(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117338
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】内燃機関のブローバイガス還流装置
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F01M13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023381
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 悟
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BD01
3G015BD10
3G015BD28
3G015BE11
3G015BF04
3G015BF08
3G015BF10
3G015EA11
(57)【要約】
【課題】内燃機関の燃焼室からクランクケースへ漏れ出たブローバイガスを内燃機関の吸気管へ還流させる内燃機関のブローバイガス還流装置であって、ブローバイガスの還流経路における連結部が外れた場合に報知することが可能であり且つ簡易な構成によって実現できるブローバイガス還流装置を提供する。
【解決手段】内燃機関から延設し且つブローバイガスが流れる上流管と、上流管に連結される下流管と、下流管に形成され、上流管及び下流管が相互に外れた際に空気が流入して吹鳴する笛孔と、上流管に形成され、上流管及び下流管が相互に連結された際に笛孔を閉じる閉塞部と、を有する内燃機関のブローバイガス還流装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室からクランクケースへ漏れ出たブローバイガスを前記内燃機関の吸気管へ還流させる内燃機関のブローバイガス還流装置であって、
前記内燃機関から延設し且つ前記ブローバイガスが流れる上流管と、
前記上流管に連結される下流管と、
前記下流管に形成され、前記上流管及び前記下流管が相互に外れた際に空気が流入して吹鳴する笛孔と、
前記上流管に形成され、前記上流管及び前記下流管が相互に連結された際に前記笛孔を閉じる閉塞部と、を有する内燃機関のブローバイガス還流装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関のブローバイガス還流装置であって、
前記下流管と前記吸気管を連結する第2下流管と、
前記第2下流管に形成され、前記下流管及び前記第2下流管が相互に外れた際に空気が流入して吹鳴する第2笛孔と、
前記下流管に形成され、前記下流管及び前記第2下流管が相互に連結された際に前記第2笛孔を閉じる第2閉塞部と、を有する内燃機関のブローバイガス還流装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関のブローバイガス還流装置であって、
前記下流管は、前記第2閉塞部が形成されたブリーザーホースと、前記ブリーザーホース内に装着され且つ前記笛孔が形成された環状部材と、を有する内燃機関のブローバイガス還流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のブローバイガス還流装置に関する。例えば、ブローバイガスの還流経路に含まれる連結部が外れた場合に報知することができる内燃機関のブローバイガス還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブローバイガスは、内燃機関の燃焼室からシリンダとピストンとの隙間を経てクランクケースに漏れ出た、燃料を含むガスである。内燃機関が車両に搭載されていれば、ブローバイガスを内燃機関の吸気管へ還流させる還流経路(還流装置)が設けられている。ブローバイガスの還流経路には、多くの場合、ブリーザーホースが含まれている。ブリーザーホースの一端が内燃機関の本体又は吸気管と接続される連結部においてブリーザーホースが外れると、ブローバイガスが大気中に放出されてしまう可能性が高くなる。
【0003】
そのため、ブローバイガスの還流経路における連結部が外れた場合に報知することができる還流装置が提案されている。例えば、特許文献1には、一対の連結部のそれぞれに配設されて電気回路を形成する端子金具と、連結部が外れて電気回路が非導通状態となったことを検知できる検知手段と、を備える検知システムが開示されている。