(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117332
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240822BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B65H7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023372
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保科 浩則
【テーマコード(参考)】
2C056
3F048
【Fターム(参考)】
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB52
2C056EC37
2C056EC42
2C056HA29
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA20
3F048BB02
3F048CC03
3F048CC04
3F048DB02
3F048DB07
3F048DC12
(57)【要約】
【課題】搬送ベルトの蛇行と搬送ベルトにおける印刷用紙の傾きを考慮して印刷するインクジェットプリンターを提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置の制御部が実行する処理は、搬送ベルトの蛇行を検知して蛇行量を算出するステップ(S1310)と、印字経路にある記録媒体の傾きを検知し、その傾き量を算出するステップ(S1320)と、上記蛇行量と上記傾き量とを用いて、周知の技術を用いて画像形成時の補正量を算出するステップ(S1330)と、算出した補正量を用いて記録媒体に形成される各色の画像補正を実行し、印字データを生成するステップ(S1340)と、生成した印字データを用いて印字を実行するステップ(S1350)とを含む。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の搬送方向と交差する方向に配置されて前記搬送方向に対する前記記録媒体の傾きを検知する傾き検知手段と、
回転駆動により前記記録媒体を搬送する搬送媒体の蛇行を検知する蛇行検知手段と、
前記記録媒体の傾きと前記蛇行の検知結果とに基づいて、前記記録媒体に形成される画像の傾きを補正する制御手段とを備える、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記記録媒体の傾きと、前記蛇行の検知結果とから傾き補正量を算出し、
前記傾き補正量を用いて、前記画像の傾きを補正する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
記録媒体に画像を形成する印刷手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記補正後の画像の傾きを用いて前記印刷手段に画像を形成させるための印字データを補正する、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記傾き検知手段は、
記録媒体の搬送方向に交差する方向に配置された複数のセンサーを含み、
前記複数のセンサーの各々が前記記録媒体の先端および終端を検知することにより、前記記録媒体の傾きを検知する、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記複数のセンサーの間隔は、搬送される媒体の幅よりも小さい、請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記複数のセンサーの間隔は、変更可能である、請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記印刷手段は、複数の印字部を含み、
前記傾き補正量を算出することは、各印字部毎に異なる前記傾き補正量を算出することを含み、
前記画像の傾きを補正することは、各印字部毎に印字データを補正することを含む、請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体の傾きを検知することは、
前記複数のセンサーのうちの1つのセンサーが前記記録媒体の先端を検知してから、前記複数のセンサーのうちの他のセンサーが前記記録媒体の終端を検知するまでの時間に前記記録媒体が前記搬送方向に移動する距離の、前記1つのセンサーと前記他のセンサーとの間隔に対する比に対応する角度と、
前記記録媒体が傾いていない場合における前記角度と、の差分を、前記記録媒体の傾きとして検知することを含む、請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記搬送媒体は、搬送方向に沿って形成された複数の空孔部を有するベルトであり、
前記蛇行検知手段は、前記記録媒体の搬送が開始される前に、前記ベルトによる複数の回転の間に、前記複数の空孔部の透過信号に基づいて、前記ベルトの蛇行を検知し、
前記制御手段は、前記複数の回転の間に取得された各透過信号に基づいて、前記ベルトの蛇行量を予測する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
記録媒体の搬送方向と交差する方向に配置されて前記搬送方向に対する前記記録媒体の傾きを検知するステップと、
回転駆動により前記記録媒体を搬送する搬送媒体の蛇行を検知するステップと、
前記記録媒体の傾きと前記蛇行の検知結果とに基づいて、前記記録媒体に形成される画像の傾きを補正するステップとを含む、インクジェット記録装置の制御方法。
【請求項11】
前記補正するステップは、
前記記録媒体の傾きと、前記蛇行の検知結果とから傾き補正量を算出するステップと、
前記傾き補正量を用いて、前記画像の傾きを補正するステップとを含む、請求項10に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項12】
記録媒体に画像を形成するステップをさらに含み、
前記補正するステップは、前記補正後の画像の傾きを用いて画像を形成するための印字データを補正するステップを含む、請求項11に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項13】
前記傾きを検知するステップは、記録媒体の搬送方向に交差する方向に配置された複数のセンサーの各々が、前記記録媒体の先端および終端を検知することにより、前記記録媒体の傾きを検知するステップを含む、請求項11に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項14】
