(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117244
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】揺動テーブル
(51)【国際特許分類】
H02K 33/00 20060101AFI20240822BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H02K33/00 B
F16C32/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023229
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】下吉 拓明
【テーマコード(参考)】
3J102
5H633
【Fターム(参考)】
3J102AA01
3J102CA25
3J102DA03
3J102DA09
3J102DA10
3J102DA26
3J102GA01
5H633BB03
5H633BB15
5H633GG02
5H633GG06
5H633GG07
5H633GG15
5H633GG23
5H633HH03
(57)【要約】
【課題】寿命計算が容易であると共に、テーブル部の正確な位置決めを行うことができる揺動テーブルを提供する。
【解決手段】揺動テーブルは、ベース部と、ベース部に対して揺動可能に支持されるテーブル部と、ベース部に取り付けられる環状のコイルと、テーブル部に取り付けられ、コイルと間隔をあけてコイルと対向する位置に配置される複数のマグネットと、を備える。ベース部は、テーブル部の揺動運動を案内する案内部を含む。テーブル部は、テーブル部の揺動運動時に摺動する摺動部を含む。複数のマグネットは、テーブル部の揺動方向に並べて配置される。コイルは、コイルの中心軸がテーブル部の揺動運動の中心軸と交わるように配置される。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部に対して揺動可能に支持されるテーブル部と、
前記ベース部に取り付けられる環状のコイルと、
前記テーブル部に取り付けられ、前記コイルと間隔をあけて前記コイルと対向する位置に配置される複数のマグネットと、を備え、
前記ベース部は、前記テーブル部の揺動運動を案内する案内部を含み、
前記テーブル部は、前記テーブル部の揺動運動時に摺動する摺動部を含み、
前記複数のマグネットは、前記テーブル部の揺動方向に並べて配置され、
前記コイルは、前記コイルの中心軸が前記テーブル部の揺動運動の中心軸と交わるように配置される、揺動テーブル。
【請求項2】
前記コイルは複数含まれ、
各前記コイルは、前記コイルの中心軸が前記テーブル部の揺動運動の中心軸と交わるように揺動方向に並べて配置される、請求項1に記載の揺動テーブル。
【請求項3】
前記ベース部は、前記テーブル部の揺動運動の中心軸方向から見てそれぞれ角度の異なる複数の平面を有し、それぞれの前記平面に各前記コイルが固定される台座部を含む、請求項2に記載の揺動テーブル。
【請求項4】
前記テーブル部は、前記テーブル部の揺動運動の中心軸方向から見て前記ベース部と対向する領域に円弧面を有し、
前記複数のマグネットは、前記円弧面に固定される、請求項1または請求項2に記載の揺動テーブル。
【請求項5】
前記テーブル部の揺動運動の中心軸方向において前記コイルと隣り合って配置され、前記コイルと電気的に接続されて、前記コイルに電流を供給する回路基板をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の揺動テーブル。
【請求項6】
前記テーブル部の揺動の角度を検知するエンコーダをさらに備え、
前記エンコーダは、
メモリが設けられており、前記テーブル部に取り付けられ、前記テーブル部の揺動運動と共に揺動するスケールと、
前記スケールのメモリを検知するフォトセンサーと、を含み、
前記ベース部は、
前記コイルが取り付けられるベース板と、
前記フォトセンサーが取り付けられる取り付け部と、を含み、
前記フォトセンサーは、前記取り付け部を介してその位置を調整されて前記ベース板に固定される、請求項1または請求項2に記載の揺動テーブル。
【請求項7】
前記コイルの中心軸を含み、前記テーブル部の揺動運動の中心軸に垂直な断面で切断した場合の前記コイルの外形形状は、矩形状である、請求項1または請求項2に記載の揺動テーブル。
【請求項8】
前記テーブル部の揺動運動の中心軸方向において、前記案内部および前記摺動部は、前記コイルおよび前記マグネットを挟んでそれぞれ一対設けられる、請求項1または請求項2に記載の揺動テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、揺動テーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
