(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117260
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】針貫入試験システム、制御装置、及び針貫入試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/40 20060101AFI20240822BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01N3/40 B
E02D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023258
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真貴子
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AC03
2D043BA08
2D043BB02
(57)【要約】
【課題】針貫入試験の作業効率の低下を防止する針貫入試験システム、制御装置、及び針貫入試験方法を提案する。
【解決手段】本発明は、改良地盤の測定孔2に進入する針貫入試験装置4、及び針貫入試験装置4を制御する制御装置5を備えており、制御装置5は、針貫入試験装置4の貫入針42に作用する貫入荷重を測定する測定部52と、測定された貫入荷重に基づいて貫入針42の破損を判定する判定部53と、貫入針42が破損したと判定部53が判定した場合、貫入針42の破損を報知する回転灯55と、を備える針貫入試験システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良地盤の測定孔に進入する針貫入試験装置、及び前記針貫入試験装置を制御する制御装置を備えており、
前記制御装置は、
前記針貫入試験装置の貫入針に作用する貫入荷重を測定する測定部と、
前記測定された貫入荷重に基づいて前記貫入針の破損を判定する判定部と、
前記貫入針が破損したと前記判定部が判定した場合、前記貫入針の破損を報知する報知部と、を備える針貫入試験システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記貫入針が破損したと前記判定部が判定した場合、針貫入試験を停止する請求項1に記載の針貫入試験システム。
【請求項3】
多点測定を行う場合、
前記貫入針の貫入長さの変化に対して前記貫入荷重が一定値を示すとき、前記判定部は、前記貫入針が破損したと判定し、
前記貫入針の交換後、前記測定部は、前記貫入針が破損したと判定したときの測定の1段階前の測定を再開する請求項1又は請求項2に記載の針貫入試験システム。
【請求項4】
改良地盤の測定孔に進入する針貫入試験装置の貫入針に作用する貫入荷重を測定する測定部と、
前記測定された貫入荷重に基づいて前記貫入針の破損を判定する判定部と、
前記貫入針が破損したと前記判定部が判定した場合、前記貫入針の破損を報知する報知部と、を備える制御装置。
【請求項5】
改良地盤の測定孔に進入する針貫入試験装置を制御する制御装置が、
前記針貫入試験装置の貫入針に作用する貫入荷重を測定する測定ステップと、
前記測定された貫入荷重に基づいて前記貫入針の破損を判定する判定ステップと、
前記貫入針が破損したと前記判定ステップで判定した場合、前記貫入針の破損を報知する報知ステップと、を備える測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針貫入試験システム、制御装置、及び針貫入試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤に固化材等を混合してなる改良地盤について、所望の品質を確保していることを確認するために品質評価試験を行う場合がある。改良地盤に関する品質評価試験の方法としては、施工時に採取した試料を室内で養生した後、所定の材齢で強度試験を行う方法や、施工後に原位置から試料を採取して強度試験を行う方法等がある。なお、供試体等の一軸圧縮強度を測定する方法として、非特許文献1には、地盤等の強度を簡易に確認できる針貫入試験が開示されている。針貫入試験は、地盤等に貫入針を貫入し、貫入長さLと針貫入時の荷重Pを測定し、針貫入長さに対する荷重Pの比率である針貫入勾配Np(=P/L)を求め、この針貫入勾配から一軸圧縮強さを推定するものである。
