(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117364
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】レーダ信号処理装置、レーダ信号処理方法、およびレーダ信号処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/931 20200101AFI20240822BHJP
G01S 17/50 20060101ALI20240822BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240822BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G01S17/931
G01S17/50
G01S13/931
G01S13/58 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023426
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅成
【テーマコード(参考)】
5J070
5J084
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK14
5J070BA01
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AB01
5J084AC02
5J084AD04
5J084BA03
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】マイクロドップラによる物標の過分割を回避する技術を提供すること。
【解決手段】レーダ信号処理装置(5)は、測距点情報取得部(53)と、プリセグメント生成部(541)と、セグメント生成部(542)とを備えている。測距点情報取得部は、レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得する。プリセグメント生成部は、測距点情報に基づいて複数の測距点をグルーピングすることで、測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成する。セグメント生成部は、複数のプリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、第一プリセグメントおよび第二プリセグメントに含まれる測距点の集合としての複合セグメントを生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号処理装置(5)であって、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得する、測距点情報取得部(53)と、
前記測距点情報取得部により取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成する、プリセグメント生成部(541)と、
前記プリセグメント生成部により生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する、セグメント生成部(542)と、
を備えた、
レーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記セグメント生成部は、前記第一プリセグメントが移動物標に対応する前記測距点からなるものであることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項1に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項3】
前記セグメント生成部は、前記第一プリセグメントと前記第二プリセグメントとの距離が閾値以内で且つ前記第一プリセグメントに含まれる前記測距点と前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点とが上下関係にあることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項1に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項4】
前記セグメント生成部は、前記第一プリセグメントが前記第二プリセグメントを囲んでいることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項1に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項5】
前記セグメント生成部は、前記第二プリセグメントのサイズが閾値以内であることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項1~4のいずれか1つに記載のレーダ信号処理装置。
【請求項6】
レーダ信号処理装置(5)により実行される、レーダ信号処理方法であって、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得し、
取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成し、
生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する、
レーダ信号処理方法。
【請求項7】
前記第一プリセグメントが移動物標に対応する前記測距点からなるものであることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項6に記載のレーダ信号処理方法。
【請求項8】
前記第一プリセグメントと前記第二プリセグメントとの距離が閾値以内で且つ前記第一プリセグメントに含まれる前記測距点と前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点とが上下関係にあることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項6に記載のレーダ信号処理方法。
【請求項9】
