(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117370
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】延伸フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/08 20060101AFI20240822BHJP
B29C 48/275 20190101ALI20240822BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240822BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20240822BHJP
B29C 48/49 20190101ALI20240822BHJP
B29C 48/16 20190101ALI20240822BHJP
B29K 69/00 20060101ALN20240822BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
B29C55/08
B29C48/275
B29C48/25
B29C48/305
B29C48/49
B29C48/16
B29K69:00
B29L7:00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023435
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】荻野 真悠子
【テーマコード(参考)】
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F207AA28
4F207AA50
4F207AC01
4F207AG01
4F207AG03
4F207AM10
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB22
4F207KK64
4F207KL65
4F207KL84
4F207KM20
4F207KW41
4F210AA28
4F210AA50
4F210AC03
4F210AG01
4F210AG03
4F210AM10
4F210AR12
4F210QA02
4F210QC03
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG08
4F210QG11
4F210QG15
4F210QG18
4F210QL16
4F210QW21
4F210QW45
(57)【要約】
【課題】リサイクル材料を用いて樹脂フィルムを製膜しても、架橋物および/または低分子量物の発生を抑制し得る延伸フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による延伸フィルムの製造方法は、バージン材料およびリサイクル材料から樹脂フィルムを製膜する工程であって、樹脂フィルムの幅方向両端部をリサイクル材料から形成し、それらの間に位置する本体部分をバージン材料から形成する工程と;樹脂フィルムを切断して、第1端部フィルムと製膜フィルムとに分離する工程と;製膜フィルムを延伸する工程と;を含んでいる。リサイクル材料は、第2樹脂から構成される連続相と、混入成分から構成される分散相と、を有している。分散相の最大寸法は、500nm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂を含むバージン材料と、第2樹脂および混入成分を含むリサイクル材料と、を準備する工程と;
前記バージン材料および前記リサイクル材料から長尺状の樹脂フィルムを製膜する工程であって、前記樹脂フィルムの幅方向の両端部を前記リサイクル材料から形成し、前記樹脂フィルムの幅方向の両端部の間に位置する本体部分を前記バージン材料から形成する工程と;
前記樹脂フィルムを切断して、前記樹脂フィルムの幅方向の端部を含む第1端部フィルムと、前記本体部分を含む製膜フィルムとに分離する工程と;
前記製膜フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸する工程と;を含み、
前記リサイクル材料は、前記第2樹脂から構成される連続相と、前記混入成分から構成される分散相と、を有しており、
前記分散相の最大寸法が、500nm以下である、延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記分散相の最大寸法が、10nm以上200nm以下である、請求項1に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれを切断して、第2端部フィルムを得る工程を、さらに含む、請求項1または2に記載の延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第1端部フィルムおよび/または前記第2端部フィルムを含む再生樹脂材料から、リサイクル材料を調製する工程を、さらに含む、請求項3に記載の延伸フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業製品に幅広く利用される延伸フィルムは、樹脂フィルムを延伸して製造される。例えば、長尺状の樹脂フィルムの幅方向両端部をクリップによって把持した状態で、樹脂フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸する、延伸フィルムの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
近年、環境負荷の低減の観点から、各種産業製品の製造時に生じる廃棄物の再利用が望まれている。そこで、樹脂フィルムを、樹脂製品の廃棄物から再生されたリサイクル材料を用いて製膜した後、延伸して延伸フィルムを製造することが検討されている。しかし、リサイクル材料を用いて樹脂フィルムを製膜すると、製膜時に意図しない架橋物および/または低分子量物が発生し、結果として延伸フィルムに所望の特性を付与できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、リサイクル材料を用いて樹脂フィルムを製膜しても、架橋物および/または低分子量物の発生を抑制し得、結果として、所望の特性を有する延伸フィルムを製造し得る延伸フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による延伸フィルムの製造方法は、第1樹脂を含むバージン材料と、第2樹脂および混入成分を含むリサイクル材料と、を準備する工程と;該バージン材料および該リサイクル材料から長尺状の樹脂フィルムを製膜する工程であって、該樹脂フィルムの幅方向の両端部を該リサイクル材料から形成し、該樹脂フィルムの幅方向の両端部の間に位置する本体部分を該バージン材料から形成する工程と;該樹脂フィルムを切断して、該樹脂フィルムの幅方向の端部を含む第1端部フィルムと、該本体部分を含む製膜フィルムと、に分離する工程と;該製膜フィルムを長尺方向と交差する方向に延伸する工程と;を含んでいる。該リサイクル材料は、該第2樹脂から構成される連続相と、上記混入成分から構成される分散相と、を有している。該分散相の最大寸法は、500nm以下である。
