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特開2024-11737電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法
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  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図1
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図2
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図3
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図4
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図5
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図6
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図7
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図8
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図9
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図10
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図11
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図12
  • 特開-電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011737
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20240118BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20240118BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K3/50 A
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113982
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】小辻 貴志
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CB18
5H603CB21
5H603CC04
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
5H603EE01
5H603FA01
5H603FA16
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604DA14
5H604DB01
5H604PB03
5H604PC03
5H604QA01
5H604QB14
5H604QB15
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ07
5H615QQ12
5H615RR01
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS13
5H615SS17
5H615SS44
5H615TT26
(57)【要約】
【課題】より安定的に電気導体を結線する。
【解決手段】電動機の固定子における巻線の結線構造であって、前記巻線は、固定子鉄心に組み付けられる複数の第1電気導体と、前記第1電気導体の端部同士を接続する複数の第2電気導体と、を有しており、前記第1電気導体の端部は、前記固定子鉄心から突出しており、前記複数の第2電気導体は、絶縁材料からなる支持部材に埋め込まれており、前記支持部材は、前記第1電気導体の端部が挿入される挿入穴を有しており、前記挿入穴は、前記固定子鉄心との対向部から前記第2電気導体まで延びている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の固定子における巻線の結線構造であって、
前記巻線は、
固定子鉄心に組み付けられる複数の第1電気導体と、
前記第1電気導体の端部同士を接続する複数の第2電気導体と、を有しており、
前記第1電気導体の端部は、前記固定子鉄心から突出しており、
前記複数の第2電気導体は、絶縁材料からなる支持部材に埋め込まれており、
前記支持部材は、
前記第1電気導体の端部が挿入される挿入穴を有しており、
前記挿入穴は、前記固定子鉄心との対向部から前記第2電気導体まで延びている、
電動機の固定子における巻線の結線構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記支持部材は、
前記第1電気導体の前記端部と前記第2電気導体との接続部を露出させる直線状の露出穴を有しており、
前記接続部は溶接されている、電動機の固定子における巻線の結線構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1電気導体は、
第1線状部と、
第2線状部と、
前記第1線状部と前記第2線状部の一方の端部同士を接続する接続部と、から構成されるU字形状の一体部品であり、
