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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011733
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】車両の配光制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/24 20060101AFI20240118BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240118BHJP
   B60Q 1/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B60Q1/24 B
G08G1/16 D
B60Q1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113978
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉持 拓明
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雅史
(72)【発明者】
【氏名】中野 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】大六野 修平
(72)【発明者】
【氏名】日高 誉弘
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 克之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達朗
【テーマコード(参考)】
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA13
3K339AA14
3K339BA01
3K339BA09
3K339BA10
3K339BA22
3K339CA01
3K339CA02
3K339CA03
3K339GB01
3K339HA06
3K339HA12
3K339KA03
3K339KA07
3K339KA28
3K339LA03
3K339LA07
3K339LA18
3K339LA28
3K339MA02
3K339MA07
3K339MB05
3K339MC01
3K339MC02
3K339MC03
3K339MC13
3K339MC14
3K339MC18
3K339MC22
3K339MC23
3K339MC25
3K339MC26
3K339MC27
3K339MC29
3K339MC34
3K339MC35
3K339MC36
3K339MC43
3K339MC46
3K339MC48
3K339MC52
3K339MC56
3K339MC58
3K339MC68
3K339MC76
3K339MC77
3K339MC85
3K339MC90
5H181AA01
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】夜間に運転者が周囲環境を誤認識して生じる誤操作を抑止し歩行者の早期認識に寄与する配光制御を行う車両の配光制御装置を提供する。
【解決手段】車両Mの周囲環境を認識し、認識された周囲環境中の第1物標情報を検出する第1周囲環境認識装置(11等)と、車両位置情報を取得する自車位置情報取得装置36aと、車両位置情報基準の所定範囲の地図情報と車両位置基準地図情報に含まれる第2物標情報を取得する第2周囲環境認識装置(36a,36b)と、照明光を照射する照明装置39と、照明装置からの照明光の配光制御を行う照明制御ユニット26とを備え、照明制御ユニットは第1物標情報と第2物標情報とを比較し、第2物標情報のうち第1物標情報として検出されていない物標を判別し、判別された物標を配光候補物標として設定し、設定された配光候補物標の配光優先度を設定し、設定された配光優先度に基づき配光制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲環境を認識し、認識された周囲環境中の第1の物標情報を検出する第1の周囲環境認識装置と、
前記車両の位置情報を取得する自車位置情報取得装置36と、
前記車両の位置情報を基準とする所定の範囲の地図情報と、前記車両の位置基準地図情報に含まれる第2の物標情報を取得する第2の周囲環境認識装置と、
照明光を照射する照明装置と、
前記照明装置から照射される照明光の配光制御を行う照明制御ユニットと、
を具備し、
前記照明制御ユニットは、
前記第1の物標情報と前記第2の物標情報とを比較して、
前記第2の物標情報のうち前記第1の物標情報として検出されていない物標を判別し、
判別された前記物標を配光候補物標として設定し、
設定された前記配光候補物標の配光優先度を設定し、
設定された前記配光優先度に基づいて配光制御を行う
ことを特徴とする車両の配光制御装置。
【請求項2】
前記配光制御の制御開始タイミングは、前記第2の物標情報のうち前記第1の物標情報として検出されていない物標が判別された時点とすることを特徴とする請求項1に記載の車両の配光制御装置。
【請求項3】
前記配光制御の制御開始タイミングは、前記第2の物標情報のうち前記第1の物標情報として検出されていない物標が判別された場合に、当該物標と前記車両との距離が所定の距離以内に近付いた時点とすることを特徴とする請求項1に記載の車両の配光制御装置。
【請求項4】
前記配光制御の制御開始タイミングは、前記第2の物標情報のうち前記第1の物標情報として検出されていない物標が判別された場合に、当該物標の未検出状態の継続時間が所定時間以上経過した時点とすることを特徴とする請求項1に記載の車両の配光制御装置。
【請求項5】
前記照明制御ユニットは、前方に交差点を認識し、かつ当該交差点にて前記車両が右折又は左折する場合に前記配光制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両の配光制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の照明装置から照射される照明光の配光制御を行う車両の配光制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、各種のセンシングデバイスを用いて車両の周囲環境のほか、ステアリングの操舵角やナビゲーションシステム等からの地図情報、或いは運転者の顔の向きや視線方向等の各種情報を取得し、取得された各種情報に基づいて、車両の進行方向や運転者の注視点を認識し、認識された情報に応じて前照灯等の照明装置から照射される照明光の照射範囲を調整制御するための配光制御技術が、例えば特開2010-105880号公報,特開2010-100073号公報,特開2009-73284号公報,特開2006-273092号公報等によって、種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-105880号公報
【特許文献2】特開2010-100073号公報
【特許文献3】特開2009-73284号公報
【特許文献4】特開2006-273092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記公報等によって開示されている従来の技術においては、主に車両の進行方向や運転者の注視点等に着目した配光制御を行っている。そのため、車両(運転者)の周囲領域に存在していながら、車両の進行方向や運転者の注視点等から外れた領域に存在する物標、即ち照明装置の照明光を必要とする夜間であるが故に車両の走行制御装置或いは運転者等によって認識されていない物標に対する考慮がなされていない。
