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特開2024-117344冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117344
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
F25B47/02 550F
F25B47/02 550P
F25B47/02 560
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023390
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】兼井 一樹
(72)【発明者】
【氏名】前間 慶成
(57)【要約】
【課題】室外熱交換器の除霜運転を行う際のユーザに対する快適性の低下を抑制するとともに、除霜能力の低下も回避する。
【解決手段】除霜運転を開始するに当たって、制御部7が蓄熱温度センサHSから取得した蓄熱材の温度が予め設定される第1の閾値以下であると判定した場合に、制御部7は、第3の減圧機構53を閉状態とし、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、室内熱交換器2が蒸発器として機能するように複数の切替弁6を制御して室外熱交換器3を除霜するリバース除霜運転を実行する制御を行い、蓄熱材の温度が第1の閾値よりも高いと判定した場合に、制御部7は、第1の減圧機構51を閉状態とし、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、蓄熱熱交換器4が蒸発器として機能するように複数の切替弁6を制御して室外熱交換器3を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒回路に、
前記冷媒を圧縮する圧縮機と、
室内の空気と前記冷媒とを熱交換する室内熱交換器と、
室外の空気と前記冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、
蓄熱材と前記冷媒とを熱交換する蓄熱熱交換器と、
開度を調整可能な複数の減圧機構と、
前記室内熱交換器、及び、前記蓄熱熱交換器を凝縮器、前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転と、前記室外熱交換器を凝縮器、前記室内熱交換器、又は、前記蓄熱熱交換器を蒸発器として機能させる除霜運転とで前記冷媒回路における前記冷媒の循環経路を切り替える複数の切替弁と、が接続され、
前記蓄熱材の温度を測定する蓄熱温度センサと、
前記複数の切替弁を制御する制御部と、を備え、
前記複数の減圧機構は、前記暖房運転の前記冷媒の循環経路において、前記室内熱交換器の下流側に設けられた第1の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の上流側に設けられた第2の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の下流側に設けられた第3の減圧機構と、を有し、
前記除霜運転を開始するに当たって、前記制御部が前記蓄熱温度センサから取得した前記蓄熱材の温度が予め設定される第1の閾値以下であると判定した場合に、前記制御部は、前記第3の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記室内熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜するリバース除霜運転を実行する制御を行い、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定した場合に、前記制御部は、前記第1の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御部が前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高く設定される第2の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交換器、及び、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御し、前記暖房運転、及び、前記除霜運転を同時に実行する暖房除霜運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
暖房運転停止中において、前記制御部が前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値以下であると判定した場合には、前記リバース除霜を実行する制御を行い、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
冷媒を循環させる冷媒回路に、
前記冷媒を圧縮する圧縮機と、
室内の空気と前記冷媒とを熱交換する室内熱交換器と、
室外の空気と前記冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、
蓄熱材と前記冷媒とを熱交換する蓄熱熱交換器と、
開度を調整可能な複数の減圧機構と、
前記室内熱交換器、及び、前記蓄熱熱交換器を凝縮器、前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転と、前記室外熱交換器を凝縮器、前記室内熱交換器、又は、前記蓄熱熱交換器を蒸発器として機能させる除霜運転とで前記冷媒回路における前記冷媒の循環経路を切り替える複数の切替弁と、が接続され、
前記蓄熱材の温度を測定する蓄熱温度センサと、
前記複数の切替弁を制御する制御部と、を備え、
前記複数の減圧機構は、前記暖房運転の前記冷媒の循環経路において、前記室内熱交換器の下流側に設けられた第1の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の上流側に設けられた第2の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の下流側に設けられた第3の減圧機構と、を有する冷凍サイクル装置において、
前記暖房運転から前記除霜運転へと移行した後に、
前記制御部が前記蓄熱温度センサから取得した前記蓄熱材の温度が予め設定される第1の閾値以下であるか否かを判定するステップと、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値以下であると判定された場合に、前記制御部は、前記第3の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記室内熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜するリバース除霜運転を実行する制御を行うステップと、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定された場合に、前記制御部は、前記第1の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うステップと、
