(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117261
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】駆動回路装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/08 20060101AFI20240822BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20240822BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H03K17/08 C
H03K17/687 A
H03K17/082
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023259
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】志村 裕之
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX12
5J055AX44
5J055AX52
5J055AX64
5J055BX16
5J055DX09
5J055DX13
5J055DX52
5J055EX06
5J055EX07
5J055EX12
5J055EY01
5J055EZ10
5J055FX04
5J055FX08
5J055FX13
5J055FX19
5J055GX01
5J055GX02
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で、選定されるスイッチング素子の特性に応じた設計を容易とする駆動回路装置を提供する。
【解決手段】駆動回路装置1は、スイッチング素子SWの下流側に接続される電流検出用抵抗素子70と、電流検出用抵抗素子70の電圧を検出する電圧検出部80とを備える。そのため、スイッチング素子SWに大電流である短絡電流が流れると、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rにより、スイッチング素子SWのソース電圧が上昇する。この場合、スイッチング素子SWのゲード電圧Vgsが見かけ上小さくなり、スイッチング素子SWに対して電流制限がかかる。従って、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rとスイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧Vgsを調整することで、所望の態様にて電流制限をかけることが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力供給を切り換えるスイッチング素子を駆動させる駆動回路装置であって、
前記スイッチング素子の開閉を切り換える制御を行う駆動制御部と、
前記スイッチング素子の下流側に接続される電流検出用抵抗素子と、
前記電流検出用抵抗素子の電圧を検出する電圧検出部と、
前記スイッチング素子のゲート-ソース間電圧を調整する通電状態切替部と、を備え、
短絡電流が流れる場合に、
前記電流検出用抵抗素子の抵抗値によって生じる電圧により前記スイッチング素子のソース電圧を上昇させつつ、
前記通電状態切替部によって前記スイッチング素子の前記ゲート-ソース間電圧を調整することで、前記スイッチング素子の導通が抑制される、駆動回路装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子のゲートに印加される電圧をVccとし、前記スイッチング素子をオン状態にするときの前記ゲート-ソース間電圧をVgsとし、前記ゲート-ソース間電圧Vgsの閾値電圧Vth(SW)をとし、前記電流検出用抵抗素子の抵抗値をRとし、前記短絡電流をAshortとした場合、式(1)(2)となるように、前記電流検出用抵抗素子の抵抗値が設定されている、請求項1に記載の駆動回路装置。
Vcc - Vth(SW) = R × Ashort …(1)
Vgs≧Vth(SW) …(2)
【請求項3】
産業車両に搭載され、電磁ブレーキ用リレーを駆動させるための、請求項1に記載の駆動回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源からの電力供給を切り換えるスイッチング素子を駆動させる駆動回路装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された駆動回路装置は、短絡を検出する短絡検出回路と、スイッチング素子に流れる電流を制限するクランプ回路と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クランプ回路は、抵抗素子と、クランプ制御スイッチと、ダイオードと、を備える。