【0005】
ここで、夜間において車両(運転者)等によって認識されていない物標とは、例えば交差点付近の横断歩道や当該横断歩道上の歩行者等のほか、対向車線或いは交差道路における中央分離帯等が想定される。
【0006】
具体的には例えば、夜間の交差点にて車両が右折しようとするとき、交差道路側に中央分離帯等の物標が存在しており、当該物標が確実に認識されていない場合には、当該誤認識に起因して車両を誤った進行路へ向ける運転操作を行ってしまう可能性がある。
【0007】
本発明の目的とするところは、夜間の交差点等において車両の走行制御装置或いは運転者が車両周囲環境を誤認識することによって生じる誤操作等に起因する誤進入等(走行車線の逆走等)を抑止し得ると共に、歩行者等の早期認識に寄与し得る配光制御を行うことのできる車両の配光制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の車両の配光制御装置は、車両の周囲環境を認識し、認識された周囲環境中の第1の物標情報を検出する第1の周囲環境認識装置と、前記車両の位置情報を取得する自車位置情報取得装置と、前記車両の位置情報を基準とする所定の範囲の地図情報と、前記車両の位置基準地図情報に含まれる第2の物標情報を取得する第2の周囲環境認識装置と、照明光を照射する照明装置と、前記照明装置から照射される照明光の配光制御を行う照明制御ユニットと、を具備し、前記照明制御ユニットは、前記第1の物標情報と前記第2の物標情報とを比較して、前記第2の物標情報のうち前記第1の物標情報として検出されていない物標を判別し、判別された前記物標を配光候補物標として設定し、設定された前記配光候補物標の配光優先度を設定し、設定された前記配光優先度に基づいて配光制御を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、夜間の交差点等において車両の走行制御装置或いは運転者が車両周囲環境を誤認識することによって生じる誤操作等に起因する誤進入等(走行車線の逆走等)を抑止し得ると共に、歩行者等の早期認識に寄与し得る配光制御を行うことのできる車両の配光制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の車両の配光制御装置を含む走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図
図2】本発明の一実施形態の配光制御装置の作用を説明する図であって、配光制御が行われる場合の具体的な状況説明図
図3】本発明の一実施形態の配光制御装置による配光制御処理のフローチャート
図4図3のフローチャートのうちの物標情報比較処理(ステップS6の処理)のサブルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0012】
なお、本実施形態の構成及び作用を説明するのに際しては、車両の通行区分を進行方向に向かって左側とする左側通行を基本とした道路システムであるものとして例示している。しかし、本実施形態の構成及び作用は、左右を入れ替えて考慮することにより、右側通行を基本とする道路システムに対しても全く同様に応用することができる。
【0013】
まず、本発明の一実施形態の車両の配光制御装置を含む走行制御装置の概略構成を、図1を用いて以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態の車両の配光制御装置を含む走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図である。
【0014】
図1に示す走行制御装置1の基本的な構成は、従来のこの種の走行制御装置と略同様の構成を有する。したがって、以下に示す説明は、走行制御装置1を概略的に説明するに留め、詳細説明は省略する。
【0015】
走行制御装置1は、これを搭載する車両(以下、自車両という)の車室内の前寄り上部中央部分に固定された車載カメラ装置であるカメラユニット10を有する。
【0016】
カメラユニット10は、ステレオカメラ11と、画像処理ユニット(IPU)12と、画像認識ユニット(画像認識_ECU)13と、走行制御ユニット(走行_ECU)14とを有して構成されている。
【0017】
ステレオカメラ11は、車両の周囲環境を認識する認識部として機能するデバイスである。ステレオカメラ11は、メインカメラ11aと、サブカメラ11bとを有している。これらメインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、自車両の車室内において車幅方向の中央を挟んで左右対称な位置に、前方(進行方向)に向けて配置されている。
【0018】
メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、CMOSイメージセンサ等によって構成されている。これらメインカメラ11a及びサブカメラ11bは、互いに同期された所定の撮像周期にて、車外前方の所定の範囲の領域の周囲環境を異なる視点からの二つの画像として取得してステレオ画像を生成する。こうして生成されたステレオ画像データは、周囲環境画像データ(自車両の走行中の周囲環境を表す画像データ)としてIPU12へと出力される。
【0019】
IPU12は、ステレオカメラ11によって撮像された周囲環境画像データを受信し、受信した画像データに対して所定の画像処理を施し、当該画像データを表示した際に画像上に含まれ表される物体(移動物体,静止物体等)のほか、道路面上に標示される区画線等(以下、単に区画線等という)などの各種対象物のエッジを検出する。これにより、IPU12は、車両周囲の物体や区画線等を認識する。そして、IPU12は、左右の画像上において対応するエッジの位置ズレ量から距離情報を取得し、距離情報を含む画像情報(距離画像情報)を生成する。こうして生成された距離画像情報は、画像認識_ECU13へと出力される。
【0020】
画像認識_ECU13は、IPU12から受信した距離画像情報などに基づき、自車両が走行する走行路(自車走行路)の左右を区画する区画線の道路曲率〔1/m〕及び左右区画線間の幅(車線幅)を求める。この道路曲率及び車線幅の求め方は種々知られている。例えば、画像認識_ECU13は、道路曲率を周囲環境情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小自乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求める。さらに、画像認識_ECU13は、左右両区画線の曲率の差分から車線幅を算出する。そして、画像認識_ECU13は、左右区画線の曲率と車線幅とに基づき、車線中央から自車両の車幅方向中央までの距離である自車横位置偏差等を算出する。
【0021】
また、画像認識_ECU13は、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って延在するガードレール、縁石等の静止物体や、車両周囲を移動する移動物体(例えば対向他車両,前方右左折他車両,前方追従他車両等のほか、自転車,歩行者等を含む移動体)等の立体物の認識を行う。
【0022】
ここで、画像認識_ECU13における立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物の高さ、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両との相対速度、立体物同士の相対的な距離(例えば、道路端の縁石等と、その近傍にある区画線等との間の横方向距離など)などの認識が行われる。