[2]上記[1]に記載の延伸フィルムの製造方法において、上記分散相の最大寸法は、10nm以上200nm以下であってもよい。
[3]上記[1]または[2]に記載の延伸フィルムの製造方法は、延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれを切断して、第2端部フィルムを得る工程を、さらに含んでいてもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の延伸フィルムの製造方法は、上記第1端部フィルムおよび/または上記第2端部フィルムを含む再生樹脂材料から、リサイクル材料を調製する工程を、さらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、リサイクル材料を用いて樹脂フィルムを製膜しても、架橋物および/または低分子量物の発生を抑制し得、所望の特性を有する延伸フィルムを製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による延伸フィルムの製造方法に係る樹脂フィルムの概略平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の樹脂フィルムから得られる製膜フィルムを延伸した延伸フィルムの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.延伸フィルムの製造方法の概略
図1は本発明の1つの実施形態による延伸フィルムの製造方法に係る樹脂フィルムの概略平面図であり;
図2は
図1の樹脂フィルムから得られる製膜フィルムを延伸した延伸フィルムの概略平面図である。
【0011】
本発明の実施形態による延伸フィルムの製造方法は、準備工程と、製膜工程と、第1切断工程と、延伸工程とを、この順に含んでいる。
準備工程では、バージン材料およびリサイクル材料を準備する。バージン材料は、第1樹脂を含んでいる。リサイクル材料は、第2樹脂および混入成分を含んでいる。リサイクル材料は、第2樹脂から構成される連続相と;混入成分から構成される分散相と;を有している。分散相の最大寸法は、500nm以下、好ましくは350nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下、とりわけ好ましくは100nm以下である。なお、分散相の最大寸法は、例えば、走査電子顕微鏡による断面観察によって測定し得る。
製膜工程では、バージン材料およびリサイクル材料から、長尺状の樹脂フィルム3を製膜する(
図1参照)。より詳しくは、樹脂フィルム3の幅方向の両端部31をリサイクル材料から形成し、樹脂フィルム3の幅方向の両端部31の間に位置する本体部分32をバージン材料から形成する。樹脂フィルム3において、本体部分32は、幅方向の両端部31と一体的に連続している。第1切断工程では、樹脂フィルム3を切断して、樹脂フィルム3の幅方向の端部31を含む第1端部フィルム6と、本体部分を含む製膜フィルム4とに分離する。延伸工程では、製膜フィルム4を長尺方向と交差する方向に延伸する(
図2参照)。
本発明者らは、リサイクル材料とバージン材料とを併用して樹脂フィルムを製膜し、当該樹脂フィルムを延伸して延伸フィルム(特に光学フィルム)を製造することを検討した。すると、リサイクル材料およびバージン材料から樹脂フィルムを製膜するときに、溶融状態のリサイクル材料およびバージン材料の粘度差から、製膜装置(代表的には配管)内において、溶融状態の材料の流動性が変動して滞留が生じ、意図しない架橋物および/または低分子量物が発生する場合があることを発見した。この場合、架橋物および/または低分子量物の存在に起因して、製造される延伸フィルムの特性にばらつきが生じる場合がある。そこで、リサイクル材料について鋭意検討した結果、リサイクル材料に含まれる分散相のサイズを調整すれば、製膜時における架橋物および/または低分子量物の発生を抑制し得ることを見出した。具体的には、まず、分散相の最大寸法が上記上限以下であるリサイクル材料を調製(準備)する。また、バージン材料を、別途準備する。次いで、リサイクル材料から樹脂フィルム3の幅方向の両端部31を形成し、かつ、バージン材料から樹脂フィルム3の本体部分32を形成するように、1枚の樹脂フィルム3を製膜する。このとき、リサイクル材料に含まれる分散相の最大寸法が上記上限以下であるので、溶融状態のリサイクル材料およびバージン材料の流動性を好適に調整でき、架橋物および/または低分子量物の発生を抑制し得る。これによって、リサイクル材料を用いて樹脂フィルム3を製膜しても、所望の特性を有する延伸フィルム5を安定して製造し得る。
【0012】
1つの実施形態において、分散相の最大寸法は、例えば1nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。分散相の最大寸法が上記下限以上であれば、リサイクル材料を円滑に製造し得る。
【0013】
以下では、延伸フィルムの製造方法の各工程の詳細について説明する。
【0014】
B.準備工程
準備工程では、上記のように、バージン材料およびリサイクル材料のそれぞれを準備する。
【0015】
B-1.バージン材料
バージン材料は、再生樹脂材料を含まない合成樹脂材料である。バージン材料の形状として、例えば、ペレット状、粉末状が挙げられる。1つの実施形態では、バージン材料は、バージンペレットとして準備される。以下では、バージン材料がバージンペレットである場合について詳述する。
【0016】
バージンペレットは、任意の適切な形状およびサイズを有している。バージンペレットは、代表的には円柱形状を有している。バージンペレットの最大長さの平均は、例えば1.0mm以上5.0mm以下である。バージンペレットの1つあたりの質量は、例えば5mg以上25mg以下である。
【0017】
