(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117211
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】データセンターのフロア構造およびデータセンター
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20240822BHJP
F24F 1/0053 20190101ALI20240822BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240822BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20240822BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
F24F1/0053
F24F5/00 K
F24F13/068 A
F24F13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023168
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100216677
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕久
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AC02
3L080BB04
(57)【要約】
【課題】データセンターの高さ方向の利用効率をさらに向上させるとともに、サーバラック間の負荷の不均一により空調能力が過剰となることを極力排する。
【解決手段】基礎部10から所定の高さの位置に配置した鉄骨架台31の上部に設けられた1階のフリーアクセスフロア41と、1階のサーバエリア40の上部の位置に配置した鉄骨架台31の上部に設けられた2階のフリーアクセスフロア41とを有し、免震層20に設置された空調装置21からの冷風を、1階のフリーアクセスフロア41に設けられた開口部を通して1階のサーバエリア40に供給して1階のサーバエリア40内のサーバラック42を冷却し、さらに2階のフリーアクセスフロア41に設けられた開口部を通して2階のサーバエリア40に供給して2階のサーバエリア40内のサーバラック42を冷却する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部に設置された免震装置の上に構築された上部躯体の内部に多数のサーバを収納するデータセンターのフロア構造であって、
前記基礎部から所定の高さの位置に配置した第1の架台と、
前記第1の架台の上部に設けられた第1の床構造と、
前記第1の床構造の上部の第1のサーバエリアの上部の位置に配置した第2の架台と、
前記第2の架台の上部に設けられた第2の床構造と、を有し、
前記第1のサーバエリアおよび前記第2の床構造の上部の第2のサーバエリアには、前記サーバを収納する複数のサーバラックが配置され、
前記第1の床構造の下部の床下エリアは、前記基礎部と前記第1の架台との間の免震層により形成され、
前記床下エリアに設置された空調装置からの冷風を、前記第1の床構造に設けられた開口部を通して前記第1のサーバエリアに供給して前記第1のサーバエリア内の前記サーバラックを冷却し、さらに前記第2の床構造に設けられた開口部を通して前記第2のサーバエリアに供給して前記第2のサーバエリア内の前記サーバラックを冷却する、データセンターのフロア構造。
【請求項2】
請求項1に記載のデータセンターのフロア構造において、
前記第1のサーバエリア内の前記サーバラックおよび前記第2のサーバエリア内の前記サーバラックの上部に、前記サーバラックに供給される前記空調装置からの冷風と、前記サーバラックから排出される熱風とを遮断する仕切りを有する、データセンターのフロア構造。
【請求項3】
コンピュータ室に多数のサーバを収納するデータセンターであって、
最下層およびその上階の層の前記コンピュータ室が、請求項1または2のいずれか1項に記載のデータセンターのフロア構造を有することを特徴とするデータセンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データセンターの構築技術に関し、特に、多数のサーバを収納する大規模データセンターのフロア構造およびデータセンターに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
データセンターでは、多数のサーバやルータ等のICT(Information and Communication Technology)機器(以下では単に「サーバ」と記載する場合がある)を、サーバラック等を利用して収納する。サーバラック等を設置するコンピュータ室のフロア構造は、一般的に、各階層における床スラブ等の床面の上に、いわゆるフリーアクセスフロアによって二重床を構成し、その上にサーバラック等が複数配置される構造となっている。
【0003】
ここで、サーバラックおよび収納されたサーバに対する電源や通信の供給のためのケーブルは、主に、本来の床面とフリーアクセスフロアによって上げ底にした床面との間の床下の空間を利用してサーバラックまで配線される。