を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項5】
前記制御部が前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高く設定される前記第2の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交換器、及び、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御し、前記暖房運転、及び、前記除霜運転を同時に実行する暖房除霜運転を行うステップを備えることを特徴とする請求項4に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項6】
さらに前記制御部が、冷凍サイクル装置が暖房運転中であるか否かを判定するステップを備え、前記制御部が前記冷凍サイクル装置が暖房運転停止中であると判定した場合において、
前記制御部は、前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値以下であると判定した場合には、前記リバース除霜運転を実行する制御を行い、
前記制御部は、前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うステップを備えることを特徴とする請求項4に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、空気調和機において暖房運転が行われる際、室外熱交換器には低温の冷媒が流れる。このため、例えば、外気温が氷点下となるような状態の場合、冷媒の温度が外気の露点温度を下回ると、室外熱交換器に霜が付着して外気との間での熱交換がしにくくなる。そこで、暖房運転が行われている場合には、定期的に室外熱交換器から霜を取り除く除霜運転が行われる。
【0003】
このような除霜運転は空気調和機の運転を行う上で必要な運転であり、典型的には、除霜運転は暖房運転を中断して行われる。具体的には、除霜運転を開始するに当たっては、室外熱交換器に圧縮機から吐出された冷媒が直接供給されるように冷媒回路を切り替えて室外熱交換器を凝縮器として機能させることで霜を融かし除霜を行う。そして当該除霜運転の場合、除霜のために室外熱交換器に供給された高温の冷媒は、霜を融かすことにより低温となり、低温の冷媒が室内熱交換器へと流入する。
【0004】
このような除霜運転が行われる場合、上述したように除霜運転が行われる間、暖房運転が停止してしまうために室内の温度が徐々に低下するため、使用者の快適性が低下する。また、室外熱交換器の除霜によって低温となった冷媒の通過により室内熱交換器の配管等の各部は冷却されることになる。そのため、除霜運転後改めて暖房運転を開始しても、室内熱交換器が暖まるまでは室内に低温の空気が送風されることになり、快適性を損ないかねない。
【0005】
そこで以下の特許文献1においては、除霜運転中においても暖房運転を継続させることによって、暖房運転が一時的に停止することによる室内温度の低下を防止し、快適性の維持を図ることができる発明が開示されている。
【0006】
より具体的には、特許文献1に開示されている発明においては、冷凍回路内に室内熱交換器とは別に蓄熱装置を配置し、除霜運転の際には蓄熱装置に蓄えられた全熱量を除霜のみに用いることで除霜時間を短くし、室内温度の低下を短時間に抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06-074618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に示されている空気調和機の場合、確かに蓄熱装置を利用することで除霜運転において、室内熱交換器に低温の冷媒が流入することは回避できるものの、除霜に用いられる熱源が蓄熱装置に蓄えられた熱に限定されるため、従来のように圧縮機から吐出された冷媒を用いる方式に比べて除霜運転の能力は低下するものと考えられる。
【0009】
ここで室外熱交換器の除霜を行う際の冷媒の熱源の1つは、室内の空気である。すなわち、除霜運転において、室外熱交換器の除霜によって低温となった冷媒が室内熱交換器に流入することで、除霜運転の前まで暖房運転が行われることで暖められた室内の空気や室内熱交換器の伝熱管等と熱交換を行って冷媒が吸熱し、再度室外熱交換器の除霜に利用される。
【0010】
しかし特許文献1に示されているような除霜運転の方法の場合、室内熱交換器の熱を除霜運転に利用することがないので、特に蓄熱装置に十分に熱が蓄えられていない場合には、除霜能力が著しく低下することになり、除霜運転にこれまで以上に時間が掛かる等、快適性が低下する。
【0011】
本発明はこのような室外熱交換器の除霜運転を行う際のユーザに対する快適性の低下を抑制するとともに、除霜能力の低下も回避することができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る冷凍サイクル装置は、冷媒を循環させる冷媒回路に、冷媒を圧縮する圧縮機と、室内の空気と冷媒とを熱交換する室内熱交換器と、室外の空気と冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、蓄熱材と冷媒とを熱交換する蓄熱熱交換器と、開度を調整可能な複数の減圧機構と、室内熱交換器、及び、蓄熱熱交換器を凝縮器、室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転と、室外熱交換器を凝縮器、室内熱交換器、又は、蓄熱熱交換器を蒸発器として機能させる除霜運転とで冷媒回路における冷媒の循環経路を切り替える複数の切替弁と、が接続され、蓄熱材の温度を測定する蓄熱温度センサと、複数の切替弁を制御する制御部と、を備え、複数の減圧機構は、暖房運転の冷媒の循環経路において、室内熱交換器の下流側に設けられた第1の減圧機構と、蓄熱熱交換器の上流側に設けられた第2の減圧機構と、蓄熱熱交換器の下流側に設けられた第3の減圧機構と、を有し、除霜運転を開始するに当たって、制御部が蓄熱温度センサから取得した蓄熱材の温度が予め設定される第1の閾値以下であると判定した場合に、制御部は、第3の減圧機構を閉状態とし、室外熱交換器が凝縮器として機能し、室内熱交換器が蒸発器として機能するように複数の切替弁を制御して室外熱交換器を除霜するリバース除霜運転を実行する制御を行い、蓄熱材の温度が第1の閾値よりも高いと判定した場合に、制御部は、第1の減圧機構を閉状態とし、室外熱交換器が凝縮器として機能し、蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように複数の切替弁を制御して室外熱交換器を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行う。
