(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117251
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/18 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H02K3/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023237
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】桑原 優
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA07
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB14
5H603CA01
5H603CA05
5H603CC11
5H603CD13
5H603CD21
5H603CE04
(57)【要約】
【課題】コイル部での損失を低減することができる回転電機を提供する。
【解決手段】モータは、コイル部211を有している。コイル部211では、線状のコイル線状体220がコイル軸方向αに積層されるように巻回されている。コイル線状体220は、コイル部211においてコイル環状部271を形成している。コイル環状部271は、コイル軸方向αにおいて複数並べられている。コイル線状体220は、コイル線221を複数有している。コイル線状体220では、複数のコイル線221が撚られている。コイル線221は、コイル線状体220において線状面220osを形成している。コイル線221の少なくとも一部は、線状面220osに露出している。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、前記回転軸線に沿って前記ステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記コイル部は、
複数の前記コイル線により形成された外周面(220os)を有し、複数の前記コイル線が撚られて線状に形成され、前記回転軸線に沿って積層されるように巻回された線状体(220)、を有している回転電機。
【請求項2】
前記線状体では、前記コイル部の径方向(γ)に並んだ前記コイル線の数が、前記コイル部の軸方向(α)に並んだ前記コイル線の数よりも多い、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記線状体は、前記コイル部の径方向(γ)での前記線状体の幅寸法(W)が前記コイル部の軸方向(α)での前記線状体の厚さ寸法(D)よりも大きくなるように扁平している、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記線状体は、
前記コイル部の外周面(211a)及び内周面(211b)の両方を形成するように、前記外周面と前記内周面とにかけ渡されるように前記コイル部の径方向(γ)に延びている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項5】
前記線状体では、前記コイル線が前記コイル部の外周面(211a)を形成する外周形成部(224a)及び前記コイル部の内周面(211b)を形成する内周形成部(224b)の両方を有するように、複数の前記コイル線が撚られている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項6】
前記コイル部を外周側から覆っている電機外周壁(71)を有し、前記ステータ及び前記ロータを収容している電機ハウジング(70)と、
前記コイル部と前記電機外周壁との間に設けられ、前記コイル部の熱を前記電機外周壁に放出するコイル放熱部(295)と、
を備え、
少なくとも1つの前記コイル線では、前記コイル部の熱が前記外周形成部から前記コイル放熱部に放出されるように前記外周形成部が前記コイル放熱部に接触している、請求項5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ステータは、
前記線状体により形成され、前記コイル部から引き出されたコイル引出線(212,213)、を有している請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項8】
前記コイル線は、
通電可能な導体である素線(222)と、
電気絶縁性を有し、前記素線を被覆する被覆部(223)と、
を有しており、
前記線状体では、前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線がそれぞれの前記被覆部で互いに密着するように、複数の前記コイル線が撚られている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項9】
前記コイル部は、
前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線の間に設けられ、これらコイル線を接合している接合部(225)、を有している請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項10】
前記ロータである第1ロータ(300a)と、
前記ロータであり、前記コイル部を介して前記第1ロータに前記回転軸線に沿って並べられた第2ロータ(300b)と、
を備えている請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項11】
飛行体(10)に設けられ、前記飛行体を飛行させるために駆動する回転電機である、請求項1又は2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アキシャルギャップ式のモータについて記載されている。このモータでは、ロータとステータとが軸方向に並べられている。このステータは、2本の平角線により形成されたコイルを有している。このコイルでは、2本の平角線がコイルの径方向に並べられた状態で巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、2本の平角線のうち内周側の平角線において鎖交磁束等による損失が増加しやすい。このため、コイルでの損失が増加することが懸念される。
【0005】
本開示の1つの目的は、コイル部での損失を低減することができる回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するため、開示された態様は、
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、回転軸線に沿ってステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
コイル部は、
複数のコイル線により形成された外周面(220os)を有し、複数のコイル線が撚られて線状に形成され、回転軸線に沿って積層されるように巻回された線状体(220)、を有している回転電機である。
【0008】
上記態様によれば、コイル部を構成する線状体は、複数のコイル線が撚られて線状に形成されている。この構成では、コイル部の周方向での位置が異なると、複数のコイル線が順番に入れ替わるようにしてコイル部の内周側に配置される。このため、コイル部の内周側に配置された特定のコイル線で鎖交磁束等による損失が増加する、ということを回避できる。したがって、コイル部での損失を低減することができる。
【0009】
しかも、線状体の外周面は、複数のコイル線により形成されている。この構成では、複数のコイル線をまとめて覆うような被覆を線状体に設ける必要がない。このため、複数のコイル線をまとめて覆うような被覆がない分だけコイル部の占積率を高めることができる。したがって、コイル部での損失を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態におけるeVTOLの構成を示す図。
【
図5】コイルユニット及びモータハウジングの平面図。
【
図7】コイル線の一例を示すコイル部の概略平面図。
【
図8】比較例において比較外周線及び比較内周線を示すコイル部の概略平面図。
【
図10】コイル線状部を拡大したコイル部の概略平面図。
【
図11】コイル内周側からコイル線状部を拡大したコイル部の概略側面図
【
図12】
図8のXII-XII線断面図であり、コイル線状部の縦断面図。
【
図13】第2実施形態におけるコイル線状部の縦断面図。
【