【0023】
このように、走行制御装置1における画像認識_ECU13は、ステレオカメラ11及びIPU12と共に、車両周囲の第1の周囲環境を認識する第1の周囲環境認識装置として機能する。そして、画像認識_ECU13において認識されたこれらの各種情報は、第1の周囲環境情報であり第1の物標情報として走行_ECU14に出力される。
【0024】
走行_ECU14は、走行制御装置1を統括制御するための制御ユニットである。この走行_ECU14には、各種の制御ユニットとして、コックピット制御ユニット(CP_ECU)21と、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)22と、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)23と、ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)24と、パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)25のほか、照明制御ユニット(LT_ECU)26等がCAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を介して接続されている。
【0025】
さらに、走行_ECU14には、各種のセンサ類として、ロケータユニット36と、車載レーダ装置37,後方センサ38等が接続されている。
【0026】
CP_ECU21には、運転席の周囲に配設されたヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)31が接続されている。HMI31は、例えば、各種の運転支援制御の実行を指示するためのスイッチ、運転モードの切り換えを行うためのモード切換スイッチ,運転者の保舵状態を検出するステアリングタッチセンサ,運転者の顔認証や視線等を検出するドライバモニタリングシステム(DMS),タッチパネル式のディスプレイ(表示パネル),コンビネーションメータ,スピーカ等を有して構成されている。
【0027】
CP_ECU21は、走行_ECU14からの制御信号を受信すると、先行車等に対する各種警報や運転支援制御の実施状況及び自車両の周囲環境等に関する各種情報等を、HMI31を通じた表示や音声等により、運転者に適宜報知する。また、CP_ECU21は、HMI31を通じて運転者により入力された各種運転支援制御に対するオン/オフ操作状態等の各種入力情報を、走行_ECU14に出力する。
【0028】
E/G_ECU22の出力側には、電子制御スロットルのスロットルアクチュエータ32等が接続されている。また、E/G_ECU22の入力側には、図示しないアクセルセンサ等の各種センサ類が接続されている。
【0029】
E/G_ECU22は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号等に基づき、スロットルアクチュエータ32に対する駆動制御を行う。これにより、E/G_ECU22は、エンジンの吸入空気量を調整し、所望のエンジン出力を発生させる。また、E/G_ECU22は、各種センサ類において検出されたアクセル開度等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0030】
T/M_ECU23の出力側には、油圧制御回路33が接続されている。また、T/M_ECU23の入力側には、図示しないシフトポジションセンサ等の各種センサ類が接続されている。
【0031】
T/M_ECU23は、E/G_ECU22において推定されたエンジントルク信号や各種センサ類からの検出信号等に基づき、油圧制御回路33に対する油圧制御を行う。これにより、T/M_ECU23は、自動変速機に設けられている摩擦係合要素やプーリ等を動作させ、エンジン出力を所望の変速比にて変速する。また、T/M_ECU23は、各種センサ類において検出されたシフトポジション等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0032】
BK_ECU24の出力側には、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに出力するブレーキ液圧を各々調整するためのブレーキアクチュエータ34が接続されている。また、BK_ECU24の入力側には、図示しないブレーキペダルセンサ、ヨーレートセンサ、前後加速度センサ及び車速センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0033】
BK_ECU24は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、ブレーキアクチュエータ34に対する駆動制御を行う。これにより、BK_ECU24は、自車両に対する強制的な制動制御やヨーレート制御等を行うためのブレーキ力を各車輪に適宜発生させる。また、BK_ECU24は、各種センサにおいて検出されたブレーキ操作状態や、ヨーレート,前後加速度,車速(自車速)等の信号を走行_ECU14に出力する。
【0034】
PS_ECU25の出力側には、ステアリング機構にモータの回転力による操舵トルクを付与する電動パワステモータ35が接続されている。また、PS_ECU25の入力側には、操舵トルクセンサや舵角センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0035】
PS_ECU25は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、電動パワステモータ35に対する駆動制御を行う。これにより、PS_ECU25は、ステアリング機構に対する操舵トルクを発生させる。また、PS_ECU25は、各種センサ類において検出された操舵トルク及び舵角等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0036】
LT_ECU26には、照明装置39が接続されている。照明装置39は、車両に搭載される各種の灯火類、例えば照明灯,信号標識灯,表示灯等を含んで構成される。ここで、照明灯としては、例えば前照灯,霧灯,側方照明灯,番号灯,後退灯,室内灯等がある。また、信号標識灯は、方向指示灯,停止灯,尾灯,駐車灯,車幅灯,側面標識灯等がある。そして、表示灯は、計器,スイッチ,空調,オーディオ装置等の表示照明等がある。なお、照明装置39には、照明灯のうちの一部(例えば前照灯,霧灯,側方照明灯等)を配光制御のために機械的に駆動するアクチュエータ(不図示)などが含まれていてもよい。
【0037】
LT_ECU26は、走行_ECU14からの制御信号を受信して照明装置39の駆動制御を行う。この場合において、LT_ECU26は、特に、照明装置39に含まれる灯火類のうち車両の外方(主に前方)に向けて照明光を照射するための照明灯(例えば前照灯,霧灯,側方照明灯等)の機械的或いは電気的な駆動制御を行って所望の配光制御を行う。これにより、LT_ECU26及び照明装置39は、走行_ECU14と共に、本実施形態の配光制御装置40を構成する。
【0038】
この場合に行われる配光制御は、照明装置39の周知の構成及び周知の制御技術が適用される。照明装置39の一構成例としては、例えば車両進行方向に対して横方向(左右方向)に所望の角度だけ、照明灯等を回動させるアクチュエータを備えて構成する。これにより、照明灯等からの照射光の照射方向を適宜変更することができる構成を備える。
【0039】
