(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117353
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20240822BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240822BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240822BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240822BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240822BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240822BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L29/78 613Z
H01L29/06 301D
H01L29/78 653C
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
H01L29/91 F
H01L29/91 D
H01L29/91 B
H01L29/78 626C
H01L29/78 626A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023407
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 新也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健志
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110AA01
5F110BB12
5F110CC09
5F110CC10
5F110DD01
5F110EE09
5F110EE45
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF23
5F110FF27
5F110GG02
5F110HJ01
5F110HJ13
5F110HK04
5F110HK22
5F110HK32
5F110HK33
5F110HM12
5F110QQ04
5F110QQ05
(57)【要約】
【課題】チャネルが形成されるウェル領域の抵抗率を低下させて、内蔵ダイオードの順方向電流を増加させることのできる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、基板1と、基板1の主面上に形成された第1導電型ドリフト領域7と、基板1の主面上に形成され、第1導電型ドリフト領域7と接した第2導電型ウェル領域5と、基板1の主面上に形成され、第1導電型ドリフト領域7内に形成された第2導電型コラム領域11とを有し、第2導電型ウェル領域5の活性化率を、第2導電型コラム領域11の活性化率よりも高くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面上に形成された第1導電型ドリフト領域と、
前記基板の主面上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域と接した第2導電型ウェル領域と、
前記基板の主面上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域内に形成された第2導電型コラム領域とを有し、
前記第2導電型ウェル領域の活性化率を、前記第2導電型コラム領域の活性化率よりも高くした半導体装置。
【請求項2】
前記第2導電型ウェル領域の炭素濃度を、前記第2導電型コラム領域の炭素濃度よりも高くした請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板の主面上に形成され、前記第2導電型ウェル領域と電気的に接続された第1電極と、
前記基板の主面上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域と電気的に接続された第2電極と
をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板は、半絶縁性または絶縁性の基板である請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板の主面上に形成され、前記第2導電型ウェル領域と電気的に接続された第1電極と、
前記基板の主面と対向する面上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域と電気的に接続された第2電極と
をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板は、導電性の基板である請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板の主面上に形成され、前記第2導電型ウェル領域と電気的に接続された第1導電型ソース領域と、
前記基板の主面上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域と電気的に接続された第1導電型ドレイン領域と、
前記第1導電型ソース領域と電気的に接続された第1電極と、
前記第1導電型ドレイン領域と電気的に接続された第2電極と、
前記第1導電型ソース領域と前記第2導電型ウェル領域と前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型コラム領域と絶縁膜を介して接する第3電極と
をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記基板の主面上に形成され、前記第2導電型ウェル領域と電気的に接続された第2導電型アノード領域と、
前記基板の主面上に形成され、前記第1導電型ドリフト領域と電気的に接続された第1導電型カソード領域と、
前記第2導電型アノード領域と電気的に接続された第4電極と、
前記第1導電型カソード領域と電気的に接続された第5電極と
をさらに有する請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2導電型ウェル領域及び前記第2導電型アノード領域よりも炭素濃度が低い低炭素領域を、前記第2導電型コラム領域が前記第2導電型ウェル領域及び前記第2導電型アノード領域と接する部分に形成する請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2導電型ウェル領域と前記第1導電型ドリフト領域は、ワイドバンドギャップ半導体からなる請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記基板と前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ウェル領域は、同一の材料からなる請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記基板は、炭化珪素からなる請求項1または2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、ゲート絶縁膜への高電界の印加を抑制することを目的としたスイッチング素子が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたスイッチング素子では、ドリフト領域内に炭素濃度の高い高濃度炭素含有領域を設けることによって、ゲート電極の近傍のドリフト領域内に空乏層を広げてゲート絶縁膜に加わる電界を緩和していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のスイッチング素子では、高濃度炭素含有領域をドリフト領域内に設けているので、ドリフト領域内に抵抗率の低い領域を形成することはできるが、チャネルが形成される領域に抵抗率の低い領域を形成することはできなかった。したがって、従来のスイッチング素子では、チャネルが形成される領域の抵抗率を低下させて、内蔵ダイオードの順方向電流を増加させることができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、チャネルが形成される領域の抵抗率を低下させて、内蔵ダイオードの順方向電流を増加させることのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置は、基板と、基板の主面上に形成された第1導電型ドリフト領域と、第1導電型ドリフト領域と接した第2導電型ウェル領域と、第1導電型ドリフト領域内に形成された第2導電型コラム領域とを有する。そして、第2導電型ウェル領域の活性化率を、第2導電型コラム領域の活性化率よりも高くする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、チャネルが形成される領域の抵抗率を低下させて、内蔵ダイオードの順方向電流を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【
図2C】
図2Cは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その3)。
【
図2D】
図2Dは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その4)。
【
図2E】
図2Eは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その5)。
【
図2F】
図2Fは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その6)。
【
図2G】
図2Gは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その7)。
【
図2H】
図2Hは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その8)。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図5B】
図5Bは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【
図5C】
図5Cは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その3)。
【
図5D】
図5Dは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その4)。
【
図5E】
図5Eは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その5)。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
[半導体装置の構造]
