(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117213
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】人流追跡システム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/66 20060101AFI20240822BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20240822BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01S17/66
G01S17/89
G01S7/497
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023172
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(71)【出願人】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】北 隼人
(72)【発明者】
【氏名】横田 雄史
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 修
(72)【発明者】
【氏名】大浦 理路
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA04
5J084AA05
5J084BA03
5J084BA50
5J084EA20
(57)【要約】
【課題】反射壁面の影響を抑制しつつ正確に人流を追跡可能な構成を提供する。
【解決手段】制御部21における壁面情報取得処理により位置情報が取得された壁面のうち検出部10に対して光を反射しやすい壁面が反射壁面Wrとして特定される。そして、制御部21にてなされる人流追跡処理では、検出部10により検出される人の検出点(検出位置)のうち、検出部10との間に反射壁面Wrが位置している検出点が、虚像位置として追跡対象から除外される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の監視エリア内に入った人の移動を追跡する人流追跡システムであって、
前記所定の監視エリア内に向けた投光に応じて当該所定の監視エリア内の人を含めた物体からの反射光を受光することで前記物体の位置を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記所定の監視エリア内での人の移動を追跡する追跡部と、
前記所定の監視エリア内の壁面の位置情報を取得する壁面情報取得部と、
前記壁面情報取得部により位置情報が取得された壁面のうち前記検出部に対して光を反射しやすい壁面を反射壁面として特定する反射壁面特定部と、
を備え、
前記追跡部は、前記検出部により検出される人の検出位置のうち、前記検出部との間に前記反射壁面特定部により特定された前記反射壁面が位置している検出位置を、虚像位置として追跡対象から除外することを特徴とする人流追跡システム。
【請求項2】
前記追跡部は、前記反射壁面を基準に前記虚像位置と対称となる実像位置にて人が検出されていない場合に、前記実像位置を追跡対象として追加することを特徴とする請求項1に記載の人流追跡システム。
【請求項3】
前記壁面情報取得部は、前記検出部の検出結果を利用して前記所定の監視エリア内の壁面の位置情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の人流追跡システム。
【請求項4】
前記検出部は、反射強度を計測可能に構成され、
前記反射壁面特定部は、前記検出部により計測される反射強度が所定の閾値以上となる壁面を前記反射壁面として特定することを特徴とする請求項1に記載の人流追跡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の監視エリア内に入った人の移動を追跡する人流追跡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗前や公共施設、イベント会場等の大勢の人が移動するエリアにおいて、そのエリア内での各人の移動経路(人流)を知ることで、当該エリアに関して混雑緩和や販売促進、広告効果の向上等を図ることができるため、監視対象となる監視エリア内での人流を追跡するためのシステムが求められている。例えば、下記特許文献1に開示される人数計測システムでは、監視対象となる部屋の出入り口にそれぞれカメラを設置して人の出入りを監視し、検出された人の移動を追跡しつつ、その移動方向を検出してその部屋に滞留する人数を計数している。また、下記特許文献2に開示される人流動推定システムでは、LiDAR(レーザーセンサ)を用いて観測対象となる対象空間の出入口での流入人数および流出人数を計測して、その計測を用いて対象空間内での通行人の移動を推定することで、追跡精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-217289号公報