また、照明装置39の別の構成例としては、例えば照明光の一部を遮蔽するシェードと、当該シェードを適宜所定のタイミングで駆動させるアクチュエータを備えて構成する。これにより、照明灯等からの照射光の一部を覆い、配光特性を変更することができる構成を備える。
【0040】
照明装置39のさらに異なる構成例としては、例えば複数の光源を有して構成され、各光源の点灯状態を個別に制御することにより、所望の照射範囲への配光を任意に変化させ得る構成のもの等がある。
【0041】
本実施形態の配光制御装置40の構成例としては、上述した複数の構成例のいずれかの形態、若しくはいずれか2つ以上を組み合わせた形態として構成されている。
【0042】
また、配光制御は、前照灯の制御のみに限らず、前照灯に加えて補助的な照明灯(霧灯や側方照明等の補助照明灯等)を具備し、前照灯の照明制御に加えて、この種の補助照明灯を所定のタイミングで点灯制御する形態であってもよい。
【0043】
このように、配光制御は、照明装置39における照明光源からの照明光の照射角度や拡散状況等を調整し、若しくは複数の照明灯を適宜駆動することで、車両周囲の物標に向けて効果的に照明光を照射し得るように調整することである。
【0044】
ロケータユニット36は、GNSSセンサ36aと、高精度道路地図データベース36b(以下、道路地図DB36bという)等を有して構成されている。
【0045】
GNSSセンサ36aは、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信することにより、自車両の位置(緯度,経度,高度等)を測位する。これにより、GNSSセンサ36aは、自車両の位置情報を取得する。
【0046】
道路地図DB36bは、HDD(Hard Disk Drive),SSD(Solid State Drive)等の大容量記憶媒体に、高精度道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されて構成されている。この高精度道路地図情報は、例えばクラウドサーバ等(不図示)に備えられているグローバルダイナミックマップと同様の層構造を有している。即ち、道路地図情報は、主として道路情報を構成する静的情報及び準静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報及び動的情報との4層の情報を有する。
【0047】
静的情報は、例えば、道路や道路上の構造物、車線情報、路面情報、恒久的な規制情報等、例えば月単位等の比較的長期間での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0048】
具体的には、例えば道路の種別(一般道路,高速道路等),道路形状,左右区画線(例えば車道中央線,車道外側線,車線境界線,中央分離帯等),高速道路やバイパス道路等の出口,ジャンクションやサービスエリア,パーキングエリア等に繋がる分岐車線や合流車線の出入口長さ(開始位置と終了位置)等のほか、道路標識,道路面標示(停止線,横断歩道,進行方向表示等)等、ほぼ固定化された静的な位置情報等が相当する。
【0049】
準静的情報は、例えば、渋滞情報や事故或いは道路工事やイベント等による通行交通規制情報、広域気象情報、渋滞予測等、例えば時間単位での比較的短時間の更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0050】
準動的情報は、例えば、観測時点における実際の渋滞状況や走行規制、落下物や障害物等、一時的な走行障害状況、実際の事故状態、狭域気象情報など、例えば分単位での短時間の更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0051】
動的情報は、例えば、移動体の間で送信・交換される情報や現在示されている信号の情報、交差点内の歩行者・二輪車情報、交差点を直進する車両情報等、例えば秒単位での極めて短時間での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0052】
この道路地図DB36bは、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度などを保有している。この車線データは、道路地図上の各車線に、数メートル間隔で格納されている。
【0053】
道路地図DB36bは、例えば、走行_ECU14からの要求信号に基づき、GNSSセンサ36aにおいて測位された自車位置を基準とする設定範囲の道路地図情報に含まれる第2の周囲環境情報(第2の物標情報)を走行_ECU14に出力する。
【0054】
このように、当該走行制御装置1において、道路地図DB36bは、GNSSセンサ36aと共に、車両周囲の第2の周囲環境を認識する第2の周囲環境認識装置として機能する。そして、GNSSセンサ36a,道路地図DB36bによって取得された情報は、第2の周囲環境情報であり第2の物標情報として画像認識_ECU13へと送られる。
【0055】
車載レーダ装置37は、複数のセンサであって、例えばミリ波レーダ等によって構成されている。ここで、複数のセンサであるミリ波レーダは、出力した電波に対し、物体からの反射波を受けて解析することにより、主として歩行者や他車両等の立体物のほか、道路端(例えば、路肩側の端部)に設けられる構造物等(例えば、縁石,ガードレール,建物等の壁,植栽等の立体物等)を検出する。さらに、各ミリ波レーダは、道路上に存在する立体的な障害物等をも検出する。この場合において、各レーダは、立体物に関する具体的な情報として、立体物の横幅,立体物の代表点の位置(自車両との相対位置,相対距離)及び相対速度等を検出する。
【0056】
なお、図1においては、車載レーダ装置37の一構成例としては、例えば4つのセンサ(左前側方センサ37lf,右前側方センサ37rf,左後側方センサ37lr,右後側方センサ37rr)により構成される例を示している。
【0057】
この4つのセンサのうち、左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、例えば、フロントバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、ステレオカメラ11の画像では認識することが困難な自車両の左右斜め前方及び側方の領域に存在する立体物を第3の周囲環境情報として検出する。
【0058】
また、左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、例えば、リアバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfでは認識することが困難な自車両の左右斜め側方及び後方の領域に存在する立体物を第3の周囲環境情報として検出する。
【0059】
このように、走行制御装置1における車載レーダ装置37は、車両周囲の第3の周囲環境を認識する第3の周囲環境認識装置として機能する。そして、車載レーダ装置37によって取得された情報は、画像認識_ECU13へと送られる。
【0060】
後方センサ38は、例えば、ソナー装置等によって構成されている。この後方センサ38は、例えば、リアバンパに配設されている。後方センサ38は、左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrでは認識することが困難な自車両の後方の領域に存在する立体物を第4の周囲環境情報として検出する。
【0061】
このように、走行制御装置1における後方センサ38は、車両周囲の第4の周囲環境を認識する第4の周囲環境認識装置として機能する。そして、後方センサ38によって取得された情報は、画像認識_ECU13へと送られる。
【0062】