図14】第3実施形態におけるコイル線状部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す推進システム30は、eVTOL10に搭載されている。eVTOL10は、電動垂直離着陸機であり、垂直方向に離着陸することが可能である。eVTOLは、electric Vertical Take-Off and Landing aircraftの略称である。eVTOL10は、大気中を飛行する航空機であり、飛行体に相当する。eVTOL10は、電動式の電動航空機でもあり、電動飛行体と称されることがある。eVTOL10は、乗員が乗る有人航空機である。推進システム30は、eVTOL10を飛行させるために駆動するシステムである。
【0013】
eVTOL10は、機体11及びプロペラ20を有している。機体11は、機体本体12及び翼13を有している。機体本体12は、機体11の胴体であり、例えば前後に延びた形状になっている。機体本体12は、乗員が乗るための乗員室を有している。翼13は、機体本体12から延びており、機体本体12に複数設けられている。翼13は固定翼である。複数の翼13には、主翼、尾翼などが含まれている。
【0014】
プロペラ20は、機体11に複数設けられている。eVTOL10は、少なくとも3つのプロペラ20を有するマルチコプタである。例えばプロペラ20は、機体11に少なくとも4つ設けられている。プロペラ20は、機体本体12及び翼13のそれぞれに設けられている。プロペラ20は、プロペラ軸線を中心に回転する。プロペラ軸線は、例えばプロペラ20の中心線である。プロペラ20は、eVTOL10に推力や揚力を生じさせることが可能である。また、プロペラ20は、ロータや回転翼と称されることがある。
【0015】
プロペラ20は、ブレード21及びボス22を有している。ブレード21は、プロペラ軸線の周方向に複数並べられている。ボス22は、複数のブレード21を連結している。ブレード21は、ボス22からプロペラ軸線の径方向に延びている。プロペラ20は、図示しないプロペラシャフトを有している。プロペラシャフトは、プロペラ20の回転軸であり、ボス22からプロペラ軸線に沿って延びている。
【0016】
eVTOL10は、チルトロータ機である。eVTOL10においては、プロペラ20のチルト角を調整可能になっている。なお、eVTOL10は、チルトロータ機でなくてもよい。例えば、eVTOL10は、リフト用のプロペラ20とクルーズ用のプロペラ20とのそれぞれを有していてもよい。
【0017】
eVTOL10は、バッテリ31、分配器32、飛行制御装置40及びEPU50を有している。バッテリ31、分配器32、飛行制御装置40及びEPU50は、推進システム30に含まれている。バッテリ31は、複数のEPU50に通電可能に接続されている。バッテリ31は、EPU50に電力を供給する電力供給部であり、電源部に相当する。バッテリ31は、EPU50に直流電圧を印加する直流電圧源である。バッテリ31は、充放電可能な2次電池を有している。バッテリ31は、飛行制御装置40にも電力を供給する。なお、電源部としては、バッテリ31に加えて又は代えて、燃料電池や発電機などが用いられてもよい。
【0018】
分配器32は、バッテリ31及び複数のEPU50に電気的に接続されている。分配器32は、バッテリ31からの電力を複数のEPU50に分配する。分配器32がEPU50に分配する電力は、EPU50を駆動させるための駆動電力である。
【0019】
飛行制御装置40は、推進システム30を制御する。飛行制御装置40は、eVTOL10を飛行させるための飛行制御を行う。飛行制御装置40は、複数のEPU50に通信可能に接続されている。飛行制御装置40は、複数のEPU50を個別に制御する。飛行制御装置40は、後述する制御回路160を介してEPU50の制御を行う。飛行制御装置40は、制御回路160の制御を行う。
【0020】
EPU50は、プロペラ20を駆動回転させるために駆動する装置であり、駆動装置に相当する。EPUは、Electric Propulsion Unitの略称である。EPU50は、電駆動装置や電駆動システムと称されることがある。EPU50は、複数のプロペラ20のそれぞれに対して個別に設けられている。EPU50は、プロペラ軸線に沿ってプロペラ20に並べられている。複数のEPU50はいずれも、機体11に固定されている。EPU50は、プロペラ20を回転可能に支持している。EPU50は、プロペラ20に接続されている。プロペラ20は、EPU50を介して機体11に固定されている。プロペラ20のチルト角が変更される場合、EPU50の角度も変更される。
【0021】
eVTOL10は、推進装置15を有している。推進装置15は、eVTOL10を推進させるための装置である。eVTOL10は、推進装置15による推進によりリフト等の飛行が可能になる。推進装置15は、プロペラ20及びEPU50を有している。推進装置15では、EPU50の駆動に伴ってプロペラ20が回転する。プロペラ20は回転体に相当する。eVTOL10は、プロペラ20の回転により飛行する。すなわち、eVTOL10は、プロペラ20の回転により移動する。eVTOL10は、移動体に相当する。
【0022】
図1、
図2に示すように、EPU50は、モータ装置60及びインバータ装置80を有している。モータ装置60はモータ61を有している。モータ装置60が回転電機に相当する。インバータ装置80はインバータ81を有している。モータ61は、インバータ81を介してバッテリ31に通電可能に接続されている。モータ61は、インバータ81を介してバッテリ31から供給される電力に応じて駆動する。
【0023】
モータ61は、複数相の交流モータである。モータ61は、例えば3相交流方式のモータであり、U相、V相、W相を有している。モータ61は、移動体が移動するための移動駆動源であり、電動機として機能する。モータ61としては、例えばブラシレスモータが用いられている。モータ61は、回生時に発電機として機能する。モータ61は、複数相のコイル64を有している。コイル64は、巻線であり、電機子を形成している。コイル64は、U相、V相、W相のそれぞれに設けられている。モータ61では、複数相のコイル64が中性点65にて互いに接続されている。
【0024】
図2において、インバータ81は、モータ61に供給する電力を変換することでモータ61を駆動する。インバータ81は、モータ61に供給される電力を直流から交流に変換する。インバータ81は、電力を変換する電力変換部である。インバータ81は、複数相の電力変換部であり、複数相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータ81は、例えば3相インバータであり、U相、V相、W相のそれぞれについて電力変換を行う。インバータ装置80は、電力変換装置と称されることがある。
【0025】
インバータ装置80は、Pライン141、Nライン142を有している。Pライン141及びNライン142は、バッテリ31とインバータ81とを電気的に接続している。Pライン141は、バッテリ31の正極に電気的に接続されている。Nライン142は、バッテリ31の負極に電気的に接続されている。バッテリ31においては、正極が高電位側の電極であり、負極が低電位側の電極である。Pライン141及びNライン142は、電力を供給するための電力ラインである。Pライン141は、高電位側の電力ラインであり、高電位ラインと称されることがある。Nライン142は、低電位側の電力ラインであり、低電位ラインと称されることがある。
【0026】
EPU50は、出力ライン143を有している。出力ライン143は、モータ61に電力を供給するための電力ラインである。出力ライン143は、モータ61とインバータ81とを電気的に接続している。出力ライン143は、モータ装置60とインバータ装置80とにかけ渡された状態になっている。
【0027】
インバータ装置80は、平滑コンデンサ145を有している。平滑コンデンサ145は、バッテリ31から供給される直流電圧を平滑化するコンデンサである。平滑コンデンサ145は、バッテリ31とインバータ81との間において、Pライン141とNライン142とに接続されている。平滑コンデンサ145は、インバータ81に対して並列に接続されている。
【0028】
インバータ81は、電力変換回路であり、例えばDC-AC変換回路である。インバータ81は、複数相分の上下アーム回路85を有している。例えば、インバータ81は、U相、V相、W相のそれぞれについて上下アーム回路85を有している。上下アーム回路85は、上アーム85aと、下アーム85bを有している。上アーム85a及び下アーム85bは、バッテリ31に対して直列に接続されている。上アーム85aはPライン141に接続され、下アーム85bはNライン142に接続されている。
【0029】
出力ライン143は、複数相分のそれぞれについて上下アーム回路85に接続されている。出力ライン143は、上アーム85aと下アーム85bとの間に接続されている。出力ライン143は、複数相のそれぞれにおいて、上下アーム回路85とコイル64とを接続している。出力ライン143は、コイル64において中性点65とは反対側に接続されている。
【0030】
