IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特開-システム及び制御方法 図1
  • 特開-システム及び制御方法 図2
  • 特開-システム及び制御方法 図3
  • 特開-システム及び制御方法 図4
  • 特開-システム及び制御方法 図5
  • 特開-システム及び制御方法 図6
  • 特開-システム及び制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117362
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20240822BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20240822BHJP
   F01N 3/021 20060101ALI20240822BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F01M13/00 B
F01M13/00 M
F01M13/00 F
F01M13/00 G
F02D19/02 B
F01N3/021
F02M21/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023423
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷間 啓介
【テーマコード(参考)】
3G015
3G092
3G190
【Fターム(参考)】
3G015AA13
3G015BA00
3G015BD10
3G015BD11
3G015BD16
3G015BD23
3G015BD24
3G015BG08
3G015CA04
3G015CA06
3G092AA18
3G092AB02
3G092AB09
3G092AB12
3G092DF02
3G092DF09
3G092DF10
3G092EA29
3G190CA01
3G190CB41
(57)【要約】
【課題】クランクケースの内部で水素ガスが着火することを防止し、かつ、コストや信頼性の悪化を抑制する。
【解決手段】システムは、水素を含む燃料での運転が可能なエンジンのクランクケース及びシリンダヘッドと、前記エンジンへ空気を吸入するエンジン吸気通路と、前記エンジン吸気通路から分岐し、前記クランクケースへ空気を導入するクランクケース吸気通路と、前記クランクケース吸気通路に配置され、前記クランクケース吸気通路を開閉する希釈空気バルブと、前記エンジン吸気通路から前記クランクケース吸気通路へ分岐する分岐部の上流に配置されたコンプレッサと、前記クランクケースの内部の水素濃度を検出する水素センサと、前記クランクケースの内部と前記シリンダヘッドの内部とを連通させる連通経路と、前記水素センサが検出した前記水素濃度に基づいて前記希釈空気バルブの開閉を制御する制御装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む燃料での運転が可能なエンジンを含むシステムであって、
前記エンジンのクランクケース及びシリンダヘッドと、
前記エンジンへ空気を吸入するエンジン吸気通路と、
前記エンジン吸気通路から分岐し、前記クランクケースへ空気を導入するクランクケース吸気通路と、
前記クランクケース吸気通路に配置され、前記クランクケース吸気通路を開閉する希釈空気バルブと、
前記クランクケース吸気通路において前記希釈空気バルブの下流に配置された減圧弁と、
前記エンジン吸気通路から前記クランクケース吸気通路へ分岐する分岐部の上流に配置されたコンプレッサと、
前記クランクケースの内部の水素濃度を検出する水素センサと、
前記クランクケースの内部と前記シリンダヘッドの内部とを連通させる連通経路と、
前記水素センサが検出した前記水素濃度に基づいて前記希釈空気バルブの開閉を制御する制御装置と、を備える、
システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記水素センサが検出した前記水素濃度が閾値以上になった場合に、前記希釈空気バルブを所定以上に開く制御を行う、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの下流かつ前記分岐部の上流に配置された吸気スロットルと、
前記クランクケース吸気通路において前記減圧弁の下流に配置され、前記減圧弁から前記クランクケースの内部へ向かう気体流れのみを許容する第1チェック弁と、
前記クランクケース吸気通路において前記希釈空気バルブと前記減圧弁との間の部分から分岐し、前記クランクケースの内部に連通するクランクケース連絡通路と、
前記クランクケース連絡通路に配置され、前記クランクケースの内部から前記クランクケース吸気通路へ向かう気体流れのみを許容する第2チェック弁と、を更に備える、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記シリンダヘッドの内部と前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から分岐し、前記シリンダヘッドの内部の空気を排出するシリンダヘッド排気通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から前記シリンダヘッド排気通路へ分岐する分岐部に配置され、前記シリンダヘッド排気通路が大気開放する第1経路と前記シリンダヘッド連絡通路が前記コンプレッサの上流に通じる第2経路とを切替する切替バルブと、を更に備える、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記水素センサが検出した前記水素濃度が閾値以上になった場合に、前記切替バルブに前記第2経路へ切替させる制御を行う、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記シリンダヘッドの内部と前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路に配置されるフィルタと、を更に備える、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記水素センサは、前記シリンダヘッド連絡通路において前記フィルタの下流に配置される、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記クランクケースの内部の圧力が所定以上になる前に前記クランクケースの内部の空気を逃がす圧力逃がし弁を更に備える、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項9】
水素を含む燃料での運転が可能なエンジンを含むシステムの制御方法であって、
前記システムは、
