(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117230
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】判定方法、判定プログラム、判定装置及び外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240822BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240822BHJP
G06T 7/90 20170101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N21/956 B
G06T7/00 350B
G06T7/00 300F
G06T7/90 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023213
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】河野 晃光
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA61
2G051AB14
2G051EA16
2G051EB01
2G051ED21
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA35
5L096FA54
5L096GA40
5L096GA51
5L096HA11
(57)【要約】
【課題】対象物における判定の精度を高める。
【解決手段】外観検査装置1は、回路基板BDを撮影する撮像部7と、撮像部7により撮影された判定用画像データを取得する取得部21と、回路基板BDが撮影された学習用画像データと、該学習用画像データから抽出すべき学習用特徴量を含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、判定用画像データから判定用特徴量を抽出する特徴量抽出部27と、学習用特徴量と判定用特徴量との剥離を示す異常度を算出する異常度算出部24と、異常度が判定閾値以下である場合、判定用画像データにおける特定色である白色の割合から判定用画像データを判定する判定部25と、判定部25による判定の結果を出力する表示部5とを設ける。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が撮影された第1画像データを取得する取得ステップと、
前記対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、前記第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記第2特徴量と前記第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値が第1閾値以下である場合、前記第1画像データにおける特定色の割合から前記第1画像データを判定する判定ステップと
を有することを特徴とする判定方法。
【請求項2】
前記判定ステップは、
前記第1画像データを第1領域と第2領域とに区分し、前記第1領域と前記第2領域との前記特定色の差分から、前記第1画像データを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記対象物が撮影された画像における部品の領域である部品領域を抽出する部品領域抽出ステップ
をさらに有し、
前記判定ステップは、
前記第1画像データの前記部品領域を前記第1領域と前記第2領域とに区分し、前記第1領域における前記部品領域内と前記第2領域における前記部品領域内との前記特定色の差分から、前記第1画像データを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の判定方法。
【請求項4】
前記判定ステップは、
前記評価値が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合、前記第1画像データにおける前記特定色の割合から前記第1画像データを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項5】
前記判定ステップは、
前記第1画像データにおける前記特定色の割合から、前記対象物が第1分類又は該第1分類とは異なる第2分類の何れに属するかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項6】
前記判定ステップによる前記判第1分類又は前記第2分類の判定結果を表示部に表示する表示ステップ
をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の判定方法。
【請求項7】
前記判定ステップは、
前記評価値が前記第1閾値以下であるか否かを判定する一次判定ステップと、
前記評価値が前記第1閾値以下である場合、前記第1画像データにおける前記特定色の割合から前記第1画像データを判定する二次判定ステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項8】
前記評価値が前記第1閾値以下である場合、前記第1特徴量を用いて、前記学習モデルを更新する学習モデル更新ステップ
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
【請求項9】
前記特定色は、白色である
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の判定方法。
【請求項10】
情報処理装置に対し、
対象物が撮影された第1画像データを取得する取得ステップと、
前記対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、前記第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記第2特徴量と前記第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出ステップと、
前記評価値が第1閾値以下である場合、前記第1画像データにおける特定色の割合から前記第1画像データを判定する判定ステップと
を実行させるための判定プログラム。
【請求項11】
対象物が撮影された第1画像データを取得する取得部と、
前記対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、前記第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記第2特徴量と前記第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値が第1閾値以下である場合、前記第1画像データにおける特定色の割合から前記第1画像データを判定する判定部と
を有する判定装置。
【請求項12】
対象物を撮影する撮像部と、
前記撮像部により撮影された第1画像データを取得する取得部と、
前記対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、前記第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記第2特徴量と前記第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値が第1閾値以下である場合、前記第1画像データにおける特定色の割合から前記第1画像データを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果を出力する出力部と
を有する外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は判定方法、判定プログラム、判定装置及び外観検査装置に関し、例えば工業製品の外観を検査する外観検査装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外観検査装置として、例えば電子回路基板のような工業製品の製造工場に設置され、製造された工業製品(以下、対象物とも呼ぶ)を撮像して画像データを取得し、該画像データを基に該工業製品が正常(良品)又は異常(不良品)の何れであるかを判定する判定処理を行うものが広く普及している。
【0003】
この判定処理では、例えば得られた画像データに対してエッジ検出等の画像処理を経て特徴を強調することにより、同様の画像処理を経た良品の画像データとの差異を基に、例えば回路基板上におけるチップ部品の有無や実装位置のずれ等のような不良の発生の有無を判定する。
【0004】
