(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117358
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】凍結防止装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/02 20060101AFI20240822BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20240822BHJP
F16L 55/07 20060101ALI20240822BHJP
F16K 31/70 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
E03C1/02
E03C1/042 B
F16L55/07 E
F16K31/70 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023417
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【テーマコード(参考)】
2D060
3H057
【Fターム(参考)】
2D060AA01
2D060AB10
2D060BA01
2D060BB01
2D060BC17
2D060BE20
2D060BF01
3H057AA05
3H057CC03
3H057DD13
3H057FC04
3H057HH03
3H057HH13
(57)【要約】
【課題】水抜き機能と凍結防止機能との切り替えを簡便に行える凍結防止装置を提供すること。
【解決手段】凍結防止装置8は、水抜き弁体10と凍結防止弁体20とを有する。水抜き弁体10は、配管2Aに形成される管ねじ孔2Cに螺合される筒状の管螺合部12を備え、管ねじ孔2Cへの螺合により配管2Aと流路接続される。凍結防止弁体20は、水抜き弁体10に形成される弁ねじ孔11Aに螺合される筒状の弁螺合部A1を備え、弁ねじ孔11Aへの螺合により水抜き弁体10を介して配管2Aと流路接続される。凍結防止弁体20は、配管2Aから流れ出た水を外部へ排出可能な排出孔B1と、内部の温度変化に伴う管軸方向の感温動作により配管2Aから排出孔B1へと至る流路の開閉を切り替える感温式の切替弁体22と、を有する。凍結防止弁体20が水抜き弁体10との螺合から外されることで、配管2Aから水抜き弁体10に流れ出た水が外部へ排出される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の凍結を防止する凍結防止装置であって、
前記配管の管壁に形成される管ねじ孔に螺合される筒状の管螺合部を備え、前記管ねじ孔への螺合により前記配管と流路接続される水抜き弁体と、
前記水抜き弁体に形成される弁ねじ孔に螺合される筒状の弁螺合部を備え、前記弁ねじ孔への螺合により前記水抜き弁体を介して前記配管と流路接続される凍結防止弁体と、を有し、
前記凍結防止弁体が、前記配管から流れ出た水を外部へと排出可能な排出孔と、内部の温度変化に伴う管軸方向の感温動作により前記配管から前記排出孔へと至る流路の開閉を切り替える感温式の切替弁体と、を有し、
前記凍結防止弁体が前記水抜き弁体との螺合から外されることで、前記配管から前記水抜き弁体に流れ出た水が堰き止められることなく外部へと排出される凍結防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の凍結防止装置であって、
前記弁螺合部が、前記管螺合部よりもねじ部の長さが長い凍結防止装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の凍結防止装置であって、
前記切替弁体が、前記排出孔を上流側から開閉する凍結防止装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の凍結防止装置であって、
前記配管が、混合水栓の水栓本体の内部に設けられ、
