IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特開2024-117290作業機械を制御するためのシステム及び方法
<>
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図1
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図2
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図3
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図4
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図5
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図6
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図7
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図8
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図9
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図10
  • 特開-作業機械を制御するためのシステム及び方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117290
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240822BHJP
   E02F 3/84 20060101ALI20240822BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
E02F9/20 C
E02F3/84 A
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023305
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】津村 総一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友起
(72)【発明者】
【氏名】中野 圭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇人
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AB01
2D003AB03
2D003AC02
2D003BA01
2D003BA03
2D003BA04
2D003BB04
2D003BB05
2D003BB07
2D003BB10
2D003BB11
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003DC01
2D003DC04
2D003FA02
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】作業機械の自動制御によって、効率よく整地作業を行う。
【解決手段】コントローラは、ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得する。コントローラは、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置する目標設計面を取得する。コントローラは、目標設計面から上方に向けて、順次、目標掘削面を決定する。コントローラは、目標掘削面上において所定の作業方向にそれぞれ延び、所定の作業方向と交差する方向に互いに並ぶ複数の掘削パスを決定する。コントローラは、複数の掘削パスに従って作業機械を制御する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械の位置を示す位置データを出力する位置センサと、
前記位置センサから前記位置データを取得するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得し、
少なくとも一部が前記現況地形よりも下方に位置する目標設計面を取得し、
前記目標設計面から上方に向けて、順次、目標掘削面を決定し、
前記目標掘削面上において所定の作業方向にそれぞれ延び、前記所定の作業方向と交差する方向に互いに並ぶ複数の掘削パスを決定し、
前記複数の掘削パスに従って前記作業機械を制御する、
システム。
【請求項2】
前記目標設計面は、
前記目標設計面の底に位置する最終設計面と、
前記最終設計面から前記所定の作業方向と逆方向、且つ、上方に延びるハイウォール設計面と、
を含み、
前記コントローラは、
前記最終設計面から上方に所定高さごとに位置する前記ハイウォール設計面上の参照点を決定し、
前記参照点を通る仮の掘削面を決定し、
前記仮の掘削面に基づいて、前記目標掘削面を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記目標設計面は、
前記目標設計面の底に位置する最終設計面と、
前記最終設計面から前記所定の作業方向と逆方向、且つ、上方に延びるハイウォール設計面と、
を含み、
前記コントローラは、
前記ハイウォール設計面の最上点から上方に延びる半直線を決定し、