前記第1電気導体を前記固定子鉄心に組み付けると、
前記接続部が、前記固定子鉄心から前記電動機の回転軸方向の一方側に突出配置されると共に、
前記第1線状部の他方の端部と前記第2線状部の他方の端部が、前記固定子鉄心から前記電動機の回転軸方向の他方側に突出配置される、電動機の固定子における巻線の結線構造。
【請求項4】
筒状の基部と、
前記基部を軸方向に横断する複数のスリットと、
前記スリットを貫通した複数の第1電気導体を、第2電気導体で繋いで形成される巻線と、を有するステータの作製方法であって、
前記第1電気導体は、一対の線状部を接続部で繋いだ一体部品であり、
前記スリットの各々に、異なる前記第1電気導体の線状部を、前記軸方向の一方側から挿入して他方側に貫通させると共に、前記スリット内で前記線状部を径方向に並べる第1工程と、
前記スリットの前記他方側で径方向に並んだ複数の線状部を、径方向に変形させて、前記複数の線状部を径方向に間隔を空けて並べる第2工程と
複数の前記第2電気導体が埋め込まれた支持部材を、前記他方側から組み付けて、前記複数の線状部の各々を、対応する前記第2電気導体に接続する第3工程と、を有するステータの作製方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記支持部材は、前記第1電気導体の前記線状部が挿入される挿入穴を有しており、
前記挿入穴は、前記基部との対向部から前記第2電気導体まで延びている、ステータの作製方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記支持部材は、前記第1電気導体の前記線状部と前記第2電気導体との接続部を露出させる直線状の露出穴を有しており、
前記露出穴を介したレーザ光の照射により、接続部を溶接する第4工程を有する、ステータの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の固定子における巻線の結線構造、およびステータの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の交流発電機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-341730号公報
【発明の概要】
【0004】
この交流用発電機(電動機)の固定子(ステータ)は、円筒状の固定子鉄心(ステータコア)を有する。固定子鉄心の内周には、内径側に開口するスリットが設けられている。固定子鉄心の内周においてスリットは、固定子の中心軸回りの周方向の全周に亘って設けられている。
固定子の巻線は、複数の電気導体から構成される。電気導体は、U字形状に形成されている。電気導体は、固定子鉄心の各スリットに、中心軸方向の一方側から挿入される。固定子鉄心の他方側では、電気導体の端部が突出する。
固定子の巻線は、異なるスリットに挿入された電気導体の端部同士を結線して構成される。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある電気導体の端部と他の電気導体の端部とを、固定子鉄心の他方側で結線する際には、電気導体の端部側を、中心軸の径方向に湾曲させたのち、さらに周方向に湾曲させて、結線する端部同士を接触させる。そして、電気導体の端部の互いに接触した領域(接触領域)を溶接する。
しかし、電気導体の端部側を湾曲させると、湾曲に起因する歪みなどにより、電気導体の接触領域の位置にバラツキが生じる傾向がある。バラツキが大きくなると、溶接品質に影響が及ぶ結果、電気導体の結線に影響が及ぶ。
【0006】
そこで、より安定的に、電気導体を結線できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、
電動機の固定子における巻線の結線構造であって、
前記巻線は、
固定子鉄心に組み付けられる複数の第1電気導体と、
前記第1電気導体の端部同士を接続する複数の第2電気導体と、を有しており、
前記第1電気導体の端部は、前記固定子鉄心から突出しており、
前記複数の第2電気導体は、絶縁材料からなる支持部材に埋め込まれており、
前記支持部材は、
前記第1電気導体の端部が挿入される挿入穴を有しており、
前記挿入穴は、前記固定子鉄心との対向部から前記第2電気導体まで延びている、
電動機の固定子における巻線の結線構造とした。
【0008】
本発明の他の態様は、
筒状の基部と、
前記基部を軸方向に横断する複数のスリットと、
前記スリットを貫通した複数の第1電気導体を、第2電気導体で繋いで形成される巻線と、を有するステータの作製方法であって、
前記第1電気導体は、一対の線状部を接続部で繋いだ一体部品であり、
前記スリットの各々に、異なる前記第1電気導体の線状部を、前記軸方向の一方側から挿入して他方側に貫通させると共に、前記スリット内で前記線状部を径方向に並べる第1工程と、
前記スリットの前記他方側で径方向に並んだ複数の線状部を、径方向に変形させて、前記複数の線状部を径方向に間隔を空けて並べる第2工程と
複数の前記第2電気導体が埋め込まれた支持部材を、前記他方側から組み付けて、前記複数の線状部の各々を、対応する前記第2電気導体に接続する第3工程と、を有するステータの作製方法とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、より安定的に、電気導体を結線できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両用のモータの概略構成図である。
図2図2は、巻線の構成要素である第1電気導体を説明する図である。
