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特開2024-117291超電導磁石、及び磁気共鳴イメージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117291
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】超電導磁石、及び磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240822BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240822BHJP
   G01R 33/3815 20060101ALI20240822BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20240822BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61B5/055 331
A61B5/055 ZAA
G01N24/00 600C
G01R33/3815
H01F6/04
H01F5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023306
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 肇
(72)【発明者】
【氏名】江口 諒
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB06
4C096AB44
4C096AD08
4C096CA02
4C096CA15
4C096CA16
4C096CA17
4C096CA18
4C096CA53
4C096CB05
4C096FB09
(57)【要約】
【課題】撮像されるMR画像の画質を保ちながら、超電導コイルのクエンチに起因する電磁力の影響を抑制すること
【解決手段】一実施形態の被検体に傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイルを有する磁気共鳴イメージング装置で用いられる超電導磁石は、ヘリウム容器と、真空容器と、熱シールドと、を備える。ヘリウム容器は、静磁場を発生する超電導コイルを内包する。真空容器は、超電導磁石の内部を真空断熱する。熱シールドは、ヘリウム容器と真空容器との間に配置され、輻射熱を低減する。傾斜磁場コイルは超電導磁石よりも被検体に近い位置に配設される。熱シールドを構成する部材のうち、少なくとも傾斜磁場コイルに対向する部分の部材は、第1シールド層及び第2シールド層の2層の金属材料の重ね合わせで構成される。第1シールド層は第2シールド層よりも傾斜磁場コイルに近い位置に配置される。第1シールド層を構成する金属材料の導電率は第2シールド層を構成する金属材料の導電率より高い。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイルを有する磁気共鳴イメージング装置で用いられる超電導磁石であって、
静磁場を発生する超電導コイルを内包するヘリウム容器と、
前記超電導磁石の内部を真空断熱するための真空容器と、
前記ヘリウム容器と前記真空容器との間に配置され、輻射熱を低減するための熱シールドと、を備え、
前記傾斜磁場コイルは前記超電導磁石よりも前記被検体に近い位置に配設され、
前記熱シールドを構成する部材のうち、少なくとも前記傾斜磁場コイルに対向する部分の部材は、第1シールド層及び第2シールド層の2層の金属材料の重ね合わせで構成され、
前記第1シールド層は前記第2シールド層よりも前記傾斜磁場コイルに近い位置に配置され、
前記第1シールド層を構成する金属材料の導電率は前記第2シールド層を構成する金属材料の導電率より高い、
超電導磁石。
【請求項2】
前記第2シールド層を構成する金属材料の機械強度は、前記第1シールド層を構成する金属材料の機械強度より高い、
請求項1に記載の超電導磁石。
【請求項3】
前記第1シールド層を構成する金属材料は第1のアルミ材であり、前記第2シールド層を構成する金属材料は前記第1のアルミ材と異なる第2のアルミ材である、
請求項1に記載の超電導磁石。
【請求項4】
前記第1のアルミ材はA1050であり、前記第2のアルミ材はA5083、又はA6061である、
請求項3に記載の超電導磁石。
【請求項5】
前記第1シールド層を構成する金属材料はアルミ材であり、前記第2シールド層を構成する金属材料はステンレス鋼材である、
請求項1に記載の超電導磁石。
【請求項6】
前記第1シールド層を構成する金属材料、及び前記第2シールド層を構成する金属材料は、それぞれアルミ材、及び銅材であり、前記銅材と前記アルミ材とにおいて、より導電率が高い金属材料が前記第1シールド層を構成し、より導電率が低いい金属材料が前記第2シールド層を構成する、
請求項1に記載の超電導磁石。
【請求項7】
前記第1シールド層、及び前記第2シールド層を構成する前記金属材料の板厚は、それぞれ、機械強度と抵抗値とに基づいて最適化される、
