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特開2024-117327増幅回路、電力増幅回路、および、バイアス生成回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117327
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】増幅回路、電力増幅回路、および、バイアス生成回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/52 20060101AFI20240822BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20240822BHJP
   H03F 1/22 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H03F1/52 220
H03F3/24
H03F1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023365
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田部井 慎
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA13
5J500AA14
5J500AA41
5J500AC57
5J500AC81
5J500AC92
5J500AF01
5J500AF10
5J500AH02
5J500AH10
5J500AH24
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK01
5J500AK11
5J500AK12
5J500AK17
5J500AK21
5J500AK29
5J500AM08
5J500AM17
5J500AS14
5J500AT01
5J500LV08
5J500WU08
(57)【要約】
【課題】増幅回路において、電源電圧が変動する場合においてもトランジスタの耐圧を超えないゲートバイアスを与える。
【解決手段】増幅回路は、増幅すべき信号が入力される入力端子と、入力端子に入力される信号が印加されるゲートを有する第1FETと、第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETおよび第3FETと、電源に最も近い側に位置する第3FETと負荷との間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子と、第2FETおよび第3FETのゲートに与えるバイアスおよびを生成するための分圧抵抗回路と、分圧抵抗回路から第2FETのゲートに与えるバイアスが所定の基準電圧を超えた時に、第3FETのゲートに与えるバイアスをクランプするクランプ回路と、を有し、第1FETから第3FETは縦積み接続されている。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅すべき信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力される信号が印加されるゲートを有する第1FETと、
前記第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETおよび第3FETと、
前記第2FETおよび前記第3FETのうち、前記電源に近い側に位置する第3FETと負荷との間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子と、
前記第2FETおよび前記第3FETの各ゲートに与えるバイアスを生成するための分圧抵抗回路と、
前記分圧抵抗回路から前記第2FETのゲートに与えるバイアスが所定の基準電圧を超えた時に、前記第3FETのゲートに与えるバイアスをクランプするクランプ回路と、
を有し、
前記第1FET、前記第2FETおよび前記第3FETが縦積み接続される増幅回路。
【請求項2】
前記分圧抵抗回路は、第1抵抗と、第2抵抗と、第3抵抗と、を含み、
前記第1抵抗は、基準電位に最も近い位置に設けられ、
前記第2抵抗は、前記第1抵抗より前記電源に近い側に設けられ、
前記第3抵抗は、前記第2抵抗より前記電源に近い側に設けられ、
前記第1抵抗の抵抗値および前記第2抵抗の抵抗値は、前記第3抵抗の抵抗値より大きい請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記第1抵抗の抵抗値は、前記第2抵抗の抵抗値より大きい請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記クランプ回路は、
前記分圧抵抗回路から前記第2FETのゲートに与えるバイアスの電圧値を、前記基準電圧と比較する比較回路と、
前記比較回路の出力に基づいてオン状態になるスイッチング素子と、
を含み、
前記スイッチング素子がオン状態になっている時に、前記第3FETのゲートに与えるバイアスを低減する
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の増幅回路。
【請求項5】
前記比較回路は、
前記分圧抵抗回路から前記第2FETのゲートに与えるバイアスの電圧値が前記基準電圧を超えているときに、前記スイッチング素子をオン状態にするための電圧を前記スイッチング素子に与え、
前記スイッチング素子がオン状態になっている時に、前記分圧抵抗回路から前記第3FETのゲートに向かう経路上のノードから電流を引き抜くことによって、前記第3FETのゲートに与えるバイアスを低減する
請求項4に記載の増幅回路。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、Nチャネル型またはPチャネル型のMOSFETである請求項4に記載の増幅回路。
【請求項7】
バンドギャップリファレンス電圧を生成する基準電圧生成回路と、前記基準電圧生成回路が生成するバンドギャップリファレンス電圧に基づいて一定の電圧値を生成する定電圧生成回路と、をさらに含み、
前記定電圧生成回路によって生成される、一定の電圧値を前記基準電圧とする請求項4に記載の増幅回路。
【請求項8】
ダイオード接続され、かつ、前記分圧抵抗回路と基準電位との間に設けられたFETをさらに含む請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の増幅回路。
【請求項9】
一定電流を出力する定電流源と、前記第1FETとともにカレントミラー回路を形成するレプリカFETと、をさらに含み、
前記カレントミラー回路によって、前記定電流源が出力する一定電流に対応するバイアスを生成し、前記第1FETに与える
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の増幅回路。
【請求項10】
前記分圧抵抗回路は、
第1抵抗と、前記第1抵抗に直列に接続される第2抵抗と、前記第2抵抗に直列に接続される第3抵抗とを含み、
前記第1抵抗側に基準電位が接続され、かつ、前記第3抵抗側に前記電源が接続され、
前記第1抵抗によって生成される電圧を、前記第2FETのゲートに与えるバイアスとし、
前記第2抵抗によって生成される電圧を、前記第3FETのゲートに与えるバイアスとする
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の増幅回路。
【請求項11】
前記第3FETと負荷との間に設けられた第4FETと、
前記第3抵抗と前記電源との間に設けられた第4の抵抗と、
をさらに含み、前記第3抵抗によって生成される電圧を、前記第4FETのゲートに与えるバイアスとする
請求項10に記載の増幅回路。
【請求項12】
前記電源の電圧値は変動する、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の増幅回路。
【請求項13】
隣り合うドレインとソースとが接続された複数のFETを含み、直列接続された複数の抵抗の分圧によって生成される各電圧をバイアスとし、前記各バイアスを、前記複数のFETの各ゲートに与え、1つの前記バイアスが所定の基準電圧を超えた時に、他の前記バイアスをクランプするようにした増幅回路。
