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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117250
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2798 20220101AFI20240822BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H02K1/2798
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023236
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】田中 直樹
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621BB02
5H621BB07
5H621BB10
5H621GA04
5H621GA13
5H622CA02
5H622CA06
5H622CB04
5H622CB05
5H622PP05
(57)【要約】
【課題】ロータの変形を抑制することができる回転電機を提供する。
【解決手段】モータは、ステータ200、第1ロータ300a及びシャフト340を有している。第1ロータ300aは、磁石部310及び磁石ホルダ320を有している。磁石ホルダ320は、ホルダ対向部321、ホルダ固定部322及びホルダ介在部323を有している。ホルダ対向部321は、軸方向ADにおいてコイル部211に対向する位置に設けられている。ホルダ対向部321は、磁石部310を支持している。ホルダ固定部322は、シャフト340に固定されている。ホルダ固定部322は、軸方向ADにおいてホルダ対向部321からステータ200側に離れた位置に設けられている。ホルダ介在部323は、軸方向ADに延びた状態で、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とを接続している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転するシャフト(340)と、
前記回転軸線が延びる軸方向(AD)において前記コイル部に並べられた磁石部(310)、及び前記シャフトに固定され前記磁石部を支持している磁石支持部(320)を有し、前記回転軸線を中心に回転するロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記磁石支持部は、
前記磁石部が固定された磁石固定部(321)と、
前記磁石固定部から前記軸方向にずれた位置に設けられ、前記シャフトに固定されたシャフト固定部(322)と、
前記磁石固定部と前記シャフト固定部とにかけ渡されるように前記軸方向に延び、前記磁石固定部と前記シャフト固定部とを接続している固定接続部(323)と、
を有している回転電機。
【請求項2】
前記固定接続部は、前記軸方向において前記シャフト固定部が前記磁石固定部から前記ステータ側にずれた位置に設けられるように、前記磁石固定部と前記シャフト固定部とを接続している、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記固定接続部は、前記回転軸線の周方向(CD)に環状に延びている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記固定接続部は、前記シャフト固定部が前記磁石固定部から前記軸方向に離れた位置に設けられるように、前記磁石固定部と前記シャフト固定部とを接続している、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記軸方向において、前記シャフト固定部と前記磁石固定部との距離(D1)は、前記磁石部の厚さ寸法(D2)よりも大きい、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項6】
前記軸方向での前記シャフト固定部と前記磁石固定部との距離(D1,D11)は、前記回転軸線の径方向(RD)において前記シャフトからの前記シャフト固定部の突出寸法(D3)よりも大きい、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項7】
前記固定接続部は、
前記回転軸線の径方向(RD)に直交するように前記回転軸線の周方向(CD)に延びている外接続板部(385)と、
前記径方向において前記外接続板部から内周側に離れた位置に設けられ、前記径方向に直交するように前記周方向に延びている内接続板部(386)と、
前記径方向において前記外接続板部と前記内接続板部との間に設けられ、前記周方向に直交する方向に延びた状態で前記外接続板部と前記内接続板部とを接続しており、前記周方向に複数並べられている介在接続板部(387)と、
を有している請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項8】
前記ロータは、前記ステータに前記軸方向に並べられた磁石部(310)を有し、
前記磁石固定部は、
前記磁石部を支持しており、前記軸方向に直交するように前記回転軸線の周方向(CD)に延びている支持板部(381)と、
前記軸方向において前記ステータとは反対側に向けて前記支持板部から離れた位置に設けられ、前記軸方向に直交するように前記周方向に延びている離れ板部(382)と、
前記軸方向において前記支持板部と前記離れ板部との間に設けられ、前記支持板部と前記離れ板部とを接続している固定接続板部(383)と、
を有している請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項9】
飛行体(10)に設けられ、前記飛行体を飛行させるために駆動する回転電機である、請求項1又は2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アキシャルギャップ式のモータについて記載されている。このモータでは、ロータとステータとが軸方向に並べられている。このモータでは、ロータがシャフトに固定されている。このロータは、シャフトから外周側に向けて延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-36519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、ロータがシャフトから外周側に向けて延びているため、ロータとステータとの吸引力によりロータが変形することが懸念される。例えば、ロータが軸方向に曲がるように変形することが懸念される。
【0005】
本開示の1つの目的は、ロータの変形を抑制することができる回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するため、開示された態様は、
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転するシャフト(340)と、
回転軸線が延びる軸方向(AD)においてコイル部に並べられた磁石部(310)、及びシャフトに固定され磁石部を支持している磁石支持部(320)を有し、回転軸線を中心に回転するロータ(300a,300b)と、
を備え、