請求項1に記載の超電導磁石。
【請求項8】
前記第1シールド層と、前記第2シールド層とは、溶接、摩擦圧接、カシメ、ねじ、クランプ、又は焼嵌めのいずれかにより、重ね合わせられる、
請求項1に記載の超電導磁石。
【請求項9】
前記第1シールド層と、前記第2シールド層との間に電気絶縁材料が配置された、
請求項1に記載の超電導磁石。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の超電導磁石を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
被検体に傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイルと、
静磁場を発生する超電導コイルを内包するヘリウム容器と、
超電導磁石と、
前記超電導磁石の内部を真空断熱するための真空容器と、
前記ヘリウム容器と前記真空容器との間に配置され、輻射熱を低減するための熱シールドと、を備え、
前記傾斜磁場コイルは前記超電導磁石よりも前記被検体に近い位置に配設され、
前記熱シールドを構成する部材のうち、少なくとも前記傾斜磁場コイルに対向する部分の部材は、第1シールド層及び第2シールド層の2層の金属材料の重ね合わせで構成され、
前記第1シールド層は前記第2シールド層よりも前記傾斜磁場コイルに近い位置に配置され、
前記第1シールド層を構成する金属材料の導電率は前記第2シールド層を構成する金属材料の導電率より高い、
磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超電導磁石、及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号(MR(Magnetic Resonance)信号)を再構成して画像を生成する撮像装置である。
【0003】
磁気共鳴イメージング装置の静磁場磁石として、例えば、超電導磁石や永久磁石が用いられる。磁気共鳴イメージング装置用の超電導磁石は、例えば、強い磁場を発生させるための超電導コイルを内包するヘリウム容器、ヘリウム容器に対する輻射熱による熱侵入を低減するための熱シールド(輻射シールド、ともいう)、超電導磁石の内部を真空断熱するための真空容器で構成される。
【0004】
超電導コイルは、コイル内に生じる何らかのじょう乱や電気的トラブル等によりクエンチ(超電導破壊)を起こすことがあり、クエンチを起こした場合には、熱シールドに生じる誘起電流によって熱シールド内に非常に大きな電磁力がはたらく。そのため、この電磁力に起因する熱シールドの損傷を抑制するために、熱シールドに追加の機械的補強等が必要となる場合もある。
【0005】
また、磁気共鳴イメージング装置による撮像時には、傾斜磁場コイルの動作に起因する渦電流が熱シールドに発生する。熱シールドに発生した渦電流は、渦磁場として撮像空間に影響を及ぼすため、MR画像の画質に悪影響を与えることがある。
【0006】
熱シールドは、一般的に非磁性の金属材料が用いられるが、超電導コイルがクエンチした場合と、磁気共鳴イメージング装置による撮像時とで、熱シールドを構成する金属材料の導電率について相反する要求がある。この両方の要求を満たす熱シールドを選定することは難しく、従来は、どちらか一方の要求を優先した導電率の金属材料を選定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2016-538920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態の超電導磁石が解決しようとする課題の1つは、撮像されるMR画像の画質を保ちながら、超電導コイルのクエンチに起因する電磁力の影響を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態の被検体に傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイルを有する磁気共鳴イメージング装置で用いられる超電導磁石は、ヘリウム容器と、真空容器と、熱シールドと、を備える。ヘリウム容器は、静磁場を発生する超電導コイルを内包する。真空容器は、超電導磁石の内部を真空断熱する。熱シールドは、ヘリウム容器と真空容器との間に配置され、輻射熱を低減する。傾斜磁場コイルは超電導磁石よりも被検体に近い位置に配設される。熱シールドを構成する部材のうち、少なくとも傾斜磁場コイルに対向する部分の部材は、第1シールド層及び第2シールド層の2層の金属材料の重ね合わせで構成される。第1シールド層は第2シールド層よりも傾斜磁場コイルに近い位置に配置される。第1シールド層を構成する金属材料の導電率は第2シールド層を構成する金属材料の導電率より高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示す概略図。
図2】実施形態に係る超電導磁石の内部構成例について説明する斜視図。
図3図2における部分Aを拡大した断面図であり、超電導コイルのクエンチに起因して熱シールド内に発生する電磁力について説明する図。
