(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117207
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】水処理施設の構築方法、水処理施設
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20240822BHJP
E03B 11/14 20060101ALI20240822BHJP
E03B 11/00 20060101ALI20240822BHJP
E03F 1/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C02F1/00 J
E03B11/14
E03B11/00 Z
E03F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023162
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】三岡 善平
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕作
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘輔
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA17
2D063DB00
(57)【要約】
【課題】大径の水処理施設を安価に構築する。
【解決手段】プレキャストブロック10は、ウェルマン貯留槽の中心軸に沿った鉛直面で2分割された第1ブロック101、第2ブロック102とが連結して構成されている。第1ブロック101、第2ブロック102は、中空の円筒形状を径方向及び中心軸方向(鉛直方向)に沿って2分割した形状における周方向の端部側が掘り込まれた形状とされ、実際には同一の構造・形状を呈する。まず、第1ブロック101と第2ブロック102とを連結して単一のプレキャストブロック10を得るプレキャストブロック形成工程が行われ、その後に、このプレキャストブロックの積層体を地中で得るための沈降工程が行われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の筒状とされた複数のプレキャストブロックが地中に沈設・積層された構成を具備する水処理施設の構築方法であって、
前記プレキャストブロックが前記筒状の中心軸からみた径方向に沿った切断線で均等に分割されて共通の形状とされた複数の分割ブロックを前記プレキャストブロックの構成要素として用い、
複数の前記分割ブロックの全てを連結して固定することによって前記プレキャストブロックの各々を形成するプレキャストブロック形成工程と、
前記プレキャストブロック形成工程で形成された前記プレキャストブロックを順次積層して地盤に圧入して沈設することによって、複数の前記プレキャストブロックの積層体を地中で得る沈設工程と、
を具備することを特徴とする、水処理施設の構築方法。
【請求項2】
前記分割ブロックは、前記プレキャストブロックを2~4分割した形状とされたことを特徴とする請求項1に記載の、水処理施設の構築方法。
【請求項3】
全ての前記プレキャストブロックにおいて、共通の形状及び構造の前記分割ブロックが用いられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の、水処理施設の構築方法。
【請求項4】
前記プレキャストブロックは中空の円筒形状とされたことを特徴とする請求項1又は2に記載の、水処理施設の構築方法。
【請求項5】
前記プレキャストブロックは、筒状の形状における内面側、外面側の少なくとも一方に装着された連結具を用いて複数の前記分割ブロックが連結されて構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の、水処理施設の構築方法。
【請求項6】
中空の筒状とされた複数のプレキャストブロックが地中に沈設・積層された構成を具備する水処理施設であって、
前記プレキャストブロックは、前記プレキャストブロックが前記筒状の中心軸からみた径方向に沿った切断線で分割されて均等に分割されて共通の形状とされた複数の分割ブロックが連結して固定された構成を具備し、
全ての前記プレキャストブロックにおいて、共通の形状及び構造とされた前記分割ブロックが用いられたことを特徴とする水処理施設。
【請求項7】
前記プレキャストブロックは中空の円筒形状とされたことを特徴とする請求項6に記載の水処理施設。
【請求項8】