前記第一プリセグメントが前記第二プリセグメントを囲んでいることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項6に記載のレーダ信号処理方法。
【請求項10】
前記第二プリセグメントのサイズが閾値以内であることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項6~9のいずれか1つに記載のレーダ信号処理方法。
【請求項11】
レーダ信号処理装置(5)により実行される、レーダ信号処理プログラムであって、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得する処理と、
取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成する処理と、
生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する処理と、
を含む、
レーダ信号処理プログラム。
【請求項12】
前記第一プリセグメントが移動物標に対応する前記測距点からなるものであることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項11に記載のレーダ信号処理プログラム。
【請求項13】
前記第一プリセグメントと前記第二プリセグメントとの距離が閾値以内で且つ前記第一プリセグメントに含まれる前記測距点と前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点とが上下関係にあることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項11に記載のレーダ信号処理プログラム。
【請求項14】
前記第一プリセグメントが前記第二プリセグメントを囲んでいることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項11に記載のレーダ信号処理プログラム。
【請求項15】
前記第二プリセグメントのサイズが閾値以内であることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
請求項11~14のいずれか1つに記載のレーダ信号処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ信号処理装置、レーダ信号処理方法、およびレーダ信号処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のレーダ信号処理装置は、速度ベクトル演算部と、グループ化処理部と、平均相対速度ベクトル演算部と、距離補正部とを備えている。速度ベクトル演算部は、単一または複数のレーダにより検出された複数の測定点の各相対速度ベクトルに基づいて各測定点を含む仮想物体の合成相対速度ベクトルを算出する。グループ化処理部は、算出された複数の仮想物体の合成相対速度ベクトルが等しい仮想物体を実物体としてグループ化する。平均相対速度ベクトル演算部は、グループ化された実物体の合成相対速度ベクトルを平均処理した平均相対速度ベクトルを算出する。距離補正部は、算出された平均相対速度ベクトルに基づいて各測定点の距離を補正する。なお、測定点は、計測点や測距点とも称され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーダを用いて、走行中の車両を検知する場合、車両全体から多くの計測点が検出される。特に、車体の移動とは異なる動きをする部位(例えば車輪等)の計測点では、車体の計測点とは異なる速度が検出される。このように、部分的に周囲とは異なる速度成分を有した計測点は、マイクロドップラ点と称される。マイクロドップラ点は、全体の速度平均値から大きく離れた速度を有するため、独立した物標として誤って処理されることがあり得る。具体的には、例えば、特許文献1に記載のレーダ信号処理装置によれば、車体と車輪とが別物標として判断されてしまうことがあり得る。
【0005】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、マイクロドップラによる物標の過分割を回避する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のレーダ信号処理装置(5)は、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得する、測距点情報取得部(53)と、
前記測距点情報取得部により取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成する、プリセグメント生成部(541)と、
前記プリセグメント生成部により生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する、セグメント生成部(542)と、
を備えている。
請求項6に記載のレーダ信号処理方法は、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得し、
取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成し、
前記プリセグメント生成部により生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する。
請求項11に記載のレーダ信号処理プログラムは、レーダ信号処理装置(5)により実行されるコンピュータプログラムであって、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得する処理と、
取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成する処理と、
前記プリセグメント生成部により生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する処理と、
を含む。
【0007】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を、単に示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーダ信号処理装置としての物標認識装置を備えたレーダシステムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示された物標認識装置における機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示された物標認識装置の動作の概要を同装置による認識対象の一例とともに示す概略図である。