【0013】
また、本発明の一態様に係る冷凍サイクル装置の制御方法は、冷媒を循環させる冷媒回路に、冷媒を圧縮する圧縮機と、室内の空気と冷媒とを熱交換する室内熱交換器と、室外の空気と冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、蓄熱材と冷媒とを熱交換する蓄熱熱交換器と、開度を調整可能な複数の減圧機構と、室内熱交換器、及び、蓄熱熱交換器を凝縮器、室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転と、室外熱交換器を凝縮器、室内熱交換器、又は、蓄熱熱交換器を蒸発器として機能させる除霜運転とで冷媒回路における冷媒の循環経路を切り替える複数の切替弁と、が接続され、蓄熱材の温度を測定する蓄熱温度センサと、複数の切替弁を制御する制御部と、を備え、複数の減圧機構は、暖房運転の冷媒の循環経路において、室内熱交換器の下流側に設けられた第1の減圧機構と、蓄熱熱交換器の上流側に設けられた第2の減圧機構と、蓄熱熱交換器の下流側に設けられた第3の減圧機構と、を有する冷凍サイクル装置において、暖房運転から除霜運転へと移行した後に、制御部が蓄熱温度センサから取得した蓄熱材の温度が予め設定される第1の閾値以下であるか否かを判定するステップと、蓄熱材の温度が第1の閾値以下であると判定された場合に、制御部は、第3の減圧機構を閉状態とし、室外熱交換器が凝縮器として機能し、室内熱交換器が蒸発器として機能するように複数の切替弁を制御して室外熱交換器を除霜するリバース除霜運転を実行する制御を行うステップと、蓄熱材の温度が第1の閾値よりも高いと判定された場合に、制御部は、第1の減圧機構を閉状態とし、室外熱交換器が凝縮器として機能し、蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように複数の切替弁を制御して室外熱交換器を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うステップと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、室外熱交換器の除霜運転を行う際のユーザに対する快適性の低下を抑制するとともに、除霜能力の低下も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置の冷媒回路図である。
図2】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置における制御部の内部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置が暖房蓄熱運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図4】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置がリバース除霜運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図5】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置が室内熱交バイパス除霜運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図6】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置が暖房除霜運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
図7】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置において除霜運転を行う際の制御の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置において除霜運転を行う際の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの構造を、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sの冷媒回路図である。冷凍サイクル装置Sは、圧縮機1と、室内熱交換器2と、室外熱交換器3と、蓄熱熱交換器4と、減圧機構5と、切替弁6と、が接続され、冷媒を循環させる冷媒回路Cを備えている。また、切替弁6を制御する制御部7と、を備えている。
【0017】
圧縮機1は、冷媒回路Cの内部を循環する冷媒を圧縮する。室内熱交換器2は、室内の空気と冷媒とを熱交換する。室外熱交換器3は、室外の空気と冷媒とを熱交換する。圧縮機1、室内熱交換器2、室外熱交換器3のそれぞれの構造については、ここでは説明しないが、様々な構造の機器を採用することができる。
【0018】
蓄熱熱交換器4は、内部に充填された蓄熱材と蓄熱熱交換器4を通過する冷媒とが熱交換を行う熱交換器である。この蓄熱材には、冷媒から供給された熱が蓄えられ、蓄えられた熱は、後述するように暖房運転、或いは、除霜運転に用いられる。また、後述する蓄熱温度センサHSが、蓄熱材の温度を測定することができる位置に設けられている。
【0019】
減圧機構5は、開度を調整可能に形成されており、本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置Sでは複数設けられている。具体的には、3つの減圧機構が設けられており、第1の減圧機構51は、室内熱交換器2と室外熱交換器3との間に設けられている。第2の減圧機構52は、圧縮機1と蓄熱熱交換器4、或いは、室外熱交換器3との間に設けられている。第3の減圧機構53は、蓄熱熱交換器4と室外熱交換器3との間に設けられている。
【0020】
切替弁6は、室内熱交換器2、及び、蓄熱熱交換器4を凝縮器、室外熱交換器3を蒸発器として機能させる暖房運転と、室外熱交換器3を凝縮器、室内熱交換器2、又は、蓄熱熱交換器4を蒸発器として機能させる除霜運転とで冷媒回路Cにおける冷媒の循環経路を切り替える。
【0021】
また、本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置Sにおいては、切替弁6も複数設けられている。すなわち、圧縮機1と室内熱交換器2との間に第1の切替弁61が設けられている。また、第2の切替弁62は、圧縮機1と蓄熱熱交換器4との間に設けられている。そして第3の切替弁63は、圧縮機1と室外熱交換器3との間に設けられている。
【0022】