なお、画像認識_ECU13を含むカメラユニット10において認識された第1の周囲環境情報、ロケータユニット36において認識された第2の周囲環境情報、車載レーダ装置37において認識された第3の周囲環境情報、後方センサ38において認識された第4の周囲環境情報にそれぞれ含まれる車外の各対象の座標は、何れも、走行_ECU14において、自車両の中心を原点とする三次元座標系の座標に変換される。
【0063】
走行_ECU14には、運転モードとして、手動運転モードと、走行制御のためのモードである第1の走行制御モード及び第2の走行制御モードと、退避モードと、が設定されている。これらの各運転モードは、例えば、HMI31に設けられているモード切換スイッチに対する操作状況等に基づき、走行_ECU14において選択的に切換可能となっている。
【0064】
また、走行_ECU14は、上述の各運転モードにおいて、自車両と衝突する可能性の高い自車走行路上の先行車等や落下物等の立体物などの障害物等が認識された場合には、緊急ブレーキ(AEB(Autonomous Emergency Braking):衝突被害軽減ブレーキ)制御や緊急操舵制御を伴う障害物回避制御を実行するか否かの判断を行い、適宜必要に応じて、所定の制御を実行する。
【0065】
なお、ロケータユニット36,画像認識_ECU13,走行_ECU14,CP_ECU21,E/G_ECU22,T/M_ECU23,BK_ECU24,PS_ECU25等の全部又は一部は、ハードウエアを含むプロセッサにより構成されている。
【0066】
ここで、プロセッサは、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)や、不揮発性メモリ(Non-volatile memory),不揮発性記憶装置(Non-volatile storage)等のほか、非一過性の記録媒体(non-transitory computer readable medium)等を備える周知の構成及びその周辺機器等によって構成されている。
【0067】
ROMや不揮発性メモリ、不揮発性記憶装置等には、CPUが実行するソフトウエアプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。そして、CPUがROM等に格納されたソフトウエアプログラムを読み出してRAMに展開して実行し、また、当該ソフトウエアプログラムが各種データ等を適宜参照等することによって、上記各構成部や構成ユニット(13,14,21~25,36)等の各機能が実現される。
【0068】
また、プロセッサは、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの半導体チップなどにより構成されていてもよい。また、上記各構成部や構成ユニット(13,14,21~25,36)等は電子回路によって構成してもよい。
【0069】
さらに、ソフトウエアプログラムは、コンピュータプログラム製品として、フレキシブルディスク,CD-ROM,DVD-ROM等の可搬型板媒体や、カード型メモリ,HDD(Hard Disk Drive)装置,SSD(Solid State Drive)装置等の非一過性の記憶媒体(non-transitory computer readable medium)等に、全体あるいは一部が記録されている形態としてもよい。
【0070】
なお、第1の周囲環境認識装置としては、カメラユニット10に含まれるステレオカメラ11に代えて(若しくは加えて)、例えば単眼カメラを適用してもよい。また、車載レーダ装置37に代えて(若しくは加えて)、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)等を適用することもできる。
【0071】
このように構成された走行制御装置1に含まれる本実施形態の配光制御装置の作用を以下に説明する。図2図4は、本発明の一実施形態の配光制御装置の作用を説明する図である。このうち図2は、配光制御が行われる場合の具体的な状況を説明する図である。図3は、本発明の一実施形態の配光制御装置による配光制御処理のフローチャートである。図4は、図3のフローチャートのうちの物標情報比較処理(ステップS6の処理)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0072】
まず、図2において使用する各符号について以下に説明する。図2において符号M1,M2は、本実施形態の配光制御装置40を含む走行制御装置1が搭載された自車両を示している。このうち、符号M1は、交差点進入前の位置を走行中の自車両を示している。また、符号M2は、交差点進入後、右折待機中の位置にある自車両を示している。
【0073】
なお、以下の説明においては、図2の状況位置(M1,M2)に関わらず、自車両を指し示す場合に符号Mを用いて、自車両Mと呼称する場合がある。
【0074】
また、図2に示す状況は、例えば、日没後において車両が前照灯等の照明装置の使用を必要とする夜間であるものとして考えるものとする。
【0075】
図2において符号Tは、自車両Mの周囲を走行する他車両を示している。図2に示す他車両Tは、例えば対向車線を直進してくる他車両として例示している。
【0076】
図2において符号Hは、自車両Mの周囲に存在する歩行者を示している。図2に示す歩行者Hは、例えば自車両Mが右折を行う際の進行路上の横断歩道上に存在する歩行者として例示している。
【0077】
図2において、符号100は自車両M及び他車両T等が走行している道路上の交差点を示している。この交差点100は、二本の直線道路100A,100Bが交差することによって形成されている。
【0078】
直線道路100Aは、自車両Mが走行している車線101(以下、自車線101という)と、この自車線101に対向する車線102(以下、対向車線102という)とからなる。さらに、自車線101は、交差点100付近において、右折専用車線101aと、直進及び左折用車線101bとからなる。
【0079】
図2に示す状況は、交差点100の手前の位置(M1)にて右折専用車線101aを走行している時点の自車両M1と、当該自車両Mが交差点100内に進入した後、右折専用車線101aの延長上の位置(M2)にて右折待機中の自車両M2を示している。
【0080】
自車線101を含む直線道路100A(以下、単に直線道路100Aという)に交差する側の直線道路100B(以下、交差道路100Bという)は、車線103,104の二車線からなる道路として示している。ここで、車線103は、自車両Mが図2の符号M2で示す位置から右折後に進行しようとする車線である。また、車線104は、車線103の対向車線である。この車線104も、自車線101と同様の構造を有している(右折専用車線と直進及び左折用車線を有する)。
【0081】
そして、交差道路100B側においては、車線103と車線104との間の境界部分に中央分離帯107(クロスハッチングで示す部分)が設けられていることを示している。
【0082】
さらに、図2において、符号105は歩道を示している。また、同図2の符号106A,106Bは横断歩道を示している。このうち、横断歩道106Aは自車線101を含む直線道路101Aを横切る横断歩道である。また、横断歩道106Bは交差道路101Bを横切る横断歩道である。
【0083】
次に、本実施形態の配光制御装置40による配光制御が実行される際の状況を、図2を用いて以下に簡単に説明する。
【0084】
図2に示すような交差点100の近傍において、本実施形態の配光制御装置40を含む走行制御装置1を搭載した自車両Mが、夜間に走行している状況を考える。このとき、自車両Mは、照明装置39の照明光を照射して走行している状況である。
【0085】