基体と摺動体からなる摺動装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示の摺動装置によると、駆動方式としてウォームやピニオン等の噛合体を用いている。そして、この噛合体と噛み合うラック歯は、基体に固着された第1摺動部材側または摺動体に固着された第2摺動部材側に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
揺動テーブル(例えば、ゴニオステージ)において、従来のウォームギアを採用する駆動方式では、以下の点で問題があった。すなわち、ウォームギアを採用する駆動方式は、駆動に際しいわゆる滑り機構を利用しているため、装置の寿命の計算が難しい。また、ウォームギアの構造としてウォームやピニオン等の噛合体と噛合するラック歯との間に隙間が存在する構成であるため、バックラッシュが生じ、テーブル部の正確な位置決めが極めて困難である。
【0005】
そこで、寿命計算が容易であると共に、テーブル部の正確な位置決めを行うことができる揺動テーブルを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った揺動テーブルは、ベース部と、ベース部に対して揺動可能に支持されるテーブル部と、ベース部に取り付けられる環状のコイルと、テーブル部に取り付けられ、コイルと間隔をあけてコイルと対向する位置に配置される複数のマグネットと、を備える。ベース部は、テーブル部の揺動運動を案内する案内部を含む。テーブル部は、テーブル部の揺動運動時に摺動する摺動部を含む。複数のマグネットは、テーブル部の揺動方向に並べて配置される。コイルは、コイルの中心軸がテーブル部の揺動運動の中心軸と交わるように配置される。
【発明の効果】
【0007】
上記揺動テーブルによれば、寿命計算が容易であると共に、テーブル部の正確な位置決めを行うことができ、高速運転を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1における揺動テーブルを示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態1における揺動テーブルを示す概略斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す揺動テーブルにおいて、後述するテーブル部およびスケール等を取り除いた状態を示す概略斜視図である。
【
図12】
図12は、
図8に示す揺動テーブルを後述するコイルおよびマグネットを含み、X-Z平面で切断した場合の概略断面図である。
【
図15】
図15は、回路基板の厚さ方向から見た概略図である。
【
図16】
図16は、
図13に示す断面において、テーブル部の揺動運動の中心軸を含む図である。
【
図17】
図17は、
図16に示す断面において、回路基板を図示し、コイルを破線で表した状態を示す断面図である。
【
図18】
図18は、
図17に示す断面において、テーブル部を揺動させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本開示の揺動テーブルは、ベース部と、ベース部に対して揺動可能に支持されるテーブル部と、ベース部に取り付けられる環状のコイルと、テーブル部に取り付けられ、コイルと間隔をあけてコイルと対向する位置に配置される複数のマグネットと、を備える。ベース部は、テーブル部の揺動運動を案内する案内部を含む。テーブル部は、テーブル部の揺動運動時に摺動する摺動部を含む。複数のマグネットは、テーブル部の揺動方向に並べて配置される。コイルは、コイルの中心軸がテーブル部の揺動運動の中心軸と交わるように配置される。
【0010】
本開示の揺動テーブルによると、コイルへの通電状態の切り替えを制御して、複数のマグネットに対する磁力を変化させて、テーブル部を揺動運動させることができる。すなわち、いわゆるダイレクトドライブ方式によりテーブル部を揺動運動させることができる。この場合、テーブル部の揺動運動時における摩擦が、摺動部および案内部のみであるため、寿命計算を容易に行うことができる。また、揺動運動時において接触する領域が小さいため、高速運転および高精度の位置決めを実現することができる。また、環状のコイルは電線を巻き付けて製造することができるため、安価に製造することができる。そして、このような構成は、揺動する機構を複雑化させることがなく、小型化、特に高さ方向における低断面化を図ることができる。ここで、テーブル部の正確な位置決めとは、揺動運動により傾斜するテーブル部の傾斜の角度を正確に決めることができることをいう。