磁石支持部は、
磁石部が固定された磁石固定部(321)と、
磁石固定部から軸方向にずれた位置に設けられ、シャフトに固定されたシャフト固定部(322)と、
磁石固定部とシャフト固定部とにかけ渡されるように軸方向に延び、磁石固定部とシャフト固定部とを接続している固定接続部(323)と、
を有している回転電機。
【0008】
上記態様によれば、磁石固定部とシャフト固定部とが軸方向にずれた位置に設けられ、固定接続部は、磁石固定部とシャフト固定部とにかけ渡されるように軸方向に延び、磁石固定部とシャフト固定部とを接続している。この構成では、磁石部がコイル部に吸引されると、磁石固定部及びシャフト固定部では軸方向を向く応力が生じやすく、固定接続部では径方向を向く応力が生じやすい。このように、磁石支持部を軸方向に曲げるように生じる応力が、径方向を向く応力に分散されることで低減するため、磁石支持部が軸方向に曲がるように変形するということが生じにくくなる。したがって、ロータの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態におけるeVTOLの構成を示す図。
図2】推進システムの電気的な構成を示す図。
図3】EPUの概略斜視図。
図4】モータ装置の縦断面図。
図5】第1ロータをホルダ対向部側から見た斜視図。
図6】第1ロータをホルダ固定部側から見た斜視図。
図7】モータ装置の概略縦断面図。
図8】第1ロータに生じる吸引力及び応力について説明するための図。
図9】第2実施形態における第1ロータに生じる吸引力及び応力について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
<第1実施形態>
図1に示す推進システム30は、eVTOL10に搭載されている。eVTOL10は、電動垂直離着陸機であり、垂直方向に離着陸することが可能である。eVTOLは、electric Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称である。eVTOL10は、大気中を飛行する航空機であり、飛行体に相当する。eVTOL10は、電動式の電動航空機でもあり、電動飛行体と称されることがある。eVTOL10は、乗員が乗る有人航空機である。推進システム30は、eVTOL10を飛行させるために駆動するシステムである。
【0012】
eVTOL10は、機体11及びプロペラ20を有している。機体11は、機体本体12及び翼13を有している。機体本体12は、機体11の胴体であり、例えば前後に延びた形状になっている。機体本体12は、乗員が乗るための乗員室を有している。翼13は、機体本体12から延びており、機体本体12に複数設けられている。翼13は固定翼である。複数の翼13には、主翼、尾翼などが含まれている。
【0013】
プロペラ20は、機体11に複数設けられている。eVTOL10は、少なくとも3つのプロペラ20を有するマルチコプタである。例えばプロペラ20は、機体11に少なくとも4つ設けられている。プロペラ20は、機体本体12及び翼13のそれぞれに設けられている。プロペラ20は、プロペラ軸線を中心に回転する。プロペラ軸線は、例えばプロペラ20の中心線である。プロペラ20は、eVTOL10に推力や揚力を生じさせることが可能である。また、プロペラ20は、ロータや回転翼と称されることがある。
【0014】
プロペラ20は、ブレード21及びボス22を有している。ブレード21は、プロペラ軸線の周方向に複数並べられている。ボス22は、複数のブレード21を連結している。ブレード21は、ボス22からプロペラ軸線の径方向に延びている。プロペラ20は、図示しないプロペラシャフトを有している。プロペラシャフトは、プロペラ20の回転軸であり、ボス22からプロペラ軸線に沿って延びている。
【0015】
eVTOL10は、チルトロータ機である。eVTOL10においては、プロペラ20のチルト角を調整可能になっている。なお、eVTOL10は、チルトロータ機でなくてもよい。例えば、eVTOL10は、リフト用のプロペラ20とクルーズ用のプロペラ20とのそれぞれを有していてもよい。
【0016】
eVTOL10は、バッテリ31、分配器32、飛行制御装置40及びEPU50を有している。バッテリ31、分配器32、飛行制御装置40及びEPU50は、推進システム30に含まれている。バッテリ31は、複数のEPU50に通電可能に接続されている。バッテリ31は、EPU50に電力を供給する電力供給部であり、電源部に相当する。バッテリ31は、EPU50に直流電圧を印加する直流電圧源である。バッテリ31は、充放電可能な2次電池を有している。バッテリ31は、飛行制御装置40にも電力を供給する。なお、電源部としては、バッテリ31に加えて又は代えて、燃料電池や発電機などが用いられてもよい。
【0017】
分配器32は、バッテリ31及び複数のEPU50に電気的に接続されている。分配器32は、バッテリ31からの電力を複数のEPU50に分配する。分配器32がEPU50に分配する電力は、EPU50を駆動させるための駆動電力である。
【0018】
飛行制御装置40は、推進システム30を制御する。飛行制御装置40は、eVTOL10を飛行させるための飛行制御を行う。飛行制御装置40は、複数のEPU50に通信可能に接続されている。飛行制御装置40は、複数のEPU50を個別に制御する。飛行制御装置40は、後述する制御回路160を介してEPU50の制御を行う。飛行制御装置40は、制御回路160の制御を行う。
【0019】
EPU50は、プロペラ20を駆動回転させるために駆動する装置であり、駆動装置に相当する。EPUは、Electric Propulsion Unitの略称である。EPU50は、電駆動装置や電駆動システムと称されることがある。EPU50は、複数のプロペラ20のそれぞれに対して個別に設けられている。EPU50は、プロペラ軸線に沿ってプロペラ20に並べられている。複数のEPU50はいずれも、機体11に固定されている。EPU50は、プロペラ20を回転可能に支持している。EPU50は、プロペラ20に接続されている。プロペラ20は、EPU50を介して機体11に固定されている。プロペラ20のチルト角が変更される場合、EPU50の角度も変更される。
【0020】
eVTOL10は、推進装置15を有している。推進装置15は、eVTOL10を推進させるための装置である。eVTOL10は、推進装置15による推進によりリフト等の飛行が可能になる。推進装置15は、プロペラ20及びEPU50を有している。推進装置15では、EPU50の駆動に伴ってプロペラ20が回転する。プロペラ20は回転体に相当する。eVTOL10は、プロペラ20の回転により飛行する。すなわち、eVTOL10は、プロペラ20の回転により移動する。eVTOL10は、移動体に相当する。
【0021】
図1図2に示すように、EPU50は、モータ装置60及びインバータ装置80を有している。モータ装置60はモータ61を有している。モータ装置60が回転電機に相当する。インバータ装置80はインバータ81を有している。モータ61は、インバータ81を介してバッテリ31に通電可能に接続されている。モータ61は、インバータ81を介してバッテリ31から供給される電力に応じて駆動する。
【0022】
