(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117255
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】航空機用灯具
(51)【国際特許分類】
B64D 47/02 20060101AFI20240822BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240822BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240822BHJP
F21W 107/30 20180101ALN20240822BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240822BHJP
【FI】
B64D47/02
F21S2/00 600
F21V5/04 600
F21W107:30
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023249
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】依田 孝
(57)【要約】
【課題】光源の配置に関わらず、灯具全体の光り方の偏りを低減可能な航空機用灯具を提供する。
【解決手段】本開示の航空機用灯具1は、複数のLED21と、LED21の光を灯具長手方向に拡散させるインナーレンズ3と、インナーレンズ3を経由したを散乱させつつ透過させる光散乱透過部材(アウターレンズ4)とを備える。インナーレンズ3は、シリンドリカルレンズであり、灯具短手方向に沿って凸部31が形成されている。また、凸部31は、灯具長手方向に向けて並列に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、前記光源の光を拡散させるレンズと、前記レンズを経た光を散乱させつつ透過させる光散乱透過部材と、を備え、
前記レンズの光入射面に、複数の略半円筒形状の凸部を並列に形成したことを特徴とする航空機用灯具。
【請求項2】
複数の前記光源のうち、少なくとも一の光源は、他の光源と異なる所定の色に発光する、請求項1に記載の航空機用灯具。
【請求項3】
前記凸部を、前記航空機用灯具の短手方向に沿って形成し、かつ、前記凸部を、前記航空機用灯具の長手方向に向けて並列に形成した、請求項1に記載の航空機用灯具。
【請求項4】
隣接する前記凸部の頂点同士の間隔は、0.1mm以上1mm以下である、請求項1に記載の航空機用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主に航空機の機内で用いられる航空機用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主に航空機の機内で用いられる航空機用灯具において、灯室内に複数の異なる色に発光する光源を配置し、状況や用途に応じて異なる色の照明を行う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の航空機用灯具によれば、
図4(a)に示すように、光源を配置した領域のみが強く光り、光源から離れるにつれて徐々に明るさが減少する。このため、例えば、所定のメッセージを表示する表示灯として用いた場合等に、表示面(灯具正面)全体で光り方に偏りが生じ、意匠性及び視認性が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、光源の配置に関わらず、灯具正面全体における光り方の偏りを低減可能な航空機用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の航空機用灯具は、以下の特徴を備える。
(1)複数の光源と、光源の光を拡散させるレンズと、レンズを経た光を散乱させつつ透過させる光散乱透過部材と、を備え、レンズの入射面に、複数の略半円筒形状の凸部を並列に形成したこと。
【0007】
(2)(1)の場合に、複数の光源のうち、少なくとも一の光源は、他の光源と異なる所定の色に発光すること。
【0008】
(3)(1)の場合に、凸部を、航空機用灯具の短手方向に沿って形成し、かつ、航空機用灯具の長手方向に並列に形成したこと。
【0009】
(4)(1)の場合に、隣接する凸部の頂点同士の間隔は、0.1mm以上1mm以下であること。
【発明の効果】
【0010】
本開示の航空機用灯具によれば、光源の光を略半円筒形状の凸部により拡散し、さらに、光散乱透過部材により散乱させるように構成したため、光源の光が灯具正面全体に行き渡り、灯具正面全体の光り方の偏りを低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態を示す航空機用灯具の分解斜視図である。
【
図2】
図1の航空機用灯具の(a)A-A線断面図、(b)B-B線断面図である。
【
図3】シリンドリカルレンズの作用を示す模式図である。
【
図4】(a)従来の構成、(b)シリンドリカルレンズを用いた構成における作用を示す模式図である。
【
図5】シリンドリカルレンズ及び光散乱透過部材の作用を示す模式図である。
【
図6】(a)シリンドリカルレンズと従来のアウターレンズを用いた構成、(b)シリンドリカルレンズ及び光散乱透過部材を用いた構成における作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を航空機用灯具に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では、アウターレンズ4の配置された側を灯具正面側として説明する。