前記プレキャストブロックは、筒状の外周面を構成する外周部の内面側、外面側の少なくとも一方に装着された連結具を用いて複数の分割ブロックが連結されて構成されたことを特徴とする請求項6又は7に記載の水処理施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に水を貯留する水処理施設の構築方法、この水処理施設の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市等における水の氾濫対策として、水の貯留施設(水処理施設)を地中に設け、雨天時に雨水をこの貯留施設に一時的に溜め、後で溜められた水の処理をする技術が適用されている。この貯留施設の容積(貯留される水の容積)は大きいことが好ましいが、この貯留施設を市街地の地下に設ける場合にはこれが占める面積は大きく制限されるため、鉛直方向に長いものが採用される。
【0003】
このように鉛直方向に長い形態で地中に設けられた水の貯留施設として、例えば非特許文献1に記載されたウェルマン貯留槽がある。
図9は、ウェルマン貯留槽(水処理施設)9が用いられる際の構成を簡略化して示す図である。ウェルマン貯留槽9は地盤G中において鉛直方向に細長く形成され、水の流入路9Aから内部に内部に水Wが溜められ、流出路9Bから排出される構成とされる。この際、内部には螺旋階段500が設置され、この螺旋階段500は、流入路9Aから流入した水を流路として、あるいはウェルマン貯留槽9内での作業のために作業者が乗降するため、あるいはその他の用途にも用いられる。また、
図9においては記載は省略されているが、水Wを排出するためのポンプ等が、流出路9B側に装着される。このようなウェルマン貯留槽9の内部の容積としては、実際に降雨時における最大降雨量が考慮され、例えば1500m
3程度以上とされる。
【0004】
ウェルマン貯留槽9は、中空の円筒形状のプレキャストブロック90A~90Gを地中で積層するPCウェル工法によって構築される。
図9においては、この円筒形状の中心軸に沿った断面が示されている。この場合、予め円筒形状に形成されたコンクリート製のプレキャストブロック90A~90Gを製造し、これを一つずつ積層して地中に圧入し沈降させ、内部を掘削させてから更に積層する工程を繰り返し、最深部のプレキャストブロック90Aが所定の深さに達したら、底部にコンクリートを打設して底版91を形成することによって、このウェルマン貯留槽9を地中で構築することができる。
【0005】
この場合には、ウェルマン貯留槽9の主体となる個々のプレキャストブロック90A~90Gを、施工現場とは別の工場で高品質で製造することができる。また、通常のPCウェル工法において知られるように、各プレキャストブロック毎に緊張作業を行って鉛直方向でプレストレスを付与することができ、これによってプレキャストブロックの強度を高めることができる。また、
図9において、複数のプレキャストブロックを鉛直方向で貫通する鉄筋を設けることによってウェルマン貯留槽9の強度を高めることもできる。このような緊張作業に用いられる鋼棒や鉄筋を収容する孔部を各プレキャストブロックに設けることも容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本ヒューム株式会社HP:インターネット(URL:https://www.nipponhume.co.jp/pdf/wellman1512.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のようにウェルマン貯留槽9を縦長にすることによって水の収容容積を大きくすることができるが、実際にはウェルマン貯留槽9の最大深度には制限があるため、より収容容積を大きくするためには、プレキャストブロックの大径化も要求される。この場合、
図9の構成において、個々のプレキャストブロックの内径が10m程度となる場合もある。
【0008】
プレキャストブロックは工場で製造されてから施工現場に運搬されて用いられるが、このように大型化したプレキャストブロックの運搬は容易ではなかった。このため、このように大径化したウェルマン貯留槽を安価に構築することは困難であった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、中空の筒状とされた複数のプレキャストブロックが地中に沈設・積層された構成を具備する水処理施設の構築方法であって、前記プレキャストブロックが前記筒状の中心軸からみた径方向に沿った切断線で均等に分割されて共通の形状とされた複数の分割ブロックを前記プレキャストブロックの構成要素として用い、複数の前記分割ブロックの全てを連結して固定することによって前記プレキャストブロックの各々を形成するプレキャストブロック形成工程と、前記プレキャストブロック形成工程で形成された前記プレキャストブロックを順次積層して地盤に圧入して沈設することによって、複数の前記プレキャストブロックの積層体を地中で得る沈設工程と、を具備することを特徴とする。