前記複数のセンサーの間隔は、搬送される媒体の幅よりも小さい、請求項13に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項15】
前記複数のセンサーの間隔は、変更可能である、請求項13に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項16】
前記傾き補正量を算出するステップは、複数の印字部の各々について前記傾き補正量を算出するステップを含み、
前記画像の傾きを補正するステップは、各印字部毎に印字データを補正するステップを含む、請求項12に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項17】
前記記録媒体の傾きを検知するステップは、前記複数のセンサーのうちの1つのセンサーが前記記録媒体の先端を検知してから、前記複数のセンサーのうちの他のセンサーが前記記録媒体の終端を検知するまでの時間に前記記録媒体が前記搬送方向に移動する距離の、前記1つのセンサーと前記他のセンサーとの間隔に対する比に対応する角度と、前記記録媒体が傾いていない場合における前記角度と、の差分を、前記記録媒体の傾きとして検知するステップを含む、請求項13に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項18】
前記搬送媒体は、搬送方向に沿って形成された複数の空孔部を有するベルトであり、
前記蛇行を検知するステップは、前記記録媒体の搬送が開始される前に、前記ベルトによる複数の回転の間に、前記複数の空孔部の透過信号に基づいて、前記ベルトの蛇行を検知するステップを含み、
前記補正するステップは、前記複数の回転の間に取得された各透過信号に基づいて、前記ベルトの蛇行量を予測するステップを含む、請求項10に記載のインクジェット記録装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はインクジェット記録装置の制御に関し、より特定的には、記録媒体を送る搬送媒体の蛇行を考慮して画像を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターその他の記録装置は、記録媒体を搬送するための搬送媒体としてベルトを使用する場合がある。インクジェット印刷方式では、インクジェットヘッドと用紙その他の記録媒体とが非接触であるため、静止しているインクジェットヘッドに対する記録媒体の搬送精度が、画質に直接影響する。そのため、記録媒体が傾いてインクジェットヘッドの下を通過すると、記録媒体の印刷方向に対して傾いた画像が形成される。
【0003】
記録媒体の傾きに関し、たとえば、特開2000-284641号公報(特許文献1)は、「画像形成位置に搬送される記録紙の傾きに起因して、記録紙上に画像が傾いて形成されることを防止する」技術を開示している。具体的には、「画像形成位置に搬送される記録紙の傾きを検知し、検知された傾きに対応した補正を行って画像を形成する」というものである([要約]参照)。また、画像補正のための技術は、たとえば、特許文献2(特開2015-184653号公報)および特許文献3(特開平7-072702号公報)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-284641号公報
【特許文献2】特開2015-184653号公報
【特許文献3】特開平7-072702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によれば、記録媒体の搬送媒体、たとえばベルトで蛇行が発生した場合には、画像補正に使用する傾きを正確に検出できないという問題がある。したがって、搬送媒体が蛇行している場合でも画像補正に使用する傾きを正確に検出する技術が必要とされている。
【0006】
本開示は上述のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面に従う目的の1つは、記録媒体の搬送が蛇行している場合でも画像補正を実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従うインクジェット記録装置は、記録媒体の搬送方向と交差する方向に配置されて搬送方向に対する記録媒体の傾きを検知する傾き検知手段と、回転駆動により記録媒体を搬送する搬送媒体の蛇行を検知する蛇行検知手段と、記録媒体の傾きと蛇行の検知結果とに基づいて、記録媒体に形成される画像の傾きを補正する制御手段とを備える。
【0008】
他の実施の形態に従うと、インクジェット記録装置の制御方法が提供される。この制御方法は、記録媒体の搬送方向と交差する方向に配置されて搬送方向に対する記録媒体の傾きを検知するステップと、回転駆動により記録媒体を搬送する搬送媒体の蛇行を検知するステップと、記録媒体の傾きと蛇行の検知結果とに基づいて、記録媒体に形成される画像の傾きを補正するステップとを含む。
【0009】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ある実施形態に従うインクジェット記録装置1を、記録媒体Pの搬送方向に直交する方向における側方から見た図である。
【
図2】ベルト搬送装置30を画像形成部40側の上面から見た図である。
【
図3】張力制御ローラー12を、記録媒体Pの搬送方向に沿う方向から見た図である。
【
図4】ある実施の形態に従う駆動機構20の構成の概要を示すブロック図である。
【
図5】ある実施の形態に従って蛇行を補正するために制御部26が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【
図6】マークM毎に第1エッジ検出部25aによって検出されたエッジ位置(上流側の測定値)と、第2エッジ検出部25bによって検出されたエッジ位置(下流側の測定値)と、それらの差分から算出された蛇行量を表わす図である。
【
図7】搬送ベルト13の搬送距離に対する蛇行量を示した図である。
【
図8】傾き検知センサー150,151に対して記録媒体Pが搬送される方向を表わす図である。
【
図9】搬送される記録媒体Pの考えられる姿勢を表わす図である。
【
図10】記録媒体Pが傾いて搬送されている場合において搬送ベルト13が蛇行している時における記録媒体Pの印字の状態を表わす図である。
【
図11】記録媒体Pが傾いた状態で搬送ベルト13によって搬送されている状態を表わす図である。
【
図12】複数色による所謂カラー印刷が行なわれる記録媒体Pが搬送ベルト13に配置された状態を表わす図である。
【
図13】インクジェット記録装置1の制御部26が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