検知手段は、電気回路が非導通状態となると、外れ検知信号を出力して連結部が外れたことを報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した検知システムによれば、電気回路を形成する一対の端子金具、及び検知手段等を設ける必要があり、内燃機関が搭載された車両に配置する場合の工数が比較的大きくなる虞がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ブローバイガスの還流経路における連結部が外れた場合に報知することが可能であり且つ簡易な構成によって実現できる内燃機関のブローバイガス還流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、内燃機関の燃焼室からクランクケースへ漏れ出たブローバイガスを前記内燃機関の吸気管へ還流させる内燃機関のブローバイガス還流装置であって、前記内燃機関から延設し且つ前記ブローバイガスが流れる上流管と、前記上流管に連結される下流管と、前記下流管に形成され、前記上流管及び前記下流管が相互に外れた際に空気が流入して吹鳴する笛孔と、前記上流管に形成され、前記上流管及び前記下流管が相互に連結された際に前記笛孔を閉じる閉塞部と、を有する。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関のブローバイガス還流装置であって、前記下流管と前記吸気管を連結する第2下流管と、前記第2下流管に形成され、前記下流管及び前記第2下流管が相互に外れた際に空気が流入して吹鳴する第2笛孔と、前記下流管に形成され、前記下流管及び前記第2下流管が相互に連結された際に前記第2笛孔を閉じる第2閉塞部と、を有する。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る内燃機関のブローバイガス還流装置であって、前記下流管は、前記第2閉塞部が形成されたブリーザーホースと、前記ブリーザーホース内に装着され且つ前記笛孔が形成された環状部材と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明において、互いに連結されてブローバイガスの還流経路(即ち、内燃機関の本体から吸気管に至る流路)を形成する上流管及び下流管が含まれている。内燃機関の作動中、吸気管には燃焼室に向かう吸気(新気)が流れているので、上流管と下流管との連結が外れると下流管内に負圧が発生する。即ち、下流管内の圧力が大気圧よりも低くなり、そのために空気(大気)が下流管に流入し、更に吸気管に流入する。加えて、この場合、下流管にある笛孔が上流管にある閉塞部によって閉じられていない。そのため、笛孔が吹鳴して上流管と下流管との連結が外れたことが報知される。
【0011】
従って、第1の発明によれば、上流管と下流管との連結が外れた場合には、笛孔の吹鳴によって報知される。加えて、第1の発明に係る内燃機関のブローバイガス還流装置は、センサ、制御プログラム及び電子制御装置等を必要とせず、簡易な構成によって実現することができる。簡易な構成によって実現されるため、上流管と下流管とが連結されているにも拘わらず誤って上流管と下流管との連結が外れたとの報知がなされる可能性が低くなる。
【0012】
第2の発明では、上流管と下流管との連結部(第1連結部)に加え、下流管と第2下流管との連結部(第2連結部)が含まれている。第1連結部が互いに外れた場合には、上述したように笛孔が吹鳴する。同様に、第2連結部が外れた場合には、第2笛孔が吹鳴する。従って、第2の発明によれば、ブローバイガスの還流経路が2つの連結部を含んでいる場合であっても、何れか一方(又は、両方)の連結部が外れたときには吹鳴によって報知される。
【0013】
第3の発明では、下流管がブリーザーホースによって構成される。この場合、第2下流管にある第2笛部は、例えば、ブリーザーホースの内周面(即ち、第2閉塞部)によって閉じられる。加えて、笛孔が環状部材にあるので、ブリーザーホースに対して何らかの加工を行う必要が無い。従って、第3の発明によれば、ブリーザーホースの上流側及び下流側の何れが外れた場合であっても吹鳴によって報知するブローバイガス還流装置を、簡易な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るブローバイガス還流装置が適用される内燃機関の概略図である。
【
図2】ブローバイガス還流装置に含まれるブリーザーホース、吸気管及び笛孔を示した断面図である。
【
図3】ブリーザーホース、PCVバルブ、環状部材及び笛孔を示した断面図である。
【
図4】
図3に示されたブリーザーホース及びPCVバルブが互いに外れた場合に発生する笛孔を流れる空気流を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を
図1~4を参照しながら説明する。説明中の同じ符号(参照番号)は、重複する説明をしないが同じ機能を有する同じ要素を意味する。本実施形態に係る内燃機関のブローバイガス還流装置は、
図1に示される内燃機関1(エンジンシステム)に適用される。
【0016】
内燃機関1は、車両(不図示)に駆動力源として搭載された多気筒ディーゼルエンジンであり、
図1には1つの気筒のみが示されている。内燃機関1は、機関本体であるシリンダブロック部2及びシリンダヘッド部3、並びに、過給機4、吸気システム5、排気システム6、EGRシステム7及びPCV(Positive Crankcase Ventilation)システム8を含んでいる。
図1において、後述されるガス流入口51a及びガス流出口81aの図示が省略されている。