バージンペレット(バージン材料)は、第1樹脂を含んでおり、実質的に他の成分を含んでいない。バージンペレットにおける第1樹脂の含有割合は、例えば99.0質量%以上、好ましくは99.2質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上であり、代表的には100質量%以下である。つまり、バージンペレットにおける他の成分の含有割合は、例えば1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下、とりわけ好ましくは0.09質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下であり、代表的には0質量%以上である。
【0018】
第1樹脂は、延伸フィルムの用途に応じて、任意かつ適切に選択される。
第1樹脂として、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、および、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。なお、(メタ)アクリル系樹脂とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。これら第1樹脂は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0019】
バージンペレットが含有する第1樹脂のなかでは、好ましくは、ポリカーボネート(PC)系樹脂、シクロオレフィン(COP)系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、および、ポリエステル系樹脂(代表的には、ポリエチレンテレフタレート(PET))が挙げられ、より好ましくはPC系樹脂が挙げられる。第1樹脂がこのような樹脂材料であると、延伸フィルム(特に光学フィルム)に所望の特性を安定して付与し得る。
【0020】
PC系樹脂として、例えば、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むPC系樹脂が挙げられる。ジヒドロキシ化合物の具体例として、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-プロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-n-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-sec-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレンが挙げられる。PC系樹脂は、上記ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に、イソソルビド、イソマンニド、イソイデット、スピログリコール、ジオキサングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール(TEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、ビスフェノール類などのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0021】
上記したPC系樹脂の詳細は、例えば特開2012-67300号公報および特許第3325560号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0022】
バージンペレット(バージン材料)の溶融粘度Aは、第1樹脂の種類に応じて適宜変更される。バージンペレットの溶融粘度Aは、例えば300Pa・s以上、好ましくは500Pa・s以上、より好ましくは1000Pa・s以上であり、例えば3000Pa・s以下、好ましくは2500Pa・s以下である。なお、ペレットの溶融粘度は、例えば、JIS K 7199に則った方法により測定し得る。
【0023】
バージンペレットは、任意の適切な方法によって調製し得る。バージンペレットの調製方法は、ストランドカット方式であってもよく、ホットカット方式であってもよい。バージンペレットの調製方法の詳細は、例えば、特開2013-181105号公報に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0024】
B-2.リサイクル材料
リサイクル材料は、詳しくは後述するが、再生樹脂材料である。リサイクル材料の形状として、例えば、ペレット状、粉末状が挙げられる。1つの実施形態では、リサイクル材料は、リサイクルペレットとして準備される。以下では、リサイクル材料がリサイクルペレットである場合について詳述する。
【0025】
リサイクルペレットの形状およびサイズは、上記したバージンペレットと同様に説明し得る。リサイクルペレットは、上記した第2樹脂と、第2樹脂に混入する混入成分とを含んでいる。リサイクルペレットにおいて、第2樹脂がマトリックス樹脂として連続相を構成し、混入成分が連続相に粒子状に分散する分散相を構成する。リサイクルペレット(リサイクル材料)が含有する第2樹脂と、バージンペレット(バージン材料)が含有する第1樹脂とは、代表的には同一である。
【0026】
リサイクルペレットにおける第2樹脂の含有割合は、例えば40.0質量%以上、好ましくは50.0質量%以上、より好ましくは70.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上であり、例えば99.1質量%以下である。
リサイクルペレットにおける混入成分の含有割合は、例えば60.0質量%以下、好ましくは50.0質量%以下、より好ましくは30.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下である。リサイクルペレットにおける混入成分の含有割合の下限は、例えば0.3質量%、また例えば0.5質量%、また例えば0.9質量%である。
リサイクルペレットにおいて、第2樹脂に対する混入成分の質量比(混入成分/第2樹脂)は、例えば0.01以上であり、例えば1.5以下、好ましくは1.0以下である。混入成分/第2樹脂が上記範囲内であると、樹脂フィルムにおけるムラを安定して低減し得る。
【0027】
リサイクルペレット(リサイクル材料)に含有される混入成分は、代表的には、異物を含んでいる。混入成分は、異物に加えて、第2樹脂とは異なる樹脂成分を含んでいてもよい。異物は、樹脂成分とは異なる固体成分である。異物として、例えば、アミド系異物、繊維系の異物などが挙げられる。異物は、単独でまたは組み合わせてリサイクルペレットに混入され得る。
