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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117222
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ロック式コネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20240822BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61M39/10 120
A61M1/36 141
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023188
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 文彦
(72)【発明者】
【氏名】川尻 博之
【テーマコード(参考)】
4C066
4C077
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
4C066JJ03
4C066JJ05
4C066JJ10
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD22
4C077EE01
(57)【要約】
【課題】ロックリングの緩みを抑制可能なロック式コネクタを提供する。
【解決手段】外周面に雄ネジ部23を有するメスコネクタ2と、オスコネクタ3と、オスコネクタ3の周囲を覆う環状に形成され、内周面に設けられた雌ネジ部41を雄ネジ部23に螺合することにより、オスコネクタ3をメスコネクタ2側へと押し込みつつ接続状態でロックするロックリング4と、オスコネクタ3の外周面またはロックリング4の内周面の一方に形成された1つ以上の凸状部5と、オスコネクタ3の外周面またはロックリング4の内周面の他方に形成され、螺合の際の回転方向に沿って徐々に径が大きくなるように、周方向に対して傾斜して形成された1つ以上の傾斜面61を有するスロープ部6と、を備え、雌ネジ部41の雄ネジ部23への螺合に伴って凸状部5が傾斜面61に干渉して、ロックリング4の緩み止めがなされるよう構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のチューブの端部同士を接続するロック式コネクタであって、
一方の前記チューブの端部に設けられ、外周面に雄ネジ部を有する第1コネクタ部と、
他方の前記チューブの端部に設けられ、前記第1コネクタ部に接続される第2コネクタ部と、
前記第2コネクタ部の周囲を覆う環状に形成され、内周面に、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部、及び、前記第2コネクタ部の基端側への移動を規制する移動規制部を有し、前記雌ネジ部を前記雄ネジ部に螺合することにより、前記移動規制部により前記第2コネクタ部を前記第1コネクタ部側へと押し込みつつ前記第1コネクタ部と前記第2コネクタ部とを接続状態でロックするロックリングと、
前記第2コネクタ部の外周面または前記ロックリングの内周面の一方に形成された1つ以上の凸状部と、
前記第2コネクタ部の外周面または前記ロックリングの内周面の他方に形成され、前記螺合の際の回転方向に沿って徐々に径が大きくなるように、前記螺合の際の回転軸を中心とした周方向に対して傾斜して形成された1つ以上の傾斜面を有するスロープ部と、を備え、
前記雌ネジ部を前記雄ネジ部に螺合することにより、前記凸状部が前記スロープ部に対して相対的に回転し、当該回転に伴って前記凸状部が前記傾斜面に干渉して、前記ロックリングの緩み止めがなされるよう構成されている、
ロック式コネクタ。
【請求項2】
前記傾斜面または前記凸状部の少なくとも一方が、基端側に向かって徐々に径が小さくなるように、前記回転軸に平行な軸方向に対して傾斜して形成されている、
請求項1に記載のロック式コネクタ。
【請求項3】
前記凸状部は、前記雌ネジ部の螺合方向に沿って徐々に径が大きくなるよう前記周方向に対して傾斜して形成されている、
請求項1に記載のロック式コネクタ。
【請求項4】
前記凸状部の数と、前記傾斜面の数とが同じであり、前記凸状部と前記傾斜面とが1対1で対応している、
請求項3に記載のロック式コネクタ。
【請求項5】
前記凸状部の数と、前記傾斜面の数とが異なる、
請求項1に記載のロック式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
