(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117256
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20240822BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H10B43/27
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023250
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】梅田 知宙
(72)【発明者】
【氏名】神谷 優太
(72)【発明者】
【氏名】飯野 知久
(72)【発明者】
【氏名】野口 将希
(72)【発明者】
【氏名】高島 章
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕亮
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP18
5F083EP24
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP72
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083GA10
5F083JA02
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083JA39
5F083JA40
5F083PR03
5F083PR04
5F083PR05
5F083ZA28
5F101BA45
5F101BB02
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH14
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】好適なメモリセルを形成可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一の実施形態によれば、半導体装置は、複数の電極層および複数の第1絶縁膜を交互に含む積層膜と、前記複数の電極層のうちの少なくとも1つの電極層の上面、下面、および側面に設けられた第2絶縁膜とを備える。前記装置はさらに、前記第2絶縁膜の側面に第3絶縁膜を介して設けられた電荷蓄積層と、前記電荷蓄積層の側面に第4絶縁膜を介して設けられた半導体層とを備える。さらに、前記第4絶縁膜内の水素濃度は、前記電荷蓄積層内の水素濃度以上であり、前記電荷蓄積層内の水素濃度は、前記第3絶縁膜内の水素濃度以上であり、前記第3絶縁膜内の水素濃度は、前記第2絶縁膜内の水素濃度以上である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極層および複数の第1絶縁膜を交互に含む積層膜と、
前記複数の電極層のうちの少なくとも1つの電極層の上面、下面、および側面に設けられた第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜の側面に第3絶縁膜を介して設けられた電荷蓄積層と、
前記電荷蓄積層の側面に第4絶縁膜を介して設けられた半導体層とを備え、
前記第4絶縁膜内の水素濃度は、前記電荷蓄積層内の水素濃度以上であり、
前記電荷蓄積層内の水素濃度は、前記第3絶縁膜内の水素濃度以上であり、
前記第3絶縁膜内の水素濃度は、前記第2絶縁膜内の水素濃度以上である、
半導体装置。
【請求項2】
前記第2絶縁膜は、ハフニウム、アルミニウム、またはジルコニウムを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2絶縁膜は、酸素をさらに含む、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電荷蓄積層内の水素濃度は、1.0×1020atoms/cm3以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第4絶縁膜、前記電荷蓄積層、前記第3絶縁膜、および前記第2絶縁膜は、不純物原子として水素原子を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第4絶縁膜、前記電荷蓄積層、前記第3絶縁膜、および前記第2絶縁膜内の水素濃度は、前記第2絶縁膜から前記第4絶縁膜に向かう第1方向に進むにつれて増加する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
複数の第1層および複数の第1絶縁膜を交互に含む積層膜を形成し、
前記第1層の側面に第3絶縁膜を介して電荷蓄積層を形成し、
前記電荷蓄積層の側面に第4絶縁膜を介して半導体層を形成し、
前記第1層を除去して、前記積層膜内に複数の第1凹部を形成し、
前記第1凹部内に第2絶縁膜を形成し、
窒素および酸素を含む第1ガスを用いて、前記第2絶縁膜をアニールし、
前記第2絶縁膜のアニール後に、前記第1凹部内に複数の電極層を形成する、