また外観検査装置として、例えば得られた画像データを基に赤、緑及び青のような異なる色によるフィルタ画像データを複数生成し、コントラストが最も大きい等の条件を満たすものを用いることにより、判定精度の向上を図ったものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような外観検査装置においては、良品に良く似た不良品を不良品であると精度良く判定することが難しい場合があり、対象物の判定の精度が低下してしまう場合があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、対象物における判定の精度を高め得る判定方法、判定プログラム、判定装置及び外観検査装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の判定方法においては、対象物が撮影された第1画像データを取得する取得ステップと、対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、第2特徴量と第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出ステップと、評価値が第1閾値以下である場合、第1画像データにおける特定色の割合から第1画像データを判定する判定ステップとを有するようにした。
【0009】
また本発明の判定プログラムにおいては、情報処理装置に対し、対象物が撮影された第1画像データを取得する取得ステップと、対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、第2特徴量と第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出ステップと、評価値が第1閾値以下である場合、第1画像データにおける特定色の割合から第1画像データを判定する判定ステップとを実行させるようにした。
【0010】
さらに本発明の判定装置においては、対象物が撮影された第1画像データを取得する取得部と、対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出部と、第2特徴量と第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出部と、評価値が第1閾値以下である場合、第1画像データにおける特定色の割合から第1画像データを判定する判定部とを設けるようにした。
【0011】
さらに本発明の外観検査装置においては、対象物を撮影する撮像部と、撮像部により撮影された第1画像データを取得する取得部と、対象物が撮影された第2画像データと、該第2画像データから抽出すべき第2特徴量とを含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、第1画像データから第1特徴量を抽出する特徴量抽出部と、第2特徴量と第1特徴量との剥離を示す評価値を算出する評価値算出部と、評価値が第1閾値以下である場合、第1画像データにおける特定色の割合から第1画像データを判定する判定部と、判定部による判定の結果を出力する出力部とを設けるようにした。
【0012】
本発明は、不良品を良品であると判定してしまっても、第1画像データにおける特定色の割合から第1画像データを再判定することにより、不良品であると正しく判定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不良品を良品であると判定してしまっても、第1画像データにおける特定色の割合から第1画像データを再判定することにより、不良品であると正しく判定することができ、かくして対象物の判定の精度を向上させ得る判定方法、判定プログラム、判定装置及び外観検査装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】外観検査装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】回路基板に対するチップ部品の実装の様子を示す図である。
【
図3】回路基板における不良の発生の様子を示す図である。
【
図4】回路基板から取得された判定用部品画像の例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態による外観検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】第1の実施の形態による二次判定処理の例を示す図である。
【
図7】第1及び第2の実施の形態による学習処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施の形態による判定処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】二次判定部の有無による異常度の度数分布グラフを示す図である。
【
図10】二次判定部の有無による不良品の不良検出率を示す表である。
【
図11】第2の実施の形態による外観検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】線及び文字が記載された回路基板を示す図である。
【
図13】第2の実施の形態による回路基板から取得された判定用部品画像の例を示す図である。
【
図14】第2の実施の形態による部品領域抽出処理の例を示す図である。
【
図15】第2の実施の形態による二次判定処理の例を示す図である。
【
図16】第2の実施の形態による判定処理手順を示すフローチャートである。
【
図17】他の実施の形態による回路基板に対するチップ部品の実装の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態(以下、これを実施の形態と呼ぶ)について、図面を用いて説明する。
【0016】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.外観検査装置の構成]
第1の実施の形態による外観検査装置1は、例えば回路基板に電子部品を実装する製造工場に設置されており、該電子部品が実装された該回路基板を検査対象として、良品又は不良品を判定する判定処理を行う。この製造工場では、例えば回路基板に対しリフロー処理等を行うことにより、チップ状の微小な抵抗やコンデンサ等の表面実装部品(いわゆるチップ部品)を実装する実装処理を行う。以下では、電子部品が実装された回路基板を対象物とも呼ぶ。
【0017】
図1に示すように、判定装置としての外観検査装置1は、制御部2を中心とした情報処理装置として構成されており、該制御部2に記憶部3及び通信部4が接続され、さらに表示部5、操作部6及び撮像部7がそれぞれ接続されている。
【0018】
制御部2は、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)11、各種情報が予め記憶されたROM(Read Only Memory)12、及び各種情報を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)13等を有している。この制御部2は、RAM13をワークエリアとして使用しながら、ROM12や記憶部3等から読み出した各種プログラムをCPU11によって実行することにより、様々な処理を行う。
【0019】
記憶部3は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)のような不揮発性の記憶媒体であり、各種プログラムや各種情報等を記憶する。通信部4は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3(IEEE802.3u/ab/an/ae)等の規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)のインタフェース等を有している。この通信部4は、図示しないネットワークと接続されており、該ネットワークを介して、製造工場内に設置された他の機器や外部のサーバ装置等との間で種々の情報を送受信する。
【0020】
出力部としての表示部5は、例えば液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルのような表示デバイスであり、制御部2の制御に基づき種々の情報を表示する。操作部6は、例えば表示部5を構成する液晶パネルの表面に設けられたタッチセンサや押下可能な操作ボタン等であり、外観検査装置1を使用する使用者からの操作指示を受け付ける。
【0021】