ここで、図2に示す交差点100に向かって走行する自車両Mは、同交差点100にて右折する予定であるものとする。このとき、対向車線102には、同交差点100に向かって対向他車両Tが走行しているものとする。
【0086】
この場合において、自車両Mは、交差点100の手前で右折専用車線101aに進入する(図2の符号M1参照)。この時点において、自車両Mは、照明装置39(例えば前照灯)からの照明光の配光制御を行って、図2の符号L1で示す範囲に照射されているものとしている。このときの照射範囲L1は、対向車線102側の対向他車両Tを認識することにより、対向車線102側への照射範囲を抑えた配光制御がなされている。このような配光制御は周知の技術によって実現される。
【0087】
自車両Mは、この状態で交差点100内に進入した後、交差点100内の所定の位置(図2の符号M2参照)にて一時停止して右折を待機する。自車両Mが、図2の位置M2にあるとき、自車両Mの照明装置39による照射範囲L1は、自車両Mが位置M1にあるときと同様の照射範囲L1が継続されているものとする。
【0088】
すると、このときの図2に示す状況下では、位置M2にある自車両Mの照明装置39による照射範囲L1は、例えば横断歩道106Bのごく一部のみを照射しているものの、自車両Mの主に右方向、即ち自車両Mがこれから進行しようとしている方向の領域への照明光の照射が充分に行われていない状況であると考えられる。
【0089】
この場合、当該方向(自車両Mの進行方向)の領域に存在する物標(例えば、中央分離帯107や横断歩道106B及び当該横断歩道106B上の歩行者H等)は、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されていない可能性がある。
【0090】
そこで、このような状況下において、本実施形態の配光制御装置40は、第2の周囲環境認識装置(36a,36b)によって認識された第2の物標情報を参照することにより、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されていない可能性のある物標を判別するようにしている。そして、判別された当該物標を含む領域への照明光の照射を行う配光制御を実行する。その結果の追加的な照射範囲を、図2の符号L2にて示している。
【0091】
なお、上述したように、ここでは、第2の周囲環境認識装置(36a,36b)によっては認識されていながら、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されていない可能性のある物標の例示として、自車両Mの進行方向(右寄り前方又は右側方領域)にある横断歩道106Bや中央分離帯107を具体例として挙げているが、これらに限られることはない。対象とする物標は、その他の物体であってもよい。
【0092】
このような状況下において本実施形態の配光制御装置40が実行する配光制御処理の詳細を、図3図4のフローチャートを用いて以下に説明する。
【0093】
本実施形態の配光制御装置40を含む走行制御装置1を搭載した自車両Mが、上述の図2に示す状況下にて走行しているものとする。このように、自車両Mが走行中には、自車両Mの走行制御装置1は、各種センサデバイスを用いて走行中の自車両Mの周囲環境の認識処理を継続して実行している。
【0094】
まず、図3のステップS1において、走行制御装置1は、第1の周囲環境認識装置、即ちステレオカメラ11,IPU12,画像認識_ECU13を含むカメラユニット10を用いて、自車両Mの周囲の第1の周囲環境を認識し第1の物標情報を取得する。
【0095】
ここで、第1の物標情報は、例えば自車両Mの周囲(主に前方)に存在し、ステレオカメラ11にて撮像された画像中において認識され得る立体物を想定している。具体的には、例えば道路上の構造物(ガードレール,縁石,中央分離帯,横断歩道等)の静止物体や、道路上を移動する車両,自転車,歩行者等の移動物体等が挙げられる。
【0096】
なお、この時点において、走行中の自車両Mの走行制御装置1が、例えば対向車線の対向他車両等を認識している場合には、配光制御装置40は、当該対向他車両等を考慮した周知の配光制御を実行する。図2に示す状況例では、自車両Mは、対向他車両T(或いはそれ以前に認識した不図示の対向他車両等)を考慮した周知の配光制御を、既に実行しているものとしている。図2に示す例では、自車両Mの前照灯の照射範囲を符号L1のような配光パターンとする配光制御が実行されているものとする。
【0097】
続いて、ステップS2において、走行制御装置1は、GNSSセンサ36a(第2の周囲環境認識装置)によって測位された自車両Mの位置情報(緯度,経度,高度等)を取得する。
【0098】
次に、ステップS3において、走行制御装置1は、上述のステップS2の処理にて取得した自車両Mの位置情報に基づいて、道路地図DB36b(第2の周囲環境認識装置)から自車位置基準の地図情報を取得する。これと同時に、取得した自車位置基準の地図情報に含まれる第2の周囲環境情報(第2の物標情報)を取得する。
【0099】
ここで、第2の物標情報としては、例えば自車両Mの周囲(主に前方)に存在し、地図情報に含まれる立体物を想定している。具体的には、例えば道路上の構造物(ガードレール,縁石,中央分離帯,横断歩道等)の静止物体や、道路上を移動する車両,自転車,歩行者等の移動物体等が挙げられる。なお、動的情報である車両,自転車,歩行者等は地図情報には含まれない場合もある。
【0100】
続いて、ステップS4において、走行制御装置1は、取得済みの地図情報(第2の周囲環境認識装置により取得)或いは取得済みの画像情報(第1の周囲環境認識装置により取得)に基づいて、自車両Mの前方に交差点100が存在するか否かの確認を行う。ここで、自車両Mの前方に交差点100が存在することが確認された場合には、次のステップS5の処理に進む。また、自車両Mの前方に交差点100が存在しない場合は、ステップS1の処理に戻り、以降の同様の処理を繰り返す。
【0101】
ステップS5において、走行制御装置1は、上述のステップS4において確認された交差点100において、自車両Mが右折又は左折を行うか否かの確認を行う。ここで、自車両Mが右折又は左折を行うか否かの確認は、例えば自車両Mの方向指示器の状態を確認すればよい。
【0102】
また、運転者がナビゲーション装置等を用いて、予め道路地図上に目的地までの走行ルートを設定しているような場合がある。このような場合には、道路地図上に設定された走行ルートと、自車位置基準の地図情報とによって、前方に確認された交差点100における進行方向(右左折するのか又は直進するのか)を確認することができる。
【0103】
さらに、例えば自車両Mが右折専用車線101aに進入したことを確認することによっても、自車両Mが当該交差点100にて右折しようとしていることが確認できる。
【0104】
ステップS5の処理において、自車両Mが右折又は左折を行うことが確認された場合には、次のステップS6の処理に進む。
【0105】
一方、自車両Mが確認された前方の交差点100において、右折又は左折を行わずに直進する場合は、上述のステップS1の処理に戻るループ処理が行われる。この場合には、直進走行中の自車両Mは、現状の配光制御を維持すればよく、配光制御の変更を必要としないものと判断される。このことから、自車両Mが交差点100を直進すると判断された場合には、上述のように、ステップS1の処理に戻るループ処理が行われる。
【0106】
ステップS6において、走行制御装置1は、認識され検出済みの第1の物標情報と認識済みの第2の物標情報とを比較する物標情報比較処理を行う。この物標情報比較処理は、第2の周囲環境認識装置(36a,36b)によって認識された複数の第2の物標情報が、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されているか否かの判別を行う処理である。