図1は、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置100はN型MOSFETであり、トレンチゲート構造横型MOSデバイスである。この半導体装置100は、基板1と、第1導電型のソース領域3と、第2導電型のウェル領域5と、第1導電型のドリフト領域7と、第1導電型のドレイン領域9と、第2導電型のコラム領域11とを有する。また、半導体装置100は、ソース領域3に接合されたソース電極(第1電極)13と、ドレイン領域9に接合されたドレイン電極(第2電極)15と、ウェル領域5とその周囲の領域にゲート絶縁膜17を介して埋め込まれたゲート電極(第3電極)19を有する。
【0012】
尚、第1導電型と第2導電型は互いに異なる導電型である。すなわち、第1導電型がP型であれば、第2導電型はN型であり、第1導電型がN型であれば、第2導電型はP型である。本実施形態では、第1導電型がN型、第2導電型がP型の場合について説明する。
【0013】
基板1は、絶縁性半導体基板である。これにより、同一の基板1に複数の半導体装置を集積する際の素子分離プロセスを簡略化することができる。ここで、絶縁性基板とは、基板の抵抗率が数kΩ・cm以上のことをいう。ただし、基板1は、半絶縁性半導体基板であってもよい。
【0014】
例えば、基板1に絶縁性を有する炭化珪素基板(SiC基板)を用いることができる。SiCはワイドバンドギャップ半導体であり真性キャリヤ数が少ないため、高い絶縁性を得やすく、耐圧の高い半導体装置を実現できる。SiCにはいくつかのポリタイプ(結晶多形)が存在するが、代表的な4HのSiC基板を基板1として用いることができる。基板1にSiC基板を用いることにより、基板1の絶縁性を高くすることができる。
【0015】
また、基板1は、SiC基板に限らず、バンドギャップの広い半導体材料からなる半導体基板を使用してもよい。バンドギャップの広い半導体材料には、例えばGaN、ダイヤモンド、ZnO、AlGaNなどが挙げられる。
【0016】
ソース領域3は、基板1の主面上に形成され、ウェル領域5と電気的に接続されている。ソース領域3のN型の不純物濃度はドリフト領域7よりも高濃度であり、例えば、1×1018/cm3~1×1021/cm3程度である。ソース領域3の表面にはソース電極13が電気的に接続されている。また、ソース領域3は、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極19に接している。
【0017】
ウェル領域5は、基板1の主面上に形成され、ソース領域3と電気的に接続され、ドリフト領域7と接している。ウェル領域5のP型の不純物濃度は、例えば、1×1015/cm3~1×1019/cm3程度である。ウェル領域5の一部にはゲート電極19が形成され、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極19に接している。尚、低いオン抵抗と高い絶縁破壊電界を両立させることができるので、ウェル領域5はワイドバンドギャップ半導体で形成することが好ましい。また、基板1とウェル領域5を同一の材料から形成すれば、異なる材料を用いた場合に生じる格子不整合等の性能劣化を防止することができる。
【0018】
また、ウェル領域5は、炭素濃度がコラム領域11よりも高くなっている。ウェル領域5には炭素が注入されているのに対して、コラム領域11には炭素が注入されていないので、ウェル領域5の炭素濃度はコラム領域11よりも高くなっている。そして、このようにウェル領域5に炭素を注入したことにより、SiC中の炭素欠陥が、注入された炭素で埋められるので、P型不純物がSiサイトに入りやすくなり、P型不純物の活性化率が向上する。したがって、炭素が注入されているウェル領域5の活性化率は、炭素が注入されていないコラム領域11の活性化率よりも高くなっている。
【0019】
ドリフト領域7は、基板1の主面上に形成され、ウェル領域5と接し、ドレイン領域9と電気的に接続されている。ドリフト領域7のN型の不純物濃度は、例えば、1×1015/cm3~1×1019/cm3程度である。ドリフト領域7内の一部にはコラム領域11が形成されており、ドリフト領域7はコラム領域11と接するとともに、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極19にも接している。尚、低いオン抵抗と高い絶縁破壊電界を両立させることができるので、ドリフト領域7はワイドバンドギャップ半導体で形成することが好ましい。また、基板1とドリフト領域7を同一の材料から形成すれば、異なる材料を用いた場合に生じる格子不整合等の性能劣化を防止することができる。
【0020】
ドレイン領域9は、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域7と電気的に接続されている。ドレイン領域9のN型の不純物濃度はドリフト領域7よりも高濃度であり、例えば、1×1018/cm3~1×1021/cm3程度である。また、ドレイン領域9の表面には、ドレイン電極15が電気的に接続されている。
【0021】
コラム領域11は、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域7内の一部に形成され、ドリフト領域7と接し、かつゲート電極19とゲート絶縁膜17を介して接している。コラム領域11は、基板1にイオン注入によってP型の不純物を添加することによって形成される。このようにコラム領域11を形成したことにより、スーパージャンクション構造になり、高耐圧、かつ低オン抵抗の特性を得ることができる。
【0022】
また、コラム領域11は、炭素濃度がウェル領域5よりも低くなっている。ウェル領域5には炭素が注入されているのに対して、コラム領域11には炭素が注入されていないので、コラム領域11の炭素濃度はウェル領域5よりも低くなっている。そのため、コラム領域11の活性化率は、ウェル領域5の活性化率よりも低くなっている。