適切な電流制限を行うためには、これらの部品の選定が必要となり、部品点数の抑制が求められていた。また、短絡検出回路のスイッチのオン・オフのタイミングは、スイッチング素子のゲート-ソース間電圧を調整するためのスイッチ及び抵抗等のばらつきを考慮して決める必要があるため、調整が困難であるという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、簡素な構成で、選定されるスイッチング素子の特性に応じた設計を容易とする駆動回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る駆動回路装置は、電源からの電力供給を切り換えるスイッチング素子を駆動させる駆動回路装置であって、スイッチング素子の開閉を切り換える制御を行う駆動制御部と、スイッチング素子の下流側に接続される電流検出用抵抗素子と、電流検出用抵抗素子の電圧を検出する電圧検出部と、スイッチング素子のゲート-ソース間電圧を調整する通電状態切替部と、を備え、短絡電流が流れる場合に、電流検出用抵抗素子の抵抗値によって生じる電圧によりスイッチング素子のソース電圧を上昇させつつ、通電状態切替部によってスイッチング素子の前記ゲート-ソース間電圧を調整することで、前記スイッチング素子の導通が抑制される。
【0007】
駆動回路装置は、スイッチング素子の下流側に接続される電流検出用抵抗素子と、電流検出用抵抗素子の電圧を検出する電圧検出部とを備える。そのため、スイッチング素子に大電流である短絡電流が流れると、電流検出用抵抗素子の抵抗値により、スイッチング素子のソース電圧が上昇する。この場合、スイッチング素子のゲード電圧が見かけ上小さくなり、スイッチング素子に対して電流制限がかかる。従って、電流検出用抵抗素子の抵抗値とスイッチング素子のゲート-ソース間電圧を調整することで、所望の態様にて電流制限をかけることが可能となる。これにより、少ない部品にて電流制限が可能になる。また、電圧検出部は、電流検出用抵抗素子の電圧の上昇を検出することで、短絡電流を検出することができる。従って、短絡電流が流れる場合、通電状態切替部によってスイッチング素子のゲート-ソース間電圧を調整することで、スイッチング素子の導通を抑制する。此により、スイッチング素子に短絡電流が流れ続けることを抑制できる。電圧検出部は、電流検出用抵抗素子の電圧を検出するだけで通常時の電流のモニタも短絡電流の検出も行うことができるので、部品を低減することができる。以上より、簡素な構成で、選定されるスイッチング素子の特性に応じた設計を容易とすることができる。
【0008】
スイッチング素子のゲートに印加される電圧をVccとし、スイッチング素子をオン状態にするときのゲート-ソース間電圧をVgsとし、ゲート-ソース間電圧Vgsの閾値電圧Vth(SW)をとし、電流検出用抵抗素子の抵抗値をRとし、短絡電流をAshortとした場合、式(1)(2)となるように、電流検出用抵抗素子の抵抗値が設定されていてよい。この場合、電流検出用抵抗素子の抵抗値を適切な値に設定することが可能となり、より確実に短絡電流を回避することができる。
Vcc - Vth(SW) = R × Ashort …(1)
Vgs≧Vth(SW) …(2)
【0009】
駆動回路装置は、産業車両に搭載され、電磁ブレーキ用リレーを駆動させるためのものであってよい。産業車両で用いられる電磁ブレーキ用リレーは、電流検出用抵抗素子に電流が流れにくい特性を持つため、電源装置の損失が少なく、好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成で、選定されるスイッチング素子の特性に応じた設計を容易とする駆動回路装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る駆動回路装置を備える制御システムを示す図である。
【
図2】本実施形態に係る駆動回路装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る駆動回路装置1を備える制御システム100を示す図である。本実施形態において、駆動回路装置1は、産業車両150に搭載され、電磁ブレーキ用リレー110を駆動させるための装置である。
【0014】
図1に示すように、制御システム100は、電磁ブレーキ用リレー110と、リレー駆動部とを備えている。リレー駆動部は、スイッチング素子SWと、駆動回路装置1、電流検出用抵抗素子70とを備えている。本実施形態において、制御システム100は、産業車両150に搭載されている。
【0015】
電磁ブレーキ用リレー110は、電源21に接続されている。本実施形態において、電源21は車両の駆動用バッテリで、鉛蓄電池やリチウムイオン電池等の2次電池である。
【0016】
本実施形態において、スイッチング素子SWはNチャネルMOSFETであるが、IGBTであってもよい。スイッチング素子SWには、フリーホイールダイオードが逆並列接続されている。本実施形態の各スイッチング素子SWにおいて、高電位側端子がドレイン(IGBTならコレクタ)であり、低電位側端子がソース(IGBTならエミッタ)である。