【0011】
上記揺動テーブルにおいて、コイルは複数含まれてもよい。各コイルは、コイルの中心軸がテーブル部の揺動運動の中心軸と交わるように揺動方向に並べて配置されてもよい。このようにすることにより、複数のコイルへの通電を制御して、より広い角度で高精度に位置決めしながら、テーブル部を揺動させることができる。したがって、より広い用途に適用することが可能となる。
【0012】
上記揺動テーブルにおいて、ベース部は、テーブル部の揺動運動の中心軸方向から見てそれぞれ角度の異なる複数の平面を有し、それぞれの平面に各コイルが固定される台座部を含んでもよい。このようにすることにより、ベース部に含まれ、複数のコイルを取り付ける台座部の形状およびコイルの形状を比較的単純化することができるため、さらに安価に製造することができる。
【0013】
上記揺動テーブルにおいて、テーブル部は、テーブル部の揺動運動の中心軸方向から見てベース部と対向する領域に円弧面を有してもよい。複数のマグネットは、円弧面に固定されてもよい。このようにすることにより、間隔をあけてそれぞれ配置されるマグネットとコイルとの距離が異なる領域をできるだけ減らすことができ、より円滑かつ高精度なテーブル部の揺動運動を実現することが容易となる。
【0014】
上記揺動テーブルは、テーブル部の揺動運動の中心軸方向においてコイルと隣り合って配置され、コイルと電気的に接続されて、コイルに電流を供給する回路基板をさらに備えてもよい。このようにすることにより、コイルへ通電を行う際の配線の取り回しをより単純化することができ、装置のコンパクト化を図ることが容易になる。
【0015】
上記揺動テーブルにおいて、テーブル部の揺動の角度を検知するエンコーダをさらに備えてもよい。エンコーダは、メモリが設けられており、テーブル部に取り付けられ、テーブル部の揺動運動と共に揺動するスケールと、スケールのメモリを検知するフォトセンサーと、を含んでもよい。ベース部は、コイルが取り付けられるベース板と、フォトセンサーが取り付けられる取り付け部と、を含んでもよい。フォトセンサーは、取り付け部を介してその位置を調整されてベース板に固定されてもよい。このようにすることにより、エンコーダを利用して、テーブル部の正確な位置決めを行うことができる。ここで、取り付け部を介してフォトセンサーの取り付け位置の微調整を行うことがより容易となる。したがって、より高精度なテーブル部の位置決めを実現することができる。
【0016】
上記揺動テーブルにおいて、コイルの中心軸を含み、テーブル部の揺動運動の中心軸に垂直な断面で切断した場合のコイルの外形形状は、矩形状であってもよい。このようなコイルの形状は、比較的単純であり、例えば、揺動方向に沿った円弧形状を有するコイルよりも安価な製造が容易となる。
【0017】
上記揺動テーブルにおいて、テーブル部の揺動運動の中心軸方向において、摺動部および案内部は、コイルおよびマグネットを挟んでそれぞれ一対設けられてもよい。このようにすることにより、一対の摺動部および一対の案内部を利用して、より安定して高精度な揺動運動を確保することができる。
【0018】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の揺動テーブルの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態である実施の形態1について説明する。
図1および
図2は、本開示の実施の形態1における揺動テーブルを示す概略斜視図である。
図1および以下に示す図において、Y方向は、揺動テーブルの長手方向であって揺動運動の中心軸が延びる方向を示し、X方向は、揺動テーブルの短手方向を示し、Z方向は、揺動テーブルの厚さ方向(高さ方向)を示す。X方向、Y方向およびZ方向はそれぞれ、直交している。
図1および
図2は、それぞれ異なる方向から見た図である。
【0020】
図3は、
図1に示す揺動テーブルの概略平面図である。
図3は、
図1に示す揺動テーブルを矢印IIIで示す向きに見た図である。
図4は、
図1に示す揺動テーブルの概略側面図である。
図4は、
図1に示す揺動テーブルを矢印IVで示す向きに見た図である。
図5は、
図1に示す揺動テーブルの概略正面図である。
図5は、
図1に示す揺動テーブルを矢印Vで示す向きに見た図である。
図6は、
図1に示す揺動テーブルの概略背面図である。
図6は、
図1に示す揺動テーブルを矢印VIで示す向きに見た図である。
図7は、
図1に示す揺動テーブルの概略底面図である。
図7は、
図1に示す揺動テーブルを矢印VIIで示す向きに見た図である。
【0021】
図8は、
図1に示す揺動テーブルにおいて、後述するテーブル部およびスケール等を取り除いた状態を示す概略斜視図である。