【0023】
ソース電極13は、基板1の主面上に形成され、ソース領域3の表面に接合され、ソース領域3及びウェル領域5と電気的に接続されている。
【0024】
ドレイン電極15は、基板1の主面上に形成され、ドレイン領域9の表面に接合され、ドリフト領域7及びドレイン領域9と電気的に接続されている。
【0025】
ゲート電極19は、ソース領域3とウェル領域5とドリフト領域7とコラム領域11とゲート絶縁膜17を介して接するように形成されている。ゲート電極19は、ソース領域3とウェル領域5とドリフト領域7とコラム領域11に接するようにゲート溝を形成し、ゲート溝の内面にゲート絶縁膜17を形成した後に、ポリシリコンを堆積させて形成される。
【0026】
[半導体装置の動作]
次に、本実施形態に係る半導体装置100における基本的な動作の一例を説明する。
【0027】
図1に示す構成の半導体装置100は、ソース電極13の電位を基準として、ドレイン電極15に正の電位を印加した状態で、ゲート電極19の電位を制御することによって、トランジスタとして機能する。すなわち、ゲート電極19とソース電極13の間の電圧を所定の閾値電圧以上にすると、ゲート電極19の側面のP型ウェル領域5のチャネル部に反転層が形成されてオン状態となり、ドレイン電極15からソース電極13へ電流が流れる。
【0028】
一方、ゲート電極19とソース電極13の間の電圧を所定の閾値電圧より低くすると、反転層が消滅してオフ状態となり、ドレイン電極15からソース電極13への電流が遮断される。理想的には、P型コラム領域11とN型ドリフト領域7がピンチオフ状態になることで、P型コラム領域11とN型ドリフト領域7の電界分布は均一な長方形の分布となる。これにより、最大電界が大きく低下して耐圧が向上する。
【0029】
次に、本実施形態に係る半導体装置100の効果について説明する。本実施形態に係る半導体装置100では、ウェル領域5に炭素が注入されているのに対して、コラム領域11には炭素が注入されていない。そのため、ウェル領域5の炭素濃度はコラム領域11よりも高くなっている。このようにウェル領域5に炭素を注入することによって、SiC中の炭素欠陥が、注入された炭素によって埋められ、アルミニウム(Al)やボロン(B)のようなP型不純物が炭素欠陥に入ることを防いでいる。その結果、P型不純物はSiサイトに入りやすくなり、P型不純物の活性化率を向上させることができる。したがって、チャネルが形成されるウェル領域5の抵抗率を低下させることができるので、内蔵ダイオードのオン抵抗が低減して順方向電流を増加させることができる。
【0030】
一方、コラム領域11には炭素が注入されていないので、コラム領域11の炭素濃度はウェル領域5よりも低くなっている。したがって、コラム領域11の抵抗率はウェル領域5のように低くならず高いままとなっているので、内蔵ダイオードのターンオフ時にドリフト領域7からの残留ホールの引き抜きを抑制し、逆回復電流を低減することができる。特に、N型のドリフト領域7から残留ホールを引き抜く経路は、P型のコラム領域11になるので、コラム領域11の抵抗率を高いままにしておくことによって、逆回復電流を低減することができる。同様に、P型のコラム領域11の不純物濃度を、N型のドリフト領域7よりも低くしておけば、コラム領域11の抵抗率がドリフト領域7よりも高くなり、逆回復電流を低減することができる。
【0031】
[半導体装置の製造方法]
次に、
図2A~
図2Hを参照して、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を説明する。
【0032】
まず、不純物が添加されていない基板1を用意する。次に、
図2Aに示すように、基板1上に形成したマスク材51をパターニングして、ウェル領域5を形成する領域を露出させる。そして、マスク材51をマスクとして基板1にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってウェル領域5を形成する。この後、マスク材51をそのまま利用して炭素(C)を基板1に注入して、ウェル領域5の炭素濃度を通常のSiC基板の炭素濃度よりも高くする。ただし、P型の不純物と炭素原子は同時に注入してもよいし、炭素原子を先に注入してもよい。
【0033】
一般的なマスク材としては、シリコン酸化膜を用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。パターニングの方法としては、フォトリソグラフィ法を用いることができる。即ち、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクにしてマスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。マスク材をエッチングした後、フォトレジスト膜を酸素プラズマや硫酸などで除去する。このようにして、マスク材51がパターニングされる。
【0034】
次に、
図2Bに示すように、基板1及びウェル領域5の上に形成されたマスク材53をパターニングして、コラム領域11を形成する領域を露出させる。そして、マスク材53をマスクとして基板1にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってコラム領域11を形成する。
【0035】
次に、
図2Cに示すように、基板1、ウェル領域5及びコラム領域11の上に形成されたマスク材55をパターニングして、ドリフト領域7を形成する領域を露出させる。そして、マスク材55をマスクとして基板1にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってドリフト領域7を形成する。