血液浄化装置に用いる血液回路において、シャントコネクタと称されるロック式コネクタが用いられている。ロック式コネクタは、例えば、動脈側穿刺針や静脈側穿刺針から延設されたチューブと、血液回路を構成するチューブとを接続するために用いられる。ロック式コネクタは、接続する一方のチューブの先端に設けられたオスコネクタと、他方のチューブの先端に設けられたメスコネクタと、オスコネクタとメスコネクタとを接続した状態でロックするロックリングと、を有している。
【0003】
従来のロック式コネクタとして、ロックリング(ロック手段)をオスコネクタ側に取り付け、メスコネクタの外周面に雄ネジ部を形成すると共に、ロックリングの内周面に雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を形成し、雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させることにより、ロックリングにより雄コネクタをメスコネクタ側に押し付けつつ、前記オスコネクタとメスコネクタとの接続状態をロックするように構成されたロック式コネクタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-077385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなロック式コネクタを構成するオスコネクタ、メスコネクタ、及びロックリングといった部品は、樹脂成形により形成される樹脂製の部品である。これらの部品に、成形不良等によりバリやヒケ(凹み)が生じてしまうと、ロックリングの緩みを十分に抑制できない場合がある、という課題があった。また、ロックリングの円周面に削れ等が発生した場合にも、ロックリングの緩みを十分に抑制できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は,ロックリングの緩みを抑制可能なロック式コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係るロック式コネクタは、一対のチューブの端部同士を接続するロック式コネクタであって、一方の前記チューブの端部に設けられ、外周面に雄ネジ部を有する第1コネクタ部と、他方の前記チューブの端部に設けられ、前記第1コネクタ部に接続される第2コネクタ部と、前記第2コネクタ部の周囲を覆う環状に形成され、内周面に、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部、及び、前記第2コネクタ部の基端側への移動を規制する移動規制部を有し、前記雌ネジ部を前記雄ネジ部に螺合することにより、前記移動規制部により前記第2コネクタ部を前記第1コネクタ部側へと押し込みつつ前記第1コネクタ部と前記第2コネクタ部とを接続状態でロックするロックリングと、前記第2コネクタ部の外周面または前記ロックリングの内周面の一方に形成された1つ以上の凸状部と、前記第2コネクタ部の外周面または前記ロックリングの内周面の他方に形成され、前記螺合の際の回転方向に沿って徐々に径が大きくなるように、前記螺合の際の回転軸を中心とした周方向に対して傾斜して形成された1つ以上の傾斜面を有するスロープ部と、を備え、前記雌ネジ部を前記雄ネジ部に螺合することにより、前記凸状部が前記スロープ部に対して相対的に回転し、当該回転に伴って前記凸状部が前記傾斜面に干渉して、前記ロックリングの緩み止めがなされるよう構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロックリングの緩みを抑制可能なロック式コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係るロック式コネクタを用いた血液回路を示す図である。
図2】ロック式コネクタの分解斜視図である。
図3】ロック式コネクタの分解斜視図である。
図4】ロック式コネクタの接続状態での縦断面図である。
図5A】オスコネクタの斜視図である。
図5B】オスコネクタの側面図である。
図5C】オスコネクタの正面図である。
図6A】ロックリングの斜視図である。
図6B】ロックリングの縦断面図である。
図6C】ロックリングの正面図である。
図7】ロックリング締結時の緩み止めを説明する図である。
図8A】ロック式コネクタの一変形例を示す横断面図である。
図8B】ロック式コネクタの一変形例を示す横断面図である。
図9】ロック式コネクタの一変形例を示す横断面図である。