前記最終設計面から上方に所定高さごとに位置する前記ハイウォール設計面、及び、前記半直線上の参照点を通る仮の掘削面を決定し、
前記仮の掘削面に基づいて、前記目標掘削面を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記目標設計面は、
前記最終設計面から前記所定の作業方向、且つ、上方に延びるロウウォール設計面と、
前記ロウウォール設計面と前記現況地形とが交差するピボットポイントと、
をさらに含み、
前記コントローラは、
前記参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、前記仮の掘削面として決定する、
請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記ハイウォール設計面上の第1参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第1仮の掘削面として決定し、
前記第1参照点から上方に前記所定高さに位置する前記ハイウォール設計面上の第2参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第2仮の掘削面として決定し、
前記第1仮の掘削面の水平方向に対する第1傾斜角度が所定の角度閾値以下である場合には、前記第1仮の掘削面を第1目標掘削面として決定し、
前記第2仮の掘削面の水平方向に対する第2傾斜角度が前記角度閾値より大きい場合には、前記第2参照点を通り、前記第1仮の掘削面と平行な平面を第2目標掘削面として決定する、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記ハイウォール設計面上の第1参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第1仮の掘削面として決定し、
前記第1参照点から上方に前記所定高さに位置する前記ハイウォール設計面上の第2参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第2仮の掘削面として決定し、
前記第1仮の掘削面の水平方向に対する第1傾斜角度が所定の角度閾値以下である場合には、前記第1仮の掘削面を第1目標掘削面として決定し、
前記第2仮の掘削面の水平方向に対する第2傾斜角度が前記角度閾値より大きい場合には、前記第2参照点を通り、前記水平方向に対して前記角度閾値で傾斜した平面を第2目標掘削面として決定する、
請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
作業機械を制御するための方法であって、
ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得することと、
少なくとも一部が前記現況地形よりも下方に位置する目標設計面を取得することと、
前記目標設計面から上方に向けて、順次、目標掘削面を決定することと、
前記目標掘削面上において所定の作業方向にそれぞれ延び、前記所定の作業方向と交差する方向に互いに並ぶ複数の掘削パスを決定することと、
前記複数の掘削パスに従って前記作業機械を制御すること、
を備える方法。
【請求項8】
前記目標設計面は、
前記目標設計面の底に位置する最終設計面と、
前記最終設計面から前記所定の作業方向と逆方向、且つ、上方に延びるハイウォール設計面と、
を含み、
前記最終設計面から上方に所定高さごとに位置する前記ハイウォール設計面上の参照点を通る仮の掘削面を決定することと、
前記仮の掘削面に基づいて、前記目標掘削面を決定すること、
を備える請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記目標設計面は、
前記目標設計面の底に位置する最終設計面と、
前記最終設計面から前記所定の作業方向と逆方向、且つ、上方に延びるハイウォール設計面と、
を含み、
前記ハイウォール設計面の最上点から上方に延びる半直線を決定することと、
前記最終設計面から上方に所定高さごとに位置する前記ハイウォール設計面、及び、前記半直線上の参照点を通る仮の掘削面を決定することと、
前記仮の掘削面に基づいて、前記目標掘削面を決定すること、
を備える請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記目標設計面は、
前記最終設計面から前記所定の作業方向、且つ、上方に延びるロウウォール設計面と、
前記ロウウォール設計面と前記現況地形とが交差するピボットポイントと、
をさらに含み、
前記参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、前記仮の掘削面として決定することをさらに備える、
請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイウォール設計面上の第1参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第1仮の掘削面として決定することと、
前記第1参照点から上方に前記所定高さに位置する前記ハイウォール設計面上の第2参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第2仮の掘削面として決定することと、
前記第1仮の掘削面の水平方向に対する第1傾斜角度が所定の角度閾値以下である場合には、前記第1仮の掘削面を第1目標掘削面として決定することと、
前記第2仮の掘削面の水平方向に対する第2傾斜角度が前記角度閾値より大きい場合には、前記第2参照点を通り、前記第1仮の掘削面と平行な平面を、第2目標掘削面として決定すること、
をさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハイウォール設計面上の第1参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第1仮の掘削面として決定することと、
前記第1参照点から上方に前記所定高さに位置する前記ハイウォール設計面上の第2参照点と前記ピボットポイントとを結ぶ平面を、第2仮の掘削面として決定することと、
前記第1仮の掘削面の水平方向に対する第1傾斜角度が所定の角度閾値以下である場合には、前記第1仮の掘削面を第1目標掘削面として決定することと、
前記第2仮の掘削面の水平方向に対する第2傾斜角度が前記角度閾値より大きい場合には、前記第2参照点を通り、前記水平方向に対して前記角度閾値で傾斜した平面を、第2目標掘削面として決定すること、
をさらに備える請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、整地作業を行うものがある。例えば、鉱山では、発破により、規定の区画の土砂が粉砕された後に、バルクプッシュが行われる。バルクプッシュは、地表を掘削し、掘削された土砂を所定の排土位置に運ぶ作業である。バルクプッシュが繰り返されることで、地表面が徐々に下がる。発破により土砂が粉砕された直後は、地表面は不均一である。そのため、地表面を均一にならす整地作業が行われる。或いは、鉱山以外のワークサイトにおいても、作業機械によって整地作業が行われることがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、作業機械の自動制御によって整地作業を行う技術が開示されている。当該技術では、作業機械のコントローラは、現況地形の上方から目標設計面に向けて、順次、仮の掘削面を決定する。コントローラは、現況地形において仮の掘削面よりも上方に位置する部分を、目標掘削部分として決定する。コントローラは、目標掘削部分の土量を算出する。コントローラは、目標掘削部分の土量が閾値以上であるかを判定する。コントローラは、目標掘削部分の土量が閾値以上であるときに仮の掘削面を目標掘削面として決定する。コントローラは、目標掘削面に従って、作業機械を制御する。それにより、目標掘削部分が掘削されることで、整地作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-101078号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した作業機械の自動制御によれば、熟練したオペレータでなくても、作業機械によって整地作業を容易に行うことができる。しかし、作業機械によって、さらに効率よく整地作業を行うことが求められている。本開示の目的は、作業機械の自動制御によって、効率よく整地作業を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るシステムは、作業機械を制御するためのシステムであって、位置センサとコントローラとを備える。位置センサは、作業機械の位置を示す位置データを出力する。コントローラは、位置センサから位置データを取得する。コントローラは、ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得する。コントローラは、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置する目標設計面を取得する。コントローラは、目標設計面から上方に向けて、順次、目標掘削面を決定する。コントローラは、目標掘削面上において所定の作業方向にそれぞれ延び、所定の作業方向と交差する方向に互いに並ぶ複数の掘削パスを決定する。コントローラは、複数の掘削パスに従って作業機械を制御する。
【0007】
本開示の他の態様に係る方法は、作業機械を制御するための方法であって、ワークサイトの現況地形を示す現況地形データを取得することと、少なくとも一部が現況地形よりも下方に位置する目標設計面を取得することと、目標設計面から上方に向けて、順次、目標掘削面を決定することと、目標掘削面上において所定の作業方向にそれぞれ延び、所定の作業方向と交差する方向に互いに並ぶ複数の掘削パスを決定することと、複数の掘削パスに従って作業機械を制御すること、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業機械の自動制御によって、効率よく整地作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る作業機械を示す斜視図である。
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】ワークサイトの現況地形の一例を示す側面図である。
図4】作業機械の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図5】現況地形と目標設計面の一例を示す側面図である。
図6】仮の掘削面の決定方法を示す図である。
図7】仮の掘削面の決定方法を示す図である。
図8】目標掘削面の決定方法を示す図である。
図9】目標掘削面の決定方法を示す図である。
図10】掘削パスの一例を示す図である。
図11】変形例に係る目標掘削面の決定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る作業機械の制御システムおよび制御方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1を示す斜視図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、作業機13とを備えている。