インクジェット記録装置では、記録媒体(例えば、印刷用紙)の搬送手段の1つとして、ベルト搬送が使用される。インクジェット印刷方式は非接触で行なわれるため、静止しているインクジェットヘッドに対して搬送されている用紙の搬送精度が画質に直接現れる。したがって、用紙が傾いた状態でインクジェットヘッドの下を通過すると、傾いた画が描画されることになる。
【0013】
そこで、インクジェットヘッドに対して用紙が傾いている角度が算出される。搬送ベルト13の蛇行に対して画像の補正を行うことで、蛇行による影響を最小限にすることができる。
【0014】
ベルト蛇行の補正を行なっても搬送ベルトは実際には蛇行しており、用紙の傾きを検知した結果と実際の傾きに誤差が出る。インクジェット記録装置は、用紙の傾き検知結果に対して、ベルト蛇行による影響分を補正する。インクジェット記録装置は、算出した傾きに対して画像補正を行うことにより、用紙を基準とした描画を実現する。
【0015】
[インクジェット記録装置]
図1を参照して、インクジェット記録装置1の構成の概要について説明する。
図1は、ある実施形態に従うインクジェット記録装置1を、記録媒体Pの搬送方向に直交する方向における側方から見た図である。記録媒体Pは、たとえば、紙、布帛、樹脂フィルムなど、シート状に形成されてインクを定着可能な印刷媒体である。ある局面において、記録媒体Pは、枚葉の媒体である。
【0016】
インクジェット記録装置1は、ベルト搬送装置30と、画像形成部40とを備える。ベルト搬送装置30は、駆動ローラー11と、従動ローラー10と、張力制御ローラー12と、これらに張架された搬送ベルト13と、駆動機構20とを備える。駆動機構20は、駆動部21と、第1マーク位置検出部24aと、第2マーク位置検出部24bと、第1エッジ検出部25aと、第2エッジ検出部25bと、制御部26と、傾き検知センサー150,151とを備える。
【0017】
ベルト搬送装置30は、搬送ベルト13を周回動作させる。これにより、搬送ベルト13の外周面は、記録媒体Pの載置面13aとなる。載置面13a上に保持された記録媒体Pは、搬送ベルト13の周回方向に搬送される。駆動機構20は、張力制御ローラー12を駆動する。駆動機構20は、蛇行を補正する機能を有する。ベルト搬送装置30の詳細は、後述する。
【0018】
画像形成部40は、従動ローラー10と駆動ローラー11との間に設けられる。画像形成部40は、インク供給装置100と、用紙先端位置検知センサー22とを備える。
【0019】
インク供給装置100は、記録媒体Pの載置面13aに対向する位置に予め定められた間隔で配置されている。インク供給装置100は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色について、個別に設けられたキャリッジ100K,100C,100M,100Yを有する。キャリッジ100K,100C,100M,100Yは、例えば、記録媒体Pの搬送方向に対して上流側から、キャリッジ100K,100C,100M,100Yの順に配置されている。
【0020】
キャリッジ100K,100C,100M,100Yは、それぞれ、記録媒体Pの搬送方向に直交する方向(記録媒体Pの幅方向)に延在するように配置されている。キャリッジ100K,100C,100M,100Yは、それぞれ、搬送される記録媒体Pの予め定められた位置にインクを吐出可能な幅に設定されている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。4つのキャリッジ100K,100C,100M,100Yは、それぞれ吐出するインクの色が異なるのみで、互いに同一の構成を有している。
【0021】
キャリッジ100K,100C,100M,100Yは、それぞれインクを吐出するノズルが設けられたインクジェットヘッド(図示しない)を有する。そして、各キャリッジ100K,100C,100M,100Yにおけるインクジェットヘッドの複数のノズルは、それぞれのキャリッジ100K,100C,100M,100Yに対応した色のインクを吐出する。ノズルから吐出されたインクは、搬送されてきた記録媒体Pに付着する。
【0022】
用紙先端位置検知センサー22は、搬送ベルト13の搬送方向におけるインク供給装置100の上流側に配置されている。用紙先端位置検知センサー22は、搬送されてきた記録媒体Pの先端位置を検出する。インクジェット記録装置1は、用紙先端位置検知センサー22で記録媒体Pの先端が検知されるタイミングに基づいて、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクを各キャリッジ100K,100C,100M,100Yから記録媒体Pに順に吐出することにより、記録媒体P上に所望の画像を形成する。
【0023】
傾き検知センサー150と傾き検知センサー151とは、間隔Lを隔てて、搬送方向に垂直に配置されている。傾き検知センサー150,151は、それぞれ、例えば、赤外線の発光素子と受光素子との組み合わせにより実現される。一例として、傾き検知センサー150の場合、記録媒体Pの先端が通過したときに赤外線光が遮断されたことを受光素子が検知したことに基づいて、記録媒体Pの先端を検知する。他方、傾き検知センサー151の場合、記録媒体Pの終端が通過したときに遮断されていた赤外線光が受光素子によって検知されたことに基づいて、記録媒体Pの終端を検知する。
【0024】
[ベルト搬送装置]
図2および
図3を参照して、ベルト搬送装置30の構成について説明する。
図2は、ベルト搬送装置30を画像形成部40側の上面から見た図である。
図3は、張力制御ローラー12を、記録媒体Pの搬送方向に沿う方向から見た図である。ベルト搬送装置30は、予め定められた方向に記録媒体Pを搬送する。
【0025】
ベルト搬送装置30は、駆動ローラー11と、従動ローラー10と、張力制御ローラー12と、これらに張架された無端状の搬送ベルト13とを備える。
【0026】
・駆動ローラー
駆動ローラー11は、駆動モーター14を備える。駆動ローラー11は、駆動モーター14の回転する方向に回転する。駆動ローラー11は、例えばロータリーエンコーダーのような回転速度の測定部(図示しない)を有する、測定部で測定された回転速度が、駆動モーター14にフィードバックされると、回転速度は、自在に制御される。
【0027】
・従動ローラー
従動ローラー10は、その回転軸と、駆動ローラー11の回転軸とが平行になるように、配置されている。従動ローラー10は、駆動ローラー11の回転による搬送ベルト13の周回動作に追従して回転する。従動ローラー10は、ロータリーエンコーダー(図示しない)を備える。ロータリーエンコーダーで測定された回転速度は、画像形成部40の制御部(図示しない)にフィードバックされる。これにより、インク供給装置100から各色のインクは、ベルト搬送装置30による記録媒体Pの搬送速度に同期して吐出され、カラー画像が、記録媒体Pに形成される。
【0028】
・張力制御ローラー
