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特開2024-117210授業支援システム、集中度評価方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117210
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】授業支援システム、集中度評価方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20240822BHJP
【FI】
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023166
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】寺山 直人
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】授業の開始から終了まで授業を受けている生徒の集中度を正しく評価できるようにする。
【解決手段】授業支援システム1は、授業風景を撮影する撮影手段3と、撮影手段3によって撮影された画像を解析して授業状況を判定する授業状況判定部11と、撮影手段3によって撮影された画像を解析して授業を受けている生徒の状態を特定する生徒状態特定部13と、授業状況に応じて生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する生徒の集中度を評価する集中度評価部15と、を備える構成である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
授業風景を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業状況を判定する授業状況判定部と、
前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業を受けている生徒の状態を特定する生徒状態特定部と、
前記授業状況に応じて前記生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する前記生徒の集中度を評価する集中度評価部と、
を備えることを特徴とする授業支援システム。
【請求項2】
前記撮影手段は、授業中の教師と生徒とを撮影可能であることを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項3】
前記集中度評価部は、授業中、前記集中度をリアルタイムに評価することを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項4】
前記授業状況判定部は、前記撮影手段によって撮影された画像に基づき教師の動作を特定し、前記教師の動作に基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項5】
前記授業状況判定部は、教室内における前記教師の位置及び向きに基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする請求項4に記載の授業支援システム。
【請求項6】
前記授業状況判定部は、前記撮影手段によって撮影された画像に基づき、前記生徒の動作を特定し、前記生徒の動作に基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項7】
前記授業状況判定部は、前記生徒の位置、姿勢及び向きに基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする請求項6に記載の授業支援システム。
【請求項8】
前記授業状況判定部は、前記授業状況として、教師が黒板に書き込みを行っている状況、教師が教科書等を持って説明している状況、教師が課題を出して教室内を見回っている状況、生徒が発表している状況、及び、生徒同士がグループワークを行っている状況のいずれであるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項9】
前記生徒状態特定部は、前記撮影手段によって撮影された画像に基づき前記生徒の位置、姿勢、視線方向、及び、手の位置を判定し、前記生徒の状態を特定することを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項10】
前記生徒状態特定部は、前記生徒の状態として、ノートをとっている状態、教師を見ている状態、黒板を見ている状態、教科書等を見ている状態、及び、他の生徒と相談している状態のいずれであるかを判定することを特徴とする請求項9に記載の授業支援システム。
【請求項11】
前記集中度評価部は、前記授業状況に応じて予め付与されている優先順位に基づき、前記生徒の状態を評価することを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項12】
前記集中度評価部は、前記生徒の集中度に基づき、授業全体での集中度を評価することを特徴とする請求項1に記載の授業支援システム。