上アーム85a及び下アーム85bは、アームスイッチ86及びダイオード87を有している。アームスイッチ86は、例えばMOSFET等のトランジスタである。MOSFETは、Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistorの略称である。アームスイッチ86は、スイッチ素子であり、スイッチングにより電力を変換することが可能である。スイッチ素子は、パワー素子等の半導体素子であればよい。アームスイッチ86は、電力を変換するための変換スイッチである。
【0031】
EPU50は、制御回路160を有している。制御回路160は、インバータ装置80に含まれている。制御回路160は、インバータ81の駆動を制御する。制御回路160は、インバータ81を介してモータ61の駆動を制御する。制御回路160は、モータ制御部と称されることがある。
図2では、制御回路160をCDと図示している。
【0032】
図3に示すように、EPU50では、モータ装置60とインバータ装置80とがモータ軸線Cmに沿って軸方向ADに並べられている。モータ装置60は、軸方向ADにおいてプロペラ20とインバータ装置80との間に設けられている。モータ軸線Cmは、モータ61の中心線であり、直線状に延びる仮想線である。モータ軸線Cmが回転軸線に相当する。軸方向ADは、モータ軸線Cmが延びた方向である。
【0033】
モータ軸線Cmについては、軸方向ADと周方向CDと径方向RDとが互いに直交している。周方向CDは、モータ61の回転方向である。径方向RDについては、外側が径方向外側や外周側と称され、内側が径方向内側や内周側と称されることがある。軸方向ADは、アキシャル方向と称されることがある。
【0034】
EPU50は、モータハウジング70及びインバータハウジング90を有している。モータハウジング70は、モータ装置60に含まれている。モータハウジング70は、モータ61を収容している。インバータハウジング90は、インバータ装置80に含まれている。インバータハウジング90は、インバータ81を収容している。モータハウジング70とインバータハウジング90とは、互いに接続されている。
【0035】
図4に示すように、モータハウジング70は、モータ外周壁71、リアフレーム370及びドライブフレーム390を有している。モータ外周壁71及びフレーム370,390は、金属材料等により形成されており、熱伝導性を有している。モータ外周壁71は、筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。フレーム370,390は、板状に形成されており、軸方向ADに直交する方向に延びている。リアフレーム370とドライブフレーム390とは、モータ外周壁71を介して軸方向ADに並べられている。フレーム370,390は、ボルト等の固定具によりモータ外周壁71に固定されている。なお、
図4には、モータ装置60をモータ軸線Cmに沿って切断した縦断面が図示されている。
【0036】
モータハウジング70は、モータハウジング外周面70a及びモータハウジング内周面70bを有している。モータハウジング外周面70aは、モータハウジング70の外周面であり、モータハウジング70の外面に含まれている。モータハウジング内周面70bは、モータハウジング70の内周面であり、モータハウジング70の内面に含まれている。モータハウジング外周面70a及びモータハウジング内周面70bは、モータ外周壁71により形成されている。
【0037】
リアフレーム370は、モータ外周壁71の内側空間をインバータ装置80側から覆っている。リアフレーム370は、モータ外周壁71を介してプロペラ20とは反対側に設けられている。ドライブフレーム390は、モータ外周壁71の内側空間をインバータ装置80とは反対側から覆っている。ドライブフレーム390は、モータ外周壁71を介してプロペラ20側に設けられている。
【0038】
モータハウジング70は、モータフィン72を有している。モータフィン72は、モータハウジング70の外面に設けられている。例えば、モータフィン72は、モータハウジング外周面70aに設けられている。モータフィン72は、モータ外周壁71から外周側に向けて突出している。モータフィン72は、周方向CDに直交する方向に延びている。モータフィン72は、周方向CDに複数並べられている。モータフィン72は、モータ装置60の熱を外部に放出する放熱フィンである。
【0039】
モータ61は、ステータ200、第1ロータ300a、第2ロータ300b及びシャフト340を有している。ステータ200は固定子である。ステータ200は、コイル64を有している。ロータ300a,300bは回転子である。ロータ300a,300bは、ステータ200に対して相対的に回転する。ロータ300a,300bは、モータ軸線Cmを中心に回転する。モータ軸線Cmは、ロータ300a,300bの中心線である。ステータ200は、周方向CDに環状に延びている。モータ軸線Cmは、ステータ200の中心線に一致している。
【0040】
モータ装置60は、アキシャルギャップ式の回転電機である。モータ61は、アキシャルギャップ式のモータである。モータ61では、ステータ200とロータ300a,300bとがモータ軸線Cmに沿って軸方向ADに並べられている。モータ装置60は、ダブルロータ式の回転電機である。モータ61は、ダブルロータ式のモータである。第1ロータ300aと第2ロータ300bとは、ステータ200を介して軸方向ADに並べられている。ステータ200は、第1ロータ300a及び第2ロータ300bという2つのロータの間に設けられている。本実施形態のモータ61は、ダブルアキシャルモータと称されることがある。
【0041】
シャフト340は、ロータ300a,300bを支持している。シャフト340は、ロータ300a,300bと共にモータ軸線Cmを中心に回転する。シャフト340の中心線は、モータ軸線Cmに一致している。シャフト340は、ロータ300a,300bとプロペラ20とを接続している。
【0042】
ロータ300a,300bは、磁石部310及び磁石ホルダ320を有している。磁石部310は、ロータ300a,300bのそれぞれにおいて周方向CDに複数並べられている。複数の磁石部310は、ロータ300a,300bの回転方向に並べられている。周方向CDに隣り合う2つの磁石部310は、接着剤等で互いに固定されている。磁石部310は、永久磁石を含んで構成されており、界磁を形成している。ロータ300a,300bでは、磁石部310が磁束を発生させる。第1ロータ300aの磁石部310と第2ロータ300bの磁石部310とは、ステータ200を介して軸方向ADに並べられている。磁石ホルダ320は、磁石部310を支持している。磁石ホルダ320は、ロータ300a,300bの外周端及び内周端を形成している。
【0043】
ステータ200は、コイルユニット210を有している。コイルユニット210は、周方向CDに環状に延びている。コイルユニット210は、コイル64を形成している。コイルユニット210は、コイル部211及びステータコア231を有している。コイル部211は、電線等により形成されており、通電可能である。コイル部211は、ステータコア231に巻回されている。コイル部211は、全体として筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。ステータコア231は、鉄心であり、軸方向ADに延びている。コイル部211及びステータコア231は、モータハウジング内周面70bに沿って周方向CDに複数並べられている。コイルユニット210では、複数のコイル部211によりコイル64が形成されている。
【0044】
モータ61は、第1アキシャルギャップ305a及び第2アキシャルギャップ305bを有している。アキシャルギャップ305a,305bは、ステータ200とロータ300a,300bとの隙間である。アキシャルギャップ305a,305bには、磁石部310とステータコア231との隙間が含まれている。アキシャルギャップ305a,305bは、ステータ200とロータ300a,300bとの間において、軸方向ADに直交する方向に延びている。第1アキシャルギャップ305aは、ステータ200と第1ロータ300aとの隙間である。第2アキシャルギャップ305bは、ステータ200と第2ロータ300bとの隙間である。
【0045】
モータ装置60は、リアベアリング350及びドライブベアリング360を有している。ベアリング350,360は、シャフト340を回転可能に支持している。ベアリング350,360は、周方向CDに環状に延びている。リアベアリング350とドライブベアリング360とは、ロータ300a,300bを介して軸方向ADに並べられている。ベアリング350,360は、モータハウジング70に固定されている。リアベアリング350は、リアフレーム370に固定されている。ドライブベアリング360は、ドライブフレーム390に固定されている。
【0046】
図5、