混入成分における異物の含有割合は、例えば1体積%以上100体積%以下であり、また例えば10体積%以上50体積%以下である。
【0028】
混入成分に含まれる異物のうち、最も大きい異物の最大寸法は、例えば3mm未満、好ましくは1mm未満である。最も大きい異物の最大寸法が上記上限未満であれば、樹脂フィルムにムラが生じることを安定して抑制し得る。なお、異物の最大寸法は、例えば、パーティクルカウンターによって測定し得る。
【0029】
1つの実施形態において、異物は、最大寸法が500μm以上1mm未満である第1異物と;最大寸法が500μm未満である第2異物と;を含んでいる。異物は、最大寸法が1mmを超過する第3異物を含んでいてもよい。
混入成分に含まれる異物において、第1異物の含有割合は、例えば5体積%以上であり、例えば50体積%以下、好ましくは40体積%以下である。
混入成分に含まれる異物において、第2異物の含有割合は、例えば50体積%以上、好ましくは60体積%以上であり、例えば95体積%以下である。
第1異物および/または第2異物の含有割合が上記範囲内であれば、樹脂フィルムにムラが生じることをより安定して抑制し得る。
【0030】
混入成分は、異物に加えて、第2樹脂とは異なる樹脂成分を含み得る。樹脂成分として、例えば、上記した第1樹脂と同様のものが挙げられる。混入成分は、単独または2種以上の樹脂成分を含み得る。1つの実施形態において、樹脂成分は、オレフィン系樹脂(代表的にはポリエチレン)を含んでいる。
混入成分における樹脂成分の含有割合は、例えば0体積%以上99体積%以下であり、また例えば50体積%以上90体積%以下である。
【0031】
リサイクルペレットの気泡率は、例えば10体積%以下、好ましくは3体積%以下、より好ましくは0体積%である。なお、気泡率は、顕微鏡による観察と解析によって測定し得る。リサイクルペレットの気泡率が上記上限以下であれば、樹脂フィルムに気泡が混入することを抑制し得る。
【0032】
リサイクルペレット(リサイクル材料)の溶融粘度Cは、第2樹脂および混入成分の種類に応じて適宜変更される。リサイクルペレットの溶融粘度Cは、例えば200Pa・s以上、好ましくは350Pa・s以上であり、例えば2800Pa・s以下、好ましくは2300Pa・s以下である。
【0033】
バージンペレット(バージン材料)の溶融粘度およびリサイクルペレット(リサイクル材料)の溶融粘度は、例えば、下記式(1)を満たし、好ましくは、下記式(2)を満たす。
【数1】
【数2】
(式(1)および(2)中、Aはバージン材料の溶融粘度[Pa・s]を表し、Cはリサイクル材料の溶融粘度[Pa・s]を表す。)
【0034】
バージンペレットの溶融粘度Aおよびリサイクルペレットの溶融粘度Cは、上記式(1)を満足する。バージンペレットの溶融粘度Aに対する、バージンペレットとリサイクルペレットとの溶融粘度差の絶対値(|(C-A)/A|)は、0以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.08以上であり、0.65未満、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下、さらに好ましくは0.45以下、とりわけ好ましくは0.35以下、特に好ましくは0.23以下、最も好ましくは0.20以下である。|(C-A)/A|が上記範囲であると、溶融状態のリサイクル材料およびバージン材料の流動性をより一層好適に調整でき、樹脂フィルムにおける架橋物および/または低分子量物の発生をより一層抑制し得る。
【0035】
B-2-1.リサイクルペレットの調製方法
リサイクルペレットは、再生樹脂材料から任意の適切な方法によって調製し得る。
再生樹脂材料は、廃棄された樹脂製品または樹脂製品の製造時に生じる廃棄物を回収して得られる。樹脂製品として、例えば、位相差フィルムなどの光学フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなどの熱可塑性樹脂から構成される包装材料などが挙げられる。これら樹脂製品のなかでは、好ましくは光学フィルムが挙げられ、より好ましくは位相差フィルムが挙げられる。つまり、リサイクルペレットは、好ましくは、光学フィルム(代表的には位相差フィルム)、および/または、光学フィルムの製造時に生じる廃棄物から調製される。詳しくは後述するが、本発明の実施形態による延伸フィルムの製造方法において、副生物として生じる端部フィルム(第1端部フィルムおよび/または第2端部フィルム)は、再生樹脂材料として、リサイクルペレットの調製に好適に利用し得る。なお、再生樹脂材料は、複数回リサイクルされていてもよい。すなわち、リサイクルペレットは、再生樹脂材料から製造された樹脂製品(代表的には光学フィルム)、および/または、当該樹脂製品の製造時に生じる廃棄物から調製されてもよい。
【0036】
リサイクルペレットの調製方法として、例えば、上記したバージンペレットの調製方法と同様の方法が挙げられる。1つの実施形態において、リサイクルペレットの調製方法は、再生樹脂材料を溶融する工程(溶融工程)と;溶融状態の再生樹脂材料を押出成形する工程(押出成形工程)と;を含んでいる。
【0037】
溶融工程に供される再生樹脂材料における水分率は、例えば2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.9質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。再生樹脂材料における水分率が上記上限以下(未満)であれば、リサイクルペレットを用いて調製される樹脂フィルムに、気泡が生じることを抑制し得る。再生樹脂材料における水分率の下限は、代表的には0.01質量%以上である。なお、再生樹脂材料における水分率は、例えば、カールフィッシャー法によって測定し得る。
【0038】
再生樹脂材料の水分率を上記範囲に調整するには、任意の適切な方法が採用され得る。再生樹脂材料の水分率調整方法として、例えば、再生樹脂材料を防湿袋に収容して保管することが挙げられる。
【0039】
防湿袋は、任意の適切な構成を有し得る。防湿袋として、例えば、内袋にアルミニウムを融着した梱包材が挙げられる。防湿袋の透湿度は、例えば10g/m2・24h以下、好ましくは5g/m2・24h以下、好ましくは3g/m2・24h以下である。透湿度は、例えばカップ法によって測定し得る。
保管時間は、例えば2時間以上、好ましくは12時間以上であり、例えば72時間以下、好ましくは36時間以下である。このような方法によれば、再生樹脂材料を上記の時間保管していても、再生樹脂材料の水分率を安定して上記範囲に維持し得る。