ことを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1ガスは、窒素および酸素を含む第1分子を含む、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1分子は、水素を含まない、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1ガスは、N2Oガス、NOガス、またはNOxガスを含む(Nは窒素を表し、Oは酸素を表し、xは2以上の整数を表す)、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記アニールは、RTP(Rapid Thermal Process)である、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記アニールは、1000℃以上にて行われる、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記アニールは、前記第1ガスから生じた酸素ラジカルを用いて行われる、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記電極層は、前記第2絶縁膜のアニール後に、前記電荷蓄積層を重水素ガスを用いて処理した後に形成される、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第2絶縁膜は、ハフニウム、アルミニウム、またはジルコニウムを含むように形成される、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第2絶縁膜は、酸素をさらに含むように形成される、請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第4絶縁膜、前記電荷蓄積層、前記第3絶縁膜、および前記第2絶縁膜は、
前記第4絶縁膜内の水素濃度が、前記電荷蓄積層内の水素濃度以上となり、
前記電荷蓄積層内の水素濃度が、前記第3絶縁膜内の水素濃度以上となり、
前記第3絶縁膜内の水素濃度が、前記第2絶縁膜内の水素濃度以上となる、
ように形成される、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記電荷蓄積層は、1.0×1020atoms/cm3以下の水素濃度を有するように形成される、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記第4絶縁膜、前記電荷蓄積層、前記第3絶縁膜、および前記第2絶縁膜は、不純物原子として水素原子を含むように形成される、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記第4絶縁膜、前記電荷蓄積層、前記第3絶縁膜、および前記第2絶縁膜は、前記第4絶縁膜、前記電荷蓄積層、前記第3絶縁膜、および前記第2絶縁膜内の水素濃度が、前記第2絶縁膜から前記第4絶縁膜に向かう第1方向に進むにつれて増加するように形成される、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元半導体メモリを製造する際には、メモリセルの構造や形成方法をどのように選択するかが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開US2022/0238444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
好適なメモリセルを形成可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、半導体装置は、複数の電極層および複数の第1絶縁膜を交互に含む積層膜と、前記複数の電極層のうちの少なくとも1つの電極層の上面、下面、および側面に設けられた第2絶縁膜とを備える。前記装置はさらに、前記第2絶縁膜の側面に第3絶縁膜を介して設けられた電荷蓄積層と、前記電荷蓄積層の側面に第4絶縁膜を介して設けられた半導体層とを備える。さらに、前記第4絶縁膜内の水素濃度は、前記電荷蓄積層内の水素濃度以上であり、前記電荷蓄積層内の水素濃度は、前記第3絶縁膜内の水素濃度以上であり、前記第3絶縁膜内の水素濃度は、前記第2絶縁膜内の水素濃度以上である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の構造を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(1/4)である。
【
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(2/4)である。
【
図4】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(3/4)である。
【
図5】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(4/4)である。
【
図6】第1実施形態の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態の比較例の半導体装置の製造方法と、第1実施形態の半導体装置の製造方法とを比較するための断面図である。