【0017】
シリンダブロック部2は、シリンダブロック21、ピストン22、コンロッド23及びクランクシャフト24を含んでいる。ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランクシャフト24に伝達され、クランクシャフト24が回転する。シリンダブロック21のピストン22よりも下部にある内面は、クランクケース21aを形成している。
【0018】
シリンダヘッド部3は、シリンダヘッド31、吸気ポート32、排気ポート33、吸気弁34、排気弁35及び燃料噴射弁36を含んでいる。シリンダブロック21のピストン22よりも上部にある内面、ピストン22の上面、及びシリンダヘッド31の下面は、燃焼室37を形成している。吸気ポート32は、内燃機関1の吸気経路と燃焼室37とを連通している。排気ポート33は、燃焼室37と内燃機関1の排気経路とを連通している。
【0019】
吸気弁34は、インテークカムシャフト(不図示)の回転によって駆動され、吸気ポート32を開閉する。排気弁35は、エキゾーストカムシャフト(不図示)の回転によって駆動され、排気ポート33を開閉する。燃料噴射弁36は、ECU(電子制御ユニット、不図示)からの指示に応じて燃料ポンプ(不図示)によって加圧された燃料をピストン22の上面に向けて燃焼室37内に噴射して空気(吸気)と燃料との混合気を生成する。
【0020】
シリンダヘッド31上部の内壁面は、シリンダヘッドケース31aを形成している。シリンダブロック21及びシリンダヘッド31には、クランクケース21aと、シリンダヘッドケース31aと、を連通するブローバイガス経路38が形成されている。従って、内燃機関1の作動中に燃焼室37からクランクケース21aへ漏れ出た燃料及び潤滑油等を含むブローバイガスは、ブローバイガス経路38を経てシリンダヘッドケース31aに流入する。
【0021】
過給機4は、タービン41及びコンプレッサ42を含んでいる。タービン41は、内燃機関1の各気筒から排出される排気(燃焼ガス)の圧力によって作動(回転)する。コンプレッサ42は、タービン41と連動して作動(回転)し、内燃機関1の各気筒に吸入される空気(吸気)を加圧する。
【0022】
吸気システム5は、吸気(外気)の通路である吸気管51、インテークマニホールド52及びエアクリーナ53を含んでいる。吸気管51及びインテークマニホールド52は、内燃機関1の吸気経路を構成している。本実施形態における吸気管51及びガス流入口51aは、周知の樹脂材料によって構成されている。インテークマニホールド52は、吸気管51から流入した吸気を各気筒の吸気ポート32に導入する。エアクリーナ53は、吸気管51の端部に配設され、吸気に含まれる不純物を除去(濾過)する。
【0023】
排気システム6は、エキゾーストマニホールド61、排気管62及び排気浄化装置63を含んでいる。エキゾーストマニホールド61及び排気管62は、内燃機関1の排気経路を構成している。エキゾーストマニホールド61は、各気筒の排気ポート33から流入した排気(燃焼ガス)を排気管62に導入する。排気管62は、排気を外部(車外)へ排出する。排気浄化装置63は、排気を浄化する。排気浄化装置63は、周知の酸化触媒、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(DPF)、及び尿素SCR(選択的還元装置)を含んでいる。
【0024】
EGRシステム7は、EGR管71及びEGR弁72を含んでいる。EGR管71は、排気管62と吸気管51とを連通する。EGR弁72は、EGR管71に介装されている。EGR弁72の開弁状態は、ECUからの指示に応じて所定の全開位置(全開状態)から全閉位置(全閉状態)までの間で変化し、その結果、排気管62から吸気管51に還流するEGRガスの量が調整される。
【0025】
PCVシステム8は、PCVバルブ81及びブリーザーホース82(PCVホース)を含んでいる。PCVバルブ81は、シリンダヘッド31に装着される、周知の逆止弁である。PCVバルブ81の一端であるガス流入口は、シリンダヘッド31に形成された取付け孔に嵌入されて、シリンダヘッドケース31aと連通する。
【0026】
PCVバルブ81の他端であるガス流出口81aには、ブリーザーホース82の一端が接続(連結)される(
図3を参照)。ブリーザーホース82の他端は、吸気管51におけるコンプレッサ42よりも上流の位置に形成されたガス流入口51aに接続(連結)される(
図2を参照)。ブリーザーホース82は、周知の耐油ゴムによって構成されている。ガス流出口81a及びガス流入口51aのそれぞれは、円筒形状を有している。ガス流出口81aは、便宜上、「上流管」とも称呼される。ブリーザーホース82は、便宜上、「下流管」とも称呼される。ガス流入口51aは、便宜上、「第2下流管」とも称呼される。
【0027】
PCVバルブ81及びブリーザーホース82によって、シリンダヘッド31から吸気管51に至るブローバイガスの還流経路が形成される。即ち、シリンダヘッドケース31aにあるブローバイガスが、PCVバルブ81、ブリーザーホース82及びガス流入口51aを経て吸気管51に流入する。