【特許文献2】特開2016-045919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物体からの反射光を受光することでその物体の位置などを検出するLiDARなどのレーザセンサでは、監視エリア内の鏡に写り込んだ人からの反射光がその鏡を介して受光されることで、鏡の向こう側に人が存在すると誤認する場合がある。鏡だけでなく、窓ガラス、さらにはレーザセンサの光軸との角度が小さくなる壁面も、レーザセンサに対して反射が生じやすくなるために上述のような誤認が生じる可能性がある。
【0005】
そうすると、上述のような反射が生じやすい壁面や窓ガラス及び鏡等(以下、反射壁面ともいう)を介して反射光が受光されることで検出された人と直接反射光が受光されることで検出された人とが、同じ人であっても区別できないために、別人と誤認されてしまう。さらに、その人が反射壁面にて反射されない位置まで移動すると、反射壁面の向こう側にいると認識されていた人が消えてその追跡が途切れるために、追跡エラー状態になってしまう。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、反射壁面の影響を抑制しつつ正確に人流を追跡可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、
所定の監視エリア(S)内に入った人の移動を追跡する人流追跡システム(1)であって、
前記所定の監視エリア内に向けた投光に応じて当該所定の監視エリア内の人を含めた物体からの反射光を受光することで前記物体の位置を検出する検出部(10)と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記所定の監視エリア内での人の移動を追跡する追跡部(21)と、
前記所定の監視エリア内の壁面の位置情報を取得する壁面情報取得部(21)と、
前記壁面情報取得部により位置情報が取得された壁面のうち前記検出部に対して光を反射しやすい壁面を反射壁面(Wr)として特定する反射壁面特定部(21)と、
を備え、
前記追跡部は、前記検出部により検出される人の検出位置のうち、前記検出部との間に前記反射壁面特定部により特定された前記反射壁面が位置している検出位置を、虚像位置(Pv)として追跡対象から除外することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、壁面情報取得部により位置情報が取得された壁面のうち検出部に対して光を反射しやすい壁面が反射壁面特定部により反射壁面として特定される。そして、追跡部では、検出部により検出される人の検出位置のうち、検出部との間に反射壁面特定部により特定された反射壁面が位置している検出位置が、虚像位置として追跡対象から除外される。
【0009】
反射壁面に写り込んだ人からの反射光がその反射壁面を介して検出部に受光される場合、検出部では、その人までの距離が反射壁面よりも遠くなるように計測されて、その人が反射壁面の向こう側に存在するように検出される。すなわち、その人の位置と検出部との間に反射壁面が位置することになる。このため、検出部との間に反射壁面が位置している検出位置を、反射壁面での反射に起因する虚像位置として追跡対象から除外することで、虚像を実像と誤認することなく、反射壁面での反射がなくなるために追跡が途切れる追跡エラー状態を抑制することができる。したがって、反射壁面の影響を抑制しつつ正確に人流を追跡可能な人流追跡システムを実現することができる。
【0010】
請求項2の発明では、追跡部は、反射壁面を基準に虚像位置と対称となる実像位置にて人が検出されていない場合に、その実像位置を追跡対象として追加する。これにより、検出対象となる人が検出部の死角等に移動したためにその人の位置(実像位置)を直接検出できなくても、その人の虚像位置が反射壁面を介して検出されることで、その虚像位置から反射壁面を基準に実像位置を推定して追跡を継続することができる。
【0011】
請求項3の発明では、壁面情報取得部により、検出部の検出結果を利用して所定の監視エリア内の壁面の位置情報が取得されるので、予め壁面の位置情報を取得する必要がなく、システム運用中に壁面に関して変更等があったとしても容易に壁面の位置情報を更新することができる。
【0012】
請求項4の発明では、検出部により計測される反射強度が所定の閾値以上となる壁面が反射壁面特定部により反射壁面として特定される。
【0013】