【
図8】第1実施形態の半導体装置の特性を示すグラフである。
【
図9】第1実施形態の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図である。
【
図10】第1実施形態の変形例の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1~
図10において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の半導体装置の構造を示す斜視図である。本実施形態の半導体装置は、例えば3次元半導体メモリを備えている。
【0009】
本実施形態の半導体装置は、コア絶縁膜1と、チャネル半導体層2と、トンネル絶縁膜3と、電荷蓄積層4と、ブロック絶縁膜5と、電極層6とを備えている。ブロック絶縁膜5は、絶縁膜5aと、絶縁膜5bとを含んでいる。電極層6は、バリアメタル層6aと、電極材層6bとを含んでいる。トンネル絶縁膜3は、第4絶縁膜の例である。絶縁膜5aは、第3絶縁膜の例である。絶縁膜5bは、第2絶縁膜の例である。
【0010】
図1では、基板上に複数の電極層および複数の絶縁膜が交互に積層されており、これらの電極層および絶縁膜内にメモリホールH1が設けられている。
図1は、これらの電極層のうちの1つの電極層6を示している。これらの電極層は例えば、3次元半導体メモリのワード線として機能する。
図1は、基板の表面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、基板の表面に垂直なZ方向とを示している。本明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。-Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向とは一致していなくてもよい。
【0011】
コア絶縁膜1、チャネル半導体層2、トンネル絶縁膜3、電荷蓄積層4、および絶縁膜5aは、メモリホールH1内に形成されており、3次元半導体メモリのメモリセルを構成している。絶縁膜5aは、メモリホールH1内の電極層および絶縁膜の側面に形成されており、電荷蓄積層4は、絶縁膜5aの側面に形成されている。電荷蓄積層4は、3次元半導体メモリの信号電荷を蓄積することが可能である。トンネル絶縁膜3は、電荷蓄積層4の側面に形成されており、チャネル半導体層2は、トンネル絶縁膜3の側面に形成されている。チャネル半導体層2は、3次元半導体メモリのチャネルとして機能する。コア絶縁膜1は、チャネル半導体層2の側面に形成されている。
【0012】
絶縁膜5aは、例えばSiO2膜(シリコン酸化膜)である。電荷蓄積層4は、例えばSiN膜(シリコン窒化膜)である。トンネル絶縁膜3は例えば、SiON膜(シリコン酸窒化膜)である。トンネル絶縁膜3は、SiO2膜でもよい。チャネル半導体層2は、例えばポリシリコン層である。コア絶縁膜1は、例えばSiO2膜である。
【0013】
絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極材層6bは、上記複数の絶縁膜のうちの2つの絶縁膜間に形成されており、上側の絶縁膜の下面と、下側の絶縁膜の上面と、絶縁膜5aの側面とに順に形成されている。よって、絶縁膜5bは、電極層6の上面、下面、および側面に形成されており、絶縁膜5aは、絶縁膜5bの側面に形成されている。上記複数の絶縁膜は、第1絶縁膜の例である。
【0014】
絶縁膜5bは、例えばHfOx膜(ハフニウム酸化膜)である。絶縁膜5bは、AlOx膜(アルミニウム酸化膜)またはZrOx膜(ジルコニウム酸化膜)でもよい(xは正の実数を表す)。バリアメタル層6aは、例えばTiN膜(チタン窒化膜)である。電極材層6bは、例えばW(タングステン)層である。
【0015】
本実施形態のトンネル絶縁膜3、電荷蓄積層4、絶縁膜5a、絶縁膜5b等は、水素を含んでおり、例えば、不純物原子として水素原子を含んでいる。水素原子は例えば、上述のSiO2膜、SiN膜、SiON膜等を形成する際に、シリコンおよび水素を含むソースガスを用いることで、トンネル絶縁膜3、電荷蓄積層4、絶縁膜5a、絶縁膜5b等に入り込む。トンネル絶縁膜3、電荷蓄積層4、絶縁膜5a、絶縁膜5b内の水素濃度を、それぞれA3、A4、A5a、A5bとする場合、本実施形態ではA3≧A4≧A5a≧A5bの関係が成り立つ。本実施形態の電荷蓄積層4内の水素濃度A4は、例えば1.0×1020atoms/cm3以下である。本実施形態の水素濃度A3、A4、A5a、A5bのさらなる詳細については、後述する。
【0016】
図2~
図5は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0017】
まず、基板11を用意し、基板11上に、複数の犠牲層13および複数の絶縁膜14を交互に含む積層膜12を形成する(