図3図3は、第1電気導体と第2電気導体から構成される巻線の概念図である。
図4図4は、基部におけるスリットと第1電気導体の配置を説明するための模式図である。
図5図5は、第1電気導体の端部側の配置を説明するための模式図である。
図6図6は、第1電気導体の第2電気導体による接続例を説明するための模式図である。
図7図7は、第1電気導体の第2電気導体による接続例を説明するための模式図である。
図8図8は、支持部材を説明する図である。
図9図9は、支持部材の作製過程を説明する図である。
図10図10は、支持部材の作製過程を説明する図である。
図11図11は、ステータの作製過程を説明する図である。
図12図12は、ステータの作製過程を説明する図である。
図13図13は、比較例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、車両用のモータ1における巻線53の結線構造10に適用した場合を例に挙げて説明する。
図1は、車両用のモータ1の概略構成図である。
図2は、巻線53の構成要素である第1電気導体54を説明する図である。
図3は、第1電気導体54と第2電気導体55から構成される巻線53の概念図である。
図4は、基部51におけるスリット52と第1電気導体54の配置を説明するための模式図である。図4は、図1におけるA-A線に沿ってステータ5を切断した断面を模式的に示している。なお、図4における中心線Cよりも左側の領域では、第1電気導体54の図示を省略してスリット52のみを示している。
【0012】
図1に示すように、モータ1では、ロータ(回転子)4と、ステータ(固定子)5が、ハウジングHS内に収容されている。ハウジングHSは、ケース2とカバー3を、モータ1の回転軸X方向で組みつけて構成される。
【0013】
ロータ4は、モータシャフト40に外挿されている。モータシャフト40においてロータ4は、モータシャフト40との相対回転が規制されている。
モータシャフト40は、長手方向の一端40a側と他端40b側が、ケース2側の支持部23とカバー3側の支持部33で、ベアリングBa、Baを介して回転可能に支持されている。
【0014】
ステータ5は、円筒状の基部51(固定子鉄心)を有している。
基部51には、スリット52が設けられている。スリット52は、基部51の内周51aに開口すると共に、基部51を回転軸X方向に横断している。
図4における左側の領域に示すように、回転軸X方向から見てスリット52は、回転軸X回りの周方向に等間隔で設けられている。スリット52は、回転軸X回りの周方向の全周に亘って設けられている。
【0015】
基部51においてスリット52は、モータ1(基部51)の直径線Lxに沿う直線状に形成されている。回転軸X方向から見てスリット52は、開口を回転軸Xに向けた有底穴である。スリット52は、回転軸Xの径方向の全長に亘って同じ幅W52で形成されている。
【0016】
図1に示すように、ステータ5では、スリット52の部分に巻線53(第1電気導体54)が設けられている。
図3に示すように巻線53は、複数の第1電気導体54を、第2電気導体55で、螺旋状に繋いで構成される。
図2に示すように、第1電気導体54は、棒状または平板状の金属材料を、長手方向の途中位置で湾曲させて、略U字形状に形成したものである。
第1電気導体54では、湾曲させた部位である接続部541が、接続部541の一方側に位置する線状部542Aと、他方側に位置する線状部542Bと、を接続している。
以下においては、線状部542A、542Bを区別しない場合には、単純に線状部542と表記する。
そのため、第1電気導体54は、一対の線状部542(542A、542B)を接続部541で繋いで略U字形状に形成した一体部品であるともいえる。
【0017】
一例として、第1電気導体54は、導電性のある金属材料、例えば銅で形成されている。第1電気導体54の表面は、線状部542の端部542a側の領域を除き、絶縁性材料で被覆されている。線状部542の端部542a側は、第2電気導体55との接続部である。第1電気導体54は、第2電気導体55との接続部を除き、絶縁性材料で被覆されている。
【0018】
図1に示すように、第1電気導体54は、回転軸X方向における一方側(図中、左側)から、ステータ5の基部51に組み付けられる。この際に第1電気導体54の線状部542A、542Bは、異なるスリット52に挿入される。
ここで、異なるスリット52とは、回転軸X回りの周方向の角度位置が異なるスリット52、52を意味する。
【0019】
図1および図4の右側の領域に示すように、1つのスリット52では、複数の線状部542が径方向に並んで収容されている。これらの線状部542は、それぞれ異なる第1電気導体54の線状部である。
図4の場合には、合計6つの線状部542がスリット52内に収容されている。
前記したように、第1電気導体54の表面は絶縁性材料で被覆されており、線状部542におけるスリット52内に位置する領域もまた、絶縁性材料で被覆されている。
そのため、スリット52内で径方向に並んだ線状部542の各々は、隣接する他の線状部542との間の絶縁性が確保されている。
なお、径方向で並んだ線状部542の間に、紙などの絶縁材を介在させても良い。
【0020】
ここで、第1電気導体54を基部51に組み付けると、一方の線状部542Aがスリット52内の内径側に挿入されると共に、他方の線状部542Bが他のスリット内の外径側に挿入される。