図4】磁気共鳴イメージング装置による撮像時に、熱シールドに発生する渦電流に起因するMR画像の画質劣化について説明する図。
図5図3における部分Bを拡大して、実施形態に係る熱シールドの構成例を示す断面図。
図6】実施形態に係るその他の磁気共鳴イメージング装置の構成例について説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、実施形態の超電導磁石、及び磁気共鳴イメージング装置について説明する。
【0012】
(磁気共鳴イメージング装置の全体構成)
図1は、実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の構成例を示す概略図である。磁気共鳴イメージング装置1は、磁石架台10と、受信コイル20と、寝台30と、制御キャビネット40と、コンソール50とを備える。磁石架台10、受信コイル20、及び寝台30は、例えば、検査室と呼ばれるシールドルームに配置される。一方、制御キャビネット40は、例えば、機械室に配置され、コンソール50は、例えば、操作室に配置される。
【0013】
磁石架台10は、超電導磁石11と、傾斜磁場コイル12と、送信コイル(例えば、WB(Whole Body)コイル)13とを備える。磁石架台10の構成品は概略円筒状の筐体に収納されている。
【0014】
超電導磁石11は、概略円筒状をなしており、被検体P(例えば、患者)の撮像領域であるボア(超電導磁石11の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。超電導磁石11は超電導コイルを内包し、超電導コイルは液体ヘリウムによって極低温に冷却されている。超電導磁石11は、励磁モードにおいて静磁場用電源(図示省略)から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、超電導磁石11は、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源から切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、超電導磁石11は長時間、例えば、1年以上に亘って、大きな静磁場を発生し続ける。
【0015】
なお、超電導磁石11の構成についての詳細は後述する。
【0016】
傾斜磁場コイル12も、概略円筒状をなしており、超電導磁石11の内側に配置される。即ち、傾斜磁場コイル12は超電導磁石11よりも被検体Pに近い位置に配設される。傾斜磁場コイル12は、X軸用、Y軸用、Z軸用の3つの傾斜磁場コイルから構成されている。それぞれの傾斜磁場コイル12が傾斜磁場電源41(X軸用41x、Y軸用41y、Z軸用41z)から傾斜磁場電流を供給されることにより、X軸,Y軸,Z軸の方向に被検体Pに印加するための傾斜磁場(勾配磁場ともいう)を発生する。
【0017】
なお、傾斜磁場の生成に伴って発生する渦電流に起因する渦磁場はイメージングの妨げとなることから、傾斜磁場コイル12として、例えば、渦電流の低減を目的としたASGC(Actively Shielded Gradient Coil)が用いられてもよい。ASGCは、直交3軸方向であるX軸、Y軸、及びZ軸方向の各傾斜磁場をそれぞれ形成するためのメインコイルの外側に、漏れ磁場を抑制するためのシールドコイルを設けた傾斜磁場コイルである。
【0018】
送信コイル13も、概略円筒状をなしており、傾斜磁場コイル12の内側に被検体Pを取り囲むように配置される。送信コイル13は、RF送信器42から伝送されたRFパルス信号に従ってRFパルスを被検体Pに向けて送信する。また、送信コイル13は、水素原子核の励起によって被検体Pから放出される磁気共鳴信号(即ち、MR信号)を受信する。
【0019】
受信コイル20は、被検体Pから放出されるMR信号を被検体Pに近い位置で受信する。受信コイル20は、被検体Pの検査部位に応じて、頭部用、首部用、胸部用、脊椎用、上肢用、下肢用、或いは全身用など種々のタイプがある。図1では腹部用のRFコイルが被検体Pに載置されている状態を例示している。
【0020】
制御キャビネット40は、傾斜磁場電源41(X軸用41x、Y軸用41y、Z軸用41z)と、RF送信器42と、RF受信器43と、シーケンスコントローラ44とを備える。
【0021】
傾斜磁場電源41(X軸用41x、Y軸用41y、Z軸用41z)は、シーケンスコントローラ44の指示に基づいて、X軸,Y軸,Z軸方向のそれぞれの傾斜磁場コイル12に傾斜磁場電流を供給することにより、X軸,Y軸,Z軸の方向の傾斜磁場を発生させる。
【0022】
RF送信器42は、シーケンスコントローラ44からの指示に基づいて、RFパルス信号を生成する。RF送信器42は、生成したRFパルス信号を送信コイル13に伝送する。
【0023】
受信コイル20で受信したMR信号は、RF受信器43に伝送される。RF受信器43は、受信コイル20で受信したMR信号をAD(Analog to Digital)変換して得られる生データ(Raw Dataともいう)をシーケンスコントローラ44に出力する。
【0024】