【請求項13】
授業風景を撮影した画像に基づいて授業に対する生徒の集中度を評価する集中度評価方法であって、
前記画像を解析して授業状況を判定する授業状況判定ステップと、
前記画像を解析して授業を受けている生徒の状態を特定する生徒状態特定ステップと、
前記授業状況に応じて前記生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する前記生徒の集中度を評価する集中度評価ステップと、
を有することを特徴とする集中度評価方法。
【請求項14】
授業風景を撮影する撮影手段が接続されたコンピュータにおいて実行されるプログラムであって、前記コンピュータに、
前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業状況を判定する授業状況判定ステップと、
前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業を受けている生徒の状態を特定する生徒状態特定ステップと、
前記授業状況に応じて前記生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する前記生徒の集中度を評価する集中度評価ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、授業支援システム、集中度評価方法、及び、プログラムに関し、特に授業中の生徒の集中度を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、授業中の生徒の様子をカメラで撮影した画像に基づき、生徒の集中度を判定する授業支援システムが提案されている(例えば特許文献1)。この従来技術は、授業中の教師の言動を監視し、教師が所定の言葉(例えば「注目」など)を発したことを検知すると、それをトリガーとして、カメラで撮影した画像を解析し、生徒の視線方向が推奨視線方向に一致するか否かによって生徒の集中度を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/054855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、教師が所定の言葉を発したことをトリガーとして生徒の集中度を判定するため、教師が所定の言葉を発しなかった場合には授業中の生徒の集中度を評価することができない。
【0005】
また、上記従来技術は、教師が教壇に立っていることが前提で生徒の視線方向のみによる判定を行っており、必ずしも生徒の集中度を正確に判定できるものではない。例えば授業中、教師は教室内を歩き回りながら説明を行うことがある。また、授業中、教師が生徒に課題を出し、教室内を歩き回りながら生徒の課題に取り組む様子を見ることもある。更に、授業中、教師は複数の生徒をグループ化し、各グループに課題を与えてグループワークを行わせることもある。このように授業中の授業状況には様々な状況が存在する。授業中、生徒はそれら授業状況に応じた態度をとる。そのため、授業中の生徒の集中度を正しく評価するためには、授業状況に応じて生徒の態度がどのような状態であるかを見極める必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、従来の課題を解決するため、授業中の生徒の集中度を正しく評価できるようにした授業支援システム、集中度評価方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、授業支援システムであって、授業風景を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業状況を判定する授業状況判定部と、前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業を受けている生徒の状態を特定する生徒状態特定部と、前記授業状況に応じて前記生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する前記生徒の集中度を評価する集中度評価部と、を備えることを特徴とする構成である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記撮影手段は、授業中の教師と生徒とを撮影可能であることを特徴とする構成である。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記集中度評価部は、授業中、前記集中度をリアルタイムに評価することを特徴とする構成である。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記授業状況判定部は、前記撮影手段によって撮影された画像に基づき教師の動作を特定し、前記教師の動作に基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする構成である。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4の授業支援システムにおいて、前記授業状況判定部は、教室内における前記教師の位置及び向きに基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする構成である。