【0011】
車体11は、走行装置12と、運転室14と、駆動源室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。駆動源室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。
【0012】
作業機13は、車体11に取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19A,19Bと、を有する。リフトフレーム17は、上下に動作可能に車体11に取り付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。
【0013】
ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に動作する。リフトシリンダ19A,19Bは、車体11とブレード18とに連結されている。リフトシリンダ19A,19Bは、リフトフレーム17に連結されてもよい。リフトシリンダ19A,19Bが伸縮することによって、ブレード18は、上下に動作する。
【0014】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、駆動源22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24とを備えている。駆動源22は、例えば内燃エンジンである。ただし、駆動源22は、電動モータを含んでもよい。
【0015】
油圧ポンプ23は、駆動源22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、油圧アクチュエータ25に供給される。油圧アクチュエータ25は、上述したリフトシリンダ19を含む。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0016】
油圧アクチュエータ25と油圧ポンプ23との間には、制御弁26が配置されている。制御弁26は、比例制御弁であり、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。なお、制御弁26は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁26は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0017】
動力伝達装置24は、駆動源22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。或いは、動力伝達装置24は、HST(Hydro Static Transmission)などの他の方式の動力伝達装置であってもよい。
【0018】
制御システム3は、コントローラ31と、機械位置センサ32と、通信装置33と、ストレージ34と、入力装置35とを備える。コントローラ31は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ31は、メモリ38とプロセッサ39とを含む。メモリ38は、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)とを含む。ストレージ34は、例えば、半導体メモリ、或いはハードディスクなどを含む。メモリ38とストレージ34とは、作業機械1を制御するためのコンピュータ指令およびデータを記録している。
【0019】
プロセッサ39は、例えばCPUであるが、他の種類のプロセッサであってもよい。プロセッサ39は、メモリ38或いはストレージ34に記憶されたコンピュータ指令およびデータに基づいて、作業機械1を制御するための処理を実行する。通信装置33は、例えば無線通信用のモジュールであり、作業機械1の外部の機器と通信を行う。通信装置33は、モバイル通信ネットワークを利用するものであってもよい。或いは、通信装置33は、LAN(Local Area Network)、或いはインターネットなどの他のネットワークを利用するものであってもよい。
【0020】
機械位置センサ32は、作業機械1の位置を検出する。機械位置センサ32は、例えば、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバを含む。機械位置センサ32は、車体11に搭載されている。或いは、機械位置センサ32は、作業機13などの他の位置に搭載されてもよい。コントローラ31は、作業機械1の現在位置を示す現在位置データを機械位置センサ32から取得する。
【0021】
入力装置35は、オペレータによって操作可能である。入力装置35は、例えばタッチスクリーンを含む。或いは、入力装置35は、ハードキーなどの他の操作子を含んでもよい。入力装置35は、オペレータによる操作を受け付け、オペレータの操作を示す信号をコントローラ31に出力する。
【0022】
コントローラ31は、駆動源22、油圧ポンプ23、動力伝達装置24、及び制御弁26に指令信号を出力することで、これらの装置を制御する。例えば、コントローラ31は、油圧ポンプ23の容量、及び、制御弁26の開度を制御することで、油圧アクチュエータ25を動作させる。これにより、コントローラ31は、作業機13を動作させる。
【0023】