撮像部7は、例えば光を集光するレンズや光を電気信号に変換する撮像素子等を有している。また撮像部7は、例えば製造工場において電子部品が実装された回路基板(対象物)が搬送されるベルトコンベアの近傍等において、該対象物を良好に撮像し得る箇所に設置されている。この撮像部7は、制御部2の制御に基づき、レンズの光軸を中心とした撮像範囲から得られる光を用いて、対象物を含む2次元の画像を撮像して画像データを生成し、該画像データを該制御部2へ供給する。これに応じて制御部2は、供給された画像データを記憶部3に記憶させる。
【0022】
[1-2.判定処理の基本的原理]
次に、外観検査装置1において対象物を正常(良品、第1分類とも呼ぶ)又は異常(不良品、第2分類とも呼ぶ)と判定する判定処理の基本的原理について説明する。チップ部品が実装される回路基板には、該チップ部品の理想的な実装箇所が予め設定されており、該チップ部品の形状等に合わせて電極が設けられている。
【0023】
例えば
図2(A)、
図2(B)及び
図2(C)は、回路基板BDのみ、チップ部品MPのみ及び該チップ部品MPが正常に実装された回路基板BDをそれぞれ示している。
図2(A)に示した回路基板BDは、表面側(紙面の手前側)の2箇所に電極パッドPDが形成されており、仮想的な実装領域ARm(図中に一点鎖線で示す)が設定されている。
図2(B)に示したチップ部品MPは、微小な直方体状に形成されており、2箇所の電極部分ELが設けられている。また、チップ部品MPが回路基板BDに実装される際に該回路基板BDと対向する面、すなわち図における紙面奥側の面を、実装面MPSと呼ぶ。
【0024】
図2(C)に示した回路基板BDは、実装領域ARmにチップ部品MPが適切に実装されており、該チップ部品MPの各電極部分ELと回路基板BDの各電極パッドPDとに渡るようにして、はんだ(図示せず)がそれぞれ付着している。はんだは、例えばリフロー工程等において所定の高温で溶解された後に凝固されることにより、回路基板BDの電極パッドPDに対しチップ部品MPの電極部分ELを物理的に固定すると共に電気的に接続している。またチップ部品MPは、実装面MPSを回路基板BDの表面と対向させ、且つ該表面に対し当接若しくは密接させている。
【0025】
一方、
図3は、回路基板BDに対しチップ部品MPが適切に実装されていない状態の例それぞれ示している。
図3(A)は、回路基板BDに対しチップ部品MPが実装されていない状態であり、「欠品」と呼ばれる。
【0026】
図3(B)は、回路基板BDに対しチップ部品MPが実装されているものの、回路基板BDの表面に直交する方向から見た場合のチップ部品MPの位置や傾き等が実装領域ARm(
図2(A))から大きくずれており、「位置ずれ」と呼ばれる。具体的に、
図3(B)に示した状態は、適切な状態に対しチップ部品MPが時計回りに回転しており、チップ部品MPの一方である右側の電極部分ELは回路基板BDの電極パッドPDにはんだ付けされているものの、チップ部品MPの他方である左側の電極部分ELは回路基板BDの電極パッドPDからずれており正常にはんだ付けされていない状態である。
【0027】
図3(C)は回路基板BDの表面に直交する方向から見た状態を示し、
図3(D)は
図3(C)を回路基板BDの表面に沿う方向に沿って該回路基板BDを横方向から見た状態を示している。
図3(C)及び
図3(D)は、回路基板BDに対しチップ部品MPが実装されているものの、その横方向から見た際に何れかの電極部分ELが電極パッドPDから上方向に浮いてチップ部品MPの実装面MPSが回路基板BDの表面から離れており、「チップ立ち」と呼ばれる。具体的に、
図3(C)及び
図3(D)に示した状態は、回路基板BDの表面に沿う方向に沿って該回路基板BDを横方向から見た際に、
図3(B)と同様にチップ部品MPの一方である右側の電極部分ELは回路基板BDの電極パッドPDにはんだ付けされているものの、チップ部品MPの他方である左側の電極部分ELは回路基板BDの電極パッドPDから上方向に浮いており正常にはんだ付けされていない状態である。
【0028】
図4は、撮像部7(
図1)により回路基板BDを撮像して得られた画像データにおける一部の領域である、実装領域ARm(
図2(A))と、該実装領域ARmの周囲の回路基板BDとを含む、判定用部品画像IMbを示したものである。
【0029】
このうち
図4(A)は、
図2(C)に示した場合と同様に、回路基板BDに対しチップ部品MPが適切に実装された、正常と判定される状態が撮像された判定用部品画像IMb1である。回路基板BDの実装領域ARm(
図2(A))に対しチップ部品MPが適切に実装された場合、回路基板BDの表面に直交する方向において該回路基板BDを真上から見た状態の判定用部品画像IMb1においては、チップ部品MPの電極部分ELによって回路基板BDの電極パッドPDの全領域が隠されている。
【0030】
図4(B)は、
図3(A)に示した場合と同様に、「欠品」と呼ばれる不良の一形態が撮像された判定用部品画像IMb2である。
図4(C)は、
図3(B)に示した場合と同様に、「位置ずれ」と呼ばれる不良の一形態が撮像された判定用部品画像IMb3である。
図4(D)は、
図3(C)及び
図3(D)に示した場合と同様に、「チップ立ち」と呼ばれる不良の一形態が撮像された判定用部品画像IMb4である。判定用部品画像IMb4においては、チップ部品MPが左上がりに浮くことにより、左側の電極パッドPDにおける左側半分程度の領域であるパッド露出領域ARvが、チップ部品MPの左側の電極部分ELの左側に露出している。以下では、判定用部品画像IMb1、IMb2、IMb3及びIMb4をまとめて判定用部品画像IMbとも呼ぶ。
【0031】
異常な状態の画像である判定用部品画像IMb2(
図4(B))及びIMb3(
図4(C))は、正常な状態の画像である判定用部品画像IMb1(
図4(A))に対し、真上から見た場合の見た目が大きく異なっている。このため外観検査装置1は、一次判定部28(
図5)(詳細は後述する)による判定で、判定用部品画像IMb2(
図4(B))及びIMb3(
図4(C))は異常であると問題なく判定できる。
【0032】
しかしながら、異常な状態の画像であるはずの判定用部品画像IMb4(
図4(D))は、正常な状態の画像である判定用部品画像IMb1(
図4(A))に対し、真上から見た場合の見た目が似ている。このため外観検査装置1は、一次判定部28による判定で判定用部品画像IMb4(
図4(D))を良品と判断してしまう可能性がある。
【0033】
これに対し二次判定部29(
図5)(詳細は後述する)は、一次判定部28による判定結果が良品である判定用画像データ(後述する)に対して二次判定処理を行う。一方、二次判定部29は、一次判定部28による判定結果が不良品である判定用画像データに対しては二次判定処理を行わない。
【0034】
[1-3.外観検査処理]
次に、外観検査装置1における外観検査処理について説明する。外観検査装置1では、外観検査処理において、画像データから得られる特徴量について、前段の学習処理と後段の判定処理とによる機械学習処理を行う。また外観検査装置1の制御部2は、学習処理及び判定処理を行う際に、内部に複数の機能ブロックを形成する。以下では、機能ブロックの構成と、前段の学習処理と、後段の判定処理とについて、それぞれ説明する。
【0035】
またここでは、予め外観検査装置1の撮像部7(
図1)により、製造工場において電子部品が実装された回路基板(すなわち対象物)が撮像され、生成された画像データが記憶部3に保存されているものとする。この画像データには、学習処理において使用される学習用画像データ(学習用データとも呼ぶ)と、判定処理において使用される判定用画像データ(判定用データとも呼ぶ)とが含まれる。
【0036】
学習用画像データは、予め良品であることが判明している対象物から得られた画像データであり、教師データとも呼ばれる。また判定用画像データは、製造工場において回路基板に電子部品が実装されたものの、不良の有無が未確認であるために検査を行うべき対象物から得られた画像データである。このうち判定用画像データには、例えば対象物である回路基板に割り当てられた製造番号や製造日時のような、該対象物との対応関係を表す情報も付与されている。
【0037】
[1-3-1.機能ブロックの構成]
次に、機能ブロックの構成について説明する。外観検査装置1の制御部2(
図1)は、記憶部3に予め記憶された学習処理プログラム又は判定処理プログラムをそれぞれ読み出して実行することにより、
図5に示すような各機能ブロックを形成する。具体的に制御部2は、取得部21、特徴量処理部23、異常度算出部24及び判定部25を形成し、さらに該特徴量処理部23内に特徴量抽出部27を、該判定部25内に一次判定部28及び二次判定部29をそれぞれ形成する。
【0038】