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記授業状況判定部は、前記撮影手段によって撮影された画像に基づき、前記生徒の動作を特定し、前記生徒の動作に基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする構成である。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6の授業支援システムにおいて、前記授業状況判定部は、前記生徒の位置、姿勢及び向きに基づいて前記授業状況を判定することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記授業状況判定部は、前記授業状況として、教師が黒板に書き込みを行っている状況、教師が教科書等を持って説明している状況、教師が課題を出して教室内を見回っている状況、生徒が発表している状況、及び、生徒同士がグループワークを行っている状況のいずれであるかを判定することを特徴とする構成である。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記生徒状態特定部は、前記撮影手段によって撮影された画像に基づき前記生徒の位置、姿勢、視線方向、及び、手の位置を判定し、前記生徒の状態を特定することを特徴とする構成である。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項9の授業支援システムにおいて、前記生徒状態特定部は、前記生徒の状態として、ノートをとっている状態、教師を見ている状態、黒板を見ている状態、教科書等を見ている状態、及び、他の生徒と相談している状態のいずれであるかを判定することを特徴とする構成である。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記集中度評価部は、前記授業状況に応じて予め付与されている優先順位に基づき、前記生徒の状態を評価することを特徴とする構成である。
【0018】
請求項12に係る発明は、請求項1の授業支援システムにおいて、前記集中度評価部は、前記生徒の集中度に基づき、授業全体での集中度を評価することを特徴とする構成である。
【0019】
請求項13に係る発明は、授業風景を撮影した画像に基づいて授業に対する生徒の集中度を評価する集中度評価方法であって、前記画像を解析して授業状況を判定する授業状況判定ステップと、前記画像を解析して授業を受けている生徒の状態を特定する生徒状態特定ステップと、前記授業状況に応じて前記生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する前記生徒の集中度を評価する集中度評価ステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0020】
請求項14に係る発明は、授業風景を撮影する撮影手段が接続されたコンピュータにおいて実行されるプログラムであって、前記コンピュータに、前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業状況を判定する授業状況判定ステップと、前記撮影手段によって撮影された画像を解析して授業を受けている生徒の状態を特定する生徒状態特定ステップと、前記授業状況に応じて前記生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する前記生徒の集中度を評価する集中度評価ステップと、を実行させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、授業の開始から終了まで、授業を受けている生徒の集中度を正しく評価することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】授業支援システムが授業風景に関する情報を取得するための構成例を示す図である。
図2】授業支援システムの構成例を示すブロック図である。
図3】授業状況判定部によって判定される授業状況の例を示す図である。
図4】生徒状態特定部によって特定される生徒の状態の例を示す図である。
図5】評価基準情報の一構成例を示す図である。