前記エンジンのクランクケース及びシリンダヘッドと、
前記エンジンへ空気を吸入するエンジン吸気通路と、
前記エンジン吸気通路から分岐し、前記クランクケースへ空気を導入するクランクケース吸気通路と、
前記クランクケース吸気通路に配置され、前記クランクケース吸気通路を開閉する希釈空気バルブと、
前記クランクケース吸気通路において前記希釈空気バルブの下流に配置された減圧弁と、
前記エンジン吸気通路から前記クランクケース吸気通路へ分岐する分岐部の上流に配置されたコンプレッサと、
前記クランクケースの内部の水素濃度を検出する水素センサと、
前記クランクケースの内部と前記シリンダヘッドの内部とを連通させる連通経路と、を備え、
前記制御方法は、
前記クランクケースの内部の水素濃度を取得する水素濃度取得ステップと、
前記水素濃度が閾値以上か否かを判定する水素濃度判定ステップと、
前記水素濃度が閾値以上であると判定した場合に前記希釈空気バルブを開くバルブ開ステップと、
前記水素濃度が閾値未満であると判定した場合に前記希釈空気バルブを閉じるバルブ閉ステップと、を含む、
制御方法。
【請求項10】
前記システムは、
前記シリンダヘッドの内部と前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から分岐し、前記シリンダヘッドの内部の空気を排出するシリンダヘッド排気通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から前記シリンダヘッド排気通路へ分岐する分岐部に配置され、前記シリンダヘッド排気通路が大気開放する第1経路と前記シリンダヘッド連絡通路が前記コンプレッサの上流に通じる第2経路とを切替する切替バルブと、を更に備え、
前記制御方法は、
前記水素濃度が閾値以上であると判定した場合に、前記切替バルブに前記第2経路へ切替させる第2経路切替ステップと、
前記水素濃度が閾値未満であると判定した場合に、前記切替バルブに前記第1経路へ切替させる第1経路切替ステップと、を含む、
請求項9に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンでは、シリンダとピストンとの間を抜けて燃焼室の気体がクランクケースに漏れ出る場合がある。この漏れ出る気体は、ブローバイガスと呼ばれている。エンジンとしては、水素を含む燃料での運転が可能なエンジンがある。水素ガスは、天然ガスやガソリン等の他の燃料に比べて可燃範囲が非常に広く、理論空燃比の10倍に希釈されても着火する。そのため、水素を含む燃料を使用するエンジンでは、クランクケースの内部において水素ガスの濃度が着火可能な程度に維持される可能性がある。そこで、水素を含む燃料での運転が可能なエンジンにおいて、クランクケースの内部で水素ガスが着火することを防止する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、水素ガスを含む燃料での運転が可能な4ストロークエンジンが開示されている。このエンジンは、換気口が形成されたクランクケースと、クランクケースの外部と換気口とを連絡する換気流路と、換気流路に設けられた換気ファンと、を備える。換気ファンは、クランクケースの内部における水素ガスの濃度が可燃範囲の下限値を下回ることができる量の水素ガスを、水素ガス以外の気体とともにクランクケースの内部から外部へ強制的に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-127704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、新規で換気ファンの設置が必要となり、コストや信頼性が悪化する可能性が高い。そのため、コストや信頼性の悪化を抑制する上で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、クランクケースの内部で水素ガスが着火することを防止し、かつ、コストや信頼性の悪化を抑制することができるシステム及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るシステムは、水素を含む燃料での運転が可能なエンジンを含むシステムであって、前記エンジンのクランクケース及びシリンダヘッドと、前記エンジンへ空気を吸入するエンジン吸気通路と、前記エンジン吸気通路から分岐し、前記クランクケースへ空気を導入するクランクケース吸気通路と、前記クランクケース吸気通路に配置され、前記クランクケース吸気通路を開閉する希釈空気バルブと、前記クランクケース吸気通路において前記希釈空気バルブの下流に配置された減圧弁と、前記エンジン吸気通路から前記クランクケース吸気通路へ分岐する分岐部の上流に配置されたコンプレッサと、前記クランクケースの内部の水素濃度を検出する水素センサと、前記クランクケースの内部と前記シリンダヘッドの内部とを連通させる連通経路と、前記水素センサが検出した前記水素濃度に基づいて前記希釈空気バルブの開閉を制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、クランクケースの内部で水素ガスが着火することを防止し、かつ、コストや信頼性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るシステムの概略構成図。
図2】第1実施形態に係るシステムの制御方法の一例のフローチャート。
図3】第2実施形態に係るシステムの概略構成図。
図4】第3実施形態に係るシステムの概略構成図。
図5】第3実施形態に係るシステムの制御方法の一例のフローチャート。
図6】第4実施形態に係るシステムの概略構成図。
図7】第4実施形態に係るシステムの制御方法の一例のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、システムを構成するエンジンとして、水素エンジン(水素を含む燃料での運転が可能なエンジンの一例)を挙げて説明する。
【0011】
<第1実施形態>
<システム>
図1は、第1実施形態に係るシステム1の概略構成図である。
図1に示すように、システム1は、水素エンジン2(以下単に「エンジン2」ともいう。)を備える。例えば、エンジン2は、水素を含む燃料での運転が可能であるとともに、水素を含まない燃料での運転も可能であってもよい。なお、水素を含む燃料には、燃料の一部が水素ガスであるものと、燃料の全部が水素ガスであるもの(すなわち水素ガスそのもの)とが含まれる。また、エンジン2の用途は特に限定されず、車両等の駆動用でもよいし、発電用であってもよい。例えば、エンジン2の用途は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0012】