本発明において、前記分割ブロックは、前記プレキャストブロックを2~4分割した形状とされたことを特徴とする。
本発明は、全ての前記プレキャストブロックにおいて、共通の形状及び構造の前記分割ブロックが用いられたことを特徴とする。
本発明において、前記プレキャストブロックは中空の円筒形状とされたことを特徴とする。
本発明において、前記プレキャストブロックは、筒状の形状における内面側、外面側の少なくとも一方に装着された連結具を用いて複数の前記分割ブロックが連結されて構成されたことを特徴とする。
本発明は、中空の筒状とされた複数のプレキャストブロックが地中に沈設・積層された構成を具備する水処理施設であって、前記プレキャストブロックは、前記プレキャストブロックが前記筒状の中心軸に沿って均等に分割されて共通の形状とされた複数の分割ブロックが連結して固定された構成を具備し、全ての前記プレキャストブロックにおいて、共通の形状及び構造とされた前記分割ブロックが用いられたことを特徴とする。
本発明において、前記プレキャストブロックは中空の円筒形状とされたことを特徴とする。
本発明において、前記プレキャストブロックは、筒状の外周面を構成する外周部の内面側、外面側の少なくとも一方に装着された連結具を用いて複数の分割ブロックが連結されて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大径の水処理施設を安価に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る水処理施設の模式的な断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る水処理施設において、2分割とされた分割ブロックが用いられるプレキャストブロックの斜視図(a)、分解斜視図(b)である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る水処理施設において用いられるプレキャストブロックにおける連結部分の構造を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る水処理施設において用いられるプレキャストブロックの変形例の斜視図(a)、分解斜視図(b)である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る水処理施設において、3分割とされた分割ブロックが用いられるプレキャストブロックの斜視図(a)、分解斜視図(b)である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る水処理施設において、4分割とされた分割ブロックが用いられるプレキャストブロックの斜視図(a)、分解斜視図(b)である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る水処理施設の構築方法における沈設工程を示す工程断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る水処理施設の構築方法におけるプレキャストブロックの積層時の向きの設定の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の実施の形態に係る水処理施設の構造について説明する。
図1は、このウェルマン貯留槽(水処理施設)1の鉛直方向に沿う中心軸Xに沿った断面図である。
図1においては、
図9における流入路9A、流出路9B等に対応した記載は省略されているが、実際にはこれらも同様に用いられる。
【0014】
このウェルマン貯留槽1は、図中12個のプレキャストブロック10(10A~10L)が積層されて地盤G中に圧入されて構成されている。個々のプレキャストブロック10は、前記のプレキャストブロック90A等と同様に中空の円筒形状とされ、この円筒形状の中心軸が
図1の中心軸Xを構成するように積層される。各プレキャストブロック10の内径及び外形は等しく設定されるため、全てのプレキャストブロック10で囲まれた内部が鉛直方向で細長い空間とされ、これが水を収容する空間となり、ウェルマン貯留槽1の底部に底版91が形成されることによって、この内部に水を溜めることができる。なお、上部側においてもこの空間を封止するための層(コンクリート層)が設けられるが、その記載は
図1では省略されている。
【0015】