そして、第1電気導体54の接続部541は、基部51(スリット52)から突出した位置に配置される。図1に示すように、接続部541は、基部51から見て、回転軸X方向の一方側(図中、左側)に位置している。この状態において、線状部542の端部542a側は、スリット52を回転軸X方向に貫通している。そのため、線状部542の端部542a側は、基部51から見て回転軸X方向の他方側(図中、右側)に位置している。
【0021】
図5は、第1電気導体54の端部542a側の配置を説明するための模式図である。
図5における右側の領域には、図1におけるB-B線に沿ってステータ5を切断したときの、第1電気導体54の線状部542の断面を模式的に示している。なお、図5における中心線Cよりも左側の領域には、第1電気導体54の線状部542を径方向に拡大させる前の状態が示されている。すなわち、第1電気導体54を基部51に組み付けた直後の線状部542の配置を、回転軸X方向から見た状態が示されている。
図6は、第1電気導体54の第2電気導体55による接続例を説明するための模式図である。なお、図6における左側の領域には、支持部材6内における第1電気導体54の線状部542と、第2電気導体55の接続端550との接触状態が示されている。図6における中心線Cよりも右側の領域には、第2電気導体55による接続態様が示されている。なお、図6における右側の領域では、回転軸Xの径方向での第2電気導体55の配索例が示されている。
図7は、第1電気導体54の第2電気導体55による接続例を説明するための模式図である。なお、図7における中心線Cよりも右側の領域には、第2電気導体55の接続態様であって、回転軸X周りの周方向での第2電気導体55の配索例が示されている。
図7における中心線Cよりも左側の領域には、支持部材6の範囲を交差したハッチングを付して示している。
【0022】
図1に示すように、線状部542の端部542a側は、回転軸Xの径方向に間隔を空けて並んでいる。
本実施形態では、直線形状を保持した線状部542の外径側に、5つの線状部542が位置している。
外径側の5つの線状部542は、基部51から離れた位置で、外径側に屈曲した後、端部542aが回転軸Xに沿う方向を向くように、さらに屈曲している。
【0023】
ここで、後述する図5の左側の領域に示すように、第1電気導体54を基部51に組み付けた直後は、同じスリット52内に位置する線状部542の端部542a側の領域は、回転軸X方向から見て、スリット52と重なる位置関係で設けられている。そのため、同じスリット52内の線状部542は、スリット52の径方向の深さL52の範囲内に位置している。
【0024】
本実施形態では、線状部542の端部542a側の領域が、径方向に範囲を持って配置されるようにするために、線状部542の端部542a側の領域が径方向に広がるように湾曲させられている。すなわち、線状部542の端部542a側の領域が、径方向の外側に拡径されている(図5の右側の領域参照)。
回転軸X方向から見て、線状部542の端部542a側の領域は、基部51の直径線Lx上で、回転軸Xの径方向に間隔CLを空けて並んでいる。本実施形態では、径方向で並んだ端部542a、542aの間に、第2電気導体55を配置するための空間が確保されている。
なお、間隔CLは、必ずしも同じである必要は無い。後記する第2電気導体55を配置可能な間隔であれば良い。
【0025】
図1に示すように、線状部542の端部542a側の領域は、支持部材6に挿入されている。支持部材6は、耐熱性と絶縁性を持つ樹脂材料で形成されている。支持部材6の内部には、複数の第2電気導体55が埋め込まれている。
【0026】
以下、支持部材6の構成を、線状部542の端部542a側の領域が支持部材6に挿入されている時の位置関係(図1に示す態様での位置関係)を基準として説明する。
図1に示すように、支持部材6では、ステータ5に対向する側面6aに、挿入穴61が開口している。
挿入穴61は、側面6aから回転軸Xに沿って、反対側の側面6b側に延びている。挿入穴61は、止まり穴である。挿入穴61は、回転軸Xに沿う直線状に設けられている。挿入穴61の奥では、第2電気導体55の接続端550が挿入穴61内に露出している。
そのため、第1電気導体54の線状部542が、挿入穴61に挿入されると、挿入穴61の奥で、線状部542の端部542a側の領域と、第2電気導体55の接続端550とが接触するようになっている。
【0027】
挿入穴61は、スリット52内に収容される線状部542と同数設けられている。支持部材6では、線状部542の端部542aに対向する位置に、合計6つの挿入穴61が設けられている。これら6つの挿入穴61は、回転軸Xの径方向に間隔を空けて並んでいる。
前記したようにスリット52は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。そのため、一例として、回転軸X方向から見たときのスリット52の総数がNである場合、支持部材6には、6N個(=6×N)の挿入穴61が設けられていることになる。
【0028】
支持部材6は、回転軸X方向における他方側(図中、右側)から、拡径後の線状部542に組み付けられる。そうすると、支持部材6の側面6aに開口する挿入穴61の各々に、線状部542の端部542a側が挿入される。
そして、線状部542は、図6における左側の領域に示すように、第2電気導体55の接続端550の内周に、線状部542の端部542aの外周が接触する位置で位置決めされる。
【0029】
図1に示すように、支持部材6では、ステータ5とは反対側の側面6bに、露出穴62が開口している。
露出穴62は、側面6bから回転軸Xに沿って、側面6aに向けて直線状に延びている。露出穴62は、止まり穴である。露出穴62の奥では、線状部542の端部542aと第2電気導体55の接続端550との接続部Pが、露出穴62内に露出している。