室内で養生した試料に対して強度試験を行う方法は、養生条件の違いから原位置の改良体とは品質に差が生じることを考慮する必要がある。また、原位置で供試体を採取する場合には、所定の材齢毎に所定の深さ位置から供試体を採取する必要があるため、供試体の採取に手間がかかるとともに、供試体の運搬や取り扱いに手間がかかる。
そのため、本出願人は、特許文献1において、改良地盤に対して原位置において強度試験を行う方法として、改良地盤中に形成した測定孔に試験装置を進入させて、試験装置から孔壁に向けてロッドを貫入させた際の貫入抵抗や貫入量により改良地盤の強度を測定する方法を開示している。特許文献1の試験装置は、測定孔を上下動することで、異なる深度における測定を可能としている。
測定孔内での針貫入試験中、高強度部や礫との接触により貫入針が破損する場合がある。針貫入試験の測定を多点測定とした場合、度重なる測定により貫入針が破損する可能性は上昇する。しかし、貫入針の破損に気づかないまま測定を続けてしまうことがある。その結果、正確な測定データを得られず、測定のやり直しなどの手戻りが生じてしまい、針貫入試験の作業効率が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】地盤工学会基準、基準番号:JGS3431-2012、規格・基準名:針貫入試験方法
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、針貫入試験の作業効率の低下を防止する針貫入試験システム、制御装置、及び針貫入試験方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、改良地盤の測定孔に進入する針貫入試験装置、及び前記針貫入試験装置を制御する制御装置を備えており、前記制御装置は、前記針貫入試験装置の貫入針に作用する貫入荷重を測定する測定部と、前記測定された貫入荷重に基づいて前記貫入針の破損を判定する判定部と、前記貫入針が破損したと前記判定部が判定した場合、前記貫入針の破損を報知する報知部と、を備える針貫入試験システムである。
また、本発明は、改良地盤の測定孔に進入する針貫入試験装置の貫入針に作用する貫入荷重を測定する測定部と、前記測定された貫入荷重に基づいて前記貫入針の破損を判定する判定部と、前記貫入針が破損したと前記判定部が判定した場合、前記貫入針の破損を報知する報知部と、を備える制御装置である。
また、本発明は、改良地盤の測定孔に進入する針貫入試験装置を制御する制御装置が、前記針貫入試験装置の貫入針に作用する貫入荷重を測定する測定ステップと、前記測定された貫入荷重に基づいて前記貫入針の破損を判定する判定ステップと、前記貫入針が破損したと前記判定ステップで判定した場合、前記貫入針の破損を報知する報知ステップと、を備える測定方法である。
【0007】
これにより、作業員は、報知部からの報知によって、貫入針が破損したことを認識できるため、貫入針の破損後に遅滞なく貫入針を交換することができる。このため、引き続き正確な測定データを得ることができ、ひいては、測定のやり直しなどの手戻りを回避でき、針貫入試験の作業効率の低下を防止することができる。特に、制御装置に対して測定開始の操作をすれば針貫入試験を自動的に行う仕組みが導入されている場合、無人で針貫入試験を進行させることができる。つまり、作業員は、報知部からの報知があるまで別の作業に取り組むことができるため、作業効率の向上を期待できる。
【0008】
また、前記制御装置は、前記貫入針が破損したと前記判定部が判定した場合、針貫入試験を停止することが好ましい。
【0009】
これにより、破損した貫入針による無用な測定を回避できる。
【0010】
また、多点測定を行う場合、前記貫入針の貫入長さの変化に対して前記貫入荷重が一定値を示すとき、前記判定部は、前記貫入針が破損したと判定し、前記貫入針の交換後、前記測定部は、前記貫入針が破損したと判定したときの測定の1段階前の測定を再開することが好ましい。
【0011】