図1,2に示す航空機用灯具1は、航空機のアテンダントコール等の表示灯や室内灯等に用いられる灯具であって、機体に取り付けられる灯具ボディ5と、アウターレンズ4とを備え、灯具ボディ5及びアウターレンズ4との間に形成される灯室6内に、インナーレンズ3と、光源ユニット2とが収容されている。灯具ボディ5には、アウターレンズ4の周縁部からの光の漏出を防止する突起5aが周設されている。
【0013】
光源ユニット2は、基盤22と、複数の光源(LED21)とを備える。各々のLED21-1~3は、灯具長手方向に列設され、各々異なる所定の色に発光する。この例では、LED21-1はブルー、LED21-2はピンク、LED21-3はアンバーに発光するが、LED21の光の色の種類、LED21の個数や並び順は、適宜変更することができる。
【0014】
インナーレンズ3は、複数の微細ステップな半円筒形状の凸部31を並列に形成してなるシリンドリカルレンズで構成されている。凸部31は、灯具短手方向に沿って形成され、灯具長手方向に向けて並列に配置されている。また、インナーレンズ3は、凸部31がLED21を向くように取り付けられている。LED21を出射し、凸部31に入射した光(矢印)は、半円筒形状の筒軸方向に向けて一旦集約され、焦点Fを経由した後に、筒径方向に向けて拡散する(
図3参照)。ステップの間隔(隣接する凸部31の頂点同士の間隔dは、0.1mm~1mm程度とすることが好ましい。
【0015】
アウターレンズ4は、光散乱透過部材で構成されている。また、
図2(a)に示すように、アウターレンズ4は、断面略U字形状に設けられている。光散乱透過部材は、光を透過させつつ散乱させる材質であればよく、例えば、乳白色のポリカーボネート等の樹脂材料を用いることができる。このとき、乳目を濃く(乳目を厚く)設け、より光の拡散度を上昇させることも可能である。なお、光散乱透過部材として、表面にサンドブラスト加工を施した透明樹脂部材を採用することも可能である。
【0016】
次に、上記のように構成された航空機用灯具1において、インナーレンズ3及びアウターレンズ4の作用を、
図3~6に従って説明する。ここでは、LED21-1を例に説明するが、LED21-2,3の場合も同様に作用する。
【0017】
図3に示すように、インナーレンズ3をシリンドリカルレンズで構成し、従来の光透過部材で構成したアウターレンズ54を用いた場合には、LED21-1を出射した光は、インナーレンズ3の凸部31により集光され、インナーレンズ3内部の焦点Fを経て灯具長手方向に拡散され、アウターレンズ4を透過して灯具前方に出射する。
【0018】
図4(a-1)に示すように、従来の光透過部材で構成したアウターレンズ54のみを用いた場合には、LED21-1を出射した光は、そのまま直進してアウターレンズ54を透過し、領域A1を照明する。
図4(b-1)に示すように、シリンドリカルレンズで構成したインナーレンズ3を追加した場合には、LED21-1を出射した光は、インナーレンズ3を透過する際に灯具長手方向に拡散され、アウターレンズ4を透過し、領域A1よりも広い領域A2を照明する。このように、インナーレンズ3をシリンドリカルレンズで構成した場合には、航空機用灯具1の正面全体をより均一に発光させることができる。
【0019】
図5に示すように、インナーレンズ3をシリンドリカルレンズで構成し、アウターレンズ4を光散乱透過部材で構成した場合には、LED21-1を出射し、インナーレンズ3により両側方に拡散された光は、アウターレンズ4内部でさらに散乱されて、灯具前方に出射する。
【0020】
図6(a-1)に示すように、シリンドリカルレンズで構成したインナーレンズ3と従来の光透過部材で構成したアウターレンズ54を用いた場合には、領域A2を照明する。
図6(b-1)に示すように、インナーレンズ3をシリンドリカルレンズで構成し、さらに、アウターレンズ4を光散乱透過部材で構成した場合には、LED21-1を出射し、インナーレンズ3により灯具長手方向に拡散された光は、アウターレンズ4の内部でさらに散乱され、領域A2よりもさらに広い領域A3を照明する。このように、インナーレンズ3をシリンドリカルレンズで構成し、アウターレンズ4を光散乱透過部材で構成した場合には、航空機用灯具1の正面全体をさらに均一に発光させることができる。
【0021】
したがって、この実施形態の航空機用灯具1によれば、インナーレンズ3に、略半円筒形状の凸部31を、灯具短手方向に沿って、灯具長手方向に並列に形成したため、LED21の光を灯具長手方向に向かわせることができる。また、アウターレンズ4に光散乱透過部材を採用したため、アウターレンズ4に入射した光を散乱させ、より均一に航空機用灯具1を発光させることができる。なお、RGBの混色発光が可能な光源を用いた場合には、温度によりRGB各電流値が各々変化するため、色バランスが崩れ、発光色の再現性が無くなるという問題もあるところ、各LED21-1~3は、各々が所定の色に発光するため、電力供給に乱れが生じやすい航空機内であっても、安定した色で照明することができる。
【0022】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 航空機用灯具
2 光源ユニット
3 インナーレンズ
4 アウターレンズ
5 灯具ボディ
6 灯室
21 LED
22 基板
31 凸部
F 焦点
d 間隔