露出穴62は、当該露出穴62内に照射したレーザ光で、接続部Pを溶接して、線状部542の端部542aと第2電気導体55の接続端550とを結線するために設けられている。
【0030】
支持部材6の内部に埋め込まれた第2電気導体55は、ある第1電気導体54の線状部542と、他の第1電気導体54の線状部542とを接続するために設けられている。
図6における右側の領域に示すように、第2電気導体55は、回転軸X周りの周方向に離れた位置にある線状部542であって、径方向に離れた位置にある線状部542、542同士を接続する。
【0031】
ここで、図6における接続部P1にある線状部542と、接続部P2にある線状部542とを接続する第2電気導体55の場合を例に挙げて説明する。
【0032】
第2電気導体55は、接続部P1の接続端550から延びる第1線状部551と、接続部P2の接続端550から延びる第2線状部552と、接続部553と、を有する。
第1線状部551は、接続部P1にある接続端550に接続しており、この接続端550は、接続部P1にある線状部542に接触している。
第1線状部551は、接続部P1の接続端550の外径側を、周方向に延びている。第1線状部551は、接続部P1から接続部P2に近づく方向に延びている。
【0033】
第2線状部552は、接続部P2にある接続端550に接続しており、この接続端550は、接続部P2にある線状部542に接触している。
第2線状部552は、接続部P2の接続端550の外径側を、周方向に延びている。第2線状部552は、接続部P2から接続部P1に近づく方向に延びている。
【0034】
接続部553は、回転軸Xの径方向に延びており、第1線状部551と第2線状部552とを接続している。
よって、接続部P1にある線状部542と、接続部P2にある線状部542は、第2電気導体55を介して結線されている。
【0035】
接続部P1の内径側の接続部P3にある線状部542と、接続部P2の内径側の接続部P4にある線状部542も、基本形状が同じ第2電気導体55を介して、結線されている。
第2電気導体55は、内径側に位置する第2電気導体55ほど、第1線状部551と第2線状部552の周方向の長さが短くなっている。
【0036】
図7の右側の領域に示すように、第2電気導体55は、回転軸X周りの周方向にも位置をずらして設けられている。
接続部P1にある線状部542と接続部P2にある線状部542とを結線する第2電気導体55を、回転軸X周りの周方向の位相をずらして配置することで、接続部P1の隣の接続部P1’にある線状部542と、接続部P2の隣の接続部P2’にある線状部542とが結線される。
【0037】
支持部材6では、総ての第2電気導体55が、耐熱性と絶縁性を持つ樹脂材料に埋め込まれている。そのため、図7における左側の領域に示すように、交差したハッチングで示した範囲が支持部材6の範囲となる。回転軸X方向から見て支持部材6は、リング状を成している。そして、支持部材6の領域の紙面手前側に、前記した露出穴62が開口している。露出穴62の奥に、線状部542と第2電気導体55との接続部が露出している。
【0038】
図8は、支持部材6を説明する図である。図8は、図7におけるA-A矢視方向から支持部材6を見たときの側面を展開して模式的に示している。図8では、第2電気導体55が支持部材6にどの様に埋め込まれているのかを説明するために、図7における左側の領域において、実線で示した第2電気導体55のみが示されている。
【0039】
図8に示すように、支持部材6内に埋め込まれた第2電気導体55は、接続端550、550と、これら接続端550、550の間の領域(第1線状部551、第2線状部552、接続部553)とが、回転軸X方向でオフセットしている。
そのため、接続端550、550のほうが、接続端550、550の間の領域よりもステータ5側(図中、左側)に位置している。そのため、第2電気導体55は、回転軸Xの径方向から見て湾曲している。第2電気導体55が湾曲した形状を持つことで、回転軸X周りの周方向で隣接する他の第2電気導体55との干渉を防いでいる。
【0040】
回転軸Xの径方向から見て、第2電気導体55の接続端550の側面6a側(図中、左側)に、挿入穴61が位置しており、反対側の側面6b側(図中、右側)に、露出穴62が位置している。
【0041】
[支持部材の作製過程]
図9および図10は、支持部材6の作製過程を説明する図である。
なお、図10の(a)は、図9の(b)におけるA-A線に沿って金型90を切断した断面に相当する。
支持部材6は、樹脂材料の射出成型により形成される。
射出成型に用いられる金型90は、下型91と上型95とから構成される。
下型91は、底壁部910と、底壁部910の外周を全周に亘って囲む周壁部911と、から有底筒状に形成されている。
周壁部911には、周壁部911を厚み方向に貫通する貫通孔911aが設けられている。周壁部911の外周には、貫通孔911aを全周に亘って囲む筒状の接続口912が設けられている。接続口912には、溶融状態の樹脂材料の供給口(図示せず)が接続される。
【0042】
周壁部911の内側には、支持柱915が設けられている。支持柱915は、底壁部910の上面910aに直交する向きで設けられている。
本実施形態では、支持柱915を、露出穴62の形成と、第2電気導体55の支持に利用している。
図1に示すように、露出穴62は、線状部542の端部542aと、第2電気導体55の接続端550との接続部Pを露出させる。そのため、露出穴62の形成に関わる支持柱915は、第2電気導体55の接続端550に、必ず接触させて設ける必要がある。