【0036】
次に、
図2Dに示すように、基板1、ウェル領域5、コラム領域11及びドリフト領域7の上に形成されたマスク材57をパターニングして、ソース領域3及びドレイン領域9を形成する領域を露出させる。そして、マスク材57をマスクとして基板1にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、高濃度のソース領域3及びドレイン領域9を形成する。
【0037】
尚、本実施形態におけるN型の不純物としては、例えば、窒素(N)を用いることができ、P型の不純物としては、例えば、アルミニウム(Al)やボロン(B)を用いることができる。また、基板の温度を600℃程度に加熱した状態でイオン注入することにより、イオン注入した領域に結晶欠陥が生じることを抑制することができる。
【0038】
このとき、N型ドリフト領域7とP型コラム領域11の不純物の濃度は、1×1015/cm3~1×1019/cm3が好適である。また、N型ドリフト領域7のドナー濃度とP型コラム領域11のアクセプタ濃度の組み合わせは、以下の式(1)の関係が成立することが好適な条件となる。式(1)において、N型ドリフト領域7のドナー濃度がNd、P型コラム領域11のアクセプタ濃度がNa、N型ドリフト領域7の幅がWn、P型コラム領域11の幅がWpである。
Na×Wp=Nd×Wn ・・・(1)
【0039】
さらに、上述の各工程においてイオン注入した不純物は、熱処理することで活性化させることができる。例えば、アルゴン雰囲気中や窒素雰囲気中で、1700℃程度の熱処理を行う。
【0040】
次に、
図2Eに示すように、パターニングしたマスク材(図示せず)をマスクとして、ドライエッチングまたはウェットエッチングを行う。これにより、ソース領域3の一部、ウェル領域5の一部、ドリフト領域7の一部、及びコラム領域11の一部を選択的にエッチングして、ゲート電極19を埋め込むゲート溝59を形成する。この結果、ゲート溝59は、ソース領域3、ウェル領域5、ドリフト領域7及びコラム領域11に接する位置に形成される。
【0041】
次に、
図2Fに示すように、ゲート溝59の内部にゲート絶縁膜17及びゲート電極19を形成する。ゲート電極19は、ゲート絶縁膜17を介して、ソース領域3、ウェル領域5、コラム領域11、及びドリフト領域7のそれぞれと接するように形成される。
【0042】
ゲート絶縁膜17は、ゲート溝59の内壁面に形成され、例えば、熱酸化法、又は堆積法を用いて形成することができる。一例として、熱酸化法の場合、基板を酸素雰囲気下で1100℃程度に加熱することで、基板が酸素に触れるすべての部分において、シリコン酸化膜が形成される。ただし、シリコン酸化膜ではなく、シリコンの窒化膜でもよいし、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の積層であってもよい。シリコン窒化膜の場合の等方性エッチングは、160℃の熱燐酸による洗浄でエッチングすることができる。
【0043】
ゲート絶縁膜17を形成した後、ウェル領域5とゲート絶縁膜17との界面における界面準位を低減するために、窒素、アルゴン、N2Oなどの雰囲気下で1000℃程度のアニールを行ってもよい。また、直接NO又はN2O雰囲気下での熱酸化も可能である。その場合の温度は1100℃~1400℃が好適である。ゲート絶縁膜17の厚さは数十nm程度である。
【0044】
ゲート電極19は、ゲート絶縁膜17の形成されたゲート溝59の内部に堆積するように形成される。ゲート電極19の材料は、例えば、ポリシリコン膜を用いることができる。本実施形態では、ゲート電極19にポリシリコン膜を用いる場合を説明する。
【0045】
ポリシリコン膜の堆積方法としては、減圧CVD法などを用いることができる。例えば、堆積させるポリシリコン膜の厚さをゲート溝59の幅の2分の1よりも大きな値にして、ゲート溝59をポリシリコン膜で埋める。ゲート溝59の内壁面からポリシリコン膜が形成されていくため、上記のようにポリシリコン膜の厚さを設定することにより、ゲート溝59をポリシリコン膜によって埋めることができる。例えば、ゲート溝59の幅が2μmの場合は、膜厚が1μmよりも大きくなるようにポリシリコン膜を形成する。また、ポリシリコン膜を堆積した後に、オキシ塩化リン(POCl3)中で950℃のアニール処理することで、N型のポリシリコン膜が形成され、ゲート電極19に導電性を付与する。
【0046】
ポリシリコン膜は、エッチングなどにより平坦化する。エッチング方法は等方性エッチングでも異方性の選択エッチングでもよい。エッチング量は、ゲート溝59の内部にポリシリコン膜が残るように設定する。例えば、幅が2μmのゲート溝59についてポリシリコン膜を1.5μmの厚さに堆積した場合、ポリシリコン膜のエッチング量を1.5μmにする。しかし、エッチングの制御において、1.5μmのエッチング量について数%のオーバーエッチングでも問題はない。尚、ここでは、N型のポリシリコンを用いて説明したが、P型のポリシリコンでもよい。また、他の半導体材料でもよいし、メタル材料などの導電性のある材料でもよい。例えば、P型ポリ炭化珪素、SiGe、Alなどでもよい。
【0047】
次に、
図2Fに示すように、ソース領域3及びウェル領域5上に配置されるようにゲート配線61を形成し、ゲート電極19同士を電気的に接続する。ゲート配線61は、ゲート電極19と同じポリシリコン、又は金属を用いることができる。
【0048】
次に、
図2Gに示すように、層間絶縁膜63を形成する。層間絶縁膜63は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。シリコン酸化膜の堆積方法としては、熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。また、層間絶縁膜63にシリコン窒化膜を用いてもよい。