図6】授業支援装置によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】授業状況判定処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】生徒状態特定処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】授業支援装置において生成されるある生徒の授業中における集中度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の授業支援システム1が授業風景に関する情報を取得するための構成例を示す図である。図1に示すように、授業支援システム1は、教師Tによる授業が行われる教室内に、授業風景を撮影する撮影手段3を設置し、授業風景に関する情報を画像として取得する。例えば撮影手段3は、2台のカメラ3a,3bによって構成される。カメラ3a,3bは、教室内の全体を撮影できるように教室の前方側と後方側とに配置され、授業中の教師Tと生徒Pとを撮影する。カメラ3a,3bが撮影する画像は、動画像であり、所定のフレームレートで動画像を撮影する。ただし、これに限られるものではなく、カメラ3a,3bは、比較的短い時間間隔(例えば数秒間隔)で静止画像を連続撮影するものであっても構わない。尚、図1では、撮影手段3として2台のカメラ3a,3bが設置される場合を例示しているが、カメラの台数は2台に限られない。例えばカメラは3台以上であっても構わない。また、撮影範囲の広いカメラを用いる場合には、撮影手段3は1台のカメラであっても構わない。
【0025】
図2は、授業支援システム1の構成例を示すブロック図である。この授業支援システム1は、カメラ3a,3bによって撮影される授業風景に関する画像を取得する授業支援装置2を備えている。授業支援装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバーコンピュータなどによって構成され、複数のカメラ3a,3bとLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して接続され、各カメラ3a,3bの撮影動作を制御し、各カメラ3a,3bから授業風景を撮影した画像を取得する。
【0026】
授業支援装置2は、CPUなどのハードウェアプロセッサー10と、記憶部20とを備えている。記憶部20は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などで構成される不揮発性の記憶手段である。記憶部20には、ハードウェアプロセッサー10によって実行されるプログラム21が予め記憶されている。また、記憶部20には、授業に対する各生徒Pの集中度を評価するための評価基準情報22が記憶されている。ハードウェアプロセッサー10は、記憶部20に記憶されているプログラム21を読み出して実行することにより、授業状況判定部11、生徒状態特定部13、及び、集中度評価部15として機能する。
【0027】
授業状況判定部11は、カメラ3a,3bによって撮影された画像を取得して授業状況を判定する。授業状況判定部11は、画像解析部12を備えている。画像解析部12は、カメラ3a,3bから取得する各画像を解析し、各画像から教師Tの画像及び各生徒Pの画像を抽出する。画像解析部12は、教師Tの画像に対して骨格推定や姿勢推定などの処理を行うことにより、教師Tの動作を特定する。例えば、画像解析部12は、教師Tの教室内における位置や向き、姿勢、手の位置、手に持っている物などを特定する。また、画像解析部12は、各生徒Pの画像に対しても同様に骨格推定や姿勢推定などの処理を行うことにより、各生徒Pの動作を特定する。例えば、画像解析部12は、各生徒Pの位置、視線方向、姿勢、手の位置などを特定する。
【0028】
授業状況判定部11は、画像解析部12によって特定される教師Tの動作及び各生徒Pの動作に基づき、教師Tによって行われている授業状況を判定する。図3は、授業状況判定部11によって判定される授業状況の例を示す図である。例えば、授業状況判定部11は、教師が黒板に書き込みをしている状況、教師が教科書等を持って説明している状況、教師が課題を出して教室内を見回っている状況、生徒が発表している状況、生徒同士がグループワークを行っている状況など、複数の状況のうちのいずれの状況であるかを判定する。
【0029】
例えば、画像解析部12による画像解析の結果、教師Tが教壇(教室の前方位置)に立ち、黒板方向(教室の前方方向)に向いている場合、授業状況判定部11は、教師Tが黒板に書き込みを行っている状況であると判定する。また、画像解析部12による画像解析の結果、教師Tが黒板方向に向かずに教科書等を持っている場合、教師Tが教科書等を持って説明している状況であると判定する。尚、教科書等とは、教科書だけでなく、紙などの副教材やタブレット端末を含むものである。また、画像解析部12による画像解析の結果、教師Tが教科書等を持っていない状態で、教壇ではなく、生徒エリアにいる場合、授業状況判定部11は、教師Tが課題を出して教室内を見回っている状況であると判定する。また、画像解析部12による画像解析の結果、特定の生徒Pが起立している場合、授業状況判定部11は、生徒Pが発表している状況であると判定する。更に、画像解析部12による画像解析の結果、所定数以上の生徒Pが互いに向かい合っている場合、授業状況判定部11は、生徒同士がグループワークを行っている状況であると判定する。尚、この他にも、授業状況判定部11は、様々な授業状況を判定可能である。授業状況判定部11は、現在の授業状況を判定すると、その判定結果を集中度評価部15へ出力する。
【0030】