張力制御ローラー12は、その軸方向が、駆動ローラー11と従動ローラー10との間で、駆動ローラー11及び従動ローラー10の軸方向に対してほぼ平行になるように配置されている。張力制御ローラー12は、搬送ベルト13に対して内周側から外周側に向かう圧力を加える。張力制御ローラー12は、駆動ローラー11の駆動に応じて従動する。ある実施の形態に従うと、張力制御ローラー12は、搬送ベルト13の蛇行を制御するためのステアリングローラーとして機能する。このような張力制御ローラー12は、後述する駆動機構20の制御によって駆動され、搬送ベルト13の蛇行を補正する。
【0029】
・搬送ベルト
搬送ベルト13は、駆動ローラー11と、従動ローラー10と、張力制御ローラー12とに対して張架される。ある局面において、搬送ベルト13は、無端ベルトである。搬送ベルト13は、外周面と内周面との間で空気が通過し得る複数の貫通孔(図示しない)を有する。当該複数の貫通孔は、搬送ベルト13の搬送方向に直交する方向(幅方向)において、記録媒体Pが載置される箇所に対応して設けられている。搬送ベルト13では、吸引ファン(図示しない)が、これらの貫通孔を介して搬送ベルト13の載置面13a側の空気を吸引する。これにより、搬送ベルト13の載置面13aに供給された記録媒体Pは、載置面13aに対して吸着された状態で搬送ベルト13の周回方向に搬送される。ある局面において、搬送ベルト13は、例えばスチール製で構成されるが、材質はスチールに限定されず、その他の材質も搬送ベルト13を構成し得る。
【0030】
搬送ベルト13は、記録媒体Pの載置される載置面13a側において、記録媒体Pの搬送方向に直交する方向(幅方向)における一方の端部側のうち、記録媒体Pが載置される位置と重ならない位置に、予め定められた形状のマークMを有する。本実施の形態では、複数のマークMは、予め定められた間隔で設けられている。ある局面において、マークMは空孔部としても構成され得る。
【0031】
なお、搬送ベルト13に設けられるマークMの数は、
図2に例示される数に限られず、少なくとも1つあればよい。複数のマークMが設けられる場合、搬送方向に連続するマークMの間隔は、特に規定されない。たとえば、3つ以上のマークMが設けられる場合には、マークMの間隔は、等間隔でもよく、異なる間隔でもよい。本実施の形態は、3つ以上の複数のマークMを等間隔に設ける例を示している。
図2は、隣り合うマークMのそれぞれの間隔が100mmである場合を例示している。
【0032】
各マークMの形状は、搬送ベルト13の搬送方向に長い長方形状であるが、これに限られない。マークMの形状は、円形状または楕円形状でもよく、その他の形状でもよい。また、マークMの、搬送ベルト13の搬送方向の長さは、特に限定されないが、第1マーク位置検出部24aと、第2マーク位置検出部24bのそれぞれがマークMの先端位置を検出可能な形状であればよい。本実施の形態は、搬送ベルトの搬送方向の各マークMの長さ(マーク長)が10mmである場合を例示している。
【0033】
マークMは、第1マーク位置検出部24a、第2マーク位置検出部24b、第1エッジ検出部25a、および第2エッジ検出部25bによって検出可能な構成であればよい。ある局面において、マークMは、搬送ベルト13の色の反対色(補色)で形成されている。
【0034】
・駆動機構
駆動機構20は、駆動ローラー11を駆動する駆動モーター14と、張力制御ローラー12を駆動制御する駆動部21と、シャフト位置検出部23(
図3参照)とを備える。駆動部21とシャフト位置検出部23とは、張力制御ローラー12の両端にそれぞれ1つずつ設けられている。これにより、張力制御ローラー12は、搬送ベルト13に対して内周側から外周側に向かう圧力を加えて搬送ベルト13の張力を制御すると共に、両端の位置をそれぞれ個別に制御可能なステアリングローラーとしても機能する。
【0035】
駆動モーター14は、例えば、外部端末(図示しない)から入力された印刷ジョブに基づいて、予め指定された方向に駆動ローラーを回転させる。駆動モーター14による駆動ローラー11の回転によって、駆動ローラー11と従動ローラー10と張力制御ローラー12とに巻き掛けられた搬送ベルト13は、周回移動する。
【0036】
駆動部21は、張力制御ローラー12の両端を回動自在に支持するシャフト21a,21aと、各シャフト21a,21aを延設方向に独立して移動させるためのアクチュエーター21b,21bとを有する。シャフト21a,21aは、各々の軸が平行になるように配置される。また、シャフト21a,21aは、駆動ローラー11および従動ローラー10の各軸の方向に対して垂直となるように配置される。これにより、駆動部21は、駆動ローラー11および従動ローラー10の各軸方向に対して垂直な方向に張力制御ローラー12の両端を同時に移動させて、搬送ベルトに与えられる張力を制御する。
【0037】
駆動部21は、駆動ローラー11および従動ローラー10の各軸方向に対して垂直な方向に、張力制御ローラー12の一方の端部を移動させて、張力制御ローラー12をステアリング動作させる。例えば、搬送ベルト13が、蛇行して走行している場合、駆動部21は、シャフト21a,21aのうち、いずれかを押し下げ、又は押し上げる。これにより、搬送ベルトに与えられる張力は、搬送ベルト13の幅方向における一方の端部側において増加し、搬送ベルト13は、搬送ベルト13の幅方向における他方の端部側に移動する。したがって、シャフト21a,21aの押し下げ量または押し上げ量を調整することにより、搬送ベルト13の蛇行量は、補正され得る。
【0038】
本実施の形態に従うと、駆動部21は、第1マーク位置検出部24aおよび第2マーク位置検出部24bと、第1エッジ検出部25aおよび第2エッジ検出部25bとによって検出される各値に基づいて蛇行を補正する。駆動部21による蛇行の補正方法は、詳述する。
【0039】
図3を参照して、駆動機構20は、
図1または
図2に示される構成に加えて、2つのシャフト位置検出部23,23と、制御部26とを備える。
【0040】
シャフト位置検出部23,23は、駆動部21によって移動する張力制御ローラー12の端部の位置であって、シャフト21a,21aの延設方向の位置を検出する。シャフト位置検出部23,23は、例えば、2つの駆動部21,21のそれぞれのアクチュエーター21b,21bが有するアクチュエーター制御部(図示しない)に設けられる。シャフト位置検出部23,23は、アクチュエーター21b,21bの駆動位置によって、張力制御ローラー12の端部の位置を断続的に検知する。シャフト位置検出部23,23に検出された値は、制御部26に送られる。
【0041】
第1マーク位置検出部24aおよび第2マーク位置検出部24bは、搬送ベルト13に形成されたマークMの先端を検出するセンサである。マークMの先端とは、搬送ベルト13の搬送方向において、上流側に位置するマークMのエッジ位置である。第1マーク位置検出部24aおよび第2マーク位置検出部24bは、搬送ベルト13の周回移動に伴って周回移動するマークMの先端を検出する。