【
図4】
図1に示された物標認識装置の動作の概要を同装置による認識対象の他の一例とともに示す概略図である。
【
図5】
図4に示された複数のプリセグメントから複合セグメントを生成する様子を示す概略図である。
【
図6】
図1に示された物標認識装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示された物標認識装置の動作の概要を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示された物標認識装置による認識対象のさらに他の一例を示す斜視図である。
【
図9】
図1に示された物標認識装置の動作の概要を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、一つの実施形態に関する一連の説明の後に、まとめて記載する。
【0010】
(システム全体構成)
図1を参照すると、車載システム1は、道路を走行する自動車等の車両に搭載されることで、かかる車両の動作を制御するように構成されている。以下、かかる車載システム1を搭載した車両を「自車両」と称する。ここにいう「車両の動作」とは、例えば、運転制御動作や、乗員に対する情報提示動作あるいは警告動作等である。すなわち、車載システム1は、自車両の周囲領域の少なくとも一部を検知エリアとして、自車両以外の車両である他車両を少なくとも含む種々の物標を検出し、その検出結果を自車両乗員への警告や運転支援等の車両制御に供するように構成されている。
【0011】
具体的には、本実施形態においては、車載システム1は、レーダセンサ2と、車速センサ3と、ヨーレートセンサ4と、物標認識装置5と、運転支援装置6とを備えている。すなわち、車載システム1は、いわゆる運転自動化システムとしての構成を有している。「運転自動化システム」とは、自動運転システムと運転支援システムとを含む上位概念である。「自動運転」とは、SAE Internationalが公開している規格「SAE J3016」におけるレベル3~5に該当する、運転自動化システムが全ての動的運転タスクを担当すなわち実行する運転自動化レベルをいう。「動的運転タスク」とは、道路交通において車両を操作する際にリアルタイムで行う必要がある全ての操作上および戦術上の機能であって、戦略上の機能を除いたものである。「戦略上の機能」は、行程計画、経由地選択、等であって、具体的には、「行くか行かないか、いつどこへどのように行くか」を決定あるいは選択することを含む。「運転支援」とは、「SAE J3016」におけるレベル1~2に該当する、運転自動化システムが動的運転タスクのうちの縦方向の車両運動制御サブタスクおよび/または横方向の車両運動制御サブタスクを特定の限定領域において持続的に実行する運転自動化レベルをいう。かかる車両運動制御サブタスクは、例えば、発進、加速、減速、制動、停止、操舵、シフトレンジ変更、等を含む。すなわち、「運転支援」は、例えば、車線維持機能、車線変更支援機能、自動車線変更機能、先行車追随機能、衝突回避機能、等のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
レーダセンサ2は、ドップラ効果による周波数の変移を観測することで観測対象の相対的な移動速度と変位とを求めることが可能な、いわゆるドップラレーダとしての構成を備えている。また、レーダセンサ2は、反射波の到来方向を検出可能に構成されている。具体的には、本実施形態においては、レーダセンサ2は、ドップラ速度を取得可能なレーザレーダセンサ(すなわちLiDARセンサ)としての構成を有している。LiDARはLight Detection and RangingあるいはLaser Imaging Detection and Rangingの略である。
【0013】
車速センサ3は、自車両の車速を検出するように設けられている。ヨーレートセンサ4は、自車両に作用するヨーレートを検出するように設けられている。その他、車載システム1には、自車両の運転操作状態や運転挙動に関する情報や物理量を検出するための、不図示の各種センサ類(例えばカメラやアクセルポジションセンサや加速度センサ等)が備えられている。
【0014】
物標認識装置5は、レーダセンサ2や車速センサ3やヨーレートセンサ4を含む、車載システム1に備えられた各種センサ類と、車内通信回線を介して接続されている。物標認識装置5は、これらのセンサ類によって取得された情報あるいは信号に基づいて、自車両の周囲の物標を認識するように構成されている。すなわち、本発明におけるレーダ信号処理装置としての物標認識装置5は、レーダセンサ2から出力される測定情報であるレーダ信号を処理することで、物標認識動作を実行するようになっている。そして、物標認識装置5は、物標認識結果を運転支援装置6に出力するように、車内通信回線を介して運転支援装置6と接続されている。運転支援装置6は、物標認識装置5から受け取った物標認識結果に基づいて、警告動作や衝突回避動作等の車両制御動作を実行するように構成されている。
【0015】
物標認識装置5は、プロセッサ51とメモリ52とを備えている。プロセッサ51は、CPUあるいはMPUとしての構成を有している。CPUはCentral Processing Unitの略である。MPUはMicro Processing Unitの略である。メモリ52は、プロセッサ51により実行されるプログラムや、かかるプログラムの実行の際に必要となるルックアップテーブル等の各種データを保持する、不揮発性の非遷移的実体的記憶媒体としての構成を有している。具体的には、メモリ52は、ROM、フラッシュメモリ、磁気ディスク、等のうちの少なくとも一種を備えている。ROMはRead Only Memoryの略である。そして、物標認識装置5は、プロセッサ51がメモリ52からプログラムを読み出して実行することで、少なくとも物標検出処理を実行するように構成されている。
【0016】
図2は、プロセッサ51がメモリ52から物標認識プログラムを読み出して実行することで物標認識装置5にて実現される機能構成を示す。