エンジン2は、シリンダ11及びクランクケース12を含むシリンダブロック10と、シリンダブロック10の上方に位置するシリンダヘッド13と、シリンダ11の内部を往復移動しコネクティングロッド14を介してクランクシャフト(不図示)を駆動するピストン15と、を備える。
【0013】
エンジン2は、シリンダ11の内周面、ピストン15の上面、及び、シリンダヘッド13の下面によって区画された燃焼室20を備える。シリンダヘッド13には、燃焼室20に開口する吸気ポート21及び排気ポート22が形成される。シリンダヘッド13には、吸気ポート21の燃焼室20に開口する部分を開閉する吸気弁23と、排気ポート22の燃焼室20に開口する部分を開閉する排気弁24と、が設けられる。シリンダヘッド13には、燃焼室20の燃料に着火する点火装置25が設けられてもよい。
【0014】
エンジン2には、燃焼室20に燃料として水素を噴射する水素噴射装置26が設けられてもよい。図の例では、水素噴射装置26は、エンジン吸気通路30に設けられるが、これに限定されない。例えば、水素噴射装置26は、シリンダヘッド13に設けられてもよい。なお、水素噴射装置26をシリンダヘッド13に設けるとともに、ディーゼル又はガソリンの噴射装置をシリンダヘッド13に設けてもよい。例えば、水素噴射装置26の設置場所、他の噴射装置との組み合わせ等は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0015】
システム1は、エンジン2へ空気を吸入するエンジン吸気通路30と、エンジン2から排気ガスを排出するエンジン排気通路31と、を備える。エンジン吸気通路30は、吸気ポート21に接続されている。エンジン排気通路31は、排気ポート22に接続されている。
【0016】
システム1は、エンジン吸気通路30から分岐し、クランクケース12へ空気を導入するクランクケース吸気通路32を備える。クランクケース吸気通路32は、クランクケース12において吸気ポート21側の部分に接続されている。なお、クランクケース吸気通路32の接続場所は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0017】
システム1は、エンジン2が吸入する空気の密度を高めるターボチャージャ40を備える。これにより、より多くの酸素を燃焼室20に送り、より高い燃焼エネルギーを得ることができる。ターボチャージャ40は、排気の流れを受けて回転するタービン41と、タービン41の回転力を伝達するシャフト42と、シャフト42により伝達された回転力で空気を取り込んで圧縮するコンプレッサ43と、を備える。
【0018】
例えば、タービン41及びコンプレッサ43は、シャフト42を介して一体回転可能に連結されている。タービン41は、エンジン排気通路31に設けられる。コンプレッサ43は、エンジン吸気通路30に設けられる。コンプレッサ43は、エンジン吸気通路30からクランクケース吸気通路32へ分岐する分岐部34の上流に配置される。コンプレッサ43によりエンジン吸気通路30を流れる吸気が圧送されることで、吸気がエンジン2の燃焼室20に強制的に送り込まれる。
【0019】
エンジン吸気通路30には、吸気流れ方向上流側から順に、吸気を濾過するエアクリーナ50と、コンプレッサ43と、雰囲気との熱交換により吸気の温度を低下させるアフタークーラ51と、が設けられる。図示はしないが、エンジン吸気通路30においてアフタークーラ51の下流かつ分岐部34の上流には、エンジン吸気通路30を開閉する吸気スロットルが設けられてもよい。なお、吸気スロットルは、エンジン吸気通路30の通路断面積を可変設定する絞り弁として機能する。
【0020】
システム1は、クランクケース12の内部とシリンダヘッド13の内部とを連通させる連通経路35を備える。例えば、連通経路35は、シリンダヘッド13のバルブ系の駆動のために流れるオイル(例えば、潤滑油等)の通路(例えば、オイルの戻り孔等)であってもよい。図の例では、連通経路35は、シリンダヘッド13の側部を上下方向に延びている。連通経路35は、シリンダヘッド13において排気ポート22側の部分と、クランクケース12において排気ポート22側の部分とに接続されている。なお、連通経路35の接続場所は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0021】
システム1は、クランクケース吸気通路32に配置され、クランクケース吸気通路32を開閉する希釈空気バルブ55を備える。希釈空気バルブ55は、クランクケース吸気通路32の通路断面積を可変設定する絞り弁として機能する。
【0022】
システム1は、クランクケース吸気通路32を流れる吸気の圧力を所定以下に低下させる減圧弁56を備える。減圧弁56は、クランクケース吸気通路32において希釈空気バルブ55の下流に配置される。クランクケース吸気通路32には、吸気流れ方向上流側から順に、希釈空気バルブ55と、減圧弁56と、が設けられる。
【0023】
システム1は、クランクケース12の内部の水素濃度を検出する水素センサ60を備える。図の例では、水素センサ60は、クランクケース12において排気ポート22側の部分の下部近傍に設けられる。なお、水素センサ60の設置場所は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0024】
エンジン2では、吸入工程、圧縮工程、燃焼膨張行程及び排気工程が繰り返される。吸入工程では、燃焼室20には吸気ガスと燃料とが混ざり合った混合ガスが満たされる。混合ガスの一部は、主に圧縮工程と燃焼膨張行程とにおいて、シリンダ11とピストン15との間を通ってクランクケース12内に漏れ出る。水素を含む燃料が使用される場合、クランクケース12の内部には水素ガスが侵入することになる。水素センサ60は、侵入した水素ガスの濃度(クランクケース12の内部の水素濃度)を検出する。水素センサ60の検出信号(検出した水素濃度)は、制御装置3(図のECU)に送られる。
【0025】
システム1は、水素センサ60が検出した水素濃度に基づいて希釈空気バルブ55の開閉を制御する制御装置3を備える。制御装置3は、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になった場合に、希釈空気バルブ55を所定以上に開く制御を行う。なお、制御装置3は、システム1の構成要素を統括的に制御してもよい。
【0026】
システム1は、クランクケース12の内部の圧力が所定以上になる前にクランクケース12の内部の空気を逃がす圧力逃がし弁61を備える。図の例では、圧力逃がし弁61は、クランクケース12において連通経路35が接続された部分の下部近傍に設けられる。なお、圧力逃がし弁61の設置場所は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0027】