【0004】
また、サーバラックに収納された多数のサーバは、それぞれが熱を発するため、これを排出して冷却する必要があるが、このための冷風は、床下の空間から供給する方式が主流である。空調装置等から床下の空間に供給された冷風は、フリーアクセスフロアに設けられた開口部から床上に流れ、サーバラックの前面(もしくは背面や側面)側からサーバに供給されて、サーバラックの背面(もしくは前面や側面)側から排気される。排気された熱風は、天井面の排気グリル等から天井裏に流れるなどにより、空調装置等に還流する。
【0005】
このような、フリーアクセスフロアによる二重床構造においては、床下のケーブルルートが煩雑化し、また、開口部以外は密閉されていて床下を直接視認できないことから、ケーブル等の敷設や管理には多大な負荷がかかっている。また、床下のケーブルルートが煩雑化することにより、煩雑化したケーブルが空調装置等から供給された冷風の風道を塞いで空調効率を低下させ、温度条件を悪化させる場合も生じている。このような状況は、近年のサーバ収納の高密度化によってさらに生じ易くなっている。
【0006】
このような課題に対する技術として、例えば、特許第5377193号公報(特許文献1)には、床スラブから所定の高さの位置に格子状に配置した鉄骨からなる支持部材と、支持部材の上部に配置したフリーアクセスフロアとを有し、フリーアクセスフロアの上部のサーバエリアには、フリーアクセスフロアの上に複数のサーバラックが間にメンテナンス通路を構成するように列状に配置され、フリーアクセスフロアの下部の床下エリアは、データセンターの設備に係るメンテナンス作業を人が入って行うことが可能である高さで、床スラブと支持部材との間に形成され、さらに、床下エリアでは、メンテナンス通路の下部から、メンテナンス通路部分のフリーアクセスフロアに設けられた開口部を通してサーバエリアに空調装置からの冷風を供給するデータセンターのフロア構造が記載されている。
【0007】
また、特許第6335479号公報(特許文献2)には、免震装置が設置された基礎部から所定の高さの位置に配置した架台と、架台の上部に設けられた床構造とを有し、床構造の上部のサーバエリアには、サーバを収納する複数のサーバラックが配置され、床構造の下部の床下エリアは、サーバに接続されるケーブルの配線を含むデータセンターの設備に係るメンテナンス作業を人が入って行うことが可能である高さで、基礎部と架台との間の免震層により形成され、床下エリアに設置された空調装置からの冷風を、床構造に設けられた開口部を通してサーバエリアに供給するデータセンターのフロア構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5377193号公報
【特許文献2】特許第6335479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された従来技術によれば、鉄骨架台にて支持された堅牢な床の上にサーバエリアを設け、その下層に大空間の床下エリアを設けることで、床下空間を確保するための嵩高で重厚なフリーアクセスフロアを不要としつつ、サーバエリアの高い耐震性と、自由度の高い配線レイアウトを実現することができる。また、サーバラックへの電源やケーブル配線などのメンテナンス作業を床下エリアから容易に行うことができる。
【0010】
また、床下エリアにサーバの負荷に合わせて自由度の高いレイアウトで空調装置を配置することができ、また、床下エリアの空間を空調装置からの冷風のバッファ空間とすることで抵抗の少ない低消費電力での送風を可能とし、全体として空調効率を大きく向上させることができる。これらにより、データセンターにおける平面的な利用効率を向上させ、建設コストおよび運用コストを含めたデータセンター全体としての運営コストを大きく低減させることができる。
【0011】
さらに、特許文献2に記載された従来技術によれば、従来上部躯体内に設置されていた空調装置等の設備を基礎部の免震層に設置して、免震層を最下階のサーバエリアに対する床下のメンテナンスエリアとして利用することで、データセンターの建物の高さ方向の利用効率を向上させるとともに、上部躯体の重量を低減させて建設コストを低減させることができる。
【0012】
しかしながら、このような基礎部に免震層を有する基礎免震構造の建物の場合、一般的に免震層は建物の最下層に構成されることから、例えば、特許文献2に記載された従来技術では、最下階のサーバエリアの1フロアのみが対象となり、サーバエリア(フロア)のさらなる積層化に対応することができない。
【0013】
また、データセンターでは多種多様な業務を処理するサーバが混在しており、常に高負荷で稼働するわけではないサーバも存在することから、同一のサーバエリアに設置されたサーバラックでも負荷は一律ではなくバラツキがあることも多い。これらのサーバラックを冷却するために設置する空調装置は、通常、フロアごとに全てのサーバラックの総負荷を想定して能力や台数を設計しているが、実際の運用ではサーバラック間で負荷にバラツキがあることから、空調装置の出力や稼働台数を抑えて運用しているのが現状であり、過剰な設備となっている場合がある。
【0014】