図8以下に示す図において、テーブル部に取り付けられる後述するストッパも理解を容易にする観点から適宜図示している。
図9は、
図8に示す揺動テーブルの概略平面図である。
図9は、
図8に示す揺動テーブルを矢印IXで示す向きに見た図である。
図10は、
図8に示す揺動テーブルの概略側面図である。
図10は、
図8に示す揺動テーブルを矢印Xで示す向きに見た図である。
図11は、
図8に示す揺動テーブルの概略正面図である。
図11は、
図10に示す揺動テーブルを矢印XIで示す向きに見た図である。
【0022】
図12は、
図8に示す揺動テーブルを後述するコイルおよびマグネットを含み、X-Z平面で切断した場合の概略断面図である。
図12は、
図2中のXII-XII断面で切断した場合の断面図である。
図13は、
図12に示す揺動テーブルの概略背面図である。
図13は、
図12に示す揺動テーブルを矢印XIIIで示す向きに見た図である。
図14は、
図12に示す揺動テーブルの概略側面図である。
図14は、
図12に示す揺動テーブルを矢印XIVで示す向きに見た図である。
【0023】
図15は、回路基板の厚さ方向から見た概略図である。
図16は、
図13に示す断面において、テーブル部の揺動運動の中心軸17を含む図である。
図17は、
図16に示す断面において、回路基板を図示し、コイルを破線で表した状態を示す断面図である。
図18は、
図17に示す断面において、テーブル部を揺動させた状態を示す断面図である。
【0024】
図1~
図18を参照して、本開示の実施の形態1に係る揺動テーブル10は、ベース部11と、テーブル部12と、複数、本実施形態において3つのコイル13a,コイル13b,コイル13cと、複数、本実施形態においては5つのマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eと、エンコーダ15と、回路基板16と、を備える。揺動テーブル10は、ベース部11に対して、テーブル部12が
図16~
図18中の矢印Wで示す向きまたはその逆の向きに揺動する。テーブル部12の揺動運動の中心軸17は、
図16、
図17および
図18に示す。以下、各部材の構成について説明する。
【0025】
ベース部11は、揺動テーブル10の土台となる部分であり、揺動テーブル10を構成する各部材が直接または間接的に取り付けられる。ベース部11は、ベース板21と、一対の突出部22a,突出部22bと、取り付け部23と、台座部24と、一対の案内部25a,案内部25bと、を含む。ベース板21の外形形状は、厚さ方向であるZ方向に見て矩形状であり、平板状である。ベース板21には、厚さ方向に突出するように一対の突出部22a,突出部22bが設けられている。一対の突出部22a,突出部22bは、Y方向に間隔をあけて配置される。突出部22a,突出部22bの厚さ方向の端面は、Y方向に見てそれぞれ円弧状である。突出部22a,突出部22bの端面は、円弧状に凹むように設けられている。ベース板21には、円弧状に延びる案内部25a,案内部25bがボルトを利用して取り付けられる。すなわち、案内部25a,案内部25bはそれぞれ、ベース板21に対して着脱可能に構成されている。案内部25a,案内部25bはそれぞれ、Y方向において突出部22a,突出部22bと隣り合って配置される。本実施形態においては、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向(Y方向)において、案内部25a,案内部25bは、コイル13a,コイル13b,コイル13cおよびマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eを挟んでそれぞれ一対設けられている。
【0026】
取り付け部23は、板状である。取り付け部23の外形形状は、Y方向に見て矩形状である。取り付け部23には、後述するフォトセンサー37が取り付けられる。これについては、後述する。
【0027】
案内部25a,案内部25bのY方向の間に、台座部24が配置される。台座部24は、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向(Y方向)から見てそれぞれ角度の異なる複数、本実施形態においては3つの平面26a,平面26b,平面26cを有する。平面26bは、X-Y平面に平行である。平面26a,平面26cは、それぞれY方向に見て平面26bに対して傾斜している。平面26bに対する平面26aの傾斜する向きは、平面26bに対する平面26cの傾斜する向きと反対である。台座部24は、それぞれの平面26a,平面26b,平面26cに3つのコイル13a,コイル13b,コイル13cがそれぞれ固定される。これについては、後に詳述する。
【0028】