生徒状態特定部13は、カメラ3a,3bによって撮影された画像を取得して授業を受けている各生徒Pの状態を特定する。生徒状態特定部13は、画像解析部14を備えている。画像解析部14は、カメラ3a,3bから取得する各画像を解析し、各画像から各生徒Pの画像を抽出する。画像解析部14は、各生徒Pの画像に対して骨格推定や姿勢推定などの処理を行うことにより、各生徒Pの動作を特定する。例えば、画像解析部14は、各生徒Pの位置、視線方向、姿勢、手の位置などを特定する。
【0031】
尚、画像解析部14による処理は、授業状況判定部11の画像解析部12による処理と重複する。そのため、生徒状態特定部13は、授業状況判定部11の画像解析部12による画像解析結果を取得し、各生徒Pの状態を特定する構成であっても構わない。この場合、生徒状態特定部13には画像解析部14を設ける必要がなく、ハードウェアプロセッサー10において重複した処理が行われることを回避することができ、処理効率を向上させることができる。
【0032】
生徒状態特定部13は、画像解析部14によって特定される各生徒Pの動作に基づき、授業を受けている各生徒Pの現在の状態を特定する。図4は、生徒状態特定部13によって特定される各生徒Pの状態の例を示す図である。例えば、生徒状態特定部13は、各生徒Pがノートをとっている状態、教師を見ている状態、黒板を見ている状態、教科書等を見ている状態、他の生徒と相談している状態など、複数の状態のうちのいずれの状態であるかを特定する。
【0033】
例えば、画像解析部14による画像解析の結果、生徒Pの視線方向が机上であり、生徒Pの手が机上で動いている場合、生徒状態特定部13は、生徒Pの状態がノートをとっている状態であると特定する。また、画像解析部14による画像解析の結果、生徒Pの視線方向が教師Tの方向である場合、生徒状態特定部13は、生徒Pの状態が教師Tを見ている状態であると特定する。また、画像解析部14による画像解析の結果、生徒Pの視線方向が黒板方向である場合、生徒状態特定部13は、生徒Pの状態が黒板を見ている状態であると特定する。更に、画像解析部14による画像解析の結果、生徒Pの視線方向が他の生徒に向いている場合、生徒状態特定部13は、他の生徒と相談をしている状態であると特定する。尚、この他にも、生徒状態特定部13は、生徒Pの状態として様々な状態を特定可能であり、例えば発表中の他の生徒を見ている状態などを特定することが可能である。また、生徒状態特定部13は、授業を受けている全ての生徒Pについて上記の特定処理を行う。生徒状態特定部13は、各生徒Pの状態を特定すると、その特定結果を集中度評価部15へ出力する。
【0034】
集中度評価部15は、授業に対する各生徒Pの集中度を評価する。すなわち、集中度評価部15は、授業状況判定部11による判定結果、及び、生徒状態特定部13による特定結果に基づき、授業に対する各生徒Pの集中度を評価する。集中度評価部15は、各生徒Pの集中度を評価するとき、記憶部20から評価基準情報22を読み出し、その評価基準情報22に基づいて各生徒Pの集中度を個別に算出する。
【0035】
図5は、評価基準情報22の一構成例を示す図である。評価基準情報22は、図5に示すように、授業状況判定部11によって判定される授業状況に応じて生徒Pの状態に優先順位が予め付与された情報である。すなわち、評価基準情報22には、授業状況に応じて生徒Pの好ましい状態が順位付けされている。そのため、評価基準情報22は、生徒状態特定部13によって特定される生徒Pの状態の順位が高い程、その生徒Pの集中度が高く評価される情報となっている。言い換えると、評価基準情報22は、授業状況に応じて生徒Pのとるべき状態(態度)に優先順位が付されている。
【0036】
集中度評価部15は、授業状況判定部11によって判定された授業状況、及び、生徒状態特定部13によって特定された各生徒Pの状態に基づいて評価基準情報22を参照することにより、授業に対する各生徒Pの集中度を算出する。例えば、教師が黒板に書き込みをしている状況において、生徒Pの状態がノートをとっている状態であるとき、その生徒Pの集中度は100%と算出される。また例えば、生徒同士がグループワークを行っている状況において、生徒Pの状態がノートをとっている状態であるとき、その生徒Pの集中度は80%と算出される。つまり、集中度評価部15は、授業状況に応じて生徒Pの状態の評価基準を変更するため、生徒Pの状態が同じ状態であっても授業状況が変われば集中度の評価が異なる評価となる。尚、図5に示す集中度(%)の数値は単なる一例であり、図5とは異なる数値を採用しても構わない。
【0037】
集中度評価部15は、授業中、授業を受けている各生徒Pの集中度をリアルタイムに算出し、ログ情報15aに記録する。したがって、ログ情報15aには、授業中における各生徒Pの集中度の変化が記録されることになる。尚、集中度評価部15は、各生徒Pの集中度をリアルタイムに算出するのではなく、所定時間間隔(例えば1分間隔など)で定期的に算出するようにしても構わない。
【0038】
また、集中度評価部15は、授業終了後、ログ情報15aに基づいて各生徒Pの集中度を集計する。このとき、集中度評価部15は、授業中における各生徒Pの平均集中度、授業中における複数の生徒Pの集中度の平均値による授業全体での集中度の変化などを算出する。また、集中度評価部15は、授業中における授業状況と集中度の変化とを対応付けたデータも生成する。集中度評価部15によって集中度の集計処理が行われることにより、授業終了後、教師Tに対して各生徒Pの集中度の変化を詳細に亘ってフィードバックすることができる。