そこで本発明の目的は、基礎免震構造における免震層を最下階のサーバエリアに対する床下のメンテナンスエリアとするフロア構造を有するデータセンターにおいて、高さ方向の利用効率をさらに向上させるとともに、サーバラック間の負荷の不均一により空調能力が過剰となることを極力排することができるデータセンターのフロア構造およびデータセンターを提供することにある。
【0015】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0017】
本発明の代表的な実施の形態によるデータセンターのフロア構造は、基礎部に設置された免震装置の上に構築された上部躯体の内部に多数のサーバを収納するデータセンターのフロア構造であって、前記基礎部から所定の高さの位置に配置した第1の架台と、前記第1の架台の上部に設けられた第1の床構造と、前記第1の床構造の上部の第1のサーバエリアの上部の位置に配置した第2の架台と、前記第2の架台の上部に設けられた第2の床構造と、を有するものである。
【0018】
前記第1のサーバエリアおよび前記第2の床構造の上部の第2のサーバエリアには、前記サーバを収納する複数のサーバラックが配置され、前記第1の床構造の下部の床下エリアは、前記基礎部と前記第1の架台との間の免震層により形成され、前記床下エリアに設置された空調装置からの冷風を、前記第1の床構造に設けられた開口部を通して前記第1のサーバエリアに供給して前記第1のサーバエリア内の前記サーバラックを冷却し、さらに前記第2の床構造に設けられた開口部を通して前記第2のサーバエリアに供給して前記第2のサーバエリア内の前記サーバラックを冷却する。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、基礎免震構造における免震層を最下階のサーバエリアに対する床下のメンテナンスエリアとするフロア構造を有するデータセンターにおいて、高さ方向の利用効率をさらに向上させるとともに、サーバラック間の負荷の不均一により空調能力が過剰となることを極力排することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態であるデータセンターのフロア構造の例について概要を示した図である。
【
図2】本発明の一実施の形態であるデータセンターのフロア構造の他の例について概要を示した図である。
【
図3】従来技術を利用したデータセンターのフロア構造の例について概要を示した図である。
【
図4】従来技術におけるサーバラック間の負荷の不均一の例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下においては、本発明の特徴を分かり易くするために、従来の技術と比較して説明する。
【0023】
<概要>
データセンターにおいてサーバの収容能力を高める場合、サーバエリアを有するフロアを積層化して複数階とすることが検討される。ここで、例えば、特許文献2に記載された従来技術のデータセンター、すなわち基礎免震構造における免震層を最下階のサーバエリアに対する床下のメンテナンスエリアとするフロア構造を有するデータセンターにおいて、上階にさらにサーバエリアのフロアを設けて複層化することを考える。この場合、従来技術では、一般的なデータセンターのフロア構造、すなわち各階層における床スラブ等の床面の上にフリーアクセスフロアによって二重床を構成し、その上にサーバラックを配置する構造のフロアを構成することになる。
【0024】
図3は、上記の特許文献2に記載された従来技術を利用したデータセンターのフロア構造の例について概要を示した図である。
図3の例では、データセンターにおける最下層(1階)のサーバエリア40とその上階(2階)のサーバエリア40に係るフロア構造を模式的に示しており、上述したように、1階については、サーバエリア40に対する床下のメンテナンスエリアとして免震層20を用いる二重構造を有している。
【0025】
すなわち、基礎部10の上に設置された免震装置11の上に構築された上部躯体30を有しているが、上部躯体30における最下層(1階)のサーバエリア40は、免震層20の上部にて格子状などに組まれた鉄骨架台31の上に設けられたフリーアクセスフロア41を含む床構造の上部に形成されている。なお、
図3の例では床構造としてフリーアクセスフロア41を用いているが、グレーチングやエキスパンドメタルなどの通気性を有するパネルなどを用いてもよい。
【0026】
1階のサーバエリア40内のサーバラック42等に対するケーブル等のメンテナンス作業は、メンテナンスエリアに相当する免震層20から行うことができる。また、1階のサーバエリア40に対しては、免震層20に設置された空調装置21や、図示しない局所空調装置から、鉄骨架台31の隙間部分およびフリーアクセスフロア41の図示しない開口部等を通して下部から冷風を供給することで効率的にサーバラック42等を冷却することができる(白抜きの矢印参照)。サーバラック42等を冷却して排出された熱風は、天井部およびサーバエリア40外の排気チャンバー32を流れて免震層20の空調装置21に還流する(網掛けの矢印参照)。
【0027】