なお、以下においては、これら3つの減圧機構についてまとめて説明する場合には、適宜「減圧機構5」と表し、個々の減圧機構について説明を行う場合には、それぞれの名称で表す。また切替弁6についても、これら3つの切替弁についてまとめて説明する場合には、適宜「切替弁6」と表し、個々の切替弁について説明を行う場合には、それぞれの名称で表す。
【0023】
制御部7は、複数の減圧機構5の開度を制御する。そして制御部7が各減圧機構の開度を制御することによって、冷媒回路Cを流れる冷媒の流量を調整することができる。また上述したように、複数の切替弁6を切り替えて、冷媒回路Cを循環する冷媒の流れを切り替える。
【0024】
このように複数の減圧機構5、複数の切替弁6を制御することによって、制御部7は、例えば、暖房運転と蓄熱運転を並行して行う暖房蓄熱運転を行う。また、室外熱交換器3の除霜運転を行う際の制御についても制御部7が行う。
【0025】
次に、制御部7による制御内容について、さらに詳細に説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおける制御部7の内部構成を示すブロック図である。制御部7は、温度検出部71と、記憶部72と、判定部73と、除霜運転制御部74と、を備えている。
【0026】
温度検出部71は、蓄熱熱交換器4に備えられている蓄熱温度センサHSが検出した蓄熱材の温度を取得する。なお、蓄熱温度センサHSにおいて検出される蓄熱材の温度については、蓄熱温度センサHSから温度検出部71に所定の時間ごとに送信されてきても良い。或いは、逆に温度検出部71が蓄熱温度センサHSに必要に応じて取得しにいっても良い。
【0027】
記憶部72は、温度検出部71において取得された蓄熱材の温度と比較するための情報を記憶している。すなわち記憶部72には、第1の閾値と第2の閾値とが予め設定されて記憶されている。これら第1の閾値、及び、第2の閾値は、いずれも後述する除霜運転制御部74が実行する除霜運転の態様を判定部73が判定する際に用いられる。
【0028】
なお、第1の閾値と第2の閾値との関係については、どのようにも設定することができるが、本発明の実施の形態においては、第2の閾値は第1の閾値よりも高い値が設定されていることを前提とする。
【0029】
ここで「第1の閾値」とは、後述するリバース除霜運転を行うか否かの判定に用いる基準となる値である。具体的には、除霜運転が長引く恐れがあるほどに蓄熱熱交換器4の蓄熱材に蓄えられている熱量が少ない場合に、この状態を示す値である。一方「第2の閾値」とは、後述する暖房除霜運転を行うか否かの判定に用いる基準となる値である。具体的には、除霜運転だけではなく暖房運転も並行して行うことができる程度に蓄熱材に蓄えられている熱量が多い状態を示す値である。上述したように、第2の閾値が第1の閾値よりも高い値が設定されるのは、このためである。
【0030】
判定部73は、温度検出部71が蓄熱温度センサHSから取得した蓄熱材の温度と、記憶部72に記憶されている第1の閾値、或いは、第2の閾値とを用いて、室外熱交換器3に対する除霜運転としてどのような運転態様を選択するかを判定する。
【0031】
本発明の実施の形態においては、除霜運転の態様として、例えば、後述するリバース除霜運転、室内熱交バイパス除霜運転、暖房除霜運転、の3つの態様が設定されている。そこで判定部73が蓄熱材の温度を第1の閾値、或いは、第2の閾値と比較することでいずれかの運転態様を選択する。
【0032】
判定部73において選択された運転態様に関する情報は、除霜運転制御部74に対して送信され、除霜運転制御部74は、判定部73から受信した運転態様に従って、減圧機構5や切替弁6を制御する。
【0033】
次にこれまで出てきた各種除霜運転について、本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置Sの回路図を用いて順に説明する。その前にまず基本となる冷凍サイクル装置Sにおける暖房運転について図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sが暖房蓄熱運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。ここで暖房蓄熱運転とは、室内熱交換器2を凝縮器として利用する暖房運転を行いつつ、蓄熱熱交換器4において冷媒から蓄熱材へ放熱させることで蓄熱を行う運転である。
【0034】
なお、図3を含め、以降説明において用いる回路図においては、実際に冷媒が流れる冷媒回路Cを実線で示している。一方、冷媒回路Cを構成するが冷媒が流れていない冷媒回路Cについては破線で示している。また、冷媒回路C内を流れる冷媒の向きを矢印で示している。
【0035】
冷凍サイクル装置Sが暖房蓄熱運転を行う場合、圧縮機1から吐出された冷媒は、第1の切替弁61を介して室内熱交換器2に流入する。そして室内熱交換器2において冷媒と室内機に流入する空気との間で熱交換を行い室内空間に冷媒から吸熱して暖められた空気を供給する。従って、室内熱交換器2は凝縮器として機能する。
【0036】
室内熱交換器2から流出した冷媒は、第1の減圧機構51を経由して室外熱交換器3に流入する。室外熱交換器3は蒸発器として機能し、冷媒と室外空気との間で熱交換が行われる。室外熱交換器3から流出した冷媒は、第3の切替弁63を介して圧縮機1に流入する。
【0037】
本発明の実施の形態における冷凍サイクル装置Sには、室内熱交換器2、及び、室外熱交換器3に加えて蓄熱熱交換器4が設けられている。暖房蓄熱運転が実行される場合には、圧縮機1から吐出された冷媒は、上述したように室内熱交換器2に流入するだけではなく、第2の減圧機構52、第2の切替弁62を介して蓄熱熱交換器4にも流入する。
【0038】
蓄熱熱交換器4では流入した冷媒が蓄熱材との間で熱交換を行うことによって、冷媒の熱が蓄熱材に蓄熱される。蓄熱による蓄熱材の温度は、蓄熱温度センサHSにおいて検出されて、上述したように適宜制御部7の温度検出部71に送信される。
【0039】
蓄熱熱交換器4における熱交換後に蓄熱熱交換器4から流出した冷媒は、第3の減圧機構53を介して室外熱交換器3に流入し、さらに室外熱交換器3から流出して第3の切替弁63を介して圧縮機1に流入する。
【0040】
制御部7はこのような冷凍サイクル装置Sにおける暖房蓄熱運転の制御を実行するが、室外熱交換器3の除霜を行う運転の制御も実行する。上述したように除霜運転の制御にはいくつかのモードがあるが、まず、リバース除霜運転について説明する。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sがリバース除霜運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。リバース除霜運転は、暖房蓄熱運転が実行されている冷凍サイクル装置Sにおいて、暖房運転から冷房運転の状態に切り替えて室外熱交換器3の除霜を行う運転態様である。