【0039】
次に、授業支援装置2による具体的な動作の例について説明する。図6乃至図8は、授業支援装置2によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、ハードウェアプロセッサー10がプログラム21を実行することによって行われる処理である。授業支援装置2は、授業開始に伴い、フローチャートに基づく処理を開始する。
【0040】
まず、授業支援装置2は、カメラ3a,3bを駆動して授業風景の撮影を開始する(ステップS1)。これにより、カメラ3a,3bから授業風景を撮影した画像の出力が開始される。カメラ3a,3bの駆動を開始すると、授業支援装置2は、カメラ3a,3bによって撮影された画像を取得する(ステップS2)。
【0041】
授業支援装置2は、授業風景を撮影した画像を取得すると、授業状況判定処理を実行する(ステップS3)。図7は、授業状況判定処理(ステップS3)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。授業支援装置2は、授業状況判定処理を開始すると、まずカメラ3a,3bから取得した画像に基づき、授業を行っている教師Tの位置及び向きを特定する(ステップS10)。このとき、授業支援装置2は、教師Tの手の位置、及び、手に教科書等を持っているか否かを更に特定する。また、授業支援装置2は、カメラ3a,3bから取得した画像に基づき、授業を受けている各生徒Pの姿勢及び向きを特定する(ステップS11)。
【0042】
次に、授業支援装置2は、教師Tが教壇にいるか否かを判断する(ステップS12)。教師Tが教壇にいる場合(ステップS12でYES)、授業支援装置2は、教師Tが黒板に向いているか否かを更に判断する(ステップS13)。教師Tが教壇にいて黒板に向いている場合(ステップS13でYES)、授業支援装置2は、授業状況として、教師Tが黒板に書き込みをしている状況であると判定する(ステップS14)。
【0043】
また、教師Tが教壇にいるものの、黒板に向いていない場合(ステップS13でNO)、授業支援装置2は、特定の生徒Pが起立しているか否かを判断する(ステップS15)。特定の生徒Pが起立している場合(ステップS15でYES)、授業支援装置2は、授業状況として、生徒Pが発表している状況であると判定する(ステップS16)。
【0044】
また、特定の生徒Pが起立していない場合(ステップS15でNO)、授業支援装置2は、所定数以上の生徒Pが互いに向き合っているか否かを判断する(ステップS17)。所定数以上の生徒Pが互いに向かっている場合(ステップS17でYES)、授業支援装置2は、授業状況として、生徒同士がグループワークを行っている状況であると判定する(ステップS18)。
【0045】
一方、教師Tが教壇にいない場合(ステップS12)、教師Tは生徒エリアにいることになる。この場合、授業支援装置2は、教師Tが教科書等を持っているか否かを判断する(ステップS19)。教師Tが教科書等を持っている場合(ステップS19でYES)、授業支援装置2は、授業状況として、教師Tが教科書等を持って説明している状況であると判定する(ステップS20)。また、ステップS17において、所定数以上の生徒Pが互いに向き合っていないと判断した場合(ステップS17でNO)も同様に、授業支援装置2は、授業状況として、教師Tが教科書等を持って説明している状況であると判定する(ステップS20)。
【0046】
また、教師Tが教科書等を持っていない場合(ステップS19でNO)、授業支援装置2は、授業状況として、教師Tが課題を出して見回っている状況であると判定する(ステップS21)。以上で、授業状況判定処理が終了する。
【0047】
次に、授業支援装置2は、生徒状態特定処理を実行する(ステップS4)。図8は、生徒状態特定処理(ステップS4)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。授業支援装置2は、生徒状態特定処理を開始すると、まずカメラ3a,3bから取得した画像に基づき、授業を行っている教師Tの位置を特定する(ステップS30)。また、授業支援装置2は、カメラ3a,3bから取得した画像に基づき、授業を受けている各生徒Pの姿勢、視線方向、及び手の位置を特定する(ステップS31)。
【0048】
次に、授業支援装置2は、生徒Pの視線方向が教師のいる方向であるか否かを判断する(ステップS32)。生徒Pの視線方向が教師のいる方向である場合(ステップS32でYES)、授業支援装置2は、生徒Pの状態として、教師を見ている状態であると特定する(ステップS33)。
【0049】
また、生徒Pの視線方向が教師のいる方向ではない場合(ステップS32でNO)、授業支援装置2は、生徒Pの視線方向が黒板方向であるか否かを判断する(ステップS34)。生徒Pの視線方向が黒板方向である場合(ステップS34でYES)、授業支援装置2は、生徒Pの状態として、黒板を見ている状態であると特定する(ステップS35)。
【0050】