保管温度は、例えば0℃以上30℃以下であり、保管湿度は、例えば0%RH(相対湿度)以上60%RH(相対湿度)以下である。
【0040】
溶融工程では、再生樹脂材料を加熱して溶融させる。代表的には、再生樹脂材料は、スクリューが格納されているシリンダ内に供給されて、加熱溶融されるとともに、スクリューによって混錬される。
【0041】
加熱温度および加熱時間のそれぞれは、再生樹脂材料の種類に応じて、任意かつ適切に設定される。加熱温度は、例えば80℃以上150℃以下である。加熱時間(滞留時間)は、例えば6時間以上48時間以下である。
【0042】
スクリューの回転速度は、例えば5rpm以上、好ましくは10rpm以上、より好ましくは20rpm以上、さらに好ましくは40rpm以上であり、例えば200rpm以下、好ましくは100rpm以下、より好ましくは80rpm以下である。スクリューの回転速度が上記下限以上であれば、リサイクルペレットにおける分散相の最大寸法を上記上限以下に安定して調整し得る。スクリューの回転速度が上記下限以上であれば、リサイクルペレットに気泡が混入することを抑制し得る。
【0043】
スクリューの直径Dに対するスクリューの長さL(L/D)は、例えば15以上、好ましくは20以上であり、例えば60以下、好ましくは40以下である。
【0044】
これによって、溶融状態の再生樹脂材料(以下、溶融樹脂とする。)が得られる。
1つの実施形態において、溶融樹脂は、押出成形工程に供される前にフィルターを通過する。これによって、溶融樹脂に含まれる粗大異物を、溶融樹脂から除去し得る。
【0045】
フィルターは、任意の適切な構成を採用し得る。フィルターとして、例えば、スクリーンメッシュ、ディスクフィルターが挙げられ、好ましくはスクリーンメッシュが挙げられる。
スクリーンメッシュの目開きは、例えば2.6mm以下(8メッシュ)、好ましくは2.0mm以下(10メッシュ)、より好ましくは0.60mm以下(30メッシュ)、さらに好ましくは0.15mm以下(100メッシュ)であり、例えば0.034mm以上(400メッシュ)、好ましくは0.045mm以上(300メッシュ)、より好ましくは、0.060mm以上(250メッシュ)である。スクリーンメッシュの目開きが上記上限以下であれば、粗大異物を溶融樹脂から円滑に除去し得、とりわけ、目開きが1.0mm未満であると、最大寸法が1mmを超過する粗大異物を溶融樹脂から除去し得る。スクリーンメッシュの目開きが上記下限以上であれば、溶融樹脂を円滑に通過させ得る。
【0046】
押出成形工程では、溶融樹脂をダイから吐出させた後、溶融樹脂を冷却して固化させる。これによって、リサイクルペレットが調製される。
リサイクルペレットの調製方法がストランドカット方式である場合、溶融樹脂をダイから糸状に吐出させた後に冷却して、再生樹脂材料から構成されるストランドを得る。その後、ストランドを所定のサイズにカットして、リサイクルペレットを得る。
リサイクルペレットの調製方法がホットカット方式でである場合、溶融樹脂をダイから糸状に吐出させた直後にカットして、リサイクルペレットを得る。
【0047】
C.製膜工程
図1に示すように、製膜工程では、上記したバージンペレットおよびリサイクルペレットから、長尺状の樹脂フィルム3を製膜する。より詳しくは、リサイクルペレットから樹脂フィルム3の幅方向の両端部31を形成し、バージンペレットから樹脂フィルム3の本体部分32を形成して、1枚の樹脂フィルム3を製膜する。
樹脂フィルムの製膜方法の詳細は、例えば、特開2006-315275号公報に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。より詳しくは、特開2006-315275号公報に記載の脆性樹脂フィルムの製造方法において、脆性樹脂Aとしてバージンペレットを用い、靭性樹脂Bとしてリサイクルペレットを用いることで、樹脂フィルム3を製膜し得る。
このとき、リサイクルペレットに含まれる分散相の最大寸法が上記上限以下であれば、溶融状態のリサイクル材料およびバージン材料の流動性を好適に調整でき、架橋物および/または低分子量物の発生を抑制し得る。
なお、架橋物として、代表的には、樹脂の熱架橋によるゲル状の異物などが挙げられる。
また、低分子量物として、例えば、樹脂の熱劣化によって分子量が低下したものや、酸化防止剤などの添加剤の昇華物が挙げられる。
【0048】
製膜工程において得られる樹脂フィルム3は、任意の適切な構成を採用し得る。樹脂フィルム3は、上記のように、長尺状を有している。樹脂フィルム3の各方向における寸法は、任意の適切な値が採用され得る。樹脂フィルム3の幅(長尺方向と直交する方向の寸法)は、例えば500mm以上、好ましくは700mm以上であり、例えば2500mm以下、好ましくは2000mm以下である。樹脂フィルム3の厚みは、例えば40μm以上、好ましくは60μm以上であり、例えば200μm以下、好ましくは180μm以下である。
【0049】
D.第1切断工程
第1切断工程では、上記した樹脂フィルム3の幅方向の両端部31のそれぞれを切断する。
図示例では、樹脂フィルム3に2つの切断線33を形成する。切断線33は、樹脂フィルム3の長尺方向に沿って延びている。2つの切断線33は樹脂フィルム3の幅方向において互いに所定の間隔を空けて形成され、かつ、2つの切断線33のそれぞれは、樹脂フィルム3の幅方向の端縁から所定の間隔を空けて形成される。
【0050】
これによって、樹脂フィルム3が、樹脂フィルム3の幅方向の端部31を含む2つの第1端部フィルム6と、本体部分32を含む製膜フィルム4と、に分離される。2つの第1端部フィルム6および製膜フィルム4のそれぞれは、長尺状を有している。
【0051】
第1端部フィルム6の幅は、樹脂フィルム3の幅を100%としたときに、例えば1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、例えば50%以下、好ましくは30%以下である。第1端部フィルム6の幅は、例えば10mm以上、好ましくは50mm以上、より好ましくは100mm以上であり、例えば1000mm以下、好ましくは600mm以下である。第1端部フィルムの幅が上記下限以上であると、第1端部フィルムにリサイクルペレット由来の部分を十分に含め得る。端部フィルムの幅が上記上限以下であると、延伸フィルムの歩留まりの向上を図り得る。
【0052】
第1端部フィルム6は、任意の適切な方法によって回収されてもよい。回収された第1端部フィルム6は、再生樹脂材料として、上記したリサイクルペレットの調製方法に好適に利用し得る。
