(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117233
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】発電システムおよび制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/487 20070101AFI20240822BHJP
【FI】
H02M7/487
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023217
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【弁理士】
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】金田 大成
(72)【発明者】
【氏名】石月 照之
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770CA02
5H770CA08
5H770DA33
5H770EA01
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】中性点クランプ型の三相電力変換器に設けられた複数の半導体スイッチング素子の損失集中の回避と中性点の電位変動の抑制を両立し、安全性の高い運転を実現することが可能な発電システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る発電システムは、複数の半導体スイッチング素子が配置された中性点クランプ型の三相電力変換器と、複数の半導体スイッチング素子を制御する基準電圧指令値に、正数の零相電圧および負数の零相電圧を周期的に重畳する重畳処理を行う制御装置と、を備える。正数の零相電圧および負数の零相電圧を重畳する周期は、基準電圧指令値の周期よりも短い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体スイッチング素子が配置された中性点クランプ型の三相電力変換器と、
前記複数の半導体スイッチング素子を制御する基準電圧指令値に、正数の零相電圧および負数の零相電圧を周期的に重畳する重畳処理を行う制御装置と、を備え、
前記正数の零相電圧および前記負数の零相電圧を重畳する周期は、前記基準電圧指令値の周期よりも短い、発電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記正数の零相電圧と前記負数の零相電圧とを交互に連続して重畳する、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記正数の零相電圧を重畳する第1重畳期間と、前記負数の零相電圧を重畳する第2重畳期間との間に、前記正数および前記負数の零相電圧を重畳しない非重畳期間を設定する、請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記三相電力変換器の運転条件に応じて、前記周期に対する第1重畳期間および前記第2重畳期間の長さの割合を示すデューティを変化させる、請求項3に記載の発電システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記基準電圧指令値の変調率または周波数に応じて前記デューティを変化させる、請求項4に記載の発電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記変調率または前記周波数が高くなるにつれて前記デューティを低減し、前記変調率または前記周波数が低くなるにつれて前記デューティを増加させる、請求項5に記載の発電システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記基準電圧指令値に、前記正数の零相電圧および前記負数の零相電圧とは異なる零相電圧を重畳することによって、前記三相電力変換器の中性点の電位変動を抑制する、請求項1から6のいずれかに記載の発電システム。
【請求項8】
前記正数の零相電圧を前記基準電圧指令値に重畳した電圧指令値は、中性点を基準電位としたときの正の最大値に一定期間維持され、
前記負数の零相電圧を前記基準電圧指令値に重畳した電圧指令値は、前記中性点を基準電位としたときの負の最大値に一定期間維持される、請求項1から6のいずれかに記載の発電システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記基準電圧指令値に前記正数の零相電圧および前記負数の零相電圧を重畳した電圧指令値と、三角波状のキャリア波信号と比較してPWM(Pulse Wide Modulation)信号を生成し、
前記周期は、前記キャリア波信号の周期よりも長い、請求項1から6のいずれかに記載の発電システム。
【請求項10】
前記基準電圧指令値の変調率が所定値よりも低い場合に、前記制御装置は、前記重畳処理を行う、請求項1から6のいずれかに記載の発電システム。
【請求項11】
複数の半導体スイッチング素子が配置された中性点クランプ型の三相電力変換器を制御する制御装置であって、