システム1は、シリンダヘッド13の内部とエンジン吸気通路30においてコンプレッサ43の上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路70を備える。図の例では、シリンダヘッド連絡通路70は、シリンダヘッド13の上面中央部と、エンジン吸気通路30においてエアクリーナ50とコンプレッサ43との間の部分とに接続されている。なお、シリンダヘッド連絡通路70の設置場所は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0028】
本実施形態では、連通経路35は、クランクケース12の内部とシリンダヘッド13の内部とを連通させる。これにより、クランクケース12の内部にコンプレッサ43で圧縮された空気を導入し、連通経路35によりクランクケース12からシリンダヘッド13に向けて空気の流れを作ることができる。更に本実施形態では、シリンダヘッド連絡通路70は、シリンダヘッド13の内部とエンジン吸気通路30においてコンプレッサ43の上流とを連通させる。これにより、シリンダヘッド13からコンプレッサ43の上流に向けて空気の流れを作ることができる。なお、図中矢印は、希釈空気の流れを示す。
【0029】
システム1は、シリンダヘッド連絡通路70に配置されるフィルタ71を備える。フィルタ71は、排気を濾過する。例えば、フィルタ71は、シリンダヘッド13の内部からの排気に含まれる成分を除去(捕集)する。排気に含まれる成分には、粒子状物質(PM)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、硫黄酸化物(SOx)等が含まれる。例えば、排気に含まれる成分には、オイルミスト等も含まれる。
【0030】
<システムの制御方法の一例>
図2は、第1実施形態に係るシステム1の制御方法の一例のフローチャートである。システム1の制御方法は、制御装置3が実行する着火防止プログラムに相当する。
本実施形態の制御方法は、クランクケース12の内部の水素濃度を取得する水素濃度取得ステップ(ステップS1)と、水素濃度が閾値以上か否かを判定する水素濃度判定ステップ(ステップS2)と、水素濃度が閾値以上であると判定した場合に希釈空気バルブ55を開くバルブ開ステップ(ステップS3)と、水素濃度が閾値未満であると判定した場合に希釈空気バルブ55を閉じるバルブ閉ステップ(ステップS4)と、を含む。
【0031】
図2を併せて参照し、先ず、クランクケース12内の水素濃度を取得する(ステップS1)。例えば、ステップS1では、制御装置3は、水素センサ60の検出信号(検出した水素濃度)を取得する。ステップS1の後、ステップS2に移行する。
【0032】
ステップS2では、制御装置3は、水素濃度が閾値以上か否かを判定する。閾値は、水素ガスの可燃範囲の下限値に設定される。なお、閾値は、水素ガスの下限値よりも所定量低い値に設定されてもよい。
【0033】
例えば、空気中における水素ガスの可燃範囲は約4vol%以上75vol%以下である。そのため、クランクケース12の内部が水素ガスと空気とで満たされているとすると、可変範囲の下限値は4vol%となる。この場合、閾値は4vol%に設定される。なお、閾値は、ある程度余裕を持たせて4vol%よりも低い値(例えば3vol%)に設定されてもよい。
【0034】
水素濃度が閾値以上であると判定した場合は(ステップS2のYES)、ステップS3に移行する。水素濃度が閾値以上であると判定した場合は、クランクケース12の内部において水素ガスが着火するおそれがある。
一方、水素濃度が閾値以上でないと判定した場合(すなわち、水素濃度が閾値未満と判定した場合)は(ステップS2のNO)、ステップS4に移行する。
【0035】
ステップS3では、希釈空気バルブ55を開く。例えば、ステップS3では、制御装置3は、希釈空気バルブ55を所定以上に開く制御を行う。ステップS3の後、ステップS5に移行する。
【0036】
ステップS4では、希釈空気バルブ55を閉じる。例えば、ステップS4では、制御装置3は、希釈空気バルブ55を完全に閉じる制御を行う。ステップS4の後、ステップS5に移行する。
【0037】
ステップS5では、制御装置3は、エンジン2の運転が終了したか否かを判定する。エンジン2の運転が終了したと判定した場合は(ステップS5のYES)、ステップS6に移行する。一方、エンジン2の運転が終了していないと判定した場合(ステップS5のNO)、ステップS1に戻り、エンジン2の運転が終了するまでステップS1からS5を繰り返す。
【0038】
ステップS6では、希釈空気バルブ55を閉じる。例えば、ステップS6では、制御装置3は、希釈空気バルブ55を完全に閉じる制御を行う。
以上により、システム1の制御方法のフローが終了する。
【0039】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のシステム1は、水素を含む燃料での運転が可能なエンジン2を含むシステム1である。システム1は、エンジン2のクランクケース12及びシリンダヘッド13と、エンジン2へ空気を吸入するエンジン吸気通路30と、エンジン吸気通路30から分岐し、クランクケース12へ空気を導入するクランクケース吸気通路32と、クランクケース吸気通路32に配置され、クランクケース吸気通路32を開閉する希釈空気バルブ55と、クランクケース吸気通路32において希釈空気バルブ55の下流に配置された減圧弁56と、エンジン吸気通路30からクランクケース吸気通路32へ分岐する分岐部34の上流に配置されたコンプレッサ43と、クランクケース12の内部の水素濃度を検出する水素センサ60と、クランクケース12の内部とシリンダヘッド13の内部とを連通させる連通経路35と、水素センサ60が検出した水素濃度に基づいて希釈空気バルブ55の開閉を制御する制御装置3と、を備える。
この構成によれば、コンプレッサ43で圧縮された空気をクランクケース12の内部へ導入しつつ、水素センサ60が検出した水素濃度に基づいて希釈空気バルブ55の開閉を制御することができる。これにより、クランクケース12の内部の水素濃度を調整することができる。加えて、コンプレッサ43で圧縮された空気を使用するため、吸い込み用のファン等を必要とせず、既存のエンジン2において最小限の追加部品で構成できる。そのため、コストや信頼性が悪化する可能性は低い。したがって、クランクケース12の内部で水素ガスが着火することを防止し、かつ、コストや信頼性の悪化を抑制することができる。
加えて、クランクケース12の内部の水素濃度センシングにより希釈空気バルブ55を動作させることで、ブローバイガスの換気が断続的になる。そのため、必要最低限の希釈空気の量で済む。
加えて、クランクケース吸気通路32において希釈空気バルブ55の下流に配置された減圧弁56により、クランクケース吸気通路32を流れる吸気の圧力を所定以下に低下させることで、クランクケース12の内部の圧力が上がり過ぎることを防止することができる。そのため、クランクケース12に設けられるオイルシールの抜け等を防止することができる。