シーケンスコントローラ44は、コンソール50による制御により、傾斜磁場電源41と、RF送信器42と、RF受信器43とをそれぞれ駆動することによって被検体Pの撮像を行う。撮像によってRF受信器43から生データを受信すると、シーケンスコントローラ44は、その生データをコンソール50に送信する。
【0025】
コンソール50は、処理回路51と、メモリ52と、入力インターフェース53と、ディスプレイ54とを備える。
【0026】
処理回路51は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)等のプロセッサの他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びプログラマブル論理デバイス等の処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の回路が挙げられる。処理回路51は、メモリ52に記憶された、又は処理回路51内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで、シーケンスコントローラ44の動作を制御し、パルスシーケンスに従った撮像を実行してMR画像を生成する機能を実現する。
【0027】
また、処理回路51は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、複数のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムをそれぞれ記憶するものであってもよいし、1個のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0028】
メモリ52は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等を備える。メモリ52は、USB(Universal Serial Bus)メモリ、DVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。メモリ52は、処理回路51において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ54への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース53によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。
【0029】
入力インターフェース53は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路51に出力する。
【0030】
ディスプレイ54は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ54は、処理回路51の制御に従って各種情報を表示する。
【0031】
コンソール50は、処理回路51による制御の下、シーケンスコントローラ44から送信される生データをk空間に収容し、メモリ52に記憶する。コンソール50は、処理回路51による制御の下、メモリ52に記憶されたk空間データに対して、逆フーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体PのMR画像を生成する。そして、コンソール50は、処理回路51による制御の下、生成した各種MR画像をメモリ52に格納する。
【0032】
(超電導磁石)
図2は、超電導磁石11の内部構成例について説明する斜視図である。超電導磁石11は、Z軸を中心軸とした概略円筒状をなしており、被検体Pの撮像領域であるボア(超電導磁石11の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。図2に示すように、超電導磁石11は、ヘリウム容器113と、熱シールド112と、真空容器111と、を備える。ヘリウム容器113は、超電導コイル114(図2では、114a~114g)を内包する。超電導コイル114は、静磁場を発生する。超電導コイル114は、例えば、主磁場を形成する超電導コイル(図2では、114a、114b、114c、114d、114e)と漏洩磁場低減するシールド用の超電導コイル(図2では、114f、114g)とにより構成されてもよい。なお、図2に限定されず、超電導コイル114の個数や配置等は各種の条件に応じて変更可能である。
【0033】
ヘリウム容器113は、Z軸を中心軸とした概略円筒状をなして、熱シールド112の内部に備えられ、液体ヘリウムを保持する。超電導コイル114は、ヘリウム容器113の内部に備えられ、極低温に冷却されている。巻枠(図示省略)はそれぞれ、超電導コイル114を配線、配置、及び固定して、超電導コイル114を保持する。なお、超電導磁石11は、液体ヘリウムを極低温に冷却するための冷却器115を備える。
【0034】
熱シールド112は、ヘリウム容器113と同様にZ軸を中心軸とした概略円筒状をなして、真空容器111の内部に備えられ、さらに、ヘリウム容器113を内部に備える。つまり、熱シールド112は、真空容器111とヘリウム容器113との間に配置される。熱シールド112は、ヘリウム容器113に対する輻射熱による熱侵入を低減するための役割を担う。そのために、熱シールド112には、例えば、アルミニウム合金(以下、アルミ材ともいう)、銅合金(以下、銅材ともいう)等の伝熱性能が高い非磁性の金属材料が一般的に用いられる。