図10】ロック式コネクタの一変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
(ロック式コネクタ1を用いた血液回路100)
図1は、本実施の形態に係るロック式コネクタ1を用いた血液回路100を示す図である。図1に示すように、血液回路100は、人工透析治療のため患者の血液を体外循環させ、その途中において血液浄化等を行わせるためのものであり、先端に動脈側穿刺針111が接続された動脈側血液回路110と、先端に静脈側穿刺針121が接続された静脈側血液回路120とから主に構成されている。動脈側血液回路110及び静脈側血液回路120のそれぞれの基端は、血液浄化器としてのダイアライザ130に接続されている。ダイアライザ130には、透析液導入ライン131及び透析液排出ライン132がそれぞれ接続されており、ダイアライザ130内にて血液中の不要物(老廃物)が透析液側に透析除去され得るように構成されている。
【0012】
動脈側血液回路110及び静脈側血液回路120は、それぞれ可撓性チューブから構成されている。動脈側血液回路110の途中には、動脈側血液回路110の流路を構成するチューブをしごきつつ駆動するしごき型の血液ポンプ112が配設されている。静脈側血液回路120の途中には、除泡のためのエアトラップチャンバ122が設けられている。なお、図1の血液回路100はあくまで一例であり、他の構成要素が含まれていてもよい。
【0013】
本実施の形態に係るロック式コネクタ1は、例えば、血液回路100において、動脈側穿刺針111や静脈側穿刺針121の接続のために用いられる。図1の例では、動脈側血液回路110を構成するチューブの端部と、動脈側穿刺針111から延出されたチューブ111aの端部とを接続するためにロック式コネクタ1が用いられている。また、図1の例では、静脈側血液回路120を構成するチューブの端部と、静脈側穿刺針121から延出されたチューブ121aの端部とを接続するためにも、ロック式コネクタ1が用いられている。なお、これに限らず、ロック式コネクタ1は、チューブの端部同士を接続するために使用可能であり、例えば、補液用のラインを静脈側血液回路120に接続する部分等にもロック式コネクタ1を用いることができる。さらには、ロック式コネクタ1は、血液回路100以外の用途でも用いることができる。
【0014】
(ロック式コネクタ1)
図2,3は、ロック式コネクタ1の分解斜視図であり、図4はロック式コネクタ1の接続状態での縦断面図である。図2~4に示すように、ロック式コネクタ1は、接続対象の一方のチューブ(不図示)の端部に設けられたメスコネクタ2と、接続対象の他方のチューブ(不図示)の端部に設けられたオスコネクタ3と、メスコネクタ2とオスコネクタ3とを接続状態でロックするためのロックリング4と、を備えている。メスコネクタ2は、本発明の第1コネクタ部に相当し、オスコネクタ3は、本発明の第2コネクタ部に相当する。ただし、第1コネクタ部と第2コネクタ部とでオスとメスの関係が逆であってもよい。以下、ロックリング4の回転軸Oに平行な方向(メスコネクタ2に対するオスコネクタ3の挿入方向)を軸方向と呼称し、ロックリング4の回転方向(回転軸Oを中心とした回転方向)を周方向と呼称する。
【0015】
(メスコネクタ2)
メスコネクタ2は、全体として中空筒状に形成されており、メスコネクタ2を軸方向に貫通する中空部2aを有している。そして、中空部2aの一方の開口部に不図示のチューブが挿入されるチューブ挿入部21が形成されており、中空部2aの他方の開口部にオスコネクタ3の先端部(挿入部31)が挿入され篏合される篏合部22が形成されている。また、メスコネクタ2は、その外周面に設けられた雄ネジ部23を有している。雄ネジ部23は、篏合部22側の端部に設けられている。
【0016】
メスコネクタ2は、樹脂製部品であり、ここでは、PC(ポリカーボネイト)からなるものを用いた。ただし、これに限らず、メスコネクタ2は、PP(ポリプロピレン)、高密度PE(ポリエチレン)、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル等から構成されてもよい。ロック式コネクタ1には加熱殺菌処理(あるいは滅菌処理)が行われる場合があるため、メスコネクタ2としては、加熱によって変形しにくい樹脂を用いるとよい。
【0017】
(オスコネクタ3)