ベース板21には、2つのストッパボルト29a,ストッパボルト29bが取り付けられる。一対のストッパボルト29a,ストッパボルト29bはそれぞれ、ベース板21のうちのY方向、具体的には、矢印Yで示す向きと逆の向きに突出するように設けられている。ストッパボルト29a,ストッパボルト29bは、X方向に間隔をあけて配置されている。ストッパボルト29a,ストッパボルト29bが設けられるZ方向の高さは、同じである。
【0029】
テーブル部12は、Z方向を厚さ方向とする板状である。テーブル部12は、厚さ方向(Z方向)において、ベース部11上に配置される。テーブル部12は、板状部31と、一対の鍔部32a,鍔部32bと、一対の摺動部33a,摺動部33bと、を含む。板状部31のうち、厚さ方向において、ベース部11と対向する面と反対側の面34は、平面である。この面34は、テーブル部12が揺動していない状態において、X-Y平面と平行である。面34上には、種々の物を載置したり、取り付けたりすることができる。すなわち、揺動テーブル10については、作動時において、テーブル部12を揺動させることにより、面34も併せて揺動する。テーブル部12には、厚さ方向に凹む複数の穴が設けられており、例えば、この穴を利用して、揺動させる物体を面34上に取り付けたりすることができる。また、板状部31は、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向から見てベース部11と対向する領域に円弧面35を有する。円弧面35には、後述するように5つのマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eが取り付けられる。
【0030】
一対の鍔部32a,鍔部32bは、板状部31のうちのベース部11と対向する面側においてベース板21側に突出するように設けられている。鍔部32a,鍔部32bはY方向に間隔をあけて配置される。鍔部32a,鍔部32bの厚さ方向に延びる端面は、それぞれY方向に見て円弧状である。すなわち、鍔部32a,鍔部32bはそれぞれ、端面が円弧状となるように突出している。板状部31には、円弧状に延びる摺動部33a,摺動部33bがボルトを利用して取り付けられる。すなわち、摺動部33a,摺動部33bはそれぞれ、板状部31に対して着脱可能に構成されている。摺動部33a,摺動部33bはそれぞれ、Y方向において鍔部32a,鍔部32bと隣り合って配置される。本実施形態においては、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向において、摺動部33a,摺動部33bは、コイル13a,コイル13b,コイル13cおよびマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eを挟んでそれぞれ一対設けられている。
【0031】
Y方向において、案内部25aと摺動部33aとの間には、複数の転動体および複数の転動体を保持する保持器を含む非循環式(ストローク有限式)の曲線運動軸受27aが配置される(特に
図9および
図10参照)。Y方向において案内部25bと摺動部33bとの間にはそれぞれ、複数の転動体および複数の転動体を保持する保持器を含む非循環式の曲線運動軸受27bが配置される。曲線運動軸受27aおよび曲線運動軸受27bにより、テーブル部12の揺動時に負荷される荷重を受けることができる。
【0032】
板状部31には、ストッパ39が取り付けられる。ストッパ39の外形形状は、X方向に見てL字状である。ストッパ39は、ボルトにより鍔部32aに固定されている。ストッパ39は、その一部がX方向においてストッパボルト29aとストッパボルト29bの間に位置するように配置される。テーブル部12の非揺動時(面34がX-Y平面と平行な時)において、ストッパ39とストッパボルト29aとの間およびストッパ39とストッパボルト29bとの間には、隙間が設けられる。テーブル部12は、ストッパ39が一対のストッパボルト29a,ストッパボルト29bと干渉しない範囲でW方向への揺動運動が可能に構成されている。テーブル部12の揺動運動時において、テーブル部12の傾斜が大きすぎると、ストッパ39とストッパボルト29aまたはストッパボルト29bとが干渉し、テーブル部12の揺動運動が規制される。このようにして、テーブル部12が必要以上に揺動運動をしてテーブル部12がベース部11から外れてしまうことを防止することができる。
【0033】
次に、エンコーダ15について説明する。エンコーダ15は、テーブル部12の揺動の角度を検知する。エンコーダ15は、スケール36と、フォトセンサー37と、を含む。スケール36には、メモリ(図示せず)が設けられている。スケール36は、Y方向に見て円弧状であり、その曲率は、鍔部32a,鍔部32bの端面と同等である。メモリは、例えば、X方向に間隔をあけてY方向に延びる複数の筋状の黒いラインから構成されている。スケール36は、板状部31のうち、ベース部11と対向する面側に取り付けられている。