加えて、クランクケース12の内部とシリンダヘッド13の内部とを連通させる連通経路35により、クランクケース12からシリンダヘッド13に向けて空気の流れを作ることができる。したがって、ブローバイガスの希釈効率を向上させることができる。
加えて、水素ガスは空気よりも軽いため、エンジン2の上部に位置するシリンダヘッド13に向けてクランクケース12の内部から水素ガスを円滑に流すことができる。したがって、クランクケース12の内部で水素ガスが着火することをより確実に防止することができる。
【0040】
本実施形態では、制御装置3は、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になった場合に、希釈空気バルブ55を所定以上に開く制御を行う。
この構成によれば、コンプレッサ43で圧縮された空気をクランクケース12の内部へ導入しつつ、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になった場合に希釈空気バルブ55を所定以上に開くことができる。これにより、クランクケース12の内部の水素濃度を可燃範囲外にすることができる。したがって、クランクケース12の内部で水素ガスが着火することをより確実に防止することができる。
【0041】
本実施形態では、システム1は、シリンダヘッド13の内部とエンジン吸気通路31においてコンプレッサ43の上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路70と、シリンダヘッド連絡通路70に配置されるフィルタ71と、を備える。
この構成によれば、フィルタ71によりシリンダヘッド連絡通路70からの排気を清浄化することができる。そのため、排気に含まれる成分等(例えば、オイルミスト等)でコンプレッサ43が汚れることを防止することができる。
【0042】
本実施形態では、システム1は、クランクケース12の内部の圧力が所定以上になる前にクランクケース12の内部の空気を逃がす圧力逃がし弁61を備える。
この構成によれば、圧力逃がし弁61により、クランクケース12の内部の圧力が上がり過ぎることを防止することができる。そのため、クランクケース12に設けられるオイルシールの抜け等を防止することができる。
【0043】
本実施形態では、制御方法は、クランクケース12の内部の水素濃度を取得する水素濃度取得ステップ(ステップS1)と、水素濃度が閾値以上か否かを判定する水素濃度判定ステップ(ステップS2)と、水素濃度が閾値以上であると判定した場合に希釈空気バルブ55を開くバルブ開ステップ(ステップS3)と、水素濃度が閾値未満であると判定した場合に希釈空気バルブ55を閉じるバルブ閉ステップ(ステップS4)と、を含む。
この方法によれば、クランクケース12の内部で水素ガスが着火することを防止し、かつ、コストや信頼性の悪化を抑制することができる。
加えて、バルブ開ステップとバルブ閉ステップとを含むことで、ブローバイガスの換気が断続的になる。そのため、必要最低限の希釈空気の量で済む。
加えて、バルブ開ステップにより、クランクケース12の内部の水素濃度を可燃範囲外にすることができる。したがって、クランクケース12の内部で水素ガスが着火することをより確実に防止することができる。
【0044】
<第2実施形態>
第1実施形態では、クランクケース吸気通路32には吸気流れ方向上流側から順に希釈空気バルブ55と減圧弁56とが設けられる例を挙げて説明した。第2実施形態では、クランクケース吸気通路32において希釈空気バルブ55と減圧弁56との間の部分から分岐し、クランクケース12の内部に連通するクランクケース連絡通路282等を備える点で第1実施形態と相違している。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図3は、第2実施形態に係るシステム201の概略構成図である。
図3に示すように、システム201は、エンジン吸気通路30においてコンプレッサ43の下流かつ分岐部の上流に配置された吸気スロットル280と、クランクケース吸気通路32において減圧弁56の下流に配置され、減圧弁56からクランクケース12の内部へ向かう気体流れのみを許容する第1チェック弁281と、クランクケース吸気通路32において希釈空気バルブ55と減圧弁56との間の部分から分岐し、クランクケース12の内部に連通するクランクケース連絡通路282と、クランクケース連絡通路282に配置され、クランクケース12の内部からクランクケース吸気通路32へ向かう気体流れのみを許容する第2チェック弁283と、を備える。
【0046】
吸気スロットル280は、エンジン吸気通路30においてアフタークーラ51の下流かつ分岐部34の上流に設けられる。吸気スロットル280は、エンジン吸気通路30を開閉するバルブである。吸気スロットル280は、エンジン吸気通路30の通路断面積を可変設定する絞り弁として機能する。
【0047】
第1チェック弁281は、クランクケース吸気通路32においてクランクケース12の内部から減圧弁56へ向かう気体流れは制限し、減圧弁56からクランクケース12の内部へ向かう気体流れは許容する。例えば、第1チェック弁281は、ばね付き(ばねによって閉位置に保持する)でもよいし、ばね無しでもよい。例えば、第1チェック弁281の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0048】
図の例では、クランクケース連絡通路282は、クランクケース吸気通路32において希釈空気バルブ55と減圧弁56との間の部分と、クランクケース12において吸気ポート21側の部分(クランクケース吸気通路32が接続された部分)の下部近傍とに接続されている。なお、クランクケース連絡通路282の接続場所は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0049】
第2チェック弁283は、クランクケース連絡通路282においてクランクケース12の内部へ向かう気体流れは制限し、クランクケース12の内部からクランクケース吸気通路32へ向かう気体流れは許容する。例えば、第2チェック弁283は、ばね付き(ばねによって閉位置に保持する)でもよいし、ばね無しでもよい。例えば、第2チェック弁283の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0050】
<過給時の流れ>
例えば、過給時においては、吸気の正圧を用いて、クランクケース12の内部の混合気を希釈することができる。図の例では、過給時の流れの矢印に示すように、クランクケース吸気通路32等を通じて、クランクケース12の内部にコンプレッサ43で圧縮された空気を導入し、連通経路35によりクランクケース12からシリンダヘッド13に向けて空気の流れを作ることができる。更に、シリンダヘッド連絡通路70を通じて、シリンダヘッド13からコンプレッサ43の上流に向けて空気の流れを作ることができる。
