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特開2024-117377ガス絶縁開閉装置の制御装置および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117377
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ガス絶縁開閉装置の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/36 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01H33/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023444
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大月 翔平
(57)【要約】
【課題】ガス絶縁開閉装置の開閉速度をより適切な速度に制御することができるガス絶縁開閉装置の制御装置および制御方法を提供することである。
【解決手段】実施形態のガス絶縁開閉装置の制御装置は、速度取得部と、比較部と、電圧制御部とを持つ。速度取得部は、ガス絶縁開閉装置の開閉速度を取得する。比較部は、速度取得部により取得された開閉速度と基準開閉速度とを比較する。電圧制御部は、比較部の比較結果に応じてガス絶縁開閉装置に設けられる開閉機構を駆動させる駆動部への電圧を変動させる。また、電圧制御部は、前記ガス絶縁開閉装置の開閉速度が所定範囲内となるように電圧を変動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス絶縁開閉装置の開閉速度を取得する速度取得部と、
前記速度取得部により取得された開閉速度と基準開閉速度とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に応じて前記ガス絶縁開閉装置に設けられる開閉機構を駆動させる駆動部への電圧を変動させる電圧制御部と、を備え、
前記電圧制御部は、前記ガス絶縁開閉装置の開閉速度が所定範囲内となるように前記電圧を変動させる、
ガス絶縁開閉装置の制御装置。
【請求項2】
前記速度取得部は、所定時間間隔で前記開閉速度を取得し、
前記比較部は、前記所定時間間隔ごとの開閉速度と、時間の経過に伴う時間間隔ごとに設定される前記基準開閉速度とを比較する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記速度取得部は、前記所定時間間隔における開閉機構の動作情報と、前記動作情報を前記開閉機構の所定部位の位置情報に変換する変数とに基づいて、前記所定時間間隔の開閉速度を取得する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記電圧制御部は、前記速度取得部により取得された開閉速度と基準開閉速度との乖離度合に基づいて前記電圧の変動量を制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記電圧制御部は、予め設定された上限値を超えないように前記電圧を変動させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記電圧を変動させたことを示す情報を出力装置に出力させる出力制御部を更に備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記電圧制御部により前記電圧を変動させた場合に、前記ガス絶縁開閉装置における異常の内容を推定する異常推定部を更に備える、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
ガス絶縁開閉装置の制御装置が、
前記ガス絶縁開閉装置の開閉速度を取得し、
取得された前記開閉速度と基準開閉速度とを比較し、
比較した結果に応じて前記ガス絶縁開閉装置に設けられる開閉機構を駆動させる駆動部への電圧を、前記ガス絶縁開閉装置の開閉速度が所定範囲内となるように変動させる、
ガス絶縁開閉装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガス絶縁開閉装置の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や変電所等の電力施設では、ガス絶縁開閉装置(GIS、Gas Insulated Switchgear)が利用されている。ガス絶縁開閉装置は、電力施設内において多様な電流を遮断する責務を有しており、開閉機構を用いた開閉動作によって、系統事故時において事故の生じた系統を切り離したり、系統の切換時等に流れる電流を遮断するために電力供給線に配置される。ここで、開閉機構における開閉速度は遮断を完了するための重要な要素の一つとなっている。開閉速度の低下は、電流が遮断不能となったり、短絡事故や地絡事故につながる恐れがあるため、様々な状況においても所定の開閉速度でガス絶縁開閉装置が動作する必要がある。
【0003】