コントローラ31は、駆動源22の回転速度、及び、動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を走行させる。例えば、動力伝達装置24がHSTの場合、コントローラ31は、HSTの油圧ポンプの容量と油圧モータの容量とを制御する。動力伝達装置24が複数の変速ギアを有するトランスミッションの場合、コントローラ31は、ギアシフト用のアクチュエータを制御する。また、コントローラ31は、左右の履帯16に速度差が生じるように、動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を旋回させる。
【0024】
次に、コントローラ31によって実行される、作業機械1の自動制御について説明する。コントローラ31は、駆動源22及び動力伝達装置24を制御することで、作業機械1を自動的に走行させる。また、コントローラ31は、駆動源22、油圧ポンプ23、及び制御弁26を制御することで、作業機13を自動的に制御する。
【0025】
以下、ワークサイトにおいて作業機械1によって行われる整地作業の自動制御について説明する。図3は、ワークサイトの現況地形40の側面図である。図4は、作業機械1の自動制御の処理を示すフローチャートである。図4に示すように、ステップS101では、コントローラ31は、現在位置データを取得する。コントローラ31は、機械位置センサ32から、作業機械1の現在位置データを取得する。
【0026】
ステップS102では、コントローラ31は、現況地形データを取得する。現況地形データは、ワークサイトの現況地形40を示すデータである。例えば、現況地形データは、現況地形40の表面の平面座標と高さとを含む。現況地形データは、予めストレージ34に記憶されていてもよい。コントローラ31は、作業機13、或いは走行装置12の底部の軌跡を記録することで、現況地形データを取得してもよい。或いは、現況地形データは、ライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)或いは、カメラなどの測定機器によって測定されてもよい。コントローラ31は、測定機器から現況地形データを取得してもよい。測定機器は、作業機械1に搭載されてもよい。測定機器は、作業機械1の外部に配置されてもよい。
【0027】
ステップS103では、コントローラ31は、目標設計面50を取得する。図3に示すように、目標設計面50の少なくとも一部は、現況地形40よりも下方に位置する。目標設計面50は、作業機械1の作業による目標地形の形状を示す。目標設計面50は、予め定められて、ストレージ34に記憶されていてもよい。目標設計面50は、入力装置35を介して、オペレータによって入力されてもよい。或いは、コントローラ31は、通信装置33を介して、外部のコンピュータから目標設計面50を取得してもよい。
【0028】
詳細には、目標設計面50は、最終設計面51と、ロウウォール設計面52と、ハイウォール設計面53と、ピボットポイント54とを含む。最終設計面51は、目標設計面50の底に位置する。最終設計面51は、所定の作業方向A1に延びている。所定の作業方向A1については後述する。最終設計面51は、例えば水平である。ただし、最終設計面51は、水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0029】
ロウウォール設計面52は、最終設計面51から所定の作業方向A1、且つ、上方に延びる。ロウウォール設計面52は、最終設計面51に対して傾斜している。ハイウォール設計面53は、最終設計面51から所定の作業方向A1と逆方向、且つ、上方に延びる。ハイウォール設計面53は、最終設計面51に対して傾斜している。ピボットポイント54は、ロウウォール設計面52と現況地形40との交点に基づいて決定される。例えば、ピボットポイント54は、ロウウォール設計面52と初期の現況地形40との交点である。
【0030】
整地作業の自動制御において、コントローラ31は、現況地形40がハイウォール設計面53と最終設計面51の形状となるように、現況地形40を掘削する。コントローラ31は、現況地形40がロウウォール設計面52の形状となるように、掘削された土砂を、現況地形40上に積み上げる。
【0031】
図3に示すように、コントローラ31は、目標設計面50に基づいて、目標掘削面60を決定する。目標掘削面60は、最終設計面51から上方に向かって順に配置された複数の目標掘削面61-64を含む。コントローラ31は、最も上方に位置する目標掘削面64から、最も下方に位置する目標掘削面61までの順に、各目標掘削面61-64に従って、作業機械1による掘削を行う。それにより、現況地形40が、ハイウォール設計面53と最終設計面51の形状となるように、掘削される、以下、目標掘削面60を決定するための処理について説明する。
【0032】
図4に示すように、ステップS104では、コントローラ31は、仮の掘削面を決定する。コントローラ31は、目標設計面50から上方に向けて、順次、仮の掘削面を決定する。
【0033】
詳細には、図5に示すように、コントローラ31は、ハイウォール設計面53の最上点531から上方に延びる半直線Lv1を決定する。なお、「上方」とは重力方向における上方を意味する。図6に示すように、コントローラ31は、最終設計面51から上方に、所定高さH1ごとに位置する最終設計面51に平行な直線Lh1-Lh7を決定する。所定高さH1は、例えば、0.5m~3.0mの範囲で決定される。所定高さH1は、例えば、1.2mであってもよい。コントローラ31は、各直線Lh1-Lh7と、ハイウォール設計面53及び半直線Lv1との交点を参照点R1-R7として決定する。図7に示すように、コントローラ31は、最も下方に位置する第1参照点R1とピボットポイント54とを結ぶ平面を第1仮の掘削面71として決定する。