【0051】
<非過給時の流れ>
例えば、非過給時においては、吸気が負圧の場合でも、クランクケース12の内部の混合気を希釈することができる。非過給時は、吸気スロットル280が作動している場合に相当する。吸気スロットル280が作動して負圧になると、過給時の流れとは逆になる。図の例では、非過給時の流れの矢印に示すように、シリンダヘッド連絡通路70を通じて、コンプレッサ43の上流からシリンダヘッド13に向けて空気の流れを作ることができる。また、連通経路35を通じて、シリンダヘッド13からクランクケース12に向けて空気の流れを作ることができる。更に、クランクケース連絡通路282等を通じて、クランクケース12から吸気スロットル280の下流に向けて空気の流れを作ることができる。
【0052】
<作用効果>
本実施形態では、システム201は、エンジン吸気通路30においてコンプレッサ43の下流かつ分岐部の上流に配置された吸気スロットル280と、クランクケース吸気通路32において減圧弁56の下流に配置され、減圧弁56からクランクケース12の内部へ向かう気体流れのみを許容する第1チェック弁281と、クランクケース吸気通路32において希釈空気バルブ55と減圧弁56との間の部分から分岐し、クランクケース12の内部に連通するクランクケース連絡通路282と、クランクケース連絡通路282に配置され、クランクケース12の内部からクランクケース吸気通路32へ向かう気体流れのみを許容する第2チェック弁283と、を備える。
この構成によれば、過給時にはクランクケース吸気通路32等を通じて、クランクケース12の内部にコンプレッサ43で圧縮された空気を導入し、連通経路35によりクランクケース12からシリンダヘッド13に向けて空気の流れを作ることができる。一方、非過給時にはクランクケース連絡通路282等を通じて、クランクケース12から吸気スロットル280の下流に向けて空気の流れを作ることができる。したがって、吸気の正圧又は負圧により、クランクケース12の内部の混合気を希釈することができる。
【0053】
<第3実施形態>
第1実施形態では、シリンダヘッド連絡通路70にはフィルタ71が設けられる例を挙げて説明した。第3実施形態では、シリンダヘッド連絡通路70から分岐し、シリンダヘッド13の内部の空気を排出するシリンダヘッド排気通路390等を備える点で第1実施形態と相違している。以下の説明において、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
図4は、第3実施形態に係るシステム301の概略構成図である。
図4に示すように、システム301は、シリンダヘッド連絡通路70から分岐し、シリンダヘッド13の内部の空気を排出するシリンダヘッド排気通路390と、シリンダヘッド連絡通路70からシリンダヘッド排気通路390へ分岐する分岐部391に配置され、シリンダヘッド排気通路390が大気開放する第1経路V1とシリンダヘッド連絡通路70がコンプレッサ43の上流に通じる第2経路V2とを切替する切替バルブ392と、を備える。
【0055】
制御装置3は、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になった場合に、切替バルブ392に第2経路V2へ切替させる制御を行う。制御装置3は、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になっていない場合(すなわち、水素濃度が閾値未満の場合)は、切替バルブ392に第1経路V1へ切替させる制御を行う。
【0056】
<システムの制御方法の一例>
図5は、第3実施形態に係るシステム301の制御方法の一例のフローチャートである。システム301の制御方法は、制御装置3が実行する着火防止プログラムに相当する。
本実施形態の制御方法は、水素濃度が閾値以上であると判定した場合に、切替バルブ392に第2経路V2へ切替させる第2経路切替ステップ(ステップS303)と、水素濃度が閾値未満であると判定した場合に、切替バルブ392に第1経路V1へ切替させる第1経路切替ステップ(ステップS304)と、を含む。
【0057】
図5を併せて参照し、先ず、クランクケース12内の水素濃度を取得する(ステップS301)。例えば、ステップS301では、制御装置3は、水素センサ60の検出信号(検出した水素濃度)を取得する。ステップS301の後、ステップS302に移行する。
【0058】
ステップS302では、制御装置3は、水素濃度が閾値以上か否かを判定する。閾値は、水素ガスの可燃範囲の下限値(例えば4vol%)に設定される。なお、閾値は、水素ガスの下限値よりも所定量低い値(例えば3vol%、)に設定されてもよい。
【0059】
水素濃度が閾値以上であると判定した場合は(ステップS302のYES)、ステップS303に移行する。一方、水素濃度が閾値以上でないと判定した場合(すなわち、水素濃度が閾値未満と判定した場合)は(ステップS303のNO)、ステップS304に移行する。
【0060】
ステップS303では、シリンダヘッド連絡通路70がコンプレッサ43の上流に通じる通路に切替を行う(第2経路V2)。例えば、ステップS303では、制御装置3は、切替バルブ392に第2経路V2へ切替させる制御を行う。これにより、シリンダヘッド13の内部がエンジン吸気通路30のコンプレッサ43の上流に通じる。ステップS303の後、ステップS305に移行する。
【0061】
ステップS305では、希釈空気バルブ55を開く。例えば、ステップS305では、制御装置3は、希釈空気バルブ55を所定以上に開く制御を行う。ステップS305の後、ステップS307に移行する。
【0062】
一方、ステップS304では、シリンダヘッド排気通路390を大気開放する(第1経路V1)。例えば、ステップS304では、制御装置3は、切替バルブ392に第1経路V1へ切替させる制御を行う。ステップS304の後、ステップS306に移行する。
【0063】
ステップS306では、希釈空気バルブ55を閉じる。例えば、ステップS306では、制御装置3は、希釈空気バルブ55を完全に閉じる制御を行う。ステップS306の後、ステップS307に移行する。
【0064】
ステップS307では、制御装置3は、エンジン2の運転が終了したか否かを判定する。エンジン2の運転が終了したと判定した場合は(ステップS307のYES)、ステップS308に移行する。一方、エンジン2の運転が終了していないと判定した場合(ステップS307のNO)、ステップS301に戻り、エンジン2の運転が終了するまでステップS301からS307を繰り返す。
【0065】