図6に示すように、ステータ200は、コアモジュール230を有している。コアモジュール230は、ステータコア231を有しており、コイルユニット210に含まれている。コアモジュール230が周方向CDに複数並べられていることで、ステータコア231が周方向CDに複数並べられている。コアモジュール230は、ステータコア231に加えて、ボビン240を有している。ボビン240は、樹脂材料等により形成されており、電気絶縁性を有している。ボビン240は、熱伝導性を有している。ボビン240は、全体として筒状に形成されており、軸方向ADに延びている。ボビン240は、ステータコア231の外周面を覆うようにステータコア231の少なくとも一部を収容している。コイル部211は、ボビン240を介してステータコア231に巻回されている。
【0047】
図7に示すように、コイル部211は、コイル軸線Ccに沿ってコイル軸方向αに延びている。コイル軸線Ccは、コイル部211の中心線であり、直線状に延びる仮想線である。コイル軸方向αは、コイル軸線Ccの軸方向であり、コイル部211の軸方向に相当する。コイル軸線Ccについては、コイル軸方向αとコイル周方向βとコイル径方向γとが互いに直交している。コイル周方向βは、コイル軸線Ccの周方向であり、コイル部211の周方向に相当する。コイル径方向γは、コイル軸線Ccの径方向であり、コイル部211の径方向に相当する。コイル部211は、コイル周方向βに環状に延びている。コイル径方向γについては、外側が径方向外側や外周側と称され、内側が径方向内側や内周側と称されることがある。
【0048】
コイル部211は、コイル軸方向αが軸方向ADになるように設けられている。軸方向AD、周方向CD及び径方向RDは、モータ軸線Cmを基準にした方向である。軸方向ADはモータ軸方向ADと称され、周方向CDはモータ周方向CDと称され、径方向RDはモータ径方向RDと称されることがある。
【0049】
コイル部211は、コイル外周面211a及びコイル内周面211bを有している。コイル外周面211aは、コイル部211の外周面である。コイル内周面211bは、コイル部211の内周面である。コイル外周面211a及びコイル内周面211bは、コイル部211の外面に含まれている。コイル外周面211aとコイル内周面211bとは、コイル径方向γに並べられている。コイル外周面211a及びコイル内周面211bは、コイル周方向βに環状に延びている。コイル外周面211a及びコイル内周面211bは、コイル軸方向αに延びている。
【0050】
図6、
図7に示すように、コイル部211は、コイル環状部271を有している。コイル環状部271は、コイル軸方向αに複数並べられている。複数のコイル環状部271は、コイル軸方向αに積層されている。コイル環状部271は、コイル周方向βにリング状に延びている。コイル環状部271は、全体として板状に形成されており、コイル軸方向αに直交する方向に延びている。コイル環状部271は、コイル軸方向αに潰れるように扁平した形状になっている。コイル環状部271は、コイル径方向γの幅寸法がコイル軸方向αの厚さ寸法より大きくなるように扁平している。
【0051】
コイル環状部271は、環状外周面272、環状内周面273及び環状板面274を有している。環状外周面272、環状内周面273及び環状板面274は、コイル環状部271の外面に含まれている。環状外周面272は、コイル環状部271の外周面である。環状外周面272は、コイル外周面211aに含まれている。環状内周面273は、コイル環状部271の内周面である。環状内周面273は、コイル内周面211bに含まれている。
【0052】
環状板面274は、コイル環状部271の板面である。環状板面274は、コイル軸方向αに直交する方向に延びている。環状板面274は、コイル軸方向αに一対並べられている。環状外周面272及び環状内周面273は、一対の環状板面274にかけ渡されるようにコイル軸方向αに延びている。コイル軸方向αに隣り合う2つのコイル環状部271では、それぞれの環状板面274が互いに重ねられた状態になっている。
【0053】
図9、
図10、
図11に示すように、コイル部211は、コイル線状体220を有している。コイル部211は、コイル線状体220が巻回されることで形成されている。コイル線状体220は、コアモジュール230に巻回されている。コイル線状体220は、ボビン240を介してステータコア231に巻回されている。コイル線状体220は、コイル周方向βに巻回されている。コイル線状体220は、コイル軸方向αに積層されるように巻回されている。
【0054】
コイル線状体220は、全体として板状に形成されている。コイル線状体220は、全体として平角線のような形状になっている。コイル部211は、全体としてエッジワイズコイルのような形状になっている。コイル部211では、コイル線状体220がコイル軸方向αに直交する方向に延びている。
【0055】
コイル線状体220は、電線等の線材としてコイル線221を複数有している。コイル線状体220は、複数のコイル線221が撚られて線状に形成されている。コイル線状体220は、線状体に相当する。コイル線状体220は、複数のコイル線221が互いに巻き付くようにねじられた状態でコイル周方向βに延びている。コイル線221は、コイル周方向βに直交する方向に移動しながらコイル周方向βに延びた状態になっている。コイル線221は、コイル線状体220においてコイル周方向βの位置が異なると、コイル軸方向αやコイル径方向γの位置が異なる。
【0056】
コイル線状体220は、線状面220osを有している。線状面220osは、コイル線状体220の外周面である。コイル線状体220では、コイル線221により線状面220osが形成されている。コイル線221は、コイル線状体220の外側に露出することで線状面220osを形成している。コイル線状体220は、複数のコイル線221をまとめて覆うような被覆部を有していない。
【0057】
コイル線状体220は、コイル環状部271を形成している。コイル線状体220が複数回巻かれることで、複数のコイル環状部271が形成されている。線状面220osは、コイル環状部271の外周面に含まれている。コイル線状体220は、コイル環状部271において環状外周面272と環状内周面273とにかけ渡されるようにコイル径方向γに延びている。コイル環状部271では、1つのコイル線状体220が環状外周面272及び環状内周面273の両方を形成している。
【0058】
コイル線状体220は、コイル部211においてコイル外周面211aとコイル内周面211bとにかけ渡されるようにコイル径方向γに延びている。コイル部211では、1つのコイル線状体220がコイル外周面211aの一部とコイル内周面211bの一部との両方を形成している。コイル線状体220は、コイル部211において軸方向ADの一方側だけに向けて積層されるように巻回されている。コイル部211では、コイル線状体220が一重に巻回されている。コイル部211では、コイル線状体220がコイル径方向γに複数重ねて巻回されてはいない。
【0059】
図7に示すように、コイル線221は、コイル環状部271の外周面の少なくとも一部を形成している。コイル線221は、コイル環状部271の外側に露出している。コイル線221は、外周露出部224a、内周露出部224b及び板面露出部224cを有している。板面露出部224cは、コイル線221において環状板面274に露出した部位である。板面露出部224cは、環状板面274の一部を形成している。
【0060】
外周露出部224aは、コイル線221において環状外周面272に露出した部位である。外周露出部224aは、環状外周面272の一部を形成している。外周露出部224aは、コイル部211においてコイル外周面211aに露出した部位である。外周露出部224aは、コイル外周面211aの一部を形成している。外周露出部224aは、外周形成部に相当する。
【0061】
内周露出部224bは、コイル線221において環状内周面273に露出した部位である。内周露出部224bは、環状内周面273の一部を形成している。内周露出部224bは、コイル部211においてコイル外周面211aに露出した部位である。内周露出部224bは、コイル内周面211bの一部を形成している。内周露出部224bは、内周形成部に相当する。
【0062】
コイル線221がコイル環状部271の外面に露出する部位は、コイル周方向βでの位置が異なるとコイル軸方向αやコイル径方向γに変位する。コイル線221では、外周露出部224a、内周露出部224b及び板面露出部224cがコイル周方向βに並べられている。コイル周方向βでは、板面露出部224cが外周露出部224aと内周露出部224bとにかけ渡されるように延びている。
【0063】
例えば、
図7、
図10に示すように、板面露出部224cは、外周露出部224aと内周露出部224bとにかけ渡されるようにコイル周方向βに延びている。板面露出部224cは、コイル線状体220をコイル径方向γに横断しながらコイル周方向βに延びている。また、