前記複数の半導体スイッチング素子を制御する基準電圧指令値に、正数の零相電圧および負数の零相電圧を周期的に重畳する重畳処理を行う演算処理部と、
前記重畳処理の結果を用いて前記複数の半導体スイッチング素子を制御する駆動制御部と、を備え、
前記正数の零相電圧および前記負数の零相電圧を重畳する周期は、前記基準電圧指令値の周期よりも短い、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電システムおよび制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力を交流電力に変換する三相電力変換器には、3つの電圧レベルを出力することができる中性点クランプ型(NPC:Neutral Point Clamped)の電力変換器がある。中性点クランプ型の三相電力変換器は、出力の高調波が小さい利点を有するため、広く世の中で用いられている。
【0003】
中性点クランプ型の三相電力変換器には、複数の半導体スイッチング素子が配置されている。各半導体スイッチング素子は、電力変換器の出力電圧のレベルに応じて設定される電圧指令値に従ってスイッチング動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7068015号公報
【特許文献2】特開昭59-216476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、中性点クランプ型の三相電力変換器では、出力電圧の周波数が低い場合、各半導体スイッチング素子を駆動する電圧指令値の変調率も低くなる。この場合、半導体スイッチング素子群の中で内側に配置された内側素子のスイッチング回数が増加する。これにより、損失が内側素子に集中するため、素子温度が上昇して最終的に破壊してしまうおそれがある。
【0006】
また、中性点クランプ型の三相電力変換器には、直流電圧を分圧する2つのコンデンサが設けられる。そのため、2つのコンデンサ間における中性点の電位が変動する場合がある。この場合、半導体スイッチング素子に定格を超える電圧が印加されると、半導体スイッチング素子が破壊するおそれがある。半導体スイッチング素子が破壊すると、中性点クランプ型の三相電力変換器を備える発電システムの安全性が損なわれてしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、中性点クランプ型の三相電力変換器に設けられた複数の半導体スイッチング素子の損失集中の回避と中性点の電位変動の抑制を両立し、安全性の高い運転を実現することが可能な発電システムおよび制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る発電システムは、複数の半導体スイッチング素子が配置された中性点クランプ型の三相電力変換器と、複数の半導体スイッチング素子を制御する基準電圧指令値に、正数の零相電圧および負数の零相電圧を周期的に重畳する重畳処理を行う制御装置と、を備える。正数の零相電圧および負数の零相電圧を重畳する周期は、基準電圧指令値の周期よりも短い。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、中性点クランプ型の三相電力変換器に設けられた複数の半導体スイッチング素子の損失集中の回避と中性点の電位変動の抑制を両立し、安全性の高い運転を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】二次励磁変換器の回路構成の一例を示す図である。
【
図3】インバータを駆動するための変調方式の一例を示す。
【
図4】(a)は出力電圧レベルが+Vである場合の電流経路を示す図であり、(b)は出力電圧レベルが0である場合の電流経路を示す図であり、(c)は出力電圧レベルが-Vである場合の電流経路を示す図である。
【
図5】(a)は変調率が高い場合の基準電圧指令値およびPWM信号の一例を示す図であり、(b)は変調率が低い場合の基準電圧指令値およびPWM信号の一例を示す図である。
【
図6】中性点NPの電位変動を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態に係る電圧指令値と中性点NPの電位変動の波形図の一例である。
【
図8】変形例に係る演算処理の電圧指令値に基づいてインバータ11を駆動した場合の回析波形の一例を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る電圧指令値と中性点NPの電位変動の波形図の一例である。
【
図10】(a)は期間T
U、期間T
L、および期間T
Nの長さの設定方法を説明するためのグラフであり、(b)は2種類のデューティd1、d2でそれぞれ設定される期間T
U、期間T
L、および期間T
Nの長さの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す発電システム1は、二次励磁変換器10と、制御装置20と、誘導発電機30と、水車40と、変圧器50と、遮断器60と、を備える。この発電システム1は、水車40の回転で発電する可変速揚水発電システムである。ただし、本発明に係る発電システムは、可変速揚水発電システムを含む水力発電システムだけでなく、例えば風力発電システム等の他の発電システムにも適用できる。発電システム1が、風力発電システムである場合、風車が水車40の代わりに設置される。以下、発電システム1の構成について説明する。