ステップS308では、シリンダヘッド排気通路390を大気開放する(第1経路V1)。ステップS308の後、ステップS309に移行する。
【0066】
ステップS309では、希釈空気バルブ55を閉じる。例えば、ステップS309では、制御装置3は、希釈空気バルブ55を完全に閉じる制御を行う。
以上により、システム301の制御方法のフローが終了する。
【0067】
<作用効果>
本実施形態では、システム301は、シリンダヘッド連絡通路70から分岐し、シリンダヘッド13の内部の空気を排出するシリンダヘッド排気通路390と、シリンダヘッド連絡通路70からシリンダヘッド排気通路390へ分岐する分岐部391に配置され、シリンダヘッド排気通路390が大気開放する第1経路V1とシリンダヘッド連絡通路70がコンプレッサ43の上流に通じる第2経路V2とを切替する切替バルブ392と、を備える。
この構成によれば、切替バルブ392により、シリンダヘッド13から排出された希釈空気を大気開放するか(第1経路V1への切替)、コンプレッサ43の上流に戻すか(第2経路V2への切替)、を選択できる。そのため、第2経路V2への切替時には、シリンダヘッド排気通路390からの排気は外部に出なくなる。したがって、排気ガスエミッションの悪化を最小限に抑えることができる。
一方、第1経路V2への切替時には、シリンダヘッド13からの排気はコンプレッサ43の上流には流れなくなる。そのため、排気に含まれる成分等(例えば、オイルミスト等)でコンプレッサ43が汚れることを防止することができる。例えば、シリンダヘッド連絡通路70にフィルタ71が設けられる場合には、フィルタ71による清浄化と相俟って、コンプレッサ43の耐久性・信頼性を更に向上させることができる。
【0068】
本実施形態では、制御装置3は、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になった場合に、切替バルブ392に第2経路V2へ切替させる制御を行う。
この構成によれば、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になった場合に、シリンダヘッド連絡通路70(第2経路V2)からの空気がコンプレッサ43で圧縮され、この圧縮された空気をクランクケース12の内部へ導入することができる。そのため、水素センサ60が検出した水素濃度が閾値以上になった場合には、シリンダヘッド排気通路390からの排気は外部に出なくなる。したがって、排気ガスエミッションの悪化を最小限に抑えることができる。
【0069】
本実施形態では、制御方法は、水素濃度が閾値以上であると判定した場合に、切替バルブ392に第2経路V2へ切替させる第2経路切替ステップ(ステップS303)と、水素濃度が閾値未満であると判定した場合に、切替バルブ392に第1経路V1へ切替させる第1経路切替ステップ(ステップS304)と、を含む。
この方法によれば、第2経路切替ステップにより、シリンダヘッド排気通路390からの排気は外部に出なくなる。したがって、排気ガスエミッションの悪化を最小限に抑えることができる。
一方、第1経路切替ステップにより、シリンダヘッド13からの排気はコンプレッサ43の上流には流れなくなる。そのため、排気に含まれる成分等(例えば、オイルミスト等)でコンプレッサ43が汚れることを防止することができる。
【0070】
<第4実施形態>
第1実施形態では、水素センサ60がクランクケース12に設けられる例を挙げて説明した。第4実施形態では、水素センサ60がシリンダヘッド連絡通路70においてフィルタ71の下流に配置される点で第1実施形態と相違している。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図6は、第4実施形態に係るシステム401の概略構成図である。
図6に示すように、システム401は、シリンダヘッド連絡通路70においてクランクケース12の内部の水素濃度を検出する水素センサ60を備える。図の例では、水素センサ60は、シリンダヘッド連絡通路70においてコンプレッサ43の上流に接続される部分よりもフィルタ71の配置位置の近く(フィルタ71の下流近傍)に設けられる。なお、水素センサ60の設置場所は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0072】
<システムの制御方法の一例>
図7は、第4実施形態に係るシステム401の制御方法の一例のフローチャートである。システム401の制御方法は、制御装置3が実行する着火防止プログラムに相当する。
本実施形態の制御方法は、水素濃度が閾値以上であると判定した場合に希釈空気バルブ55を開くバルブ開ステップ(ステップS403)を除き、第1実施形態の制御方法と同じである。本実施形態のステップS401,S402,S404,S405,S406は、第1実施形態のステップS1,S2,S4,S5,S6と同じであるため、詳細説明は省略する。
【0073】
図7を併せて参照し、水素濃度が閾値以上であると判定した場合は(ステップS402のYES)、ステップS403に移行する。一方、水素濃度が閾値以上でないと判定した場合(すなわち、水素濃度が閾値未満と判定した場合)は(ステップS403のNO)、ステップS404に移行する。
【0074】
ステップS403では、希釈空気バルブ55を所定時間(例えば、〇秒)開く。例えば、ステップS403では、制御装置3は、希釈空気バルブ55を数秒間だけ所定以上に開く制御を行う。水素ステップS403の後、ステップS405に移行する。
【0075】
ステップS405の後は、上述した第1実施形態と同様の制御を行う。
以上により、システム401の制御方法のフローが終了する。
【0076】
<作用効果>
本実施形態では、水素センサ60は、シリンダヘッド連絡通路70においてフィルタ71の下流に配置される。
この構成によれば、排気に含まれる成分等(例えば、オイルミスト等)で水素センサ60が汚れることを防止することができる。例えば、水素センサ60がクランクケース12に設けられる場合と比較して、水素センサ60の耐久性・信頼性を更に向上させることができる。
【0077】
<変形例>
上述した実施形態では、システムは、シリンダヘッドの内部とエンジン吸気通路においてコンプレッサの上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路と、シリンダヘッド連絡通路に配置されるフィルタと、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、フィルタを備えなくてもよい。例えば、フィルタの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0078】