【0035】
なお、熱シールド112の構成についての詳細は後述する。
【0036】
真空容器111は、ヘリウム容器113や熱シールド112と同様にZ軸を中心軸とした概略円筒状をなして、ヘリウム容器113と熱シールド112とを内部に有し、超電導磁石11の内部を真空断熱する。
【0037】
ところで、超電導コイル114がクエンチした場合にその影響を低減する観点と、磁気共鳴イメージング装置1による撮像時に画質を維持する観点とで、熱シールド112を構成する金属材料の導電率に対する要求は相反する。このことを、図3及び図4を用いて説明する。図3は、図2における部分Aを拡大した断面図であり、超電導コイル114のクエンチにより熱シールド112内に発生する電磁力について説明する図である。
【0038】
超電導コイル114は、コイル内に生じる何らかのじょう乱や電気的トラブル等によりクエンチ(超電導破壊ともいう)を起こすことがあり、クエンチ発生時には熱シールド内に非常に大きな電磁力を発生させる。より具体的には、超電導コイル114にクエンチが発生すると、電磁誘導によって超電導コイル114の磁気エネルギーが熱シールド112に誘起され、図3の矢印EF1、EF2、及びEF3が示すように、熱シールド112にヘリウム容器113側に向かう電磁力が発生する。クエンチ発生時に熱シールド112にはたらく電磁力は、熱シールド112に誘起される誘起電流に応じて大きくなる。そして、熱シールド112を構成する金属材料の導電率が高くなると、熱シールド112に誘起される誘起電流は増加する。
【0039】
この電磁力が大きくなると熱シールド112が損傷する可能性があり、熱シールド112の損傷を抑制するために、追加の機械的補強等が必要となる場合もある。一方で、熱シールド112の損傷に至らない場合であっても、剛性が不十分な場合に変形が生じて、熱シールド112が外側の真空容器111、又は内側のヘリウム容器113に接触する可能性がある。そこで、熱シールド112を構成する金属材料は、クエンチ発生時に熱シールド112にはたらく電磁力を低減するために、熱シールド112に誘起される誘起電流が小さくなるような導電率が低い金属材料であることが好ましい。したがって、超電導コイル114がクエンチした場合にその影響を低減する観点からは、熱シールド112の材質として、導電率が低い金属材料が好ましい。
【0040】
一方、磁気共鳴イメージング装置1による撮像時には、傾斜磁場コイル12の動作に起因して、熱シールド112において渦電流が発生する。図4は、磁気共鳴イメージング装置1による撮像時に、熱シールド112に発生する渦電流に起因するMR画像の画質劣化について説明する図である。
【0041】
図4(a)と、図4(c)と、図4(e)とは、パルスシーケンスの一例であり、それぞれ、スライス選択傾斜磁場パルスGss、位相エンコード傾斜磁場パルスGpe、リードアウト傾斜磁場パルスGro、を図示している。傾斜磁場パルスの形状は、実際には、矩形波よりもむしろ台形波として近似されるものであり、台形波の立ち下がりと立下がりにおける磁場の変動を打ち消すように、渦電流が発生する。
【0042】
図4(b)と、図4(d)と、図4(f)とは、空間位置に依存しない渦電流磁場の0次成分の波形を模式的に示した一例であり、それぞれ、スライス選択傾斜磁場パルスGssに対応して発生する渦磁場ΔBssの波形、位相エンコード傾斜磁場パルスGpeに対応して発生する渦磁場ΔBpe、リードアウト傾斜磁場パルスGroに対応して発生する渦磁場ΔBroを図示している。熱シールド112に発生する渦電流により、それぞれ独自の渦磁場が形成される。そして、渦磁場が撮像空間に影響を与えるため、MR画像の画質劣化が生じる。渦磁場によるMR画像の画質劣化を低減するために、例えば、傾斜磁場コイルにより印加される傾斜磁場パルスを微調整したり、渦磁場の合成波形等を用いてMR信号の位相を補正したりすることが知られている。
【0043】
渦磁場が指数関数で近似される関数で減衰していく時定数は、例えば、数msから2000ms程度までの値をとり得る。各傾斜磁場パルスのそれぞれの立ち上がり、立ち下がりで発生した複数の渦磁場は、それぞれの傾斜磁場パルスの印加後においても、減衰しながら継続することになる。図4に示すように、各傾斜磁場パルスは正負に印加され、各傾斜磁場パルスにより発生した正負の渦磁場は互いに打ち消しあいながらも積算されていく。そのため、渦磁場の減衰時定数が長い方が、MR信号収集時に渦磁場による影響が低減される効果が得られる。また、渦磁場の減衰時定数が長い方が減衰特性の把握が容易であるため、傾斜磁場パルスの微調整等のMR画像の画質劣化を低減するための補正も容易となる。
【0044】
そして、渦電流が流れる金属材料の導電率が高い方が渦電流の減衰時定数が長くなることが知られている。したがって、磁気共鳴イメージング装置1による撮像時に画質を維持する観点からは、熱シールド112の材質として、導電率が高い金属材料であることが好ましい。