【請求項14】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の増幅回路をドライバ段増幅回路とし、前記ドライバ段増幅回路の出力を入力とするパワー段増幅回路をさらに含む、電力増幅回路。
【請求項15】
前記パワー段増幅回路はバイポーラトランジスタによって構成される請求項14に記載の電力増幅回路。
【請求項16】
直列接続された少なくとも3段の抵抗からなり、抵抗分圧によって各段からバイアスを生成する分圧抵抗回路と、
ある段において生成される前記バイアスが所定の基準電圧を超えた時、その段よりも電源に近い他の段の前記バイアスをクランプするクランプ回路と、
を有し、
隣り合うドレインとソースとが接続されている複数のFETの各ゲートに、前記バイアスを与える、
バイアス生成回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路、電力増幅回路、および、バイアス生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅素子であるトランジスタを縦積みに接続した増幅回路が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の増幅回路においては、電源と基準電位との間に、複数段のトランジスタを設けている。また、複数段のトランジスタのうち、接地電位に最も近いトランジスタのベースに、増幅すべき信号が入力されている。そして、複数段のトランジスタのうち、電源に最も近いトランジスタと電源との間に負荷が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-097643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通信装置においては、電源電圧が一定ではなく、変動する場合がある。例えば、移動通信装置の出力電力、すなわちパワーモードに応じて電源電圧が変動する場合がある。そのような場合において、上述した特許文献1の増幅回路を採用すると、以下のような問題が生じる。すなわち、高い電源電圧に合わせてトランジスタのゲートバイアスを設定すると、電源電圧が下がった時にゲート電圧が高すぎてトランジスタの耐圧を超えることがある。一方、低い電源電圧に合わせてトランジスタのゲートバイアスを設定すると、電源電圧が高くなった時にゲート電圧が低すぎてトランジスタの耐圧を超えることがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、電源電圧が変動する場合においてもトランジスタの耐圧を超えないゲートバイアスを与えることができる増幅回路、電力増幅回路、および、バイアス生成回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示のある態様による増幅回路は、増幅すべき信号が入力される入力端子と、前記入力端子に入力される信号が印加されるゲートを有する第1FETと、前記第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETおよび第3FETと、前記第2FETおよび前記第3FETのうち、前記電源に近い側に位置する第3FETと負荷との間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子と、前記第2FETおよび前記第3FETの各ゲートに与えるバイアスを生成するための分圧抵抗回路と、前記分圧抵抗回路から前記第2FETのゲートに与えるバイアスが所定の基準電圧を超えた時に、前記第3FETのゲートに与えるバイアスをクランプするクランプ回路と、を有し、前記第1FET、前記第2FETおよび前記第3FETが縦積み接続される。
【0007】
また、本開示の他の態様による増幅回路は、隣り合うドレインとソースとが接続された複数のFETを含み、直列接続された複数の抵抗の分圧によって生成される各電圧をバイアスとし、前記各バイアスを、前記複数のFETの各ゲートに与え、1つの前記バイアスが所定の基準電圧を超えた時に、他の前記バイアスをクランプするようにした増幅回路である。
【0008】
また、本開示の電力増幅回路は、上記のいずれか1つの増幅回路をドライバ段増幅回路とし、前記ドライバ段増幅回路の出力を入力とするパワー段増幅回路をさらに含む。
【0009】
また、本開示のバイアス生成回路は、直列接続された少なくとも3段の抵抗からなり、抵抗分圧によって各段からバイアスを生成する分圧抵抗回路と、ある段において生成される前記バイアスが所定の基準電圧を超えた時、その段よりも電源に近い他の段の前記バイアスをクランプするクランプ回路と、を有し、隣り合うドレインとソースとが接続されている複数のFETの各ゲートに、前記バイアスを与える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電源電圧が変動する場合においてもトランジスタの耐圧を超えないゲートバイアスを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、バイポーラトランジスタを用いて電力増幅器を作成する場合を説明する図である。
図2図2は、電界効果トランジスタを用いて電力増幅器を作成する場合を説明する図である。
図3図3は、複数のFETによる縦積み接続の例を示す図である。
図4図4は、電源電圧が一定の場合の増幅器の構成例を示す図である。
図5図5は、電源電圧が変動する場合の増幅器の構成例を示す図である。
図6図6は、縦積み接続されたFETにおいて電源電圧が比較的高い場合の各段のドレイン-ソース間電圧Vdsの状態を示す図である。
図7図7は、縦積み接続されたFETにおいて電源電圧が比較的低い場合の各段のドレイン-ソース間電圧の状態を示す図である。
図8図8は、第1比較例による増幅回路を示す回路図である。
図9図9は、図8に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図10図10は、図8に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図11図11は、第2比較例による増幅回路を示す回路図である。
図12図12は、図11に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図13図13は、図11に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図14図14は、第1実施形態による増幅回路を示す回路図である。
図15図15は、図14に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図16図16は、図14に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図17図17は、図14に示す増幅回路の動作例を示す図である。
図18図18は、第2実施形態による増幅回路を示す回路図である。
図19図19は、第3実施形態による増幅回路を示す回路図である。
図20図20は、第4実施形態による増幅回路を示す回路図である。
図21図21は、ドライバ段をSi、パワー段をGaAsで構成したHybrid増幅回路の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
以下、実施形態の理解を容易にするために、比較例について先に説明する。
【0014】
(比較例)
図1は、バイポーラトランジスタを用いて電力増幅器を作成する場合を説明する図である。図2は、電界効果トランジスタを用いて電力増幅器を作成する場合を説明する図である。
【0015】
図1は、GaAsによるバイポーラトランジスタTrを用いて電力増幅器、すなわちパワーアンプ(Power Amplifier、以下PAと呼ぶことがある)を作成する場合を示す。バイポーラトランジスタTrは、ベースに与えられる電流によって制御される、電流制御型の素子である。
【0016】