これにより、貫入針の破損を明確に示すことができるとともに、貫入針の破損タイミングを推定できる。よって、貫入針が破損したと推定されるときの測定から再開することで、引き続き正確な測定データを得ることができ、測定のやり直しなどの手戻りを回避でき、針貫入試験の作業効率の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、針貫入試験の作業効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の針貫入試験システムの概要図である。
【
図2】貫入長さと貫入荷重との関係を示すグラフ(1)である。
【
図3】貫入長さと貫入荷重との関係を示すグラフ(2)である。
【
図4】貫入長さと貫入荷重との関係を示すグラフ(3)である。
【
図5】本実施形態の測定方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
[改良地盤品質評価方法]
まず、本実施形態の針貫入試験システムを用いた改良地盤品質評価方法について説明する。また、本実施形態では、セメント改良地盤に対して、原位置にて材齢変化と強度特性を検証する場合について説明する。改良地盤品質評価方法として、削孔工程、貫入試験工程、及び強度推定工程が行われる。削孔工程は、セメント改良地盤1に測定孔2を形成する工程である。削孔工程では、セメント改良地盤1に薄肉パイプを挿入するパイプ挿入作業と、薄肉パイプを引き抜くことにより測定孔2を形成するパイプ引抜作業とを行う。パイプ挿入作業では、地盤改良後のセメント改良土が硬化する前(強度発現前)に、薄肉パイプをセメント改良地盤1に挿入する(押し込む)。このとき、薄肉パイプ内には、未固結のセメント改良土が入り込む。複数本の薄肉パイプを間隔をあけてセメント改良地盤に挿入してもよい。パイプ引抜作業では、セメント改良土が自立可能な強度(薄肉パイプを撤去しても測定孔2の孔壁21が崩落しない程度の強度)に至った段階で、薄肉パイプを引き抜く。このとき、薄肉パイプ内のセメント改良土が薄肉パイプとともに引き上げられる。薄肉パイプを引き抜くことで、セメント改良地盤1に薄肉パイプの外径と同等の直径の測定孔2が形成される。
図1は、本実施形態の針貫入試験システムの概要図であるが、
図1には、セメント改良地盤1に測定孔2が形成された様子が示されている。
【0016】
貫入試験工程は、測定孔2の孔壁21に対して針貫入試験を行う工程である。
図1に貫入試験工程の施工状況を示す。本実施形態では、測定孔2に進入させた針貫入試験装置4を、測定孔2内において縦軸(すなわち測定孔2の中心軸)を中心に回転させるとともに上下動させることで、測定孔2に対して周方向に複数個所の測定を深度方向に複数段行う(多点測定)。例えば、3本の測定孔2を形成し、3日,7日,14日材齢にて、それぞれ水平方向(周方向)に5点、深さ方向(深度方向)に5段(1本の測定孔2につき25点)で針貫入試験を行うことができる。
強度推定工程は、針貫入試験のデータに基づいてセメント改良地盤の強度を推定する工程である。
【0017】
[針貫入試験システム]
本実施形態の針貫入システムは、
図1に示すように、針貫入試験装置4と、吊り下げ装置45と、制御装置5とを備えている。制御装置5は、吊り下げ装置45の構成要素として扱うが、吊り下げ装置45とは別装置としてもよい。
本実施形態の針貫入試験装置4は、
図1に示すように、筐体41と、測定孔2の孔壁21に向けて進退可能となるように筐体41に設けられた貫入針42と、測定孔2の周方向に回動可能となるように筐体41に支持された回転ホイール43と、筐体41に対して進退可能あるいは回動可能な反力アーム44と、筐体41に設けられた方位センサ46と、動力源47と、ビデオサーバ48とカメラ49とを備えている。
【0018】
筐体41は、上端及び下端が遮蔽された中空の筒状部材からなる。筐体41には、貫入針42、反力アーム44、方位センサ46、動力源47、ビデオサーバ48およびカメラ49が収納されている。筐体41の中心部には、各装置を固定するための棒状または壁状の固定部41bが形成されている。また、筐体41には、内外に貫通する開口41aが貫入針42と反力アーム44の位置に対応して2箇所に形成されている。