図2)。積層膜12は、基板11上に複数の犠牲層13および複数の絶縁膜14を交互に積層することで形成される。積層膜12は、基板11上に直接形成されてもよいし、基板11上に他の層を介して形成されてもよい。基板11は例えば、Si(シリコン)基板などの半導体基板である。犠牲層13は例えば、SiN膜である。絶縁膜14は例えば、SiO
2膜である。犠牲層13は第1層の例であり、絶縁膜14は第1絶縁膜の例である。
【0018】
次に、フォトリソグラフィおよびRIE(Reactive Ion Etching)により、積層膜12内に複数のメモリホールH1を形成する(
図2)。
図2は、これらのメモリホールH1のうちの1つを示している。本実施形態の各メモリホールH1は、平面視で円形の形状を有しており、積層膜12を貫通している。
【0019】
次に、各メモリホールH1内の積層膜12の側面に、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3、チャネル半導体層2、およびコア絶縁膜1を順に形成する(
図3)。絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3、およびチャネル半導体層2は、Z方向に延びる管状の形状を有するように形成される。コア絶縁膜1は、Z方向に延びる柱状の形状を有するように形成される。
【0020】
次に、積層膜12内に複数のスリット(不図示)を形成し、これらのスリットからリン酸水溶液などの薬液により犠牲層13を除去する。その結果、積層膜12内に複数の凹部H2が形成される(
図4)。凹部H2は、第1凹部の例である。
【0021】
次に、各凹部H2内の絶縁膜5a、14の表面に、絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極材層6bを順に形成する(
図5)。その結果、絶縁膜5a、5bを含むブロック絶縁膜5が形成される。さらには、各凹部H2内に、バリアメタル層6aおよび電極材層6bを含む電極層6が形成される。さらには、基板11上に、複数の電極層6および複数の絶縁膜14を交互に含む積層膜12が形成される。このようにして、犠牲層13を電極層6に置換(リプレイス)するリプレイス工程が行われる。
【0022】
各凹部H2は、Z方向に互いに隣接する2つの絶縁膜14間に形成される。各凹部H2内では、絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極材層6bが、上側の絶縁膜14の下面、下側の絶縁膜14の上面、および絶縁膜5aの側面に順に形成される。その結果、各電極層6は、絶縁膜5bを介して絶縁膜14間に形成される。
【0023】
このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される(
図5)。
図1は、
図5に示す半導体装置の一部分を示している。
【0024】
図6は、第1実施形態の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図である。
【0025】
図6(a)は、
図5の工程で行われるRTP(Rapid Thermal Process)を示している。本実施形態では、絶縁膜5bの形成後であって、バリアメタル層6aの形成前に、RTPが行われる。本実施形態では、絶縁膜5b、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3等が、
図6(a)に示すRTPによりアニールされる。例えば、RTPの温度は1000℃以上に設定され、RTPの実施時間は180秒以下に設定される。
【0026】
図6(a)はさらに、積層膜12内に形成されたスリットH3を示している。上述のように、スリットH3は、スリットH3からリン酸水溶液などの薬液により犠牲層13を除去するために使用される。スリットH3はさらに、RTP用のガス(以下「アニールガス」と呼ぶ)を凹部H2に供給するために使用される。アニールガスは、例えばN
2Oガスである(Nは窒素、Oは酸素を表す)。アニールガスは、窒素および酸素を含むその他のガスでもよく、例えば、NOガスまたはNO
xガスでもよい(xは2以上の整数を表す)。アニールガスは、第1ガスの例である。
【0027】
アニールガスが、N2Oガス、NOガス、またはNOxガスである場合、アニールガスに含まれる分子は、N2O分子、NO分子、またはNOx分子である。これらの分子は、N原子およびO原子を含んでいるが、H(水素)原子は含んでいない。このように、本実施形態のアニールガスに含まれる分子は、N原子およびO原子を含み、H原子は含まないことが望ましい。アニールガスに含まれる分子は、第1分子の例である。
【0028】
本実施形態によれば、
図6(a)に示すRTPを行うことで、絶縁膜5a、5bの膜質を向上させることや、電荷蓄積層4内の水素濃度を低減することが可能となる。例えば、絶縁膜5a、5bの膜質を向上させることで、メモリセルへのデータ書込時のリーク電流を低減することが可能となり、書込飽和を改善することが可能となる。また、電荷蓄積層4内の水素濃度を低減することで、
図6(a)に示すように電荷蓄積層4内のダングリングボンドを増加させることが可能となり、書込効率を改善することが可能となる。RTP後の電荷蓄積層4内の水素濃度(A
4)は、例えば1.0×10