【0013】
二次励磁変換器10は、中性点クランプ型の三相電力変換器の一例であり、インバータ11、コンバータ12、第1コンデンサ13a、第2コンデンサ13b、および変圧器14を有する。ここで、
図2を参照して二次励磁変換器10の回路構成について説明する。
【0014】
図2は、二次励磁変換器10の回路構成の一例を示す図である。
図12に示すインバータ11およびコンバータ12の回路構成は、中性点クランプ型である。具体的には、インバータ11は、誘導発電機30の各相に対応する3つのごとに、6つ半導体スイッチング素子S
11~半導体スイッチング素子S
16を有する。各半導体素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子である。また、各半導体素子には、ダイオードが逆並列に接続されている。
【0015】
半導体スイッチング素子S11~半導体スイッチング素子S14は、高電位点Pと低電位点Nとの間で直列に接続されている。そのため、半導体スイッチング素子S11のコレクタ端子が直流端子として高電位点Pに接続され、半導体スイッチング素子S14のエミッタ端子が直流端子として低電位点Nに接続される。
【0016】
また、半導体スイッチング素子S15および半導体スイッチング素子S16は、直列に接続されている。このとき、半導体スイッチング素子S15と半導体スイッチング素子S16の接続点は、高電位点Pと低電位点Nとの中間に位置する中性点NPに接続される。さらに、半導体スイッチング素子S15および半導体スイッチング素子S16は、半導体スイッチング素子S12および半導体スイッチング素子S13に対して並列に接続されている。
【0017】
半導体スイッチング素子S
11~半導体スイッチング素子S
16の各々は、制御装置20から各素子のゲートに入力される信号に基づいてオンおよびオフする。これにより、直流端子に入力された直流電力が、交流電力に変換される。この交流電力は、交流端子u1、v1、w1から誘導発電機30に供給される。なお、半導体スイッチング素子S
11~S
16は、
図2では1つの半導体スイッチング素子として表記されているが、複数の半導体スイッチング素子を直列接続し、同一のゲート信号で駆動することで事実上1つの素子として動作させてもよい。また、インバータ11は、同じ回路が複数並列接続されて構成されていてもよい。
【0018】
一方、コンバータ12は、3つの交流端子u2、v2、w2ごとに、6つ半導体スイッチング素子S
21~半導体スイッチング素子S
26を有する。各半導体素子は、インバータ11と同様に、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子である。また、半導体スイッチング素子S
21~半導体スイッチング素子S
26の各々にもダイオードが逆並列に接続されている。半導体スイッチング素子S
21~半導体スイッチング素子S
26の接続形態は、インバータ11と同じである。半導体スイッチング素子S
21~半導体スイッチング素子S
26の各々も、制御装置20から各素子のゲートに入力される信号に基づいてオンおよびオフする。これにより、電力系統90から変圧器50を介して交流端子u2、v2、w2に入力された交流電力が、インバータ11の運転に必要な直流電力に変換される。なお、半導体スイッチング素子S
21~S
26は、
図2では1つの半導体スイッチング素子として表記されているが、複数の半導体スイッチング素子を直列接続し、同一のゲート信号で駆動することで事実上1つの素子として動作させてもよい。また、コンバータ12は、同じ回路が複数並列接続されて構成されていてもよい。
【0019】
第1コンデンサ13aは、高電位点Pと中性点NPとの間に接続される。第2コンデンサ13bは、中性点NPと低電位点Nとの間に接続される。第1コンデンサ13aおよび第2コンデンサ13bは、高電位点Pと中性点NPとの間における直流電圧VPNを、電圧Vpと電圧VNとに分圧する。
【0020】
図1に戻って、変圧器14はコンバータ12の入力側に接続される。変圧器14は、入力電圧を所定の電圧に変圧する。変圧された電圧が、コンバータ12に入力される。
【0021】
続いて、制御装置20について説明する。制御装置20は、演算処理部21および駆動制御部22を有する。演算処理部21は、運転指令100に含まれる基準電圧指令値に対して零相電圧を重畳する演算処理を行う。運転指令100は、例えばオペレータの操作によって外部の中央制御指令装置(不図示)から制御装置20へ入力される。駆動制御部22は、演算処理部21で算出された電圧指令値に基づいて、インバータ11の半導体スイッチング素子S11~S16のスイッチング動作を制御する。
【0022】
誘導発電機30は、巻線型の三相誘導発電機である。誘導発電機30の二次励磁巻線は、インバータ11の交流端子u、v、wに接続される。誘導発電機30の固定子巻線は、遮断器60を介して変圧器50に接続される。