図1における最下層のプレキャストブロック10Aにおいては、下側に鋼製の刃口11が装着され、この上に、プレキャストブロック10B~10Lが順次積層される。実際には
図1において積層方向(鉛直方向)で隣接するプレキャストブロックの間にはエポキシ系接着剤で構成された薄い接合層が形成されることによってこれらの間は密閉されているが、この記載は
図1では省略されている。
【0016】
上記の構成は、従来のウェルマン貯留槽と同様であるが、このウェルマン貯留槽1においては、使用されるプレキャストブロック10の構造が、従来のものと異なる。
図2は、ここで使用されるプレキャストブロック10(10B~10L)の基本構造を示す斜視図(a)、分解図(b)である。プレキャストブロック10Aについては、鋼製の刃口11が下側に装着された点のみがプレキャストブロック10B等と異なるため、以下はプレキャストブロック10Aにおける刃口11を除く構成とプレキャストブロック10B~10Lとが共通のプレキャストブロック10であるとして説明する。プレキャストブロック10Aは、この構造における下部に刃口11を装着することのみによって形成される。
【0017】
プレキャストブロック10は、
図1におけるウェルマン貯留槽1の中心軸Xに沿った鉛直面で2分割された第1ブロック(分割ブロック)101、第2ブロック(分割ブロック)102とが連結して構成されている。
図3は、これらの間の連結部分の構造を示す図である。第1ブロック101、第2ブロック102は、中空の円筒形状を径方向及び中心軸方向(鉛直方向)に沿って2分割した形状における周方向の端部側が掘り込まれた形状とされ、実際には同一の構造・形状を呈する。これらはこの端部側に設けられた連結用の構造によって連結される。
【0018】
図2(b)に示されるように、第1ブロック101、第2ブロック102の外周面及び内周面において、周方向の両端側で接合部Cに沿って掘り下げられた接合構造用溝21が形成される。第1ブロック101と第2ブロック102の接合は、この接合構造用溝21に関わる構造を用いて行われる。
図3は、
図2(a)における領域Zにおける構造を詳細に示す図であり、
図3(a)は、これを中心軸X側からみた平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるI-I方向(水平方向)の断面図である。なお、プレキャストブロック10の外面、内面は円筒形状(曲面)であるが、ここでは、便宜上これらの面は平面(曲率半径が大)であるように記載され、ここでは仮に上側の面を外面、下側の面を内面とする。また、
図3(a)においては、
図3(b)におけるモルタル層70の記載が省略されている。
【0019】
図3(a)(b)に示されるように、第1ブロック101、第2ブロック102の内面側と外面側の接合構造用溝21の底部には、各々において接合部C側で突出しないように、金属製の埋め込み板22が埋め込まれている。このため、
図3(b)に示されるように、第1ブロック101と第2ブロック102を組み合わせた状態で、接合部Cにおいては第1ブロック101と第2ブロック102の端面同士が当接する。この状態で、
図3(a)に示されるように、第1ブロック101と第2ブロック102をまたぐような金属製の接合板(連結具)23を鉛直方向の複数の箇所で埋め込み板22に溶接することができ、この構造を内面側と外面側で形成することによって、第1ブロック101と第2ブロック102とを連結することができる。
【0020】
ここで、接合構造用溝21の深さ、埋め込み板22、接合板23の厚さは、
図3(b)に示されるように、この状態で接合板23がプレキャストブロック10における接合構造用溝21周囲の外面、内面で突出しないように設定される。このため、この状態で接合構造用溝21をモルタルで埋め込んでモルタル層70を形成することにより、
図3(b)に示されるように外面、内面を平坦とする(前記のように外面、内面は正確には曲面であるために、正確には滑らかな曲面とする)ことができる。この場合において、モルタルの打設用の型枠を用いることができる。このようにモルタル層70を形成して表面を滑らかにすることは、後述する構築方法においてプレキャストブロック10を沈設する際に特に有効である。
【0021】
また、
図2、3の構造においては、埋め込み板22は計8枚、接合板23は計40枚用いられるが、それぞれにおいて共通のものを用いることができる。また、
図3(b)に示されるように、上記の例ではこのような連結用の構造が外面側と内面側で同様に設けられたが、このような連結用の構造を外面、内面のうちの一方においてのみ設けてもよい。同様に、第1ブロック101、第2ブロック102を、例えば特開2004-143785号公報に記載された構造で連結することができる。