モータ61は、複数相の交流モータである。モータ61は、例えば3相交流方式のモータであり、U相、V相、W相を有している。モータ61は、移動体が移動するための移動駆動源であり、電動機として機能する。モータ61としては、例えばブラシレスモータが用いられている。モータ61は、回生時に発電機として機能する。モータ61は、複数相のコイル64を有している。コイル64は、巻線であり、電機子を形成している。コイル64は、U相、V相、W相のそれぞれに設けられている。モータ61では、複数相のコイル64が中性点65にて互いに接続されている。
【0023】
図2において、インバータ81は、モータ61に供給する電力を変換することでモータ61を駆動する。インバータ81は、モータ61に供給される電力を直流から交流に変換する。インバータ81は、電力を変換する電力変換部である。インバータ81は、複数相の電力変換部であり、複数相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータ81は、例えば3相インバータであり、U相、V相、W相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータ装置80は、電力変換装置と称されることがある。
【0024】
インバータ装置80は、Pライン141、Nライン142を有している。Pライン141及びNライン142は、バッテリ31とインバータ81とを電気的に接続している。Pライン141は、バッテリ31の正極に電気的に接続されている。Nライン142は、バッテリ31の負極に電気的に接続されている。バッテリ31においては、正極が高電位側の電極であり、負極が低電位側の電極である。Pライン141及びNライン142は、電力を供給するための電力ラインである。Pライン141は、高電位側の電力ラインであり、高電位ラインと称されることがある。Nライン142は、低電位側の電力ラインであり、低電位ラインと称されることがある。
【0025】
EPU50は、出力ライン143を有している。出力ライン143は、モータ61に電力を供給するための電力ラインである。出力ライン143は、モータ61とインバータ81とを電気的に接続している。出力ライン143は、モータ装置60とインバータ装置80とにかけ渡された状態になっている。
【0026】
インバータ装置80は、平滑コンデンサ145を有している。平滑コンデンサ145は、バッテリ31から供給される直流電圧を平滑化するコンデンサである。平滑コンデンサ145は、バッテリ31とインバータ81との間において、Pライン141とNライン142とに接続されている。平滑コンデンサ145は、インバータ81に対して並列に接続されている。
【0027】
インバータ81は、電力変換回路であり、例えばDC-AC変換回路である。インバータ81は、複数相分の上下アーム回路85を有している。例えば、インバータ81は、U相、V相、W相のそれぞれについて上下アーム回路85を有している。上下アーム回路85は、上アーム85aと、下アーム85bを有している。上アーム85a及び下アーム85bは、バッテリ31に対して直列に接続されている。上アーム85aはPライン141に接続され、下アーム85bはNライン142に接続されている。
【0028】
出力ライン143は、複数相分のそれぞれについて上下アーム回路85に接続されている。出力ライン143は、上アーム85aと下アーム85bとの間に接続されている。出力ライン143は、複数相のそれぞれにおいて、上下アーム回路85とコイル64とを接続している。出力ライン143は、コイル64において中性点65とは反対側に接続されている。
【0029】
上アーム85a及び下アーム85bは、アームスイッチ86及びダイオード87を有している。アームスイッチ86は、例えばMOSFET等のトランジスタである。MOSFETは、Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistorの略称である。アームスイッチ86は、スイッチ素子であり、スイッチングにより電力を変換することが可能である。スイッチ素子は、パワー素子等の半導体素子であればよい。アームスイッチ86は、電力を変換するための変換スイッチである。
【0030】
EPU50は、制御回路160を有している。制御回路160は、インバータ装置80に含まれている。制御回路160は、インバータ81の駆動を制御する。制御回路160は、インバータ81を介してモータ61の駆動を制御する。制御回路160は、モータ制御部と称されることがある。図2では、制御回路160をCDと図示している。
【0031】
図3に示すように、EPU50では、モータ装置60とインバータ装置80とがモータ軸線Cmに沿って軸方向ADに並べられている。モータ装置60は、軸方向ADにおいてプロペラ20とインバータ装置80との間に設けられている。モータ軸線Cmは、モータ61の中心線であり、直線状に延びる仮想線である。モータ軸線Cmが回転軸線に相当する。軸方向ADは、モータ軸線Cmが延びた方向である。
【0032】
モータ軸線Cmについては、軸方向ADと周方向CDと径方向RDとが互いに直交している。周方向CDは、モータ61の回転方向である。径方向RDについては、外側が径方向外側や外周側と称され、内側が径方向内側や内周側と称されることがある。軸方向ADは、アキシャル方向と称されることがある。
【0033】
EPU50は、モータハウジング70及びインバータハウジング90を有している。モータハウジング70は、モータ装置60に含まれている。モータハウジング70は、モータ61を収容している。インバータハウジング90は、インバータ装置80に含まれている。インバータハウジング90は、インバータ81を収容している。モータハウジング70とインバータハウジング90とは、互いに接続されている。
【0034】
図4に示すように、モータハウジング70は、モータ外周壁71、リアフレーム370及びドライブフレーム390を有している。モータ外周壁71及びフレーム370,390は、金属材料等により形成されており、熱伝導性を有している。モータ外周壁71は、筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。フレーム370,390は、板状に形成されており、軸方向ADに直交する方向に延びている。リアフレーム370とドライブフレーム390とは、モータ外周壁71を介して軸方向ADに並べられている。フレーム370,390は、ボルト等の固定具によりモータ外周壁71に固定されている。なお、図4には、モータ装置60をモータ軸線Cmに沿って切断した縦断面が図示されている。
【0035】
モータハウジング70は、モータハウジング外周面70a及びモータハウジング内周面70bを有している。モータハウジング外周面70aは、モータハウジング70の外周面であり、モータハウジング70の外面に含まれている。モータハウジング内周面70bは、モータハウジング70の内周面であり、モータハウジング70の内面に含まれている。モータハウジング外周面70a及びモータハウジング内周面70bは、モータ外周壁71により形成されている。
【0036】
リアフレーム370は、モータ外周壁71の内側空間をインバータ装置80側から覆っている。リアフレーム370は、モータ外周壁71を介してプロペラ20とは反対側に設けられている。ドライブフレーム390は、モータ外周壁71の内側空間をインバータ装置80とは反対側から覆っている。ドライブフレーム390は、モータ外周壁71のプロペラ20側に設けられている。