よって、下型91に支持柱915を設けて、支持柱915に第2電気導体55(接続端550)を載置させることで、金型90内の適切な位置に、第2電気導体55を配置できるようにしている。そして、第2電気導体55の支持安定性を確保するために、支持柱915の先端面915aは、第2電気導体55の接続端550が載置される平坦面となっている。支持柱915は、第2電気導体55の接続端550と同数設けられている。
【0043】
上型95は、底壁部950と、底壁部950の外周を全周に亘って囲む周壁部951と、から有底筒状に形成されている。
周壁部951の内側には、支持柱955が設けられている。支持柱955は、底壁部950の下面950aに直交する向きで設けられている。
本実施形態では、支持柱955を、挿入穴61の形成に利用している。
図1に示すように、挿入穴61は、当該挿入穴61に挿入される線状部542が、第2電気導体55の接続端550に接触する位置まで形成されている必要がある。そのため、支持柱955の高さh955は、上型95と下型91とを組み付けた際に、支持柱955の先端955aが、下型91側の支持柱915の先端面915aに当接する高さに設定されている。支持柱955の断面形状は、線状部542の端部542a側の断面形状と同じである。
【0044】
支持部材6の形成は、以下の手順で行われる。
(I)下型91の支持柱915に、第2電気導体55を載置したのち、上型95を下型91に組み付ける(図9の(a)、(b)参照)。
これにより、金型90の内部に空間S90が形成される。
図10の(a)に示すように、この状態では、第2電気導体55の接続端550が、下型91側の支持柱915に載置された状態で空間S90内に配置される。さらに、上型95側の支持柱955が、上型95と下型91との組付け方向から、支持柱915に当接すると共に、支持柱915に載置された接続端550に接触した状態となる。
【0045】
(II)空間S90内に、溶融状態の樹脂材料を射出して固化させる。
第2電気導体55が内部に埋め込まれた樹脂製の支持部材6が形成される。
(III)上型95を下型91から離間させて、形成された支持部材6を取り出す(図9の(c)、図10の(b)参照)。
【0046】
図10の(b)に示すように、形成された支持部材6では、支持柱915、955が位置していた領域が、それぞれ露出穴62、挿入穴61となる。
挿入穴61は、接続端550に隣接する位置まで形成されていると共に、挿入穴61の一部分で、露出穴62に連絡している。
【0047】
[ステータの作製過程]
図11および図12は、ステータ5の作製過程を説明する図である。
ステータ5は、以下の工程を経て作製される。
(I)第1工程(挿入工程)
第1工程では、第1電気導体54が、ステータ5の基部51に組み付けられる。
具体的には、基部51のスリット52の各々に、異なる第1電気導体54の線状部542を、モータ1の回転軸X方向の一方側から挿入して他方側に貫通させる。
この際に、第1電気導体54の線状部542を、スリット52内で径方向に並べて配置する。
【0048】
(II)第2工程(径方向拡張工程)
第2工程では、スリット52を貫通した線状部542を径方向に変形させて、複数の線状部542を、径方向に間隔を空けて並べて配置する。
第1電気導体54を基部51に組み付けた直後は、線状部542は、略直線状の形状を保持している(図11の(b)、図5における左側の領域参照)。
そのため、第1電気導体54と、支持部材6内の第2電気導体55との組付けを行えるようにするためには、線状部542を、回転軸Xの径方向に間隔を空けて配置する必要がある。
【0049】
そこで、線状部542の端部542a側の領域が、径方向に範囲を持って配置されるように、線状部542の端部542a側の領域が径方向の外側に広がるように湾曲させられる(図11の(b)、(c)、図5における右側の領域参照)。
【0050】
(III)第3工程(組付け工程)
第3工程では、複数の第2電気導体55が埋め込まれた支持部材6を、回転軸X方向から、第1電気導体54に組み付けて、第1電気導体54の線状部542の各々を、対応する第2電気導体55に接続する。
具体的には、線状部542の端部542a側の領域を、支持部材6の挿入穴61に挿入して、挿入した線状部542の端部542a側の領域を、挿入穴61内に露出する第2電気導体55の接続端550に接触させる(図12の(a)、(b)参照、図6における左側の領域参照)。
この際に、挿入穴61内の空気は、挿入穴61に挿入された線状部542により、露出穴62側に押される。そして、挿入穴61が露出穴62に連絡しているので、最終的に、露出穴62を通って支持部材6の外部に排出される(図12の(a)参照)。よって、挿入穴61と線状部542とが整合する形状で形成されていても、支持部材6の各挿入穴61への、線状部542の挿入をスムーズに行える。
【0051】
(IV)第4工程(溶接工程)
第4工程では、露出穴62を介したレーザ光の照射により、第1電気導体54の線状部542と、第2電気導体55の接続端550との接続部Pを溶接する。
具体的には、露出穴62の奥に、第1電気導体54の線状部542と、第2電気導体55の接続端550との接続部Pが露出している。接続部Pは、露出穴62の開口方向の延長上に位置している。よって、露出穴62の各々にレーザ光を照射することで、線状部542と接続端550との接続部Pが溶接される。これにより、線状部542と接続端550が確実に結線される。
特に、支持部材6内に埋め込まれた接続端550と、支持部材6の挿入穴61に挿入された線状部542は、位置関係が規定されているので、露出穴62内に接続部Pが確実に位置することになる。