【0022】
図4は、上記と異なる連結方法を用いたプレキャストブロック30の構造を
図2と同様に示す。
図4のプレキャストブロック30においては、
図4(b)に示されるように、第1ブロック301、第2ブロック302の内周面において、周方向の両側の接合部Cに近接した箇所で矩形形状に外側に向けて掘り下げられた固定用凹部31が、上下方向に沿った3箇所、それぞれにおいて計6箇所に形成される。固定用凹部31は、第1ブロック301、第2ブロック302の壁面を外側まで貫通しないように内側から浅く形成される。また、各固定用凹部31の内部において近接する接合部C側の表面であるボルト固定面31Aから接合部Cにかけては、後述するボルト32Aが貫通する固定用貫通孔31Bが形成されている。
【0023】
図4(a)に示されるように、第1ブロック301と第2ブロック302を連結した際に、第1ブロック301側の固定用凹部31と第2ブロック302側の固定用凹部31とが接合部Cを挟んで対向し、それぞれにおける固定用貫通孔31が連結するような構成とされる。このため、第1ブロック301、第2ブロック302のうちの一方の側から固定用貫通孔31にボルト(連結具)32Aを挿通させ、他方の側の固定用凹部31内でこのボルト32Aにナット(連結具)32Bを締結することによって、第1ブロック301と第2ブロック302を連結して固定することができる。この場合には、第1ブロック301と第2ブロック302はボルト32Aとナット32Bのみを用いて連結される。この場合においても、連結後において固定用凹部31を埋め込んでモルタル層を形成することができ、これによってプレキャストブロック30の外周面を、凹凸のない円筒形状の面とすることができるため、後述する沈設工程において、プレキャストブロック30を容易に圧入することができる。また、第1ブロック301と第2ブロック302を実質的に同一の構造・形状とすることができる。
【0024】
図4の構造においては、固定用凹部31は第1ブロック301、第2ブロック302の内周面において形成されたが、固定用凹部31を第1ブロック301、第2ブロック302の外周面にも形成し、外周面側でも同様にこれらを連結してもよい。あるいは、固定用凹部31を外周面のみに形成し、外周面側でのみこれらを連結してもよい。
【0025】
図2~4に示された構造以外の構造も、同一の形状、構造とされた第1ブロックと第2ブロックを連結して中空の筒状のプレキャストブロックを形成することができ、この際に、プレキャストブロックの外周面に圧入の障害となる凹凸を形成しないよう場合には、同様に用いることができる。
【0026】
このように、本発明の実施の形態に係る水処理施設の構築方法においては、まず、第1ブロック101と第2ブロック102とを連結して単一のプレキャストブロック10を得るプレキャストブロック形成工程が行われ、その後に、このプレキャストブロックの積層体を地中で得るための沈降工程が行われる。
【0027】
上記の例では、プレキャストブロックが第1ブロックと第2ブロックに均等に2分割されるものとしたが、3分割以上としてもよい。
図5は、3分割とした場合の基本構造を
図2に対応させて示す図である。
図5のプレキャストブロック40においては、円筒形状が径方向に沿った切断線で周方向で等分に3分割されて同一の形状(分割ブロックにおける円弧の角度が120°)とされた第1ブロック(分割ブロック)401、第2ブロック(分割ブロック)402、第3ブロック(分割ブロック)403が組み合わせて用いられる。これらを連結するためには、
図2(a)、
図3(a)における連結具23や
図4(a)における固定用凹部31等を用いた連結のための構造(連結用構造120)を、
図5(a)に示されるように、連結部分に用いることができる。なお、
図5(b)においては、連結用構造120に関わる記載は省略されている。
【0028】
図6は、4分割とした場合の基本構造を同様に示す図である。
図6のプレキャストブロック41においては、円筒形状が周方向で等分に4分割されて同一の形状(分割ブロックにおける円弧の角度が90°)とされた第1ブロック(分割ブロック)411、第2ブロック(分割ブロック)412、第3ブロック(分割ブロック)413、第4ブロック(分割ブロック)414が組み合わせて用いられる。これらを連結するために、連結用構造120が用いられることについても、
図5の場合と同様である。
【0029】
同様に、このような分割の数を5つ以上とすることもできる。ただし、このようなプレキャストブロックの分割の数が多いほど、