また記憶部3には、画像データが保存されるデータ保存部31と、該画像データから抽出された特徴量(詳しくは後述する)が保存される特徴量保存部33とが形成される。データ保存部31は、判定処理において用いられる複数の画像データ(判定用画像データ)を保存している。またデータ保存部31は、学習処理において用いられる複数の画像データ(学習用画像データ)を保存している。複数の学習用画像データは、良品のデータにより構成される。これらの判定用画像データと学習用画像データとは、互いの別のデータとして用意されている。
【0039】
取得部21は、学習処理において、データ保存部31から1個又は複数個の画像データである複数個の学習用画像データを読み出し、特徴量処理部23の特徴量抽出部27へ供給する。また取得部21は、判定処理において、データ保存部31から1個の画像データである判定用画像データを読み出し、特徴量処理部23の特徴量抽出部27と判定部25の二次判定部29とへ供給する。
【0040】
特徴量処理部23は、機械学習処理(単に学習処理とも呼ばれる)における学習モデルに相当する部分である。特徴量抽出部27は、学習処理において、抽出処理として学習用画像データから特徴量を抽出し、この特徴量を特徴量保存部33に保存させる。また特徴量抽出部27は、判定処理において、抽出処理として判定用画像データから特徴量を抽出し、この特徴量を異常度算出部24へ供給する。具体的に特徴量抽出部27は、例えばニューラルネットワークとして構成されており、公開データセット等を用いて重みパラメータが学習されたものを使用する。また特徴量抽出部27は、必要に応じてRAM13や記憶部3(
図1)を適宜利用することにより、機械学習のパラメータ等を適宜保持することができる。またこれらの学習処理では、画像データと特徴量とが対応付けられた教師データセットが使用される。
【0041】
異常度算出部24は、判定処理において、特徴量抽出部27から供給された特徴量(以下これを判定用特徴量と呼ぶ)と、特徴量保存部33から読み出した特徴量(以下これを学習済特徴量と呼ぶ)とを基に、該判定用特徴量と該学習済特徴量との差異の大きさを表す異常度(以下これを評価値とも呼ぶ)を算出し、これを判定部25の一次判定部28へ供給する。具体的に異常度算出部24は、例えばユークリッド距離を用いた最近傍法やマハラノビス距離を用いた演算処理等により、多次元空間内における判定用特徴量と学習済特徴量との距離(以下これを剥離とも呼ぶ)を算出し、これを異常度とする。
【0042】
一次判定部28は、判定処理における一次判定処理において、異常度算出部24から供給される異常度と、予め設定された判定閾値とを比較して判定結果を決定し、判定結果を二次判定部29へ供給する。このとき一次判定部28は、異常度が判定閾値以下であれば判定結果を「良品」とし、異常度が判定閾値よりも大きければ判定結果を「不良」とする。
【0043】
二次判定部29は、判定処理における二次判定処理において、取得部21から供給される判定用画像データと、一次判定部28から供給される判定結果とを用いて二次判定処理(以下では再判定処理とも呼ぶ)を行う。このとき二次判定部29は、一次判定部28から供給された判定結果において良品と判定された判定用画像データに対して後述する二次判定処理を実行し、判定結果を決定する。これを換言すれば、二次判定部29は、閾値との比較結果に応じて異常度を分類することになる。このため、判定処理を分類処理と呼ぶこともできる。
【0044】
[1-3-2.第1の実施の形態による二次判定処理について]
ここで、上述したように、判定用部品画像IMb4(
図4(D))の場合、左側の電極パッドPDが写った状態となっている。また、回路基板BDの表面の色は黒色や緑色等が一般的であり、チップ部品MPにおける電極部分EL以外の部分は黒色や濃い灰色等が一般的である。電極パッドPDの領域とチップ部品MPの電極部分ELの領域とは、撮像部7による撮影時にフラッシュが使用されて撮影されるため、回路基板BDの領域とチップ部品MPにおける電極部分EL以外の領域と比較して白色度が高いという特徴がある。
【0045】
そこで二次判定部29は、二次判定処理において、
図6(A)に示す判定用部品画像IMb4をグレースケールに変換して
図6(B)に示すグレースケール画像IMgを生成し、該グレースケール画像IMg全体において、輝度値の最高値から一定の範囲の画素を白画素として認識する。本実施の形態において、白画素とは、画像データ(色データ)の色を規定する色空間(RGB値)において白色(R=255、G=255、B=255)の色値を有する画素である。
【0046】
以下では、例えば、
図6(A)のように、回路基板BD上において左右方向に沿って並ぶように配置された一対の電極パッドPDに、チップ部品MPが、左右方向の両端部に一対の電極部分ELが配置された左右対称の状態で実装されている場合について説明する。
【0047】
二次判定部29は、
図6(C)に示すようにグレースケール画像IMg(
図6(B))を左右中央において中心線Lcで左右に2分割し、グレースケール画像IMgにおける中心線Lcよりも左側の領域の左側領域ARl(以下これを第1領域とも呼ぶ)内における白画素の領域である白画素領域ARw(図中に一点鎖線で示す)の画素数である白画素数(すなわち左側白画素数)を算出する。また二次判定部29は、グレースケール画像IMgにおける中心線Lcよりも右側の領域の右側領域ARr(以下これを第2領域とも呼ぶ)内における白画素の領域である白画素領域ARw(図中に一点鎖線で示す)の画素数である白画素数(すなわち右側白画素数)を算出する。
【0048】
続いて二次判定部29は、左側白画素数と右側白画素数との差分である左右白画素数差を算出する。続いて二次判定部29は、左右白画素数差を、予め設定されているグレースケール画像IMg内の電極部分ELの白画素数で除算し、左右白領域割合差を算出する。
【0049】
続いて二次判定部29は、左右白領域割合差が、予め設定されている白領域割合閾値以上である場合、判定用部品画像IMbにより示されるチップ部品MPの実装状態は異常と判定する。
【0050】
ここで、二次判定部29が、左右白画素数差が所定の左右白画素数差閾値以上である場合に異常であると判定せず、左右白領域割合差を白領域割合閾値と比較しているのは、チップ部品MPの大きさが大きくなるほどに電極部分ELの大きさも大きくなるために、様々な大きさのチップ部品MPに対応させるためである。
【0051】
このように二次判定部29は、判定用部品画像IMb4(
図4(D))のような、正常な状態とよく似た異常な状態を正常な状態と一次判定部28が判定してしまった場合であっても、電極部分ELが中心線Lcに対し互いに逆側に位置するように該中心線Lcにより判定用部品画像IMbに基づくグレースケール画像IMgを一方向領域及び他方向領域に2分割し、一方向領域の白画素量と他方向領域の白画素量との差が大きい場合、一方向領域と他方向領域とのうち白画素量の大きい方の領域においてはんだ付けが失敗し電極パッドPDの領域が見えている可能性が高いため、二次判定処理によって正しく異常と判定するようにした。
【0052】
図4と同様のチップ部品MPの判定用部品画像IMbで左右白領域割合差を算出したところ、
図4(A)のような正常な状態の場合は60[%]未満となり、
図4(D)のような正常な状態に似た異常な状態であるチップ立ちの場合は67[%]以上となった。このため二次判定部29は、左右白領域割合差が白領域割合閾値である60[%]以上の判定用部品画像IMbを異常と判定することにより、判定用部品画像IMb(
図4(D))のような画像も正しく異常と判定できる。
【0053】
[1-3-3.学習処理]
次に、学習処理について説明する。外観検査装置1の制御部2(
図1)は、学習処理を行う場合、記憶部3から所定の学習処理プログラムを読み出して実行する。このとき制御部2は、所定の初期化処理等を行うと共に、
図5に示した各機能ブロックを形成した上で、
図7に示す学習処理手順RT1を開始し、ステップSP1に移る。
【0054】
ステップSP1において制御部2は、データ保存部31から1個又は複数個の学習用画像データを取得部21により取得し、ステップSP2に移る。このとき取得部21は、取得した学習用画像データ(以下これを対象学習用画像データと呼ぶ)を特徴量抽出部27へ供給する。ステップSP2において制御部2は、特徴量抽出部27により、対象学習用画像データから特徴量を抽出して該特徴量を学習済特徴量として特徴量保存部33に保存し、ステップSP3に移る。
【0055】
ステップSP3において制御部2は、所定の学習終了条件を満たすか否かを判定する。この学習終了条件は、例えば「100個の学習用画像データを処理すること」や「データ保存部31に保存された学習用画像データを全て処理すること」等のような内容が、予め設定されている。このステップSP3において否定結果が得られると、制御部2は再度ステップSP1に戻ることにより、次の学習用画像データについて一連の処理を繰り返し実行する。一方、ステップSP3において肯定結果が得られると、制御部2は次のステップSP4に移り、学習処理手順RT1を終了する。