前記水抜き弁体が、前記水栓本体の下面に形成された差込口に下方から差し込まれて前記配管の前記管ねじ孔に螺合され、前記管ねじ孔への螺合により前記弁ねじ孔が前記水栓本体の前記下面から下方に張り出す位置に設けられる凍結防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結防止装置に関する。詳しくは、配管の凍結を防止する凍結防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、混合水栓の凍結を防止する凍結防止装置が開示されている。この凍結防止装置は、水栓本体に取り付けられる手動式の水抜き弁との入れ替えで混合水栓に取り付けられる構成とされる。凍結防止装置は、感温式の切替弁体を備え、外気が所定温度未満の低温となることで開弁し、水栓本体内の水を外部へと少量ずつ排出する。それにより、水栓本体内の水が少しずつ流動するため、凍結が防止される。
【0003】
水抜き弁は、使用者により所望時に手動操作される手動弁となっている。水抜き弁は、使用者により混合水栓の元栓が閉められた後、水栓本体への締め付けが緩められることにより、水栓本体内の水を外部へと排出する。それにより、水栓本体内の水がなくなるため、水栓本体の凍結や破損が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では、水抜き弁と凍結防止弁とを取り替えるに当たり、これらを都度、水栓本体に適切に螺合させる作業が必要となる。しかし、水栓本体の胴体部が肉薄である場合、これに螺合するねじ部の長さが短くなることから、螺合の作業が難しくなる。そこで、本発明は、水抜き機能と凍結防止機能との切り替えを簡便に行うことが可能な凍結防止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の凍結防止装置は、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、配管の凍結を防止する凍結防止装置であって、前記配管の管壁に形成される管ねじ孔に螺合される筒状の管螺合部を備え、前記管ねじ孔への螺合により前記配管と流路接続される水抜き弁体と、前記水抜き弁体に形成される弁ねじ孔に螺合される筒状の弁螺合部を備え、前記弁ねじ孔への螺合により前記水抜き弁体を介して前記配管と流路接続される凍結防止弁体と、を有し、前記凍結防止弁体が、前記配管から流れ出た水を外部へと排出可能な排出孔と、内部の温度変化に伴う管軸方向の感温動作により前記配管から前記排出孔へと至る流路の開閉を切り替える感温式の切替弁体と、を有し、前記凍結防止弁体が前記水抜き弁体との螺合から外されることで、前記配管から前記水抜き弁体に流れ出た水が堰き止められることなく外部へと排出される凍結防止装置である。
【0007】
第1の発明によれば、凍結防止弁体が配管に螺合される水抜き弁体に対して螺合されたり外されたりすることで、凍結防止機能する状態と水抜き機能する状態とに切り替えられる。この切り替えに際し、水抜き弁体を配管から取り外す必要がないことから、水抜き機能と凍結防止機能との切り替えを簡便に行うことが可能となる。その理由は、例えば、配管が肉薄で管螺合部のねじ部の長さが短いような螺合の作業が難しい構成であっても、これらの螺合作業を要することなく、水抜き機能と凍結防止機能との切り替えを行えるからである。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記弁螺合部が、前記管螺合部よりもねじ部の長さが長い凍結防止装置である。
【0009】
第2の発明によれば、水抜き弁体の管螺合部を配管の管ねじ孔に螺合するよりも簡単に、凍結防止弁体の弁螺合部を水抜き弁体の弁ねじ孔に螺合することができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記切替弁体が、前記排出孔を上流側から開閉する凍結防止装置である。
【0011】
第3の発明によれば、切替弁体を、排出孔を塞いだ凍結防止弁体の内部に留まる水の温度低下に伴って感温動作させることができる。それにより、切替弁体の温度変化に対する動作をより安定させることができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記配管が、混合水栓の水栓本体の内部に設けられ、前記水抜き弁体が、前記水栓本体の下面に形成された差込口に下方から差し込まれて前記配管の前記管ねじ孔に螺合され、前記管ねじ孔への螺合により前記弁ねじ孔が前記水栓本体の前記下面から下方に張り出す位置に設けられる凍結防止装置である。
【0013】