図2は、電界効果トランジスタ、すなわちFET(Field Effect Transistor、以下、FETと呼ぶ)を示す。FETは、ゲートに与えられる電圧によって制御される、電圧制御型の素子である。SOI(Silicon on Insulator)のCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)PAで使用するFETについては、FETの性能(カットオフ周波数ftや相互コンダクタンスgmなど)を改善するため微細化プロセスを使用している。このため、SOI CMOS PAで使用するFETについては、GaAsによるバイポーラトランジスタTrに比べて、耐圧が低くなっている。
【0017】
ここで、電源Vddと基準電位との間に、複数のFETを縦積みに接続する構成(以下、縦積み接続と呼ぶ)が考えられる。図3は、複数のFETによる縦積み接続の例を示す図である。図3は、5つのFETによる、5段縦積み接続の例を示す。図3において、FET11、12、13、14および15は、基準電位と電源Vddとの間に縦積み接続される。基準電位は、例えば、接地電位である。図3に示す縦積み接続においては、連続して接続されるFETについて、隣り合うドレインとソースとが接続されている。ただし、本明細書では、基準電位と電源Vddとの間に設けられているFETのうち、連続して接続されていない場合も縦積み接続と呼ぶことがある。例えば、FET12とFET14に着目すると、それらの間にFET13が存在するので、FET12とFET14とは接続されていない。このように直接接続されていない場合についても、縦積み接続に含まれる。以降の説明においても同様である。
【0018】
FET11、12、13、14、15の各ゲートには、抵抗31、32、33、34、35が接続される。また、FET11、12、13、14、15の各ゲートと基準電位との間には、キャパシタ41、42、43、44、45が設けられる。FET11のゲートは、キャパシタ41を介して入力端子RFinに接続される。FET15と電源Vddとの間には、チョークコイルLが接続される。FET15とチョークコイルLとの間には、整合回路MNを介して出力端子RFoutが接続される。出力端子RFoutには、負荷RLが接続される。なお、FET15のドレインからみると、負荷RLに、チョークコイルLおよび整合回路MNを含めた部分が、負荷インピーダンスとしてみえる。
【0019】
ここで、FET11のソース-ドレイン間電圧を電圧Vds1、FET12のソース-ドレイン間電圧を電圧Vds2、FET13のソース-ドレイン間電圧を電圧Vds3、FET14のソース-ドレイン間電圧を電圧Vds4、FET15のソース-ドレイン間電圧を電圧Vds5、とする。各FET11、12、13、14、15が破壊されないためには、電源Vddの最大値において、各電圧Vds1、Vds2、Vds3、Vds4、Vds5が耐圧以下の電圧値になる必要がある。したがって、各ソース-ドレイン間電圧が耐圧を超えないように、各ゲートに与えるバイアスvg1、vg2、vg3、vg4およびvg5の電圧値を制御する必要がある。
【0020】
電源Vddの電圧値が固定である場合と、変動する場合とが考えられる。図4は、電源電圧が一定の場合の増幅器の構成例を示す図である。図4に示すように、LDO(Low Dropout)レギュレータによって生成した電源電圧VccをPAに入力する。PAは、入力信号S1を増幅し、出力信号S2として出力する。PAは、出力電力V11によらず、電源電圧V10は一定である。
【0021】
一方、例えば、セルラー(Cellular)電話網の通信装置に用いられる増幅器の電源については、消費電力を削減するため、パワーモードによって電源電圧が変動する。図5は、電源電圧が変動する場合の増幅器の構成例を示す図である。パワーモードが変わった場合には、変動させた電源電圧VccをPAに入力する。出力電力V21によって電源電圧V20を変動させる必要がある。例えば、DCDCコンバータによって電圧値を変えた電源電圧VccをPAに入力する。
【0022】
パワーモードに応じて電源電圧を変動させる場合、FETの耐圧を超えないように制御する必要がある。図3に示すように、FETを縦積み接続することによって、各段にかかる電圧を耐圧以下に抑えることができる。高い電源電圧に合わせてトランジスタのゲートバイアスを設定すると、電源電圧が下がった時にゲート電圧が高すぎてトランジスタの耐圧を超えることがある。一方、低い電源電圧に合わせてトランジスタのゲートバイアスを設定すると、電源電圧が高くなった時にゲート電圧が低すぎてトランジスタの耐圧を超えることがある。トランジスタの耐圧を超えないようにするには、電源Vddの電圧に追従してゲートバイアスを制御する必要がある。
【0023】
図6は、縦積み接続されたFETにおいて電源Vddの電圧が比較的高い場合の各段のドレイン-ソース間電圧Vdsの状態を示す図である。図6の場合、例えば、電源電圧値が最大値である。図6の場合、FETの各段に、電圧Vdsが均等に分配される状態になる。すなわち、FETの各段において、電圧Vdsが大きいことを示す「Vds大」である。
【0024】
図7は、縦積み接続されたFETにおいて電源Vddの電圧が比較的低い場合の各段のドレイン-ソース間電圧Vdsの状態を示す図である。図7の場合、例えば、電源電圧値が最大値よりも低い値である。図7の場合、基準電位に最も近い、FET11の電圧Vds1について、電圧Vdsが大きいことを示す「Vds大」とする。また、基準電位に2番目に近いFET12の電圧Vds2について、電圧Vdsが中程度であることを示す「Vds中」とする。その他のFET13、14、15の電圧Vds3、Vds4、Vds5について、電圧Vdsが低いことを示す「Vds小」とする。電源Vddの電圧に追従してゲートバイアスを制御しようとする場合には、図6および図7に示すように、ゲートバイアスを制御する必要がある。
【0025】
(第1比較例)
図8は、第1比較例による増幅回路100を示す回路図である。図8において、本例の増幅回路100は、FET11、12、13、14、15と、抵抗21、22、23、24、25と、抵抗31、32、33、34、35と、キャパシタ41、42、43、44、45と、FET16と、を含む。
【0026】
FET11、12、13、14、15は、基準電位と電源Vddとの間に設けられる。FET11、12、13、14、15は、縦積み接続される。すなわち、FET11のドレインが基準電位に接続され、FET11のソースがFET12のドレインに接続される。FET12のソースは、FET13のドレインに接続される。FET13のソースは、FET14のドレインに接続される。FET14のソースは、FET15のドレインに接続される。FET15のソースは、チョークコイルLを介して電源Vddに接続される。FET15のソースとチョークコイルLとの間には、整合回路MNを介して出力端子RFoutが接続される。本稿において、FET11を第1FETと、FET12を第2FETと、FET13を第3FETと、FET14を第4FETと、FET15を第5FETと、それぞれ呼ぶことがある。
【0027】
電源Vddは可変電源であり、その電圧値は固定値ではなく、変動する。縦積み接続されるFET11からFET15のうち、電源Vddに最も近いFET15の電源Vdd側には電源Vddとの間にチョークコイルLが接続される。チョークコイルLとFET15との間には整合回路MNを介して出力端子RFoutが接続される。出力端子RFoutには、負荷RLが接続される。
【0028】
抵抗31およびキャパシタ41は、FET11に対応して設けられる。FET11のゲートには、抵抗31の一端、キャパシタ41の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ41の他端は、入力端子RFinが接続される。入力端子RFinには、増幅すべき信号が入力される。
【0029】
抵抗32およびキャパシタ42は、FET12に対応して設けられる。FET12のゲートには、抵抗32の一端、キャパシタ42の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ42の他端は、基準電位に接続される。
【0030】
抵抗33およびキャパシタ43は、FET13に対応して設けられる。FET13のゲートには、抵抗33の一端、キャパシタ43の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ43の他端は、基準電位に接続される。