【0056】
[1-3-4.判定処理]
次に、判定処理について説明する。制御部2は、判定処理を行う場合、記憶部3から所定の判定処理プログラムを読み出して実行する。このとき制御部2は、学習処理の場合と同様に、所定の初期化処理等を行うと共に、
図5に示した各機能ブロックを形成した上で、
図7と対応する
図8に示す判定処理手順RT2を開始し、ステップSP11に移る。
【0057】
ステップSP11(取得ステップ)において制御部2は、取得部21により、データ保存部31から1個又は複数個の判定用画像データを取得し、ステップSP12に移る。このとき取得部21は、取得した判定用画像データ(以下これを対象判定用画像データと呼ぶ)を特徴量抽出部27へ供給する。
【0058】
ステップSP12(特徴量抽出ステップ及び評価値算出ステップ)において制御部2は、特徴量抽出部27により、対象判定用画像データから特徴量を抽出して該特徴量を判定用特徴量として異常度算出部24へ供給する。また制御部2は、特徴量保存部33から読み出した学習済特徴量と特徴量抽出部27から供給された判定用特徴量とを異常度算出部24により比較して異常度を算出し、該異常度を判定部25の一次判定部28へ供給し、ステップSP13に移る。
【0059】
これにより、判定用画像データが学習用画像データに類似しており、判定用特徴量と学習済特徴量との差異が比較的小さい場合、異常度の値が比較的小さくなる。このことは、対象物の判定結果が「良品」である可能性が高いことを意味する。一方、判定用画像データが学習用画像データにあまり類似しておらず、判定用特徴量と学習済特徴量との差異が比較的大きい場合、異常度の値が比較的大きくなる。このことは、対象物の判定結果が「不良」である可能性が高いことを意味する。
【0060】
ステップSP13(判定ステップ及び一次判定ステップ)において制御部2は、一次判定部28により一次判定処理を行うことにより、判定閾値と異常度算出部24から供給された異常度とを比較して判定結果を決定し、判定結果を二次判定部29へ供給し、ステップSP14に移る。
【0061】
ステップSP14において制御部2は、一次判定部28による判定結果が良品であったか否かを二次判定部29により判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは、一次判定部28により良品と判定されたため二次判定部29による二次判定処理を行う必要があることを表し、このとき制御部2は、ステップSP15に移る。
【0062】
ステップSP15(判定ステップ、二次判定ステップ及び表示ステップ)において制御部2は、一次判定部28により良品と判定された判定用画像データに対して二次判定部29により二次判定処理を行うことにより、左右白領域割合差と白領域割合閾値とを比較して判定結果を決定し、得られた判定結果を表す判定結果表示画面を表示部5(
図1)に表示させた上で、ステップSP16に移る。
【0063】
一方、ステップSP14において否定結果が得られると、このことは、一次判定部28により不良品と判定されたため二次判定部29による二次判定処理を行う必要はないことを表し、このとき制御部2は、ステップSP15をスキップして、ステップSP16に移る。
【0064】
ステップSP16において制御部2は、所定の判定終了条件を満たすか否かを判定する。この学習終了条件は、例えば「100個の判定用画像データを処理すること」や「データ保存部31に保存された判定用画像データを全て処理すること」等のような内容が、予め設定されている。ここで否定結果が得られると、制御部2は再度ステップSP11に戻ることにより、次の判定用画像データについて一連の処理を繰り返し実行する。一方、ステップSP16において肯定結果が得られると、制御部2は次のステップSP17に移り、判定処理手順RT2を終了する。
【0065】
[1-4.効果等]
以上の構成において外観検査装置1は、異常値が第1閾値としての判定閾値以下であり一次判定部28において良品であると判定された判定用画像データに対し、二次判定部29により二次判定処理を行うようにした。
【0066】
二次判定部29は二次判定処理において、判定用部品画像IMb(
図6(A))をグレースケールに変換してグレースケール画像IMg(
図6(B))を生成し、該グレースケール画像IMgを左右中央において中心線Lcで左右に2分割し、左側白画素数と右側白画素数との差分である左右白画素数差を算出する。また二次判定部29は、左右白画素数差を、予め設定されているグレースケール画像IMg内の電極部分ELの白画素数で除算して左右白領域割合差を算出し、左右白領域割合差が白領域割合閾値以上である場合、判定用部品画像IMbにより示されるチップ部品MPの実装状態は異常と判定するようにした。
【0067】
このため外観検査装置1は、一次判定部28により良品と判定された判定用画像データに対して二次判定部29により二次判定処理を行うことにより、良品に似た不良品であっても正しく不良品と判定できるため、不良検出率を向上でき、良否判定の精度を向上できる。
【0068】
ここで、二次判定部29の有無による実験例を紹介する。この実験例では、目視による評価(すなわち「良品」又は「不良品」)が予め判明している複数の画像データを用意した。その上で、この実験例では、各画像データから特徴量を抽出して異常度を算出し、さらに統計処理を行った。
【0069】
図9(A)は、本実施の形態とは異なり、二次判定部29を適応しなかった場合(以下これを二次判定部未適応とも呼ぶ)における、各画像データから得られた異常度の度数分布を表したグラフであり、横軸が異常度を表すと共に縦軸が度数(データ数)を表している。また
図9(A)では、目視による評価が「良」の場合(図中に「OK」と表記)と「不良」の場合(図中に「NG」と表記)とで、棒グラフ内のパターンを相違させている。
【0070】
この
図9(A)では、異常度が0.5付近の箇所において、目視評価が「OK」であった画像データから得られた異常度(以下これをOK異常度と呼ぶ)の中に、目視評価が「NG」であった画像データから得られた異常度(以下これをNG異常度と呼ぶ)が存在している。このことは、OK異常度とNG異常度とを容易に分離し得るような閾値を適切に設定することが難しく、該閾値を適切に設定できなかった場合に誤判定が生じ得ることを意味している。すなわち、二次判定部未適応の場合、
図4(D)に示したように真上から見て正常な状態に似た異常な状態の場合は異常度が正常な状態と同等になる場合があるため、このような場合、外観検査装置1は、正常な状態と異常な状態とを判定閾値Thで判定することは難しい。
【0071】
ここで、この実験例では、判定閾値Thを0.6に設定した。その結果、
図10に示すように、NG異常度が判定閾値Thよりも大きくなった割合、すなわち異常な対象物を異常と判定する割合(以下これを不良検出率と呼ぶ)が98.7[%]となった。このことは、二次判定部未適応の場合、残りの1.3[%]の割合で、本来は「異常」であるにも関わらず「正常」と判定されること、すなわち誤判定が生じることを意味している。これを換言すれば、二次判定部未適応の場合、誤判定を抑え得るような適切な判定閾値Thを設定することが、必ずしも容易ではない。
【0072】
一方、
図9(A)と対応する
図9(B)は、本実施の形態と同様に、二次判定部29を適応した場合(以下これを二次判定部適応とも呼ぶ)における、各画像データから得られた異常度の度数分布を表したグラフである。
【0073】
この
図9(B)では、異常度が0.5付近の箇所におけるNG異常度が取り除かれている。これにより
図9(B)では、OK異常度が0.55以下の範囲に分布している一方、NG異常度が0.65以上の範囲に分布しており、
図9(A)と比較して、双方の分布が比較的大きく離れている。このことは、OK異常度とNG異常度とを容易に分離し得るような判定閾値Thを適切に設定することが比較的容易であり、該判定閾値Thを適切に設定することにより誤判定を容易に防止し得ることを意味している。すなわち、二次判定部適応の場合、
図4(D)に示したように真上から見て正常な状態に似た異常な状態の場合であっても異常度が正常な状態と同等にはならない。このため外観検査装置1は、正常な状態と異常な状態とを判定閾値Thで分けて判定できる。
【0074】
この二次判定部適応の場合においても判定閾値Thを0.6に設定した。その結果、
図10に示すように、NG異常度が判定閾値Thよりも大きくなった割合(不良検出率)が100[%]となった。このことは、二次判定部適応の場合、OK異常度の分布範囲とNG異常度の分布範囲との間に判定閾値Thを設定するだけで、誤判定が生じないことを意味している。