図11に示すように、外周露出部224a及び内周露出部224bは、一対の環状板面274の一方側の板面露出部224cと他方側の板面露出部224cとにかけ渡されるようにコイル周方向βに延びている。外周露出部224a及び内周露出部224bは、コイル線状体220をコイル軸方向αに横断しながらコイル周方向βに延びている。
【0064】
例えば、本実施形態とは異なり、複数のコイル線221が撚られていないコイル線状体220として比較線状体220Xを比較例として想定する。比較線状体220Xは、
図8に示すように、コイル部211及びコイル環状部271を形成している。比較線状体220Xでは、コイル線221がコイル環状部271の外面に露出する部位は、コイル周方向βでの位置が異なってもコイル軸方向αやコイル径方向γに変位しない。例えば、比較線状体220Xが有する複数のコイル線221には、比較外周線221X及び比較内周線221Yが含まれている。比較外周線221Xは、コイル周方向βにおいて環状外周面272の全体を形成している。比較内周線221Yは、コイル周方向βにおいて環状内周面273の全体を形成している。
【0065】
コイル環状部271では、比較外周線221Xが比較内周線221Yよりも長い。このため、コイル部211の製造時において、比較線状体220Xが巻回される場合、比較外周線221Xは、比較内周線221Yよりもコイル周方向βに伸ばされた状態になる。比較線状体220Xでは、比較外周線221Xに生じる引っ張り応力が過剰になるなどして、比較外周線221Xに切断などの異常が発生しやすくなることが懸念される。
【0066】
コイル環状部271では、コイル径方向γにおいて内周側の部位ほど、鎖交磁束が多いことなどにより損失が生じやすい。このため、比較内周線221Yにおいて鎖交磁束等により生じる損失が過剰に増加することが懸念される。例えば、比較外周線221Xと比較内周線221Yとで鎖交磁束の量が異なると、比較外周線221Xと比較内周線221Yとの間に電位差が生じやすい。そして、比較線状体220Xでは、比較外周線221Xと比較内周線221Yとの間に電位差が生じると、比較外周線221Xと比較内周線221Yとの間を循環する循環電流が流れ、循環電流損が増加することが懸念される。また、比較線状体220Xでは、比較内周線221Yでの鎖交磁束が多くなりやすい。このため、比較内周線221Yでの渦電流損が増加することが懸念される。
【0067】
これに対して、本実施形態のコイル線221は、コイル線状体220においてコイル周方向βの位置が異なると、コイル軸方向αやコイル径方向γの位置が異なる。このため、比較外周線221Xのように特定のコイル線221に切断などの異常が発生しやすい、ということが抑制される。また、比較内周線221Yのように特定のコイル線221での損失が過剰に増加しやすい、ということが抑制される。
【0068】
図6に示すように、モータ装置60は、バスバユニット260を有している。バスバユニット260は、周方向CDに環状に延びている。バスバユニット260は、ステータ200に径方向RDに並べられている。バスバユニット260は、電力バスバ261及びバスバ保護部270を有している。電力バスバ261及びバスバ保護部270は、周方向CDに環状に延びている。電力バスバ261は、バスバ部材等により形成されている。電力バスバ261は、出力ライン143の少なくとも一部を形成している。バスバ保護部270は、樹脂材料等により形成されており、電気絶縁性を有している。バスバ保護部270は、電力バスバ261を覆った状態で保護している。
【0069】
バスバユニット260は、ネジ等の固定具によりリアフレーム370に固定されている。バスバユニット260は、リアフレーム370を介してステータ200とは反対側に設けられている。
【0070】
図6、
図9において、コイルユニット210は、電力引出線212及び中性引出線213を有している。引出線212,213は、モータ装置60及びステータ200に含まれている。引出線212,213は、コイル部211から引き出されている。引出線212,213は、コイル引出線に相当する。引出線212,213は、周方向CDに複数並べられてる。引出線212,213は、コイル線状体220により形成されている。コイル線状体220は、引出線212,213の少なくとも一部を形成している。電力引出線212は、出力ライン143の少なくとも一部を形成している。中性引出線213は、コイル64と中性点65とを接続する経路の少なくとも一部を形成している。
【0071】
電力引出線212は、コイル部211と電力バスバ261とを通電可能に接続している。電力引出線212は、バスバ引出線265を介して電力バスバ261に接続されている。バスバ引出線265は、出力ライン143の少なくとも一部を形成している。バスバ引出線265は、平角線等の電線により形成されており、電力バスバ261から引き出されている。バスバ引出線265は、バスバユニット260に含まれている。
【0072】
電力引出線212は、リアフレーム370のリア配線孔373を通じて電力バスバ261側に引き出されている。リア配線孔373は、リアフレーム370に設けられた孔である。リア配線孔373は、リアフレーム370を軸方向ADに貫通している。リア配線孔373は、リアフレーム370の外周縁に沿って周方向CDに複数並べられている。
【0073】
コイル線状体220では、複数のコイル線221が電気的に並列に接続されている。複数のコイル線221は、電力引出線212と電力バスバ261との接続部分や、中性引出線213と中性点65との接続部分などにおいて、電気的に互いに接続されている。
【0074】
図6、
図12に示すように、ステータ200は、コイル放熱部295を有している。コイル放熱部295は、コイル部211とモータ外周壁71との間に設けられている。モータ外周壁71は、コイル部211を外周側から覆っており、電機外周壁に相当する。モータハウジング70は、ステータ200及びロータ300a,300bを収容しており、電機ハウジングに相当する。コイル放熱部295は、モータ外周壁71側からコイル線状体220やコイル環状部271に密着した状態になっている。コイル放熱部295は、コイル部211やコイル線状体220の熱をモータ外周壁71に放出可能である。コイル放熱部295は、モータハウジング内周面70bに沿って周方向CDに環状に延びている。
【0075】
コイル放熱部295は、熱可塑性樹脂等の樹脂材料等により形成されており、熱伝導性を有している。例えば、コイル放熱部295は、シリコン系やシリコン系の樹脂材料により形成された樹脂層と、金属材料により形成されて樹脂層に混入されたフィラーと、を有している。なお、コイル放熱部295は、熱伝導性を有していれば、セラミック材料や金属材料により形成されていてもよく、ジェル状に形成されていてもよい。
【0076】
コイル放熱部295は、コイル外周面211aに接触している。コイル線状体220では、少なくとも1つのコイル線221がコイル放熱部295に接触している。少なくとも1つのコイル線221では、外周露出部224aがコイル放熱部295に接触している。外周露出部224aとコイル放熱部295とが接触した部分では、コイル部211の熱が外周露出部224aからコイル放熱部295に伝わりやすくなっている。なお、外周露出部224aからコイル放熱部295に熱が伝わるように外周露出部224aとコイル放熱部295とが接触している構成には、外周露出部224aとコイル放熱部295との間に隙間や別部材がある構成も含む。
【0077】
モータハウジング70は、壁内凸部73を有している。壁内凸部73は、モータハウジング内周面70bに設けられた凸部である。壁内凸部73は、モータ外周壁71から内周側に向けて突出している。壁内凸部73は、周方向CDに環状に延びている。コイル放熱部295は、壁内凸部73を介してコイル部211とモータ外周壁71との間に設けられている。コイル放熱部295は、壁内凸部73を介してコイル部211の熱をモータ外周壁71に放出可能である。
【0078】
図12に示すように、コイル線状体220は、コイル軸方向αに潰れるように扁平した形状になっている。コイル線状体220では、コイル径方向γの幅寸法Wがコイル軸方向αの厚さ寸法Dよりも大きい。幅寸法Wは、コイル部211の幅寸法W1と同じである。幅寸法W1は、コイル径方向γでのコイル外周面211aとコイル内周面211bとの距離である。コイル線状体220では、コイル径方向γに並んだコイル線221の数がコイル軸方向αに並んだコイル線221の数よりも多い。例えば、コイル線221は、2段でコイル径方向γに3本以上並べられている。
【0079】
コイル線221は、コイル素線222及び素線被覆223を有している。コイル素線222は、コイル線221の導体である。コイル素線222は、銅等の導電材料により形成されており、導電性を有している。コイル素線222は、通電可能であり、素線に相当する。コイル素線222は、1本の導体により形成されていてもよく、複数本の導体により形成されていてもよい。素線被覆223は、コイル素線222を被覆している。素線被覆223は、樹脂材料等により形成されており、電気絶縁性を有している。素線被覆223は、被覆部に相当する。素線被覆223は、絶縁被膜と称されることがある。