【0049】
その後、パターニングしたフォトレジスト膜(図示せず)をマスクにして層間絶縁膜63を選択的にエッチングし、ソース領域3の上面が露出するようにソース電極コンタクトホール65を形成する。同様に、ドレイン領域9の上面が露出するようにドレイン電極コンタクトホール67を形成する。エッチング方法としては、例えば、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いる。
【0050】
次に、
図2Hに示すように、コンタクトホール65、67を埋め込むように成膜した電極膜をパターニングしてソース電極13及びドレイン電極15を形成する。ソース電極13及びドレイン電極15の材料には、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)などの金属配線に用いる金属材料を好適に用いることができる。また、チタン/ニッケル/銀(Ti/Ni/Ag)などの積層膜をソース電極13及びドレイン電極15に用いてもよい。ソース電極13及びドレイン電極15の形成は、スパッタ法や電子ビーム(EB)蒸着法などにより全面に金属材料を堆積した後、金属材料をエッチングして形成する。また、メッキプロセスによってコンタクトホールを金属材料で埋め込んで、ソース電極13及びドレイン電極15を形成してもよい。こうして、ソース電極13及びドレイン電極15が形成されると、本実施形態に係る半導体装置100が完成する。
【0051】
[変形例]
上述した実施形態では、半導体装置100が横型デバイスの場合について説明したが、縦型デバイスとして形成することも可能である。
図3に示すように、縦型デバイスの場合の半導体装置110は、第1導電型のソース領域3と、第2導電型のウェル領域5と、第1導電型のドリフト領域7と、第1導電型のドレイン領域9と、第2導電型のコラム領域11とを有する。また、半導体装置110は、ソース領域3に接合されたソース電極(第1電極)13と、ドレイン領域9に接合されたドレイン電極(第2電極)15と、ウェル領域5とその周囲の領域にゲート絶縁膜17を介して埋め込まれたゲート電極(第3電極)19を有する。
【0052】
半導体装置110では、導電性の基板1内に、ソース領域3とウェル領域5とドリフト領域7とドレイン領域9とコラム領域11が形成されている。
【0053】
ソース電極13は、基板1の主面上に形成され、ソース領域3及びウェル領域5と電気的に接続されている。
【0054】
ドレイン電極15は、基板1の主面と対向する面上に形成され、ドリフト領域7及びドレイン領域9と電気的に接続されている。
【0055】
ゲート電極19は、ソース領域3とウェル領域5とドリフト領域7とコラム領域11にゲート絶縁膜17を介して接するように形成されている。
【0056】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置100は、基板1と、基板1の主面上に形成されたドリフト領域7と、ドリフト領域7と接したウェル領域5と、ドリフト領域7内に形成されたコラム領域11とを有する。そして、ウェル領域5の活性化率を、コラム領域11の活性化率よりも高くしている。これにより、チャネルが形成されるウェル領域5の抵抗率を低下させることができるので、内蔵ダイオードのオン抵抗が低下して順方向電流を増加させることができる。また、コラム領域11の抵抗率はウェル領域5のように低くならず高いままとなっているので、内蔵ダイオードのターンオフ時にドリフト領域7からの残留ホールの引き抜きを抑制し、逆回復電流を低減することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る半導体装置100は、ウェル領域5の炭素濃度を、コラム領域11の炭素濃度よりも高くしている。これにより、ウェル領域5のP型不純物の活性化率を向上させることができるので、チャネルが形成されるウェル領域5の抵抗率を低下させることができる。したがって、内蔵ダイオードのオン抵抗が低減して順方向電流を増加させることができる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る半導体装置100は、基板1の主面上に形成され、ウェル領域5と電気的に接続されたソース電極13と、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域7と電気的に接続されたドレイン電極15とを有する。これにより、半導体装置100を、半導体基板上に横型のデバイスとして形成できるので、チップ内の素子集積度を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、基板1が半絶縁性または絶縁性の基板である。これにより、半導体装置100を横型デバイスとして容易に作成することができ、同一の基板1に複数の半導体装置を集積する際の素子分離プロセスを簡略化することができる。
【0060】
さらに、本実施形態に係る半導体装置110は、基板1の主面上に形成され、ウェル領域5と電気的に接続されたソース電極13と、基板1の主面と対向する面上に形成され、ドリフト領域7と電気的に接続されたドレイン電極15とを有する。これにより、半導体装置110を縦型のデバイスとして形成できるので、大電流のデバイスを得ることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る半導体装置110では、基板1が導電性の基板である。これにより、縦型のデバイスを容易に形成することができる。