【0017】
駆動回路装置1は、駆動制御部60を備えている。駆動制御部60は、電磁ブレーキを作動させる場合にスイッチング素子SWをオン状態とすべく、スイッチング素子SWに対応する駆動信号INを、通電状態切替部50に出力する。通電状態切替部50及び駆動制御部60の詳細については後述する。
【0018】
続いて、
図2を用いて、駆動回路装置1について説明する。
図2は、本実施形態に係る駆動回路装置1を示す図である。本実施形態の各駆動回路装置1は、基本的には同じ構成である。
【0019】
図2に示すように、駆動回路装置1は、定電圧電源40と、通電状態切替部50と、駆動制御部60と、電流検出用抵抗素子70と、電圧検出部80と、を備える。スイッチング素子SWのドレインにはラインL1が接続される。スイッチング素子SWのソースにはラインL2が接続される。スイッチング素子SWのゲートにはラインL1が接続される。
【0020】
定電圧電源40には、通電状態切替部50及びラインL3を介して、スイッチング素子SWのゲート(開閉制御端子)が接続されている。定電圧電源40の出力電圧は、スイッチング素子SWのゲートに印加される電圧Vccとなり、スイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧Vgsの上限値に相当する。なお、定電圧電源40は、駆動回路装置1に内蔵していなくてもよく、外部から入力してもよい。
【0021】
通電状態切替部50は、スイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧Vgsを調整することで、スイッチング素子SWの通電状態の切替を行う。通電状態切替部50は、ラインL3を介してスイッチング素子SWのゲートに接続される。通電状態切替部50は、充電スイッチ及び充電抵抗体を備えている。また、通電状態切替部50は、放電抵抗体及び放電スイッチを備えている。なお、スイッチング素子SWのゲートには、放電抵抗体及び放電スイッチを介して、グランド部としてのスイッチング素子SWのソースが接続されている。通電状態切替部50は、
図3に示すような従来の駆動回路装置の通電状態切替部と同趣旨の構成を有する。
【0022】
駆動制御部60は、スイッチング素子SWの開閉を切り換える制御を行う。駆動制御部60は、通電状態切替部50に接続される。駆動制御部60は、図示しない指令手段(例えば、運転席に設けられたスイッチ)から出力された駆動信号INを取得する。駆動制御部60は、取得した駆動信号INがオン指令である場合、スイッチング素子SWをオン状態にする。この構成によれば、スイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vth(SW)以上となり、スイッチング素子SWがオン状態に切り替えられる。
【0023】
駆動制御部60は、取得した駆動信号INがオフ指令である場合、スイッチング素子SWをオフ状態にする。この構成によれば、スイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧Vgsが閾値電圧Vth(SW)未満となり、スイッチング素子SWがオフ状態に切り替えられる。
【0024】
駆動制御部60は、スイッチング素子SWをオフ状態に切り換えるラッチ回路を有している。駆動制御部60は、後述の短絡が検出された時にラッチ回路を動作させる。
【0025】
なお、駆動制御部60が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0026】
電流検出用抵抗素子70は、スイッチング素子SWの下流側である、ソースに接続されたラインL2に接続される。ラインL1,L2に短絡電流Ashortが流れたときに、電流検出用抵抗素子70は、電流検出用抵抗素子70の抵抗値によって生じる電圧によりスイッチング素子SWのソース電圧を上昇させる。電流検出用抵抗素子70間には、電流検出用抵抗素子の抵抗値Rによって生じる電圧により「R × Ashort」で示される電圧Vr1(short)が発生する。短絡時の短絡電流Ashortは大電流であるため、電圧Vr1(short)は大きくなる。電圧Vr1(short)が大きくなると、ゲート-ソース間電圧Vgsが見かけ上小さくなることで、スイッチング素子SWに対する電流制限がかかる。
【0027】
従って、スイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧と電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rを適切な値に調整しておくことで、短絡時における電流制限をかけることができる。スイッチング素子SWのゲートに印加される電圧Vccと、ゲート-ソース間電圧Vgsと、ゲート-ソース間電圧Vgsの閾値電圧Vth(SW)と、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rと、短絡電流Ashortとの間では、式(1)(2)となるように、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rを設定することが好ましい。