【0031】
抵抗34およびキャパシタ44は、FET14に対応して設けられる。FET14のゲートには、抵抗34の一端、キャパシタ44の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ44の他端は、基準電位に接続される。
【0032】
抵抗35およびキャパシタ45は、FET15に対応して設けられる。FET15のゲートには、抵抗35の一端、キャパシタ45の一端、がそれぞれ接続される。キャパシタ45の他端は、基準電位に接続される。
【0033】
FET16は、そのドレインとゲートとが接続され、いわゆるダイオード接続になっている。FET16は、抵抗21と基準電位との間に、設けられる。
【0034】
抵抗21、22、23、24、25は、電源Vddと基準電位との間に直列に接続された、ラダー抵抗である。抵抗21、22、23、24、25は、分圧抵抗回路20となる。各抵抗21、22、23、24、25を、同じラダー抵抗によって実現することにより、抵抗同士のペア性のズレなどによる各段のゲートバイアスの逆転などを防ぐことができる。ここで、「同じラダー抵抗」とは、製造プロセスや材料が同じであるラダー抵抗を指す。
【0035】
抵抗21の一端は、FET16のドレインおよびゲートに接続される。抵抗21の一端は、FET16によるダイオードを介して基準電位に接続される。FET16は、分圧抵抗回路20の基準電位側に接続されている。このため、FET16は、分圧抵抗回路20と基準電位との間に、設けられる。
【0036】
分圧抵抗回路20において、抵抗21と抵抗22とは直列に接続される。抵抗21と抵抗22との接続点は、抵抗32の他端に接続される。抵抗21と抵抗22との接続点の電圧は、バイアスvg2としてFET12のゲートに与えられる。抵抗22と抵抗23とは直列に接続される。抵抗22と抵抗23との接続点は、抵抗33の他端に接続される。抵抗22と抵抗23との接続点の電圧は、バイアスvg3としてFET13のゲートに与えられる。抵抗23と抵抗24とは直列に接続される。抵抗23と抵抗24との接続点は、抵抗34の他端に接続される。抵抗23と抵抗24との接続点の電圧は、バイアスvg4としてFET14のゲートに与えられる。抵抗24と抵抗25とは直列に接続される。抵抗24と抵抗25との接続点は、抵抗35の他端に接続される。抵抗24と抵抗25との接続点の電圧は、バイアスvg5としてFET15のゲートに与えられる。
【0037】
また、図8において、本例の増幅回路100は、FET17と、定電流源60と、を含む。定電流源60は、一定電流を出力する。定電流源60の出力側には、FET17が接続される。FET17は、そのドレインとゲートとが接続され、いわゆるダイオード接続になっている。FET17には、抵抗31の他端が接続される。FET17は、第1FET11とともにカレントミラー回路を形成するレプリカ(replica)トランジスタである。FET1およびFET17によるカレントミラー回路によって、定電流源60から出力される一定電流に比例した電流がFET1のドレイン-ソース間に流れる。
【0038】
(第1比較例の動作)
図8に示す増幅回路100において、FET12からFET15の各ゲートには、分圧抵抗回路20の抵抗分圧によって生成されるバイアスが与えられる。増幅回路100は、入力端子RFinに入力される高周波信号を増幅する。増幅回路100は、増幅した信号を出力端子RFoutから出力する。
【0039】
ここで、図9および図10は、図8に示す増幅回路100の動作例を示す図である。図9は、増幅回路100の各FETのゲートに与えるバイアスのシミュレーション結果を示す図である。図9において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はFETのゲートに与えられるバイアス(すなわち、ゲートバイアス)の電圧vgの電圧値[V]である。図9は、電源Vddの電圧値の変化に対する、各バイアスの電圧値の変化を示す。以下、ゲートバイアスを、「バイアス」と略称することがある。
【0040】
図9において、電源Vddの電圧値が変動すると、バイアスvg2~vg5の各電圧値が変動する。バイアスvg1の電圧値は、一定である。図9中の矢印YJで示すように、電源Vddの電圧値が低下した時、特にバイアスvg2、vg3といった低い電位側(基準電位に近い側)の電圧値が下がりすぎてしまう。
【0041】
図10は、ドレイン-ゲート間電位差のシミュレーション結果を示す図である。図10において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はドレイン-ゲート間の電圧値Vdg[V]である。図10中の往復矢印は各FETの未破壊領域A1である。未破壊領域は、その領域内での動作であれば、FETが破壊に至らない領域である。図10に示すように、バイアスvg1~vg5は、すべて、未破壊領域A1内の電圧値になっている。
【0042】
(第2比較例)
図11は、第2比較例による増幅回路101を示す回路図である。図11において、本例の増幅回路101は、図8を参照して説明した増幅回路100とは異なり、可変電源である電源Vddの他に、固定電源を用いてバイアスを生成する。例えば、移動通信装置のバッテリの出力である電源Vbatを用いる。縦積み接続される、FET11、12、13、14、15に与えられる電源Vddは図8の場合と同様に、変動する可変電源である。図11において、増幅回路101のその他の構成は、図8を参照して説明した増幅回路100と同様である。
【0043】
第2比較例による増幅回路101において、電源Vddの高い電圧値に合わせてゲートバイアスを設定すると、電源Vddの電圧が下がった時にゲート電位が高すぎて未破壊領域を超えてしまうことがある。また、電源Vddの低い電圧値に合わせてゲートバイアスを設定すると、電源Vddの電圧が高くなった時にゲート電位が低すぎて未破壊領域を超えてしまうことがある。
【0044】
(第2比較例の動作)
図12および図13は、図11に示す増幅回路101の動作例を示す図である。図12は、増幅回路101の各FETのゲートに与えるバイアスのシミュレーション結果を示す図である。図12において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はFETのゲートに与えられるバイアス(すなわち、ゲートバイアス)の電圧vgの電圧値[V]である。図12は、電源Vddの電圧値の変化に対する、各バイアスの電圧値の変化を示す。図12に示すように、電源Vddの電圧値が変化しても、バイアスvg1~vg5はそれぞれ一定の電圧値である。
【0045】
図13は、ドレイン-ゲート間電位差のシミュレーション結果を示す図である。図13において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はドレイン-ゲート間の電圧値Vdg[V]である。図13に示すように、電源Vddの高い電圧値に合わせてゲートバイアスを設定すると、電源Vddの電圧が下がった時にゲート電位が高すぎて未破壊領域A1を超えてしまうことがある。本例では、バイアスvg1、vg2に対応する電圧値Vdg1、Vdg2については、未破壊領域A1内の電圧値である。これに対し、バイアスvg3、vg4、vg5に対応する電圧値Vdg3、Vdg4、Vdg5については、未破壊領域A1の範囲を超えて低下する。このとき、電圧値Vdg3、Vdg4、Vdg5と電圧値Vdg5との差が大きくなり、耐圧を超えて、FET13、14、15が破壊に至る可能性がある。
【0046】
(本開示による増幅回路の要点)
上記の問題を解決するには、電源Vddの変動に追従してゲートバイアスを制御することが考えられる。すなわち、電源Vddの電圧が高い時には、FETのドレイン-ソース間電圧Vdsが均等に分配されるようにバイアスを設定する。また、電源Vddの電圧が低い時には、縦積み接続の下段のFET1、FET2に対応する電圧値Vdg1、Vdg2を大きく確保しつつ、縦積み接続の上段のFET3、FET4、FET5に対応する電圧値Vds3、Vdg4、Vdg5が比較的小さくなるようにバイアスを設定する。
【0047】