【0042】
具体的には、除霜運転を開始するに当たって、判定部73が蓄熱材の温度が第1の閾値以下であると判定した場合には、まず除霜運転制御部74は、第3の減圧機構53を閉状態とする。
【0043】
リバース除霜運転を行うか否かの判定に当たって、判定部73は第1の閾値を用いる。この第1の閾値は、蓄熱熱交換器4の蓄熱材に蓄えられた熱を室外熱交換器3の除霜運転に用いることができるか否かを判定するために用いられる。
【0044】
その結果、蓄熱温度センサHSから送信されてきた蓄熱材の温度が第1の閾値以下である場合には、判定部73は、蓄熱熱交換器4の蓄熱材に蓄熱されている熱の量が少なく、室外熱交換器3の除霜運転に利用することができないと判定する。
【0045】
従って、このような場合には、除霜運転制御部74は、上述したようにまず第3の減圧機構53を閉状態に制御する。このように第3の減圧機構53が制御されることによって、圧縮機1から吐出される冷媒は、蓄熱熱交換器4に流入することはない。
【0046】
そこで除霜運転制御部74は、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、室内熱交換器2が蒸発器として機能するように複数の切替弁6を制御して室外熱交換器3を除霜するリバース除霜運転を実行する。
【0047】
具体的には、除霜運転制御部74は、第1の減圧機構51、及び、第2の減圧機構52はいずれも開状態に制御する。また、第1の切替弁61、及び、第3の切替弁63を圧縮機の吐出側が室外熱交換器3に、圧縮機の吸入側が室内熱交換器2に接続するように切り替える。
【0048】
このように除霜運転制御部74が複数の減圧機構5、及び、複数の切替弁6を制御することによって、圧縮機1から吐出された高温の冷媒は、図4の矢印に示すように、第2の減圧機構52、第3の切替弁63を介して室外熱交換器3に流入する。
【0049】
そして流入した冷媒の熱により、室外熱交換器3に付着した霜を溶かす。当該霜を溶かすことで低温となった冷媒は、室外熱交換器3から流出して第1の減圧機構51を介して室内熱交換器2に流入する。なお、上述したように第3の減圧機構53は閉状態に制御されていることから、室外熱交換器3を流出した冷媒は蓄熱熱交換器4に流入することはない。
【0050】
そして室内熱交換器2に流入した冷媒は、室内機に流入する空気との間で熱交換して蒸発し室内熱交換器2から流出した後、第1の切替弁61を介して圧縮機1へと流入する。このように蓄熱熱交換器4の蓄熱材に蓄えられた熱を利用することができない場合には、蓄熱材に蓄えられた熱を利用せずに圧縮機1から吐出された冷媒の熱のみを用いて室外熱交換器3の除霜運転を行う。
【0051】
次に、図5を用いて室内熱交バイパス除霜運転の制御について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sが室内熱交バイパス除霜運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
【0052】
ここで「室内熱交バイパス除霜運転」とは、上述したリバース除霜運転とは異なり、室外熱交換器3の除霜運転に用いた冷媒を室内熱交換器2へ流入させず、蓄熱熱交換器4へ流入させる除霜運転である。
【0053】
すなわち、リバース除霜運転の場合、蓄熱熱交換器4の蓄熱材に蓄えられた熱を除霜運転に利用することができない。そのため、室外熱交換器3の除霜運転において用いた冷媒は蓄熱熱交換器4を介さず、室内熱交換器2を介して圧縮機1へと送られる。
【0054】
但し、室外熱交換器3に対する除霜運転によって冷媒は低温になってしまうことから、室内熱交換器2に流入する冷媒の温度は低いままである。そのため、これまで暖房蓄熱運転が行われることで暖められていた室内熱交換器2の配管等の各部が低温の冷媒によって冷やされることで低温になってしまう。
【0055】
そのため、室外熱交換器3の除霜運転が終了した後、改めて暖房蓄熱運転を開始しても、室内熱交換器2の各部が冷えた状態になっているためすぐには暖まらず、暖まるまでの間、例えば室内に低温の空気が供給される等、ユーザに対する快適性の低下を招きかねない。
【0056】
そこで、室内熱交換器2の温度を低下させないようにして、除霜運転が終了して改めて暖房蓄熱運転が開始された際に、ユーザに対する快適性を低下させずにすぐに暖かい空気を室内に供給することができる制御として、室内熱交バイパス除霜運転を行う。
【0057】
具体的には、判定部73が蓄熱材の温度が第1の閾値よりも高く第2の閾値以下であると判定した場合に当該室内熱交バイパス除霜運転の制御が実行される。判定部73がこのような判定を行った場合、除霜運転制御部74は、まず第1の減圧機構51を閉状態とする制御を行う。
【0058】
すなわち、第1の減圧機構51を閉状態にすることで、図5に示すように、除霜運転において室外熱交換器3の除霜運転に用いられた冷媒が室内熱交換器2に流入することによって、室内熱交換器2が冷やされることを防止することができる。
【0059】
また除霜運転制御部74によって第1の減圧機構51が閉状態に制御されることで、室外熱交換器3の除霜運転に用いられた低温の冷媒は、第3の減圧機構53を介して蓄熱熱交換器4に流入する。上述したように判定部73は、蓄熱材の温度が第1の閾値よりも高いと判定していることから、蓄熱熱交換器4に蓄えられた熱を室外熱交換器3の除霜運転に利用することが可能である。
【0060】
そこで除霜運転制御部74は、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、蓄熱熱交換器4が蒸発器として機能するように第2の切替弁62を切り替える制御を行う。このような制御が制御部7によって行われることによって、圧縮機1から吐出された冷媒は、第2の減圧機構52、第3の切替弁63を介して室外熱交換器3に流入し、除霜運転が実行される。
【0061】
そして、室外熱交換器3の除霜運転に用いられた冷媒は、第1の減圧機構51が閉状態に制御され、第3の減圧機構53が開状態に制御されていることから、第3の減圧機構53を介して蓄熱熱交換器4に流入する。蓄熱熱交換器4では、蓄熱材に蓄えられた熱が流入した冷媒に吸熱され、この状態で冷媒は蓄熱熱交換器4から流出する。蓄熱熱交換器4を流出した冷媒は、第2の切替弁62を介して圧縮機1へと戻る。
【0062】
従って、室外熱交換器3の除霜運転により低温となった冷媒は室内熱交換器2に流入しないため、除霜運転の前に行われていた暖房蓄熱運転によって暖められた室内熱交換器2の各部の温度は低下することなく暖かい状態を維持することができる。そのため除霜運転から暖房蓄熱運転へと切り替わった直後でも暖かな空気を室内へと供給することができるため、ユーザに対する快適性の低下を回避することができる。
【0063】