図3は、前進走行中の自車両の前方を自車両と同一方向に走行中の他車両Vを含む物標における測距点Pの検出の様子を示す。
図4および
図5は、自車両に接近中の他車両Vにおける左前輪付近における測距点Pの検出の様子を拡大して示す。測距点Pは、物標においてレーダ波を反射したと推定される点であって、「計測点」あるいは「反射点」とも称される。
図2に示されているように、物標認識装置5は、プログラム実行により実現される機能構成として、測距点情報取得部53と、クラスタリング処理部54と、トラッキング処理部55と、物標出力処理部56とを有している。以下、
図2~
図5を参照しつつ、本実施形態に係る物標認識装置5における各機能構成の詳細について説明する。
【0017】
測距点情報取得部53は、レーダセンサ2から出力される測距点情報を取得するようになっている。測距点情報は、レーダ波の照射により取得された測距点Pにおける位置情報および速度情報を含む。速度情報は、自車両に対する測距点Pの相対速度であり、接近する場合を負値、離隔する場合を正値で表すものとする。位置情報は、自車両を基準とする測距点Pまでの距離および方位で位置を特定する極座標、あるいは、自車両を基準として設定される直交座標で表現され得る。具体的には、測距点情報取得部53は、測距点情報を、測定サイクル毎に経時的に保持するようになっている。
【0018】
クラスタリング処理部54は、測距点情報取得部53により取得した測距点情報に対してクラスタリング処理を実行するようになっている。クラスタリング処理とは、ある測定サイクルにおいて検出された測距点Pをグルーピング(すなわちグループ分け)して、同一グループに属する複数の測距点Pを一つの物標で反射されたものとして定義する処理である。本実施形態に係るクラスタリング処理の詳細については後述する。トラッキング処理部55は、カルマンフィルタ方式やα-βフィルタリング方式等の公知のトラッキング処理方式を用いて、物標を時系列的に追跡するトラッキング処理を実行するようになっている。物標出力処理部56は、トラッキング処理部55による処理結果を含む物標認識結果を運転支援装置6に出力するようになっている。
【0019】
本実施形態においては、クラスタリング処理部54は、プリセグメント生成部541とセグメント生成部542とを有している。プリセグメント生成部541は、測距点情報取得部53により取得した測距点情報に基づいて複数の測距点Pをグルーピングすることで、測距点Pの一次集合としてのプリセグメントPSを生成するようになっている。具体的には、プリセグメント生成部541は、従来周知のクラスタリング手法である、測距点P間の位置が近いことおよび速度差が小さいことをグルーピング条件としてプリセグメントPSを生成するようになっている。セグメント生成部542は、プリセグメント生成部541により生成したプリセグメントPSに基づいて、トラッキング処理部55によるトラッキング処理の対象となるセグメントSGを生成するようになっている。
【0020】
本実施形態においては、セグメント生成部542は、複数のプリセグメントPSが同一物標に属すると判断すべき所定の関係を満たす場合、これらに含まれる測距点Pの集合としてのセグメントSGを生成するようになっている。かかる所定の関係を満たす複数のプリセグメントPSに含まれる測距点Pをすべて含むセグメントSG、すなわち、かかる複数のプリセグメントPSからなるセグメントSGを、以下「複合セグメント」と称する。一方、セグメント生成部542は、或る単一のプリセグメントPSについて、他のプリセグメントPSとの間で複合セグメントを生成する条件を満たさない場合、かかる単一のプリセグメントPSをそのままセグメントSGとするようになっている。以下、複合セグメントを生成するか否かについての判定条件に際して、説明の簡略化のため、二つのプリセグメントPSについて考慮するものとする。かかる二つのプリセグメントPSのうちの一方を「注目プリセグメント」とし、他方を「参照プリセグメント」と称する。「注目プリセグメント」は「第一プリセグメント」とも称され得る。「参照プリセグメント」は「第二プリセグメント」とも称され得る。
【0021】
具体的には、ここにいう「所定の関係」は、例えば、注目プリセグメントと参照プリセグメントとの間の位置関係を含む。より詳細には、セグメント生成部542は、注目プリセグメントおよび参照プリセグメントが以下の四つの条件をすべて満たすことを条件として、注目プリセグメントと参照プリセグメントとから複合セグメントを生成するようになっている。
・注目プリセグメントと参照プリセグメントとの距離が閾値以内であること。
・注目プリセグメントに含まれる測距点Pと参照プリセグメントに含まれる測距点Pとが上下関係にあること、または、注目プリセグメントが参照プリセグメントを囲んでいること。
・注目プリセグメントが移動物標に対応する測距点Pからなるものであること。
・参照プリセグメントのサイズが閾値以内であること。
【0022】
(動作概要)
以下、本実施形態に係る物標認識装置5の動作の概要、ならびに、かかる物標認識装置5により実行される方法およびプログラムの概要について、これらにより奏される効果とともに説明する。なお、以下の説明において、上記構成を有する物標認識装置5と、これにより実行される方法(すなわちレーダ信号処理方法)およびプログラム(すなわちレーダ信号処理プログラム)とを総称して、単に「本実施形態」と称することがある。
【0023】
図3や
図4に示されているように、走行中の他車両Vを、レーダを用いて検知する場合、かかる他車両Vの全体から多くの測距点Pが検出される。ここで、例えば、車輪Vtのように、車体Vbの移動とは異なる動きをする部位がある。このような部位の測距点Pでは、車体Vbの測距点Pとは異なる速度が検出される。このように、部分的に周囲とは異なる速度成分を有した測距点Pは、マイクロドップラ点と称される。マイクロドップラ点については、詳しくは、特開2021-124422号公報や特開2021-188922号公報等を参照のこと。かかるマイクロドップラ点は、他車両Vの全体の速度平均値から大きく離れた速度を有する。このため、従来技術(すなわち特許文献1に記載のレーダ信号処理装置)によれば、かかるマイクロドップラ点が独立した物標として誤って処理されることがあり得る。具体的には、例えば、従来技術によれば、車体Vbと車輪Vtとが別物標として判断されてしまうことがあり得る。この点、従来技術でも、グループ化における速度閾値を緩めることで、車体Vbと車輪Vtとを同一物標として判断することが一応可能となる。しかしながら、これによれば、例えば、