同じ材質の壁面であっても、検出部に対する壁面の位置、具体的には、検出部の光軸との角度が小さくなる壁面ほど(検出部に向かう反射光の反射角が大きくなる壁面ほど)、その検出部に対して光が反射されやすくなるために、検出部での反射強度が大きくなる。そうすると、同じ材質の壁面であっても、検出部に対する位置等によっては、虚像が検出され得る反射壁面となる場合と、虚像が検出されない非反射壁面となる場合とがある。このため、壁面情報取得部により位置情報が取得された壁面のうち、検出部により計測される反射強度が虚像の検出が想定され得る所定の閾値以上となる壁面を反射壁面として特定することで、予め反射壁面の位置情報を取得することなく、設置した検出部の位置に応じた反射壁面の位置を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る人流追跡システムによって人流が追跡される監視エリアを説明する説明図である。
【
図2】第1実施形態に係る人流追跡システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】反射壁面によって誤検出される虚像位置と実際の実像位置との関係を説明する説明図であり、
図3(A)は、実像位置が検出される場合を示し、
図3(B)は、実像位置が検出されない場合を示す。
【
図4】第1実施形態において制御部によりなされる人流追跡処理の流れを例示するフローチャートである。
【
図5】一周走査ごとに検出される実像位置及び虚像位置に関する位置の変化を説明する説明図である。
【
図6】
図5に対して一部の実像位置が検出されない場合での実像位置及び虚像位置に関する位置の変化を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の人流追跡システムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る人流追跡システム1は、所定の監視エリア(以下、監視エリアSともいう)内に入った人の移動を追跡するシステムである。本実施形態では、
図1に例示するように、3つの出入口Sa,Sb,Scがある室内を監視エリアSとしており、いずれかの出入口を通って室内に入った人を追跡対象とし、その人がいずれかの出入口を通って室外に出るまでその追跡を継続する。
【0016】
図2に示すように、人流追跡システム1は、監視エリアS内の物体の位置を検出する検出部10と、検出部10による検出結果に基づいて監視エリアS内での人の移動を追跡する追跡装置20とを備えている。
【0017】
検出部10は、LiDAR(Light Detection and Ranging)などの2次元走査型の測距装置であって、測定光を照射した照射方向にある物体から反射光を受光することでその物体までの距離(検出部10を基準とする位置)を計測するように構成されている。検出部10は、
図1に示すように監視エリアS内での所定位置に配置されて、その検出結果を追跡装置20に出力するように機能する。
【0018】
追跡装置20は、
図2に示すように、全体制御を司る制御部21及び半導体メモリ等からなる記憶部22に加えて、制御部21によって表示内容が制御される表示部23、入力操作に応じた操作信号を制御部21に出力する操作部24、検出部10や上位端末などの外部機器と通信するための通信部25などを備えている。
【0019】
本実施形態において、制御部21にてなされる人流追跡処理では、通信部25を介して検出部10から取得した検出結果等を利用して、監視エリアS内での人の移動を追跡する。その際、検出部10の位置から反射が生じやすい壁面や窓ガラス及び鏡等(以下、反射壁面ともいう)の近傍にいる人からの反射光が検出部10にて直接受光されるとともに、反射壁面に写り込んだ人からの反射光がその反射壁面を介して検出部10にて受光されることで、反射壁面近傍の人の位置(実像位置)と反射壁面の向こう側の位置(虚像位置)との双方が検出される場合がある。
【0020】
このため、本実施形態では、反射壁面での反射に起因して検出される虚像位置を追跡対象から除外するため、反射壁面の位置を利用して、その検出位置が虚像位置及び実像位置のいずれであるか判断する。なお、上記人流追跡処理を行う制御部21は、「追跡部」の一例に相当し得る。
【0021】
上述したように、検出部10では、監視エリアS内を移動する人からの反射光が直接受光されるだけでなく、反射壁面に写り込んだ人からの反射光がその反射壁面を介して受光される場合がある。このような場合、その反射状況等によっては、検出部10では、
図3(A)に例示するように、実際に存在する人の位置(実像位置Pr)と、反射壁面Wrに写り込んだ人の位置(虚像位置Pv)とが検出される。虚像位置Pvは、反射壁面Wrに関して実像位置Prと対称となる位置となり、検出部10から見て反射壁面Wrよりも遠くに位置する。このため、検出部10との間に反射壁面Wrが位置している検出位置を、反射壁面Wrでの反射に起因する虚像位置として追跡対象から除外することができる。
【0022】
また、監視エリアS内にて検出対象となる人が検出部10の死角に移動したために、その人からの反射光が直接受光されずに、反射壁面Wrに写り込んだ人からの反射光がその反射壁面Wrを介して受光される場合がある。すなわち、虚像位置にて人が検出されて、反射壁面Wrを基準に虚像位置と対称となる実像位置にて人が検出されていない場合がある。例えば、