【0080】
コイル線状体220では、コイル線221の断面形状や太さなどが複数のコイル線221で均一化されている。コイル線221の断面積は、複数のコイル線221でほぼ同じである。コイル素線222の断面積Scは、複数のコイル線221でほぼ同じである。断面積Scは、コイル素線222においてコイル周方向βに直交する断面の面積である。コイル線状体220では、コイル径方向γにおいて外周側のコイル線221ほど断面積Scが小さくなりやすい。コイル線状体220の総断面積Stは、コイル素線222が有する断面積Scを複数のコイル線221で合計した値である。総断面積Stは、コイル素線222という導体の断面積を複数のコイル線221で合計した値である。
【0081】
コイル線状体220では、複数のコイル線221が互いに密着した状態になっている。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221では、それぞれの素線被覆223が互いに密着している。複数のコイル線221では、それぞれの素線被覆223が融着や溶着により接合されている。これら素線被覆223は、互いに当接している。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線状体220では、それぞれの素線被覆223の少なくとも一部が接合されている。なお、これらコイル線状体220の間には、隙間が形成されていてもよい。
【0082】
コイル線状体220は、複数のコイル線221が互いに密着するように圧延されながら撚られた状態になっている。例えば、コイル線状体220では、コイル線221の断面形状がコイル線状体220の圧延に伴って変化した形状になっている。例えば、コイル素線222の外周面には、コイル径方向γやコイル軸方向αに直交する方向に延びた平坦面が含まれている。この平坦面は、コイル線状体220の圧延に伴うコイル素線222の変形により形成された面である。コイル線状体220が圧延されることで、コイル部211の占積率が高められている。占積率は、コイル部211の断面において複数のコイル素線222が占める割合である。占積率は、導体占積率と称されることがある。
【0083】
ここまで説明した本実施形態によれば、コイル部211を構成するコイル線状体220は、複数のコイル線221が撚られて線状に形成されている。この構成では、コイル周方向βでの位置が異なると、複数のコイル線221が順番に入れ替わるようにしてコイル部211の内周側に配置される。このため、例えば比較内周線221Yでの損失が増加するように、コイル部211の内周側に配置された特定のコイル線221での損失が増加する、ということを回避できる。したがって、コイル部211での損失を低減することができる。
【0084】
しかも、線状面220osは、複数のコイル線221により形成されている。この構成では、複数のコイル線221をまとめて覆うような被覆をコイル線状体220に設ける必要がない。このため、複数のコイル線221を覆うような被覆がない分だけコイル部211の占積率を高めることができる。したがって、コイル部211での損失を更に低減することができる。
【0085】
コイル環状部271では、コイル線状体220の導体部分が複数のコイル素線222に分割された状態になっている。この構成では、コイル素線222という1つの導体の断面積が低減されるため、1つの導体での渦電流が発生する面積を低減できる。このため、交番磁石磁束や電機子磁束によってコイル環状部271の導体部分に発生する渦電流損を低減できる。
【0086】
コイル環状部271では、複数のコイル線221が撚られているため、鎖交磁束が比較内周線221Yなど特定のコイル線221だけに鎖交するということを回避できる。例えば、コイル線221では、内周露出部224bでの鎖交磁束が増加しやすくても、外周露出部224aでの鎖交磁束が低減しやすい。このため、外周露出部224aのように、ステータコア231からの距離がコイル径方向γに大きくされた部位がコイル線221に含まれていることで、1本のコイル線221の全体で渦電流損が増加するということを抑制できる。
【0087】
また、コイル環状部271では、一対の環状板面274のうちアキシャルギャップ305a,305bとは反対側の環状板面274での鎖交磁束は、アキシャルギャップ305a,305b側の環状板面274での鎖交磁束よりも少なくなりやすい。このため、アキシャルギャップ305a,305bとは反対側にある板面露出部224cがコイル線221に含まれていることで、1本のコイル線221の全体で渦電流損が増加するということを抑制できる。すなわち、複数のコイル線221が撚られていることで、コイル線221をアキシャルギャップ305a,305bから部分的に遠ざけることで、コイル線221での渦電流損を低減できる。
【0088】
本実施形態では、コイル環状部271において複数のコイル線221が撚られているため、コイル線221に循環電流が発生することを抑制できる。例えば、比較線状体220Xでは、コイル環状部271において比較外周線221Xの長さ寸法と比較内周線221Yの長さ寸法とが大きすぎる。このように比較外周線221Xと比較内周線221Yとで長さが大きく異なると、比較外周線221Xでの電気抵抗と比較内周線221Yでの電気抵抗との差が大きくなりやすい。そうすると、抵抗差により生じる循環電流が比較外周線221Xと比較内周線221Yとの間を循環するように流れることが懸念される。
【0089】
これに対して、本実施形態では、コイル環状部271において複数のコイル線221が撚られているため、これらコイル線221に長さ寸法の差が生じにくい。すなわち、複数のコイル線221に電気抵抗の差が生じにくい。このため、電気抵抗の差によってコイル線221に循環電流が流れるということを抑制できる。
【0090】
本実施形態によれば、コイル線状体220では、コイル径方向γに並んだコイル線221の数が、コイル軸方向αに並んだコイル線221の数よりも多い。この構成では、複数のコイル線221により、コイル線状体220を板状に形成することができる。このようにコイル線状体220を板状に形成することで、コイル部211の占積率を高めることができる。
【0091】
本実施形態によれば、コイル環状部271では、コイル径方向γの幅寸法Wがコイル軸方向αの厚さ寸法Dよりも大きい。この構成では、コイル環状部271によりコイル部211をエッジワイズコイルのように形成することができるため、コイル部211の占積率を高めることができる。
【0092】
例えば本実施形態とは異なり、コイル部211においてコイル線状体220がコイル径方向γに複数の層を形成するように巻回された構成を想定する。この構成では、コイル径方向γに隣り合う2つの層の間に生じる電位差が大きくなりやすい。このため、コイル径方向γに隣り合う2つの層を電気的に絶縁しようとすると、コイル線状体220の絶縁被覆を分厚くせざるを得ない。そして、コイル線状体220の絶縁被覆が分厚いほどコイル部211の占積率が低下してしまう。
【0093】
これに対して、本実施形態によれば、コイル線状体220は、コイル外周面211a及びコイル内周面211bの両方を形成するように、コイル外周面211aとコイル内周面211bとにかけ渡されるようにコイル径方向γに延びている。この構成では、コイル部211においてコイル線状体220が一重に巻回されている。すなわち、コイル部211には、コイル径方向γに隣り合う2つの層が存在しない。このように、コイル径方向γに隣り合う2つの層を電気的に絶縁する必要がないため、コイル線状体220の絶縁被覆を極力薄くできる。このため、複数のコイル線221をまとめて覆うような被覆部をコイル線状体220に設ける必要がない。また、コイル線状体220において素線被覆223を極力薄くすることができる。これらのようにコイル線状体220の絶縁被覆を極力薄くすることで、コイル部211の占有率を高めることができる。素線被覆223の厚さは、極力薄くされているが、例えば10μm以上である。
【0094】
コイル部211では、コイル軸方向αに隣り合う2つのコイル環状部271の間に電位差が生じる。この電位差は、素線被覆223が2つのコイル環状部271を電気的に絶縁できるほどに小さい。コイル線状体220では、複数のコイル線221のそれぞれが素線被覆223を有していることで、それぞれのコイル素線222が素線被覆223により電気的に絶縁されている。このため、複数のコイル素線222に跨るように渦電流が流れるということを素線被覆223により抑制できる。したがって、コイル線状体220で生じる渦電流損を低減できる。
【0095】