図3に示されているように、他車両Vが停止物標であるラバーポールRの至近を通過中の場面において、かかる他車両VとラバーポールRとが同一物標として誤って判断されてしまうといった不具合が生じ得ることとなる。
【0024】
そこで、発明者は、以下の点に着目した。すなわち、例えば、
図3を参照すると、車輪Vtの上方には、通常、車体Vbが存在する。このため、車輪Vtに対応する測距点Pあるいはその集合体の上方には、車体Vbに対応する測距点Pあるいはその集合体が存在する蓋然性が高い。これに対し、ラバーポールRに対応する測距点Pあるいはその集合体の上方には、測距点Pやその集合体は存在しないはずである。また、
図4を参照すると、車輪Vtに対応する測距点Pあるいはその集合体の側方は、車体Vbに対応する測距点Pあるいはその集合体によって囲まれている。
【0025】
したがって、他車両Vに含まれつつも車体Vbとは異なる速度が検出される車輪Vt等の部位については、かかる部位に対応するプリセグメントPSの上方には車体Vbに対応するプリセグメントPSあるいは測距点Pが存在する。あるいは、かかる部位に対応するプリセグメントPSは、車体Vbに対応するプリセグメントPSあるいは測距点Pによって囲まれる。これに対し、他車両Vに近接するラバーポールR等の別物標の場合は、その上方の測距点PやプリセグメントPSは存在せず、かかる別物標を囲む測距点PやプリセグメントPSも存在しない。
【0026】
そこで、本実施形態は、複数のプリセグメントPSが同一物標に属するものとして判断すべき所定の関係を満たす場合、これらに含まれる測距点Pの集合としてのセグメントSGを生成する。すなわち、本実施形態は、これら複数のプリセグメントPSを、統合、結合、合成、あるいは併合する。あるいは、本実施形態は、注目プリセグメントを参照プリセグメントに接続する。具体的には、本実施形態は、複数のプリセグメントPSの間の位置関係に基づいて、複合セグメントを生成する。例えば、本実施形態は、注目プリセグメントと参照プリセグメントとの距離が閾値以内で且つ注目プリセグメントに含まれる測距点Pと参照プリセグメントに含まれる測距点Pとが上下関係にあることを条件として、複合セグメントを生成する。また、本実施形態は、注目プリセグメントが参照プリセグメントを囲んでいることを条件として、複合セグメントを生成する。さらに、本実施形態は、注目プリセグメントおよび参照プリセグメントが移動物標に対応する測距点Pからなるものであることを条件として、複合セグメントを生成する。これにより、物標の過分割を良好に抑制しつつ、別物標を同一物標として誤認識することを効果的に抑制することが可能となる。具体的には、
図3に示されている場面において、自車両に対する相対速度が異なるラバーポールRと他車両Vとの区別をしつつ、車輪Vtに対応する測距点Pの集合と車体Vbに対応する測距点Pの集合との過分割を抑制することが可能となる。
【0027】
複合セグメントの生成の具体例を、
図4および
図5を用いて説明する。これらの図において、複数の測距点Pの各々における速度情報が、ハッチングの密度で示されている。具体的には、ハッチングが濃いほど自車両への接近速度が高いものとされている。例えば、
図4に示されているように、車輪Vtの高さ方向における略中央部は、車体Vbとほぼ同様のドップラ速度を有している。これに対し、車輪Vtの高さ方向における上部は、車体Vbよりも大きなドップラ速度を有している。一方、車輪Vtの高さ方向における下部は、車体Vbよりも小さなドップラ速度を有している。このため、
図4に示されている状況においては、従来技術と同様のクラスタリング手法を用いたプリセグメント生成により、車輪Vtの上部に対応するプリセグメントPSと、車輪Vtの下部に対応するプリセグメントPSとが、車体Vbに対応するプリセグメントPSとは別個に生成される。なお、車輪Vtの略中央部に対応する測距点Pは、車体Vbに対応するプリセグメントPSとは別個のプリセグメントPSとされ得るが、車体Vbに対応するプリセグメントPSと一体化され得る。これに対し、
図5に示されているように、車体Vbに対応するプリセグメントPSと、車輪Vtに対応する各プリセグメントPSとは、一つのセグメントSGすなわち複合セグメントとして統合される。
【0028】
但し、例えば、ドップラ速度が樹木で観測される場合がある。このため、例えば、樹木の下の歩行者を誤って樹木と結合してしまうという誤認識の場面が想定される。そこで、本実施形態は、参照プリセグメントのサイズが閾値以内であることを条件として、複合セグメントを生成する。具体的には、例えば、歩行者の身長は、大人が約1.8mであり、子供が約1.15mである。一方、バスやトラックの車輪Vtの外径は、約1mである。そこで、本実施形態は、参照プリセグメントを注目セグメントと接続するための、参照プリセグメントのサイズ閾値を、バスやトラックの車輪Vtの外径に即した寸法(例えば1m四方あるいはそれ以下の所定寸法)とする。これにより、樹木から誤った速度情報が得られた場合の樹木と歩行者との結合を良好に抑制することが可能となる。
【0029】
このように、本実施形態は、同一物標の測距点Pとしてグルーピングする上で、単純に速度や距離が近しいものをグルーピングするのではなく、測距点Pの周辺関係が同一物標と判断できそうな場合には、速度が近しくなかったとしてもグルーピングを行う。かかる周辺関係は、速度差があっても上下関係で存在していたり、横方向に囲まれていたりすることを指す。なお、上側や囲む側は移動物(例えば車両の場合では車体Vbに相当)として判定されている必要がある。
【0030】
図6は、プリセグメント生成部541における処理すなわちプリセグメント生成処理の一具体例を示すフローチャートである。
図7は、セグメント生成部542における処理すなわちセグメント生成処理の一具体例を示すフローチャートである。これらの図中において、「S」は、「ステップ」を略記したものである。以下、
図6および
図7に示されたフローチャートを用いて、クラスタリング処理部54における処理すなわちクラスタリング処理の具体例について説明する。
【0031】
プロセッサ51は、メモリ52から本実施形態に係る物標認識プログラム(すなわちレーダ信号処理プログラムを含むプログラム)を読み出して実行することで、