第4の発明によれば、水抜き弁体の弁ねじ孔が水栓本体の下面から下方に張り出す位置に設けられることで、凍結防止弁体の水抜き弁体への差し込み位置を目視確認しやすくなる。また、凍結防止弁体を水栓本体の内部に差し込むことなく、水栓本体から下方に張り出す水抜き弁体との螺合により配管に流路接続することができる。水抜き弁体に螺合することができる。それにより、凍結防止弁体を水抜き弁体に対してより簡便に螺合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る凍結防止装置の概略構成を表す正面図である。
【
図2】凍結防止装置を水栓本体から外した正面図である。
【
図3】凍結防止弁体を水抜き弁体から外した正面図である。
【
図4】更に水抜き弁体を水栓本体から外した正面図である。
【
図5】凍結防止装置を中心を通る垂直面で切断した縦断面図である。
【
図6】
図5の凍結防止弁体を水抜き弁体から外した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(凍結防止装置8の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る凍結防止装置8の構成について、
図1~
図6を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0017】
各図中に示す方向は、それぞれ、凍結防止装置8が取り付けられる混合水栓1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図6のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る凍結防止装置8は、浴室用の混合水栓1に外付けされる弁装置として構成される。混合水栓1は、浴室の壁面Wに設置され、壁面Wの裏側から供給される湯と水とを内部で混合して吐出することができる機能を備える。
【0019】
具体的には、混合水栓1は、その水栓本体2が、湯水の供給配管となる左右一対のクランク状に折れ曲がった各偏心管3を介して浴室の壁面Wに取り付けられている。この取り付けにより、混合水栓1は、水栓本体2が壁面Wの裏側を通る不図示の給湯管と給水管とにそれぞれ流路接続された状態とされる。各偏心管3は、図示向かって右側の偏心管3が水の供給配管とされ、向かって左側の偏心管3が湯の供給配管とされる。
【0020】
上記混合水栓1は、水栓本体2の向かって左側の側部に取り付けられた略円筒型の温度調節ハンドル4の操作により、各偏心管3から水栓本体2に供給される湯水の混合割合を内部で調節することができる構成とされる。また、混合水栓1は、水栓本体2の向かって右側の側部に取り付けられた略円筒型の切替ハンドル5の操作により、混合した湯水の吐水/止水を切り替えたり、吐出する湯水の量を調節したりすることができる構成とされる。
【0021】
具体的には、使用者が温度調節ハンドル4を所望の回転位置へと回すことで、水栓本体2の内部で混合される湯水の混合割合が、その回転位置に応じた設定温度となるように調節される。また、使用者が切替ハンドル5を所定の止水位置(図示位置)から上向きに回すことで、その回転移動量に応じた量の湯水が、水栓本体2の奥側面に流路接続された不図示のシャワエルボからシャワーヘッドへと吐出される。
【0022】
また、使用者が切替ハンドル5を所定の止水位置(図示位置)から下向きに回すことで、その回転移動量に応じた量の湯水が、水栓本体2の下面に流路接続されたカラン7から吐出される。以上が、混合水栓1の基本構成となっている。
【0023】
凍結防止装置8は、水栓本体2に下方から差し込まれることで、水栓本体2内の配管2Aに流路接続された状態に取り付けられている。凍結防止装置8は、所望時に使用者が配管2A内の水抜きを手動で行うことが可能な水抜き機能を備える。また、凍結防止装置8は、浴室内の温度(外気)が所定温度未満の低温となる場合に、配管2A内の水を自動的に外部へと少量ずつ漏出させて水の凍結を防止する感温式の凍結防止機能を備える。
【0024】
図2~
図4に示すように、凍結防止装置8は、上述した水抜き機能を担う水抜き弁体10と、凍結防止機能を担う凍結防止弁体20と、を備える。水抜き弁体10は、短尺な円管状の部材から成る。凍結防止弁体20は、水抜き弁体10よりも長尺な円管状の部材から成る。
【0025】
図2に示すように、凍結防止装置8は、水抜き弁体10の下流側に凍結防止弁体20が流路接続されて、全体が1本の縦長な円管状を成す形に組み立てられている。凍結防止装置8は、次のように水栓本体2に取り付けられる。
【0026】