【0075】
このように本実施の形態では、一次判定部28により良品と判定された判定用画像データに対して二次判定部29により二次判定処理を行うことにより、誤判定を抑え得るような適切な閾値を設定することが、極めて容易となっている。
【0076】
ここで、判定閾値Thを単純に小さい値とするほど、多くのNG異常度が判定閾値Thよりも大きくなっていくため、不良検出率は高くなる。しかしながらその場合、OK異常度についても判定閾値Thよりも大きくなるものが出てくるため、良品が不良品と判定されてしまう可能性が高くなってしまう。このため外観検査装置1は、二次判定部29で二次判定処理を行うことにより、OK異常度の分布範囲とNG異常度の分布範囲とを大きく分離させ、OK異常度の分布範囲とNG異常度の分布範囲との間に最適な判定閾値Thを設定することができる。これにより外観検査装置1は、良品を不良品と判定してしまうことを防止できる。
【0077】
以上の構成によれば第1の実施の形態による外観検査装置1は、対象物としての回路基板BDを撮影する撮像部7と、撮像部7により撮影された第1画像データとしての判定用画像データを取得する取得部21と、回路基板BDが撮影された第2画像データとしての学習用画像データと、該学習用画像データから抽出すべき第2特徴量としての学習用特徴量を含む教師データセットを用いて学習処理が行われた学習モデルを使用して、判定用画像データから第1特徴量としての判定用特徴量を抽出する特徴量抽出部27と、学習用特徴量と判定用特徴量との剥離を示す評価値としての異常度を算出する異常度算出部24と、異常度が第1閾値としての判定閾値以下である場合、判定用画像データにおける特定色である白色の割合から判定用画像データを判定する判定部25と、判定部25による判定の結果を出力する表示部5とを設けるようにした。
【0078】
これにより外観検査装置1は、不良品を良品であると判定してしまっても、判定用画像データにおける特定色である白色の割合から判定用画像データを再判定することにより、不良品であると正しく判定することができる。
【0079】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.外観検査装置の構成]
第2の実施の形態による外観検査装置101(
図1)は、第1の実施の形態による外観検査装置1と比較して、制御部2に代わる制御部102を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。制御部102は、第1の実施の形態と同様に、CPU11、ROM12及びRAM13等を有しているものの、記憶部3から各種プログラムを読み出して実行することにより、
図5と対応するブロックに同一符号を付した
図11に示すように、第1の実施の形態と一部異なる機能ブロックを形成する。
【0080】
具体的に制御部102は、第1の実施の形態と比較して、二次判定部29に代わる二次判定部129が設けられていると共に、部品領域抽出部40が追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0081】
取得部21は、学習処理において、データ保存部31から学習用画像データを読み出し、特徴量処理部23の特徴量抽出部27へ供給する。また取得部21は、判定処理において、データ保存部31から判定用画像データを読み出し、特徴量処理部23の特徴量抽出部27と部品領域抽出部40とへ供給する。
【0082】
部品領域抽出部40は、判定処理において、判定用画像データを二次判定部129へ供給すると共に、判定用画像データから部品領域(後述する)を抽出し、該部品領域を示す情報を部品領域情報として二次判定部129へ供給する。
【0083】
二次判定部129は、判定処理における二次判定処理において、部品領域抽出部40から供給される判定用画像データ及び部品領域情報と、一次判定部28から供給される判定結果とを用いて二次判定処理を行う。このとき二次判定部129は、一次判定部28から供給された判定結果において良品と判定された判定用画像データに対して、後述する二次判定処理を実行し、判定結果を決定する。
【0084】
[2-2.外観検査処理]
次に、外観検査装置101における外観検査処理について説明する。外観検査装置101では、外観検査処理において、画像データから得られる特徴量について、前段の学習処理と後段の判定処理とによる機械学習処理を行う。
【0085】
[2-2-1.第2の実施の形態による二次判定処理について]
ところで、
図12に示すように、実際の回路基板BDには、実装領域ARmを示す白色の四角形等の線LNや、各種情報を示す白色の文字CHが記載されていることが多い。このような白色の線LNや文字CH等は輝度値が高いため、白画素と判定される可能性が高い。このため、実装領域ARm外の領域が多く含まれた状態の判定用部品画像IMbに基づいて二次判定部129において二次判定処理を行った場合、正しく二次判定処理ができない可能性がある。
【0086】
そこで部品領域抽出部40は、判定用画像データを二次判定部129へ供給すると共に、判定用画像データから部品領域ARp(後述する)を抽出し、該部品領域ARpを示す情報を部品領域情報として二次判定部129へ供給する。部品領域ARpとは、判定用画像データの回路基板BD上においてチップ部品MPが実際に搭載されている領域であり、部品領域情報とは、部品領域ARpの座標を示す情報である。
【0087】
図13は、撮像部7(
図1)により回路基板BDを撮像して得られた画像データにおける一部の領域である、チップ部品MPと、該チップ部品MPの周囲の回路基板BDとを含む、判定用部品画像IMb101を示したものである。この判定用部品画像IMb101は、チップ部品MP以外の領域において、回路基板BD上の線LN及び文字CHが写り込んでいる。
【0088】
部品領域抽出部40は、公知のテンプレートマッチングを行うことにより、
図2(B)に示したようなチップ部品MPを示す画像と一致度が互い画像を判定用画像データ内において抽出し、
図14に示すように、その画像の領域を部品領域ARp(図中にハッチングを付す)とし、その部品領域ARpの座標を検出する。
【0089】
二次判定部129は、二次判定処理において、
図15(A)に示す判定用部品画像IMb101をグレースケールに変換して
図15(B)に示すグレースケール画像IMg101を生成し、該グレースケール画像IMg101全体において、輝度値の最高値から一定の範囲の画素を白画素として認識する。
【0090】
続いて二次判定部129は、
図15(C)に示すように、グレースケール画像IMg101(
図15(B))において、部品領域抽出部40から供給された部品領域情報により示される部品領域ARpの座標を認識する。また二次判定部129は、
図15(D)に示すように、グレースケール画像IMg101における部品領域ARp内の輝度差により、電極部分ELの領域である電極部分領域ARe(図中に左下がりのハッチングを付す)を認識する。続いて二次判定部129は、
図15(D)に示すように、電極部分領域AReの左右外側の所定範囲の領域を、電極パッドPDが配置されている可能性が高い電極パッド推定領域ARd(図中に右下がりのハッチングを付す)と推定する。
【0091】
続いて二次判定部129は、
図15(E)に示すように、グレースケール画像IMg101を左右中央において中心線Lcで左右に2分割し、グレースケール画像IMgにおける左側領域ARl内の電極部分領域AReと電極パッド推定領域ARdとをまとめて比較領域ARcとして設定する。また二次判定部129は、グレースケール画像IMg101における右側領域ARr内の電極部分領域AReと電極パッド推定領域ARdとをまとめて比較領域ARcとして設定する。さらに二次判定部129は、グレースケール画像IMg101における中心線Lcよりも右側に配置された電極部分領域AReと電極パッド推定領域ARdとをまとめて比較領域ARcとして設定する。
【0092】
さらに二次判定部129は、グレースケール画像IMg101の左側領域ARl内における比較領域ARc内の白画素領域ARw(図中に一点鎖線で示す)の画素数である白画素数(すなわち左側白画素数)を算出する。またさらに二次判定部129は、グレースケール画像IMg101の右側領域ARr内における比較領域ARc内の白画素領域ARw(図中に一点鎖線で示す)の画素数である白画素数(すなわち右側白画素数)を算出する。
【0093】
続いて二次判定部129は、左側白画素数と右側白画素数との差分である左右白画素数差を算出する。続いて二次判定部129は、左右白画素数差を、予め設定されているグレースケール画像IMg101内の電極部分ELの白画素数で除算し、左右白領域割合差を算出する。
【0094】