また、除霜運転が実行された後の冷媒は、蓄熱熱交換器4に流入し蓄熱材との間で熱交換を行うことになるため、蓄熱材に蓄えられた熱を室外熱交換器3の除霜運転に利用することができる。
【0064】
そしてさらに、判定部73が蓄熱材の温度が第2の閾値よりも高いと判定した場合には、以下のように室外熱交換器3の除霜運転が行われる。図6は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sが暖房除霜運転を行う際の冷媒の流れを示す冷媒回路図である。
【0065】
判定部73が、蓄熱温度センサHSから取得した蓄熱材の温度が第2の閾値よりも高いと判定した場合、蓄熱熱交換器4には室外熱交換器3の除霜運転に加えて暖房運転に利用することが可能な程、十分な熱が蓄えられていることを示している。そこで、蓄熱材の温度が第2の閾値よりも高い場合には、除霜運転制御部74は、暖房運転、及び、除霜運転を同時に実行する暖房除霜運転を実行する。
【0066】
具体的には、判定部73は、図6に示す冷媒回路図に明らかなように、室内熱交換器2、及び、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、蓄熱熱交換器4が蒸発器として機能するように複数の切替弁6を制御する。
【0067】
すなわち、暖房運転を行うために、圧縮機1から吐出された冷媒が室内熱交換器2に流入するように第1の切替弁61を制御する。また、暖房運転と同時に除霜運転も行うことから、第3の切替弁63は圧縮機1から吐出された冷媒が室外熱交換器3へと流入するように切り替える。そして、第2の切替弁62は、蓄熱熱交換器4から圧縮機1へと冷媒が流れるように切り替えられる。
【0068】
一方、第1の減圧機構51ないし第3の減圧機構53のいずれも開状態となるように除霜運転制御部74によって制御される。従って、室内熱交換器2において室内空気と熱交換を行った冷媒、及び、室外熱交換器3に対する除霜運転に用いられた冷媒は、第3の減圧機構53を介して蓄熱熱交換器4に流入する。そして、蓄熱熱交換器4から流出した冷媒は、第2の切替弁62を介して圧縮機1へと戻る。
【0069】
蓄熱熱交換器4に十分に高温な冷媒が蓄えられている前提で、このように減圧機構5,及び、切替弁6が制御されることによって、蓄熱熱交換器4に蓄えられた熱を室外熱交換器3の除霜運転に利用することができる。そのため、除霜運転と同時に暖房運転も行うことができる。
【0070】
これまで説明してきたリバース除霜運転等の各運転態様では、暖房運転が行われていることを前提としていた。一方、暖房運転が行われていない場合には、冷凍サイクル装置Sとしては除霜運転に注力すれば良いことになる。そこで、以下、暖房運転が停止している間に行われる除霜運転について説明する。
【0071】
制御部7において暖房運転の停止信号を受信した場合、除霜運転を実行するか否かの判定が行われる。例えば、室外熱交換器3の温度が0℃以下であり、かつ、暖房運転が30分以上行われているような場合、室外熱交換器3には霜が着いていると予想される。そこで、制御部7ではこのような場合に除霜運転が必要と判定する。
【0072】
なお、制御部7が除霜運転が必要であると判定する条件については、上述した条件に限定されず、様々な条件を設定することができる。また、ここでの暖房運転の停止信号には、ユーザがリモコンを用いて暖房の運転停止を指示した場合の他、サーモオフによる停止信号も含まれる。
【0073】
制御部7における除霜運転の要否の判定の結果、除霜運転が必要と判定された場合には、温度検出部71を介して蓄熱温度センサHSが検出した蓄熱材の温度を取得する。そして、取得した蓄熱材の温度が第1の閾値以下であるかを判定する。もし蓄熱材の温度が第1の閾値以下である場合には、上述したリバース除霜運転が実行される。
【0074】
一方蓄熱材の温度が第1の閾値より大きな値を示している場合には、室内熱交バイパス除霜運転が実行される。そして別途定められている除霜運転の終了条件を満たした場合に、リバース除霜運転、或いは、室内熱交バイパス除霜運転の除霜運転が終了する。
【0075】
なお、ここで説明した除霜運転は、上述したように暖房運転の停止状態において行われることを前提としていることから、判定部73は蓄熱材の温度を第2の閾値と比較することはしない。
【0076】
以上、暖房運転中、或いは、暖房運転停止中の除霜運転について説明した。なお、除霜運転の終了の条件については、様々設定可能であるが、一例を挙げると以下の通りである。例えば、リバース除霜運転の場合を例に挙げると、リバース除霜運転が開始してから、所定時間(任意に設定可能であるが、例えば、10分)経過後、或いは、室外熱交換器3の温度(任意に設定可能であるが、例えば、10℃)以上になった時点で除霜運転が終了する。
【0077】
[動作]
次に、上述したリバース除霜運転、室内熱交バイパス除霜運転、及び、暖房除霜運転における制御部7による冷凍サイクル装置Sの制御の流れについて、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおいて除霜運転を行う際の制御の流れを示すフローチャートである。
【0078】
まず制御部7において、冷凍サイクル装置Sが、暖房運転(暖房蓄熱運転)中であるか否かが判定される(ST1)。すなわち、制御部7において、上述した暖房運転の停止信号を受信したか否かを確認する。
【0079】
その結果、暖房蓄熱運転が実行されていると判定された場合には(ST1のYES)、次に制御部7は、室外熱交換器3に対する除霜運転が必要か否かの判定を実行する(ST2)。なお、制御部7において暖房運転中ではないと判定された場合(ST1のNO)の処理の流れについては、後述する。
【0080】
暖房運転中における除霜運転の要否を制御部7が判定する条件については、例えば、室外熱交換器3の温度が-5℃以下であり、かつ、暖房運転が60分以上行われている、という条件を挙げることができる。或いは、このような室外熱交換器3の温度、暖房運転の運転時間の条件の他に、さらに外気温に関する条件を追加することもできる。このように当該条件については、様々に設定可能である。
【0081】
なお、当該暖房運転中の除霜運転要否の条件と暖房運転が停止している間における除霜運転の要否の条件とは異なる。すなわち、暖房運転中は運転中におけるユーザの快適性の確保等の観点から、直ちに除霜が必要な程の着霜がある場合に除霜運転が開始される。一方、暖房運転停止中の場合は、このような観点からの制限はないことから、例えば、改めて暖房運転が開始される際に着霜していない状態で運転が可能となるように、少しでも着霜がある場合には除霜運転が開始される。従って、除霜運転の要否を判断する条件は、暖房運転中の方が暖房運転停止中よりも厳しい。
【0082】
制御部7が判定した結果、室外熱交換器3に対する除霜運転が不要である場合には(ST2のNO)、引き続き暖房蓄熱運転が継続される。一方、除霜運転が必要であると制御部7において判定された場合には(ST2のYES)、室外熱交換器3への除霜運転が開始される(ST3)。