20atoms/cm
3以下である。
【0029】
また、本実施形態によれば、凹部H2に近い膜内の水素濃度を大きく低減させ、凹部H2から遠い膜内の水素濃度を小さく低減させることが可能となる。これにより、トンネル絶縁膜3、電荷蓄積層4、絶縁膜5a、絶縁膜5b内の水素濃度A3、A4、A5a、A5bに関し、A3≧A4≧A5a≧A5bの関係を実現することが可能となる。このような濃度勾配によれば、書込効率をさらに改善することが可能となる。
【0030】
図6(b)は、
図5の工程で行われるその後の処理を示している。本実施形態では、上述のRTPを行った後に、各凹部H2内にバリアメタル層6aおよび電極材層6bを順に形成する。
図6(b)では、同じ絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極層6bが、複数の凹部H2内や、これらの凹部H2に連結されたスリットH3内に存在している。その後、スリットH3内の絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極層6bは除去され、絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極層6bが凹部H2ごとに分断される。
図5は、凹部H2ごとに分断された後の絶縁膜5b、バリアメタル層6a、および電極層6bを示している。
【0031】
次に、絶縁膜5bの材料について説明する。
【0032】
絶縁膜5bは、例えばHfOx膜である。絶縁膜5bがHfOx膜である場合には、絶縁膜5bがAlOx膜である場合に比べ、メモリセルの電荷保持特性や消去特性を向上させることが可能となる。一方、絶縁膜5bがHfOx膜である場合には、絶縁膜5bがAlOx膜である場合に比べ、メモリセルの書込特性が劣化するおそれがある。
【0033】
そこで、本実施形態では、絶縁膜5b、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3等を、上述のRTPによりアニールする。これにより、メモリセルの書込飽和や書込効率を改善することで、メモリセルの書込特性の劣化の問題を解決することが可能となる。
【0034】
本実施形態のRTPによれば、絶縁膜5bがHfOx膜である場合にも、絶縁膜5bがHfOx膜以外である場合(例えばAlOx膜)にも、メモリセルの電荷保持特性や消去特性を向上させることが可能となる。ただし、本実施形態のRTPによれば、絶縁膜5bがHfOx膜である場合に、メモリセルの電荷保持特性や消去特性を向上させることが可能となるだけでなく、メモリセルの書込特性をより向上させることが可能となる。
【0035】
図7は、第1実施形態の比較例の半導体装置の製造方法と、第1実施形態の半導体装置の製造方法とを比較するための断面図である。
【0036】
図7(a)は、第1実施形態の比較例の半導体装置を製造する際に行われるRTPを示している。
図7(a)に示すRTPは、アニールガスから生じたOHラジカル(ヒドロキシルラジカル)を用いて行われている。このアニールガスは例えば、O
2ガスおよびH
2ガスを含んでいる。
【0037】
図7(b)は、
図6(a)で示したように、第1実施形態の半導体装置を製造する際に行われるRTPを示している。
図7(b)に示すRTPは、アニールガスから生じたOラジカル(酸素ラジカル)を用いて行われている。このアニールガスは例えば、N
2Oガス、NOガス、またはNO
xガスを含んでいるが、H原子を含むガスは含んでいない。
【0038】
図7(b)に示す符号Rは、絶縁膜5bの表面付近の領域を示している。Oラジカルは例えば、N
2Oガス、NOガス、またはNO
xガスが絶縁膜5bの表面付近で化学反応を起こすことで生成される。Oラジカルは、絶縁膜5b、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3等に入り込み、H原子と反応する。その結果、絶縁膜5b、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、およびトンネル絶縁膜3内のH濃度が低下する。例えば、Oラジカルは、電荷蓄積層4まで拡散し、電荷蓄積層4内のH終端を解離させ、これにより電荷蓄積層4内のH濃度を低下させる。
【0039】
なお、
図7(b)に示す工程では、RTPを行った後に、絶縁膜5b、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3等を重水素(D
2)ガスを用いて処理してもよい。これにより、電荷蓄積層4等のダングリングボンドを重水素で終端させることが可能となる。
【0040】
図8は、第1実施形態の半導体装置の特性を示すグラフである。
【0041】
図8(a)および
図8(b)の各々は、X方向に延びる直線上における、絶縁膜5b、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3、およびチャネル半導体層2内のH濃度を示している。ただし、この直線は、
図1や
図5に示すメモリホールH1の中心軸上の点を通過している。すなわち、この直線は、メモリホールH1の中心軸の放射方向に平行に延びている。