図6に示されたプリセグメント生成処理を行う。プリセグメント生成処理においては、まず、ステップ101にて、プロセッサ51は、すべての測距点Pの組み合わせで接続比較を行ったか否かを判定する。「接続比較」とは、グループ化するか否か、すなわち、一つのプリセグメントPSを形成するか否かの判定のために、2つの測距点Pにおける測距点情報を比較することをいう。接続比較が未了の測距点Pの組み合わせが存在する場合、すなわち、ステップ101における判定が「NO」である場合、プロセッサ51は、処理をステップ102に進行させる。
【0032】
ステップ102にて、プロセッサ51は、今回選択した2つの測距点Pの組み合わせにおいて、測距点P間の距離および速度差が閾値以内か否かを判定する。2つの測距点Pが近接していてステップ102における判定が「YES」である場合、プロセッサ51は、ステップ103の処理を実行した後、処理をステップ101に戻す。ステップ103にて、プロセッサ51は、今回選択した2つの測距点Pに同一のラベルを付与し、ルックアップテーブルを更新する。これに対し、ステップ102における判定が「NO」である場合、プロセッサ51は、処理をステップ101に戻す。そして、前回とは異なる組み合わせの2つの測距点Pについてステップ101における判定が「NO」となって再び処理がステップ102からステップ103に進行した場合、ステップ103にて前回とは異なるラベルが付与される。
【0033】
ステップ101における判定が「YES」である場合、プロセッサ51は、ステップ104およびステップ105の処理を実行した後、プリセグメント生成処理を終了する。ステップ104にて、プロセッサ51は、一般的なルックアップテーブルを用いたラベリング処理を実行する。ステップ105にて、プロセッサ51は、プリセグメント情報を生成する。すなわち、同一のラベルが付与された複数の測距点Pによって、一つのプリセグメントPSが生成される。そして、各プリセグメントPSについて、位置、サイズ、速度等の情報が付与される。上記のようなプリセグメント生成処理は、位置情報と速度情報とに基づく従来のクラスタリングあるいはグルーピングの手法とほぼ同様である。このため、かかるプリセグメント生成処理についてのこれ以上の詳細については、本明細書においては、説明を省略する。
【0034】
プロセッサ51は、メモリ52から本実施形態に係る物標認識プログラム(すなわちレーダ信号処理プログラムを含むプログラム)を読み出して実行することで、
図7に示されたセグメント生成処理を行う。セグメント生成処理においては、まず、ステップ201にて、プロセッサ51は、すべてのプリセグメントPSについて注目プリセグメントとして選択済みであるか否かを判定する。ステップ201における判定が「NO」である場合、プロセッサ51は、未だ注目プリセグメントとして選択されていないプリセグメントPSを今回の注目プリセグメントとして選択した後、処理をステップ202に進行させる。
【0035】
ステップ202にて、プロセッサ51は、注目プリセグメントが移動状態であるか(すなわち移動物標に対応するものであるか)否かを判定する。ステップ202における判定が「NO」である場合、プロセッサ51は、処理をステップ201に戻す。これに対し、ステップ202における判定が「YES」である場合、プロセッサ51は、処理をステップ203に進行させる。ステップ203にて、プロセッサ51は、今回注目プリセグメントとして選択されたもの以外のすべてのプリセグメントPSが参照セグメントとして選択済みであるか否かを判定する。ステップ203における判定が「YES」である場合、プロセッサ51は、処理をステップ201に戻す。これに対し、ステップ203における判定が「NO」である場合、プロセッサ51は、未だ参照プリセグメントとして選択されていないプリセグメントPSを今回の参照プリセグメントとして選択した後、処理をステップ204に進行させる。
【0036】
ステップ204にて、プロセッサ51は、接続条件が成立したか否かを判定する。「接続条件」とは、以下の第一条件~第三条件のすべてが成立することをいう。
第一条件:参照プリセグメントのサイズは閾値以内である。
第二条件:注目プリセグメントと参照プリセグメントとが近接している(すなわち距離が閾値以内である)。
第三条件:注目プリセグメントを構成している測距点Pの下部に参照プリセグメントの測距点Pが存在する。
【0037】
ステップ204における判定が「YES」である場合、プロセッサ51は、処理をステップ205に進行させる。ステップ205にて、プロセッサ51は、注目プリセグメントと参照プリセグメントとに同一のラベルを付与し、ルックアップテーブルを更新する。すなわち、プロセッサ51は、注目プリセグメントと参照プリセグメントとを接続する。これに対し、ステップ204における判定が「NO」である場合、プロセッサ51は、処理をステップ203に戻す。この場合、プロセッサ51は、注目プリセグメントと参照プリセグメントとを接続しない。
【0038】
ステップ201における判定が「YES」である場合、プロセッサ51は、ステップ206およびステップ207の処理を実行した後、プリセグメント生成処理を終了する。ステップ206にて、プロセッサ51は、一般的なルックアップテーブルを用いたラベリング処理を実行する。ステップ207にて、プロセッサ51は、セグメント情報を生成する。すなわち、同一のラベルが付与されたプリセグメントPSに含まれる複数の測距点Pによって、一つのセグメントSGが生成される。そして、各セグメントSGについて、位置、サイズ、速度等の情報が付与される。
【0039】
本具体例によれば、例えば、移動物標としての他車両Vや静止物標としてのラバーポールRにおける、注目プリセグメントや参照プリセグメントの接続は、以下の通り判定される。なお、以下の判定例では、車輪Vtにおいては、中心よりも上側の上部と下側の下部との二つのプリセグメントPSが認識されているものとする。
<1>注目プリセグメント=車体Vb:移動
参照プリセグメント=車輪Vtの上部:移動
…注目プリセグメントを構成している測距点Pの真下に参照プリセグメントを構成している測距点Pが存在するため、両者は接続される。
<2>注目プリセグメント=車体Vb:移動
参照プリセグメント:車輪Vtの下部:静止
…注目プリセグメントを構成している測距点Pの真下に参照プリセグメントを構成している測距点Pが存在しないため、両者は接続されない。