【0042】
第1マーク位置検出部24aおよび第2マーク位置検出部24bは、搬送ベルト13の搬送方向において、それぞれ、異なる位置に設けられている。本実施の形態では、第1マーク位置検出部24aは、搬送ベルト13の搬送方向において、インク供給装置100の上流側に設けられている。第2マーク位置検出部24bは、搬送ベルト13の搬送方向において、インク供給装置100の下流側に設けられている。第1マーク位置検出部24aおよび第2マーク位置検出部24bで検出された値は、制御部26に送られる。
【0043】
第1エッジ検出部25aおよび第2エッジ検出部25bは、搬送ベルト13に形成されたマークMのエッジ位置を検出する。当該エッジ位置は、マークMの搬送ベルト13の搬送方向に沿う方向に延在する。したがって、第1エッジ検出部25aおよび第2エッジ検出部25bは、搬送ベルト13の搬送方向に直交する幅方向にあるマークMのエッジ位置を検出する。本実施の形態では、第1エッジ検出部25aおよび第2エッジ検出部25bは、搬送ベルト13に形成されたマークMを構成する輪郭線(エッジ形状)のうち、搬送ベルト13の幅方向において、記録媒体Pが載置される側とは反対側のエッジ位置を検出する。
【0044】
第1エッジ検出部25aは、第1マーク位置検出部24aの近傍に設けられている。第2エッジ検出部25bは、第2マーク位置検出部24bの近傍に設けられている。本実施の形態に従うと、制御部26は、第1エッジ検出部25aの出力に基づいて、第1マーク位置検出部24aがマークMの先端位置を検出したタイミングにおいて検出されたエッジ位置を取得する。また、制御部26は、第2エッジ検出部25bの出力に基づいて、第2マーク位置検出部24bがマークMの先端位置を検出したタイミングにおいて検出されたエッジ位置を取得する。
【0045】
ある局面において、第1マーク位置検出部24aおよび第1エッジ検出部25aと、第2マーク位置検出部24bおよび第2エッジ検出部25bとの間隔は、搬送される記録媒体Pの搬送方向における長さよりも短い。これにより、制御部26は、記録媒体Pの搬送方向における長さよりも短いピッチで蛇行量を検出でき、記録媒体Pの搬送精度が高まり得る。
【0046】
第1エッジ検出部25aおよび第2エッジ検出部25bでそれぞれ検出されたエッジ位置の情報(検出値)は、随時、制御部26に入力される。
【0047】
制御部26は、2つの駆動部21,21と、2つのシャフト位置検出部23,23と、第1マーク位置検出部24aと、第2マーク位置検出部24bと、第1エッジ検出部25aと、第2エッジ検出部25bとにそれぞれ接続されている。制御部26は、各駆動部21を制御する。
【0048】
[駆動機構]
そこで、
図4を参照して、制御部26を備える駆動機構20について説明する。
図4は、ある実施の形態に従う駆動機構20の構成の概要を示すブロック図である。
【0049】
図4に示されるように、駆動機構20は、駆動モーター14と、2つの駆動部21と、シャフト位置検出部23,23と、第1マーク位置検出部24aと、第2マーク位置検出部24bと、第1エッジ検出部25aと、第2エッジ検出部25bと、制御部26とを備える。制御部26は、入出力制御部27、記憶部28、および設定値抽出部29を備える。
【0050】
入出力制御部27は、駆動モーター14、2つの駆動部21、2つのシャフト位置検出部23,23、第1マーク位置検出部24a、第2マーク位置検出部24b、第1エッジ検出部25a、第2エッジ検出部25b、記憶部28、および、設定値抽出部29にそれぞれ接続されている。
【0051】
入出力制御部27は、第1マーク位置検出部24a、第2マーク位置検出部24b、第1エッジ検出部25a、第2エッジ検出部25bによってそれぞれ検出された値を用いて、搬送ベルト13の蛇行量を算出する。入出力制御部27は、算出された蛇行量と記憶部28に保存されたデータとから抽出された設定値と、シャフト位置検出部23,23で検出された値とに基づいて、駆動部21の駆動を制御する。入出力制御部27は、外部端末(図示しない)等から入力された印刷ジョブに基づいて、駆動モーター14を制御する。入出力制御部27による搬送ベルト13の蛇行量の算出方法、および、蛇行補正に関する制御方法は、後述する。
【0052】
ある実施の形態に従うと、入出力制御部27は、周知の構成を有するコンピューターによって実現される。当該コンピューターは、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備える。さらに、当該コンピューターは、不揮発性ストレージおよびネットワークインタフェースを備え得る。
【0053】
入出力制御部27は、ベルト搬送装置30の制御を実現する。ある局面において、当該制御は、ベルト搬送装置30の各構成の動作を制御するための制御プログラムとして、ROMに保存されたプログラム、または、外部装置からRAMまたは不揮発性ストレージにロードされた保存されたプログラムをCPUが実行することによって実現される。このプログラムは、以下に説明する各処理ステップをCPUに実行させる。他の局面において、当該制御は、各処理ステップを実現するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0054】
記憶部28は、搬送ベルト13の蛇行量に関連付けられた駆動部21,21の設定値を保存する。ある局面において、記憶部28は、ROMまたはRAMとして実現される。
【0055】
設定値抽出部29は、入出力制御部27の制御に基づいて、入出力制御部27によって算出された蛇行量と、記憶部28に保存されている蛇行補正の設定値に関するデータとを照合し、目的とする駆動部21,21の設定値を抽出する。抽出された設定値は、設定値抽出部29から入出力制御部27に入力される。入出力制御部27は、当該設定値に基づいて、駆動部21,21を駆動制御する。
【0056】
[ベルト搬送装置の制御構造]
図5を参照して、ベルト搬送装置30の制御構造について説明する。
図5は、ある実施の形態に従って蛇行を補正するために制御部26が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。当該処理は、例えば、ベルト搬送装置30の電源、またはベルト搬送装置30を備えたインクジェット記録装置1の電源がオンとなったことをトリガーとして開始される。
【0057】
ステップS510にて、制御部26は、第1マーク位置検出部24aが予め設定されたマークMのマーク先端を検出したか否かを判定する。制御部26は、マーク先端を検出したと判定すると(ステップS510にてYES))、制御をステップS520に切り換える。そうでない場合には(ステップS510にてNO)、制御部26は、処理を終了する。
【0058】