本開示の増幅回路においては、可変電源である電源Vddをラダー抵抗による分圧抵抗回路20で分圧する。分圧抵抗回路20においては、バイアスvg2やvg3といった低い電位側も分圧比を小さくする。例えば、バイアスvg2を(1/5)×Vddに分圧した場合は電源Vdd=5[V]の時にバイアスvg2=1[V]になる。分圧比を下げて(1/2)Vddにした場合は、電源Vdd=5[V]の時にvg2=2.5[V]になる。このように分圧比を下げることで、電源Vddが変動して電圧値が下がった時も、バイアスvg2やvg3といった電圧が下がりすぎないようにする。ただし、単純に分圧比を下げてしまうと、電源Vddの電圧値が高い時にバイアスが高くなりすぎてしまう。そこで、クランプ回路を設けることにより、電源Vddの電圧値が高い時にはバイアスvg3の電圧を所望の電位でクランプさせる。そして、より高い電圧が必要になるバイアスvg4やvg5については、さらに高い電圧とする構成とした。
【0048】
本開示の増幅回路によれば、以下の効果が得られる。
(1)電源Vddの広い電圧範囲で最適なバイアスを実現でき、FETの破壊対策と特性の維持とを実現できる。また、電源Vddの電圧値の制御の自由度が高く、電源Vddの電圧値を変動させることによる効果を得やすい。
(2)増幅回路の構成がシンプルになり、実装面積の増加を最小限に抑えることができる。
(3)バイアスvg2からvg5までを、同じラダー抵抗によって作成することにより、ペア性のズレなどによる各段のゲートバイアスの逆転などを防ぐことができる。
(4)高周波特性に対し重要である、縦積み接続の下段のFETのドレイン-ソース間電圧Vdsを高精度に決めることができる。
【0049】
ところで、PAの特性を確保するためには、電源Vddの電圧が低い時もドレイン-ソース間電圧Vds1およびVds2はできるだけ高い電圧値を確保することが好ましい。そのため、電源Vddの電圧値が低い時はどうしても縦積み接続のPAの上段側のバイアスが低下するようなバイアスになる。縦積み接続されたPAでは低電圧動作時に上段側のドレイン-ソース間電圧Vdsが低下して線形領域動作となる。このため、オン抵抗の影響が見えるようになり、出力が出にくくなるデメリットがある。
【0050】
そこで、本開示では、分圧抵抗回路の各段の分圧比を等分ではなく、異なる値に設定する。具体的には、縦積み接続の下段側のバイアスvg2やvg3の抵抗分圧比を上げ、電源Vddの電圧が低い時にも電位が下がりにくくし、電源Vddの電圧が高い時には上がりすぎないようにクランプさせる。バイアスvg4やvg5といった高電位が必要なバイアスについてはさらに電源Vddに追従してバイアスが上がる構成とした。すなわち、バイアスvg2の電圧をクランプ回路50でモニタし、バイアスvg3についてクランプをかける。こうすることにより、1個のクランプ回路50で特性に重要な最下段のFET11のドレイン-ソース間電圧Vds1と、その1つ上の段のFET12のドレイン-ソース間電圧Vds2とを細かく制御できる。また、バイアスvg4、vg5に関してはクランプ回路50が動作した後も、電源Vddに追従して電圧が上がり、電源Vddが最大電圧値になった時にも耐圧の条件を満たすようにバイアスの電圧値を制御できる。
【0051】
(第1実施形態)
次に、実施形態について説明する。
【0052】
(構成)
図14は、第1実施形態による増幅回路100aを示す回路図である。図14において、増幅回路100aは、図8を参照して説明した増幅回路100に、クランプ回路50を追加した構成である。クランプ回路50および分圧抵抗回路20は、後述するバイアス生成回路250aに含まれる。
【0053】
(クランプ回路)
図14に示すように、本実施形態のクランプ回路50は、比較回路51と、トランジスタ52と、基準電圧Vrefと、有する。比較回路51は、例えば、オペアンプによって実現できる。比較回路51は、正入力端子(+)と負入力端子(-)とを有する。比較回路51の負入力端子には、所定の基準電圧Vrefが入力される。比較回路51の正入力端子には、ノードN1の電圧値が入力される。ノードN1は、本例では、抵抗21と抵抗22との接続点N21と同電位の点である。ノードN1の電位は、バイアスvg2である。
【0054】
トランジスタ52は、本例では、N型MOSトランジスタである。比較回路51の出力端子は、トランジスタ52のゲートに接続される。トランジスタ52のソースは基準電位に接続される。トランジスタ52のドレインは、ノードN2に接続される。ノードN2は、本例では、抵抗22と抵抗23との接続点N22と同電位の点である。ノードN2の電位は、バイアスvg3である。
【0055】
トランジスタ52は、比較回路51の出力に基づいてオン状態になるスイッチング素子である。比較回路51は、分圧抵抗回路20からFET12のゲートに与えるバイアスvg2の電圧値を、基準電圧Vrefと比較する。比較回路51は、バイアスvg2の電圧値が基準電圧Vrefを超えているときに、トランジスタ52をオン状態にするための電圧をトランジスタ52のゲートに与える。
【0056】
クランプ回路50において、比較回路51の正入力端子に入力される、ノードN1の電位、すなわちバイアスvg2の電圧値が基準電圧Vrefを超えていない時、比較回路51の出力は低レベルである。このとき、トランジスタ52はオフ状態である。
【0057】
一方、ノードN1の電位、すなわちバイアスvg2の電圧値が基準電圧Vrefを超えると、比較回路51の出力が高レベルになる。これにより、トランジスタ52はオン状態になる。トランジスタ52がオン状態になると、トランジスタ52に電流が流れ、ノードN2の電位が低下する。つまり、分圧抵抗回路20からFET13のゲートに向かう経路上のノードN2から電流を引き抜く(draw)ことにより、ノードN2の電位が低下する。ノードN2の電位が低下すると、ノードN1の電位も低下し、トランジスタ52の電流が減少し、ノードN1の電位と基準電圧Vrefとが等しくなるようにフィードバックがかかる。したがって、バイアスvg3の電圧値は、バイアスvg2が基準電圧Vrefを超えないようにクランプされる。
【0058】
以上のように、クランプ回路50は、抵抗21と抵抗22との接続点N21と同じ電位のノードN1の電圧を入力とする。そして、クランプ回路50は、抵抗22と抵抗23との接続点N22と同じ電位のノードN2の電圧をクランプする。
【0059】
つまり、増幅回路100aは、増幅すべき信号が入力される入力端子RFinと、入力端子RFinに入力される信号が印加されるゲートを有する第1FET11と、第1FET11とともに、電源Vddと基準電位との間に縦積み接続された第2FET12および第3FET13と、第2FET12および第3FET13のうち、電源Vddに近い側に位置する第3FET13と電源Vddとの間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子RFoutと、第2FET12および第3FET13のゲートに与えるバイアスvg2およびvg3を生成するための分圧抵抗回路20と、を有する。さらに、増幅回路100aは、分圧抵抗回路20から第2FET12のゲートに与えるバイアスvg2が所定の基準電圧を超えた時に、第3FET13のゲートに与えるバイアスvg3をクランプするクランプ回路50を有する。なお、増幅回路100aにおいては、電源Vddと基準電位との間に、第1FET11とともに、第2FET12、第3FET13、第4FET14および第5FET15が、縦積み接続される。
【0060】
クランプ回路50を設けることにより、バイアスvg2、vg3の抵抗分圧比を上げ(分圧の比率を上げ)、変動する電源Vddの電圧値が低い時にも電位が下がりにくくし、変動する電源Vddの電圧値が高い電圧の時には上がりすぎないようにクランプさせる。言い換えれば、クランプ回路50は、抵抗分圧比を上げることによって電源Vddの電圧値が低いときに下がりにくくしたバイアスvg2、vg3の電位を、電源Vddの電圧値が高い電圧の時には上がりすぎないように制御している。
【0061】
(各段のバイアスの電圧値)
バイアスvg4、vg5といった高電位が必要なバイアスについては、クランプ回路50を設けないことにより、さらに電源Vddに追従して電圧値が上がる構成とする。
【0062】