すなわち、先ず、水抜き弁体10の図示上端から延び出す管螺合部12を、水栓本体2の下面に形成された差込口2Bに下方から差し込む。そして、管螺合部12を、水栓本体2内にある配管2Aの管壁に形成された管ねじ孔2Cに螺合させる。それにより、
図1に示すように、凍結防止装置8が、配管2Aと流路接続された状態に取り付けられる。
【0027】
上記取り付けにより、凍結防止装置8は、凍結防止弁体20が水抜き弁体10の止水栓となって、水栓本体2からの水の漏出を防止するようになっている。一方で、凍結防止装置8は、浴室内の温度(外気)が所定温度未満の低温となることにより、凍結防止弁体20が止水部分を開くように感温動作する。
【0028】
それにより、水栓本体2内の水が、凍結防止装置8から外部へと少量ずつ排出される。その結果、水栓本体2内の水が少しずつ流動するため、水栓本体2内の水の凍結が防止される。その結果、水栓本体2へと至る上流側の流路内の水の凍結も防止される。凍結防止装置8は、浴室内の温度(外気)が所定温度以上の非低温に戻ることにより、凍結防止弁体20が止水状態に戻されるように感温動作する。
【0029】
このように、凍結防止装置8は、使用者が何ら操作を行わなくても、凍結防止弁体20が浴室内の温度に応じて水栓本体2内の水を少量ずつ外部に漏出させたり止水したりするように自動で切り替わる構成とされる。一方で、凍結防止装置8は、混合水栓1を一定期間使用しない場合等、不測の事態に備えて配管2A内の凍結をより確実に防止しておきたい時には、次の手順により配管2A内の水抜きを簡便に行えるようになっている。
【0030】
先ず、混合水栓1の上流側にある不図示の元栓を閉めて、水栓本体2への湯水の供給を停止する。次いで、
図3に示すように、使用者が手で凍結防止弁体20を水抜き弁体10との接続から外す。それにより、凍結防止弁体20による水抜き弁体10の止水状態が開放され、水栓本体2内の水が水抜き弁体10より外部へと排出される。
【0031】
このように、凍結防止装置8は、所望時に使用者が配管2A内の水抜きを手動で行うことが可能な構成とされる。凍結防止装置8は、水抜き弁体10から外された凍結防止弁体20を再び水抜き弁体10に手動で接続することで、水抜き弁体10を止水した元の状態に戻すことができる(
図1参照)。
【0032】
このように、凍結防止装置8は、水抜き弁体10を水栓本体2から取り外すことなく、凍結防止弁体20のみを水抜き弁体10に対して着脱することで、凍結防止機能する状態と水抜き機能する状態とに切り替えられるようになっている。すなわち、凍結防止装置8は、水栓本体2に対する着脱ではなく、水栓本体2に取り付けられた水抜き弁体10に対する凍結防止弁体20の着脱により、凍結防止機能と水抜き機能との切り替えを行える構成とされる。
【0033】
それにより、凍結防止装置8は、凍結防止機能と水抜き機能との切り替えを簡便に行えるようになっている。その理由は、次の通りである。すなわち、水栓本体2内を通る配管2Aは、設置スペースの都合上、その管壁が比較的肉薄となっている。それに対応して、
図2に示すように、配管2Aの管ねじ孔2Cに螺合される水抜き弁体10の管螺合部12も、ねじ部の長さL1が比較的短く形成されている。
【0034】
そのため、水抜き弁体10は、その管螺合部12を配管2Aの管ねじ孔2Cに螺合させる作業が比較的難しい構成となっている。しかしながら、凍結防止装置8は、水抜き弁体10を水栓本体2の配管2Aに一度取り付けてしまえば、その後は、凍結防止弁体20を水抜き弁体10に対して着脱するのみで、凍結防止機能と水抜き機能との切り替えを行うことができる。したがって、水抜き弁体10を水栓本体2の配管2Aに対して着脱する構成と比べて、機能の切り替えを簡便に行うことができる。
【0035】
(各部の構成について)
以下、凍結防止装置8の各部の具体的な構成について説明する。
図5~
図6に示すように、水抜き弁体10は、短尺な円管状の管本体11と、管本体11の図示上端から管本体11よりも小径な同心円筒状の形に延び出す管螺合部12と、を有する。管本体11の管内は、内周面に不図示の雌ねじが形成された弁ねじ孔11Aとされている。管螺合部12の外周面には、不図示の雄ねじが形成されている。
【0036】
管螺合部12の基端は、雄ねじがなく円環状に括れた形状とされる。この管螺合部12の括れた基端の外周部には、OリングR1が装着されている。
図2に示すように、水抜き弁体10は、管螺合部12を水栓本体2内の配管2Aの管ねじ孔2Cに下方から螺合させることで、配管2Aに対してOリングR1によりシールされた状態に流路接続される。