図3の例では、2階のサーバエリア40に係るフロア構造は、従来技術の一般的なフロア構造であり、床スラブ等の床面の上にフリーアクセスフロア41によって二重床を構成し、その上にサーバラック42を配置する構造を有する。そして、二重床の床下エリア外に設置された空調装置21から床下エリアに対して冷風を供給し、フリーアクセスフロア41の図示しない開口部等を通して下部から冷風を供給することでサーバラック42等を冷却する(白抜きの矢印参照)。サーバラック42等を冷却して排出された熱風は、天井部およびサーバエリア40外の排気チャンバー32を流れて空調装置21に還流する(網掛けの矢印参照)。
【0028】
なお、従来技術の一般的なフロア構造ではなく、上述した特許文献1に記載されたような床下のメンテンナンスエリアを有する二重構造を積み上げる構成とすることも考えられる。
【0029】
いずれにしても、空調については各階個別となることから、2階フロアにも空調装置21やこれを設置するための図示しない空調機械室、配管等の付帯設備が必要となってしまう上に、免震装置11上の上部躯体30の重量も増加して建設コストが増加してしまう。また、各階の空調装置21を含む空調管理が煩雑となり、空調装置21などの保守修繕や更新等の管理コストも増加してしまう。
【0030】
また、1階フロアについては、局所的に高負荷となるサーバラック42がある場合でも、その下部の免震層20に図示しない局所空調装置を追加で設置する等により局所的に冷却することが可能である。一方、2階フロアについては、一般的な空調方式となることから、設置できるサーバラック42の負荷には制限が生じ得る。また、サーバラック42間で負荷の不均一が発生した場合、後述するように空調能力に余剰が生じる可能性がある。
【0031】
そこで本発明の一実施の形態であるデータセンターのフロア構造では、上記の特許文献2に記載されたような、免震層20を最下層(1階)のサーバエリア40に対する床下のメンテナンスエリアとするフロア構造を有するデータセンターにおいて、上階(2階)にさらにサーバエリア40のフロアを設けて複層化する際、上階のサーバエリア40の空調についても、免震層20に設置した空調装置21によりまとめて行う。これにより、データセンターの高さ方向の利用効率をさらに向上させることを可能とし、データセンター全体としての運営コストをより一層低減させることを可能とする。
【0032】
<複層化した場合のフロア構造>
図1は、本発明の一実施の形態であるデータセンターのフロア構造の例について概要を示した図である。
図1の例では、
図3の例と同様に、データセンターにおける最下層(1階)のサーバエリア40とその上階(2階)のサーバエリア40に係るフロア構造を模式的に示している。上述したように、1階については、上記の特許文献2に記載された従来技術と同様に、サーバエリア40に対する床下のメンテナンスエリアとして免震層20を用いる二重構造を有している。そして、本実施の形態では、上階(2階)のサーバエリア40に係るフロア構造として、
図3の例と同様に、床スラブ等の床面の上にフリーアクセスフロア41によって二重床を構成し、その上にサーバラック42を配置する従来技術の一般的なフロア構造をとる。
【0033】
一方で、本実施の形態では、1階フロアに設置されたサーバラック42およびその上部に設置された仕切り43により、2階フロアの床部分に設けた開口部を介して2階フロアにつながる給気チャンバー44を構成する。これにより、免震層20に設置した空調装置21からの冷風を、1階フロアの床部分の開口部→1階フロアのフリーアクセスフロア41の開口部→1階フロアのサーバラック42→給気チャンバー44→2階フロアの床部分に設けた開口部→2階フロアのフリーアクセスフロア41の開口部→2階フロアのサーバラック42というルートで供給する(図中の白抜き矢印参照)。
【0034】
このように、免震層20に設置した空調装置21により、1階フロアと2階フロアのサーバラック42へまとめて冷風を給気するため、
図3の例に示したような2階フロアの空調装置21や配管等は設置を要しない。なお、効率的に冷却を行えるようにするため、1階フロアのサーバラック42には発熱量の大きい高負荷のICT機器を収納し、2階フロアのサーバラック42には一般的な負荷のICT機器を収納するのが望ましい。
【0035】
各フロアのサーバラック42等を冷却して排出された熱風は、
図3の例と同様に各フロアの天井部およびサーバエリア40外の排気チャンバー32を流れて免震層20の空調装置21に還流する(図中の網掛け矢印参照)。なお、本実施の形態では2階フロアに空調装置21を設置する必要がないことから、上部躯体30の外部の排気チャンバー32は、2階フロアから排出された熱風についても外気とあわせて免震層20に還流させる構造とすることができる。
【0036】
図2は、本発明の一実施の形態であるデータセンターのフロア構造の他の例について概要を示した図である。
図2の例では、
図1に示したフロア構造について90度側面から見たもの(
図1の例ではy軸方向から見ていたものを
図2の例ではx軸方向から見たもの)を模式的に示している。各フロアではそれぞれサーバラック42(の列)が対向する状態で配置されており、サーバラック42(の列)およびその上部に設置された仕切り43により、サーバラック42間の空間およびその上方の空間に給気チャンバー44を構成する。
【0037】