【0034】
ステップS105で、コントローラ31は、目標掘削面60を決定する。コントローラ31は、仮の掘削面に基づいて目標掘削面60を決定する。詳細には、コントローラ31は、仮の掘削面の水平方向に対する傾斜角度が、所定の角度閾値以下である場合に、その仮の掘削面を目標掘削面60として決定する。例えば、図7に示すように、コントローラ31は、第1仮の掘削面71の水平方向に対する傾斜角度θ1が角度閾値以下である場合には、第1仮の掘削面71を、図8に示す第1目標掘削面61として決定する。角度閾値は、例えば、作業機械1が走行可能な傾斜角度に基づいて決定される。角度閾値は、例えば、15度~30度の範囲で決定される。角度閾値は、例えば、15度であってもよい。
【0035】
ステップS106では、コントローラ31は、目標掘削面60に現況地形40との交点があるか否かを判定する。目標掘削面60に現況地形40との交点がある場合には、処理はステップS104に戻る。ステップS104~ステップS106の処理が繰り返されることで、図7及び図8に示すように、コントローラ31は、第2参照点R2とピボットポイント54とを結ぶ第2仮の掘削面72を、第2目標掘削面62として決定する。コントローラ31は、第3参照点R3とピボットポイント54とを結ぶ第3仮の掘削面73を、第3目標掘削面63として決定する。
【0036】
一方、ステップS105において、ある参照点を通る仮の掘削面の傾斜角度が角度閾値より大きい場合には、コントローラ31は、その参照点を通り、1つ下に位置する仮の掘削面と平行な平面を、目標掘削面として決定する。例えば、図7に示すように、第4参照点R4を通る第4仮の掘削面74の傾斜角度θ4が角度閾値より大きい場合には、コントローラ31は、図8に示すように、第4参照点R4を通り、第3目標掘削面63と平行な平面を、第4目標掘削面64として決定する。
【0037】
図7に示すように、第5~第7仮の掘削面75-77についても同様に、第5~第7仮の掘削面75-77のそれぞれの傾斜角度が角度閾値より大きい場合には、コントローラ31は、図8に示すように、第5~第7参照点R5-R7を通り、第3目標掘削面63と平行な平面を、それぞれ第5~第7目標掘削面65-67として決定する。
【0038】
以上の処理が繰り返されることで、コントローラ31は、最も下方に位置する目標掘削面61から上方に向かって順次、次の目標掘削面62-67を決定し、目標掘削面60に現況地形40との交点がなくなるまで目標掘削面60を決定する。例えば、図8に示すように、第7目標掘削面67は、現況地形40との交点を有さない。この場合、コントローラ31は、第7目標掘削面67を目標掘削面60から除外する。
【0039】
また、コントローラ31は、ある目標掘削面が現況地形40との交点を有する場合であっても、その目標掘削面上の現況地形40の高さが所定の高さ閾値以下である場合には、その目標掘削面を除外する。例えば、図8に示すように、第6目標掘削面66上の現況地形40の部分41の高さが高さ閾値以下である場合には、コントローラ31は、第6目標掘削面66を目標掘削面60から除外する。それにより、図9に示すように、コントローラ31は、第1~第5目標掘削面61-65を目標掘削面60として決定する。所定高さ閾値は、例えば、0.5m~1.5mの範囲で決定される。所定高さ閾値は、例えば1.0mであってもよい。あるいは、所定高さ閾値は、所定高さH1に基づいて決定されてもよい。所定高さ閾値は、例えば、所定高さH1の半分であってもよい。
【0040】
なお、現況地形40の部分41の高さは、目標掘削面60に垂直な方向の寸法であってもよい。或いは、現況地形40の部分41の高さは、重力方向における寸法であってもよい。ステップS106において、目標掘削面60に現況地形40との交点がなくなった場合には、処理はステップS108に進む。
【0041】
ステップS108で、コントローラ31は、複数の掘削パスP1-P6を決定する。図10は、ワークサイトの現況地形40の上面図である。図10に示すように、コントローラ31は、所定の作業エリア100内において、複数の掘削パスP1-P6を決定する。掘削パスP1-P6のそれぞれは、所定の作業方向A1に延びている。所定の作業エリア100と所定の作業方向A1とは、予め決められて、ストレージ34に保存されている。或いは、所定の作業エリア100と所定の作業方向A1とは、入力装置35を介してオペレータによって決定されてもよい。
【0042】
複数の掘削パスP1-P6は、横方向に互いに並んでいる。横方向は、所定の作業方向A1と交差する方向である。例えば、コントローラ31は、横方向に一定間隔で並ぶように、複数の掘削パスP1-P6を決定してもよい。或いは、コントローラ31は、掘削される土量を考慮して、複数の掘削パスP1-P6を決定してもよい。コントローラ31は、各目標掘削面61-65上において所定の作業方向A1に延び、且つ、横方向に並ぶように、複数の掘削パスP1-P6を決定する。
【0043】
ステップS109では、コントローラ31は、複数の掘削パスP1-P6に従って、作業機械1を制御する。例えば、コントローラ31は、第1掘削パスP1に従って作業機械1を前進させると共に、最も上方に位置する第5目標掘削面65に従って、作業機13を動作させる。第1掘削パスP1に従う掘削が終了すると、コントローラ31は、作業機械1を後退させる。次に、コントローラ31は、第2掘削パスP2に従って作業機械1を前進させると共に、第5目標掘削面65に従って、作業機13を動作させる。以降、同様に、残りの掘削パスP3-P6のそれぞれに従って作業機械1を前進させると共に、各掘削パスP3-P6において、第5目標掘削面65に従って、作業機13を動作させる。それにより、作業エリア100内の現況地形40が、第5目標掘削面65の形状となるように掘削される。