ここで、基準電圧Vrefの値をVclamp、電源Vddの電圧値をvdd、ダイオード接続によるFET16に対応する電圧をVt、とする。バイアスvg2、vg3、vg4、vg5の電圧値は、以下の式(1)から式(8)によって表すことができる。
【0063】
すなわち、vg2≦Vclampの時、
vg2=Vt+(Vdd-Vt)/(R5+R4+R3+R2+R1)×R1…(1)
vg3=Vt+(Vdd-Vt)/(R5+R4+R3+R2+R1)×(R1+R2)…(2)
vg4=Vt+(Vdd-Vt)/(R5+R4+R3+R2+R1)×(R1+R2+R3)…(3)
vg5=Vt+(Vdd-Vt)/(R5+R4+R3+R2+R1)×(R1+R2+R3+R4)…(4)
である。
【0064】
また、vg2>Vclampの時、
vg2=Vclamp…(5)
vg3=Vclamp+(Vclamp-Vt)/R1×R2…(6)
vg4=vg3+(Vdd-vg3)/(R5+R4+R3)×R3…(7)
vg5=vg3+(Vdd-vg3)/(R5+R4+R3)×(R3+R4)…(8)
である。
【0065】
ここで、分圧抵抗回路20は、第1抵抗である抵抗21、第2抵抗である抵抗22、第3抵抗である抵抗23と、を含む。抵抗21は、基準電位に最も近い位置に設けられる。抵抗22は、抵抗21より電源Vddに近い側に設けられる。抵抗23は、抵抗22より電源Vddに近い側に設けられる。抵抗21の抵抗値および抵抗22の抵抗値は、抵抗23の抵抗値より大きいことが好ましい。また、抵抗21の抵抗値は、抵抗22の抵抗値より大きいことが好ましい。このように各抵抗の抵抗値を設定しておくことにより、電源Vddの電圧値が変動する場合においても、より確実に、FETの耐圧を超えないバイアスを、FETのゲートに与えることができる。なお、5段縦積み接続の場合、抵抗22の抵抗値は、抵抗23、24および25の各抵抗値より大きく、かつ、抵抗21の抵抗値は抵抗22の抵抗値より大きいことが好ましい。4段縦積み接続の場合、抵抗22の抵抗値は、抵抗23および24の各抵抗値より大きく、かつ、抵抗21の抵抗値は抵抗22の抵抗値より大きいことが好ましい。
【0066】
(動作)
図15図16および図17は、図14に示す増幅回路100aの動作例を示す図である。図15は、増幅回路100の各FETのゲートに与えるバイアスのシミュレーション結果を示す図である。図15において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はFETのゲートに与えられるバイアス(すなわち、ゲートバイアス)の電圧vgの値[V]である。図15は、電源Vddの電圧値の変化に対する、各バイアスの電圧値の変化を示す。
【0067】
図15に示すように、電源Vddの電圧値が1[V]から上昇すると、その変化にしたがって、バイアスvg1~vg5も変化する。ただし、バイアスvg2、vg3については、電源Vddの電圧値が3[V]の時にクランプされ、電源Vddの電圧値が3[V]以上の領域では一定の電圧値になる。つまり、バイアスvg3に加え、バイアスvg2も一緒にクランプされる。その原理は、次のようになる。すなわち、バイアスvg3の電位を、抵抗22、抵抗21およびFET16によって分圧して、抵抗21と抵抗22との接続点で取り出した電圧がバイアスvg2になるので、バイアスvg3がクランプされていれば、バイアスvg2も同様にクランプされるからである。図15に示すように、本例では、バイアスvg2については、約1.7[V]を超えることはない。また、バイアスvg3については、約2.6[V]を超えることはない。
【0068】
ところで、増幅器の特性を決めるのに最も影響するのは、FET41である。このFET41のドレイン電圧は、隣接するFET42のバイアスvg2によって決まる。このため、クランプ回路50に入力するバイアス、すなわちクランプ回路50によってモニタするバイアスをFET42のバイアスvg2とした場合には、増幅回路100aをより高精度に駆動できる。
【0069】
図16は、ドレイン-ゲート間電位差のシミュレーション結果を示す図である。図16において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はドレイン-ゲート間の電圧Vdgの値[V]である。図16に示すように、電源Vddの電圧値が1[V]から上昇すると、その変化にしたがって、各バイアスvg1~vg5に対応する電圧Vdgの値も変化する。バイアスvg2、vg3に対応する電圧Vdgについては、電源Vddの電圧値が3[V]の時にクランプされ、電源Vddの電圧値が3[V]以上の領域では一定の電圧値になる。バイアスvg1~vg5に対応する、いずれの電圧Vdgについても、未破壊領域A1を超えることはない。
【0070】
図17は、ドレイン-ソース間電位差のシミュレーション結果を示す図である。図17において、横軸は電源Vddの電圧値[V]、縦軸はドレイン-ソース間の電圧Vdsの値[V]である。図17に示すように、電源Vddの電圧値が1[V]から上昇すると、その変化にしたがって、各バイアスvg1~vg5に対応する電圧Vdsの値も変化する。バイアスvg2、vg3に対応する電圧Vdsについては、電源Vddの電圧値が3[V]の時にクランプされ、電源Vddの電圧値が3[V]以上の領域では一定の電圧値になる。バイアスvg1~vg5に対応する、いずれの電圧Vdsについても、未破壊領域A1を超えることはない。
【0071】
ところで、後述する第2実施形態とは異なり、本実施形態ではFET16を設けている。FET16を設けることにより、次のような効果が得られる。すなわち、FET42からFET45の閾値が製造プロセスのばらつきや温度変化により変動した場合に、FET16を設けておくことによって、その閾値の変動と同じだけ各バイアス(vg2、vg3、vg4、vg5)も変動する。これにより、閾値の変動を相殺し、各FETのドレイン電圧の変動による影響を抑制できるという効果が得られる。
【0072】
(効果)
以上説明したように、本実施形態による増幅回路100aは、電源Vddの電圧値が低い時には、最適に近いバイアスをゲートに与えることができ、かつ、電源Vddの電圧値が高い時には、耐圧の条件を満たすことができるバイアスをゲートに与えることができる。すなわち、図16および図17を参照して説明したように、ドレイン-ゲート間の電圧Vdg、ドレイン-ソース間の電圧Vdsを、未破壊領域A1内に調整できる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
【0074】
(構成)
図18は、第2実施形態による増幅回路100bを示す回路図である。図18に示す増幅回路100bは、図14に示す増幅回路100aとは異なり、分圧抵抗回路20と基準電位との間のFET16(図14を参照)が省略されている。このため、分圧抵抗回路20の抵抗21の一端が基準電位に直接接続される。分圧抵抗回路20が生成する各バイアスは、vg2、vg3、vg4、vg5の電圧値は、以下の式(9)から式(16)によって表すことができる。
【0075】
すなわち、vg2≦Vclampの時、
vg2=Vdd/(R5+R4+R3+R2+R1)×R1…(9)
vg3=Vdd/(R5+R4+R3+R2+R1)×(R1+R2)…(10)
vg4=Vdd/(R5+R4+R3+R2+R1)×(R1+R2+R3)…(11)
vg5=Vdd/(R5+R4+R3+R2+R1)×(R1+R2+R3+R4)…(12)
である。
【0076】
また、vg2>Vclampの時、
vg2=Vclamp…(13)
vg3=Vclamp+Vclamp/R1×R2…(14)
vg4=vg3+(Vdd-vg3)/(R5+R4+R3)×R3…(15)
vg5=vg3+(Vdd-vg3)/(R5+R4+R3)×(R3+R4)…(16)
である。
【0077】
(動作)
図18に示す増幅回路100bにおいても、クランプ回路50が設けられている。このため、増幅回路100bの動作は、図15から図17を参照して説明した動作と同様である。
【0078】
(効果)
第2実施形態による増幅回路100bによれば、電源Vddの電圧値が低い時には、最適に近いバイアスをゲートに与えることができ、かつ、電源Vddの電圧値が高い時には、耐圧の条件を満たすことができるバイアスをゲートに与えることができる。また、増幅回路100bは、分圧抵抗回路20と基準電位との間のFET16(図14を参照)を有していない。このため、増幅回路100bの実装に必要な面積を低減できる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