【0045】
上述した通り、超電導コイル114がクエンチした場合と、磁気共鳴イメージング装置1による撮像時とで、熱シールド112を構成する金属材料の導電率について相反する要求がある。この相反する両方の要求を満たす熱シールドを選定することは難しく、従来は、どちらか一方の要求を優先した金属材料や、両方の要求を中間的に満たす金属材料を選定していた。これに対して、以下に説明する実施形態に係る熱シールド112によれば、この相反する両方の要求を同時に満たすことができる。
【0046】
実施形態に係る熱シールド112の構成例を具体的に説明する。熱シールド112は、例えば、傾斜磁場コイル12側の第1熱シールド板112a(図3では、熱シールド112の内筒)と、傾斜磁場コイル12の反対側の第2熱シールド板112d(図3では、熱シールド112の外筒)と、第1熱シールド板112a、及び第2熱シールド板112dの両端に垂直な第3、第4熱シールド板112b、112cとの4つの熱シールド板で構成される。
【0047】
図5は、図3における部分Bを拡大した断面図である。図5に示すように、熱シールド112のうち、少なくとも傾斜磁場コイル12に対向する第1熱シールド板112aは、第1シールド層112e、及び第2シールド層112fの2層の金属材料の重ね合わせで構成される。第1シールド層112eは第2シールド層112fよりも傾斜磁場コイル12に近い位置、即ち、撮像空間に近い位置に配置される。
【0048】
なお、熱シールド112のうち、傾斜磁場コイル12に対向する第1熱シールド板112aを除く3つの熱シールド板112b、112c、112dは、第1熱シールド板と同様に第1シールド層112e、及び第2シールド層112fの2層の金属材料の重ね合わせで構成してもよいが、これに限定されない。例えば、それぞれ、アルミ材、銅材、ステンレス鋼材等の非磁性の一層の金属材料で構成してもよい。傾斜磁場コイル12に対向する第1熱シールド板112aを除く3つの熱シールド板112b、112c、112dの金属材料やその板厚は、所望の導電率や機械強度に応じて任意に選定できる。
【0049】
前述した通り、撮像時に熱シールド112に発生する渦電流に起因するMR画像の画質劣化を低減するためには、渦磁場の減衰時定数が長くなるように、第1熱シールド板112aは高い導電率の金属材料で構成されることが好ましい。渦磁場の減衰時定数は、例えば、100ms程度であってもよい。また、第1熱シールド板112aに発生する渦電流は金属材料の表面から内部に向かって減少するため、第1熱シールド板112aの表面側、即ち、撮像空間に近い位置で渦磁場の減衰時定数の影響が大きくなる。つまり、第1熱シールド板112aの表面側、即ち、撮像空間に近い位置の金属材料の導電率を高くすることが好ましい。
【0050】
そこで、実施形態の超電導磁石11では、傾斜磁場コイル12に対向する第1熱シールド板112aは、第1シールド層112eを構成する金属材料の導電率が第2シールド層112fを構成する金属材料の導電率より高くなるように構成される。導電率の高い第1シールド層112eが第2シールド層112fよりも撮像空間に近い位置に配置されることにより、第1シールド層112eに生じる渦電流の減衰時定数が長くなる。この結果、渦電流に起因するMR画像の画質劣化を低減することができる。
【0051】
また、金属材料において電気伝導率と熱伝導率とには正の相関関係があり、高い導電率の金属材料では熱伝導率も高い。よって、第2シールド層112fよりも撮像空間に近い位置に配置されている第1シールド層112eにおいて熱伝導率が高い。第1シールド層112eの熱伝導率が高いことで、傾斜磁場コイル12の動作に起因して発生する渦電流による誘導加熱(GCIH:Gradient Coil Induction Heating)に対しても効果的に熱を拡散できる。
【0052】
一方で、前述した通り、超電導コイル114のクエンチ発生時に、熱シールド112にヘリウム容器113側に向かう電磁力がはたらく。クエンチ発生時に熱シールド112にはたらく電磁力は、熱シールド112を構成する金属材料の導電率が高い方が大きくなる。第1シールド層112eを構成する金属材料の導電率は、第2シールド層112fを構成する金属材料の導電率よりも高いため、第1シールド層112eに誘起される誘起電流とその誘起電流に起因する電磁力は、第2シールド層112fに誘起される誘起電流とその誘起電流に起因する電磁力よりも大きくなる。
【0053】
そこで、実施形態の超電導磁石11では、第2シールド層112fの機械強度が第1シールド層112eの機械強度よりも高くなるような金属材料で、第2シールド層112fを構成するようにしている。クエンチによって生じる電磁力の方向はヘリウム容器113側に向かう方向であるため、第1シールド層112eと比べて高い機械強度を有する第2シールド層112fにより、高い導電率の第1シールド層112eにかかる大きな電磁力に耐えることができる。なお、ヘリウム容器113に近い第2シールド層112fの導電率は、第1シールド層112eの導電率よりも低いため、第2シールド層112fにはたらく電磁力を軽減する効果もある。