【0034】
フォトセンサー37は、スケール36のメモリを検知する。具体的には例えば、フォトセンサー37は、スケール36に光を照射し、反射光の受光状態によりテーブル部12の揺動の角度を検知する。フォトセンサー37は、取り付け部23に取り付けられる。フォトセンサー37は、取り付け部23を介してその位置を調整されてベース板21に固定される。すなわち、フォトセンサー37は、直接的にベース板21に固定されておらず、取り付け部23を介してベース板21に取り付けられる。
【0035】
5つのマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eは、テーブル部12、具体的には、板状部31のうちのベース部11と対向する円弧面35に取り付けられる。マグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eはそれぞれ、ブロック状である。本実施形態においては、マグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eのそれぞれの板状部31に取り付けられる面およびベース板21に対向する面はそれぞれ、円弧面である。マグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eは、テーブル部12の揺動方向であるW方向に並べて配置される。本実施形態においては、マグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eは、揺動方向に隙間なく並べられる。マグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eは、コイル13a,コイル13b,コイル13cと間隔をあけてコイル13a,コイル13b,コイル13cと対向する位置に配置される。すなわち、マグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eとコイル13a,コイル13b,コイル13cとは接触しておらず、マグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eとコイル13a,コイル13b,コイル13cとの間には、隙間28が設けられている。
【0036】
コイル13a,コイル13b,コイル13cは、それぞれ環状である。コイル13aは、例えば、1本の電線を環状に幾重にも巻き付けることにより製造される。コイル13aの中心軸42aを含み、テーブル部12の揺動運動の中心軸17に垂直な断面で切断した場合のコイル13aの外形形状は、矩形状である(特に
図16参照)。コイル13bおよびコイル13cの製造方法およびそれぞれの外形形状は、コイル13aの製造方法および外形形状と同じである。すなわち、本実施形態においては、3つの同じ形状のコイル13a,コイル13b,コイル13cが用いられる。
【0037】
コイル13a,コイル13b,コイル13cはそれぞれ、ベース部11に取り付けられる。具体的には、コイル13aは、台座部24に含まれる平面26aと、コイル13aのうちのベース板21側の端面41aとが接触するように例えば接着剤を用いて固定される。コイル13bは、台座部24に含まれる平面26bと、コイル13bのうちのベース板21側の端面41bとが接触するように例えば接着剤を用いて固定される。コイル13cは、台座部24に含まれる平面26cと、コイル13cのうちのベース板21側の端面41cとが接触するように例えば接着剤を用いて固定される。
【0038】
ここで、各コイル13a,コイル13b,コイル13cは、コイル13a,コイル13b,コイル13cの中心軸42a,中心軸42b,中心軸42cがそれぞれ、テーブル部12の揺動運動の中心軸17と交わるように配置される。コイル13aの中心軸42aとコイル13bの中心軸42bとは角度θだけ傾斜して取り付けられる。コイル13cの中心軸42cとコイル13bの中心軸42bとは角度θだけ傾斜して取り付けられる。
【0039】
回路基板16は、板状であり、厚さ方向がY方向となるように配置される。回路基板16は、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向においてコイル13a,コイル13b,コイル13cと隣り合って配置される。特に