続いて二次判定部29は、左右白領域割合差が、予め設定されている白領域割合閾値以上である場合、判定用部品画像IMbにより示されるチップ部品MPの実装状態は異常と判定する。
【0095】
[2-2-2.学習処理]
次に、学習処理について説明する。外観検査装置101の制御部102(
図1)は、学習処理を行う場合、記憶部3から所定の学習処理プログラムを読み出して実行する。このとき制御部102は、
図11に示した各機能ブロックを形成した上で、
図7に示した第1の実施の形態と同様の学習処理手順RT1を実行する。学習処理手順RT1については説明を省略する。
【0096】
[2-2-3.判定処理]
次に、判定処理について説明する。制御部102は、判定処理を行う場合、記憶部3から所定の判定処理プログラムを読み出して実行する。このとき制御部102は、学習処理の場合と同様に、
図11に示した各機能ブロックを形成した上で、判定処理手順RT2(
図8)と対応するステップに同一符号を付した
図16に示す判定処理手順RT102を開始し、ステップSP11に移る。ステップSP11~ステップSP14において制御部102は、学習処理手順RT1(
図8)と同様の処理を行い、ステップSP101に移る。
【0097】
ステップSP101(部品領域抽出ステップ)において制御部102は、部品領域抽出部40により、判定用画像データから部品領域ARpを抽出して該部品領域ARpを示す部品領域情報を二次判定部129へ供給し、ステップSP115に移る。
【0098】
ステップSP115において制御部102は、一次判定部28により良品と判定された判定用画像データに対して二次判定部129により二次判定処理を行うことにより、左右白領域割合差と白領域割合閾値とを比較して判定結果を決定し、ステップSP16に移る。
【0099】
ステップSP16において制御部2は、学習処理手順RT1(
図8)と同様の処理を行い、否定結果が得られると再度ステップSP11に戻り、肯定結果が得られるとステップSP17に移り、判定処理手順RT102を終了する。
【0100】
[2-3.効果等]
以上の構成において第2の実施の形態による外観検査装置101は、異常値が判定閾値Th以下であり一次判定部28において良品であると判定された判定用画像データに対し、二次判定部129により二次判定処理を行うようにした。
【0101】
また外観検査装置101は、部品領域抽出部40により、判定用画像データから部品領域ARpを抽出し、該部品領域ARpを示す情報を部品領域情報として二次判定部129へ供給するようにした。
【0102】
二次判定部129は二次判定処理において、グレースケール画像IMg101において部品領域情報により示される部品領域ARp内部における電極部分ELの領域である電極部分領域AReを認識すると共に、該電極部分領域AReの左右外側の所定範囲の領域を、電極パッドPDが配置されている可能性が高い電極パッド推定領域ARdと推定する。
【0103】
続いて二次判定部129は、グレースケール画像IMg101において左側領域ARl内の電極部分領域AReと電極パッド推定領域ARdとをまとめた比較領域ARcと、右側領域ARr内の電極部分領域AReと電極パッド推定領域ARdとをまとめた比較領域ARcとにおける、左右白画素数差を算出する。また二次判定部129は、左右白画素数差を、予め設定されているグレースケール画像IMg101内の電極部分ELの白画素数で除算して左右白領域割合差を算出し、左右白領域割合差が白領域割合閾値以上である場合、判定用部品画像IMb101により示されるチップ部品MPの実装状態は異常と判定するようにした。
【0104】
このため外観検査装置101は、チップ部品MP以外の領域における電極パッドPD以外の領域の影響を除去でき、二次判定処理をより精度良く実施することができる。これにより外観検査装置101は、外観検査装置1と比較して、一次判定部28により良品と判定された判定用画像データに対して二次判定部29により二次判定処理を行うことにより、良品に似た不良品であってもより一層正しく不良品と判定できるため、不良検出率をより一層向上でき、良否判定の精度を向上できる。
【0105】
その他、第2の実施の形態による外観検査装置101は、第1の実施の形態による外観検査装置1と同様の作用効果を奏し得る。なお外観検査装置101は、判定処理手順RT102(
図16)におけるステップSP101(部品領域抽出ステップ)をステップSP16以前の何れのタイミングで行っても良いが、ステップSP14以前のタイミングで行う場合と比較して、ステップSP14以降のタイミングで行う方が、ステップSP14で不良品と判定した対象物の部品領域情報を取得しなくて済むため、より好ましい。
【0106】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、回路基板BDに左右対称の状態で実装されたチップ部品MPに対し、グレースケール画像IMgを左右中央において中心線Lcで左右に2分割し、グレースケール画像IMgにおける左側領域ARlの左側白画素数と右側領域ARrの右側白画素数との差分である左右白画素数差を、予め設定されているグレースケール画像IMg内の電極部分ELの白画素数で除算した値である左右白領域割合差が、白領域割合閾値以上である場合、不良と判定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置1は、回路基板BDに上下対称の状態で実装されたチップ部品MPに対し、グレースケール画像IMgを上下中央において中心線Lcで上下に2分割し、グレースケール画像IMgにおける中心線Lcよりも上側の領域の上側白画素数と、グレースケール画像IMgにおける中心線Lcよりも下側の領域の下側白画素数との差分である上下白画素数差を、予め設定されているグレースケール画像IMg内の電極部分ELの白画素数で除算した値である上下白領域割合差が、白領域割合閾値以上である場合、不良品と判定しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0107】
また外観検査装置1は、例えば、上下左右方向の端部に電極部分ELが配置されたチップ部品MPに対し、左右白領域割合差が白領域割合閾値以上である場合か、又は上下白領域割合差が白領域割合閾値以上である場合、不良と判定しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0108】
さらに外観検査装置1は、
図17のようなチップ部品MP201のように、例えば左側よりも右側の方が電極部分ELの数が多いような、電極部分ELの数が非対称で形成されたチップ部品MP201の場合、該チップ部品MP201の部品情報を取得し、該部品情報の電極の座標位置に基づき、右側白画素数から電極部分EL1つ分の白画素数を減算し、白画素数の左右差を計算上で0にした状態で、左右白画素数差を計算しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0109】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、回路基板BDに左右対称の状態で実装されたチップ部品MPのグレースケール画像IMgの場合、グレースケール画像IMgにおける上端部及び下端部の領域は、チップ部品MP及び電極パッドPD以外の領域である可能性が高いため、グレースケール画像IMgにおける上端部及び下端部の領域は左側白画素数及び右側白画素数を算出する際には無視することにより、そのような領域の影響を軽減させても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0110】