ステップS520にて、制御部26は、第1マーク位置検出部24aがマーク先端を検出したタイミングにおいて、第1エッジ検出部25aによって検出されたエッジ位置を取得する。
【0059】
ステップS530にて、制御部26は、第2マーク位置検出部24bがマークMのマーク先端を検出したか否を判定する。制御部26は、第2マーク位置検出部24bがマークM先端を検出したと判定すると(ステップS530にてYES)、制御をステップS540に切り換える。そうでない場合には(ステップS530にてNO)、制御部26は、処理を終了する。
【0060】
ステップS540にて、制御部26は、第2マーク位置検出部24bがマークMのマーク先端を検出したタイミングにおいて、第2エッジ検出部25bによって検出されたエッジ位置を取得する。
【0061】
ステップS550にて、制御部26は、第1エッジ検出部25aによって検出されたマークMのエッジ位置と、第2エッジ検出部25bによって検出されたマークMのエッジ位置との差分を計算し、搬送ベルト13の蛇行量を算出する。本実施の形態のように、複数のマークMが搬送ベルト13に設けられている場合、制御部26は、各マークMそれぞれについて、第1エッジ検出部25aによって検出された値と、第2エッジ検出部25bによって検出された値との差分を算出する。すなわち、第1エッジ検出部25aと第2エッジ検出部25bとは、同一マークMの同じ箇所におけるエッジ位置を測定し、制御部26は、その差分から蛇行量を算出する。
【0062】
ここで、
図6および
図7を参照して、蛇行量について説明する。
図6は、マークM毎に第1エッジ検出部25aによって検出されたエッジ位置(上流側の測定値)と、第2エッジ検出部25bによって検出されたエッジ位置(下流側の測定値)と、それらの差分から算出された蛇行量を表わす図である。
図7は、搬送ベルト13の搬送距離に対する蛇行量を示した図である。
【0063】
図6は、搬送ベルト13の搬送方向における幅が10mmで、搬送方向に隣り合うマークMの間隔が100mmの場合において算出された場合の蛇行量を示している。また、2個目以降のマークMの搬送距離は、1個目のマークMが第1マーク位置検出部24aによって検出された後、第2マーク位置検出部24bによって検出される位置まで搬送される搬送距離を基準(ゼロ)として示されている。
【0064】
図6に示すように、1個目のマークMに基づいて第1エッジ検出部25aによって検出されるエッジ位置(上流側の測定値)と、第2エッジ検出部25bによって検出されるエッジ位置(下流側の測定値)との差分は、1mmであり、蛇行量は1mmである。2個目のマークMに基づいて第1エッジ検出部25aによって検出されるエッジ位置(上流側の測定値)と、第2エッジ検出部25bによって検出されるエッジ位置(下流側の測定値)との差分は1mmであり、蛇行量は2mmである。
【0065】
3個目のマークMに基づいて第1エッジ検出部25aによって検出されるエッジ位置(上流側の測定値)と、第2エッジ検出部25bによって検出されるエッジ位置(下流側の測定値)との差分は0であり、蛇行量は、2個目のマークMの先端位置に基づいて検出された蛇行量と同様に2mmである。また、4個目のマークMに基づいて第1エッジ検出部25aによって検出されるエッジ位置(上流側測定値)と、第2エッジ検出部25bによって検出されるエッジ位置(下流側測定値)との差分は-1mmであり、蛇行量は1mmとなる。制御部26は、このようにして、マークM毎に搬送ベルト13の蛇行量を抽出する。
【0066】
図5を再び参照して、ステップS560にて、設定値抽出部29は、入出力制御部27から取得した搬送ベルト13の蛇行量と、記憶部28に保存されているデータとを照合し、蛇行量に応じた駆動部21,21の補正値を抽出する。記憶部28は、蛇行量に応じて算出されたそれぞれの駆動部21,21の補正値に関するデータを予め保持している。駆動部21,21の補正値は、各駆動部21のシャフト21a,21aの移動量に関する補正値である。
【0067】
ステップS570にて、入出力制御部27は、設定値抽出部29で抽出された駆動部21、21の設定値に基づいて、駆動部21,21の駆動を制御する。これにより、駆動部21,21では、搬送ベルト13の蛇行量に基づいて、張力制御ローラー12の端縁に設けられた2つのアクチュエーター21b,21bのいずれかの駆動が制御されることにより、シャフト21a,21aが押し上げられ、又は、引き戻される。これにより、張力制御ローラー12の軸方向における傾きが調整され、搬送ベルト13の蛇行補正が行われる。このようにして、搬送ベルト13の蛇行が補正される。
【0068】
なお、ステップS520では、入出力制御部27は、第1マーク位置検出部24aがマーク先端を検出したタイミングで第1エッジ検出部25aによって検出されるエッジ位置を、一箇所分だけ取得する例が示されている。他の局面において、入出力制御部27は、マークMにおける複数箇所のエッジ位置を取得し、その平均値をエッジ位置としてもよい。この場合、入出力制御部27は、第1エッジ検出部25aによって検出されるマークMのエッジ情報から、マークMの、搬送ベルト13の搬送方向に延在するエッジ部分のエッジ位置を複数個所に渡って取得する。入出力制御部27は、複数個所に渡って取得したエッジ位置の平均値を算出し、この平均値(平均エッジ位置)を用いて、蛇行量を算出する。
【0069】
例えば、マークMの形状が楕円形状や円形状である場合には、搬送ベルト13の幅方向におけるエッジ位置が搬送ベルト13の搬送方向で異なる。この場合、エッジ位置が一箇所のみで取得されると、取得タイミングによってエッジ位置が大きく異なり、測定精度が低くなる可能性がある。これに対し、他の局面に従う入出力制御部27は、第1エッジ検出部25aによって検出されるマークMの複数のエッジ位置を搬送方向に沿う方向において取得し、その平均値をマークMの平均エッジ位置として蛇行量を算出する。このようにすると、測定精度を向上させることができる。入出力制御部27は、ステップS540においても同様の処理を実行し得る。
【0070】
また、ステップS560において、設定値抽出部29は、マークM毎に算出された蛇行量を用いて駆動部21,21の補正値を抽出したが、他の局面において、設定値抽出部29は、複数のマークMによる蛇行量を累積して、その累積値に基づいて補正値を抽出してもよい。この場合、設定値抽出部29は、複数のマークMのそれぞれの位置における蛇行量の累積値に基づく補正値を用いて、駆動部21、21の駆動を制御する。
【0071】
駆動部21,21は、張力制御ローラー12の軸方向の傾きを調整することにより蛇行を補正する。この場合、駆動部21,21が張力制御ローラー12の軸方向の傾きを調整した後、実際に搬送ベルト13の蛇行が収まるまでに、タイムラグが発生する。したがって、入出力制御部27は、蛇行量を検出した後の、蛇行補正のタイミングや蛇行補正を行う間隔を適宜変更することで、より適切な蛇行補正を行うことができる。