【0037】
モータハウジング70は、モータフィン72を有している。モータフィン72は、モータハウジング70の外面に設けられている。例えば、モータフィン72は、モータハウジング外周面70aに設けられている。モータフィン72は、モータ外周壁71から外周側に向けて突出している。モータフィン72は、周方向CDに直交する方向に延びている。モータフィン72は、周方向CDに複数並べられている。モータフィン72は、モータ装置60の熱を外部に放出する放熱フィンである。
【0038】
モータ61は、ステータ200、第1ロータ300a、第2ロータ300b及びシャフト340を有している。ステータ200は固定子である。ステータ200は、コイル64を有している。ロータ300a,300bは回転子である。ロータ300a,300bは、ステータ200に対して相対的に回転する。ロータ300a,300bは、モータ軸線Cmを中心に回転する。モータ軸線Cmは、ロータ300a,300bの中心線である。ステータ200は、周方向CDに環状に延びている。モータ軸線Cmは、ステータ200の中心線に一致している。
【0039】
モータ装置60は、アキシャルギャップ式の回転電機である。モータ61は、アキシャルギャップ式のモータである。モータ61では、ステータ200とロータ300a,300bとがモータ軸線Cmに沿って軸方向ADに並べられている。モータ装置60は、ダブルロータ式の回転電機である。モータ61は、ダブルロータ式のモータである。第1ロータ300aと第2ロータ300bとは、ステータ200を介して軸方向ADに並べられている。ステータ200は、第1ロータ300a及び第2ロータ300bという2つのロータの間に設けられている。本実施形態のモータ61は、ダブルアキシャルモータと称されることがある。
【0040】
シャフト340は、ロータ300a,300bを支持している。シャフト340は、ロータ300a,300bと共にモータ軸線Cmを中心に回転する。シャフト340の中心線は、モータ軸線Cmに一致している。シャフト340は、ロータ300a,300bとプロペラ20とを接続している。
【0041】
ロータ300a,300bは、磁石部310及び磁石ホルダ320を有している。磁石部310は、ロータ300a,300bのそれぞれにおいて周方向CDに複数並べられている。磁石部310は、永久磁石を含んで構成されており、界磁を形成している。ロータ300a,300bでは、磁石部310が磁束を発生させる。第1ロータ300aの磁石部310と第2ロータ300bの磁石部310とは、ステータ200を介して軸方向ADに並べられている。磁石ホルダ320は、磁石部310を支持している。磁石ホルダ320は、ロータ300a,300bの外周端及び内周端を形成している。
【0042】
ステータ200は、コイルユニット210を有している。コイルユニット210は、周方向CDに環状に延びている。コイルユニット210は、コイル64を形成している。コイルユニット210は、コイル部211及びステータコア231を有している。コイル部211は、平角線等の電線により形成されており、通電可能である。コイル部211は、ステータコア231に巻回されている。コイル部211は、全体として筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。ステータコア231は、鉄心であり、軸方向ADに延びている。コイル部211及びステータコア231は、モータハウジング内周面70bに沿って周方向CDに複数並べられている。コイルユニット210では、複数のコイル部211によりコイル64が形成されている。
【0043】
モータ61は、第1アキシャルギャップ305a及び第2アキシャルギャップ305bを有している。アキシャルギャップ305a,305bは、ステータ200とロータ300a,300bとの隙間である。アキシャルギャップ305a,305bには、磁石部310とステータコア231との隙間が含まれている。アキシャルギャップ305a,305bは、ステータ200とロータ300a,300bとの間において、軸方向ADに直交する方向に延びている。第1アキシャルギャップ305aは、ステータ200と第1ロータ300aとの隙間である。第2アキシャルギャップ305bは、ステータ200と第2ロータ300bとの隙間である。
【0044】
モータ装置60は、リアベアリング350及びドライブベアリング360を有している。ベアリング350,360は、シャフト340を回転可能に支持している。ベアリング350,360は、周方向CDに環状に延びている。リアベアリング350とドライブベアリング360とは、シャフト340に沿って軸方向ADに並べられている。ベアリング350,360は、モータハウジング70に固定されている。リアベアリング350は、リアフレーム370に固定されている。ドライブベアリング360は、ドライブフレーム390に固定されている。
【0045】
磁石ホルダ320は、樹脂材料等により形成されており、電気絶縁性を有している。例えば、磁石ホルダ320は、CFRP等により形成されている。CFRPは、炭素繊維強化プラスチックである。シャフト340は、チタン等の金属材料により形成されている。磁石ホルダ320の密度は、シャフト340の密度よりも小さい。密度は、単位体積当たりの質量である。単位体積当たりの質量としては、磁石ホルダ320がシャフト340よりも軽い。磁石ホルダ320を形成する材料の密度が、シャフト340を形成する材料の密度よりも小さい。磁石ホルダ320は、磁石支持部に相当する。
【0046】
図5図6図7に示すように、磁石ホルダ320は、ホルダ対向部321、ホルダ固定部322及びホルダ介在部323を有している。ホルダ対向部321、ホルダ固定部322及びホルダ介在部323は、周方向CDに環状に延びている。ホルダ対向部321は、磁石ホルダ320の外周端を形成しており、磁石ホルダ320の外周部分である。ホルダ固定部322は、磁石ホルダ320の内周端を形成しており、磁石ホルダ320の内周部分である。ホルダ介在部323は、径方向RDにおいて磁石ホルダ320の外周端と内周端との間に設けられており、磁石ホルダ320の中間部分である。
【0047】
ホルダ対向部321は、アキシャルギャップ305a,305bを介してステータ200に対向している。ホルダ対向部321は、ホルダ対向面321aを有している。ホルダ対向面321aは、ホルダ対向部321の外面に含まれている。ホルダ対向面321aは、アキシャルギャップ305a,305bを介してステータ200に対向している。ホルダ対向面321aの少なくとも一部が、アキシャルギャップ305a,305bを形成している。ホルダ対向面321aは、アキシャルギャップ305a,305bよりも径方向外側及び径方向内側の少なくとも一方に延びている。アキシャルギャップ305a,305bは軸隙間に相当する。
【0048】
ホルダ対向部321は、磁石部310を支持している。磁石部310は、ホルダ対向部321に固定されている。ホルダ対向部321には、例えば磁石部310の背面が固定されている。ホルダ対向部321は、磁石固定部に相当する。磁石ホルダ320では、磁石部310の少なくとも一部がホルダ対向部321に埋め込まれている。磁石部310は、ホルダ対向部321の内部においてホルダ対向面321aに沿って延びている。磁石部310は、ホルダ対向面321aに沿って周方向CDに複数並べられている。なお、磁石部310は、ホルダ対向面321aからアキシャルギャップ305a,305b側に露出していてもよい。この構成では、ホルダ対向部321及び磁石部310の少なくとも一方がアキシャルギャップ305a,305bを形成している。