図3(B)に例示するように、虚像位置Pvが検出される一方で、障害物Rのために実像位置Prが検出されない場合がある。このように虚像位置のみが検出される場合には、虚像位置を追跡対象から除外しつつ、その虚像位置から推定される実像位置を追跡対象として追加する。すなわち、反射壁面Wrを基準に虚像位置と対称となる位置を実像位置と推定でき、このように推定した実像位置を追跡対象として追加することで、検出部10の死角への移動に起因する追跡エラー状態を抑制することができる。
【0023】
そして、本実施形態では、制御部21にてなされる壁面情報取得処理により、移動している物体が無い状態での検出部10の検出結果を利用して、検出部10を基準とする監視エリアS内の壁面の位置情報等を予め取得する。なお、上記壁面情報取得処理を行う制御部21は、「壁面情報取得部」の一例に相当し得る。
【0024】
さらに、本実施形態では、制御部21にてなされる反射壁面特定処理により、上述のように位置情報等を取得した監視エリアS内の壁面のうち、検出部10により計測される反射強度を利用して、検出部10に対して光を反射しやすい壁面を反射壁面Wrとして特定する。
【0025】
同じ材質の壁面であっても、検出部10に対する壁面の位置、具体的には、検出部10の光軸との角度θ(
図3参照)が小さくなる壁面ほど(検出部10に向かう反射光の反射角が大きくなる壁面ほど)、その検出部10に対して光が反射されやすくなるために、検出部10での反射強度が大きくなる。そうすると、同じ材質の壁面であっても、検出部10に対する位置等によっては、検出部10に対して光を反射しやすいために虚像が検出され得る反射壁面Wrとなる場合と、虚像が検出されない非反射壁面Wn(
図3参照)となる場合とがある。
【0026】
このため、本実施形態では、上記壁面情報取得処理により位置情報が取得された壁面のうち、検出部10により計測される反射強度が所定の閾値以上となる壁面を反射壁面Wrとして特定する。本実施形態では、上記所定の閾値は、虚像の検出が想定され得る程度の閾値であって、例えば、想定される実像検出時の反射強度の90%程度に設定されている。なお、上記反射壁面特定処理を行う制御部21は、「反射壁面特定部」の一例に相当し得る。
【0027】
以下、上述した壁面情報取得処理及び反射壁面特定処理がなされることで、監視エリアS内の壁面の位置情報が取得されるとともに、その壁面のうち反射壁面Wrが特定された状態で、制御部21にてなされる人流追跡処理について、
図4に示すフローチャートを参照して詳述する。
【0028】
操作部24に対する所定の操作又は通信部25を介した上位端末からの指示に応じて制御部21により人流追跡処理が開始されると、
図4のステップS101に示す検出処理にて、一周走査された検出部10の検出結果に基づいて、監視エリアS内にて追跡すべき人(物体)の検出位置を検出点として検出するための処理がなされる。続いて、ステップS103に示す判定処理にて、検出点が検出されているか否かについて判定され、監視エリアS内にて追跡すべき人がいない場合には(S103でNo)、上記ステップS101からの処理が繰り返される。
【0029】
上述した繰り返し処理中に、出入口Sa,Sb,Scのいずれかを通過した人が監視エリアS内に入ると、上記検出処理にてその人の位置が検出点として検出される(S103でYes)。このように監視エリアS内に入った直後であるために新規に検出点が検出されると(S105でYes)、ステップS107に示す検出点設定処理がなされる。この処理では、新規に検出された検出点を特定して追跡するための固有の追跡番号が付されることで、その検出点が追跡対象に設定されて、記憶部22に記憶される。
【0030】
その後、移動した検出点が無い場合であって(S109でNo)、検出点が出入口Sa,Sb,Scのいずれかを通過して監視エリアS外に退出しておらず(S121でNo)、終了指示等がなされていない場合には(S125でNo)、人流追跡処理が継続される。すなわち、上記ステップS101からの処理がなされて、さらに一周走査された検出部10の検出結果に基づいて、監視エリアS内にて追跡すべき人(物体)の位置を検出点として検出するための処理がなされる。
【0031】
一周走査の間に移動した人の位置が次の検出点として検出され(S103でYes)、新たな人が監視エリアS内に入っていない場合には(S105でNo)、移動した検出点が有るとして(S109でYes)、ステップS111に示す判定処理にて、上述したように検出点(検出位置)と検出部10との間に反射壁面Wrが位置しているか否かに基づいて、その検出点が虚像位置であるか否かについて判定される。ここで、後述するようにして検出点が虚像位置でないと判定されると(S111でNo)、ステップS119に示す追跡処理がなされる。この処理では、今回検出された検出点に対して最も近い前回の検出点が移動元であるとして、今回検出された検出点に移動元の追跡番号が付されて、記憶部22に記憶される。これにより、1つの追跡番号に対して、一周走査ごとに検出点が順次関連付けられるため、その検出点の移動、すなわち、監視エリアS内での人の移動を追跡することができる。