素線被覆223が渦電流損を低減するために必要な素線被覆223の厚さは、例えば4μm程度である。また、コイル軸方向αに隣り合う2つのコイル環状部271を素線被覆223が電気的に絶縁するために必要な素線被覆223の厚さ寸法は、例えば2~5μm程度である。本実施形態では、素線被覆223の厚さが、渦電流損を低減するために必要な厚さ、及び2つのコイル環状部271を電気的に絶縁するために必要な厚さ、のいずれよりも大きい。このため、コイル部211では、渦電流損の低減と、2つのコイル環状部271の電気的な絶縁と、の両方を素線被覆223により実現できる。
【0096】
本実施形態によれば、コイル線状体220では、コイル線221が外周露出部224a及び内周露出部224bの両方を有するように複数のコイル線221が撚られている。この構成では、コイル線221がコイル周方向βに直交する方向に移動しながらコイル周方向βに延びた状態になっているため、複数のコイル線221に線長差が生じることを抑制できる。このため、複数のコイル線221において、線長差に伴う電気抵抗の差によって生じる循環電流を低減することができる。
【0097】
本実施形態では、コイル環状部271がコイル放熱部295に密着した状態になっている。このため、コイル環状部271からモータ外周壁71への放熱効果をコイル放熱部295により高めることができる。しかも、コイル線221が外周露出部224aを有するように複数のコイル線221が撚られている。このため、コイル環状部271では、外周露出部224aがコイル放熱部295に密着した状態を、複数のコイル線221のそれぞれについて実現することが可能である。このため、外周露出部224aの放熱効果がコイル放熱部295により高められた構成を、複数のコイル線221のそれぞれについて実現できる。
【0098】
コイル部211では、コイル径方向γにおいてコイル内周面211bに近い部位ほど温度が高くなることが懸念される。すなわち、コイル線状体220では、内周露出部224bに近い部位ほど温度が高くなることが懸念される。例えば、内周露出部224bでは、鎖交磁束等による損失が増加しやすいことで熱が発生しやすい。また、ステータコア231の熱が内周露出部224bに伝わりやすい。
【0099】
これに対して、本実施形態では、コイル線221において外周露出部224aと内周露出部224bとが板面露出部224cにより接続されている。この構成では、内周露出部224bの熱が板面露出部224cを介して外周露出部224aからコイル部211の外部に放出されやすい。このため、内周露出部224bの熱がコイル内周面211bに近い部位にこもり、コイル部211の温度が過剰に高くなるということを抑制できる。したがって、コイル部211の放熱効果をコイル線状体220により高めることができる。
【0100】
例えば、
図8に示す比較線状体220Xでは、比較内周線221Yの熱が比較外周線221Xから放出されるためには、この熱が複数のコイル線221をコイル径方向γの外側に向けて伝わっていく必要がある。この熱は、コイル径方向γに隣り合う2つのコイル線221において、一方のコイル素線222から素線被覆223や空気を介して他方のコイル素線222に伝わる。素線被覆223や空気は、熱抵抗が比較的高いため、比較内周線221Yの熱が比較外周線221Xまで伝わりにくい。
【0101】
これに対して、本実施形態では、1つのコイル線状体220がコイル内周面211b及びコイル外周面211aのそれぞれに露出している。コイル線状体220では、内周露出部224bの熱がコイル素線222を介して外周露出部224aに伝わる。コイル素線222の熱抵抗は、素線被覆223や空気に比べて低い。このため、内周露出部224bの熱が外周露出部224aに伝わりやすい。このように、コイル線状体220が外周露出部224a及び内周露出部224bの両方を有していることで、コイル部211の放熱効果を高めることができる。
【0102】
本実施形態によれば、少なくとも1つのコイル線221では、コイル部211の熱が外周露出部224aからコイル放熱部295に放出されるように、外周露出部224aがコイル放熱部295に接触している。この構成では、外周露出部224aの熱がコイル放熱部295を介してモータ外周壁71に放出されやすい。このため、コイル線状体220の放熱効果をコイル放熱部295により高めることができる。例えば、コイル線状体220において、内周露出部224bの熱が板面露出部224cを介して外周露出部224aに伝わった場合に、この熱がコイル放熱部295を介してモータ外周壁71から外部に放出されやすい。
【0103】
本実施形態によれば、電力引出線212や中性引出線213がコイル線状体220により形成されている。このため、コイル線221の線長差などによって電力引出線212や中性引出線213に損失が生じることを、コイル線状体220により抑制できる。
【0104】
本実施形態によれば、コイル線状体220では、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221がそれぞれの素線被覆223で密着するように、複数のコイル線221が撚られている。この構成では、コイル線状体220が圧延されたような状態になっているため、コイル部211の占積率を高めることができる。
【0105】
アキシャルギャップ式のモータ61では、コイル部211及びステータコア231とロータ300a,300bとが軸方向ADに並べられていることに起因して、コイル部211側への漏れ磁束が多くなりやすい。しかも、ダブルロータ式のモータ61では、軸方向ADの一方側及び他方側の両方から漏れ磁束が生じることで、コイル部211側への漏れ磁束が増加しやすい。これに対して、本実施形態によれば、鎖交磁束の差によってコイル線221に循環電流が流れるということが抑制されるため、ダブルアキシャルモータにとって効果的である。
【0106】
本実施形態によれば、モータ装置60は、eVTOL10を飛行させるために駆動する。この構成では、モータ装置60の駆動によりeVTOL10が飛行している状態で、コイル部211での損失を低減することができる。このように、モータ装置60においてコイル部211での損失を低減することでeVTOL10の安全性を高めることができる。
【0107】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、コイル線状体220において複数のコイル線221は、互いに当接した状態で直接的に接合されている。これに対して、第2実施形態では、複数のコイル線221は、間接的に接合されている。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第2本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0108】
図13に示すように、コイル線状体220は、線状融着部225を有している。線状融着部225は、複数のコイル線221の間に設けられており、複数のコイル線221を融着している。例えば、線状融着部225は、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221の間に設けられており、これらコイル線221を融着により接合している。線状融着部225は、接合部に相当する。線状融着部225は、複数のコイル線221の素線被覆223を融着している。線状融着部225は、融着材が固化することで形成されており、熱伝導性を有している。融着材は、樹脂材料等により形成されている。
【0109】
なお、線状融着部225は、隣り合う2つのコイル線221を融着していれば、これらコイル線221の間に入り込んでいなくてもよい。また、線状融着部225は、隣り合う2つのコイル線221を溶着や接着により接合していてもよい。
【0110】
コイル線状体220では、複数のコイル線221の隙間が線状融着部225により埋められた状態になっている。なお、線状融着部225には、ボイド等の空隙や隙間が形成されていてもよい。例えば、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221の間では、一方のコイル線221側の線状融着部225と、他方のコイル線221側の線状融着部225との間に隙間が生じていてもよい。
【0111】
本実施形態によれば、線状融着部225は、コイル周方向βに直交する方向に隣り合う2つのコイル線221の間に設けられ、これらコイル線221を融着している。この構成では、隣り合う2つのコイル線221の隙間を線状融着部225により埋めることが可能であるため、これらコイル線221の間で熱が伝わりやすくなる。このため、ステータコア231やコイル線221の熱がコイル線状体220からコイル放熱部295に伝わりやすくなる。したがって、モータ装置60の放熱効果を線状融着部225により高めることができる。
【0112】
<第3実施形態>