図5A図5Cに示すように、オスコネクタ3は、全体として中空筒状に形成されており、オスコネクタ3を軸方向に貫通する中空部3aを有している。オスコネクタ3の先端部には、メスコネクタ2の篏合部22に挿入される挿入部31が形成され、オスコネクタ3の基端部には、不図示のチューブ内へと挿入されるチューブ接続部32が形成されている。オスコネクタ3の挿入部31をメスコネクタ2の篏合部22に挿入してメスコネクタ2とオスコネクタ3とを接続することで、中空部2a,3aを介してチューブの端部同士が接続され、例えば血液等の液体の流通が可能になる。挿入部31は、篏合部22への挿入を容易にし、かつ挿入部31を篏合部22へ挿入した状態で抜けにくくするために、先端ほど外径が小さくなるテーパ形状に形成されている。なお、挿入部31の具体的な形状については、ISO80369-7の規格で規定されており、当該規格に従った形状となっていればよい。
【0018】
また、オスコネクタ3は、挿入部31とチューブ接続部32との間に、挿入部31やチューブ接続部32よりも外径が大きく形成された干渉部33を有している。干渉部33は、ロックリング4の締結時にロックリング4に干渉して、オスコネクタ3の基端側(図5Bの右側)への移動を規制すると共に、ロックリング4の緩み止めを行う部分である。干渉部33の詳細については後述する。
【0019】
オスコネクタ3は、樹脂製部品であり、ここでは、メスコネクタ2と同様にPC(ポリカーボネイト)からなるものを用いた。ただし、これに限らず、オスコネクタ3は、PP(ポリプロピレン)、高密度PE(ポリエチレン)、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル等から構成されてもよい。ロック式コネクタ1には加熱殺菌処理が行われる場合があるため、オスコネクタ3としては、加熱によって変形しにくい樹脂を用いるとよい。
【0020】
(ロックリング4)
図6A図6Cに示すように、ロックリング4は、オスコネクタ3の周囲を覆う環状(中空筒状)に形成されており、ロックリング4を軸方向に貫通する中空部4aを有している。ロックリング4の内周面には、メスコネクタ2の雄ネジ部23に螺合する雌ネジ部41が形成されている。そして、ロックリング4は、雌ネジ部41の基端側の内周面に、オスコネクタ3の干渉部33に干渉して、オスコネクタ3の基端側への移動を規制する移動規制部42を有している。雌ネジ部41を雄ネジ部23に螺合することにより、ロックリング4がメスコネクタ2側へと進出し、それに伴って、移動規制部42によりオスコネクタ3がメスコネクタ2側へと押し込まれて、メスコネクタ2とオスコネクタ3とが接続状態でロックされる。また、本実施の形態では、移動規制部42が、オスコネクタ3の干渉部33と共にロックリング4の緩み止めを行う役目を果たしている。移動規制部42の詳細については後述する。
【0021】
ロックリング4は、樹脂製部品であり、ここでは、メスコネクタ2やオスコネクタ3よりも柔らかいPP(ポリプロピレン)からなるものを用いた。これにより、後述する凸状部5に変形が生じやすくなり、ロックリング4の緩み止めの効果をより高めることが可能になる。ただし、これに限らず、ロックリング4は、PC(ポリカーボネイト)、高密度PE(ポリエチレン)、熱可塑性エラストマー、塩化ビニル等から構成されてもよい。ロック式コネクタ1には加熱殺菌処理が行われる場合があるため、ロックリング4としては、上記のメスコネクタ2やオスコネクタ3と同様に、加熱によって変形しにくい樹脂を用いるとよい。ロックリング4の外径は、例えば10mm程度である。
【0022】
(干渉部33と移動規制部42による緩み止めの説明)
本実施の形態では、オスコネクタ3の外周面またはロックリング4の内周面の一方に形成された1つ以上の凸状部5と、オスコネクタ3の外周面またはロックリング4の内周面の他方に形成され、ロックリング4の螺合の際の回転方向に沿って徐々に径が大きくなるように周方向に対して傾斜して形成された1つ以上の傾斜面61を有するスロープ部6と、を備えている。そして、ロックリング4の雌ネジ部41を、メスコネクタ2の雄ネジ部23に螺合することにより、凸状部5がスロープ部6に対して相対的に回転し、当該回転に伴って凸状部5が傾斜面61に干渉して、ロックリング4の緩み止めがなされるよう構成されている。なお、「周方向に対して傾斜して」は、周方向に対して交わるように傾斜していることを意味している。
【0023】
本実施の形態では、ロックリング4側に凸状部5が形成され、オスコネクタ3側にスロープ部6が形成されているとして説明を行う。なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、凸状部5とスロープ部6とを略同じ形状に形成しているため、例えば、ロックリング4側にスロープ部6が形成され、オスコネクタ3側に凸状部5が形成されていると解釈することも可能になっている。