【0023】
水車40は、誘導発電機30の回転軸に接続される。水車40は、ダムの放流によって生成される水流で回転するか、あるいは誘導発電機30の回転力により水を高位置のダムへくみ上げる。水車40の回転力は、誘導発電機30に伝達されて電力に変換される。
【0024】
変圧器50は、誘導発電機30の出力電圧を変圧する。変圧された電圧は、遮断器70を介して送電線80で電力系統90に送電される。また、変圧器50は、電力系統90から送電線80を介して供給された交流電圧を変圧する。変圧された交流電圧は、コンバータ12に供給される。
【0025】
遮断器60は、誘導発電機30と変圧器50との間に接続される。遮断器60は、発電システム1内で異常が発生した場合に誘導発電機30と変圧器50との接続を遮断する。
【0026】
遮断器70は、変圧器50と送電線80との間に接続される。遮断器70は、電力系統90で異常が発生した場合に変圧器50と送電線80との接続を遮断する。なお、本実施形態では、変圧器14、変圧器50、遮断器60、および遮断器70は、設置されていなくてもよい。
【0027】
ここで、上記のように構成された発電システム1における制御装置20によるインバータ11の制御動作について説明する。
【0028】
図3は、インバータ11を駆動するための変調方式の一例を示す。
図3では、三相電力変換器であるインバータ11の交流端子u1、v1、w1にそれぞれ対応する各相の電圧指令値が、正弦波信号でそれぞれ表される基準電圧指令値v
u,v
v,v
wとして1つずつ運転指令100に含まれている。制御装置20の駆動制御部22は、正弦波信号として表される基準電圧指令値v
u,v
v,v
wと三角波状のキャリア波信号Cとを比較してPWM(Pulse Wide Modulation)信号を生成する。このPWM信号が、インバータ11の各半導体スイッチング素子のゲートに入力される。
【0029】
インバータ11の各半導体スイッチング素子が、上記PWM信号に基づいてスイッチングすると、交流端子u1、v1、w1のそれぞれから、3つのレベルの電圧が出力される。ここで、
図4(a)、
図4(b)、および
図4(c)を参照して、インバータ11の3相のうちの一つであるu相の電圧出力パターンを説明する。中性点NPの電位を基準(0)とし、第1コンデンサ13aおよび第2コンデンサ13bの各々の両端電圧をVとして表すと、インバータ11の各相は、+V(正電圧)、0、-V(負電圧)という3つの電圧を出力する。
【0030】
図4(a)は、出力電圧レベルが+Vである場合の電流経路を示す図である。
図4(a)では、半導体スイッチング素子S
11および半導体スイッチング素子S
12がオンし、残りの半導体スイッチング素子がオフする。この場合、電流がオン状態の半導体スイッチング素を流れると、交流端子u1の電圧レベルがVとなる。
【0031】
図4(b)は、出力電圧レベルが0である場合の電流経路を示す図である。
図4(b)では、半導体スイッチング素子S
12、半導体スイッチング素子S
13、半導体スイッチング素子S
15、および半導体スイッチング素子S
16がオンし、残りの半導体スイッチング素子がオフする。この場合、電流がオン状態の半導体スイッチング素子を流れると、交流端子u1の電圧レベルが0となる。
【0032】
図4(c)は、出力電圧レベルが-Vである場合の電流経路を示す図である。
図4(c)では、半導体スイッチング素子S
13および半導体スイッチング素子S
14がオンし、残りの半導体スイッチング素子がオフする。この場合、電流がオン状態の半導体スイッチング素子を流れると、交流端子u1の電圧レベルが-Vとなる。
【0033】
図5(a)は、変調率(振幅)が高い場合の基準電圧指令値およびPWM信号の一例を示す図である。また、
図5(b)は、変調率(振幅)が低い場合の基準電圧指令値およびPWM信号の一例を示す図である。
図5(a)および
図5(b)には、u相の電圧指令値v
uおよびPWM信号v
u1が示されている。また、
図5(a)および
図5(b)は、電圧指令値v
uおよびPWM信号v
u1の経時的な変化を示している。ここでは、電圧指令値v
uおよびPWM信号v
u1の値は、1pu(per unit)と-1puとの間で変化する。ここで1puは、中性点NPの電位を基準とする正の最大値である。また、-1puは、中性点NPの電位を基準とする負の最大値である。
【0034】
インバータ11の基準電圧指令値v
uの変調率(振幅)が高いと、
図5(a)に示すように出力PWM波のパルス幅も大きくなる。一方、インバータ11の基準電圧指令値v
uの変調率(振幅)が低いと、
図5(b)に示すように出力PWM波のパルス幅も小さくなる。この変調率が低い場合、各交流端子の出力電圧のうち、0を出力する期間が長くなってしまう。この場合、
図4(b)に示すように、半導体スイッチング素子S
11~S
16から成る半導体スイッチ素子群の中で内側に配置された内側素子(半導体スイッチング素子S
12,S
13,S
15,S