【0054】
以上を要約すると、傾斜磁場コイル12に対向する第1熱シールド板112aにおいて、傾斜磁場コイル12に近い第1シールド層112eを構成する金属材料の導電率は、ヘリウム容器113に近い第2シールド層112fを構成する金属材料の導電率よりも高いことが好ましい。また、ヘリウム容器113に近い第2シールド層112fを構成する金属材料の機械強度は、傾斜磁場コイル12に近い第1シールド層112eを構成する金属材料の機械強度よりも高いことが好ましい。
【0055】
たとえば、第1シールド層112eを構成する金属材料と第2シールド層112fを構成する金属材料とを、それぞれ、導電率が異なる第1のアルミ材と、第2のアルミ材とで構成することができるが、この場合、第1のアルミ材の導電率は、第2のアルミ材の導電率より高くなるように構成するのがよい。例えば、第1のアルミ材は、例えば、A1050等の、アルミニウム純度の高い、所謂純アルミニウムと呼ばれるアルミ材が好ましい。一方、第2のアルミ材は、例えば、A5083やA6061等の、マグネシウムを含有するアルミ材が好ましい。A1050の方がA5083やA6061よりも導電率が高く、その一方で、A5083やA6061の方がA1050よりも機械強度が高いからである。
【0056】
また、第1シールド層112eを構成する金属材料をアルミ材とし、第2シールド層112fを構成する金属材料をステンレス鋼材としてもよい。一般的に、アルミ材の導電率は、ステンレス鋼材の導電率よりも高く、ステンレス鋼材の機械強度は、アルミ材の機械強度よりも高い。
【0057】
他に、第1シールド層112eを構成する金属材料と、第2シールド層112fを構成する金属材料とのそれぞれを、アルミ材と、銅材とのいずれかにしてもよい。銅材とアルミ材とは、その純度により導電率の高低関係が交換する。そのため、銅材とアルミ材とにおいて、より導電率が高い一方の金属材料により第1シールド層112eを構成し、より導電率が低い他方の金属材料により第2シールド層112fを構成するようにする。具体的には、例えば、第1シールド層112eをA1050等の銅材より導電率が高いアルミ材とし、第2シールド層112fを銅材とする組み合わせとしてもよい。また、第1シールド層112eを銅材とし、第2シールド層112fをA5083やA6061等の銅材より導電率が低いアルミ材とする組み合わせとしてもよい。
【0058】
このように、第1熱シールド板112aを2種類のアルミ材を重ねた構造とする他に、アルミ材と銅材、アルミ材とステンレス鋼材のような異種の金属材料を重ねた構造とすることによっても、超電導コイル114がクエンチした場合と、磁気共鳴イメージング装置1による撮像時とで、熱シールド112を構成する金属材料の導電率の相反する要求を同時に満たすことができる。また、アルミ材と銅材、アルミ材とステンレス鋼材のような2種類の異種の金属材料を重ねた構造とすることによって、2種類のアルミ材を重ねた構造では実現できない導電率や熱伝導率、機械強度を有する熱シールド112を実現することができる。
【0059】
また、第1シールド層112e、及び第2シールド層112fを構成する金属材料の板厚は、それぞれ、機械強度と抵抗値とに基づいて最適化することができる。第1シールド層112e、及び第2シールド層112fを構成する金属材料の板厚は、それぞれ、例えば、1mm以上であってもよい。
【0060】
超電導磁石11の内部と外部とで高断熱性を維持するため、ヘリウム容器113と熱シールド112、熱シールド112と真空容器111の各容器の間には適切な空隙(ギャップともいう)が設けられる。各容器間の空隙はそれぞれ、例えば、10mm程度であってもよい。その一方で、各容器間の空隙を、磁気共鳴イメージング装置1の機種に応じた実現性やコスト削減等のために、できるだけ狭くすることが好ましい場合もある。あるいは、各容器に使用する金属材料の板厚をできるだけ薄くすることが好ましい場合もある。そのため、熱シールド112を構成する金属材料の導電率について相反する要求を同時に満たしながら、熱シールド112を構成する金属材料の板厚、即ち、第1シールド層112e、及び第2シールド層112fを構成する金属材料の合計の板厚を、できるだけ薄くすることが好ましい。
【0061】
ヘリウム容器113側に配置される導電率の低い第2シールド層112fの板厚は、主として超電導コイル114がクエンチした場合に発生する電磁力に耐える機械強度となるように最適化される。この場合に、導電率の高い第1シールド層112eに発生する電磁力の方が第2シールド層112fに発生する電磁力よりも大きくなるため、それに耐える機械強度が必要となる。しかしながら、導電率の低い第2シールド層112f自体にも、比較的小さいとはいえども電磁力が発生する。よって、第1シールド層112eと第2シールド層112fとに発生する合計の電磁力に対して、第1シールド層112eと第2シールド層112fとの両方の金属材料で耐えうるように、機械強度に基づいて最適化することが好ましい。
【0062】