(但し、下記<3>の通り、車輪Vtの下部は、その真上に位置する車輪Vtの上部と接続されるため、結果として、車輪Vtの上部を介して車体Vbとも統合され得る。)
<3>注目プリセグメント=車輪Vtの上部:移動
参照プリセグメント=車輪Vtの下部:静止
…注目プリセグメントを構成している測距点Pの真下に参照プリセグメントを構成している測距点Pが存在するため、両者は接続される。
<4>)注目プリセグメント=車輪Vtの上部:移動
参照プリセグメント=ラバーポールR:静止
…注目プリセグメントを構成している測距点Pの真下に参照プリセグメントを構成している測距点Pが存在しないため両者は接続されない。
【0040】
(変形例)
本発明は、上記の実施形態や実施例に限定されるものではない。故に、上記実施形態等に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態等との相違点を主として説明する。また、上記実施形態等と以下の変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一の符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態等と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態等における説明が適宜援用され得る。
【0041】
本発明は、上記実施形態に示された具体的な装置構成に限定されるものではない。例えば、本発明の適用対象は、道路を走行する自動車等に限定されない。また、レーダセンサ2は、レーザレーダセンサ以外の構成を有していてもよい。すなわち、例えば、レーダセンサ2は、ミリ波レーダセンサであってもよい。
【0042】
図2に示された各機能構成部は、あくまで、本発明の一実施形態の説明を簡略化するための便宜上のものである。よって、
図2における図示は、物標認識装置5において、これらの機能構成部が何らかのモジュールあるいはハードウェアとして実現されていなければならないことを意味しない。
【0043】
上記実施形態にて説明した、各種の動作、手順、あるいは処理を実行可能とする、本発明に係るプログラムは、V2X通信を介してダウンロードあるいはアップグレードされ得る。V2XはVehicle to Xの略である。あるいは、かかるプログラムは、自車両の製造工場、整備工場、販売店、等に設けられた端末機器を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。かかるプログラムの格納先は、メモリーカード、光学ディスク、磁気ディスク、等であってもよい。
【0044】
このように、上記の各機能構成および処理は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および処理は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および処理は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、上記の各機能構成および処理は、これを実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【0045】
本発明は、上記実施形態に示された具体的な動作態様に限定されるものではない。すなわち、例えば、「閾値以内」と「閾値未満」とは置換可能である。「閾値以上」と「閾値を超える」とについても同様である。また、
図5において、複合セグメントであるセグメントSG内に含まれる複数のプリセグメントPSは、解消されてもよい。すなわち、複合セグメントは、複数のプリセグメントPSを接続あるいは一体化することによって形成されてもよい。また、注目プリセグメントに参照プリセグメントの情報を追加する際に参照プリセグメントの速度情報を加味しないことで、物標の速度情報を算出する際に精度よくマイクロドップラ点を排除でき、速度情報の精度を向上させることができる。
【0046】
注目プリセグメントと参照プリセグメントとから複合セグメントを生成するための条件として、上記実施形態においては、注目プリセグメントが移動物標に対応する測距点Pからなるものであることを含んでいた。これに対しては、変更が可能である。すなわち、かかる条件として、例えば、注目プリセグメントおよび参照プリセグメントの双方が移動物標に対応する測距点Pからなるものであることを含んでいてもよい。すなわち、参照プリセグメントが移動物標に対応する測距点Pからなるものであることを、接続条件に追加してもよい。この場合、
図7において、ステップ203とステップ204との間に、参照プリセグメントが移動状態であるか(すなわち移動物標に対応するものであるか)否かを判定するステップが追加される。そして、かかる判定が「YES」の場合は処理がステップ204に進行し、「NO」の場合は処理がステップ203に戻る。これにより、静止物標と移動物標とが誤って一体的に認識されることが、良好に抑制され得る。
【0047】
図8に示されているように、後輪である車輪Vtの上部に車体Vbが存在しない場合があり得る。このような場合、後輪である車輪Vtに対応するプリセグメントPSの上部に車体Vbに対応するプリセグメントPSや測距点Pが存在しないため、上記の実施例によっては過分割を抑制できない可能性がある。
【0048】
そこで、このような場合、
図9に示した鳥観図における車輪セグメントSGt同士の位置関係を用いて、車体セグメントSGbとの接続を行うことが可能となる。すなわち、鳥観図上では、四輪車の場合、車輪Vtの位置を直線で結ぶと、必ず長方形になるはずである。そのため、
図9を参照すると、レーダセンサ2から捉えられた車輪セグメントSGtを図中一点鎖線で示したように直線で結んだとき、直角になるはずである。このような直角となる関係を用いて、上部に車体Vbに対応する測距点Pが存在する、前輪である車輪Vtに対応する車輪セグメントSGtと、後輪である車輪Vtに対応する車輪セグメントSGtとの接続を行う。これにより、後輪である車輪Vtに対応する車輪セグメントSGtは、車体セグメントSGbとも接続されることになり、以て過分割を抑制することが可能となる。この場合、互いに接続される車輪セグメントSGtは、プリセグメントPSと解釈することが可能である。
【0049】