【0053】
E.延伸工程
図2に示すように、延伸工程では、長尺状の製膜フィルム4を長尺方向と交差する方向に延伸する。延伸方法は、任意の適切な方法が採用され得る。自由端延伸、固定端延伸などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方法のなかでは、好ましくは固定端一軸延伸が挙げられる。
【0054】
固定端一軸延伸は、代表的には、製膜フィルム4の幅方向の端部を把持可能なクリップを備える延伸装置により実施される。延伸装置は、代表的にはテンター延伸装置である。延伸装置は、製膜フィルム4における幅方向の両端部のそれぞれをクリップによって把持(代表的には挟持)した状態で、製膜フィルム4を長尺方向と交差する方向に延伸する。延伸方向は、製膜フィルム4の長尺方向と実質的に直交する方向(例えば、長尺方向に対して90°±1°)であってもよく、製膜フィルム4の長尺方向および幅方向の両方と交差する方向であってもよい。
【0055】
延伸工程の詳細は、例えば、特許第7096940号公報、特開2004-226686号公報、国際公開第2007/111313号に記載されている。当該特許文献の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0056】
これによって、
図2に示すように、長尺状の延伸フィルム5が製造される。延伸工程における幅方向の延伸倍率(延伸フィルムの幅/製膜フィルムの幅)は、例えば1.1以上、好ましくは1.5以上であり、例えば6.0以下、好ましくは4.0以下である。
【0057】
延伸フィルム5は、代表的には、上記した延伸方向に遅相軸を有しており、位相差フィルムとして構成される。延伸フィルム5の屈折率は、nx>nyの関係を示す。
【0058】
1つの実施形態において、延伸フィルム5は、λ/4板として機能する。製品フィルムがλ/4板として機能する場合、延伸フィルム5の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~180nm、好ましくは135nm~155nmである。
別の実施形態において、延伸フィルム5は、λ/2板として機能する。延伸フィルムがλ/2板として機能する場合、延伸フィルムの面内位相差Re(550)は、例えば230nm~310nm、好ましくは250nm~290nmである。
【0059】
延伸フィルム5の波長依存性は特に制限されない。延伸フィルム5は、好ましくは、逆分散の波長依存性を示す。延伸フィルム5のRe(450)/Re(550)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.95である。また、延伸フィルム5のRe(550)/Re(650)は、好ましくは0.8以上1.0未満であり、より好ましくは0.8~0.97である。
【0060】
延伸フィルム5の光弾性係数の絶対値は、例えば、2×10-12(m2/N)~100×10-12(m2/N)であり、好ましくは、5×10-12(m2/N)~50×10-12(m2/N)である。
【0061】
F.第2切断工程
1つの実施形態では、延伸フィルムの製造は、第2切断工程をさらに含んでいる。第2切断工程では、延伸フィルム5の幅方向の両端部のそれぞれを切断する。
【0062】
図示例では、延伸フィルム5に2つの切断線55を形成する。切断線55は、延伸フィルム5の長尺方向に沿って延びている。2つの切断線55は延伸フィルム5の幅方向において互いに所定の間隔を空けて形成され、かつ、2つの切断線55のそれぞれは、延伸フィルム5の幅方向の端縁から所定の間隔を空けて形成される。
【0063】
延伸工程において固定端一軸延伸が実施されると、延伸フィルム5における幅方向の両端部のそれぞれには、クリップの把持跡51が形成される場合がある。クリップの把持跡51は、延伸フィルム5における把持跡3以外の部分よりも、硬くて脆い。
【0064】
また、延伸フィルム5の遅相軸は、幅方向において軸ずれする場合がある。より詳細には、延伸フィルム5の遅相軸の方向は、幅方向端部において、所望の角度からずれやすい。当該軸ずれは、代表的には、延伸フィルム5の幅方向中央部では実質的に発現せず、幅方向端部に近づくほど大きくなる。図示例の延伸フィルム5では、幅方向中央部において、遅相軸が上記した延伸方向と実質的に平行(例えば、軸ずれが0°±1°未満)である。また、延伸フィルム5の幅方向端部において、遅相軸は上記した延伸方向と交差(例えば、軸ずれが1°~3°)していてもよい。
【0065】
そのため、第2切断工程を実施すれば、延伸フィルム5から、クリップの把持跡51および/または、延伸フィルムのうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を除去し得る。また、延伸フィルム5から、延伸フィルム5の幅方向の両端部に対応する2つの第2端部フィルム7が得られる。
【0066】
図示例の第2端部フィルム7は、クリップの把持跡51を含んでいる。また、2つの第2端部フィルム7が切断された延伸フィルム2は、製品フィルム8として構成される。つまり、第2切断工程において、延伸フィルム5は、代表的には、2つの第2端部フィルム7と、製品フィルム8とに分離される。製品フィルム8は、代表的には、上記した位相差フィルムとして構成される。
【0067】
第2端部フィルム7の幅は、延伸フィルム5の幅を100%としたときに、例えば0.5%以上、好ましくは1.0%以上、より好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上であり、例えば30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下である。第2端部フィルム7の幅は、例えば10mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは200mm以上であり、例えば600mm以下、好ましくは500mm以下、より好ましくは300mm以下である。
第2端部フィルムの幅が上記下限以上であると、第2端部フィルムにクリップの把持跡の全体を安定して含め得、かつ、延伸フィルムのうち上記した軸ずれが相対的に大きい部分を第2端部フィルムに含め得る。その結果、製品フィルムにクリップの把持跡が残存することを抑制し得、かつ、製品フィルムにおける軸ずれを低減し得る。第2端部フィルムの幅が上記上限以下であると、製品フィルムの歩留まりを向上し得る。
【0068】