貫入針42は、開口41aに面した状態で筐体41の下部に設けられている。貫入針42は、固定部41bに固定された基部42aに対して進退可能である。貫入針42は、図示せぬ針貫入用モーターにより、筐体41の中心軸に対して直交する方向(すなわち測定孔2の径方向)に進出することで、開口41aから孔壁21に向かって突出する。本実施形態では、貫入針42の近傍にカメラ(CCDカメラ)49が設けられていて、貫入針42の進退方向を撮影可能に構成されている。カメラ49により撮影された画像は、通信ケーブル45eを介して、ビデオサーバ48を介して測定孔2の外に設けられた制御装置5に送信される。針貫入用モーター、カメラ49は動力源47から供給された電力により作動する。
【0019】
筐体41の上部には、複数の回転ホイール43が設けられている。回転ホイール43は、筐体41の外面よりも外側に張り出している、あるいは、筐体41に対して側方に進退可能に設けられていて、孔壁21に当接可能である。回転ホイール43は、ホイール用モーター(図示せず)の回転力により縦軸を中心に水平に回転する。ホイール用モーターは、動力源47から供給された動力(電力)により回転する。回転ホイール43が、測定孔2の孔壁21面を走行することで筐体41が縦軸を中心に回転する。
反力アーム44は、貫入針42の上方に設けられている。反力アーム44は、固定部41bに固定されたアーム基部44aに対して回動可能に取り付けられている。反力アーム44は、アーム用モーター(図示せず)の動力により回動することで、開口41aから筐体41の外側に突出して、孔壁21に当接する。筐体41は、反力アーム44を孔壁21に押し当てることで測定孔2に固定される。アーム用モーターは、動力源47から供給された動力(電力)により駆動する)。
【0020】
吊り下げ装置45は、測定孔2の孔口に設けられていて、筐体41を吊持している。吊り下げ装置45は、例えば、筐体41に取り付けられたワイヤー45aと、ワイヤー45aが巻きつけられるリール45bと、リール45bに回転力を付与するモーター45cと、リール45bおよびモーター45cを支持する架台45dと、筐体41および制御装置5を電気的に接続する通信ケーブル45eと、通信ケーブル45eが巻きつけられるリール45fと、リール45fを支持する架台45gにより構成されている。モーター45cの動力によりリール45bを回転させることで、リール45bに巻き付けられたワイヤー45aの巻き取りおよび送り出しを行う。また、モーター45cの動力によりリール45fも回転することで、リール45fに巻き付けられた通信ケーブル45eの巻き取りおよび送り出しを行う。これらに伴って筐体41が測定孔2内において上下動する。
方位センサ46は、筐体41(貫入針42)の向きを測定する。本実施形態では、方位センサ46の測定結果に基づいて、回転ホイール43を制御することで、筐体41を測定孔2内において縦軸を中心に回転させる。
【0021】
貫入試験工程では、筐体41を測定孔2に挿入し、吊り下げ装置45を利用して測定孔2内の所定の深さまで筐体41を下降させる。筐体41が所定の深さに到達したら、回転ホイール43を利用して、貫入針42の位置が方位0度になるように、筐体41の向きを調整する。筐体41の方位調整が完了したら、反力アーム44を孔壁21に押し当てることで、筐体41を測定孔2内に固定する。反力アーム44を孔壁21に押し当てると、反力アーム44とは反対側において筐体41の側面が孔壁21に当接する。筐体41を固定したら、貫入針42を孔壁21に向けて突出させて、針貫入試験(貫入力、貫入量等の測定)を行う。測定後、反力アーム44による固定を解除するとともに、同一深さにおいて回転ホイール43を操作して、筐体41を所定量(本実施形態では72°)回転させる。筐体41を回転させたら、反力アーム44を利用して筐体を固定し、針貫入試験を実施する。同様に筐体41の回転および針貫入試験を複数回実施する。同一深さにおいて所定回数(本実施形態では5回)の針貫入試験を実施したら、吊り下げ装置45を操作して、筐体41を所定深度(本実施形態では20mm)下降させる。筐体41を下降させたら、針貫入試験および筐体41の回転を複数回実施する。同様の作業を必要深度まで繰り返す。
測定データは、通信ケーブル45eを介して、測定孔2の外に設けられた制御装置5に送信される。
【0022】