変形例も、上記の例示に限定されない。また、複数の変形例が、互いに組み合わされ得る。さらに、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、互いに組み合わされ得る。
【0050】
(観点)
上記の通りの、実施形態および変形例における説明から明らかなように、本明細書による開示は、少なくとも、以下の観点を含む。
[観点1]
レーダ信号処理装置(5)であって、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得する、測距点情報取得部(53)と、
前記測距点情報取得部により取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成する、プリセグメント生成部(541)と、
前記プリセグメント生成部により生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する、セグメント生成部(542)と、
を備えた、
レーダ信号処理装置。
[観点2]
前記セグメント生成部は、前記第一プリセグメントが移動物標に対応する前記測距点からなるものであることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点1に記載のレーダ信号処理装置。
[観点3]
前記セグメント生成部は、前記第一プリセグメントと前記第二プリセグメントとの距離が閾値以内で且つ前記第一プリセグメントに含まれる前記測距点と前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点とが上下関係にあることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点1または2に記載のレーダ信号処理装置。
[観点4]
前記セグメント生成部は、前記第一プリセグメントが前記第二プリセグメントを囲んでいることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点1~3のいずれか1つに記載のレーダ信号処理装置。
[観点5]
前記セグメント生成部は、前記第二プリセグメントのサイズが閾値以内であることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点1~4のいずれか1つに記載のレーダ信号処理装置。
[観点6]
レーダ信号処理装置(5)により実行される、レーダ信号処理方法であって、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得し、
取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成し、
生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する、
レーダ信号処理方法。
[観点7]
前記第一プリセグメントが移動物標に対応する前記測距点からなるものであることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点6に記載のレーダ信号処理方法。
[観点8]
前記第一プリセグメントと前記第二プリセグメントとの距離が閾値以内で且つ前記第一プリセグメントに含まれる前記測距点と前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点とが上下関係にあることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点6または7に記載のレーダ信号処理方法。
[観点9]
前記第一プリセグメントが前記第二プリセグメントを囲んでいることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点6~8のいずれか1つに記載のレーダ信号処理方法。
[観点10]
前記第二プリセグメントのサイズが閾値以内であることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点6~9のいずれか1つに記載のレーダ信号処理方法。
[観点11]
レーダ信号処理装置(5)により実行される、レーダ信号処理プログラムであって、
レーダ波の照射により取得された複数の測距点の各々における位置情報および速度情報を含む測距点情報を取得する処理と、
取得した前記測距点情報に基づいて複数の前記測距点をグルーピングすることで、前記測距点の集合としてのプリセグメント(PS)を生成する処理と、
生成した複数の前記プリセグメントのうちの一つである第一プリセグメントと他の一つである第二プリセグメントとの間の位置関係に基づいて、前記第一プリセグメントおよび前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点の集合としての複合セグメントを生成する処理と、
を含む、
レーダ信号処理プログラム。
[観点12]
前記第一プリセグメントが移動物標に対応する前記測距点からなるものであることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点11に記載のレーダ信号処理プログラム。
[観点13]
前記第一プリセグメントと前記第二プリセグメントとの距離が閾値以内で且つ前記第一プリセグメントに含まれる前記測距点と前記第二プリセグメントに含まれる前記測距点とが上下関係にあることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点11または12に記載のレーダ信号処理プログラム。
[観点14]
前記第一プリセグメントが前記第二プリセグメントを囲んでいることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点11~13のいずれか1つに記載のレーダ信号処理プログラム。
[観点15]
前記第二プリセグメントのサイズが閾値以内であることを条件として、前記複合セグメントを生成する、
観点11~14のいずれか1つに記載のレーダ信号処理プログラム。
【符号の説明】
【0051】
1 車載システム
2 レーダセンサ
3 車速センサ
5 物標認識装置(レーダ信号処理装置)
51 プロセッサ
52 メモリ
53 測距点情報取得部
54 クラスタリング処理部
541 プリセグメント生成部
542 セグメント生成部