【0032】
そして、追跡されている人が出入口Sa,Sb,Scのいずれかを通過して監視エリアS外に退出すると(S121でYes)、ステップS123に示す退出設定処理がなされ、その退出した人に対応する追跡番号が追跡対象外に設定される。
【0033】
その一方で、追跡されている人が上述したように反射壁面Wrに写り込んで検出部10にて検出されると、その人の実像位置と虚像位置との双方が検出される場合がある。このような場合には、上述したステップS111に示す判定処理にて、検出部10との間に反射壁面Wrが位置している検出点(検出位置)があるとして、その検出点が虚像位置であると判定される(S111でYes)。続いて、ステップS113に示す虚像位置除外処理にて、その検出点が虚像位置として追跡対象から除外される。
【0034】
具体的には、例えば、
図5に例示するように、一周走査ごとに検出点Pr1,Pr2,Pr3,Pr4と検出されていた人が検出点Pr5まで移動することで、その人が反射壁面Wrに写り込んで検出部10にて検出される場合を想定する。このような場合、検出点Pr5とともに、反射壁面Wrを基準に検出点Pr5と対称となる検出点Pv1が検出される。このように検出された検出点Pv1は、検出部10との間に反射壁面Wrが位置しているため、虚像位置として追跡対象から除外される。次の一周走査時に検出点Pr6まで移動することで、反射壁面Wrを基準に検出点Pr6と対称となるように検出された検出点Pv2も、検出部10との間に反射壁面Wrが位置しているため、虚像位置として追跡対象から除外される。同様にして、一周走査ごとに反射壁面Wrを基準に検出点Pr7~Pr11のそれぞれと対称となるように検出された検出点Pv3~Pv7も、虚像位置として追跡対象から除外される。
【0035】
上述のように虚像位置が追跡対象から除外されると、ステップS115に示す判定処理にて、上記虚像位置から推定される実像位置が検出点(検出位置)として実際に検出されているか否かについて判定される。ここで、
図5に例示するように、上記虚像位置から推定される実像位置が検出点(検出位置)として実際に検出されている場合には(S115でYes)、ステップS119以降の処理がなされる。
【0036】
一方、上記虚像位置から推定される実像位置が障害物等のために検出点として実際に検出されていない場合には(S115でNo:
図3(B)参照)、ステップS117に示す実像位置推定処理がなされる。この処理では、虚像位置と実像位置とが反射壁面Wrを介して対称となる位置関係を利用して、その虚像位置から推定される実像位置を追跡対象として追加するための処理を行う。
【0037】
具体的には、例えば、
図5と同様に移動する場合でも、
図6に例示するように、検出点Pr7,Pr8,Pr9にいる人からの反射光が、障害物Rのために検出部10にて直接検出されず、反射壁面Wrを介して検出される場合を想定する。このような場合、検出点Pr6が検出された後の一周走査時に、検出点Pr7に移動した人からの反射光が、障害物Rのために検出部10にて直接検出されずに反射壁面Wrを介して検出される。このため、検出点Pr7が検出されずに、検出点Pv3が検出される。このように検出された検出点Pv3は虚像位置として追跡対象から除外される一方で、反射壁面Wrを基準にその虚像位置(検出点Pv3)と対称となるように推定された実像位置(
図6での検出点Pr7)にて検出点が検出されていないため、その推定された実像位置(検出点Pr7)が追跡対象として追加される。これにより、その後になされるステップS119の追跡処理にて、追加対象とされた検出点Pr7に移動元とされる検出点Pr6の追跡番号が付されて、記憶部22に記憶される。
【0038】
次の一周走査時には、検出点Pr8が検出されずに検出点Pv4が検出されることで、検出点Pv4が虚像位置として追跡対象から除外され、その虚像位置から推定された実像位置(
図6での検出点Pr8)にて検出点が検出されていないため、その推定された実像位置が追跡対象として追加される。そして、ステップS119の追跡処理にて、追加対象とされた検出点Pr8に移動元とされる検出点Pr7の追跡番号が付されて、記憶部22に記憶される。同様にして、次の一周走査時には、検出点Pr9が検出されずに検出点Pv5が検出されることで、検出点Pv5が虚像位置として追跡対象から除外され、その虚像位置から推定された実像位置(
図6での検出点Pr9)にて検出点が検出されていないため、その推定された実像位置が追跡対象として追加される。そして、ステップS119の追跡処理にて、追加対象とされた検出点Pr9に移動元とされる検出点Pr8の追跡番号が付されて、記憶部22に記憶される。
【0039】