単一の分割ブロックが小さくなり、運搬等、扱いが容易となる一方、連結のための工程の数が増加するため、分割の数は、水処理施設の大きさ等に応じて適宜設定される。例えば1500m3程度の容量の水処理施設の場合、分割の数は2~4とすることが好ましく、4が特に好ましい。
【0030】
図7は、このようなプレキャストブロック10等を用いたウェルマン貯留槽1の構築方法において、プレキャストブロック10A~10Lを順次積層して沈降させる沈設工程を簡略化して示す工程断面図である。
【0031】
図7(a)に示されるように、ここでは、まず、沈設のための準備工程として、ボーリングによって地盤Gの施工地点においてグラウンドアンカー400を打設した後に、地上において施工時にプレキャストブロック10を保持するために用いるベースフレーム410を、このグラウンドアンカー400に対して定着させる。
【0032】
次に、
図7(b)に示されるように、
図1において最も下層となるプレキャストブロック10Aをベースフレーム410に対して傾斜のないように固定する。その後、
図7(c)に示されるように、プレキャストブロック10Aの上面に接合層となるエポキシ系接着剤を塗布した後に、その上層のプレキャストブロック10Bを積層する。
【0033】
次に、
図7(d)に示されるように、ハンマグラブ(図示せず)で内部を掘削しながらプレキャストブロック10A等を地盤Gに圧入して沈設する。その後、
図7(c)(d)の工程と同様の作業をプレキャストブロック10C~10Lに対して順次繰り返すことによって、
図7(e)に示されるように、
図1の積層構造が地盤G中で得られる。
【0034】
その後、
図7(f)に示されるように、底部にコンクリートを打設して底版91を形成する。その後、
図9における流入路9A、流出路9B及びこれらに付随する設備(ポンプ等)が設置される。これにより、このウェルマン貯留槽1を、
図9におけるウェルマン貯留槽9の代わりに用いることができる。
【0035】
一般的に、プレキャストブロックは、施工現場から離間した工場で製造された後に、施工現場まで運搬されて使用されるところ、収容可能な水の容量を大きく確保するためには、従来のウェルマン貯留槽9において用いられるプレキャストブロック90の外径は10m程度となる場合があり、このような製造・運搬が容易でない場合があった。これに対して、上記の構成においては、このように製造・運搬されるのはプレキャストブロック10ではなく、その1/2の大きさの第1ブロック101、第2ブロック102、あるいは1/3の大きさの第1ブロック401等、1/4の大きさの第1ブロック411等である。運搬後において、前記のプレキャストブロック形成工程、沈降工程は施工現場で行われる。これにより、このウェルマン貯留槽1を安価に構築することができる。
【0036】
この際、使用される分割ブロック(第1ブロック101と第2ブロック102、第1ブロック401~第3ブロック403、第1ブロック411~第4ブロック414)として、各プレキャストブロックにおいて、実際には同一の形状・構造のものを用いることができる。更に、全てのプレキャストブロック1(10A~10L)について共通の分割ブロックを用いることもできるため、分割ブロックを大量かつ安価に製造することができる。
【0037】
また、例えば
図2のプレキャストブロック10においては、周方向で180°離れて存在する2つの接合部Cが強度が低い箇所となる。プレキャストブロック10が積層される際に、このように局所的に強度の低い箇所が積層方向(鉛直方向)で連続(あるいは近接)して存在した場合には、ウェルマン貯留槽1におけるこの箇所の強度が特に低くなる。このため、上下方向で隣接する2つのプレキャストブロック10間において、接合部Cが近接しないことが、ウェルマン貯留槽1の機械的強度を高く維持するためには好ましい。このためには、積層されるプレキャストブロック10における接合部Cの位置を、周方向で均等に分散させることが好ましい。
【0038】
図8は、この場合におけるプレキャストブロック間の位置関係をプレキャストブロック10A~10Cについて示す図である。前記の通り、これらの各々は実質的には共通の構成を具備するが、これらの形状は円筒形状であるため、その中心軸周りの角度は、積層時において適宜設定が可能である。
図8においては、プレキャストブロック10Bにおけるこの角度は、プレキャストブロック10Aに対して90°異なり、更にプレキャストブロック10Cにおけるこの角度は、プレキャストブロック10Bに対して90°異なっており、対称性を考慮すると実質的にプレキャストブロック10Aと同一である。このようにこの角度を積層毎に90°変化させれば、隣接する2つのプレキャストブロック間で接合部Cを周方向で離間させることができ、前記のように強度の低い箇所が局所的に発生することが抑制される。