【0024】
まず、オスコネクタ3側のスロープ部6について説明する。スロープ部6は、オスコネクタ3における干渉部33の外周面に形成されている。図7は、ロックリング締結時の緩み止めを説明する図である。なお、図7は、図4のA-A線断面における動作を示している。図7に示すように、スロープ部6は、ロックリング4の螺合の際の回転方向(図示矢印の方向)に沿って徐々に径が大きくなるように周方向に対して傾斜して形成された複数(ここでは6個)の傾斜面61を有している。本実施の形態では、径方向外方に向かって凸となるように湾曲する傾斜面61を形成したが、傾斜面61は、湾曲していない平面であってもよいし、径方向内方に向かって凹となるように湾曲していても構わない。周方向に隣り合う傾斜面61間には段差部62が形成されている。
【0025】
スロープ部6を有することで、ロックリング4を締結のために回転させた際に、当該回転に伴って、ロックリング4の内周面に形成された凸状部5と、スロープ部6とが相対的に回転する。そして、その相対的回転に伴って、凸状部5がスロープ部6の傾斜面61に徐々に押さえ付けられてゆき、強固な締結状態が得られる。これにより、ロックリング4の緩み止めを強固に行うことが可能になる。すなわち、本実施の形態では、ロックリング4の締結時におけるロックリング4とオスコネクタ3との相対回転を利用して、当該相対回転によって凸状部5をスロープ部6の傾斜面61上に乗り上げさせることで、ロックリング4の緩み止めを行っている。
【0026】
なお、傾斜面61の角度が急すぎると、凸状部5がスロープ部6に乗り上げることができず、ロックリング4の十分な緩み止めを行うことができない場合がある。よって、傾斜面61の傾斜角度は比較的緩やかであることが望ましいといえる。より具体的には、本実施の形態のように傾斜面61の数を6個とする場合には、段差部62の径方向高さは、0.05mm以上2.0mm以下であるとよい。これは、0.05mm未満の段差部62は成形が安定せず、2.0mmを超える段差部62とすると傾斜面61の傾斜角度が大きくなり過ぎて十分な緩み止めの効果が得られない場合があるためである。段差部62の径方向高さは、好ましくは0.1mm以上1.0mm以下であるとよく、より好ましくは0.2mm以上0.6mm以下であるとよい。本実施の形態では、段差部62の径方向高さを0.4mmとした。なお、本実施の形態では1つの傾斜面61が約60°の角度範囲を占めることから、傾斜面61から回転軸Oまでの半径の増加の度合いが、1°あたり(0.05/60)mm以上(2.0/60)mm以下であるとよく、好ましくは(0.1/60)mm以上(1.0/60)mm以下、より好ましくは(0.2/60)mm以上(0.6/60)mm以下であるとよい。なお、段差部62は、回転軸Oを中心とする径方向に沿った方向に沿うように形成されていてもよいし、径方向に対して傾斜していてもよい。つまり、段差部62は、周方向に対して、傾斜面61とは反対方向に傾斜して形成されていてもよい。また、オスコネクタ3に対してロックリング4が相対的に回転し凸状部5が段差62を乗り越えた瞬間に締結がなされた場合など、締結状態において凸状部5と段差62とが当接する場合がある。このような場合、径方向に対する段差62の傾斜角度を大きくすることで凸状部5と段差62との干渉量を増加させ緩み止めを強固に行うことが可能になる。
【0027】
さらに、図5Bに示されるように、本実施の形態では、スロープ部6の傾斜面61が、オスコネクタ3の基端側(図5Bの右側)に向かって徐々に径が小さくなるように、軸方向(図5Bの左右方向)に対して傾斜して形成されている。これにより、ロックリング4の締結時におけるロックリング4の軸方向への進出に応じて、オスコネクタ3の傾斜面61が移動規制部42(凸状部5)へと徐々に押し込まれ、より強固な締結状態が得られる。その結果、ロックリング4の緩み止めをより強固に行うことが可能になる。傾斜面61の軸方向に対する傾斜角度θは、0.5°以上45°以下であるとよい。これは、傾斜角度θを安定して0.5°未満に成形を行うことが困難であり、傾斜角度θが45°を超えると、傾斜面61が移動規制部42内に十分に入りこまず十分な緩み止めの効果が得られない場合があるためである。ただし、傾斜角度θが小さすぎると傾斜面61の軸方向長さを非常に長くする必要が生じるため、傾斜角度θは、好ましくは、1°以上30°以下、より好ましくは2°以上15°以下とするとよい。ここでは、傾斜角度θを6°に設定し、スロープ部6(傾斜面61)の軸方向長さを約6mmとした。
【0028】