さらに上述した第2の実施の形態において外観検査装置101は、グレースケール画像IMg101におけるチップ部品MP及び電極パッドPD以外の領域を除外するように切り出し、グレースケール画像IMg101におけるチップ部品MP及び電極パッドPD以外の領域は左側白画素数及び右側白画素数を算出する際には無視することにより、チップ部品MP及び電極パッドPD以外の領域の影響を軽減させても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0111】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、白色の画素数の左右差に基づき二次判定処理を行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置1は、例えば灰色の画素数の左右差に基づき二次判定処理を行っても良い。要は外観検査装置1は、グレースケール画像IMg中における明度(輝度)が所定閾値以上の領域の画素数の左右差に応じて二次判定処理を行っても良い。すなわち、外観検査装置1は、画像データ(色データ)の色を規定する色空間(RGB値)において白色(R=255、G=255、B=255)から白色近傍の色値(R、G、Bの値が例えば241~254)を有する画素を白画素(白色)と見なしても良い。また外観検査装置1は、色値を表す指標として、RGBに限らず、L*a*b*値等の他の色空間の指標を用いても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0112】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、一次判定部28で良品と判定した全ての判定用画像データに対し二次判定部29で二次判定処理を行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置1は、判定処理に先立ち、学習処理で事前に良品と不良品との異常値の範囲は認識しているため、事前に良品に似た不良品の異常値が、例えば0.45以上0.6以下等の一定範囲に収まっている場合には、第2閾値としての二次判定実施閾値を0.45、第1閾値としての判定閾値を0.6に設定し、一次判定部28で良品と判定した判定用画像データの中で、異常度が二次判定実施閾値以上かつ判定閾値以下の異常値の判定用画像データに対してのみ二次判定部29で二次判定処理を行っても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0113】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、全ての判定用部品画像IMbに対する白領域割合閾値を一定にする場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置1は、判定処理に先立ち、学習処理で事前に良品に似た不良品が数パターンある場合、パターン毎に異常値と左右白画素数差が異なることが考えられるため、判定用画像データの異常値に応じて白領域割合閾値を切り替えても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0114】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、グレースケール画像IMgを左右中央において中心線Lcで左右に2分割する場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置1は、グレースケール画像IMg中央のチップ部品MPの位置に合わせてグレースケール画像IMgを左右中央に対し左寄り又は右寄りに位置させた中心線Lcで左右に2分割しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0115】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、左右白領域割合差が白領域割合閾値以上である場合は異常と判定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置1は、特に、同一サイズのチップ部品MPが撮影された複数のグレースケール画像IMgについて二次判定処理を行う場合、左右白画素数差が所定の左右白画素数差閾値以上である場合は異常と判定しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0116】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、データ保存部31に保存された学習処理において用いられる複数の学習用画像データを良品のデータにより構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置1は、データ保存部31に保存された学習処理において用いられる複数の学習用画像データを不良品のデータを含んで構成しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0117】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、学習モデル更新ステップにおいて、一次判定部28で良品と判定した判定用画像データの特徴量をさらに学習して、特徴量保存部33へ出力し、学習モデルを更新しても良い。その場合、外観検査装置1は、良否判定精度をさらに向上させることができる。第2の実施の形態においても同様である。
【0118】
さらに上述した第2の実施の形態において外観検査装置101は、部品領域抽出部40から部品領域情報を二次判定部129へ供給し、二次判定部129において部品領域情報に基づき二次判定処理を行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、外観検査装置101は、部品領域抽出部40から部品領域情報に基づき判定用画像データから切り出した判定用部品画像データを二次判定部129へ供給し、二次判定部129において判定用部品画像データに基づき二次判定処理を行っても良い。
【0119】
さらに上述した第1の実施の形態においては、外観検査装置1に撮像部7(
図1)を設け、該撮像部7により撮像された画像データをデータ保存部31に保存させておく形態について述べた。本発明はこれに限らず、例えば通信部4を介して接続される他の機器から画像データを取得し、データ保存部31に保存させておいても良い。この場合、他の機器としては、例えば撮像部7と同様の撮像機能や通信部4と同様の通信機能等を有するネットワークカメラ等を使用することができる。
【0120】
さらに上述した第1の実施の形態においては、制御部2において学習処理プログラム等のプログラムを実行し、
図4に示した各機能ブロックをソフトウェアにより構成する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば
図4に示した各機能ブロックの少なくとも一部をハードウェアにより構成しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0121】
さらに上述した第1の実施の形態において外観検査装置1は、学習処理プログラム等の各プログラムを記憶部3に予め記憶しておく形態について述べた。本発明はこれに限らず、例えば所定のサーバ装置(図示せず)に各プログラムを保存しておき、外観検査装置1が通信部4(
図1)により所定のネットワーク(図示せず)を介して該サーバ装置から該プログラムをダウンロードして実行するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0122】
さらに上述した第1の実施の形態においては、回路基板BD上にチップ部品MPが正常に実装されているか否かを判定する外観検査装置1に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、他の種々の物体の外観の状態を判定する装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0123】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。
【0124】
さらに上述した実施の形態においては、撮像部としての撮像部7と、取得部としての取得部21と、特徴量抽出部としての特徴量抽出部27と、評価値算出部としての異常度算出部24と、判定部としての判定部25と、出力部としての表示部5とによって、外観検査装置としての外観検査装置1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる撮像部と、取得部と、特徴量抽出部と、評価値算出部と、判定部と、出力部とによって、外観検査装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、例えば製品を製造する工場に設置される外観検査装置で利用できる。
【符号の説明】
【0126】
1、101……外観検査装置、2……制御部、3……記憶部、4……通信部、5……表示部、6……操作部、7……撮像部、21……取得部、23……特徴量処理部、24……異常度算出部、25……判定部、27……特徴量抽出部、28……一次判定部、29、129……二次判定部、31……データ保存部、33……特徴量保存部、40……部品領域抽出部、MP……チップ部品、MPS……実装面、EL……電極部分、BD……回路基板、PD……電極パッド、ARm……実装領域、ARv……パッド露出領域、ARp……部品領域、ARe……電極部分領域、ARd……電極パッド推定領域、ARc……比較領域、Lc……中心線、Th……判定閾値、LN……線、CH……文字、IMb……判定用部品画像、IMg……グレースケール画像、ARl……左側領域、ARr……右側領域、ARw……白画素領域。