そして、次の一周走査時に、検出点Pr10に移動した人からの反射光が、検出部10にて直接及び反射壁面Wrを介して検出されることで、検出点Pr10及び検出点Pv6が検出されると、検出点Pv6が虚像位置として追跡対象から除外される。そして、ステップS119の追跡処理にて、検出点Pr10に移動元とされる検出点Pr9の追跡番号が付されて、記憶部22に記憶される。
【0040】
なお、出入口Sa,Sb,Scのいずれかを通過することなく監視エリアS内にいきなり出現した人等によって検出された検出点は、新規の検出点として固有の追跡番号が付されて、記憶部22に記憶される(S107)。その新規検出点が対となる実像位置の無い虚像位置に基づく場合には、次の一周走査時に、移動後の検出点が虚像位置と判定され(S111でYes)、その虚像位置から実像位置が推定されることで、追跡が継続される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る人流追跡システム1では、制御部21における壁面情報取得処理により位置情報が取得された壁面のうち検出部10に対して光を反射しやすい壁面(虚像が生じやすい壁面)が反射壁面Wrとして特定される。そして、制御部21にてなされる人流追跡処理では、検出部10により検出される人の検出点(検出位置)のうち、検出部10との間に反射壁面Wrが位置している検出点が、虚像位置として追跡対象から除外される。
【0042】
このように、検出部10との間に反射壁面Wrが位置している検出点(検出位置)を、反射壁面Wrでの反射に起因する虚像位置として追跡対象から除外することで、虚像を実像と誤認することなく、反射壁面Wrでの反射がなくなるために追跡が途切れる追跡エラー状態を抑制することができる。したがって、反射壁面Wrの影響を抑制しつつ正確に人流を追跡可能な人流追跡システムを実現することができる。
【0043】
特に、制御部21にてなされる人流追跡処理では、反射壁面Wrを基準に虚像位置と対称となる実像位置にて人が検出されていない場合に(S115でNo)、その実像位置を虚像位置から推定して追跡対象として追加する(S117)。これにより、検出対象となる人が検出部10の死角等に移動したためにその人の位置(実像位置)を直接検出できなくても、その人の虚像位置が反射壁面Wrを介して検出されることで、その虚像位置から反射壁面Wrを基準に実像位置を推定して追跡を継続することができる。
【0044】
そして、制御部21にてなされる壁面情報取得処理により、検出部10の検出結果を利用して所定の監視エリア内の壁面の位置情報が取得されるので、予め壁面の位置情報を取得する必要がなく、システム運用中に壁面に関して変更等があったとしても容易に壁面の位置情報を更新することができる。なお、上記壁面情報取得処理では、検出部10の検出結果を利用することで所定の監視エリア内の壁面の位置情報を取得することに限らず、例えば、通信部25を介して上位端末等から所定の監視エリア内の壁面の位置情報を予め取得してもよい。
【0045】
さらに、制御部21にてなされる反射壁面特定処理により、検出部10により計測される反射強度が所定の閾値以上となる壁面が反射壁面Wrとして特定される。
【0046】
このように、壁面情報取得処理により位置情報が取得された壁面のうち、検出部10により計測される反射強度が上記所定の閾値以上となる壁面を反射壁面Wrとして特定することで、予め反射壁面Wrの位置情報を取得することなく、設置した検出部10の位置に応じた反射壁面Wrの位置を容易に特定することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)検出部10に対する反射壁面Wrの位置や角度等の情報は、上述した反射壁面特定処理によって検出部10により計測される反射強度を利用して特定されることに限らず、例えば、事前調査等により実際に虚像位置が検出された壁面を反射壁面として特定するようにしてもよい。具体的には、例えば、本システムの設置者等が予め監視エリアS内を網羅するようにして移動した際に、一周走査単位で検出される検出点が増加したときの各検出点の位置関係等に基づいて反射壁面を特定してもよい。
【0048】
(2)本発明は、3つの出入口Sa,Sb,Scがある室内を監視エリアSとする人流追跡システムに採用されることに限らず、1つ又は2つの出入口がある室内を監視エリアとする人流追跡システムに採用されてもよいし、4つ以上の出入口がある室内を監視エリアとする人流追跡システムに採用されてもよい。また、本発明は、出入口がある室内を監視エリアとする人流追跡システムに採用されることに限らず、例えば、店舗前や公共施設、イベント会場等の大勢の人が移動するエリアを監視エリアとする人流追跡システムに採用されてもよい。
【0049】
(3)検出部10は、LiDARとして構成されることに限らず、他の光学的な測定方式を採用した2次元走査型の測距装置として構成されてもよい。
【0050】
1…人流追跡システム
10…検出部
20…追跡装置
21…制御部(追跡部,壁面情報取得部,反射壁面特定部)
Pr…実像位置
Pv…虚像位置
S…監視エリア