【0072】
[媒体の傾き検知]
次に、
図8および
図9を参照して、媒体の傾きの検知について説明する。
図8は、傾き検知センサー150,151に対して記録媒体Pが搬送される方向を表わす図である。なお、記録媒体が傾くとは、搬送ベルト13で搬送される記録媒体Pが所定の姿勢からずれて配置されている状態をいう。換言すると、記録媒体が傾いているとは、記録媒体Pにおける印刷の方向と、搬送ベルト13で搬送される方向とが同一でない状態ともいえる。
【0073】
傾き検知センサー150と傾き検知センサー151とは、間隔Lを隔てて、記録媒体Pの搬送方向に対して垂直線上に配置されている。
【0074】
記録媒体Pが搬送方向に対して傾くことなく搬送される場合、記録媒体Pの先端810は、同じタイミングで傾き検知センサー150,151にそれぞれ検知される。その後、記録媒体Pの終端820も、同じタイミングで傾き検知センサー150,151にそれぞれ検知される。したがって、傾き検知センサー150が先端810を検知してから傾き検知センサー151が終端820を検知するまでの時間は、すなわち、記録媒体Pが搬送方向に移動する時間に等しくなる。したがって、記録媒体Pの搬送方向の移動量LAは、記録媒体Pの幅に相当する。
【0075】
しかし、記録媒体Pが搬送方向に対して傾いて搬送される場合、記録媒体Pの先端810が最初に検知されるタイミングから記録媒体Pの終端820が最初に検知されるタイミングまでの時間は、記録媒体Pが傾くことなく搬送される場合の当該時間と異なることになる。そこで、
図9を参照して、記録媒体Pが傾いて搬送される場合について説明する。
【0076】
図9は、搬送される記録媒体Pの考えられる姿勢を表わす図である。状態Aは、記録媒体Pが傾くことなく搬送されている状態である。状態Bは、記録媒体Pが搬送方向に対して反時計回りに傾いた状態で搬送されている状態である。状態Cは、記録媒体Pが搬送方向に対して時計回りに傾いた状態で搬送されている状態である。
【0077】
状態Aに示されるように、記録媒体P810が傾くことなく搬送される場合、傾き検知センサー150により検知された記録媒体Pにおける点910と、傾き検知センサー151により検知された記録媒体Pにおける点911とを結ぶ線と、搬送方向に垂直な線とがなす角をθとし、点910と点911との搬送方向の距離をLAとすると、tanθ=LA/Lとなる。傾き検知センサー150と傾き検知センサー151とは、間隔Lを隔てて配置されている。
【0078】
状態Bの場合、記録媒体Pの先端810が傾き検知センサー150によって検知されるタイミングから、その終端820が傾き検知センサー151によって検知されるタイミングまでの時間は、状態Aの場合よりも長くなる。したがって、傾き検知センサー150により検知された記録媒体Pにおける点920と、傾き検知センサー151により検知された記録媒体Pにおける点921との搬送方向の距離をLBとすると、LA<LBとなる。この場合、tanθ=LB/Lとなり、状態Aの場合のtanθの値よりも大きくなるので、記録媒体Pが反時計回りに傾いて搬送されていることが検知される。
【0079】
間隔Lは傾き検知センサー150,151の設計情報より明らかである。距離LBは、点920の通過が検知されてから点921の通過が検知されるまでの時間と、搬送ベルト13の速度とに基づいて算出される。そこで、制御部26は、tanθ=LB/Lの値から、角度θを算出する。制御部26は、状態A(=記録媒体Pが傾いていない場合)の角度θと、状態B(=記録媒体Pが傾いている場合)の角度θとの差分を、記録媒体Pの傾きとして算出する。
【0080】
状態Cの場合、記録媒体Pの先端810が傾き検知センサー150によって検知されるタイミングから、その終端820が傾き検知センサー151によって検知されるタイミングまでの時間は、状態Aの場合よりも短くなる。したがって、傾き検知センサー150により検知された記録媒体Pにおける点930と、傾き検知センサー151により検知された記録媒体Pにおける点931との搬送方向の距離をLCとすると、LC<LAとなる。この場合、tanθ=LC/Lとなり、状態Aの場合のtanθの値よりも小さくなるので、記録媒体Pが時計回りに傾いて搬送されていることが検知される。
【0081】
この場合も、状態Bの場合と同様に、制御部26は、記録媒体Pの傾きを算出する。
【0082】
図10は、記録媒体Pが傾いて搬送されている場合において搬送ベルト13が蛇行している時における記録媒体Pの印字の状態を表わす図である。記録媒体Pが矢印1000の方向に搬送されている場合において搬送ベルト13が蛇行していると、搬送ベルト13が蛇行しない場合の位置1020にある記録媒体Pではなく、搬送ベルト13が蛇行した後の位置1010にある記録媒体Pに画像が形成されることになる。本実施の形態に従うインクジェット記録装置1は、搬送ベルト13の蛇行と、記録媒体Pの傾きとを検知し、蛇行と傾きの影響を補正して画像を形成する。搬送ベルト13の蛇行量1030は、記録媒体Pの一点の搬送方向に直交する方向のずれとして算出される。
【0083】
そこで、
図11を参照して、搬送ベルト13が蛇行している場合の補正について説明する。
図11は、記録媒体Pが傾いた状態で搬送ベルト13によって搬送されている状態を表わす図である。状態Aは、搬送ベルト13が蛇行していない場合の状態を表わす。状態Bは、搬送ベルト13が蛇行している場合の状態を表わす。
【0084】
状態Aに示されるように、記録媒体Pが傾いた状態で搬送ベルト13は、矢印の方向に移動する。傾き検知センサー150が記録媒体Pの先端の通過を検知し、傾き検知センサー151は、記録媒体Pの終端の通過を点1110において検知する。
【0085】
状態Bに示されるように、搬送ベルト13が蛇行している場合、たとえば、搬送ベルト13が矢印の方向よりも右にずれて移動している場合、点1110で検知されるべき記録媒体Pの終端は検知されず、たとえば、点1120が傾き検知センサー151によって検知されることになる。したがって、搬送ベルト13が蛇行することにより、誤差1130が生じる。そこで、制御部26は、点1110と点1120との距離を搬送ベルト13の蛇行による誤差として検出し、当該誤差を考慮して画像を形成する。
【0086】
図12を参照して、カラー印刷が行なわれる場合における搬送ベルト13の蛇行について説明する。
図12は、複数色による所謂カラー印刷が行なわれる記録媒体Pが搬送ベルト13に配置された状態を表わす図である。
【0087】