【0037】
図5~
図6に示すように、凍結防止弁体20は、有底円管状の本体ケース21と、本体ケース21の内部に設けられる感温式の切替弁体22と、を有する。本体ケース21は、第1管部21Aと第2管部21Bとに上下に2分割された構成とされる。
【0038】
第1管部21Aは、下向きに段々と管径が太くなる段付き円管形状に形成されている。第1管部21Aには、その図示上端に、水抜き弁体10の弁ねじ孔11Aに螺合させることが可能な弁螺合部A1が形成されている。弁螺合部A1は、第1管部21Aの図示上端から同心円筒状に延び出す形に形成されている。弁螺合部A1の外周面には、不図示の雄ねじが形成されている。弁螺合部A1は、そのねじ部の長さL2が、水抜き弁体10の管螺合部12のねじ部の長さL1よりも長い構成とされる。
【0039】
弁螺合部A1の基端は、雄ねじがなく円環状に括れた形状とされる。この弁螺合部A1の括れた基端の外周部には、OリングR2が装着されている。第1管部21Aは、弁螺合部A1を水抜き弁体10の弁ねじ孔11Aに下方から螺合させることで、水抜き弁体10に対してOリングR2によりシールされた状態に流路接続される。
【0040】
第2管部21Bは、略寸胴な有底円管形状に形成されている。第2管部21Bには、その底板の中心部に、水抜き弁体10の最小管内径よりも小径な孔形状に貫通する排出孔B1が形成されている。
【0041】
また、第2管部21Bの底板の上面には、排出孔B1の周縁に沿って環状に突出する弁座B2が形成されている。第2管部21Bの上部外周面には、不図示の雄ねじが形成されている。また、第1管部21Aの下部内周面には、不図示の雌ねじが形成されている。第2管部21Bは、第1管部21Aに下方から螺合されることで、その外周部に装着されたOリングR3を介して第1管部21Aとシールされた状態に流路接続される。
【0042】
切替弁体22は、本体ケース21の第1管部21Aに差し込まれ、第1管部21Aが第2管部21Bに組み付けられることで、これらの間に押し込まれた状態にセットされている。それにより、切替弁体22は、本体ケース21の管内に取り込まれる水と接触するように設けられている。切替弁体22は、その接触する水の温度変化によって排出孔B1を開いたり閉じたりするように管軸方向に自律的に動作する感温式の弁機構を備えた構成とされる。
【0043】
具体的には、切替弁体22は、管軸方向に延びる段付き丸棒形状の軸部22Aと、軸部22Aの図示下端部に設けられる弁部22Bと、を有する。また、切替弁体22は、軸部22Aに対して閉弁方向となる図示下方向のばね力を作用させる感温ばね22Cと、軸部22Aに対して開弁方向となる図示上方向のばね力を作用させるバイアスばね22Dと、を有する。
【0044】
軸部22Aは、その管軸方向の中間部に、管径方向の外側にフランジ状に張り出す鍔部A3を有する構成とされる。軸部22Aは、本体ケース21の管内にセットされることで、鍔部A3が第2管部21Bの管内に緩やかに嵌合した状態にセットされる。それにより、軸部22Aは、第2管部21Bの管内壁に沿って管軸方向にのみ摺動可能となるように外周側から支持される。
【0045】
軸部22Aは、その図示下方への移動により、弁部22Bが第2管部21Bの底板の弁座B2に押し当てられる。それにより、排出孔B1が外部に対して塞がれる。また、軸部22Aは、上記排出孔B1を塞ぐ位置から図示上方に移動することにより、弁部22Bが弁座B2から引き離されて、排出孔B1を外部に対して開放する。
【0046】
感温ばね22Cは、コイル状に巻かれた形状記憶合金製のばね部材から成る。感温ばね22Cは、軸部22Aの鍔部A3から図示上方に延びる棒部分に通されている。感温ばね22Cは、軸部22Aの鍔部A3と、第1管部21Aの管径を段差状に狭める係止座A2と、の間に押し挟まれた状態にセットされる。それにより、感温ばね22Cは、第1管部21Aの係止座A2を支点に、鍔部A3を図示下方に押圧するばね力を作用させる構成とされる。
【0047】
感温ばね22Cは、本体ケース21の管内に取り込まれて接触する水の温度に応じて、その硬さを変化させる特性を備える。具体的には、感温ばね22Cは、接触する水の温度が高くなるに連れて硬くなり、接触する水の温度が低くなるに連れて軟らかくなる特性を備える。したがって、感温ばね22Cは、接触する水の温度が高くなるに連れて軸部22Aを図示下方に押圧するばね力を強め、接触する水の温度が低くなるに連れてそのばね力を弱める。