また、生徒Pの視線方向が黒板方向ではない場合(ステップS34でNO)、授業支援装置2は、生徒Pの視線方向が机上の方向であるか否かを判断する(ステップS36)。生徒Pの視線方向が机上の方向である場合(ステップS36でYES)、授業支援装置2は、更に生徒Pの手が机上で動いているか否かを判断する(ステップS37)。その結果、生徒Pの手が机上で動いている場合(ステップS37でYES)、授業支援装置2は、生徒Pの状態として、ノートをとっている状態であると特定する(ステップS38)。また、生徒Pの手が机上で動いていない場合(ステップS37でNO)、授業支援装置2は、生徒Pの状態として、教科書等を見ている状態であると特定する(ステップS39)。
【0051】
また、生徒Pの視線方向が机上の方向でもない場合(ステップS36でNO)、授業支援装置2は、生徒Pの状態として、他の生徒と相談している状態であると特定する(ステップS40)。ステップS32~S40の処理は、授業を受けている各生徒Pについて繰り返し行われる。そのため、生徒状態特定処理では、授業を受けている全ての生徒Pの状態を特定することができる。以上で、生徒状態特定処理が終了する。
【0052】
図6のフローチャートに戻り、授業支援装置2は、集中度評価処理を実行する(ステップS5)。すなわち、授業支援装置2は、上述した集中度評価部15を機能させ、授業状況判定処理(ステップS3)において判定された授業状況と、生徒状態特定処理(ステップS4)において特定された生徒Pの状態とに基づいて評価基準情報22を参照することにより、授業に対する生徒Pの集中度を算出する。授業支援装置2は、各生徒Pの集中度を算出すると、各生徒Pの集中度をログ情報15aに記録する。
【0053】
その後、授業支援装置2は、授業が終了したか否かを判断する(ステップS6)。授業が終了していない場合(ステップS6でNO)、授業支援装置2による処理は、ステップS2へと戻り、上述した処理を繰り返す。したがって、授業支援装置2は、授業中、カメラ3a,3bで撮影された画像を繰り返し取得し、各生徒Pの集中度をリアルタイムに評価する。
【0054】
授業が終了した場合(ステップS6でYES)、授業支援装置2は、カメラ3a,3bによる撮影動作を終了させる(ステップS7)。そして授業支援装置2は、集中度集計処理を実行する(ステップS8)。集中度集計処理では、授業中にリアルタイムで算出された各生徒Pの集中度を集計し、授業全体での集中度(平均集中度など)が算出される。
【0055】
図9は、授業支援装置2において生成されるある生徒Pの授業中における集中度の変化を示す図である。尚、図9に示す授業状況の符号A1~A4は、図3に示した授業状況の符号A1~A4に対応している。図9に示すように、授業支援装置2は、授業中の授業状況の変化と、それに伴う生徒Pの集中度の変化とを記録することが可能である。そのため、教師Tは、どのような授業状況のときに生徒Pの集中度が低下しやすく、また、どのような授業状況のときに生徒Pの集中度が上昇しやすいかを、授業支援装置2によって生成される集計データから把握することができ、次回以降の授業にフィードバックすることができる。
【0056】
以上のように本実施形態の授業支援システム1は、授業中、教師Tと、全ての生徒Pとを撮影手段3によって常時撮影し、撮影手段3によって撮影された画像に基づいて、授業状況を判定すると共に、各生徒Pの状態を特定する。そして授業支援システム1は、授業中の授業状況に応じて各生徒の状態の評価基準を変更し、授業に対する生徒Pの集中度を評価する構成である。このような構成によれば、授業中の生徒の集中度を評価することができない事態が生じることがなく、授業開始から終了までの授業中の生徒の集中度の変化を正しく評価することができるようになる。しかも、この授業支援システム1によれば、授業状況の変化に伴って生徒Pの集中度がどのように変化するかを容易に把握できるため、教師Tによる授業の質向上を期待することができる。
【0057】
ただし、上述した授業支援システム1は、教師Tによる授業の質向上のみに利用し得るものではない。例えば、上述した授業支援システム1は、授業中の生徒Pの態度を評価するためにも利用し得るものであり、例えば企業の社員研修などにも適用し得るものである。
【0058】
以上、本発明に関する好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0059】
例えば上記実施形態で説明したプログラム21は、授業支援装置2の記憶部20に予め記憶されているものに限られない。すなわち、授業支援装置2において実行されるプログラム21は、それ単体で取引の対象となるものであっても構わない。この場合、プログラム21は、インターネットなどのネットワークを介してダウンロード可能な態様で提供されるものであっても良いし、またCD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 授業支援システム
2 授業支援装置
3 撮影手段
3a,3b カメラ
11 授業状況判定部
13 生徒状態特定部
15 集中度評価部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9