【0028】
換言すれば、燃焼室37から漏れ出たブローバイガスは、還流経路及び吸気管51を経て燃焼室37に再び流入する。一方、吸気管51からブリーザーホース82を経た吸気(新気)のシリンダヘッドケース31aへの流入は、PCVバルブ81によって妨げられる。
【0029】
ブリーザーホース82が接続されるガス流入口51a及びガス流出口81aのそれぞれの外径は、ブリーザーホース82の内径よりも僅かに大きくなっている。そのため、ブリーザーホース82がガス流入口51a及びガス流出口81aに接続されると(即ち、ブリーザーホース82の一端及び他端がガス流入口51a及びガス流出口81aに被せられると)、ブリーザーホース82の一端及び他端が弾性変形により拡径するので抜けにくくなっている。
【0030】
仮に、ブリーザーホース82がガス流出口81a及び/又はガス流入口51aから外れると、ブローバイガスが大気中に放出される虞がある。そのため、ブリーザーホース82が外れた場合に内燃機関1を搭載した車両の運転者に報知するために吹鳴する笛孔91、92が設けられている。
【0031】
笛孔91は、
図2に示されるように、ガス流入口51aの内周面から外周面に至る貫通孔である。笛孔91の内周面側の開口部(流入口)から空気が流入して外周面側の開口部(流出口)から流出すると、カルマン渦が発生して可聴域の空気振動が発生する。即ち、笛孔91の流入口から空気が流入すると吹鳴する。
【0032】
ブリーザーホース82がガス流入口51aに接続されているとき、笛孔91の流出口は、ブリーザーホース82の内周面によって閉じられている。即ち、笛孔91がブリーザーホース82によって塞がれている。換言すれば、作業者は、ブリーザーホース82をガス流入口51aに接続するとき、笛孔91の流出口がブリーザーホース82によって覆われるようにガス流入口51aにブリーザーホース82を被せる。笛孔91は、便宜上、「第2笛孔」とも称呼される。笛孔91の流出口を塞ぐブリーザーホース82の内周面は、便宜上、「第2閉塞部」とも称呼される。
【0033】
仮に、ブリーザーホース82の下流側の一端がガス流入口51aから外れると(抜けると)、吸気管51内を流れる吸気流(
図2の矢印を参照)によってガス流入口51a内の圧力が負圧となる。そのため、ガス流入口51aの周囲の空気(大気)がガス流入口51aを経て吸気管51に流入する。このとき、笛孔91の流出口は、ブリーザーホース82の内周面によって閉じられていない。従って、この場合、笛孔91の流入口から空気が流入し且つ流出口から流出して笛孔91が吹鳴する。その結果、内燃機関1が搭載された車両の運転者は、ブリーザーホース82が外れたことを認識できる。
【0034】
笛孔92について説明する。笛孔92は、
図3に示されるように、円環形状を有する環状部材93に形成された貫通孔である。環状部材93は、ブリーザーホース82内に挿入され且つ装着(設置)されている。換言すれば、環状部材93の外周面がブリーザーホース82の内周面に当接し、以て、ブリーザーホース82が環状部材93を保持している。環状部材93の外径は、ガス流出口81aの外径と略等しい。
【0035】
図4の矢印から理解されるように、笛孔92は、1つの流入口と、2つの流出口と、を有している。笛孔92の流入口から流入した空気は、分岐して2つの流出口のそれぞれから流出する。その際、カルマン渦が発生して可聴域の空気振動が発生する。即ち、笛孔92の流入口から空気が流入すると吹鳴する。
【0036】
笛孔92の流入口は、環状部材93におけるガス流出口81a側(上流側)の端面93a(
図4を参照)に位置している。笛孔92の流出口は、環状部材93におけるガス流入口51a側(下流側)の端面93b、及び環状部材93の内周面に位置している。
【0037】
図3に示されるように、ブリーザーホース82がガス流出口81aに接続されているとき、笛孔92の流入口は、ガス流出口81aの端面81b(
図4を参照)によって閉じられている。即ち、笛孔92がガス流出口81aによって塞がれている。換言すれば、作業者は、ブリーザーホース82をガス流出口81aに接続するとき、笛孔92の流入口(即ち、環状部材93の端面93a)がガス流出口81aの端面81bと当接するようにガス流出口81aにブリーザーホース82を被せる。笛孔92の流入口を塞ぐ端面81bは、便宜上、「閉塞部」とも称呼される。
【0038】
仮に、ブリーザーホース82の上流側の一端がガス流出口81aから外れると(抜けると)、吸気管51内を流れる吸気流によってブリーザーホース82内の圧力が負圧となる。そのため、ブリーザーホース82の上流側の一端の周囲の空気がブリーザーホース82に流入する。このとき、
図4に示されるように、笛孔92の流入口は、ガス流出口81aによって閉じられていない。従って、この場合、笛孔92の流入口から空気が流入し且つ2つの流出口から流出して笛孔92が吹鳴する。その結果、内燃機関1が搭載された車両の運転者は、ブリーザーホース82が外れたことを認識できる。