16)のオン状態の期間、すなわち電流導通期間が長くなる。これにより、素子の損失(導通損失、スイッチング損失、リカバリ損失)が内側素子に集中する。そのため、素子温度が上昇して素子が破壊する恐れがある。ここで、素子には、半導体スイッチング素子と、各半導体スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとの両方が含まれる。
【0035】
また、二次励磁変換器10には、中性点NPの電位が変動するという技術課題もある。ここで、
図6を参照して、中性点NPの電位変動について説明する。
【0036】
図6は、中性点NPの電位変動を説明するための図である。
図6には、第1コンデンサ13a両端の電圧V
P、第2コンデンサ13b両端の電圧V
N、直流電圧V
PNの波形が示されている。
図6に示すように、直流電圧V
PNは、一定であるのに対して、電圧V
P、電圧V
Nは各コンデンサの充放電に伴って周期的に変動する。これにより、中性点NPの電位も変動する。このとき、電位変動が大きいと、二次励磁変換器10に設けられた半導体スイッチング素子に定格を超える電圧が印加される場合がある。この場合、半導体スイッチング素子が破壊する恐れがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、インバータ11の出力周波数が、予め設定された値よりも低い場合、演算処理部21が、運転指令100から取得される三相正弦波の基準電圧指令値v
u,v
v,v
w(
図3参照)の各々に零相電圧v
01を重畳する。零相電圧v
01は、各基準電圧指令値を、正側と負側で交互に一定値を一定期間維持する電圧指令値に変換する式に基づいて算出される。
【0038】
具体的には、一定値が正側で一定期間維持される場合、演算処理部21は、下記の式(1)に基づいて、零相電圧v
01を算出する。
【数1】
【0039】
一方、一定値が負側で一定期間維持される場合、演算処理部21は、下記の式(2)に基づいて、零相電圧v
01を算出する。
【数2】
【0040】
上式(1)、(2)において、「max」と「min」は、それぞれ引数の最大値または最小値を求める演算処理である。すなわち、「max(vu,vv,vw)」は、各時点において基準電圧指令値vu,vv,vwの中で最大値を求める演算処理である。また、「min(vu,vv,vw)」は、各時点において基準電圧指令値vu,vv,vwの中で最小値を求める演算処理である。
【0041】
演算処理部21は、式(1)または式(2)を用いて算出した零相電圧v
01を基準電圧指令値v
u,v
v,v
wにそれぞれ加算する。これにより、下記の式(3)に示されるように、電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wが算出される。
【数3】
【0042】
図7は、第1実施形態に係る電圧指令値と中性点NPの電位変動の波形図の一例である。
図7の上段が、電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wの波形図の一例を示す。なお、
図7では、3つの電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wをまとめて図示している。また、
図7では、半周期(1秒)分の波形が示されている。
【0043】
本実施形態では、電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wのうちの一つが、期間T
U(第1重畳期間)において正側の「1」に維持されている。期間T
U(第2重畳期間)に連続する期間T
Lでは、電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wのうちの別の一つが、負側の「-1」に維持されている。すなわち、本実施形態では、零相電圧v
01を重畳した電圧指令値のうち1相が、「1」と「-1」を交互に連続して繰り返している。零相電圧v
01を重畳しても、線間で三相交流の電圧指令値は維持されている。このとき、零相電圧v
01を正負で繰り返す周期は、正弦波で表される基準電圧指令値の周期よりも短い。また、電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wは、駆動制御部22でキャリア波信号C(
図3参照)と比較されてPWMパルスに変換されてインバータ11の各半導体スイッチング素子のゲートに入力される。そのため、上記零相電圧v
0を正負で繰り返す周期は、キャリア波信号Cの周波数であるキャリア周波数よりも長い。
【0044】
電圧指令値が「1」に設定されていると、各半導体スイッチング素子の状態は、
図4(a)に示すように半導体スイッチング素子S
11および半導体スイッチング素子S
12がオンする。そのため、
図4(b)と比較すると、内側素子の一つである半導体スイッチング素子S
13の通電期間が減少する。また、電圧指令値が「1」でなくとも、「1付近」であれば、半導体スイッチング素子S
11および半導体スイッチング素子S
12のオン期間が増加し、内側素子の一つである半導体スイッチング素子S
13の通電期間は減少する。そのため、インバータ11の出力周波数が低いときに生じる内側素子の損失集中を回避できる。
【0045】