よって、接続部Pの位置ズレが起こり難いので、接続端550と線状部542との溶接による結線を確実に行えるようになっている。
【0052】
図13は、比較例を説明する図である。具体的には、図13は、支持部材6を用いずに、第1電気導体54の線状部542、542同士を接続する場合を説明する図である。図13における中心線Cよりも左側は、線状部542、542を径方向に拡大する場合の線状部542、542の変位方向を矢印で示している。中心線Cよりも右側は、拡径後の線状部542、542を結線する場合の線状部542、542の変位方向を矢印で示している。
【0053】
支持部材6を用いない従来の場合には、拡径後の線状部542、542を互いに近づける方向に湾曲させる必要がある。
例えば、位置Paにある線状部542と、位置Pbにある線状部542とを結線する場合には、線状部542、542を、回転軸X周りの周方向で互いに近づける方向に湾曲させて、直径線Lx上で互いに接触させる必要がある。
【0054】
この場合において線状部542、542は、回転軸Xの径方向の湾曲(図13における左側の領域参照)と、回転軸回りの周方向の湾曲(図13における右側の領域参照)を経て、互いに接触させられる。そして、線状部542、542同士が接触した領域を溶接することで、線状部542と線状部542が結線される。
【0055】
しかし、2回の湾曲過程を経て線状部542、542同士を接触させると、接触する位置にバラツキが生じる。これは、径方向に湾曲させたときの誤差と、周方向に湾曲させたときの誤差が、積み上がるためである。
例えば、位置Paにある線状部542と、位置Pbにある線状部542とが接触する位置が、直径線Lx上にあっても、位置Pcにある線状部542と、位置Pdにある線状部542とが接触する位置が、直径線Lx上にならない場合もある。
【0056】
このように、線状部542、542同士が接触する位置のバラツキがあると、溶接する位置にもバラツキが生じる可能性がある。溶接する位置にバラツキが生じると、溶接品質が低下する可能性がある。
【0057】
これに対して、本実施形態では、支持部材6を用いており、支持部材6内に埋め込まれた接続端550と、支持部材6の挿入穴61に挿入された線状部542は、位置関係が規定されている。
そして、接続部Pの位置は、回転軸X方向から見たときに常に露出穴62内となり、接続部Pの位置ズレが生じにくい。よって、接続端550と線状部542との溶接による、第1電気導体54の線状部542と第2電気導体55との結線を安定的に行えるようになっている。
【0058】
以上の通り、本実施形態にかかる結線構造10は、
(1)モータ1(電動機)のステータ5(固定子)における巻線53の結線構造10である。
巻線53は、
基部51(固定子鉄心)に組み付けられる複数の第1電気導体54と、
第1電気導体54の線状部542の端部542a同士を接続する複数の第2電気導体55と、を有する。
第1電気導体54の線状部542の端部542aは、基部51からモータ1の回転軸X方向に突出している。
複数の第2電気導体55は、絶縁材料からなる支持部材6に埋め込まれている。
支持部材6は、第1電気導体54の端部542a側の領域が挿入される挿入穴61を有している。
挿入穴61は、基部51との対向部である側面6aから第2電気導体55まで延びている。
【0059】
このように構成すると、基部51から突出する第1電気導体54の端部542aを、支持部材6の挿入穴61に挿入することで、複数の第1電気導体54の端部542a同士が、第2電気導体55を介して接続される。
支持部材6により、第1電気導体54の端部542aと、第2電気導体55との位置関係が決められているので、第1電気導体54の端部542aと第2電気導体55との接触位置(接続部Pの位置)を、所望の位置に位置決めできる。これにより、接触位置のばらつきを防ぐことができるので、第1電気導体54の端部542aと第2電気導体55とを、より安定的に結線できる。
【0060】
(2)支持部材6は、第1電気導体54の端部542aと第2電気導体55の接続端550(端部)との接続部Pを露出させる直線状の露出穴62を有している。
接続部Pは溶接されている。
【0061】
このように構成すると、支持部材6に設けた露出穴62の位置が、第1電気導体54と第2電気導体55とを結線するための接続部Pの位置となる。支持部材6における接続部Pの位置、すなわち溶接位置は決まっているので、接続部Pの位置(溶接位置)の振れを防止できる。よって、溶接品質をより安定化できる。
【0062】
(3)第1電気導体54は、
一対の線状部542、542と、
一対の線状部542、542の一方の端部同士を接続する接続部541と、から構成されるU字形状の一体部品である。
第1電気導体54を基部51に組み付けると、接続部541が、基部51からモータ1の回転軸X方向の一方側に突出配置される。
線状部542、542の他方の端部542a、542aが、基部51からモータ1の回転軸X方向の他方側に突出配置される。
【0063】
このように構成すると、第1電気導体54を基部51に回転軸X方向から組み付けたのち、基部51から突出する線状部542、542に、回転軸X方向から支持部材6を組み付けることで、第1電気導体54と第2電気導体55との結線が完了する。これにより、ステータ5の作製に要する時間短縮と、歩留まりの向上が期待できる。
【0064】
(i)ステータ5は、
筒状の基部51と、
基部51の内周に開口するスリット52と、を有している。
スリット52は、基部51をモータ1の回転軸X方向に横切って設けられている。
基部51においてスリット52は、回転軸X周りの周方向に所定間隔で、全周に亘って設けられている。