【0083】
制御部7では、除霜運転の態様を決定するために、温度検出部71が蓄熱温度センサHSから蓄熱材の温度を取得するとともに、判定部73へと送信する。また判定部73は、記憶部72にアクセスして、予め記憶部72に記憶されている第1の閾値、及び、第2の閾値を取得する。
【0084】
そして判定部73では、温度検出部71から取得した蓄熱材の温度と、記憶部72から取得した第1の閾値、及び、第2の閾値を基に、蓄熱材の温度がこれら閾値とどのような関係があるか判定する。
【0085】
まず、蓄熱材の温度が第1の閾値以下であるか否かを判定する(ST4)。もし蓄熱材の温度が第1の閾値以下であると判定した場合には(ST4のYES)、除霜運転制御部74に対してリバース除霜運転を実行するよう指示する。
【0086】
除霜運転制御部74では、判定部73の判定結果に基づいて第3の減圧機構を閉状態とし、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、室内熱交換器2が蒸発器として機能するように複数の切替弁6を制御して室外熱交換器3を除霜するリバース除霜運転を実行する(ST5)。
【0087】
一方、判定部73によって、蓄熱材の温度が第1の閾値よりも大きな値であると判定された場合には(ST4のNO)、さらに当該蓄熱材の温度を第2の閾値と比較する(ST6)。
【0088】
その結果、判定部73が蓄熱材の温度が第2の閾値以下であると判定した場合には(ST6のYES)、除霜運転制御部74に対して室内熱交バイパス除霜運転を実行するよう指示する。
【0089】
除霜運転制御部74では、判定部73の判定結果に基づいて、第1の減圧機構51を閉状態とし、室外熱交換器3が凝縮器として機能し、蓄熱熱交換器4が蒸発器として機能するように複数の切替弁6を制御して室外熱交換器3を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する(ST7)。
【0090】
一方、判定部73が蓄熱材の温度が第2の閾値よりも大きな値であると判定した場合には(ST6のNO)、暖房運転と除霜運転とを同時に行う、暖房除霜運転を実行する(ST8)。
【0091】
このように蓄熱材の温度と第1の閾値、或いは、第2の閾値とを比較して、上述したようなリバース除霜運転、室内熱交バイパス除霜運転、或いは、暖房除霜運転のいずれかの除霜運転が選択され実行される。
【0092】
そしてこれらいずれかの除霜運転が実行されている間、制御部7では室外熱交換器3の霜が溶けて除霜運転を終了しても良いか否か、上述した終了条件を基に判定する(ST9)。
【0093】
制御部7の判定によって、室外熱交換器3の霜が十分に溶けておらず、未だ除霜運転を終了することができない場合には(ST9のNO)、引き続き実行中の除霜運転が継続される(ST10)。一方、判定の結果、除霜運転を終了することができると判定した場合には(ST9のYES)、除霜運転が終了する(ST11)。
【0094】
なお、図7に示すフローチャートでは示していないが、除霜運転が終了した後、改めて暖房蓄熱運転が開始されても良い。
【0095】
次に暖房運転中ではない場合(ST1のNO)、すなわち、暖房運転停止中の除霜運転の処理について図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態に係る冷凍サイクル装置Sにおいて除霜運転を行う際の制御の流れを示すフローチャートである。
【0096】
制御部7において、暖房運転の停止信号を受信し、暖房運転中ではない、との判定がなされた後、まず、除霜運転が必要であるか否かの判定が判定部73によって実行される(ST21)。ここでの除霜運転の要否の条件については、上述した通りである。
【0097】
判定の結果、除霜運転が必要であると判定された場合には(ST21のYES)、除霜運転が開始される(ST22)。その際、制御部7では、除霜運転の態様を決定するために、温度検出部71が蓄熱温度センサHSから蓄熱材の温度を取得するとともに、判定部73へと送信する。また判定部73は、記憶部72にアクセスして、予め記憶部72に記憶されている第1の閾値を取得する。
【0098】
判定部73は、蓄熱材の温度が第1の閾値以下であるか否かを判定する(ST23)。もし蓄熱材の温度が第1の閾値以下であると判定した場合には(ST23のYES)、除霜運転制御部74に対してリバース除霜運転を実行するよう指示する。
【0099】
一方、判定部73によって蓄熱材の温度が第1の閾値よりも高い値であると判定された場合には(ST23のNO)、室内熱交バイパス除霜運転を行うべく、除霜運転制御部74に対して指示する。
【0100】
そしてこれらの除霜運転が実行された後は、いずれの場合も図7のステップST9に示すように、適宜除霜運転を終了するか否かの判定が行われる。この判定の結果に基づく制御の流れについては、上述した通りである。
【0101】
なお、暖房運転停止中に除霜運転が不要であると判定された場合には(ST21のNO)、除霜運転は実行されず処理は終了する。
【0102】
以上説明した通り、複数の除霜運転の態様の中から蓄熱熱交換器4が備える蓄熱材の温度を基に現状に即した除霜運転を実行することによって、室外熱交換器の除霜運転を行う際のユーザに対する快適性の低下を抑制するとともに、除霜能力の低下も回避することができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を提供することができる。
【0103】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、本発明の一例を示したものである。実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化でき、また、上記実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【0104】
例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよく、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1・・・圧縮機、2・・・室内熱交換器、3・・・室外熱交換器、4・・・蓄熱熱交換器、5・・・減圧機構、51・・・第1の減圧機構、52・・・第2の減圧機構、53・・・第3の減圧機構、6・・・切替弁、61・・・第1の切替弁、62・・・第2の切替弁、63・・・第3の切替弁、7・・・制御部、71・・・温度検出部、72・・・記憶部、73・・・判定部、74・・・除霜運転制御部、C・・・冷媒回路、HS・・・蓄熱温度センサ、S・・・冷凍サイクル装置



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる冷媒回路に、