また、電圧指令値が「-1」あるいは「-1付近」に設定されていると、各半導体スイッチング素子の状態は、
図4(c)に示すように半導体スイッチング素子S
13および半導体スイッチング素子S
14がオンする期間が長くなる。そのため、
図4(b)と比較すると、内側素子の一つである半導体スイッチング素子S
16の通電期間が減少する。そのため、この場合も、内側素子の損失集中を回避できる。
【0046】
図7の下段には、上段に示す電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wを用いてインバータ11の各半導体スイッチング素子を駆動した場合の中性点NPの電位変動を示す。
図7を参照すると、中性点NPの電位変動が発生しているものの、非常に小さな変動であり、各半導体スイッチング素子に定格を超える電圧が印加されるような大きな電圧リプルにはなっていない。また、
図7に示すように、正の零相電圧「1」を重畳する期間T
Uでは、中性点NPの電位が負方向に変動するのに対し、負の零相電圧「-1」を重畳する期間T
Lでは、中性点NPの電位が正方向に変動する。このように、正負の零相電圧を重畳する期間で中性点NPの電位の変動方向が異なるため、このような電位変動の繰り返しが、小さな電圧リプルをもたらす。その結果、電位変動の拡大を回避することができる。
【0047】
したがって、本実施形態によれば、半導体スイッチング素子の損失集中の回避と中性点電位変動の抑制を両立することができる。これにより、二次励磁変換器10を安全に運転できる発電システム1を実現することが可能となる。
【0048】
(変形例)
本変形例では、演算処理部21が、特許第7068015号公報に記載されているように、運転指令100から取得される基準電圧指令値v
u,v
v,v
w(
図3参照)の各々に、上述した第1実施形態に係る零相電圧v
01を重畳する前に、別の零相電圧v
02を重畳する。ここで、零相電圧
02を重畳する演算処理について詳述する。
【0049】
まず、演算処理部21は、基準電圧指令値v
u,v
v,v
wと運転指令100から取得されるインバータ11の出力電流i
u,i
v,i
wとを下記の式(1)に入力して零相電圧v
02を算出する。
【数4】
【0050】
続いて、演算処理部21は、基準電圧指令値vu,vv,vwのそれぞれに、零相電圧v02を加算した電圧指令値vu0,vv0,vw0を算出する。
算出する。
【0051】
続いて、演算処理部21は、電圧指令値vu0,vv0,vw0の中間値を算出する。この中間値は、各時点における電圧指令値vu0,vv0,vw0を、その値の高い順に(または低い順に)並べた場合に、2番目に値の高い(または値の低い)電圧指令値である。
【0052】
続いて、演算処理部21は、上記中間値の符号に応じた値を設定する。例えば、この中間値の符号が正である場合には「1」の値が設定される。一方、その符号が負である場合には「0」の値が設定される。
【0053】
並行して、演算処理部21は、基準電圧指令値vu,vv,vwの中間値も算出する。この中間値は、各時点における基準電圧指令値vu,vv,vwを、その値の高い順に(または低い順に)並べた場合に、2番目に値の高い(または値の低い)電圧指令値である。
【0054】
続いて、演算処理部21は、上記中間値の符号に応じた値を設定する。この中間値の符号が正である場合には「1」の値が設定される。一方、その符号が負である場合には「0」の値が設定される。
【0055】
続いて、演算処理部21は、電圧指令値vu0,vv0,vw0の中間値の符号に基づいて設定した値から、基準電圧指令値vu,vv,vwの中間値の符号に基づいて設定した値を減算する。
【0056】
減算結果の値が「0」である場合、演算処理部21は、中間値の符号が変化していないと判定する。この場合、演算処理部21は、電圧指令値vu0,vv0,vw0を出力する。
【0057】
一方、減算結果の値が「1」である場合には、演算処理部21は、中間値の符号が変化したと判定する。この場合、演算処理部21は、さらに別の零相電圧v0reを算出する。ここで、零相電圧v0reの算出方法について説明する。
【0058】
演算処理部21は、基準電圧指令値vu,vv,vwの中間値の符号に応じた値の正負を反転する。続いて、演算処理部21は、基準電圧指令値vu,vv,vwを式(1)に入力するとともに、基準電圧指令値の中間値をその符号を反転させて式(1)に代入する。このようにして、演算処理部21は、再度零相電圧の再計算を行い、その演算結果を零相電圧v0reとして算出する。
【0059】
続いて、演算処理部21は、算出した零相電圧v0reを基準電圧指令値vu,vv,vwにそれぞれ加算する。演算処理部21は、加算後の電圧指令値を第2演算部212へ出力する。
【0060】
このように、演算処理部21は、零相電圧の重畳によって符号が変化する電圧指令値がある場合、当該電圧指令値の符号を反転させて零相電圧の再計算を行う。続いて、演算処理部21は、再計算後の零相電圧を各相の電圧指令値に重畳する。零相電圧の重畳によって符号が変化する電圧指令値がない場合であっても、計算式の分母が0を跨いで符号が変化する場合には、演算処理部21は、当該電圧指令値の符号を反転させて零相電圧の再計算を行う。これにより、中性点NPの電位変動を抑制できる。