図15を参照して、回路基板16の厚さ方向の一方の面には、4つの配線45a,配線45b,配線45c,配線45dが設けられている。配線45b,配線45c,配線56dのX方向の一方側の端部にはそれぞれ、導通部46a,導通部46b,導通部46cが設けられている。導通部46a,導通部46b,導通部46cが図示しないコネクタ等に接続され、外部からの電流の供給や通電状態の制御を行う。配線45aには、3つの接続部43a,接続部43b,接続部43cが形成されている。配線45bには、1つの接続部44aが形成されている。配線45cには、1つの接続部44bが形成されている。配線45dには、1つの接続部44cが形成されている。
【0040】
回路基板16は、コイル13a,コイル13b,コイル13cと電気的に接続されて、コイル13a,コイル13b,コイル13cに電流を供給する。具体的には、一本の電線を巻き付けて製造されるコイル13aの一方側の端部が回路基板16の接続部43aに接続され、コイル13aの他方側の端部が回路基板16の接続部44aに接続される。一本の電線を巻き付けて製造されるコイル13bの一方側の端部が回路基板16の接続部43bに接続され、コイル13bの他方側の端部が回路基板16の接続部44bに接続される。一本の電線を巻き付けて製造されるコイル13cの一方側の端部が回路基板16の接続部43cに接続され、コイル13cの他方側の端部が回路基板16の接続部44cに接続される。
【0041】
次に、揺動テーブル10の動作について簡単に説明する。回路基板16により各コイル13a,コイル13b,コイル13cに電流を供給する。そうすると、電磁力によるマグネットの反発等により、例えば揺動方向であるW方向にテーブル部12が揺動する。この回路基板16を介した各コイル13a,コイル13b,コイル13cへの電流の供給を制御することにより、揺動テーブル10は、テーブル部12の揺動の動作を制御する。
【0042】
このような構成の揺動テーブル10によると、コイル13a,コイル13b,コイル13cへの通電状態の切り替えを制御して、複数のマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eに対する磁力を変化させて、テーブル部12を揺動運動させることができる。すなわち、いわゆるダイレクトドライブ方式によりテーブル部12を揺動運動させることができる。この場合、テーブル部12の揺動運動時における摩擦が、案内部25a,案内部25bおよび摺動部33a,摺動部33bのみであるため、寿命計算を容易に行うことができる。また、揺動運動時において接触する領域が小さいため、高速運転および高精度の位置決めを実現することができる。また、環状のコイル13a,コイル13b,コイル13cは電線を巻き付けて製造することができるため、安価に製造することができる。そして、このような構成は、揺動する機構を複雑化させることがなく、小型化、特に高さ方向における低断面化を図ることができる。
【0043】
本実施形態においては、コイル13a,コイル13b,コイル13cは複数含まれ、各コイル13a,コイル13b,コイル13cは、コイル13a,コイル13b,コイル13cの中心軸42a,中心軸42b,中心軸42cがテーブル部12の揺動運動の中心軸17と交わるように揺動方向に並べて配置されている。よって、複数のコイル13a,コイル13b,コイル13cへの通電を制御して、より広い角度で高精度に位置決めしながら、テーブル部12を揺動させることができる。したがって、より広い用途に適用することが可能となる。
【0044】
本実施形態においては、ベース部11は、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向から見てそれぞれ角度の異なる複数の平面26a,平面26b,平面26cを有し、それぞれの平面26a,平面26b,平面26cに各コイル13a,コイル13b,コイル13cが固定される台座部24を含む。よって、ベース部11に含まれ、複数のコイル13a,コイル13b,コイル13cを取り付ける台座部24の形状およびコイル13a,コイル13b,コイル13cの形状を比較的単純化することができるため、さらに安価に製造することができる。
【0045】
本実施形態においては、テーブル部12は、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向から見てベース部11と対向する領域に円弧面35を有し、複数のマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eは、円弧面35に固定されている。よって、間隔をあけてそれぞれ配置されるマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eとコイル13a,コイル13b,コイル13cとの距離が異なる領域をできるだけ減らすことができ、より円滑かつ高精度なテーブル部12の揺動運動を実現することが容易となる。