なお、本実施の形態では、傾斜面61が軸方向に対して傾斜して形成されている場合について説明したが、これに限らず、凸状部5が軸方向に対して傾斜して(基端側(図4の右側)に向かって徐々に径が小さくなるように傾斜して)形成されていてもよい。また、傾斜面61と凸状部5の両方が軸方向に対して傾斜して形成されていてもよい。傾斜面61や凸状部5を軸方向に対して傾斜して形成することで、例えば、成形不良等により傾斜面61や凸状部5にバリやヒケ等が生じてしまった場合や、傾斜面61や凸状部5に削れが生じてしまった場合であっても、ロックリング4の締結により傾斜面61と凸状部5とを適宜な締結力が得られる位置まで軸方向に相対移動させて、十分な緩み止めの効果を得ることが可能になる。
【0029】
次に、ロックリング4に形成された凸状部5について説明する。凸状部5は、移動規制部42の内周面に形成されている。なお、凸状部5は、移動規制部42を超えて雌ネジ部41側へ延長されるように形成されていてもよい。図6C及び図7に示したように、本実施の形態では、凸状部5は、軸方向に垂直な断面視で、スロープ部6の形状を略転写した外形となっている。すなわち、凸状部5は、ロックリング4の螺合の際の回転方向に沿って徐々に径が大きくなるよう周方向に対して傾斜して形成されている。また、本実施の形態では、凸状部5の数と、傾斜面61の数とが同じ(ここでは6個)であり、凸状部5と傾斜面61とが1対1で対応している。換言すれば、軸方向に垂直な断面視において、凸状部5の内縁の形状と、スロープ部6の外縁の形状とが、略相似形状となっている。これにより、凸状部5と傾斜面61との接触面積を増やすことができ、より強固な締結状態として、緩み止めの効果をより高めることができる(図7参照)。
【0030】
なお、凸状部5の形状はこれに限らず、例えば図8Aに示すように、凸状部5は、ロックリング4の内周面から内方に突出するリブ状の突起であってもよい。また、本実施の形態では、凸状部5がロックリング4に、スロープ部6がオスコネクタ3に設けられている場合について説明したが、図8Bに示すように、スロープ部6がロックリング4に、凸状部5がオスコネクタ3に設けられていても同様の効果が得られる。
【0031】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロック式コネクタ1では、オスコネクタ3の外周面またはロックリング4の内周面の一方に形成された1つ以上の凸状部5と、オスコネクタ3の外周面またはロックリング4の内周面の他方に形成され、螺合の際の回転方向に沿って徐々に径が大きくなるように、螺合の際の回転軸Oを中心とした周方向に対して傾斜して形成された1つ以上の傾斜面61を有するスロープ部6と、を備え、雌ネジ部41を雄ネジ部23に螺合することにより、凸状部5がスロープ部6に対して相対的に回転し、当該回転に伴って凸状部5が傾斜面61に干渉して、ロックリング4の緩み止めがなされるよう構成されている。
【0032】
これにより、ロックリング4の締結時の回転を利用して、ロックリング4の緩み止めを行うことが可能になり、ロックリング4の緩みが発生しにくいロック式コネクタ1を実現できる。また、本実施の形態では、相対回転により凸状部5が傾斜面61を登っていく構造となっているため、成形不良等によりバリやヒケ(凹み)が生じた場合であっても、それに応じて相対回転の角度が適宜に変化して、十分な締結力を得ることが可能であり、十分な緩み止めの効果を得ることが可能である。例えば、成形不良により寸法が小さくなっているような場合であっても、凸状部5が傾斜面61を登っていく構造とすることで、一定の干渉体積又は面積が確保される位置まで回転されロックリング4が止まることになるため、安定した締結力を得て、十分な緩み止めの効果を得ることが可能である。その結果、ロック式コネクタ1を用いた接続部において、意図せず接続が解除されるといった不具合を抑制することが可能になる。
【0033】
また、本実施の形態に係るロック式コネクタ1では、傾斜面61または凸状部5の少なくとも一方が、基端側に向かって徐々に径が小さくなるように、回転軸Oに平行な軸方向に対して傾斜して形成されている。これにより、締結時におけるロックリング4の回転のみならず、ロックリング4の軸方向への進出も利用して、ロックリング4の緩み止めを行うことが可能になり、ロックリング4の緩みがより発生しにくいロック式コネクタ1を実現できる。
【0034】
(変形例)