図では、免震層20に設置された空調装置21からの冷風が、給気チャンバー44を通って1階および2階の各フロアのサーバラック42の前面(もしくは背面)から給気され(白抜きの矢印参照)、サーバラック42の背面(もしくは前面)から各フロアの排気チャンバー32に排出される(網掛けの矢印参照)状態を示している。冷風が供給される給気チャンバー44を含むエリア(図中の薄い網掛け部分で示す)と熱風が排出される排気チャンバー32を含むエリア(図中の濃い網掛け部分で示す)とは、各サーバラック42(の列)および仕切り43により隔離され、冷風と熱風とが混ざらない構成となっている。
【0038】
本実施の形態では、免震層20に空調装置21を設置することから、設置場所の自由度は高く、また、局所的に高負荷なサーバラック42(ICT機器)が発生した場合など、当該サーバラック42の下部に追加の空調装置21やブースターファン等を設置することで、局所的に冷却能力を向上させることができる。すなわち、フロア内の各サーバラック42に対して冷却能力に平面的な強弱の分布をつけることができるため、無駄な冷却能力の発生を抑えて冷却効率を向上させることができる。
【0039】
図4は、従来技術におけるサーバラック42間の負荷の不均一の例について概要を示した図である。
図4の例における上段・下段の図いずれも、データセンターのフロアを上方から見た図を模式的に示しており、フリーアクセスフロア41により構成された床面にサーバラック42の列が対面で設置され、列間のエリアに対して空調装置21からの冷風をフリーアクセスフロア41の床下から供給することを示している。
【0040】
図4の上段の図は、空調の設計時における想定の例を示しており、例えば、フロアの全てのサーバラック42(12台×4列=計48台)の負荷が同じ中負荷(例えば、UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)の電力が4.8kW)のものである場合を示している。一般的に、データセンターでは、フロアごとのサーバラック42(ICT機器)の負荷にあわせて必要な冷却能力を設定し、これを充足する空調装置21の台数を決定する。上段の図の場合、合計のUPS電力は4.8kW×48台=230.4kWとなる。この負荷に対して、例えば、120kWの空調装置21により冷却する場合、空調装置21は2台必要となり、合計の冷却能力は120kW×2台=240kWとなる(さらに冗長構成としてプラスn台(
図4の例では1台)の空調装置21も用意する必要がある)。
【0041】
これに対し、
図4の下段の図では実運用での例を示しており、フロア内の各サーバラック42について負荷がまちまちである状態を示している。低負荷(例えば、UPS電力が2.0kW)のサーバラック42が20台、中負荷のサーバラック42が22台、高負荷(例えば、UPS電力が7.5kW)のサーバラック42が6台という状態であった場合、合計のUPS電力は2.0kW×20台+4.8kW×22台+7.5kW×6台=190.6kWとなり、当該フロアの合計のUPS電力は、設計時の想定と比べて50kWほども下がることになる。
【0042】
しかしながら、120kWの空調装置21の場合、1台では冷却能力が不足するため、結局2台必要(さらに冗長構成で同等の空調装置21がプラスn台必要)となり、空調装置21の冷却能力に大きな余剰が発生することになる。これに対し、本実施の形態では、上述したように、サーバラック42の負荷の分布に応じて局所的に冷却能力を向上させることができることから、ベースの空調装置21の冷却能力を抑えて設計し(例えば、
図4の例では120kWの空調装置21を1台とする)、局所的に不足が生じる箇所(例えば、高負荷のサーバラック42が集まる箇所)に対して免震層20において冷却能力を補充することで、冷却能力の無駄を排し、全体として冷却効率を向上させることができる。
【0043】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるデータセンターのフロア構造によれば、免震層20上部の最下層(1階)のサーバエリア40とその上階(2階)のサーバエリア40の空調を、免震層20に設置した空調装置21によりまとめて行うことから、データセンターの高さ方向の利用効率をさらに向上させることが可能である。また、空調装置21等の設備関連の集約化により、上部躯体30の重量を低減させることができ、上部躯体30のスリム化、免震装置11の小型化等によりデータセンターの建設コストを削減することが可能である。
【0044】
また、各フロアにおけるサーバラック42の全体負荷に対して、空調装置21等の空調関連機器の性能や員数の適正化を図ることができ、空調環境の適正化、管理の簡素化、保守修繕コストの削減などを実現することが可能である。また、免震層20に空調装置21等の空調関連機器を設置することから、空調供給空間と電源関連の設備とを分離することができ、安全性や保守性を向上させることが可能である。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、多数のサーバを収納する大規模データセンターのフロア構造およびデータセンターに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…基礎部、11…免震装置、
20…免震層、21…空調装置、
30…上部躯体、31…鉄骨架台、32…排気チャンバー、
40…サーバエリア、41…フリーアクセスフロア、42…サーバラック、43…仕切り、44…給気チャンバー