第2端部フィルム7は、任意の適切な方法によって回収されてもよい。回収された第2端部フィルム7は、再生樹脂材料として、上記したリサイクルペレットの調製方法に好適に利用し得る。言い換えれば、延伸フィルムの製造は、第1端部フィルム6および/または第2端部フィルム7を含む再生樹脂材料から、リサイクルペレットを調製する工程を、さらに含んでいてもよい。
【実施例0069】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は質量基準である。また、実施例および比較例における各特性の測定方法は以下の通りである。
【0070】
(1)バージンペレットおよびリサイクルペレットの溶融粘度の測定
実施例および比較例に用いられるバージンペレットおよびリサイクルペレットの溶融粘度を、JIS K 7199に則った方法によって、せん断速度100sec-1および測定温度24℃の条件で測定した。その結果を表1~3に示す。
【0071】
(2)リサイクルペレットにおける分散相の最大寸法の測定
実施例および比較例に用いられるリサイクルペレットにおける分散相の最大寸法を、走査型顕微鏡による観察によって測定した。その結果を表1~3に示す。
【0072】
(3)リサイクルペレットに含まれる異物の最大寸法の測定、および、異物における各成分の含有割合の測定
実施例および比較例に用いられるリサイクルペレットにおける異物の最大寸法を、パーティクルカウンターによって測定した。異物は、最大寸法xが500μm以上1mm未満である第1異物、および/または、最大寸法xが500μm未満である第2異物を含んでいた。また、実施例13に係る異物は、第1異物および第2異物に加えて、最大寸法xが1mm以上の第3異物を含んでいた。第1異物、第2異物および第3異物のそれぞれの含有割合(体積%)を、光学顕微鏡による観察および解析によって算出した。その結果を表1~3に示す。
【0073】
(4)端部フィルムにおける水分率
実施例および比較例において、リサイクルペレットの製造工程に供される直前の端部フィルム(再生樹脂材料)の水分率を、カールフィッシャー法によって測定した。その結果を表1~3に示す。
【0074】
(5)架橋物・低分子量物の含有量
実施例および比較例で調製される樹脂フィルムにおける架橋物および/または低分子量物の含有量を、架橋物はAOIによるm2あたりの個数カウントで、低分子量物はフィルム外観による目視の白化度合いによって測定して、下記の基準で評価した。その結果を表1~3に示す。
5:架橋物/フィルム白化が目視で視認できない。
4:架橋物が5個/m2以下/フィルム白化が少し視認できる。
3:架橋物が5個/m2を超過し10個/m2以下/フィルム白化が視認できる。
2:架橋物が10個/m2を超過し50個/m2以下/フィルム白化がかなり視認できる。
1:架橋物が50個/m2を超過し100個/m2以下/フィルム白化が非常に視認できる。
【0075】
<<端部フィルムの調製>>
<調製例1~6>
特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PC系樹脂から構成される樹脂フィルムを調製し、当該樹脂フィルムを延伸して、PC系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの厚みは、48μmであった。
次いで、延伸フィルムの幅方向の両端部のそれぞれを、スリッター(切断装置)によって切断して、2つの端部フィルムを得た(リサイクル数:1回)。2つの端部フィルムのそれぞれの幅は、250mmであった。
次いで、得られた端部フィルムを、水洗洗浄した。その後、端部フィルムを、100℃、10分間の条件下で乾燥した(洗浄数:1回)。
次いで、端部フィルムを、表1または3に示す環境下で、防湿袋(商品名:防湿梱包袋片ミシン 防湿タイプ、山口包装工業社製)に入れて、24時間保管した。
【0076】
<調製例7>
防湿袋を、非防湿袋(商品名:内袋アルミ袋、山口包装工業社製)に変更したこと以外は、調製例1と同様にして、端部フィルムを調製かつ保管した。
【0077】
<調製例8~13>
調製例1で得られた端部フィルムを用いて、後述する実施例1と同様の方法で、リサイクルペレットを製造した後(準備工程)、バージンペレットおよびリサイクルペレットから樹脂フィルムを製膜し(製膜工程)、樹脂フィルムを切断して第1端部フィルムと製膜フィルムとに分離し(第1切断工程)、次いで、製膜フィルムを延伸し(延伸工程)、得られた延伸フィルムを切断して第2端部フィルムと製品フィルムとに分離した(第2切断工程)。次いで、得られた第2端部フィルムを用いて、表1または3に示すリサイクル数となるまで、準備工程、製膜工程、第1切断工程、延伸工程および第2切断工程を繰り返した。これによって、表1または3に示すリサイクル数の端部フィルム(第2端部フィルム)を調製した。次いで、得られた端部フィルムを、調製例1と同様に保管した。
【0078】
<調製例14~16>
特開2022-150732号公報の製造例9と同様にして、PC系樹脂から構成される樹脂フィルムを調製し、当該樹脂フィルムを延伸して、PC系樹脂から構成される延伸フィルムを調製した。延伸フィルムの厚みは、48μmであった。
次いで、延伸フィルムの表面に、アクリル系粘着剤層を介して、保護フィルムとしてのポリエチレン(PE)フィルム(厚み:48μm)を貼り付けた。その後、延伸フィルムおよび保護フィルムの積層フィルムの幅方向の両端部のそれぞれを、スリッター(切断装置)によって切断して、2つの端部フィルムを得た(リサイクル数:1回)。2つの端部フィルムのそれぞれの幅は、250mmであった。
次いで、得られた端部フィルムを、水洗洗浄した。その後、端部フィルムを、100℃、10分間の条件下で乾燥した(洗浄数:1回)。その後、端部フィルムを、調製例1と同様に保管した。
【0079】
<調製例17>
保護フィルムとしてのPEフィルムの厚みを96μmに変更したこと以外は、調製例14と同様にして、端部フィルムを調製かつ保管した。
【0080】
<調製例18>
端部フィルムの洗浄および乾燥を5回繰り返したこと以外は、調製例1と同様にして、端部フィルムを調製かつ保管した。
【0081】
<調製例19および20>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをPETから構成される樹脂フィルム(東レ社製、品番「50U48」)に変更したこと以外は、調製例1と同様にして、端部フィルムを調製かつ保管した。なお、樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルムの厚みは、50μmであった。
【0082】
<調製例21>