真空容器111側、即ち、撮像空間側に配置される導電率の高い第1シールド層112eの板厚は、主として撮像時の渦電流の減衰時定数が所望の値以上に長くなるように、抵抗値に基づいて最適化される。渦電流の減衰時定数は、金属材料の抵抗値が小さいほど長くなることが知られている。さらに、金属材料の抵抗値は、その金属材料の導電率だけでなく、その金属材料の板厚によっても変化する。より具体的には、金属材料の抵抗値は、その金属材料の導電率が高いほど小さくなる。また、金属材料の抵抗値は、その金属材料の板厚が厚いほど小さくなる。よって、撮像時の渦電流の減衰時定数が所望の値以上に長くなるように、第1シールド層112eを構成する金属材料の材質や板厚によって抵抗値を最適化することができる。
【0063】
このように、第1シールド層112e、及び第2シールド層112fを構成する金属材料の板厚は、それぞれ、機械強度と抵抗値とに基づいて最適化される。さらに、超電導磁石11内部の各容器間の空隙やコスト等も同時にバランスよく満足させるように、第1シールド層112e、及び第2シールド層112fを構成する金属材料の材質や板厚を最適化してもよい。また、超電導磁石11内部の各容器間の空隙において実現可能な範囲で最適な機械強度と抵抗値とを有する第1シールド層112e、及び第2シールド層112fを構成する金属材料の材質と板厚を選定してもよい。
【0064】
熱シールド112は、第1シールド層112eと、第2シールド層112fとの金属接合で形成される。第1シールド層112eと、第2シールド層112fとの2つの層は、例えば、溶接、摩擦圧接、カシメ、ねじ、クランプ、又は焼嵌め等により、重ね合わせられ接合される。
【0065】
なお、第1シールド層112eと、第2シールド層112fとの重ね合わせにおいて、蜜に接合されていない部分が生じる場合がある。また、撮像時に、傾斜磁場コイルの動作に起因する渦電流によって生じる電磁力によって熱シールド112が振動する場合がある。この振動により、第1シールド層112eと、第2シールド層112fとで接触摩擦帯電等が生じる可能性があるため、第1シールド層112eと、第2シールド層112fとの間に電気絶縁材料が配置されてもよい。
【0066】
(その他)
ここまで、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1として、超電導磁石11と、傾斜磁場コイル12と、送信コイル13とが概略円筒状をなしている円筒型の磁気共鳴イメージング装置について説明してきた。しかしながら、超電導磁石、及び磁気共鳴イメージング装置は、円筒型に限らず、平面開放型であってもよい。
【0067】
図6は、平面開放型の磁気共鳴イメージング装置の構成例について説明する断面図である。図6に示すように、平面開放型の磁気共鳴イメージング装置は、磁石架台10Aを平板円形状とし、例えば、2つの平板円形状の超電導磁石11Aに挟まれた開放空間において被検体Pを撮像するように構成される。この場合に、磁石架台10Aを構成する超電導磁石11Aと、傾斜磁場コイル12Aと、送信コイル13Aとが、平板円形状をなしている以外は、概略円筒状をなしている円筒型の磁気共鳴イメージング装置と同等の構成を備える。
【0068】
平面開放型の磁気共鳴イメージング装置では、2つの平板円形状の超電導磁石11Aを構成する真空容器111´と、熱シールド112´と、ヘリウム容器113´とが、XY面に平行な平板円形状をなす。熱シールド112´は、傾斜磁場コイル12A側の第1熱シールド板112a´と、傾斜磁場コイル12Aの反対側の熱シールド板112d´と、傾斜磁場コイル12A側の熱シールド板112a´、及び傾斜磁場コイル12Aの反対側の熱シールド板112d´の円外形に垂直な熱シールド板112g´とで構成される。図6に示すように、傾斜磁場コイル12A側の熱シールド板112a´において、第1シールド層112e´は第2シールド層112f´よりも傾斜磁場コイルに近い位置に配置されている。なお、平面開放型の磁気共鳴イメージング装置の第1シールド層112e´と、第2シールド層112f´とが、平板円形状をなしている以外は、概略円筒状をなしている円筒型の磁気共鳴イメージング装置1と同等の構成を備える。つまり、平面開放型の磁気共鳴イメージング装置の第1シールド層112e´と、第2シールド層112f´とを構成する2層の金属材料の材質や板厚等は円筒型の磁気共鳴イメージング装置1と同様である。
【0069】
以上説明した実施形態に係る超電導磁石、及び磁気共鳴イメージング装置によれば、熱シールドを構成する金属材料の導電率について相反する要求を満たすことができ、撮像されるMR画像の画質を保ちながら、超電導コイルのクエンチに起因する電磁力の影響を抑制することができる。
【0070】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
1…磁気共鳴イメージング装置 11…超電導磁石 12…傾斜磁場コイル 111…真空容器 112…熱シールド 112a…第1熱シールド板 112d…第2熱シールド板 112e…第1シールド層 112f…第2シールド層 113…ヘリウム容器 114…超電導コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6