【0061】
図8は、本変形例に係る演算処理の電圧指令値に基づいてインバータ11を駆動した場合の回析波形の一例を示す図である。
図8の上段には、基準電圧指令値v
u,v
v,v
wに本変形例に係る演算処理の零相電圧を重畳した電圧指令値v
u0,v
v0,v
w0の波形が示されている。
図8の中段には、インバータ11の各交流端子u1、v1、w1から出力される電流i
u0,i
v0,i
w0の波形が示されている。
図8の下段には、中性点NPの電位の波形が示されている。
【0062】
基準電圧指令値vu,vv,vwの波形は、三相正弦波であるが、本変形例に係る演算処理を適用した結果、電圧指令値vu0,vv0,vw0の波形が少し歪んだ形となっている。これにより、二次励磁変換器10は、各交流端子u1、v1、w1から三相正弦波の交流電流を出力しつつ、中性点NPの電位変動を抑制することができる。
【0063】
さらに、本変形例では、演算処理部21は、電圧指令値vu0,vv0,vw0に対して、上述した第1実施形態に係る零相電圧01を重畳する。これにより、内側素子の損失集中が回避される。その結果、第1実施形態と同様に、半導体スイッチング素子の損失集中の回避と中性点電位変動の抑制を両立し、二次励磁変換器10を安全に運転できる発電システム1を実現することが可能となる。
【0064】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。本実施形態に係る発電システムの構成は、上述した第1実施形態に係る発電システム1(
図1参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、上述した変形例と同様に、演算処理部21は、基準電圧指令値vu,vv,vwに零相電圧v02または零相電圧v0reを重畳した電圧指令値vu0,vv0,vw0を算出する。さらに、演算処理部21は、電圧指令値vu0,vv0,vw0に第1実施形態で説明した零相電圧v01を重畳する。このとき、変形例では、正負の零相電圧v02は交互に連続して電圧指令値vu0,vv0,vw0に重畳される。
【0066】
一方、本実施形態では、正の零相電圧v
02を重畳する期間T
Uと、負の零相電圧v
02を重畳する期間T
Lとの間に、零相電圧v
02を重畳しない非重畳期間が設けられる。ここで、
図9を参照して、本実施形態に係る電圧指令値について説明する。
【0067】
図9は、第2実施形態に係る電圧指令値と中性点NPの電位変動の波形図の一例である。
図9の上段が、本実施形態に係る電圧指令値の波形図の一例を示す。
図9に示すように、電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wのうちの一つが、期間T
Uにおいて正側の「1」に維持されている。期間T
Uに連続する期間T
Nでは、零相電圧v
01は電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wのいずれにも重畳されていない。期間T
Nに連続する期間T
Lでは、電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wのうちの別の一つが、負側の「-1」に維持されている。
【0068】
図9の下段には、上段に示す電圧指令値を用いてインバータ11の各半導体スイッチング素子を駆動した場合の中性点NPの電位変動を示す。
図9を参照すると、期間T
Nでは、零相電圧v
01は電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wのいずれにも重畳されていない一方で、変形例で説明した零相電圧v
02または零相電圧v
0reが電圧指令値v’
u,v’
v,v’
wの全てに重畳されている。そのため、期間T
Nでは、中性点NPの電位が殆ど変動しない。
【0069】
図9に示すように、本実施形態では、電圧指令値は、1pu付近、0pu付近、-1pu付近を繰り返す。電圧指令値が1puおよび-1pu付近であるとき、インバータ11の半導体スイッチング素子群のうち、外側素子の損失が大きくなりやすい。また、電圧指令値が0pu付近であるとき、内側素子の損失が大きくなりやすい。本実施形態では、1pu付近、0pu付近、および-1pu付近に電圧指令値を繰り返すことによって、第1実施形態よりも細かく半導体スイッチング素子の損失が全素子に分散される。その結果、半導体スイッチング素子の損失集中をさらに回避することが可能となる。
【0070】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。本実施形態に係る発電システムの構成は、上述した第1実施形態に係る発電システム1(
図1参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
上述した第2実施形態では、零相電圧v
01を電圧指令値に重畳する期間T
Uおよび期間T
Lの長さと零相電圧v
01を電圧指令値に重畳しない期間T