【0039】
以上、説明したように、PCVシステム8を含む内燃機関1によれば、ブリーザーホース82がガス流出口81a及び/又はガス流入口51aから外れると、笛孔91、92の何れかが吹鳴する。即ち、内燃機関1が搭載された車両の運転者にブローバイガスが大気中に放出される虞があることが報知される。加えて、笛孔92は、環状部材93に形成されるため、PCVバルブ81及びブリーザーホース82には汎用品を用いることができる。即ち、笛孔92を含むPCVシステム8を容易に実現することができる。
【0040】
仮に、ブリーザーホース82が外れたことをセンサによって検出された圧力及び空気流量等の物理量に基づいてECUに判定させようとすれば、誤検出を回避するための処理及び実機に搭載する前の試験等も必要となり開発工数が増大する。一方、PCVシステム8によれば、電気回路及びECU等を含む電気的な構成要素を備えることなく、簡素な構成によりブリーザーホース82が外れたことを報知することが可能となる。加えて、PCVシステム8は簡素な構成により実現されているため、ブリーザーホース82が外れていないにも拘らず誤って報知がなされる可能性が低くなる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を上記の構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能である。従って本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、例えば下記のような変更が可能である。
【0042】
ブリーザーホース82の一端は、(シリンダヘッド31に装着された)PCVバルブ81に接続されていた。これに代わり、ブリーザーホース82の一端は、シリンダヘッド31(具体的には、シリンダヘッド31に形成されたガス流出口)に接続されても良い。即ち、PCVバルブ81は省略されても良い。或いは、ブリーザーホース82の一端はシリンダブロック21に形成されたガス流出口に接続され、ブリーザーホース82とクランクケース21aとが連通しても良い。
【0043】
PCVシステム8は、1つのブリーザーホース(即ち、ブリーザーホース82)を含んでいた。これに代わり、PCVシステム8は、連結部材を介して互いに連結される2つのブリーザーホース(上流側ホース及び下流側ホース)を含んでも良い。この場合、下流側ホース及び/又は連結部材には笛孔が形成され、連結部材及び/又は上流側ホースには連結時において当該笛孔を塞ぐ閉塞部が設けられていても良い。
【0044】
ブリーザーホース82に装着されていた環状部材93は、省略されても良い。この場合、ブリーザーホース82が(「下流管」ではなく)「上流管」となり、ガス流入口51aが(「第2下流管」ではなく)「下流管」となる。
【0045】
内燃機関1が搭載された車両の運転者は、笛孔91、92の吹鳴音によりブリーザーホース82が抜けたことを認識できる。これに代わり、或いは、これに加えて、当該車両は、笛孔91、92の吹鳴音を検出するセンサ(マイク)、及びセンサの検出信号に基づいて笛孔91、92が吹鳴していると判定したときに警告灯を点灯させて運転者に報知するECUを備えていても良い。この場合、笛孔91、92の吹鳴音は、可聴音でなくても良い。
【0046】
ガス流入口51aは、吸気管51と共に樹脂材料によって構成されていた。これに代わり、ガス流入口51aは周知の金属材料によって構成されても良い。加えて、ガス流入口51aにおける笛孔91が構成される箇所は、ガス流入口51aにおける他の箇所と比較して厚みの大きい肉厚部であっても良い。
【0047】
ガス流入口51a及びガス流出口81aのそれぞれには、1つの笛孔(即ち、笛孔91、92)が形成されていた。これに代わり、ガス流入口51a及び/又はガス流出口81aには、複数の笛孔が形成されていても良い。
【0048】
内燃機関1はディーゼルエンジンであったが、ガソリンエンジンであっても良い。加えて、吸気管51には、周知のスロットルバルブが介装されていても良い。
【符号の説明】
【0049】
1…内燃機関
2…シリンダブロック部
21…シリンダブロック
21a…クランクケース
22…ピストン
23…コンロッド
24…クランクシャフト
3…シリンダヘッド部
31…シリンダヘッド
31a…シリンダヘッドケース
32…吸気ポート
33…排気ポート
34…吸気弁
35…排気弁
36…燃料噴射弁
37…燃焼室
38…ブローバイガス経路
4…過給機
41…タービン
42…コンプレッサ
5…吸気システム
51…吸気管
51a…ガス流入口
52…インテークマニホールド
53…エアクリーナ
6…排気システム
61…エキゾーストマニホールド
62…排気管
63…排気浄化装置
7…EGRシステム
71…EGR管
72…EGR弁
8…PCVシステム
81…PCVバルブ
81a…ガス流出口
81b…端面
82…ブリーザーホース
91、92…笛孔
93…環状部材
93a、93b…端面