貫入試験工程は、同一の測定孔2に対して、所定材齢毎に複数回実施する。例えば、規定の強度評価材齢に至る前段階のセメント改良地盤1の養生期間中に針貫入試験を開始するものとし、3日材齢、7日材齢、14日材齢において貫入試験工程を実施する。また、各材齢において、同一深さにおいて、異なる方位に対して針貫入試験を行う。すなわち、3日材齢において、方位0°で針貫入試験を開始した場合には、7日材齢では方位24°から針貫入試験を開始し、14日材齢では方位48°から針貫入試験を開始することで、材齢毎の針貫入位置が重ならないようにする。測定孔2の直径約115mmである場合、周方向間隔24mm、深度間隔20mmとなる。なお、貫入針42の測定位置をカメラ49で撮影することで、針貫入試験の位置が、以前(前の材齢)の測定位置と重ならないことを確認するのが望ましい。なお、カメラ49とともに、カメラ49の撮影方向に光を照射する照明手段を有しているのが望ましい。
【0023】
制御装置5は、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備えている。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータに含まれる記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供可能となる。
【0024】
図1に示すように、制御装置5は、駆動制御部51と、測定部52と、判定部53と、タッチパネル54と、回転灯55を備えている。駆動制御部51は、針貫入試験装置4の各構成要素の動作および制御装置5の各構成要素の動作を制御する。測定部52は、針貫入試験装置4の貫入針42に作用する貫入荷重を測定する。判定部53は、測定部52によって測定された貫入荷重に基づいて貫入針42の破損を判定する。駆動制御部51と、測定部52と、判定部53は、制御装置5の制御部として機能する。タッチパネル54は、情報(ユーザからのコマンド含む)の入力および表示をする。タッチパネル54は、制御装置5の入力部および出力部として機能する。回転灯55は、貫入針が破損したと判定部53が判定した場合、貫入針42の破損を報知する報知部である。
なお、本実施形態の針貫入システムによる針貫入試験は自動制御で行う。つまり、作業員は、タッチパネル54を介して制御装置5に対し、針貫入試験の開始要求をすると、測定部52による測定などの針貫入試験に関する各種処理は自動で進行する。作業員は、セメント改良地盤から離れた場所で作業を行うこととし、針貫入試験の監視のために制御装置5の傍に常駐するわけではない。
【0025】
[測定の概要]
針貫入試験において、測定部52は、貫入針42を孔壁21に向けて突出させたときの貫入長さ(貫入量)を測定できる。また、測定部52は、貫入針42に作用する貫入荷重(貫入力)を測定できる。
測定部52は、多点測定(25点)の各点において、貫入長さ(mm)と貫入荷重(N)を取得できる。制御装置5は、多点測定の各点の測定位置と測定順番の対応関係を記憶する。例えば、25点の測定(周方向5点×深度方向5点)のうち11番目の測定である場合、「No.11」と記憶する。
なお、
図2、
図3、
図4は、記録した測定データを別PCに取り込んで作成したグラフである。
強度推定工程において、制御装置5は、測定した貫入荷重を用いてセメント改良地盤の強度を計算できる。セメント改良地盤の強度の計算方法は既知であり、詳細な説明は省略する。
【0026】
[貫入針の破損の判定]
制御装置5で記憶した貫入長さと貫入荷重との関係で、入針42の貫入中、何らかの原因で貫入針42が折れた場合、
図3のように示される貫入長さの増大に対して正比例で増大していた貫入荷重の急降下を観測できる。貫入針42が折れた場合、測定を継続しても不正確な測定データしか得られないため、貫入針42を交換することが好ましい。なお、貫入針42の交換は、筐体41を原位置にまで引き上げた後、新しい貫入針42を基部42aに取り付け、筐体41を元の測定位置にまで下降するという手順をとる。しかし、測定の性質上、貫入荷重の急降下を観測した場合であっても、貫入針42が折れていない場合がある。この場合は、貫入針42を交換せずに測定を継続することが、作業効率の観点から好ましい。このため、判定部53は、貫入荷重の急降下を以って、貫入針42が破損したと判定しない。
【0027】
本実施形態では、多点測定のうちの特定の測定を開始した場合において、貫入針42の貫入長さの変化に対して貫入荷重が一定値を示すとき(貫入荷重の定常化)、判定部53は、貫入針42が破損したと判定する。例えば、貫入長さと貫入荷重との関係で、13番目の測定位置(「No.13」)で測定部52が測定を開始し、折れた貫入針42を孔壁21に向けて突出させた場合、