【0107】
一般に、夜間走行時においては、照明装置39の照射範囲に限りがあるため、自車位置基準の地図情報に含まれる複数の第2の物標情報(即ち確実に存在し得る物標)の全てが、必ずしも第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されている状況にあるとは限らない。
【0108】
そこで、走行制御装置1は、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって実際に検出されている第1の物標情報と、認識された第2の物標情報との比較を行うことにより、第2の物標情報として認識されて存在しているはずの物標であって、第1の物標情報としては検出されていない物標を判別する物標情報比較処理を行う。この物標情報比較処理の詳細を、図4のフローチャートによって以下に説明する。
【0109】
まず、図4のステップS11において、走行制御装置1は、認識されている複数の第2の物標情報のうち所定の第2の物標情報と一致する第1の物標情報が検出されているか否かの確認を行う。
【0110】
ここで、認識されている第2の物標情報と一致する第1の物標情報が検出されていない場合は、ステップS12の処理に進む。また、認識されている第2の物標情報と一致する第1の物標情報が検出されている場合は、ステップS13の処理に進む。
【0111】
次のステップS12において、走行制御装置1は、上述のステップS11の処理にて判別された物標情報を配光候補物標として設定する。ここで、配光候補物標とは、後段にて実行する配光制御の対象とされる物標の候補というほどの意味である。その後、ステップS13の処理に進む。
【0112】
ステップS13において、走行制御装置1は、認識されている第2の物標情報の全ての物標についての確認が終了したか否かの確認を行う。ここで、認識されている第2の物標情報の全ての物体についての確認が終了していない場合は、上述のステップS11の処理に戻り、以降の同様の処理を繰り返す。また、認識されている第2の物標情報の全ての物体についての確認が終了している場合は、元の処理に戻り(リターン)、図3のステップS7の処理に進む。
【0113】
なお、上述の説明では、ステップS13の処理にて、認識されている第2の物標情報の全ての物標について確認するものとしているが、これに限られることはない。例えば、上述の図3のステップS5の処理にて、自車両Mが右折しようとしていることが確認されている場合は、自車両Mの前方左寄り領域及び左側方領域の物標については、必ずしも必要な情報ではない。したがって、ステップS13の処理においては、自車両Mの進行方向に応じて、認識されている第2の物標情報の全ての物標のうちの少なくとも必要とする物標情報について確認を行えばよい。具体的には例えば、自車両Mが右折しようとしている場合には、主に自車両Mの前方右寄り領域及び右側方領域の第2の物標情報の確認が行われればよい。
【0114】
図3に戻って、ステップS7において、走行制御装置1は、上述のステップS12の処理にて設定された配光候補の優先度を設定する。ここで、配光候補に優先度を設定するのは、次のような理由による。即ち、第2の周囲環境認識装置(36a,36b)によって認識された複数の第2の物標情報のうち第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されていない物標の全てに対して照明光を照射することは困難である。また、検出されていない物標の全てを認識可能とすることは、必ずしも必要なことではない。
【0115】
そこで、配光制御を行うのに際しては、検出されていない物標を含む領域のうち必要となる領域を対象とすればよい。そのために、本実施形態の配光制御装置40においては、判別された配光候補に優先度を設定し、優先度の高い物標を主に含む領域を配光制御の対象とする。
【0116】
そのための配光候補の優先度は、次のようにして設定される。例えば、図2に示す状況、即ち自車両Mが夜間の交差点100を右折しようとしている状況を想定する。
【0117】
図2に示すように、自車両Mは交差点100内の所定の位置M2にて右折待機のために停止している。このとき自車両Mの照明装置39は、通常状態では、主に前方に向けて照明光を照射している。また、例えば自車両Mが当該交差点100内に進入する以前の周囲状況によっては、所定の配光制御が既に行われている場合もある。
【0118】
例えば、自車両Mの当該交差点100内への進入以前に対向他車両を考慮した配光制御が継続してなされていると、図2に示す照射範囲L1を照射するような配光制御がなされている場合がある。
【0119】
なお、この配光パターンは、次のような具体例を示している。例えば、左側通行システムの道路を走行する自車両Mにとっては、対向車両は右側側方を通過する。この対向他車両に対するグレア,眩惑を抑えるために、自車両Mは、照明装置39における前照灯の通常の照射範囲に対して、例えば前方右側への配光を抑止する配光制御を行う。これにより、図2に示すような照射範囲L1とされる。
【0120】
一般に、夜間走行中の自車両Mの第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって実際に検出され得る第1の物標情報は、主に照明装置39による照明光の照射範囲L1内にほぼ限られてしまうことになる。また同時に、自車両Mの運転者によって視認し得る視認範囲も、同照射範囲L1内にほぼ限られる。
【0121】
したがって、自車両Mの周囲に実際に存在している各種の物標について、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって全てを検出することはできない。特に、夜間においては、自車両Mの前照灯の照明光の照射範囲外の領域に存在する物標を検出することは困難な傾向にある。
【0122】
例えば、図2に示す状況では、横断歩道106Bの大部分や、当該横断歩道106B上を歩行している歩行者Hや、交差道路100B上の中央分離帯107等は、照射範囲L1の外側にある。そのため、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されていない(或いは運転者によって視認されていない)可能性がある。
【0123】
このように、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されていない(或いは運転者によって視認されていない)物標を配光候補としたときの優先度は、例えば車両の進行方向などに応じて設定される。
【0124】
具体的には、例えば、車両が交差点等において右折しようとする場合、前方領域に加えて前方右寄り領域及び右側方領域(これから進行しようとする方向を含む領域)の周囲環境(物標等)が把握されていることが望ましい。
【0125】
そこで、右折時には、前方右寄り領域及び右側方領域に存在する物標に高い優先度を設定する。一方、右折時において、例えば左寄り領域及び左側方領域の物標の優先度は低く設定してもよい。また、各物標についての優先度としては、例えば横断歩道や中央分離帯等を高い優先度に設定する。
【0126】
ここで、例えば横断歩道には、歩行者等が存在している可能性がある。特に、右折車両にとっての右寄り領域に存在する横断歩道は、当該車両が右折後に進行する進行路上に位置する。図2の例では、右折待機中の位置M2の自車両に対する横断歩道106Bが相当する。
【0127】