【0049】
ホルダ固定部322は、シャフト340に固定されている。ホルダ固定部322は、シャフト固定部に相当する。ホルダ固定部322は、例えばボルト等の締結具がホルダ固定部322を介してシャフト340に締結されることで、シャフト340に固定されている。ホルダ固定部322は、締結部と称されることがある。ホルダ固定部322は、シャフト340から径方向外側に向けて延びている。また、ホルダ固定部322は、ホルダ介在部323から径方向内側に向けて延びている。ホルダ固定部322は、ホルダ対向部321から軸方向AD及び周方向CDの少なくとも一方に離れた位置に設けられている。例えば、ホルダ固定部322は、軸方向ADにおいてホルダ対向部321からコイル部211側に離れた位置に設けられている。ホルダ固定部322は、コイル部211に径方向RDに並べられている。ホルダ固定部322は、コイル部211から径方向内側に離れた位置にある。
【0050】
シャフト340は、シャフト本体341及びシャフトフランジ342を有している。シャフト本体341は、モータ軸線Cmに沿って軸方向ADに延びている。シャフト本体341は、筒状に形成されている。シャフト本体341は、モータ軸線Cmを中心に回転する。シャフト本体341は、回転軸部に相当する。
【0051】
シャフトフランジ342は、シャフト本体341の外周面に設けられた凸部である。シャフトフランジ342は、シャフト本体341から径方向外側に向けて延びている。シャフトフランジ342は、シャフト本体341の外周面に沿って周方向CDに環状に延びている。シャフトフランジ342には、ホルダ固定部322が固定されている。シャフトフランジ342は、軸フランジに相当する。
【0052】
ホルダ固定部322は、シャフトフランジ342に軸方向ADに並べられている。ホルダ固定部322は、軸方向ADの一方側からシャフトフランジ342に重ねられている。ホルダ固定部322は、ボルト等の固定具によりシャフトフランジ342に固定されている。第1ロータ300aが有するホルダ固定部322と、第2ロータ300bが有するホルダ固定部322とは、互いに重ねられた状態でシャフトフランジ342に固定されている。例えば、第2ロータ300bが有するホルダ固定部322が、第1ロータ300aが有するホルダ固定部322とシャフトフランジ342との間に挟み込まれた状態になっている。
【0053】
ホルダ介在部323は、軸方向AD及び周方向CDの少なくとも一方においてホルダ対向部321とホルダ固定部322との間に設けられている。ホルダ介在部323は、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とにかけ渡された状態で、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とを接続している。ホルダ介在部323は、固定接続部に相当する。ホルダ介在部323は、周方向CDに円環状に延びている。ホルダ介在部323は、円環部と称されることがある。
【0054】
ホルダ介在部323は、ホルダ固定部322に固定された状態でホルダ対向部321及び磁石部310を支持している。例えば、ホルダ介在部323は、ロータ300a,300bに付与される荷重を支持している。ホルダ介在部323は、アキシャルギャップ305a,305bの径方向内側に設けられている。ホルダ介在部323は、アキシャルギャップ305a,305bに径方向RDに並べられている。
【0055】
本実施形態では、ホルダ介在部323は、軸方向AD及び径方向RDの両方においてホルダ対向部321に並べられている。ホルダ介在部323は、軸方向ADにおいてホルダ対向面321aよりもフレーム370,390側に向けて延びている。ホルダ介在部323は、軸方向AD及び径方向RDのうち径方向RDにおいてホルダ固定部322に並べられている。
【0056】
ホルダ対向部321及びホルダ介在部323は、サンドイッチ構造になっている。サンドイッチ構造は、一対の板部及びリブにより実現されている。リブは、周方向CDに複数並べられている。複数のリブは、一対の板部の間に設けられており、一対の板部を連結している。サンドイッチ構造は、板部に直交する直交方向に力が付与されても、直交方向に曲がりにくくなっている。
【0057】
図5に示すように、ホルダ対向部321は、サンドイッチ構造を構成する部位として、磁石用板部381、離間板部382及び対向リブ383を有している。磁石用板部381及び離間板部382は、軸方向ADに直交する方向に板状に延びている。磁石用板部381と離間板部382とは、一対の板部として、対向リブ383を介して軸方向ADに並べられている。磁石用板部381及び離間板部382は、周方向CDに環状に延びている。例えば、磁石用板部381及び離間板部382は、円環状に形成されている。
【0058】
磁石用板部381は、磁石部310を支持している。磁石用板部381は、支持板部に相当する。磁石用板部381では、ステータ200側の板面に磁石部310が重ねられている。磁石部310は、磁石用板部381に対して固定されている。離間板部382は、ステータ200とは反対側に向けて磁石用板部381から離れた位置に設けられている。離間板部382は、離れ板部に相当する。
【0059】
対向リブ383は、周方向CDに直交する方向に板状に延びている。対向リブ383は、軸方向ADにおいて磁石用板部381と離間板部382との間に設けられている。対向リブ383は、磁石用板部381と離間板部382とにかけ渡された状態になっている。対向リブ383は、磁石用板部381と離間板部382とを接続しており、固定接続板部に相当する。対向リブ383は、磁石用板部381及び離間板部382の外周端と内周端とにかけ渡されるように径方向RDに延びている。対向リブ383は、磁石用板部381及び離間板部382を補強するように設けられたリブである。対向リブ383は、周方向CDに複数並べられている。
【0060】
なお、周方向CDに隣り合う2つの対向リブ383の間は、中実になっていてもよく中空になっていてもよい。例えば、周方向CDに隣り合う2つの対向リブ383の間には、樹脂材料等により形成された被収容部が収容されていてもよい。また、磁石用板部381及び離間板部382の少なくとも一方は、周方向CDに複数並べられていてもよい。例えば、磁石用板部381が周方向CDに複数並べられた構成では、周方向CDに延びる板部材が、複数の磁石用板部381にかけ渡されていてもよい。この板部材は、複数の磁石用板部381を接続するように磁石用板部381に固定されていてもよい。離間板部382が周方向CDに複数並べられた構成では、周方向CDに延びる板部材が、複数の離間板部382にかけ渡されていてもよい。この板部材は、複数の離間板部382を接続するように離間板部382に固定されていてもよい。
【0061】