【0080】
(構成)
図19は、第3実施形態による増幅回路100cを示す回路図である。図19に示すように、第3実施形態による増幅回路100cは、クランプ回路50aを含む。すなわち、増幅回路100cは、増幅回路100aおよび100bにおいて用いるクランプ回路50の代わりに、クランプ回路50aを用いる。
【0081】
クランプ回路50aは、比較回路51の出力側に設けられるトランジスタ52aがP型MOSトランジスタである。つまり、クランプ回路50aにおいては、N型MOSトランジスタではなく、P型MOSトランジスタであるトランジスタ52aを用いる。PMOSトランジスタを用いるため、比較回路51の正入力端子に基準電圧Vrefが入力される。
【0082】
(動作)
比較回路51の負入力端子に入力される、ノードN1の電圧値、すなわちバイアスvg2の電圧値が基準電圧Vrefを超えていない時、比較回路51の出力は高レベルである。このとき、トランジスタ52aはオフ状態である。
【0083】
ノードN1の電圧値、すなわちバイアスvg2の電圧値が基準電圧Vrefを超えると、比較回路51の出力が低レベルになる。これにより、トランジスタ52aはオン状態になる。トランジスタ52aがオン状態になると、トランジスタ52aに電流が流れ、ノードN2の電位が低下する。つまり、ノードN2から電流を引き抜くことにより、ノードN2の電位が低下する。ノードN2の電位が低下すると、ノードN1の電位も低下し、トランジスタ52aの電流が減少し、ノードN1の電位と基準電圧Vrefの電位とが等しくなるようにフィードバックがかかる。すなわち、バイアスvg3の電圧値は、バイアスvg2が基準電圧Vrefを超えないようにクランプされる。
【0084】
(効果)
第3実施形態による増幅回路100cによれば、電源Vddの電圧値が低い時には、最適に近いバイアスをゲートに与えることができ、かつ、電源Vddの電圧値が高い時には、耐圧の条件を満たすことができるバイアスをゲートに与えることができる。また、クランプ回路50aにP型MOSトランジスタであるトランジスタを用いても、N型MOSトランジスタを用いた場合と同じ効果が得られる。
【0085】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。
【0086】
(構成)
図20は、第4実施形態による増幅回路100dを示す回路図である。図20において、増幅回路100dは、クランプ回路50bにおいて用いる基準電圧、すなわちクランプ電圧を生成するクランプ電圧生成回路70を有する。
【0087】
クランプ電圧生成回路70は、バンドギャップリファレンス回路(Bandgap Reference;BGR)71と、オペアンプ72、抵抗73および74による非反転増幅回路と、抵抗75、76およびFET77による分圧抵抗回路と、を有する。バンドギャップリファレンス回路71は、電源電圧、温度などに依存しない基準電圧(つまり、バンドギャップリファレンス電圧)を生成する、基準電圧生成回路である。FET77は、そのドレインとゲートとが接続され、いわゆるダイオード接続になっている。抵抗73、74の抵抗値の比、および、抵抗75、76の抵抗値の比を調整することにより、所望の基準電圧を生成することができる。生成される基準電圧は、クランプ回路50bの比較回路51の負入力端子に入力される。
【0088】
クランプ電圧生成回路70は、バンドギャップリファレンス電圧を生成する基準電圧生成回路と、基準電圧生成回路が生成するバンドギャップリファレンス電圧に基づいて一定の電圧値を生成する。そして、この一定の電圧値を、比較回路51の基準電圧とする。
【0089】
(動作)
図20に示す増幅回路100dにおいても、増幅回路100aと同様に、図15に示すように、バイアスvg2、vg3については、電源Vddが所定電圧値の時にクランプされ、所定電圧値以上の領域では一定の電圧値になる。また、図16および図17に示すように、バイアスvg2、vg3に対応する電圧Vdg、電圧Vdsは、未破壊領域A1を超えることはない。
(効果)
図20に示す増幅回路100dにおいても、電源Vddの電圧値が低い時には、最適に近いバイアスをゲートに与えることができ、かつ、電源Vddの電圧値が高い時には、耐圧の条件を満たすことができるバイアスをゲートに与えることができる。すなわち、図16および図17を参照して説明したように、ドレイン-ゲート間の電圧Vdg、ドレイン-ソース間の電圧Vdsを、未破壊領域A1内に調整できる。
【0090】
上述したように、第1実施形態から第4の実施形態の増幅回路は、いずれも、直列接続された複数の抵抗によって分圧し、各抵抗によって生成される各電圧をバイアスvg2、vg3とし、各バイアスvg2、vg3を、縦積み接続された複数のFETの各ゲートに与え、1つのバイアスvg2が所定の基準電圧を超えた時に、他のバイアスvg3をクランプするようにした増幅回路である。
【0091】
(変形例)
第1実施形態から第4実施形態において、FETの縦積み接続の段数を5段としているが、縦積み接続の段数はこれに限定されず、3段以上であればよい。すなわち、FETが少なくとも3段に縦積み接続されていればよい。より多くの段数の縦積み接続を有していてもよい。
【0092】
第1実施形態から第4実施形態においては、クランプ回路50によってバイアスvg2の電圧をモニタし、バイアスvg3をクランプしている。しかしながら、これらに限定されず、他のバイアスをモニタし、さらに他のバイアスをクランプしてもよい。
【0093】
上記は電源Vddの電圧値が変動する場合について説明したが、電源Vddの電圧値が変動せずに固定値であっても本開示による増幅回路を用いることができる。もっとも、電源Vddの電圧値が変動する場合に用いることにより、本開示による増幅回路をより有効に用いることができる。
【0094】
(バイアス生成回路)
第1実施形態から第4実施形態においては、バイアス生成回路を用いている。図14に戻り、増幅回路100aは、バイアス生成回路250aを含む。
【0095】
バイアス生成回路250aは、直列接続された少なくとも3段の抵抗21、22、23…からなり、抵抗分圧によって各段からバイアスvg2、vg3…を生成する分圧抵抗回路20と、ある段において生成されるバイアスvg2が所定の基準電圧を超えた時、その段よりも電源Vddに近い他の段のバイアスvg3をクランプするクランプ回路50と、を有する。そして、バイアス生成回路250aは、縦積み接続されたFET12、13…の各ゲートに、バイアスvg2、vg3…を与える。バイアス生成回路250aは、電源電圧が変動する場合においてもFETの耐圧を超えないバイアスを与えることができる。
【0096】
同様に、図18に示すように、第2実施形態の増幅回路100bは、バイアス生成回路250bを含む。バイアス生成回路250bは、分圧抵抗回路20と、クランプ回路50と、を有する。
【0097】
図19に示すように、第3実施形態の増幅回路100cは、バイアス生成回路250cを有する。バイアス生成回路250cは、分圧抵抗回路20と、クランプ回路50aと、を有する。
【0098】
図20に示すように、第4実施形態の増幅回路100dの増幅回路100dは、バイアス生成回路250dを有する。バイアス生成回路250dは、分圧抵抗回路20と、クランプ回路50bと、を有する。
【0099】
(電力増幅回路)
ところで、上述した増幅回路をドライバ段の増幅回路とし、その出力を入力とするパワー段の増幅回路を追加することにより、通信装置において利用できる電力増幅回路を実現できる。
【0100】
(構成)
図21は、電力増幅回路1000の構成例を示す図である。図21において、電力増幅回路1000は、入力端子Pinと、入力整合回路(Matching Network;MN)300と、ドライバ段の増幅回路100aと、段間整合回路(MN)400と、パワー段の増幅回路200と、出力整合回路(MN)500と、出力端子Poutとを備える。本例の電力増幅回路1000は、2つの基板800および基板900によって実現される。