図4のように示され、貫入長さが増大しても貫入荷重が増大せず、貫入荷重の定常化を観測できる。貫入荷重の定常化は、貫入針42の破損の十分な根拠となり得る。判定部53は、貫入荷重の定常化を以って、貫入針42が破損したと判定する。貫入針42が破損したと判定部53が判定した場合、回転灯55は、貫入針42の破損を報知(点灯)する。作業員は、回転灯55からの報知によって、貫入針42が破損したことを認識できるため、貫入針42の破損後に遅滞なく貫入針42を交換することができる。なお、制御装置5は、貫入針42が破損したと判定部53が判定した場合、針貫入試験を停止することが好ましい。これにより、破損した貫入針42による無用な測定を回避できる。
【0028】
貫入針42を交換した後、測定部52による測定を再開する。例えば、ば、貫入荷重の定常化は、13番目の測定位置(「No.13」)で観測できたため、貫入針42が実際に折れたタイミングは、1段階前の測定時、つまり、12番目の測定位置(「No.12」)での測定時である可能性が極めて高い。このため、12番目の測定位置(「No.12」)での測定データは不正確と捉えることが好ましい。そこで、測定部52は、1段階前である12番目の測定位置(「No.12」)での測定を再開する。このようにして、貫入針42の破損を明確に示すことができるとともに、貫入針42の破損タイミングを推定できる。よって、貫入針が破損したと推定されるときの測定から再開することで、引き続き正確な測定データを得ることができ、測定のやり直しなどの手戻りを回避でき、針貫入試験の作業効率の低下を防止することができる。
全点(25点)での測定が完了した場合、回転灯55は、測定完了を報知する。作業員は、吊り下げ装置45により筐体41を引き上げて測定を終了する。
【0029】
[測定方法]
図5は、本実施形態の測定方法のフローチャートである。測定方法の詳細について説明する。まず、制御装置5は、タッチパネル54を介した作業員の入力から位置設定情報を取得する(ステップS1)。位置設定情報は、測定孔2に内在する筐体41の位置関係を示す情報であり、例えば、筐体41に退避した貫入針42の先端部と孔壁21との距離を設定する情報である。次に、制御装置5は、タッチパネル54を介した作業員の入力から測定条件を取得する(ステップS2)。測定条件は、例えば、多点測定(例:25(=5×5)点測定)における深度方向の測定間隔、多点測定における周方向の測定間隔、測定孔2の軸長から決定される測定範囲を示す測定全長を含む。測定全長は複数種類の異なる材齢の測定データを取得したいときに参考にする情報である。次に、制御装置5は、タッチパネル54を介した作業員の入力から測定開始要求を取得する(ステップS3)。制御装置5は、測定開始要求に従い、多点測定の処理を全点完了するまで自動的に開始する。
【0030】
次に、制御装置5の駆動制御部51は、多点測定の順番に応じた目的の測定位置に貫入針42が到達するように筐体41を深度方向に降下させる(ステップS4)。次に、制御装置5の駆動制御部51は、多点測定の順番に応じた目的の測定位置に貫入針42が到達するように筐体41を周方向に回転させる(ステップS5)。次に、制御装置5の駆動制御部51は、反力アーム44を孔壁21に押し当て筐体41を測定孔2内に固定する(ステップS6)。次に、制御装置5の測定部52は、目的の測定位置に貫入針42を貫入して測定データ、具体的には、貫入長さと貫入荷重を取得する(ステップS7)。
【0031】
測定データの取得の際、制御装置5の判定部53は、貫入荷重の定常化があったか否かを判定する(ステップS8)。貫入荷重の定常化が無かった場合(ステップS8でNo)、判定部53は、貫入針42の破損が無かったと判定し、針貫入試験を継続する。制御装置5の駆動制御部51は、反力アーム44を孔壁21から離脱させ、筐体41の固定を解除する(ステップS9)。次に、制御装置5は、周方向の測定をすべて完了したか否か判定する(ステップS10)。具体的には、同じ深度方向において、周方向5点分の測定が完了したか否か判定する。すべて完了していない場合(ステップS10でNo)、ステップS5に戻って、制御装置5の駆動制御部51は、次の順番の測定位置に貫入針42が到達するように筐体41を周方向に回転させ、以降の処理を進める。