図8(a)および
図8(b)の各々は、X方向に延びる直線上の個々の点における局所的なH濃度を示している。X方向は、第1方向の例である。
【0042】
図8(a)および
図8(b)に示す線C1は、RTPを行う前のH濃度を示している。
図8(a)に示す線C2は、RTPを行った後のH濃度を示している。
図8(b)に示す線C3も、RTPを行った後のH濃度を示している。本実施形態のRTPによれば、線C2ではなく線C3で示すH濃度を実現することが可能となる。
【0043】
図8(b)に示す例では、線C1で示すH濃度、すなわち、RTPを行う前のH濃度は、絶縁膜5b、絶縁膜5a、電荷蓄積層4、トンネル絶縁膜3、およびチャネル半導体層2内でほぼ一定である。線C1上のH濃度は、例えば1.0×10
21atoms/cm
3以上である。
【0044】
一方、線C3で示すH濃度、すなわち、RTPを行った後のH濃度は、X方向に進むにつれて増加している。理由は、本実施形態のRTPが、凹部H2に近い位置のH濃度を大きく低減させ、凹部H2から遠い位置の水素濃度を小さく低減させるからである。線C3は、Xが増加するとH濃度が増加する単調増加関数となっている。線C3上では、トンネル絶縁膜3内のある箇所のH濃度A3と、電荷蓄積層4内のある箇所のH濃度A4と、絶縁膜5a内のある箇所のH濃度A5aと、絶縁膜5b内のある箇所のH濃度A5bとの間に、A3≧A4≧A5a≧A5bの関係が成り立っている。このような濃度勾配によれば、メモリセルの書込効率を改善することが可能となる。なお、線C3は、A3≧A4≧A5a≧A5bの関係が成り立つ直線となっているが、代わりにA3≧A4≧A5a≧A5bの関係が成り立つ曲線となっていてもよい。
【0045】
線C3上では、電荷蓄積層4内のすべての箇所の水素濃度A4が、1.0×1020atoms/cm3以下となっていてもよいし、電荷蓄積層4内の一部の箇所の水素濃度A4のみが、1.0×1020atoms/cm3以下となっていてもよい。例えば、電荷蓄積層4内の水素濃度A4の平均が、1.0×1020atoms/cm3以下となっていてもよい。本実施形態では、電荷蓄積層4内のすべての箇所の水素濃度A4が、1.0×1020atoms/cm3以下となっていることが望ましい。
【0046】
図9は、第1実施形態の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図である。
【0047】
図9(a)および
図9(b)は、
図6(a)および
図6(b)と同様に、
図5に示す工程を示している。まず、スリットH3および凹部H2内に絶縁膜5bを形成し、その後にRTPを行う(
図9(a))。次に、スリットH3および凹部H2内にバリアメタル層6aおよび電極材層6bを順に形成し、スリットH3から電極材層6b、バリアメタル層6a、および絶縁膜5bを除去し、スリットH3内に絶縁膜21を形成する(
図9(b))。このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0048】
なお、スリットH3は、絶縁膜21のみで埋められてもよいし、絶縁膜21および配線層で埋められてもよい。これにより、スリットH3内に配線(例えばゲート線)を設けることが可能となる。
【0049】
図10は、第1実施形態の変形例の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図である。
【0050】
図10(a)および
図10(b)の工程はそれぞれ、
図9(a)および
図9(b)の工程と同様に行われる。ただし、
図10(b)の工程では、バリアメタル層6aが形成されない。このように、バリアメタル層6aを形成する工程は、省略してもよい。
【0051】
なお、
図9(b)または
図10(b)の電極材層6bは、W層以外の金属層でもよく、例えばMo(モリブデン)層でもよい。また、
図9(b)のバリアメタル層6aは、TiN膜以外の金属層でもよく、例えば、TiN膜以外のチタン含有膜でもよいし、チタン以外の金属元素(例えばタンタル)を含有する膜でもよい。
【0052】
以上のように、本実施形態では、トンネル絶縁膜3内のH濃度A3と、電荷蓄積層4内のH濃度A4と、絶縁膜5a内H濃度A5aと、絶縁膜5b内のH濃度A5bとの間に、A3≧A4≧A5a≧A5bの関係が成り立っている。よって、本実施形態によれば、好適な特性を有するメモリセルを形成することが可能となる。例えば、A3≧A4≧A5a≧A5bの関係を実現することで、メモリセルの書込飽和や書込効率を改善することが可能となる。また、本実施形態によれば、窒素および酸素を含むガス(例えばN2Oガス)を用いてRTPを行うことで、A3≧A4≧A5a≧A5bの関係を実現することが可能となる。
【0053】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0054】
1:コア絶縁膜、2:チャネル半導体層、3:トンネル絶縁膜、
4:電荷蓄積層、5:ブロック絶縁膜、5a:絶縁膜、5b:絶縁膜、
6:電極層、6a:バリアメタル層、6b:電極材層、
11:基板、12:積層膜、13:犠牲層、14:絶縁膜、21:絶縁膜