【0048】
バイアスばね22Dも、コイル状に巻かれたばね部材から成る。バイアスばね22Dは、軸部22Aの鍔部A3から図示下方に延びる棒部分に通されている。バイアスばね22Dは、軸部22Aの鍔部A3と、第2管部21Bの底板部分から成る係止座B3と、の間に押し挟まれた状態にセットされる。それにより、バイアスばね22Dは、第2管部21Bの係止座B3を支点に、鍔部A3を図示上方に押圧するばね力を作用させる構成とされる。
【0049】
切替弁体22は、本体ケース21の管内に取り込まれる水の温度に応じて、次のように感温動作する。すなわち、切替弁体22は、浴室内の温度(外気)が所定温度以上となっていて本体ケース21の管内に取り込まれる水が凍結を生じない非低温となっている時には、感温ばね22Cがバイアスばね22Dのばね力に打ち勝つ硬さとなって軸部22Aを下方に押し下げる。それにより、切替弁体22は、弁部22Bにより排出孔B1を塞いでその状態に保持される。
【0050】
一方、切替弁体22は、浴室内の温度(外気)が所定温度未満となって本体ケース21の管内に取り込まれる水が凍結する温度に近づく非低温となる時には、感温ばね22Cがバイアスばね22Dのばね力に負ける軟らかさとなって軸部22Aを上方に押し上げる。それにより、切替弁体22は、弁部22Bが排出孔B1を開いてその状態に保持される。その結果、本体ケース21の管内に取り込まれた水が、排出孔B1から外部へと排出される。
【0051】
以上が、凍結防止弁体20の構成となっている。凍結防止弁体20は、その上端の弁螺合部A1を水抜き弁体10の弁ねじ孔11Aに下方から螺合させることで、水抜き弁体10と流路接続された状態に組み付けられる(
図5参照)。また、凍結防止弁体20は、弁螺合部A1を水抜き弁体10の弁ねじ孔11Aに対する螺合状態から逆向きに回すことで、水抜き弁体10から簡便に取り外すことができる(
図6参照)。
【0052】
図3に示すように、水抜き弁体10は、水栓本体2の配管2Aに螺合された状態では、凍結防止弁体20が螺合される弁ねじ孔11A(
図5~
図6参照)が水栓本体2の下面から下方に張り出す位置に設けられる。したがって、使用者が凍結防止弁体20を水抜き弁体10に対して着脱する際に、水抜き弁体10への差し込み位置や水抜き弁体10を残して凍結防止弁体20のみを外す方向に回している状態を目視確認しやすく、係る作業を簡便に行うことができる。
【0053】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る凍結防止装置8は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0054】
すなわち、凍結防止装置(8)は、水抜き弁体(10)と、凍結防止弁体(20)と、を有する。水抜き弁体(10)は、配管(2A)の管壁に形成される管ねじ孔(2C)に螺合される筒状の管螺合部(12)を備え、管ねじ孔(2C)への螺合により配管(2A)と流路接続される。凍結防止弁体(20)は、水抜き弁体(10)に形成される弁ねじ孔(11A)に螺合される筒状の弁螺合部(A1)を備え、弁ねじ孔(11A)への螺合により水抜き弁体(10)を介して配管(2A)と流路接続される。
【0055】
凍結防止弁体(20)は、配管(2A)から流れ出た水を外部へと排出可能な排出孔(B1)と、内部の温度変化に伴う管軸方向の感温動作により配管(2A)から排出孔(B1)へと至る流路の開閉を切り替える感温式の切替弁体(22)と、を有する。凍結防止弁体(20)が水抜き弁体(10)との螺合から外されることで、配管(2A)から水抜き弁体(10)に流れ出た水が堰き止められることなく外部へと排出される。
【0056】
上記構成によれば、凍結防止弁体(20)が配管(2A)に螺合される水抜き弁体(10)に対して螺合されたり外されたりすることで、凍結防止機能する状態と水抜き機能する状態とに切り替えられる。この切り替えに際し、水抜き弁体(10)を配管(2A)から取り外す必要がないことから、水抜き機能と凍結防止機能との切り替えを簡便に行うことが可能となる。その理由は、例えば、配管(2A)が肉薄で管螺合部(12)のねじ部の長さ(L1)が短いような螺合の作業が難しい構成であっても、これらの螺合作業を要することなく、水抜き機能と凍結防止機能との切り替えを行えるからである。
【0057】
