール5をフィルム7の表面に対して出退させる。
【0039】
<その他>
硬化膜製造装置Aは、上記で説明した様々な装置以外に、任意の適切な装置又は機構を有していてもよい。硬化膜製造装置Aは、例えば、(a)フィルム7が複層フィルムである場合、そのフィルム7から任意の層を引き剥がす装置、(b)フィルム7に任意のフィルムを積層する装置、(c)フィルム7又は硬化膜9に任意の表面処理を施す装置、又は、(d)フィルム7を延伸する装置などを有していてもよい(いずれも図示せず)。
【0040】
[硬化膜の製造方法]
本発明の硬化膜の製造方法は、搬送されるフィルム7に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む塗工剤84を塗工して未硬化塗膜8を形成する工程、前記未硬化塗膜8に活性エネルギー線を照射して前記未硬化塗膜8を硬化させて硬化膜9を形成する工程、を有する。
前記活性エネルギー線を照射する工程において、前記フィルム7の搬送方向において間隔を開けて設けられた複数の照射装置3によって順に活性エネルギー線を照射する。そして、前記活性エネルギー線を最初に照射して硬化膜9を形成した後で且つ次の活性エネルギー線を照射する前に、押さえロール5を用いて、前記硬化膜9の少なくとも幅方向両端部に押圧力を付加する。
本発明の製造方法は、上記硬化膜製造装置Aを用いて良好に実施することができる。以下、上記硬化膜製造装置Aを用いて硬化膜を製造する方法を説明するが、本発明の製造方法は、上記硬化膜製造装置Aを用いて実施される場合に限定されるわけではない。
【0041】
<未硬化塗膜の形成工程>
搬送装置6によって巻出し部11からフィルム7を巻き出し、塗工装置12によってフィルム7の表面に塗工剤84を塗工する。塗工剤84の塗工により、フィルム7の表面に未硬化塗膜8が形成される。フィルム7に形成された未硬化塗膜8は乾燥装置13によって乾燥される。
【0042】
<硬化膜の形成工程>
未硬化塗膜8が形成されたフィルム7は第1照射装置31に搬送され、その照射箇所P1にて活性エネルギー線が未硬化塗膜8に照射されることにより、未硬化塗膜8中の多くの硬化型樹脂が硬化し、未硬化塗膜8が硬化膜9に変化する。この際、未硬化塗膜8の表面に送風装置2によって風が吹き付けられている。硬化膜9が形成されたフィルム7は、第1押さえロール51によって押圧された後、第2照射装置32の照射箇所P2に搬送されることにより、前記硬化膜9に活性エネルギー線が照射される。第2照射装置32により、前記硬化膜9中の未反応の硬化型樹脂が反応して硬化する。第2照射装置32を通過したフィルム7は、第2押さえロール52によって押圧された後、第3照射装置33の照射箇所P3に搬送されることにより、前記硬化膜9に活性エネルギー線が照射される。第2及び第3照射装置32,33により、前記硬化膜9中に残る僅かな未反応の硬化型樹脂が反応して硬化する。硬化膜9の形成されたフィルム7は、巻取り部14に巻き取られる。
【0043】
[硬化膜製造装置及び製造方法の効果]
本発明の硬化膜製造装置Aは、複数の照射装置3が設けられているので、実質的に全ての硬化型樹脂が反応し、良好な硬化膜9を形成できる。さらに、硬化型樹脂が反応した際に未硬化塗膜8(及び硬化膜9)が収縮するが、硬化膜9の幅方向両端部9aを少なくとも押圧する押さえロール5が照射装置3の下流側に設けられているので、フィルム7の幅方向両端部7aが反り上がることを抑制できる。なお、未硬化塗膜8の収縮力は活性エネルギー線を最初に照射した際に最も大きいが、最初に活性エネルギー線を照射する照射装置3(第1照射装置31)の下流側に押さえロール5(第1押さえロール51)が設けられているので、フィルム7の幅方向両端部7aが反り上がることを抑制できる。特に、前記押さえロール5が硬化膜9の両端部9a及びフィルム7の両端部7aを押圧する場合、さらには、前記押さえロール5が硬化膜9の幅方向全体を押圧する場合には、フィルム7の両端部7aの反り上がりを効果的に抑制できる。
【0044】
さらに、第1照射装置31の活性エネルギー線照射箇所P1から第1押さえロール51に到達するまでのフィルム7の搬送時間が5秒以下とされている場合には、未硬化塗膜8(硬化膜9)が収縮した後、比較的短時間で、硬化膜9の両端部9aを押圧できる。このため、フィルム7の両端部の反り上がりを効果的に抑制できる。
また、最初に活性エネルギー線を照射した際に、未硬化塗膜8中の多くの硬化型樹脂が硬化し、比較的大きな反応熱を生じ、この熱がフィルム7の反りを助長させるおそれある。この点、最初に活性エネルギー線を照射する照射装置3(第1照射装置31)の照射箇所P1に風を吹き付けるので、未硬化塗膜8(硬化膜9)を冷やすことができ、フィルム7の反り上がり抑制に寄与できる。
【0045】
[他の実施形態]
上記実施形態では、硬化膜9の幅方向全体を押圧する押さえロール5を例示したが、上述のように、押さえロール5は、少なくとも硬化膜9の幅方向両端部を押圧できるものであればよい。
例えば、
図5に示すように、本発明の製造装置Aは、硬化膜9の幅方向両端部9a及びフィルム7の幅方向両端部7aのみを押圧する押さえロール5を有していてもよい。
【符号の説明】
【0046】
A 硬化膜製造装置
12 塗工装置
2 送風装置
3 照射装置
31 第1照射装置
32 第2照射装置
33 第3照射装置
5,51,52 押さえロール
6 搬送装置
7 フィルム
7a フィルムの幅方向両端部
8 未硬化塗膜
9 硬化膜
9a 硬化膜の幅方向両端部