【0039】
また、各プレキャストブロックには、積層後に鉄筋を鉛直方向で貫通させる孔部を設けることもでき、この鉄筋によってウェルマン貯留槽の強度を高めることもできる。
図8においては、このような孔部である鉄筋貫通孔50が各プレキャストブロックに設けられている。
図8において、例えば鉄筋貫通孔50を接合部Cに関して対称となるような配置で90°間隔で周方向において4つ(第1ブロック101、第2ブロック10Bに各々2つ)設けることによって、鉄筋貫通孔50が全てのプレキャストブロック間で連通するようにすることができ、これに鉄筋を収容することができる。この場合においても、第1ブロック101と第2ブロック102の構造は実質的に同一となる。すなわち、複数のプレキャストブロックを積層方向で貫通する鉄筋を用いる場合においても、全ての第1ブロック、第2ブロックとして共通の構造のものを用いることができる。
【0040】
図8においては、プレキャストブロックにおける接合部Cの周方向における間隔(設定角度の差)が積層毎に90°であるものとしたが、この間隔を例えば45°、30°等としてもよい。この間隔は、プレキャストブロックの積層総数に応じて、接合部Cが周方向で分散されるように適宜設定される。鉄筋収容孔を設ける場合には、この設定に応じて鉄筋収容孔の配置を定めることによって、前記と同様に、積層されたプレキャストブロック間で鉄筋収容孔が連通するようにすることができる。
【0041】
また、プレキャストブロックに鉛直方向でプレストレスを付与する緊張作業を行うためには、このための鉛直方向に沿ったPC鋼棒をプレキャストブロックに装着する必要がある。このPC鋼棒を装着するためのPC鋼棒収容孔も前記の鉄筋収容孔と同様にプレキャストブロックに設けることができ、この場合においても、全ての第1ブロック、第2ブロックとして共通の構造のものを用いることができる。
【0042】
図8の構成においては、
図2の構造のプレキャストブロック10が用いられ、分割ブロックの中心軸周りの角度が積層毎に90°異なるものとした。同様に、
図5のプレキャストブロック40を用いた場合にはこの角度差を60°、
図6のプレキャストブロック41を用いた場合にはこの角度差を45°とすればよい。鉄筋貫通孔50の位置も、これに応じて適宜設定することによって、
図8と同様の構成を実現することができる。
【0043】
以上のように、このウェルマン貯留槽1は、同一の形状・構造をもつ分割ブロックを基本構造として多数製造して組み合わせることによって構築することができる。このため、このウェルマン貯留槽1を容易に構築することができる。また、コンクリートを打設して貯留槽全体を構築する場合と比べて工期を短くすることもできる。上記の例においては、全ての層における全ての分割ブロックが共通とされたが、一部の層における全ての分割ブロックを共通としてもよい。
【0044】
また、
図1においては全てのプレキャストブロックの鉛直方向に沿った高さが同一とされたために、全ての分割ブロックが共通とされた。しかしながら、全てのプレキャストブロックの高さが同一である必要はない。この場合においても、水平面内の構造が同一であり高さ(中心軸方向に沿った長さ)のみが異なる分割ブロックを用いることによって、同様にウェルマン貯留槽を安価かつ容易に構築することができることは明らかである。
【0045】
また、上記の例では、プレキャストブロックが中空の円筒形状であるものとしたが、中空の筒状であり、中心軸に沿って分割して同一の形状の分割ブロックを得ることができる形状のプレキャストブロックであれば、同様の構成が可能である。このようなプレキャストブロックの中心軸に垂直な断面形状としては、例えば矩形形状、六角形等がある。
【0046】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0047】
1、9 ウェルマン貯留槽(水処理施設)
9A 流入路
9B 流出路
10、10A~10L、20、30、40、41、90A~90G プレキャストブロック
11 刃口
21 接合構造用溝
22 埋め込み板
23 接合板(連結具)
31 固定用凹部
31A ボルト固定面
31B 固定用貫通孔
32A ボルト(連結具)
32B ナット(連結具)
50 鉄筋貫通孔
70 モルタル層
91 底版
101、301、401、411 第1ブロック(分割ブロック)
102、302、402、412 第2ブロック(分割ブロック)
120 連結用構造
400 グラウンドアンカー
403、413 第3ブロック(分割ブロック)
410 ベースフレーム
414 第4ブロック(分割ブロック)
500 螺旋階段
C 接合部
G 地盤
W 水
X 中心軸