【0062】
さらに、本実施形態に係る半導体装置100は、ウェル領域5と電気的に接続されたソース領域3と、ドリフト領域7と電気的に接続されたドレイン領域9とを有する。そして、ソース領域3と電気的に接続されたソース電極13と、ドレイン領域9と電気的に接続されたドレイン電極15と、ソース領域3とウェル領域5とドリフト領域7とコラム領域11とゲート絶縁膜17を介して接するゲート電極19とをさらに有する。これにより、半導体装置100をトランジスタとして動作させることができ、内蔵ダイオードのオン抵抗が低下して順方向電流を増加させたトランジスタを得ることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、ウェル領域5とドリフト領域7がワイドバンドギャップ半導体から形成されている。これにより、低いオン抵抗と高い絶縁破壊電界を両立させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る半導体装置100では、基板1とウェル領域5とドリフト領域7が同一の材料から形成されている。これにより、異なる材料を用いた場合に生じる格子不整合等の性能劣化を防止することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、基板1が炭化珪素から形成されている。これにより、高い放熱性と高耐圧低オン抵抗の特性を得ることができる。
【0066】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
[半導体装置の構造]
図4は、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
図4に示すように、本実施形態では、半導体装置120をダイオードとして形成したことが第1実施形態と相違している。この半導体装置120は、基板1と、第2導電型のウェル領域5と、第1導電型のドリフト領域7と、第2導電型のアノード領域21と、第1導電型のカソード領域23と、第2導電型のコラム領域11とを有する。また、半導体装置120は、アノード領域21に接合されたアノード電極(第4電極)25と、カソード領域23に接合されたカソード電極(第5電極)27を有する。
【0068】
尚、本実施形態では、第1導電型がN型、第2導電型がP型の場合について説明する。また、基板1と、ウェル領域5と、ドリフト領域7と、コラム領域11は、第1実施形態と同様の構造となるので、詳細な説明は省略する。
【0069】
アノード領域21は、基板1の主面上に形成され、ウェル領域5と電気的に接続され、ウェル領域5内に形成されている。アノード領域21のP型の不純物濃度はウェル領域5よりも高濃度であり、ウェル領域5と同様に炭素が注入されている。アノード領域21の表面にはアノード電極25が電気的に接続されている。アノード領域21は、アノード電極25とウェル領域5との間のコンタクト抵抗を下げるために、高濃度の不純物領域としてウェル領域5の表面に設けられたものである。
【0070】
カソード領域23は、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域7と電気的に接続されている。カソード領域23のN型の不純物濃度はドリフト領域7よりも高濃度であり、例えば、1×1018/cm3~1×1021/cm3程度である。また、カソード領域23の表面には、カソード電極27が電気的に接続されている。
【0071】
アノード電極25は、基板1の主面上においてアノード領域21の表面に接合され、アノード領域21及びウェル領域5と電気的に接続されている。
【0072】
カソード電極27は、基板1の主面上においてカソード領域23の表面に接合され、ドリフト領域7及びカソード領域23と電気的に接続されている。
【0073】
[半導体装置の動作]
次に、本実施形態に係る半導体装置120における基本的な動作の一例を説明する。
【0074】
図4に示す構成の半導体装置120は、アノード電極25の電位を基準電位として、カソード電極27に低い電圧(順方向電圧)を印加すると、ウェル領域5とドリフト領域7の間のバリア高さが低くなる。これにより、ドリフト領域7からウェル領域5へ電子が流れ込むようになり、カソード電極27からアノード電極25へ電流(順方向電流)が流れる。
【0075】
一方、アノード電極25の電位を基準電位として、カソード電極27に高い電圧(逆方向電圧)を印加すると、ウェル領域5とドリフト領域7の間のバリア高さが高くなる。これにより、ドリフト領域7からウェル領域5へ電子が流れなくなる。このとき、ウェル領域5からドリフト領域7の内部へ空乏層が広がり、コラム領域11とドリフト領域7の界面からも空乏層が広がる。そして、所定値以上まで逆方向電圧が大きくなると、コラム領域11及びドリフト領域7がともに完全に空乏した状態(ピンチオフ状態)となる。尚、本実施形態に係る半導体装置120の効果は、第1実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0076】
[半導体装置の製造方法]
次に、
図5A~
図5Eを参照して、本実施形態に係る半導体装置120の製造方法の一例を説明する。ただし、第1実施形態で説明した製造方法と相違する工程のみを説明し、第1実施形態と同一の工程については詳細な説明を省略する。
【0077】
まず、
図5Aに示すように、第1実施形態の
図2A-
図2Cと同様のプロセスを行って基板1上にウェル領域5、ドリフト領域7、コラム領域11を形成する。
【0078】
次に、