また、弁螺合部(A1)が、管螺合部(12)よりもねじ部の長さが長い。上記構成によれば、水抜き弁体(10)の管螺合部(12)を配管(2A)の管ねじ孔(2C)に螺合するよりも簡単に、凍結防止弁体(20)の弁螺合部(A1)を水抜き弁体(10)の弁ねじ孔(11A)に螺合することができる。
【0058】
また、切替弁体(22)が、排出孔(B1)を上流側から開閉する。上記構成によれば、切替弁体(22)を、排出孔(B1)を塞いだ凍結防止弁体(20)の内部に留まる水の温度低下に伴って感温動作させることができる。それにより、切替弁体(22)の温度変化に対する動作をより安定させることができる。
【0059】
また、配管(2A)が、混合水栓(1)の水栓本体(2)の内部に設けられる。水抜き弁体(10)が、水栓本体(2)の下面に形成された差込口(2B)に下方から差し込まれて配管(2A)の管ねじ孔(2C)に螺合され、管ねじ孔(2C)への螺合により弁ねじ孔(11A)が水栓本体(2)の下面から下方に張り出す位置に設けられる。
【0060】
上記構成によれば、水抜き弁体(10)の弁ねじ孔(11A)が水栓本体(2)の下面から下方に張り出す位置に設けられることで、凍結防止弁体(20)の水抜き弁体(10)への差し込み位置を目視確認しやすくなる。また、凍結防止弁体(20)を水栓本体(2)の内部に差し込むことなく、水栓本体(2)から下方に張り出す水抜き弁体(10)との螺合により配管(2A)に流路接続することができる。それにより、凍結防止弁体(20)を水抜き弁体(10)に対してより簡便に螺合することができる。
【0061】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0062】
1.本発明の凍結防止装置は、浴室用の混合水栓の他、キッチンや洗面台に設けられる混合水栓に取り付けられるものであっても良い。また、凍結防止装置は、混合水栓の他、単水栓や屋外に設けられる水栓柱や散水栓に取り付けられるものであっても良い。また、凍結防止装置は、混合水栓や単水栓等の水栓金具自体の他、水栓金具へと至る給水路を成す配管に対して取り付けられるものであっても良い。
【0063】
2.凍結防止弁体を構成する感温式の切替弁体は、上記実施形態で示したように、切替弁体が排出孔より上流側に位置して排出孔を上流側から開閉するものの他、特開2021-42799号公報等の文献に開示されるように、切替弁体が排出孔より下流側に位置して排出孔を下流側から開閉するものであっても良い。
【0064】
後者の場合、感温式の切替弁体は、本体ケースに形成される排出口等の開口から取り込まれる外気との接触により、外気の温度変化に応じて感温動作する構成となる。また、感温式の切替弁体は、感温ばねの他、ワックスタイプのサーモエレメントの作用により感温動作するものであっても良い。
【0065】
3.弁螺合部は、管螺合部とねじ部の長さが同一であっても構わない。そのような構成であっても、凍結防止弁体を配管に取り付けた水抜き弁体に対して着脱する構成とすることで、例えば上記実施形態で示したように水抜き弁体が混合水栓の下面に取り付けられる場合には、水抜き弁体が水栓本体の下面から突出することで、使用者が凍結防止弁体の取り付け先(水抜き弁)を目視確認しやすく、凍結防止弁体の着脱作業を簡便にすることができる。
【0066】
そういった意味では、弁螺合部は、管螺合部よりもねじ部の長さが短い構成であっても構わない。その場合には、凍結防止弁体の弁螺合部を水抜き弁体の弁ねじ孔に螺合する作業そのものは、水抜き弁体の管螺合部を配管の管ねじ孔に螺合する作業よりも難しくなるが、水抜き弁体が水栓本体の下面から突出することで、使用者が凍結防止弁体の取り付け先(水抜き弁)を目視確認しやすいため、凍結防止弁体の着脱作業を簡便にすることができる。
【0067】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1…混合水栓、2…水栓本体、2A…配管、2B…差込口、2C…管ねじ孔、3…偏心管、4…温度調節ハンドル、5…切替ハンドル、7…カラン、8…凍結防止装置、10…水抜き弁体、11…管本体、11A…弁ねじ孔、12…管螺合部、20…凍結防止弁体、21…本体ケース、21A…第1管部、A1…弁螺合部、A2…係止座、21B…第2管部、B1…排出孔、B2…弁座、B3…係止座、22…切替弁体、22A…軸部、A3…鍔部、22B…弁部、22C…感温ばね、22D…バイアスばね、R1~R3…Oリング、W…壁面、L1…長さ、L2…長さ