上記第1実施形態では、コイル線状体220において複数のコイル線221が互いに密着した状態になっている。これに対して、第3実施形態では、複数のコイル線221が互いに密着した状態になっていなくてもよい。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第3本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0113】
図14において、コイル線状体220では、複数のコイル線221が圧延されずに撚られてた状態になっている。コイル線状体220では、コイル線221の断面形状がコイル線状体220の圧延が行われていない形状になっている。例えば、コイル線221の断面径状が、平坦面を有していない円状になっている。本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、コイル線状体220において複数のコイル線221が線状融着部225により接合されている。
【0114】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0115】
上記各実施形態において、複数のコイル線221が撚られることでコイル線状体220が形成されていれば、コイル線221がどのように撚られていてもよい。コイル線状体220では、コイル線状体220の径方向に複数の層が重なるように複数のコイル線221が撚られていてもよい。例えば、コイル線状体220では、コイル線状体220の径方向に内層と外層とが並べられていてもよい。内層は、コイル線221を複数有している。内層では、複数のコイル線221が撚られている。外層は、内層とは異なるコイル線221を複数有している。外層では、内層を覆うように複数のコイル線221が撚られている。内層に含まれたコイル線221は、外周露出部224aや内周露出部224b、板面露出部224cを有していない。
【0116】
上記各実施形態において、コイル線状体220において複数のコイル線221が撚られていれば、コイル線221はどのような構成になっていてもよい。例えば、コイル線状体220では、コイル線221の断面形状や太さなどが複数のコイル線221で異なっていてもよい。例えば、コイル線221の断面積が複数のコイル線221で異なっていてもよい。
【0117】
上記各実施形態において、コイル線状体220は、コイル部211を形成していればどのように巻回されていてもよい。例えば、コイル線状体220は、コイル部211においてコイル径方向γに複数重ねて巻回されていてもよい。コイル線状体220は、コイル径方向γに二重に巻回されていてもよい。また、コイル線状体220は、コイル軸方向αに積層されていなくてもよい。
【0118】
上記各実施形態において、コイル線状体220は、コイル部211の少なくとも一部を形成していればよい。例えば、コイル部211では、少なくとも一部のコイル環状部271がコイル線状体220により形成されていればよい。この構成では、残りのコイル環状部271が、複数のコイル線221が撚られていない状態の電線等により形成されていればよい。
【0119】
上記各実施形態において、コイル線状体220は、電力引出線212等のコイル引出線の少なくとも一部を形成していてもよい。また、コイル線状体220は、コイル引出線形成していなくてもよい。
【0120】
上記各実施形態において、モータ61は、ダブルロータ式のモータでなくてもよい。例えば、モータ61は、シングルロータ式のモータでもよい。
【0121】
上記各実施形態において、モータ装置60が搭載される飛行体は、電動式であれば、垂直離着陸機でなくてもよい。例えば、飛行体は、電動航空機として、滑走を伴う離着陸が可能な飛行体でもよい。さらに、飛行体は、回転翼機又は固定翼機でもよい。飛行体は、人が乗らない無人飛行体でもよい。
【0122】
上記各実施形態において、モータ装置60が搭載される移動体は、回転体の回転により移動可能であれば、飛行体でなくてもよい。例えば、移動体は、車両、船舶、建設機械、農業機械であってもよい。例えば、移動体が車両や建設機械などである場合、回転体は移動用の車輪などであり、出力軸部は車軸などである。移動体が船舶である場合、回転体は推進用のスクリュープロペラなどであり、出力軸部はプロペラ軸などである。また、モータ装置60は、定置式の各種設備に設けられていてもよい。
【0123】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0124】
(技術的思想1)
電力の供給により駆動する回転電機(60)であって、
コイル線(221)により形成されたコイル部(211)を有するステータ(200)と、
回転軸線(Cm)を中心に回転し、前記回転軸線に沿って前記ステータに並べられたロータ(300a,300b)と、
を備え、
前記コイル部は、
複数の前記コイル線により形成された外周面(220os)を有し、複数の前記コイル線が撚られて線状に形成され、前記回転軸線に沿って積層されるように巻回された線状体(220)、を有している回転電機。
【0125】
(技術的思想2)
前記線状体では、前記コイル部の径方向(γ)に並んだ前記コイル線の数が、前記コイル部の軸方向(α)に並んだ前記コイル線の数よりも多い、技術的思想1に記載の回転電機。
【0126】
(技術的思想3)
前記線状体は、前記コイル部の径方向(γ)での前記線状体の幅寸法(W)が前記コイル部の軸方向(α)での前記線状体の厚さ寸法(D)よりも大きくなるように扁平している、技術的思想1又は2に記載の回転電機。
【0127】
(技術的思想4)
前記線状体は、
前記コイル部の外周面(211a)及び内周面(211b)の両方を形成するように、前記外周面と前記内周面とにかけ渡されるように前記コイル部の径方向(γ)に延びている、技術的思想1~3のいずれか1つに記載の回転電機。
【0128】
(技術的思想5)
前記線状体では、前記コイル線が前記コイル部の外周面(211a)を形成する外周形成部(224a)及び前記コイル部の内周面(211b)を形成する内周形成部(224b)の両方を有するように、複数の前記コイル線が撚られている、技術的思想1~4のいずれか1つに記載の回転電機。
【0129】
(技術的思想6)
前記コイル部を外周側から覆っている電機外周壁(71)を有し、前記ステータ及び前記ロータを収容している電機ハウジング(70)と、
前記コイル部と前記電機外周壁との間に設けられ、前記コイル部の熱を前記電機外周壁に放出するコイル放熱部(295)と、
を備え、
少なくとも1つの前記コイル線では、前記コイル部の熱が前記外周形成部から前記コイル放熱部に放出されるように前記外周形成部が前記コイル放熱部に接触している、技術的思想5に記載の回転電機。
【0130】
(技術的思想7)
前記ステータは、
前記線状体により形成され、前記コイル部から引き出されたコイル引出線(212,213)、を有している技術的思想1~6のいずれか1つに記載の回転電機。
【0131】
(技術的思想8)
前記コイル線は、
通電可能な導体である素線(222)と、
電気絶縁性を有し、前記素線を被覆する被覆部(223)と、
を有しており、
前記線状体では、前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線がそれぞれの前記被覆部で互いに密着するように、複数の前記コイル線が撚られている、技術的思想1~7のいずれか1つに記載の回転電機。
【0132】
(技術的思想9)
前記コイル部は、
前記コイル部の周方向(β)に直交する方向に隣り合う2つの前記コイル線の間に設けられ、これらコイル線を接合している接合部(225)、を有している技術的思想1~8のいずれか1つに記載の回転電機。
【0133】
(技術的思想10)
前記ロータである第1ロータ(300a)と、
前記ロータであり、前記コイル部を介して前記第1ロータに前記回転軸線に沿って並べられた第2ロータ(300b)と、
を備えている技術的思想1~9のいずれか1つに記載の回転電機。
【0134】
(技術的思想11)
飛行体(10)に設けられ、前記飛行体を飛行させるために駆動する回転電機である、技術的思想1~10のいずれか1つに記載の回転電機。
【符号の説明】
【0135】
10…飛行体としてのeVTOL、60…回転電機としてのモータ装置、70…電機ハウジングとしてのモータハウジング、71…電機外周壁としてのモータ外周壁、200…ステータ、211…コイル部、211a…外周面としてのコイル外周面、211b…内周面としてのコイル内周面、212…コイル引出線としての電力引出線、213…コイル引出線としての中性引出線、220…線状体としてのコイル線状体、220os…外周面としての線状面、222…素線としてのコイル素線、223…被覆部としての素線被覆、224a…外周形成部としての外周露出部、224b…内周形成部としての内周露出部、225…接合部としての線状融着部、295…コイル放熱部、300a…ロータとしての第1ロータ、300b…ロータとしての第2ロータ、D…厚さ寸法、W…幅寸法、Cm…回転軸線としてのモータ軸線、α…軸方向としてのコイル軸方向、β…周方向としてのコイル周方向、γ…径方向としてのコイル径方向。