【0101】
本例において、入力整合回路300と増幅回路100aとは、同じ基板800に形成される。基板800は、例えば、Si基板である。ドライバ段の増幅回路100aは、上述したように、縦積み接続されたFETによって形成することが好ましい。
【0102】
また、本例において、段間整合回路400、パワー段の増幅回路200、および、出力整合回路500は、同じ基板900に形成される。基板900は、例えば、GaAs基板である。パワー段の増幅回路200は、バイポーラトランジスタによって形成することが好ましい。パワー段の増幅回路200は、HBT(Heterojunction Bipolar Transistor)を用いて形成することができる。なお、段間整合回路400、および、出力整合回路500は、基板800、または、基板900が実装されるモジュール基板に、形成、或いは、実装されてもよい。
【0103】
上記のように、電力増幅回路1000は、増幅回路100aをドライバ段の増幅回路とし、このドライバ段の増幅回路100aの出力を入力とするパワー段の増幅回路200をさらに有する。図21に示す電力増幅回路1000は、第1実施形態による増幅回路100aを用いている。なお、図21において、ドライバ段の増幅回路100aの代わりに、増幅回路100b、100c、100dのいずれか1つを用いてもよい。
【0104】
(動作)
電力増幅回路1000は、入力端子Pinに入力される信号をドライバ段の増幅回路100aにおいて増幅し、さらにパワー段の増幅回路200において増幅する。増幅回路200によって増幅された信号は、出力端子Poutから出力される。
【0105】
(効果)
上述したように、必要とする出力電力が比較的少ない初段の増幅回路100aをFETで形成することにより、バイポーラトランジスタを用いて形成する場合に比べて、増幅回路の製造コストを削減することができる。また、必要な出力電力が比較的多い後段の増幅回路200をHBTで形成することにより、回路の小型化と良好なゲイン特性とを両立させることができる。
【0106】
請求項の記載に関して、本開示は以下の態様をとりうる。
<1>
増幅すべき信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に入力される信号が印加されるゲートを有する第1FETと、
前記第1FETとともに、電源と基準電位との間に接続された第2FETおよび第3FETと、
前記第2FETおよび前記第3FETのうち、前記電源に近い側に位置する第3FETと負荷との間に設けられて、増幅された信号を出力する出力端子と、
前記第2FETおよび前記第3FETの各ゲートに与えるバイアスを生成するための分圧抵抗回路と、
前記分圧抵抗回路から前記第2FETのゲートに与えるバイアスが所定の基準電圧を超えた時に、前記第3FETのゲートに与えるバイアスをクランプするクランプ回路と、
を有し、
前記第1FET、前記第2FETおよび前記第3FETが縦積み接続される増幅回路。
<2>
前記分圧抵抗回路は、第1抵抗と、第2抵抗と、第3抵抗と、を含み、
前記第1抵抗は、基準電位に最も近い位置に設けられ、
前記第2抵抗は、前記第1抵抗より前記電源に近い側に設けられ、
前記第3抵抗は、前記第2抵抗より前記電源に近い側に設けられ、
前記第1抵抗の抵抗値および前記第2抵抗の抵抗値は、前記第3抵抗の抵抗値より大きい<1>に記載の増幅回路。
<3>
前記第1抵抗の抵抗値は、前記第2抵抗の抵抗値より大きい<2>に記載の増幅回路。
<4>
前記クランプ回路は、
前記分圧抵抗回路から前記第2FETのゲートに与えるバイアスの電圧値を、前記基準電圧と比較する比較回路と、
前記比較回路の出力に基づいてオン状態になるスイッチング素子と、
を含み、
前記スイッチング素子がオン状態になっている時に、前記第3FETのゲートに与えるバイアスを低減する
<1>から<3>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<5>
前記比較回路は、
前記分圧抵抗回路から前記第2FETのゲートに与えるバイアスの電圧値が前記基準電圧を超えているときに、前記スイッチング素子をオン状態にするための電圧を前記スイッチング素子に与え、
前記スイッチング素子がオン状態になっている時に、前記分圧抵抗回路から前記第3FETのゲートに向かう経路上のノードから電流を引き抜くことによって、前記第3FETのゲートに与えるバイアスを低減する
<4>に記載の増幅回路。
<6>
前記スイッチング素子は、Nチャネル型またはPチャネル型のMOSFETである<4>または<5>に記載の増幅回路。
<7>
バンドギャップリファレンス電圧を生成する基準電圧生成回路と、前記基準電圧生成回路が生成するバンドギャップリファレンス電圧に基づいて一定の電圧値を生成する定電圧生成回路と、をさらに含み、
前記定電圧生成回路によって生成される、一定の電圧値を前記基準電圧とする<4>または<5>に記載の増幅回路。
<8>
ダイオード接続され、かつ、前記分圧抵抗回路と基準電位との間に設けられたFETをさらに含む<1>から<5>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<9>
一定電流を出力する定電流源と、前記第1FETとともにカレントミラー回路を形成するレプリカFETと、をさらに含み、
前記カレントミラー回路によって、前記定電流源が出力する一定電流に対応するバイアスを生成し、前記第1FETに与える
<1>から<6>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<10>
前記分圧抵抗回路は、
第1抵抗と、前記第1抵抗に直列に接続される第2抵抗と、前記第2抵抗に直列に接続される第3抵抗とを含み、
前記第1抵抗側に基準電位が接続され、かつ、前記第3抵抗側に前記電源が接続され、
前記第1抵抗によって生成される電圧を、前記第2FETのゲートに与えるバイアスとし、
前記第2抵抗によって生成される電圧を、前記第3FETのゲートに与えるバイアスとする
<1>から<9>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<11>
前記第3FETと負荷との間に設けられた第4FETと、
前記第3抵抗と前記電源との間に設けられた第4の抵抗と、
をさらに含み、前記第3抵抗によって生成される電圧を、前記第4FETのゲートに与えるバイアスとする
<10>に記載の増幅回路。
<12>
前記電源の電圧値は変動する、<1>から<11>のいずれか1つに記載の増幅回路。
<13>
隣り合うドレインとソースとが接続された複数のFETを含み、直列接続された複数の抵抗の分圧によって生成される各電圧をバイアスとし、前記各バイアスを、前記複数のFETの各ゲートに与え、1つの前記バイアスが所定の基準電圧を超えた時に、他の前記バイアスをクランプするようにした増幅回路。
<14>
<1>から<13>のいずれか1つに記載の増幅回路をドライバ段増幅回路とし、前記ドライバ段増幅回路の出力を入力とするパワー段増幅回路をさらに含む、電力増幅回路。
<15>
前記パワー段増幅回路はバイポーラトランジスタによって構成される<14>に記載の電力増幅回路。
<16>
直列接続された少なくとも3段の抵抗からなり、抵抗分圧によって各段からバイアスを生成する分圧抵抗回路と、
ある段において生成される前記バイアスが所定の基準電圧を超えた時、その段よりも電源に近い他の段の前記バイアスをクランプするクランプ回路と、
を有し、
隣り合うドレインとソースとが接続されている複数のFETの各ゲートに、前記バイアスを与える、
バイアス生成回路。
【符号の説明】
【0107】
11~17 FET
20 分圧抵抗回路
21~25、31~35 抵抗
41~45 キャパシタ
50、50a、50b クランプ回路
51 比較回路
52、52a トランジスタ
60 定電流源
70 クランプ電圧生成回路
100、100a~100d、101、200 増幅回路
250a~250d バイアス生成回路
300 入力整合回路
400 段間整合回路
500 出力整合回路
800、900 基板
1000 電力増幅回路
L チョークコイル
MN 整合回路
Vdd 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21