図5Bに示すように、基板1、ウェル領域5、コラム領域11及びドリフト領域7の上に形成されたマスク材71をパターニングして、カソード領域23を形成する領域を露出させる。そして、マスク材71をマスクとして基板1にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、高濃度のカソード領域23を形成する。
【0079】
次に、
図5Cに示すように、基板1、ウェル領域5、ドリフト領域7、コラム領域11及びカソード領域23の上に形成されたマスク材73をパターニングして、アノード領域21を形成する領域を露出させる。そして、マスク材73をマスクとして基板1にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、高濃度のアノード領域21を形成する。
【0080】
次に、
図5Dに示すように、層間絶縁膜63を形成する。層間絶縁膜63は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。シリコン酸化膜の堆積方法としては、熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。また、層間絶縁膜63にシリコン窒化膜を用いてもよい。
【0081】
その後、パターニングしたフォトレジスト膜(図示せず)をマスクにして層間絶縁膜63を選択的にエッチングし、アノード領域21の上面が露出するようにアノード電極コンタクトホール75を形成する。同様に、カソード領域23の上面が露出するようにカソード電極コンタクトホール77を形成する。エッチング方法としては、例えば、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いる。
【0082】
次に、
図5Eに示すように、コンタクトホール75、77を埋め込むように成膜した電極膜をパターニングしてアノード電極25及びカソード電極27を形成する。こうして、アノード電極25及びカソード電極27が形成されると、本実施形態に係る半導体装置120が完成する。
【0083】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置120は、ウェル領域5と電気的に接続されたアノード領域21と、ドリフト領域7と電気的に接続されたカソード領域23とを有する。そして、アノード領域21と電気的に接続されたアノード電極25と、カソード領域23と電気的に接続されたカソード電極27とをさらに有する。これにより、半導体装置120をダイオードとして動作させることができ、オン抵抗が低下して順方向電流を増加させたダイオードを得ることができる。
【0084】
[第3実施形態]
以下、本発明を適用した第3実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
[半導体装置の構造]
図6は、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
図6に示すように、本実施形態に係る半導体装置130では、ウェル領域5及びアノード領域21よりも炭素濃度が低い低炭素領域31を、コラム領域11がウェル領域5及びアノード領域21と接する部分に形成したことが第2実施形態と相違している。
【0086】
低炭素領域31は、基板1の主面上に形成され、ウェル領域5及びアノード領域21内にコラム領域11と接するように形成されている。そして、低炭素領域31は、アノード領域21の表面から基板1の深さまで形成されている。
【0087】
低炭素領域31は、炭素が注入されていないので、ウェル領域5及びアノード領域21よりも炭素濃度が低くなっている。これにより、低炭素領域31の抵抗率を、ウェル領域5及びアノード領域21よりも高くすることができる。低炭素領域31を形成する方法としては、ウェル領域5に炭素を注入する工程において、ウェル領域5の一部にマスク材を形成しておき、炭素が注入されないようにすることで、低炭素領域31を形成することができる。
【0088】
また、低炭素領域31は、アノード領域21のP型の不純物濃度よりも低くなるように形成してもよい。この場合には、ウェル領域5に不純物を添加してアノード領域21を形成する工程において、ウェル領域5の一部にマスク材を形成しておき、不純物が添加されないようにすれば、低炭素領域31の不純物濃度をアノード領域21よりも低くすることができる。これにより、低炭素領域31の抵抗率を、アノード領域21よりも高くすることができる。
【0089】
[第3実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置130では、ウェル領域5及びアノード領域21よりも炭素濃度が低い低炭素領域31を、コラム領域11がウェル領域5及びアノード領域21と接する部分に形成する。これにより、コラム領域11に接する低炭素領域31の低効率を高くできるので、ターンオフ時にドリフト領域7からの残留ホールの引き抜きを抑制し、逆回復電流をさらに低減することができる。
【0090】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0091】
1 基板
3 ソース領域
5 ウェル領域
7 ドリフト領域
9 ドレイン領域
11 コラム領域
13 ソース電極
15 ドレイン電極
17 ゲート絶縁膜
19 ゲート電極
21 アノード領域
23 カソード領域
25 アノード電極
27 カソード電極
31 低炭素領域
51、53、55、57、71、73 マスク材
59 ゲート溝
61 ゲート配線
63 層間絶縁膜
65 ソース電極コンタクトホール
67 ドレイン電極コンタクトホール
75 アノード電極コンタクトホール
77 カソード電極コンタクトホール
100、110、120、130 半導体装置