上記実施の形態では、凸状部5の数と、傾斜面61の数を同数にする場合について説明したが、この場合、ロックリング4の締結時に全ての凸状部5が段差部62を一気に乗り越えてしまい、この乗り越えた際の衝撃によってクリック感を操作者に感じさせる場合がある。クリック感を出すことで、意図した締結状態を操作者に分からせることもできるが、逆に、締結が甘い状態でクリック感を感じることにより、操作者が、十分に締結がなされたと勘違いしてロックリング4の締め込みをやめてしまい、ロックリング4が不十分な締結状態となることも考えられる。そこで、このクリック感を抑制するために、図9に示すように、凸状部5の数と、傾斜面61の数とを異ならせてもよい。図示例では、凸状部5の数が、傾斜面61の数よりも少ない場合を示しているが、凸状部5の数が、傾斜面61の数よりも多くてもよい。
【0035】
また、締結力をより大きくして緩み止めの効果をさらに高めるために、図10に示すように、傾斜面61にさらにリブ状の突起61aを形成するようにしてもよい。ロックリング4の締結時の回転により、この突起61aが凸状部5に押し付けられるように負荷がかかって、緩み止めの効果がより向上する。
【0036】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0037】
[1]一対のチューブの端部同士を接続するロック式コネクタ(1)であって、一方の前記チューブの端部に設けられ、外周面に雄ネジ部(23)を有する第1コネクタ部(メスコネクタ2)と、他方の前記チューブの端部に設けられ、前記第1コネクタ部(2)に接続される第2コネクタ部(オスコネクタ3)と、前記第2コネクタ部(3)の周囲を覆う環状に形成され、内周面に、前記雄ネジ部(23)に螺合する雌ネジ部(41)、及び、前記第2コネクタ部(3)の基端側への移動を規制する移動規制部(42)を有し、前記雌ネジ部(41)を前記雄ネジ部(23)に螺合することにより、前記移動規制部(42)により前記第2コネクタ部(3)を前記第1コネクタ部(2)側へと押し込みつつ前記第1コネクタ部(2)と前記第2コネクタ部(3)とを接続状態でロックするロックリング(4)と、前記第2コネクタ部(3)の外周面または前記ロックリング(4)の内周面の一方に形成された1つ以上の凸状部(5)と、前記第2コネクタ部(3)の外周面または前記ロックリング(4)の内周面の他方に形成され、前記螺合の際の回転方向に沿って徐々に径が大きくなるように、前記螺合の際の回転軸を中心とした周方向に対して傾斜して形成された1つ以上の傾斜面(61)を有するスロープ部(6)と、を備え、前記雌ネジ部(41)を前記雄ネジ部(23)に螺合することにより、前記凸状部(5)が前記スロープ部(6)に対して相対的に回転し、当該回転に伴って前記凸状部(5)が前記傾斜面(61)に干渉して、前記ロックリング(4)の緩み止めがなされるよう構成されている、ロック式コネクタ(1)。これにより、ロックリング4の緩みを抑制することが可能になる。
【0038】
[2]前記傾斜面(61)または前記凸状部(5)の少なくとも一方が、基端側に向かって徐々に径が小さくなるように、前記回転軸に平行な軸方向に対して傾斜して形成されている、[1]に記載のロック式コネクタ(1)。これにより、ロックリング4の緩みをより抑制することが可能になる。
【0039】
[3]前記凸状部(5)は、前記雌ネジ部(41)の螺合方向に沿って徐々に径が大きくなるよう前記周方向に対して傾斜して形成されている、[1]に記載のロック式コネクタ(1)。これにより、凸状部5と傾斜面(61)との接触面積を大きくすることができ、ロックリング4の緩みをより抑制することが可能になる。
【0040】
[4]前記凸状部(5)の数と、前記傾斜面(61)の数とが同じであり、前記凸状部(5)と前記傾斜面(61)とが1対1で対応している、[3]に記載のロック式コネクタ(1)。これにより、凸状部5と傾斜面(61)との接触面積を大きくすることができ、ロックリング4の緩みをより抑制することが可能になる。
【0041】
[5]前記凸状部(5)の数と、前記傾斜面(61)の数とが異なる、[1]に記載のロック式コネクタ(1)。これにより、ロックリング4を回転させた際のクリック感を抑制することが可能になる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…ロック式コネクタ
2…メスコネクタ(第1コネクタ部)
21…チューブ挿入部
22…篏合部
23…雄ネジ部
3…オスコネクタ
31…挿入部
32…チューブ接続部
33…干渉部
4…ロックリング
41…雌ネジ部
42…移動規制部
5…凸状部
6…スロープ部
61…傾斜面
62…段差部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10