カラー印刷が行なわれる場合、記録媒体Pは色の数に応じた回数だけ搬送ベルト13によって搬送される。このとき、搬送ベルト13が蛇行していると、記録媒体Pの位置は、各色の印刷毎にずれることになる。たとえば、一番目の色の印刷が行なわれる場合の位置1210の一点を通過する仮想線1200に対して、二番目の色の印刷が行なわれる場合の位置1220と、三番目の色の印刷が行なわれる場合の位置1230と、四番目の印刷が行なわれる場合の位置1240とは、それずれ、ずれている。そのため、たとえば、黒色の文字1211が印刷された後に、シアン色の文字1221が印刷されると、シアン色の文字1221は黒色の文字1211に重ならないことになる。マゼンタ色の文字1231がシアン色の文字1221の後に印刷される場合、および、黄色の文字1241がマゼンタ色の文字1231の後に印刷される場合も、搬送ベルト13の蛇行量に応じて、各色の印字が重ならない場合があり得る。
【0088】
そこで、本実施の形態に従うインクジェット記録装置1は、各色の印刷毎に、搬送ベルト13の蛇行と、記録媒体Pの傾きとを補正する。
【0089】
そこで、
図13を参照して、本実施の形態に従うインクジェット記録装置1の制御構造について説明する。
図13は、インクジェット記録装置1の制御部26が実行する処理の一部を表わすフローチャートである。
【0090】
ステップS1310にて、制御部26は、搬送ベルト13の蛇行を検知し、蛇行量を算出する。蛇行量は、たとえば、ステップS510~S550の処理により算出される。
【0091】
ステップS1320にて、制御部26は、印字経路にある記録媒体Pの傾きを検知し、その傾き量を算出する。たとえば、制御部26は、記録媒体Pが傾いていない場合のtanθと、記録媒体Pが傾いている場合のtanθとからそれぞれの角度θを算出し、それぞれの角度θの差分を記録媒体Pの傾き角として算出する。
【0092】
ステップS1330にて、制御部26は、ステップS1310にて算出した蛇行量と、ステップS1320にて算出した傾き量とを用いて、周知の技術を用いて画像形成時の補正量を算出する。
【0093】
ステップS1340にて、制御部26は、算出した補正量を用いて記録媒体Pに形成される各色の画像補正を実行し、印字データを生成する。
【0094】
ステップS1350にて、制御部26は、生成した印字データを用いて印字を実行する。
【0095】
上記で開示された技術的特徴の一部は、以下のように要約され得る。
【0096】
(1)ある実施の形態に従うインクジェット記録装置1は、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向に配置されて搬送方向に対する記録媒体Pの傾きを検知する傾き検知センサー150,151と、回転駆動により記録媒体Pを搬送する搬送ベルト13の蛇行を検知する第1エッジ検出部25aおよび第2エッジ検出部25bと、記録媒体Pの傾きと蛇行の検知結果とに基づいて、記録媒体Pに形成される画像の傾きを補正する制御部26とを備える。
【0097】
(2)ある局面において、制御部26は、記録媒体Pの傾きと、蛇行の検知結果とから傾き補正量を算出し、傾き補正量を用いて、画像の傾きを補正する。
【0098】
(3)ある局面において、インクジェット記録装置は、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部40をさらに備える。制御部26は、補正後の画像の傾きを用いて画像形成部40に画像を形成させるための印字データを補正する。
【0099】
(4)ある局面において、傾き検知センサー150,151は、記録媒体Pの搬送方向に交差する方向に配置されている。傾き検知センサー150,151は、記録媒体Pの先端および終端を検知することにより、記録媒体Pの傾きを検知する。
【0100】
(5)ある局面において、傾き検知センサー150,151の間隔は、搬送される媒体の幅よりも小さい。
【0101】
(6)ある局面において、傾き検知センサー150,151の間隔は、変更可能である。
【0102】
(7)ある局面において、画像形成部40は、複数の印字部として、キャリッジ100Y,100M,100C,100Kを含む。傾き補正量を算出することは、各印字部毎に異なる傾き補正量を算出することを含む。画像の傾きを補正することは、各印字部毎に印字データを補正することを含む。
【0103】
(8)ある局面において、記録媒体Pの傾きを検知することは、傾き検知センサー150,151のうちの傾き検知センサー150が記録媒体Pの先端を検知してから、傾き検知センサー151が記録媒体Pの終端を検知するまでの時間に記録媒体Pが搬送方向に移動する距離(
図9におけるLB,LC)の、傾き検知センサー150と傾き検知センサー151との間隔(
図9におけるL)に対する比に対応する角度θと、記録媒体Pが傾いていない場合における角度θと、の差分を、記録媒体の傾きとして検知することを含む。
【0104】
(9)ある局面において、搬送媒体は、搬送方向に沿って形成された複数の空孔部を有する搬送ベルト13である。第1エッジ検出部25aおよび第2エッジ検出部25bは、記録媒体Pの搬送が開始される前に、搬送ベルト13による複数の回転の間に、各空孔部の検出結果に基づいて、搬送ベルト13の蛇行を検知する。制御部26は、複数の回転の間に取得された各透過信号に基づいて、搬送ベルト13の蛇行量を予測する。インクジェット記録装置1が予め設定された定常状態に落ち着くまで、搬送が開始される前の回転は行なわれる。
【0105】
<実施の形態の効果>
以上のようにして、ある実施の形態に従うインクジェット記録装置1は、記録媒体Pの傾きの検知量(角度)に搬送ベルト13の蛇行の検知量を加算した検知量から画像補正を行なうので、印刷結果の精度が向上し得る。
【0106】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
開示された技術的特徴は、たとえば、インクジェットプリンターその他の記録装置であって、記録媒体の搬送のためのベルトを使用する記録装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 インクジェット記録装置、10 従動ローラー、11 駆動ローラー、12 張力制御ローラー、13 搬送ベルト、13a 置面、14 駆動モーター、20 駆動機構、21 駆動部、21a シャフト、21b アクチュエーター、22 用紙先端位置検知センサー、23 シャフト位置検出部、24a 第1マーク位置検出部、24b 第2マーク位置検出部、25a 第1エッジ検出部、25b 第2エッジ検出部、26 制御部、27 入出力制御部、28 記憶部、29 設定値抽出部、30 ベルト搬送装置、40 画像形成部、100 インク供給装置、100C,100K,100M,100Y キャリッジ、150,151 傾き検知センサ、810 先端、820 終端、910,911,920,921,930,931,1110,1120 点、1000 矢印、1010,1020,1210,1220,1230,1240 位置、1030 蛇行量、1130 誤差、1200 仮想線。