一方、すべて完了した場合(ステップS10でYes)、制御装置5は、深度方向の測定をすべて完了したか否か判定する(ステップS11)。具体的には、深度方向5行分の測定が完了したか否か判定する。すべて完了していない場合(ステップS11でNo)、ステップS4に戻って、制御装置5の駆動制御部51は、次の順番の測定位置に貫入針42が到達するように筐体41を深度方向に降下させ、以降の処理を進める。一方、すべて完了した場合(ステップS11でYes)、多点測定が完了したことになる。制御装置5は、回転灯55を点灯させ(ステップS12)、セメント改良地盤から離れた場所で作業を行っている作業員に測定完了を報知する。これにより、
図5の処理が終了する。
【0032】
また、貫入荷重の定常化があった場合(ステップS8でYes)、制御装置5は、回転灯55を点灯させ(ステップS13)、測定位置から離れた場所で作業を行っている作業員に貫入針42の破損を報知する。次に、制御装置5は、針交換処理を行う(ステップS14)。具体的には、制御装置5は、針貫入試験を停止する。また、制御装置5の駆動制御部51は、タッチパネル54を介した作業員の入力に従い、又は自動的に筐体41を引き上げる。また、制御装置5は、タッチパネル54を介して作業員に対して貫入針42の交換を促す表示や、新しい貫入針42が基部42aに取り付け完了した表示を行ってもよい。次に、制御装置5は、測定再開処理を行う(ステップS15)。具体的には、制御装置5の駆動制御部51は、貫入荷重の定常化があった測定の1段階前の測定の測定位置に貫入針42が到達するように筐体41を移動させる。また、制御装置5の測定部52は、筐体41を固定し、1段階前の測定位置(または、当該測定位置から所定量ずらした未貫入の位置でもよい)に貫入針42を貫入して測定データを取得する。その後、ステップS8に進み、以降の処理を続けることで、
図5の処理が終了する。
【0033】
本実施形態によれば、作業員は、回転灯55からの報知によって、貫入針42が破損したことを認識できるため、貫入針42の破損後に遅滞なく貫入針42を交換することができる。このため、引き続き正確な測定データを得ることができ、ひいては、測定のやり直しなどの手戻りを回避でき、針貫入試験の作業効率の低下を防止することができる。特に、制御装置5に対して測定開始の操作をすれば針貫入試験を自動的に行う仕組みが導入されている場合、無人で針貫入試験を進行させることができる。つまり、作業員は、回転灯55からの報知があるまで別の作業に取り組むことができるため、作業効率の向上を期待できる。
【0034】
[変形例]
(a):回転灯55による点灯報知に代えて、スピーカ等の音報知でもよい。また、制御装置5と通信可能なウェアラブル端末を作業員に装着させ、判定部53による貫入針42の破損や全測定完了をウェアラブル端末に表示する態様で作業員に報知してもよい。ウェアラブル端末を用いる場合、測定の進捗状況(例えば、何番目の測定位置を測定中であるか)や、全測定完了の予想時刻などを作業員に報知してもよい。また、カメラ49の撮影画像、つまり、測定孔2の内部の画像をウェアラブル端末に表示してもよい。
(b):本実施形態では、針貫入試験による測定を全自動で行う場合について説明したが、本発明は、針貫入試験による測定の一部または全部を手動で行う場合に適用することを妨げない。
【0035】
(c):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(d):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(e):その他、ハードウェア、ソフトウェア、フローチャートなどについて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 セメント改良地盤
2 測定孔
21 孔壁
4 針貫入試験装置
41 筐体
41a 開口
41b 固定部
42 貫入針
42a 基部
43 回転ホイール
44 反力アーム
44a アーム基部
45 吊り下げ装置
45a ワイヤー
45b リール
45c モーター
45d 架台
45e 通信ケーブル
45f リール
45g 架台
46 方位センサ
47 動力源
48 ビデオサーバ
49 カメラ
5 制御装置
51 駆動制御部
52 測定部
53 判定部
54 タッチパネル
55 回転灯(報知部)