【0044】
次に、コントローラ31は、掘削パスP1-P6のそれぞれに従って作業機械1を前進させると共に、各掘削パスP1-P6において、第5目標掘削面65の下方に位置する第4目標掘削面64に従って、作業機13を動作させる。それにより、作業エリア100内の現況地形40が、第4目標掘削面64の形状となるように掘削される。以下、第3~第1目標掘削面63-61に従って、順次、上記と同様の作業が繰り返され、その後、最終設計面51まで掘削される。なお、詳細な説明は省略するが、コントローラ31は、上記の掘削作業によって掘削された土砂を運搬して、ロウウォール設計面52の形状となるように積み上げる。以上の作業により、現況地形40が目標設計面50の形状となる。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1の制御システムおよび制御方法では、上述のように目標掘削面61-65と掘削パスP1-P6とが決定され、作業機械1が目標掘削面61-65と掘削パスP1-P6とに従って、自動的に制御される。そのため、作業機械1の自動制御によって、容易に整地作業を行うことができる。
【0046】
また、目標掘削面61-65は、下方に位置する目標掘削面から上方に向かって順に決定される。下方に位置する目標掘削面ほど、掘削される面積が大きいことが多い。そのため、目標掘削面61-65が下方に位置するものから決定されることで、効率よく掘削を行うことができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ等の他の機械であってもよい。走行装置12は、履帯に限らず、タイヤを含んでもよい。作業機械1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、作業機械1から運転室が省略されてもよい。
【0048】
コントローラ31は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。上述したコントローラ31による処理は、複数のコントローラによって分散して実行されてもよい。
【0049】
複数の作業機械によって同時に整地作業が行われてもよい。その場合、複数の作業機械に搭載されたコントローラがそれぞれ自律的に上記の整地作業のための処理を実行してもよい。或いは、複数の作業機械に共通のコントローラが、複数の作業機械に対して上記の整地作業のための処理を実行してもよい。コントローラは、作業機械の外部から遠隔で作業機械に対して上記の整地作業のための処理を実行してもよい。
【0050】
整地作業を行うための処理は、上述した処理に限らず、変更されてもよい。例えば、上記の処理の一部が、変更、或いは省略されてもよい。整地作業を行うための処理に、上記の処理と異なる処理が追加されてもよい。
【0051】
例えば、上記の実施形態では、ある参照点に対する仮の掘削面の傾斜角度が角度閾値より大きい場合には、コントローラ31は、その参照点を通り、その仮の掘削面の1つ下の仮の掘削面と平行な平面を、目標掘削面として決定している。しかし、コントローラ31は、ある参照点に対する仮の掘削面の傾斜角度が角度閾値より大きい場合には、その参照点を通り、水平方向に対して角度閾値で傾斜した平面を、目標掘削面として決定してもよい。
【0052】
参照点の数、仮の掘削面の数、目標掘削面の数、或いは掘削パスの数は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。仮の掘削面、或いは目標掘削面を決定する方法は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、図11に示すように、コントローラ31は、ハイウォール設計面53上の参照点R1-R5とピボットポイント54とを結ぶ平面を、それぞれ目標掘削面61-65として決定してもよい。また、コントローラ31は、半直線Lv1上の参照点R6,R7を通り、ハイウォール設計面53上の参照点R5を通る最も近くの目標掘削面65と平行な平面を、目標掘削面66,67として決定してもよい。
【0053】
コントローラ31は、現況地形40において仮の掘削面より上方に位置する部分を、目標掘削部分として決定してもよい。コントローラ31は、目標掘削部分の高さを算出してもよい。コントローラ31は、目標掘削部分の高さが所定の高さ閾値以下である場合に、対応する仮の掘削面を目標掘削面60として決定してもよい。高さ閾値は、例えば、ブレードの掘削可能高さに基づいて決定されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示によれば、作業機械の自動制御によって、効率よく整地作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1:作業機械
31:コントローラ
32:機械位置センサ
40:現況地形
50:目標設計面
51:最終設計面
53:ハイウォール設計面
52:ロウウォール設計面
54:ピボットポイント
60:目標掘削面
71-77:仮の掘削面
Lv1:半直線
P1-P6:掘削パス
R1-R7:参照点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11