【0046】
本実施形態においては、揺動テーブル10は、テーブル部の揺動運動の中心軸方向においてコイルと隣り合って配置され、コイルと電気的に接続されて、コイルに電流を供給する回路基板を含む。よって、コイル13a,コイル13b,コイル13cへ通電を行う際の配線の取り回しをより単純化することができ、装置のコンパクト化を図ることが容易になる。
【0047】
本実施形態においては、揺動テーブル10は、テーブル部12の揺動の角度を検知するエンコーダ15を備える。そして、エンコーダ15は、メモリが設けられており、テーブル部12に取り付けられ、テーブル部12の揺動運動と共に揺動するスケール36と、スケール36のメモリを検知するフォトセンサー37と、を含む。ベース部11は、コイル13a,コイル13b,コイル13cが取り付けられるベース板21と、フォトセンサー37が取り付けられる取り付け部23と、を含む。フォトセンサー37は、取り付け部23を介してその位置を調整されてベース板21に固定される。よって、エンコーダ15を利用して、テーブル部12の正確な位置決めを行うことができる。ここで、取り付け部23を介してフォトセンサー37の取り付け位置の微調整を行うことがより容易となる。したがって、より高精度なテーブル部12の位置決めを実現することができる。
【0048】
本実施形態においては、コイル13a,コイル13b,コイル13cの中心軸42a,中心軸42b,中心軸42cを含み、テーブル部12の揺動運動の中心軸17に垂直な断面で切断した場合のコイル13a,コイル13b,コイル13cの外形形状は、矩形状である。このようなコイル13a,コイル13b,コイル13cの形状は、比較的単純であり、例えば、揺動方向に沿った円弧形状を有するコイル13a,コイル13b,コイル13cよりも安価な製造が容易となる。
【0049】
本実施形態においては、テーブル部12の揺動運動の中心軸17方向において、案内部25a,案内部25bおよび摺動部33a,摺動部33bは、コイル13a,コイル13b,コイル13cおよびマグネット14a,マグネット14b,マグネット14c,マグネット14d,マグネット14eを挟んでそれぞれ一対設けられている。よって、一対の案内部25a,案内部25bおよび一対の摺動部33a,摺動部33bを利用して、より安定して高精度な揺動運動を確保することができる。
【0050】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態においては、揺動テーブルは、コイルを複数備えることとしたが、これに限らず、一つのコイルを備える構成としてもよい。また、複数のコイルを揺動軸方向に並べて用いることにしてもよい。
【0051】
また、摺動部および案内部は、コイルおよびマグネットを挟むように一対設けられていることとしたが、これに限らず、いずれか一方を設けることとしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態においては、揺動テーブルは、回路基板を備えることとしたが、これに限らず、揺動テーブルは、回路基板を備えなくてもよい。この場合、例えば、各コイルの両端部に接続された電線と外部とを電気的に接続して通電状態の制御を行ってもよい。
【0053】
なお、上記実施の形態においては、揺動テーブルは、エンコーダを備えることとしたが、これに限らず、揺動テーブルは、エンコーダを備えない構成としてもよい。この場合、揺動テーブルとは別途設けられ、テーブル部の角度を検知する機構を設け、この機構から得られた情報に基づいてテーブル部の揺動の角度の制御を行うようにしてもよい。また、フォトセンサーについては、直接的にベース板に取り付けられ、固定される構成としてもよい。また、エンコーダについては、光学式のフォトセンサーではなく、他の機構、例えば磁気的な検知機構を備えることとしてもよい。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
10 揺動テーブル、11 ベース部、12 テーブル部、13a,13b,13c コイル、14a,14b,14c,14d,14e マグネット、15 エンコーダ、16 回路基板、17,42a,42b,42c 中心軸、21 ベース板、22a,22b 突出部、23 取り付け部、24 台座部、25a,25b 案内部、26a,26b,26c 平面、27a,27b 保持器、28 隙間、29a,29b ストッパボルト、31 板状部、32a,32b 鍔部、33a,33b 摺動部、34 面、35 円弧面、36 スケール、37 フォトセンサー、39 ストッパ、41a,41b,41c 端面、43a,43b,43c,44a,44b,44c 接続部、45a,45b,45c,45d 配線、46a,46b,46c 導通部。