Nの長さとは一定である。一方、本実施形態では、これらの期間の長さをインバータ11の出力電圧に対応する基準電圧指令値の変調率または周波数に応じて可変な値に設定する。ここで、
図10を参照して、期間T
U、期間T
L、および期間T
Nの長さの設定方法について説明する。
【0072】
図10(a)は、期間T
U、期間T
L、および期間T
Nの長さの設定方法を説明するためのグラフである。
図10(a)において、横軸は、基準電圧指令値の出力電圧の変調率(振幅)または周波数を示す。縦軸は、デューティを示す。このデューティは、期間T
U、―1puの零相電圧を重畳する期間T
L、および期間T
Nの各々の長さの合計を1周期とした場合、その1周期に対する期間T
Uおよび期間T
Lの長さの割合であり、下記の式(5)で表される。
【数5】
【0073】
期間T
Uの長さが期間T
Lの長さと同じ(T
U=T
L)であれば、デューティは下記の式(6)で表される。
【0074】
制御装置20の演算処理部21は、
図10(a)に示すように、基準電圧指令値の出力電圧の変調率(振幅)または周波数に応じて、デューティを変化させる。
図10(a)では、両者の関係が直線で示されているが、直線でなくてもよい。
【0075】
例えば、運転指令100において、変調率がm1に設定されている場合、演算処理部21は、
図10(a)に示す関数式を用いてデューティd1を設定する。一方、運転指令100において、変調率が、m1よりも高いm2に設定されている場合、演算処理部21は、
図10(a)に示す関数式を用いて、デューティd1よりも低いデューティd2を設定する。このように、演算処理部21は、基準電圧指令値の変調率または周波数が高くなるにつれてデューティを低減する一方で、変調率または周波数が低くなるにつれてデューティを増加させる。
【0076】
図10(b)は、2種類のデューティd1、d2でそれぞれ設定される期間T
U、期間T
L、および期間T
Nの長さの一例を示す図である。デューティd1は、デューティd2よりも高い。これにより、基準電圧指令値の変調率が低く設定されている場合には、零相電圧v
01の重畳期間T
U、T
Lが長くなる。また、基準電圧指令値の変調率が高く設定されている場合には、零相電圧v
01の重畳期間T
U、T
Lが短くなる。
【0077】
インバータ11の出力電圧の変調率が低いと、インバータ11の各半導体スイッチング素子の電圧指令値の変調率および周波数も低くなる。この場合、第1実施形態で説明したように、内側損失が集中しやすくなる。
【0078】
そこで、本実施形態では、素子損失の分散の必要性が高いインバータ11の運転条件の場合に、演算処理部21は、電圧指令値に零相電圧v01を重畳する期間をより長く設定する。また、本実施形態では、零相電圧v01の非重畳期間TNでは、演算処理部21は、変形例で説明した零相電圧v02を基準電圧指令値に重畳している。そのため、中性点NPの電位が安定する。したがって、本実施形態によれば、素子損失の集中を回避させつつ、中性点NPの電位変動も最低限に抑制することが可能となる。
【0079】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。本実施形態に係る発電システムの構成は、上述した第1実施形態に係る発電システム1(
図1参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
第3実施形態で説明したように、基準電圧指令値の変調率または周波数が低いときに、インバータ11に設けられた半導体スイッチング素子群の損失集中を回避する必要性が高い。つまり、上記変調率または上記周波数が低いとき以外は、零相電圧v01を基準電圧指令値に重畳する必要性が乏しい。
【0081】
例えば、熱計算および熱解析などによって、インバータ11が変調率m2(所定値)以上で運転するときにインバータ11に設けられた半導体スイッチング素子群の損失集中を回避することが不要であるとする。この場合、本実施形態では、演算処理部21は、変調率m2未満のときに零相電圧v01を電圧指令値に重畳する重畳処理を行う一方で、変調率m2以上の場合にこの重畳処理を行わない。これにより、本実施形態でも、素子損失の集中を回避させつつ、中性点NPの電位変動も最低限に抑制することができる。
【0082】
なお、各実施形態および変形例では、演算処理部21が零相電圧v01を重畳することによって、三相分の電圧指令値うちの一つが、一定期間、1pu(100%)または-1pu(-100%)に維持されているが、一定期間維持する電圧指令値の絶対値は、1に近い値であれば、1より低い値であってもよい。この場合、零相電圧v01として重畳される正値は、式(1)の「1」を所望の数に変更することによって設定できる。一方、零相電圧v01として重畳される負値は、式(2)の「-1」を所望の数に変更することによって設定できる。
【0083】
以上、実施形態を幾つか説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0084】
1:発電システム
10:二次励磁変換器(中性点クランプ型の三相電力変換器)
20:制御装置
21:演算処理部
22:駆動制御部
S11~S16、S21~S26:半導体スイッチング素子