Vcc - Vth(SW) = R × Ashort …(1)
Vgs≧Vth(SW) …(2)
【0028】
電圧検出部80は、電流検出用抵抗素子70の電圧Vr1(short)を検出する。電圧検出部80は、コンパレータによって構成される。電圧検出部80の反転入力端子(-入力端子)は、ラインL2における電流検出用抵抗素子70とスイッチング素子SWとの間の接続点Pに接続され、接続点Pにおける電圧が入力される。また、電圧検出部80の非反転入力端子(+入力端子)には、参照電圧の電圧源(図示せず)が接続されており、判定値に対応する電圧Vin(+)が入力される。電圧検出部80は、反転入力端子及び非反転入力端子に入力された電圧を比較し、その結果を駆動制御部60に出力するように構成されている。すなわち、電圧検出部80は、短絡時における接続点Pの電圧(つまり、電圧Vr1(short))が判定値に達したら、短絡を検出した旨を通知する検出信号を駆動制御部60に出力する。駆動制御部60は、短絡が検知された場合、ラッチ回路にてラッチさせ、スイッチング素子SWをオフにし続ける。
【0029】
本実施形態では、以下の式(3)を満たすように設定する。Vgs(th)は、予め設定されたゲート閾値電圧である。式(3)の左辺がゲート閾値電圧を下回った場合に、短絡を検知して、スイッチング素子SWをオフとする。従って、電圧検出部80の電圧Vr1(short)に対する判定値は、以下の式(3)に基づいて設定される。なお、ゲート閾値電圧Vgs(th)は、スイッチング素子によって異なる。
Vin(+) < Vr1(short) …(3)
【0030】
次に、本実施形態に係る駆動回路装置1の作用・効果について説明する。
【0031】
まず、
図3を参照して、特開2022-036558号公報に示す、従来の駆動回路装置200について説明する。従来の駆動回路装置200は、通電状態切替部230と、定電圧電源240と、駆動制御部250と、短絡検出回路260と、クランプ回路270と、を備える。通電状態切替部230は、本実施形態の通電状態切替部50と同趣旨の充電スイッチT1と、充電抵抗体R1と、放電スイッチT2と、放電抵抗体R2と、を備える。短絡検出回路260は、短絡検出回路260は、ダイオードD2と、コンパレータCMPと、コンデンサC1と、リセット用スイッチT4と、抵抗体R4と、を備える。クランプ回路270は、ツェナーダイオードZDと、ダイオードD2と、抵抗体R3と、リセット用スイッチT3を備える。
【0032】
従来の駆動回路装置200は、次のように動作する。事前にスイッチング素子SWをオンにすると同時にリセット用スイッチT4もオンにし、コンデンサC1は空にしておく。次に、短絡してダイオードD2のカソード電圧が上がると、コンデンサC1をチャージしながら接続点M1の電圧が上がる。同様にダイオードD1のカソード電圧が上がると、接続点M2の電圧も上がる。接続点M2の電圧が上がるとリセット用スイッチT3がオンとなり、ツェナーダイオードZDがスイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧を下げる。スイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧が下がるとスイッチング素子SWは大きな電流が流せなくなり短絡していても電流制限がかかる。電流制限がかかっている間に接続点M1の電圧が上昇したことをコンパレータCMPで検出して、駆動制御部250に伝える。駆動制御部250はコンパレータCMPからの情報に基づきスイッチT1,T2をオフとして、スイッチング素子SWをオフにする。
【0033】
上述の様な従来の駆動回路装置200では、抵抗体R3、リセット用スイッチT3、及びダイオードD1の部品選定が難しいという問題がある。抵抗体R3は、リセット用スイッチT3をオンにする時間に関わっており、抵抗体R3の抵抗値が小さいほどリセット用スイッチT3が早くオンになる。スイッチング素子SWが壊れないようにするには抵抗体R3の抵抗値が小さいほうが望ましい。ただし、短絡していないときは電圧Vccから抵抗体R3とダイオードD1を通って電流が流れるため、抵抗体R3の抵抗値を小さくしすぎると、流れる電流が増えて抵抗体R3とダイオードD1の損失が大きくなる。よって抵抗体R3とダイオードD1の部品サイズを大きくしなければならない。
【0034】