上述した実施形態では、システムは、クランクケースの内部の圧力が所定以上になる前にクランクケースの内部の空気を逃がす圧力逃がし弁を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、システムは、圧力逃がし弁を備えなくてもよい。例えば、圧力逃がし弁の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0080】
(付記1)
水素を含む燃料での運転が可能なエンジンを含むシステムであって、
前記エンジンのクランクケース及びシリンダヘッドと、
前記エンジンへ空気を吸入するエンジン吸気通路と、
前記エンジン吸気通路から分岐し、前記クランクケースへ空気を導入するクランクケース吸気通路と、
前記クランクケース吸気通路に配置され、前記クランクケース吸気通路を開閉する希釈空気バルブと、
前記クランクケース吸気通路において前記希釈空気バルブの下流に配置された減圧弁と、
前記エンジン吸気通路から前記クランクケース吸気通路へ分岐する分岐部の上流に配置されたコンプレッサと、
前記クランクケースの内部の水素濃度を検出する水素センサと、
前記クランクケースの内部と前記シリンダヘッドの内部とを連通させる連通経路と、
前記水素センサが検出した前記水素濃度に基づいて前記希釈空気バルブの開閉を制御する制御装置と、を備える、
システム。
【0081】
(付記2)
前記制御装置は、前記水素センサが検出した前記水素濃度が閾値以上になった場合に、前記希釈空気バルブを所定以上に開く制御を行う、
付記1に記載のシステム。
【0082】
(付記3)
前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの下流かつ前記分岐部の上流に配置された吸気スロットルと、
前記クランクケース吸気通路において前記減圧弁の下流に配置され、前記減圧弁から前記クランクケースの内部へ向かう気体流れのみを許容する第1チェック弁と、
前記クランクケース吸気通路において前記希釈空気バルブと前記減圧弁との間の部分から分岐し、前記クランクケースの内部に連通するクランクケース連絡通路と、
前記クランクケース連絡通路に配置され、前記クランクケースの内部から前記クランクケース吸気通路へ向かう気体流れのみを許容する第2チェック弁と、を更に備える、
付記1又は2に記載のシステム。
【0083】
(付記4)
前記シリンダヘッドの内部と前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から分岐し、前記シリンダヘッドの内部の空気を排出するシリンダヘッド排気通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から前記シリンダヘッド排気通路へ分岐する分岐部に配置され、前記シリンダヘッド排気通路が大気開放する第1経路と前記シリンダヘッド連絡通路が前記コンプレッサの上流に通じる第2経路とを切替する切替バルブと、を更に備える、
付記1から3の何れかに記載のシステム。
【0084】
(付記5)
前記制御装置は、前記水素センサが検出した前記水素濃度が閾値以上になった場合に、前記切替バルブに前記第2経路へ切替させる制御を行う、
付記4に記載のシステム。
【0085】
(付記6)
前記シリンダヘッドの内部と前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路に配置されるフィルタと、を更に備える、
付記1から5の何れかに記載のシステム。
【0086】
(付記7)
前記水素センサは、前記シリンダヘッド連絡通路において前記フィルタの下流に配置される、
付記6に記載のシステム。
【0087】
(付記8)
前記クランクケースの内部の圧力が所定以上になる前に前記クランクケースの内部の空気を逃がす圧力逃がし弁を更に備える、
付記1から7の何れかに記載のシステム。
【0088】
(付記9)
水素を含む燃料での運転が可能なエンジンを含むシステムの制御方法であって、
前記システムは、
前記エンジンのクランクケース及びシリンダヘッドと、
前記エンジンへ空気を吸入するエンジン吸気通路と、
前記エンジン吸気通路から分岐し、前記クランクケースへ空気を導入するクランクケース吸気通路と、
前記クランクケース吸気通路に配置され、前記クランクケース吸気通路を開閉する希釈空気バルブと、
前記クランクケース吸気通路において前記希釈空気バルブの下流に配置された減圧弁と、
前記エンジン吸気通路から前記クランクケース吸気通路へ分岐する分岐部の上流に配置されたコンプレッサと、
前記クランクケースの内部の水素濃度を検出する水素センサと、
前記クランクケースの内部と前記シリンダヘッドの内部とを連通させる連通経路と、を備え、
前記制御方法は、
前記クランクケースの内部の水素濃度を取得する水素濃度取得ステップと、
前記水素濃度が閾値以上か否かを判定する水素濃度判定ステップと、
前記水素濃度が閾値以上であると判定した場合に前記希釈空気バルブを開くバルブ開ステップと、
前記水素濃度が閾値未満であると判定した場合に前記希釈空気バルブを閉じるバルブ閉ステップと、を含む、
制御方法。
【0089】
(付記10)
前記システムは、
前記シリンダヘッドの内部と前記エンジン吸気通路において前記コンプレッサの上流とを連通させるシリンダヘッド連絡通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から分岐し、前記シリンダヘッドの内部の空気を排出するシリンダヘッド排気通路と、
前記シリンダヘッド連絡通路から前記シリンダヘッド排気通路へ分岐する分岐部に配置され、前記シリンダヘッド排気通路が大気開放する第1経路と前記シリンダヘッド連絡通路が前記コンプレッサの上流に通じる第2経路とを切替する切替バルブと、を更に備え、
前記制御方法は、
前記水素濃度が閾値以上であると判定した場合に、前記切替バルブに前記第2経路へ切替させる第2経路切替ステップと、
前記水素濃度が閾値未満であると判定した場合に、前記切替バルブに前記第1経路へ切替させる第1経路切替ステップと、を含む、
付記9に記載の制御方法。
【符号の説明】
【0090】
1…システム、2…エンジン、3…制御装置、12…クランクケース、13…シリンダヘッド、30…エンジン吸気通路、32…クランクケース吸気通路、34…エンジン吸気通路からクランクケース吸気通路へ分岐する分岐部、35…連通経路、43…コンプレッサ、55…希釈空気バルブ、56…減圧弁、60…水素センサ、70…シリンダヘッド連絡通路、71…フィルタ、201…システム、280…給気スロットル、281…第1チェック弁、282…クランクケース連絡通路、283…第2チェック弁、301…システム、390…シリンダヘッド排気通路、391…シリンダヘッド連絡通路からシリンダヘッド排気通路へ分岐する分岐部、392…切替バルブ、401…システム、V1…第1経路、V2…第2経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7