調製例1で得られた端部フィルムに代えて、調製例19で得られた端部フィルムを用いたこと以外は、調製例8と同様にして、表2に示すリサイクル数となるまで、準備工程、製膜工程、第1切断工程、延伸工程および第2切断工程を繰り返した。これによって、表2に示すリサイクル数の端部フィルム(第2端部フィルム)を調製した。次いで、得られた端部フィルムを、調製例1と同様に保管した。
【0083】
<調製例22>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをPETから構成される樹脂フィルム(東レ社製、品番「50U48」)に変更したこと以外は、調製例14と同様にして、PEフィルムを含む端部フィルムを調製かつ保管した。なお、樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルムの厚みは50μmであり、PEフィルムの厚みは50μmであった。
【0084】
<調製例23および24>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをアクリル系樹脂から構成される樹脂フィルム(カネカ社製、製品名「HTX-Z」)に変更したこと以外は、調製例1と同様にして、端部フィルムを調製かつ保管した。なお、樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルムの厚みは、40μmであった。
【0085】
<調製例25>
調製例1で得られた端部フィルムに代えて、調製例23で得られた端部フィルムを用いたこと以外は、調製例8と同様にして、表2に示すリサイクル数となるまで、準備工程、製膜工程、第1切断工程、延伸工程および第2切断工程を繰り返した。これによって、表2に示すリサイクル数の端部フィルム(第2端部フィルム)を調製した。次いで、得られた端部フィルムを、調製例1と同様に保管した。
【0086】
<調製例26>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをアクリル系樹脂から構成される樹脂フィルム(カネカ社製、製品名「HTX-Z」)に変更したこと以外は、調製例14と同様にして、PEフィルムを含む端部フィルムを調製かつ保管した。なお、樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルムの厚みは80μmであり、保護フィルムとしてのPEフィルムの厚みは80μmであった。
【0087】
<調製例27および28>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをCOP系樹脂から構成される樹脂フィルム(日本ゼオン社製、品番「ZF16」)に変更したこと以外は、調製例1と同様にして、端部フィルムを調製かつ保管した。なお、樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルムの厚みは、40μmであった。
【0088】
<調製例29>
調製例1で得られた端部フィルムに代えて、調製例27で得られた端部フィルムを用いたこと以外は、調製例8と同様にして、表2に示すリサイクル数となるまで、準備工程、製膜工程、第1切断工程、延伸工程および第2切断工程を繰り返した。これによって、表2に示すリサイクル数の端部フィルム(第2端部フィルム)を調製した。次いで、得られた端部フィルムを、調製例1と同様に保管した。
【0089】
<調製例30>
PC系樹脂から構成される樹脂フィルムをCOP系樹脂から構成される樹脂フィルム(日本ゼオン社製、品番「ZF16」)に変更したこと以外は、調製例14と同様にして、PEフィルムを含む端部フィルムを調製かつ保管した。なお、樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルムの厚みは、40μmであり、保護フィルムとしてのPEフィルムの厚みは40μmであった。
【0090】
[実施例1~31、比較例1、2]
各調製例で得られた保管後の端部フィルムを、再生樹脂材料として、表1~3に示すフィルターを備えるペレット製造装置(ストランドカット方式)に供給した。ペレット製造装置では、端部フィルムが270℃に加熱されて溶融し、表1~3に示すフィルターを通過した。その後、表1~3に示す押出条件(スクリュー回転数、圧縮比および有効長)で、リサイクルペレットを押出成形によって製造した。リサイクルペレットにおける混入成分/第2樹脂の質量比を、表1~3に示す。
【0091】
また、別途、特開2013-181105号公報に記載の方法に準拠して、バージンペレットを溶融押出によって製造した。バージンペレットは、表1~3に示す第1樹脂を含んでいた。バージンペレットにおける第1樹脂の含有割合は、100質量%であった。
【0092】
次いで、バージンペレットおよびリサイクルペレットから、樹脂フィルムを製膜した。より詳しくは、特開2006-315275号公報の実施例に準拠して、樹脂フィルムの幅方向の両端部をリサイクルペレットから形成し、樹脂フィルムの幅方向の両端部の間に位置する本体部分をバージンペレットから形成した。樹脂フィルムの幅は、800mmであった。樹脂フィルムの厚みは、200μmであった。
【0093】
次いで、樹脂フィルムを、スリッター(切断装置)によって切断して、樹脂フィルムの幅方向の端部を含む第1端部フィルムと、本体部分を含む製膜フィルムとに分離した。2つの第1端部フィルムのそれぞれの幅は、60mmであった(樹脂フィルムの幅を100%としたときに7.5%)。
【0094】
次いで、特開2022-150732号公報の製造例9に準拠して、製膜フィルムを幅方向に延伸した。これによって、延伸フィルムを得た。延伸倍率は、3.0倍であった。延伸フィルムの幅は、2000mmであった。
【0095】
次いで、延伸フィルムを、スリッター(切断装置)によって切断して、2つの第2端部フィルムと製品フィルムとに分離した。2つの第2端部フィルムのそれぞれの幅は、250mmであった(延伸フィルムの幅を100%としたときに12.5%)。製品フィルムの幅は、1500mmであった。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
[評価]
表1~3から明らかなように、リサイクルペレットにおいて、分散相の最大寸法が500μm以下であると、樹脂フィルムにおける架橋物および/または低分子量の含有量を低減し得ることがわかる。
本発明の延伸フィルムの製造方法は、各種産業製品に利用可能な延伸フィルムの製造に用いられ、特に光学フィルム(具体的には位相差フィルム)の製造に好適に用いられる。