また、従来の駆動回路装置200では、リセット用スイッチT4のオン・オフのタイミングを調整することが難しいという問題がある。スイッチング素子SWのオン・オフのタイミングは、スイッチT1,T2及び抵抗体R1,R2によって調整され、スイッチング素子SWのばらつきによっても変化する。このためリセット用スイッチT4のオン・オフのタイミングはスイッチT1,T2、抵抗体R1,R2、及びスイッチング素子SWのばらつきを考慮して決めなくてはならない。オン・オフのタイミングをシビアにすると過電流検出が誤検出しやすくなり、ゆるくすると検出するまでに時間がかかるようになり、長時間、電流制限がかかることでスイッチング素子SWが短絡時に壊れやすくなってしまう。
【0035】
これに対し、本実施形態に係る駆動回路装置1は、スイッチング素子SWの下流側に接続される電流検出用抵抗素子70と、電流検出用抵抗素子70の電圧を検出する電圧検出部80とを備える。そのため、スイッチング素子SWに大電流である短絡電流が流れると、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rにより、スイッチング素子SWのソース電圧が上昇する。この場合、スイッチング素子SWのゲード電圧Vgsが見かけ上小さくなり、スイッチング素子SWに対して電流制限がかかる。従って、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rとスイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧Vgsを調整することで、所望の態様にて電流制限をかけることが可能となる。これにより、少ない部品にて電流制限が可能になる。すなわち、従来の駆動回路装置200は、電流制限のためにツェナーダイオードZD、ダイオードD2、抵抗体R3、及びリセット用スイッチT3が必要であったが、本実施形態では、電流検出用抵抗素子70だけで電流制限をかけることができる。これにより、低コスト化、小型化を図ることができ、故障率を小さくすることができる。
【0036】
また、電圧検出部80は、電流検出用抵抗素子70の電圧の上昇を検出することで、短絡電流を検出することができる。従って、短絡電流が流れる場合、通電状態切替部50によってスイッチング素子SWのゲート-ソース間電圧Vgsを調整することで、スイッチング素子SWの導通を抑制する。これにより、スイッチング素子SWに短絡電流が流れ続けることを抑制できる。電圧検出部80は、電流検出用抵抗素子70の電圧を検出するだけで通常時の電流のモニタも短絡電流の検出も行うことができるので、部品を低減することができる。従来の駆動回路装置200では、通常時の電流をモニタするために別の回路又は部品が必要であったが、本実施形態では不要とすることができる。従って、低コスト化及び小型化を図ることができる。また、従来の駆動回路装置200では、コンパレータCMPで短絡検出するために、スイッチング素子SWのオン・オフを行うたびに、リセット用スイッチT4をオンとすることでコンデンサC1を空にする動作が必要だが、本実施形態ではそのような動作が不要となる。そのため、低コスト化、小型化、低消費電力化を図ることができ、リセット用スイッチT4及びコンデンサC1の故障時の誤作動を無くすことが出来る。以上より、簡素な構成で、選定されるスイッチング素子SWの特性に応じた設計を容易とすることができる。
【0037】
スイッチング素子SWのゲートに印加される電圧をVccとし、スイッチング素子SWをオン状態にするときのゲート-ソース間電圧をVgsとし、ゲート-ソース間電圧Vgsの閾値電圧Vth(SW)をとし、電流検出用抵抗素子70の抵抗値をRとし、短絡電流をAshortとした場合、式(1)となるように、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rが設定されていてよい。この場合、電流検出用抵抗素子70の抵抗値Rを適切な値に設定することが可能となり、より確実に短絡電流を回避することができる。
Vcc - Vth(SW) = R × Ashort …(1)
Vgs≧Vth(SW) …(2)
【0038】
駆動回路装置1は、産業車両150に搭載され、電磁ブレーキ用リレー110を駆動させるためのものであってよい。産業車両150で用いられる電磁ブレーキ用リレー110は、電流検出用抵抗素子70に電流が流れにくい特性を持つため、電源装置の損失を低減することができる。
【0039】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0040】
図2に示す回路構成は一例に過ぎず、詳細な構成は適宜変更してもよい。
【0041】
また、駆動回路装置1の駆動対象物は産業車両の電磁ブレーキ用リレーでなくともよい。ただし、駆動対象物にはインダクタンス成分を含むことが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1…駆動回路装置、50…通電状態切替部、60…駆動制御部、70…電流検出用抵抗素子、110…電磁ブレーキ用リレー、150…産業車両、SW…スイッチング素子。