図5図6図7に示すように、ホルダ介在部323は、サンドイッチ構造を構成する部位として、外介在板部385、内介在板部386及び介在リブ387を有している。外介在板部385及び内介在板部386は、径方向RDに直交する方向に板状に延びている。外介在板部385と内介在板部386とは、一対の板部として、介在リブ387を介して径方向RDに並べられている。介在板部385,386は、筒状に形成されており、周方向CDに環状に延びている。例えば、介在板部385,386は、円筒状に形成されている。介在板部385,386は、ホルダ対向部321からホルダ固定部322に向けて軸方向ADに延びている。
【0062】
外介在板部385は、径方向RDにおいて内介在板部386よりも磁石部310に近い位置に設けられている。内介在板部386は、外介在板部385から径方向内側に離れた位置に設けられている。外介在板部385が外接続板部に相当し、内介在板部386が内接続板部に相当する。
【0063】
介在リブ387は、周方向CDに直交する方向に板状に延びている。介在リブ387は、軸方向ADにおいて外介在板部385と内介在板部386との間に設けられている。介在リブ387は、外介在板部385と内介在板部386とにかけ渡された状態になっている。介在リブ387は、外介在板部385と内介在板部386とを接続しており、介在接続板部に相当する。介在リブ387は、介在板部385,386において軸方向ADに並べられた一対の端部にかけ渡されるように軸方向ADに延びている。介在リブ387は、外介在板部385及び内介在板部386を補強するように設けられたリブである。介在リブ387は、周方向CDに複数並べられている。
【0064】
なお、周方向CDに隣り合う2つの介在リブ387の間は、中実になっていてもよく中空になっていてもよい。例えば、周方向CDに隣り合う2つの介在リブ387の間には、樹脂材料等により形成された被収容部が収容されていてもよい。また、外介在板部385及び内介在板部386の少なくとも一方は、周方向CDに複数並べられていてもよい。例えば、軸方向ADに延びる筒状部材が周方向CDに複数並べられていてもよい。筒状部材は、矩形筒状に形成されている。筒状部材は、介在板部385,386及び一対の介在リブ387を有している。周方向CDに隣り合う2つの筒状部材では、それぞれの介在リブ387が互いに重ねられた状態で固定されている。
【0065】
上述したように、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とは、軸方向ADにずれた位置に設けられている。図8に示すように、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とは、軸方向ADにオフセットした位置に設けられている。ホルダ対向部321とホルダ固定部322とは、軸方向ADに離れた位置にある。軸方向ADでは、ホルダ対向部321とホルダ固定部322との距離D1が、磁石部310の厚さ寸法D2よりも大きい。なお、図8では、第2ロータ300bの図示を省略している。
【0066】
ホルダ固定部322は、シャフトフランジ342よりも径方向外側に延びている。ホルダ固定部322は、シャフト340から径方向外側に突出した状態になっている。シャフトフランジ342からのホルダ固定部322の突出寸法D3は、シャフト本体341からのシャフトフランジ342の突出寸法D4よりも小さい。距離D1は、突出寸法D3よりも大きい。突出寸法D3は、径方向RDにおいてシャフト340からのシャフトフランジ342からの突出寸法に相当する。
【0067】
モータ61では、吸引力Faが生じる。吸引力Faは、軸方向ADにおいて磁石部310をコイル部211側に吸引する力である。吸引力Faは、磁石部310の磁力等により生じる。吸引力Faが生じると、磁石部310がコイル部211に近づく向きにロータ300a,300bが反るように変形することが懸念される。
【0068】
これに対して、ロータ300a,300bでは、ホルダ介在部323が軸方向ADに延びていることで、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とが軸方向ADにずれた位置に設けられている。このため、吸引力Faの発生に伴って磁石ホルダ320に付与される応力Fb1~Fb3が、軸方向ADを向く軸応力Fb1,Fb2と、径方向RDを向く径応力Fb3と、に分散された状態になりやすい。
【0069】
軸応力Fb1は、ホルダ対向部321がコイル部211に近づく向きに磁石ホルダ320を軸方向ADに曲げようとする応力である。軸応力Fb2は、ホルダ固定部322がシャフトフランジ342に近づく向きに磁石ホルダ320を軸方向ADに曲げようとする応力である。径応力Fb3は、ホルダ介在部323がホルダ対向部321に向けて径方向外側に移動するように磁石ホルダ320を径方向RDに曲げようとする応力である。磁石ホルダ320では、径応力Fb3が生じる分だけ、磁石ホルダ320を軸方向ADに曲げようとする応力が低減される。
【0070】
磁石ホルダ320において径応力Fb3が生じると、ホルダ介在部323が径方向外側に拡径するように変形することがある。例えば、ホルダ介在部323は、ホルダ対向部321側の端部が拡径するように変形する。この場合、ホルダ介在部323は、コイル部211側を向くようにモータ軸線Cmに対して傾斜するように変形する。このようにホルダ介在部323が変形することで、磁石部310がコイル部211に近づくように移動する移動量が低減される。このため、吸引力Faによりアキシャルギャップ305a,305bが小さくなるということが生じにくい。
【0071】
なお、ホルダ介在部323は、径方向RDにおいて磁石部310寄りの位置に設けられていることが好ましい。例えば、軸方向ADにおいて、ホルダ介在部323と磁石部310との距離が、ホルダ介在部323とシャフト本体341との距離よりも小さいことが好ましい。また、軸方向ADにおいて、ホルダ介在部323と磁石部310との距離が、ホルダ介在部323とシャフトフランジ342との距離よりも小さいことが好ましい。磁石ホルダ320では、径方向RDにおいてホルダ介在部323が磁石部310に近いほど、径応力Fb3が大きくなりやすい。径応力Fb3が大きくなると、軸応力Fb1,Fb2が小さくなりやすいため、磁石部310がコイル部211に近づく向きに磁石ホルダ320が軸方向ADに曲がるということが生じにくくなる。
【0072】
ここまで説明した本実施形態によれば、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とは、軸方向ADにずれた位置に設けられ、軸方向ADに延びたホルダ介在部323により接続されている。この構成では、磁石部310がコイル部211に吸引されると、ホルダ対向部321及びホルダ固定部322では軸応力Fb1,Fb2が生じやすく、ホルダ介在部323では径応力Fb3が生じやすい。このように、磁石ホルダ320を軸方向ADに曲げるように生じる応力が、径応力Fb3に分散されることで低減するため、磁石ホルダ320が軸方向ADに曲がるように変形するということが生じにくくなる。したがって、ロータ300a,300bの変形を抑制することができる。
【0073】
本実施形態では、円環状のホルダ介在部323が軸方向ADに延びているため、吸引力Faに対する磁石ホルダ320の剛性を高めることができる。また、吸引力Faが円環状のホルダ介在部323を拡径するように作用するため、ホルダ固定部322への吸引力Faの伝達が低減される。このため、ホルダ固定部322に作用する吸引力Faの反力を低減できる。さらに、ロータ300a,300bの回転に伴って磁石ホルダ320に生じる遠心力が、円環状のホルダ介在部323を拡径するように作用するため、ホルダ固定部322への遠心力の伝達が低減される。このため、ホルダ固定部322に作用する遠心力の反力を低減できる。