一般に歩行者等については動的情報であるので地図情報には含まれない場合がある。しかしながら、例えば横断歩道106Bを照射することができれば、結果的に、当該横断歩道106B上に存在し得る歩行者Hをも照射することができる。このことから、右寄り領域及び右側方領域の横断歩道106Bは、高優先度設定として扱われる。
【0128】
また、例えば交差道路100B側の中央分離帯107は、交差道路101B側の縁石等(不図示)として誤認識される可能性がある。図2に示すように、夜間において、交差道路100B側の中央分離帯107が明確に照射範囲L1に含まれておらず、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出されていない(或いは運転者によって視認されていない)物標である場合、自車両M(運転者)は、交差道路100B側の車線104を、右折後の進行走路として誤認識してしまう可能性がある。このことから、右寄り領域及び右側方領域に存在する中央分離帯107は、高優先度設定として扱われる。
【0129】
ところで、図2に示す交差点100においては、信号機の存在については、特に図示していない。しかし、例えば、前方に交差点100が確認された時点で、自車両Mに対する信号機が青指示である場合は、第1の物標情報及び第2の物標情報として、停止線などを認識する必要性は低い。特に、同交差点100を直進して通過する場合であって、自車両Mに対する信号機が青指示であれば、停止線などの認識の必然性はさらに低くなる。そこで、この場合には、停止線等の物標情報は低い優先度が設定される。
【0130】
一方、自車両Mに対する信号機が赤指示である場合は、停止線等を認識する必要はある。しかし、通常の配光制御を行っている場合には、特別な配光制御の変更をすることなく、前方に表れる停止線等の物標は、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)及び第2の周囲環境認識装置(36a,36b)のいずれにおいても検出又は認識し得る照射範囲が確保されているものと思われる。しかし、この場合において、当該停止線等が第1の周囲環境認識装置(11,12,13)にて検出されておらず、当該停止線等が配光候補として設定されている場合には、当該停止線等については低い優先度に設定される。
【0131】
このようにして、図3のステップS7の処理において配光候補の優先度設定が行われる。その後、ステップS8の処理に進む。
【0132】
ステップS8において、配光制御装置40の照明制御ユニット(LT_ECU)26は、上述のステップS7の処理にて設定された優先度に基づいて配光制御を実行する。図2に示す例示では、例えば、図2の照射範囲L2を付加する配光制御を行う例を示している。
【0133】
なお、このように、設定された優先度に基づく配光制御を実行した結果、例えば対向他車両T等の走行に影響を及ぼす可能性が生じる場合(眩惑等)には、照射範囲L2の配光制御に対して、さらなる配光制限を加えたり、照射範囲の調整を付加する制御が行われる。その後、一連の処理を終了して元の処理に戻る(リターン)。
【0134】
こうして、優先度に基づく配光制御を行うことによって、自車両Mの照明装置39は、例えば、図2の符号L1で示す照射範囲に加えて、図2の符号L2で示す照射範囲への照明光の照射が行われる。
【0135】
したがって、これにより、照射範囲L2(自車両Mの右寄り領域及び右側方領域の物標に対する照明光の照射)が行われるので、当該照射範囲L2内の物標の認識を、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出できるようになる。また同時に、運転者は、同物標を視認できるようになる。
【0136】
なお、上述の処理シーケンスにおいては、配光制御の制御開始タイミングとして、図4の処理シーケンスを完了し、かつ図3の優先度設定処理を完了した後、即座に実行するようにしているが、このような処理に限られることはない。
【0137】
例えば、配光制御の制御開始タイミングとして、図3の優先度設定処理を完了した後であっても、自車両Mと対象とする物標との距離が充分離れている場合には、すぐに配光制御を実行開始しても効果的ではない。そこで、自車両Mと対象とする物標との距離が所定の距離以内に近付いた時点で、配光制御を開始するようにしてもよい。
【0138】
また、例えば、第1の物標情報として検出されていない物標の未検出状態の継続時間が所定時間以上経過した時点を、配光制御の開始タイミングとしてもよい。
【0139】
以上説明したように上記一実施形態によれば、
夜間の交差点等を走行中の自車両Mが、周辺環境のうち視認困難な物標(第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出できなかった物標)であっても、第2の周囲環境認識装置(36a,36b)によって認識され得る物標に対して適切な照明光の配光制御を行うことができる。
【0140】
そして、上述のような配光制御を行うことにより、第1の周囲環境認識装置(11,12,13)によって検出できなかった物標に対しても、確実に照明光の照射を行って、認識することができるようになる。
【0141】
したがって、運転者による車両周辺環境の誤認識に基づいて誤操作等が行われる可能性を抑止することができ、よって、これらの誤操作等に起因して生じる進行路の誤進入等(逆走等)を抑止することができる。同時に、歩行者等の早期認識に寄与することができる。
【0142】
なお、上述の実施形態においては、自車両Mが前方に交差点100を認識し、当該交差点100にて自車両Mが右折する場合に実行される配光制御の例を示したが、この例示に限られることはない。例えば、当該交差点100において、自車両Mが左折する場合にも、同様に、本実施形態の配光制御装置40による配光制御は適用できる。この場合には、主に左寄り領域及び左側方領域の物標に着目して配光制御を行うようにすればよい。
【0143】
また、自車両Mが交差点100にて右左折する状況以外の状況においても、周囲環境の状況に応じて適宜配光制御を実行することができる。
【0144】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0145】
1…走行制御装置
10…カメラユニット
11…ステレオカメラ
11a…メインカメラ
11b…サブカメラ
12…画像処理ユニット(IPU)
13…画像認識ユニット(画像認識_ECU)
14…走行制御ユニット(走行_ECU)
21…コックピット制御ユニット(CP_ECU)
22…エンジン制御ユニット(E/G_ECU)
23…トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)
24…ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)24
25…パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)
26…照明制御ユニット(LT_ECU)
31…ヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)
32…スロットルアクチュエータ
33…油圧制御回路
34…ブレーキアクチュエータ
35…電動パワステモータ
36…ロケータユニット
36a…GNSSセンサ
36b…高精度道路地図データベース(道路地図DB
37…車載レーダ装置
37lf…左前側方センサ
37lr…左後側方センサ
37rf…右前側方センサ
37rr…右後側方センサ
38…後方センサ
39…照明装置
40…配光制御装置
100…交差点
106A,106B…横断歩道
107…中央分離帯
H…歩行者
L1,L2…照射範囲
M1,M2…自車両
T…対向他車両
図1
図2
図3
図4