前記冷媒を圧縮する圧縮機と、
室内の空気と前記冷媒とを熱交換する室内熱交換器と、
室外の空気と前記冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、
蓄熱材と前記冷媒とを熱交換する蓄熱熱交換器と、
開度を調整可能な複数の減圧機構と、
前記室内熱交換器、及び、前記蓄熱熱交換器を凝縮器、前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転と、前記室外熱交換器を凝縮器、前記室内熱交換器、又は、前記蓄熱熱交換器を蒸発器として機能させる除霜運転とで前記冷媒回路における前記冷媒の循環経路を切り替える複数の切替弁と、が接続され、
前記蓄熱材の温度を測定する蓄熱温度センサと、
前記複数の切替弁を制御する制御部と、を備え、
前記複数の減圧機構は、前記暖房運転の前記冷媒の循環経路において、前記室内熱交換器の下流側に設けられた第1の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の上流側に設けられた第2の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の下流側に設けられた第3の減圧機構と、を有し、
前記除霜運転を開始するに当たって、前記制御部が前記蓄熱温度センサから取得した前記蓄熱材の温度が予め設定される第1の閾値以下であると判定した場合に、前記制御部は、前記第3の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記室内熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜するリバース除霜運転を実行する制御を行い、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定した場合に、前記制御部は、前記第1の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御部が前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高く設定される第2の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交換器、及び、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御し、前記暖房運転、及び、前記除霜運転を同時に実行する暖房除霜運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
暖房運転停止中において、前記制御部が前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値以下であると判定した場合には、前記リバース除霜を実行する制御を行い、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
冷媒を循環させる冷媒回路に、
前記冷媒を圧縮する圧縮機と、
室内の空気と前記冷媒とを熱交換する室内熱交換器と、
室外の空気と前記冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、
蓄熱材と前記冷媒とを熱交換する蓄熱熱交換器と、
開度を調整可能な複数の減圧機構と、
前記室内熱交換器、及び、前記蓄熱熱交換器を凝縮器、前記室外熱交換器を蒸発器として機能させる暖房運転と、前記室外熱交換器を凝縮器、前記室内熱交換器、又は、前記蓄熱熱交換器を蒸発器として機能させる除霜運転とで前記冷媒回路における前記冷媒の循環経路を切り替える複数の切替弁と、が接続され、
前記蓄熱材の温度を測定する蓄熱温度センサと、
前記複数の切替弁を制御する制御部と、を備え、
前記複数の減圧機構は、前記暖房運転の前記冷媒の循環経路において、前記室内熱交換器の下流側に設けられた第1の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の上流側に設けられた第2の減圧機構と、前記蓄熱熱交換器の下流側に設けられた第3の減圧機構と、を有する冷凍サイクル装置において、
前記暖房運転から前記除霜運転へと移行した後に、
前記制御部が前記蓄熱温度センサから取得した前記蓄熱材の温度が予め設定される第1の閾値以下であるか否かを判定するステップと、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値以下であると判定された場合に、前記制御部は、前記第3の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記室内熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜するリバース除霜運転を実行する制御を行うステップと、
前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定された場合に、前記制御部は、前記第1の減圧機構を閉状態とし、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御して前記室外熱交換器を除霜する室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うステップと、
を備えることを特徴とする冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項5】
前記制御部が前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高く設定される第2の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交換器、及び、前記室外熱交換器が凝縮器として機能し、前記蓄熱熱交換器が蒸発器として機能するように前記複数の切替弁を制御し、前記暖房運転、及び、前記除霜運転を同時に実行する暖房除霜運転を行うステップを備えることを特徴とする請求項4に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。
【請求項6】
さらに前記制御部が、冷凍サイクル装置が暖房運転中であるか否かを判定するステップを備え、前記制御部が前記冷凍サイクル装置が暖房運転停止中であると判定した場合において、
前記制御部は、前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値以下であると判定した場合には、前記リバース除霜運転を実行する制御を行い、
前記制御部は、前記蓄熱材の温度が前記第1の閾値よりも高いと判定した場合には、前記制御部は、前記室内熱交バイパス除霜運転を実行する制御を行うステップを備えることを特徴とする請求項4に記載の冷凍サイクル装置の制御方法。