【0074】
本実施形態によれば、ホルダ固定部322は、軸方向ADにおいてホルダ対向部321からステータ200側にずれた位置に設けられている。この構成では、ホルダ対向部321に付与される軸応力Fb1が、ホルダ対向部321をホルダ固定部322に軸方向ADに近づけるように生じる。すなわち、軸応力Fb1が、ホルダ介在部323を軸方向ADに縮めるように生じる。このため、軸応力Fb1に対するホルダ介在部323の剛性を高めることができる。したがって、吸引力Faに対する磁石ホルダ320の剛性を更に高めることができる。
【0075】
また、ホルダ固定部322がホルダ対向部321からステータ200側にずれた位置に設けられているため、ホルダ固定部322に軸方向ADに並ぶスペースをベアリング350,360の設置スペースなどとして有効利用することができる。例えば、ホルダ固定部322に軸方向ADに並び、且つホルダ対向部321の径方向内側にあるスペースに、ベアリング350,360を設置することができる。このため、モータハウジング70の内部空間という限られたスペースにおいて、ホルダ対向部321の径方向内側にあるスペースがデッドスペースになることを抑制できる。
【0076】
例えば、本実施形態とは異なり、軸方向ADにおいて、ホルダ固定部322がホルダ対向部321からステータ200とは反対側にずれた位置に設けられた構成を想定する。この構成では、ホルダ介在部323の径方向内側にあるスペースが、ロータ300a,300bのそれぞれのホルダ固定部322の間に存在することになり、デッドスペースになりやすい。
【0077】
本実施形態によれば、ホルダ介在部323は、周方向CDに環状に延びている。この構成では、吸引力Faの発生に伴って径応力Fb3がホルダ介在部323に付与されたとしても、ホルダ介在部323が拡径するように変形するということが生じにくい。このため、ホルダ介在部323の変形を抑制することでロータ300a,300bの変形を抑制できる。
【0078】
例えば、本実施形態とは異なり、ホルダ介在部323が周方向CDに複数並べられた構成を想定する。この構成では、吸引力Faが発生した場合に、複数のホルダ介在部323のそれぞれに個別に径応力Fb3が付与される。この場合、複数のホルダ介在部323のそれぞれが個別に径方向外側に移動するように変形することが懸念される。すなわち、径応力Fb3によりホルダ介在部323が変形しやすいことが懸念される。
【0079】
本実施形態によれば、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とは、軸方向ADに離れた位置に設けられている。この構成では、ホルダ介在部323において、ホルダ対向部321及びホルダ固定部322のいずれにも径方向RDに重複しない部位を確保できる。すなわち、軸方向ADにおいてホルダ対向部321とホルダ固定部322との間の部位をホルダ介在部323に確保できる。径応力Fb3によりホルダ介在部323が拡径するように変形する場合、ホルダ介在部323では、軸方向ADにおいてホルダ対向部321とホルダ固定部322との間の部位が変形しやすい。このようにホルダ介在部323に径方向RDに変形しやすい部位を確保することで、磁石ホルダ320が軸方向ADに曲がるように変形するということを抑制できる。
【0080】
本実施形態によれば、ホルダ対向部321とホルダ固定部322との距離D1が、磁石部310の厚さ寸法D2よりも大きい。このように、ホルダ対向部321とホルダ固定部322との距離D1が、厚さ寸法D2よりも大きいほどに十分に大きくなっていることで、磁石ホルダ320の変形がホルダ介在部323により抑制される効果を高めることができる。
【0081】
本実施形態によれば、ホルダ対向部321とホルダ固定部322との距離D1が、シャフト340からのホルダ固定部322の突出寸法D3よりも大きい。このように、ホルダ対向部321とホルダ固定部322との距離D1が、突出寸法D3よりも大きいほどに十分に大きくなっていることで、磁石ホルダ320の変形がホルダ介在部323により抑制される効果を高めることができる。
【0082】
本実施形態によれば、ホルダ介在部323において、外介在板部385及び内介在板部386という一対の板部が複数の介在リブ387により連結されている。ホルダ介在部323では、介在板部385,386及び介在リブ387によりサンドイッチ構造が形成されている。このようなサンドイッチ構造により、吸引力Faに対するホルダ介在部323の剛性を更に高めることができる。このため、ホルダ介在部323に径応力Fb3が付与されたとしても、ホルダ介在部323が径方向RDに変形することを抑制できる。
【0083】
本実施形態によれば、ホルダ対向部321において、磁石用板部381及び離間板部382という一対の板部が複数の対向リブ383により連結されている。ホルダ対向部321では、磁石用板部381、離間板部382及び対向リブ383によりサンドイッチ構造が形成されている。このようなサンドイッチ構造により、吸引力Faに対するホルダ対向部321の剛性を更に高めることができる。このため、ホルダ対向部321に軸応力Fb1が付与されたとしても、ホルダ対向部321が軸方向ADに変形することを抑制できる。
【0084】
本実施形態によれば、モータ装置60は、eVTOL10を飛行させるために駆動する。この構成では、モータ装置60の駆動によりeVTOL10が飛行している状態で、ロータ300a,300bが変形するということを磁石ホルダ320の形状により抑制できる。このように、ロータ300a,300bの変形を抑制することでeVTOL10の安全性を高めることができる。
【0085】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、ホルダ固定部322が、軸方向ADにおいてホルダ対向部321からステータ200側にオフセットした位置に設けられている。これに対して、第2実施形態では、ホルダ固定部322が、軸方向ADにおいてホルダ対向部321からステータ200とは反対側にオフセットした位置に設けられている。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第2本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0086】
図9に示すように、ホルダ固定部322は、軸方向ADにおいてホルダ対向部321からステータ200とは反対側にずれた位置に設けられている。軸方向ADでは、ホルダ対向部321とホルダ固定部322との距離D11が、磁石部310の厚さ寸法よりも大きい。また、距離D11は、シャフト本体341からのシャフトフランジ342の突出寸法D4よりも大きい。なお、図9では、第2ロータ300bの図示を省略している。
【0087】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0088】