スリット52では、複数の第1電気導体54の線状部542が径方向に並んで配置される。
支持部材6をステータ5に組付けると、支持部材6の挿入穴61の各々に、第1電気導体54の線状部542が挿入されて、線状部542の端部542a側(先端側)が、挿入穴61内に露出する第2電気導体55の接続端550に接触する。
【0065】
ステータ5に第1電気導体54を組み付けると、複数の第1電気導体54の線状部542が、基部51から回転軸X方向に突出する。これら線状部542を1つずつ、接続先に接続する必要がないので、ステータ5の作製に要する時間短縮が期待できる。
【0066】
本件発明は、ステータ5の作製方法としても特定できる。
(4)筒状の基部51と、
基部51を回転軸X方向(軸方向)に横断する複数のスリット52と、
スリット52を貫通した複数の第1電気導体54の線状部542を、第2電気導体55で繋いで形成される巻線53と、を有するステータの作製方法である。
第1電気導体54は、一対の線状部542、542を接続部541で繋いだU字形状の一体部品である。
ステータの作製方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を有する。
第1工程では、スリット52の各々に、異なる第1電気導体54の線状部542を、回転軸X方向の一方側から挿入して他方側に貫通させると共に、スリット52内で線状部542を径方向に並べる。
第2工程では、スリット52の他方側で径方向に並んだ複数の線状部542を、径方向に変形させて、複数の線状部542を径方向に間隔を空けて並べる。
第3工程では、複数の第2電気導体55が埋め込まれた支持部材6を、他方側から組み付けて、複数の線状部542の各々を、対応する第2電気導体55に接続する。
【0067】
このように構成すると、基部51から突出する第1電気導体54の端部542aを、支持部材6の挿入穴61に挿入することで、複数の第1電気導体54の端部542a同士が、第2電気導体55を介して接続される。
支持部材6により、第1電気導体54の端部542aと、第2電気導体55との位置関係が決められているので、第1電気導体54の端部542aと第2電気導体55との接触位置を、所望の位置に位置決めできる。これにより、接触位置のばらつきを防ぐことができるので、第1電気導体54の端部542aと第2電気導体55とを、より安定的に結線できる。
【0068】
支持部材6を用いない場合には、第1電気導体54の線状部542、542は、回転軸Xの径方向の湾曲(図13における左側の領域参照)と、回転軸回りの周方向の湾曲(図13における右側の領域参照)を経て、互いに接触させられる。
かかる場合、径方向に湾曲させたときの誤差と、周方向に湾曲させたときの誤差が、積み上がるため、線状部542、542同士が接触する位置にバラツキが生じる。線状部542、542同士が接触する位置のバラツキがあると、溶接する位置にもバラツキが生じる結果、溶接品質が低下する可能性がある。
上記のように構成すると、支持部材6内に埋め込まれた接続端550と、支持部材6の線状部542は、支持部材6の内部で互いに接触するため、位置関係がより厳密となる。
そのため、接続部Pの位置ズレが起こり難いので、接続端550と線状部542との溶接による、第1電気導体54の線状部542と第2電気導体55との結線を安定的に行える。
【0069】
(5)支持部材6は、第1電気導体54の線状部542が挿入される挿入穴61を有する。
支持部材6において挿入穴61は、基部51に対向する側面6a(対向部)から第2電気導体55まで延びている。
【0070】
挿入穴61の奥では、第2電気導体55の接続端550が、挿入穴61の内部に露出している。支持部材6をステータ5に組付けると、支持部材6の挿入穴61の各々に、第1電気導体54の線状部542が挿入されて、線状部542の端部542a側(先端側)が、挿入穴61内に露出する第2電気導体55の接続端550に確実に接触する。
これにより、第2電気導体55の接続端550と、支持部材6の線状部542とが接触する位置(接続部P)のバラツキを抑制できる。接続端550と線状部542との溶接による、第1電気導体54の線状部542と第2電気導体55との結線を安定的に行える。
【0071】
(6)支持部材6は、第1電気導体54の線状部542と第2電気導体55との接続部Pを露出させる直線状の露出穴62を有している。
露出穴62を介したレーザ光の照射により、接続部Pを溶接する第4工程を、さらに有する。
【0072】
このように構成すると、支持部材6に設けた露出穴62の位置が、第1電気導体54と第2電気導体55とを結線するための接続部Pの位置となる。支持部材6における接続部Pの位置、すなわち溶接位置は決まっているので、接続部Pの位置(溶接位置)の振れを防止できる。よって、溶接品質をより安定化できる。
【0073】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。上記の実施形態では、車両用のモータの場合を例示したが、車両以外のモータにも適用可能である。本願発明は、発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 モータ(電動機)
10 結線構造
5 ステータ(固定子)
51 基部(固定子鉄心)
52 スリット
53 巻線
54 第1電気導体
541 接続部
542 線状部
542a 端部
55 第2電気導体
550 接続端(端部)
6 支持部材
6a 側面
61 挿入穴
62 露出穴
P 接続部
X 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13