上記各実施形態において、ホルダ固定部322は、ホルダ対向部321から軸方向ADにずれた位置に設けられていれば、どのように設けられていてもよい。例えば、ホルダ対向部321の一部とホルダ固定部322の一部とが径方向RDに並ぶように、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とが軸方向ADにずれた位置に設けられていてもよい。また、ホルダ対向部321は、ホルダ固定部322から径方向外側に離れた位置に設けられていてもよい。さらに、ホルダ対向部321の一部とホルダ固定部322の一部とが、軸方向ADに並んでいてもよい。
【0089】
上記各実施形態において、ホルダ介在部323は、ホルダ対向部321とホルダ固定部322とを接続していれば、どのように設けられていてもよい。例えば、ホルダ介在部323は、軸方向ADにおいてホルダ対向部321とホルダ固定部322との間に設けられていてもよく、径方向RDにおいてホルダ対向部321とホルダ固定部322との間に設けられていてもよい。
【0090】
上記各実施形態において、磁石ホルダ320の少なくとも一部にサンドイッチ構造が含まれていれば、磁石ホルダ320のどの部位がサンドイッチ構造になっていてもよい。例えば、ホルダ介在部323の少なくとも一部がサンドイッチ構造になっていてもよく、ホルダ固定部322がサンドイッチ構造になっていてもよい。また、磁石ホルダ320は、サンドイッチ構造を有していなくてもよい。
【0091】
上記各実施形態において、磁石ホルダ320の各部位は、環状に形成されていなくてもよい。例えば、ホルダ対向部321やホルダ固定部322、ホルダ介在部323は、環状に形成されていなくてもよい。例えば、ホルダ固定部322は、周方向CDに複数並べられていてもよい。
【0092】
上記各実施形態において、モータ61は、ダブルロータ式のモータでなくてもよい。例えば、モータ61は、シングルロータ式のモータでもよい。
【0093】
上記各実施形態において、モータ装置60が搭載される飛行体は、電動式であれば、垂直離着陸機でなくてもよい。例えば、飛行体は、電動航空機として、滑走を伴う離着陸が可能な飛行体でもよい。さらに、飛行体は、回転翼機又は固定翼機でもよい。飛行体は、人が乗らない無人飛行体でもよい。
【0094】
上記各実施形態において、モータ装置60が搭載される移動体は、回転体の回転により移動可能であれば、飛行体でなくてもよい。例えば、移動体は、車両、船舶、建設機械、農業機械であってもよい。例えば、移動体が車両や建設機械などである場合、回転体は移動用の車輪などであり、出力軸部は車軸などである。移動体が船舶である場合、回転体は推進用のスクリュープロペラなどであり、出力軸部はプロペラ軸などである。また、モータ装置60は、定置式の各種設備に設けられていてもよい。
【0095】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0096】
(技術的思想1)
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転するシャフト(340)と、
前記回転軸線が延びる軸方向(AD)において前記コイル部に並べられた磁石部(310)、及び前記シャフトに固定され前記磁石部を支持している磁石支持部(320)を有し、前記回転軸線を中心に回転するロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記磁石支持部は、
前記磁石部が固定された磁石固定部(321)と、
前記磁石固定部から前記軸方向にずれた位置に設けられ、前記シャフトに固定されたシャフト固定部(322)と、
前記磁石固定部と前記シャフト固定部とにかけ渡されるように前記軸方向に延び、前記磁石固定部と前記シャフト固定部とを接続している固定接続部(323)と、
を有している回転電機。
【0097】
(技術的思想2)
前記固定接続部は、前記軸方向において前記シャフト固定部が前記磁石固定部から前記ステータ側にずれた位置に設けられるように、前記磁石固定部と前記シャフト固定部とを接続している、技術的思想1に記載の回転電機。
【0098】
(技術的思想3)
前記固定接続部は、前記回転軸線の周方向(CD)に環状に延びている、技術的思想1又は2に記載の回転電機。
【0099】
(技術的思想4)
前記固定接続部は、前記シャフト固定部が前記磁石固定部から前記軸方向に離れた位置に設けられるように、前記磁石固定部と前記シャフト固定部とを接続している、技術的思想1~3のいずれか1つに記載の回転電機。
【0100】
(技術的思想5)
前記軸方向において、前記シャフト固定部と前記磁石固定部との距離(D1)は、前記磁石部の厚さ寸法(D2)よりも大きい、技術的思想1~4のいずれか1つに記載の回転電機。
【0101】
(技術的思想6)
前記軸方向での前記シャフト固定部と前記磁石固定部との距離(D1,D11)は、前記回転軸線の径方向(RD)において前記シャフトからの前記シャフト固定部の突出寸法(D3)よりも大きい、技術的思想1~5のいずれか1つに記載の回転電機。
【0102】
(技術的思想7)
前記固定接続部は、
前記回転軸線の径方向(RD)に直交するように前記回転軸線の周方向(CD)に延びている外接続板部(385)と、
前記径方向において前記外接続板部から内周側に離れた位置に設けられ、前記径方向に直交するように前記周方向に延びている内接続板部(386)と、
前記径方向において前記外接続板部と前記内接続板部との間に設けられ、前記周方向に直交する方向に延びた状態で前記外接続板部と前記内接続板部とを接続しており、前記周方向に複数並べられている介在接続板部(387)と、
を有している技術的思想1~6のいずれか1つに記載の回転電機。
【0103】
(技術的思想8)
前記ロータは、前記ステータに前記軸方向に並べられた磁石部(310)を有し、
前記磁石固定部は、
前記磁石部を支持しており、前記軸方向に直交するように前記回転軸線の周方向(CD)に延びている支持板部(381)と、
前記軸方向において前記ステータとは反対側に向けて前記支持板部から離れた位置に設けられ、前記軸方向に直交するように前記周方向に延びている離れ板部(382)と、
前記軸方向において前記支持板部と前記離れ板部との間に設けられ、前記支持板部と前記離れ板部とを接続している固定接続板部(383)と、
を有している技術的思想1~7のいずれか1つに記載の回転電機。
【0104】
(技術的思想9)
飛行体(10)に設けられ、前記飛行体を飛行させるために駆動する回転電機である、技術的思想1~8のいずれか1つに記載の回転電機。
【符号の説明】
【0105】
10…飛行体としてのeVTOL、60…回転電機としてのモータ装置、200…ステータ、211…コイル部、300a…ロータとしての第1ロータ、300b…ロータとしての第2ロータ、310…磁石部、320…磁石支持部としての磁石ホルダ、321…磁石固定部としてのホルダ対向部、322…シャフト固定部としてのホルダ固定部、323…固定接続部としてのホルダ介在部、340…シャフト、381…支持板部としての磁石用板部、382…離れ板部としての離間板部、383…固定接続板部としての対向リブ、385…外接続板部としての外介在板部、386…内接続板部としての内介在板部、287…介在接続板部としての介在リブ、D1,D11…距離、D2…厚さ寸法、D3…突出寸法、Cm…回転軸線としてのモータ軸線、AD…軸方向、CD…周方向、RD…径方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9