しかしながら、従来のガス絶縁開閉装置は、周囲温度や動作頻度等の外的要因、ガス絶縁開閉装置の製造上のばらつき等の様々な要因によって開閉速度にばらつきが発生する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-4708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ガス絶縁開閉装置の開閉速度をより適切な速度に制御することができるガス絶縁開閉装置の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のガス絶縁開閉装置の制御装置は、速度取得部と、比較部と、電圧制御部とを持つ。速度取得部は、ガス絶縁開閉装置の開閉速度を取得する。比較部は、速度取得部により取得された開閉速度と基準開閉速度とを比較する。電圧制御部は、比較部の比較結果に応じてガス絶縁開閉装置に設けられる開閉機構を駆動させる駆動部への電圧を変動させる。また、電圧制御部は、前記ガス絶縁開閉装置の開閉速度が所定範囲内となるように電圧を変動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のガス絶縁開閉装置を制御する制御装置を含む電力保護制御システム1の構成図。
図2】第1の実施形態の開閉機構12の概略構成を含むガス絶縁開閉装置10の一例を示す図。
図3】基準データ172の内容の一例を示す図。
図4】第1の実施形態の制御装置100の処理の一例を示す図。
図5】第2の実施形態の制御装置100Aの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のガス絶縁開閉装置の制御装置および制御方法を、図面を参照して説明する。なお、以下では、ガス絶縁開閉装置の開閉機構の操作方式の一例として電動機操作方式を用いて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のガス絶縁開閉装置を制御する制御装置を含む電力保護制御システム1の構成図である。電力保護制御システム1は、例えば、変電所や発電所等の高電圧を扱う電力施設に設置され、電路の開閉等により電力施設内の設備の保護を行う。電力保護制御システム1は、例えば、ガス絶縁開閉装置10と、出力装置20と、制御装置100とを備える。
【0010】
ガス絶縁開閉装置10は、例えば、系統事故時において事故の生じた系統を切り離したり、系統の切換時等に流れる電流を遮断するために、絶縁性のある気体(例えば、SF(六フッ化硫黄)ガス)中で電力供給線等の電路の開閉を行う。ガス絶縁開閉装置10は、例えば、開閉機構12と、電動機14と、計測部16と、制御部18とを備える。
【0011】
開閉機構12は、電動機14の駆動により電路の開閉動作を行う。開閉機構12の具体例については後述する。
【0012】
電動機14は、開閉機構12を駆動させる駆動部の一例である。例えば、電動機14は、制御部18による制御により電路の開閉を行うために開閉機構12内の可動部を動作させるためのモータである。電動機14は、例えば、上記部材に所定の動作(例えば、所定方向に移動)をさせるためのギア等を備えていてもよい。
【0013】
計測部16は、例えば、各種センサにより、電路に流れる電流や電圧を計測したり、主電源から供給される電圧を計測する。また、計測部16は、動作センサにより、開閉機構12の動作に関する情報(以下、動作情報と称する)を検出する。動作センサには、例えば、電動機14に流れる電流を計測する電動機用電流センサや、電動機14の電圧(電動機14に印加される電圧)を計測する電動機用電圧センサが含まれる。また、動作センサには、モータ(電動機14)の回転の機械的変位量(回転角)を計測するロータリーセンサや、後述する開閉機構12の主接点の可動部の位置を検出する光センサが含まれてもよい。計測部16は、所定周期で繰り返し計測を行ってもよい。この場合、計測結果は、時間情報と対応付けられている。
【0014】
制御部18は、計測部16による計測結果や制御装置100からの指示(制御情報)に基づいて、ガス絶縁開閉装置10の全体を制御する。例えば、制御部18は、計測部16による計測結果(動作情報を含む)を制御装置100に出力したり、計測結果や制御装置100からの指示に基づいて電動機14に所定の電圧を与えて電動機14を駆動させて開閉機構12によるガス絶縁開閉に関する各種制御を行う。
【0015】
出力装置20は、例えば、制御装置100からの指示に基づき、電力保護制御システム1の管理者等に、警告や処理結果等の所定の情報を出力する。出力装置20は、例えば、所定の光源を点灯または点滅させるランプや、音を出力するベルやスピーカー等でもよく、所定の画像を表示可能なディスプレイ等を備える端末装置(例えば、管理者端末)等でもよい。端末装置は、スマートフォンやタブレット端末等の可搬型端末でもよく、設置側PC(Personal Computer)等でもよい。
【0016】
制御装置100は、例えば、主電源電圧取得部110と、動作情報取得部120と、速度取得部130と、比較部140と、電圧制御部150と、出力制御部160と、記憶部170とを備える。主電源電圧取得部110と、動作情報取得部120と、速度取得部130と、比較部140と、電圧制御部150と、出力制御部160とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め制御装置100のHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0017】
記憶部170は、例えば、上記記憶装置或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部170には、例えば、基準データ172、制御装置100の各機能を実行するためのプログラム、その他各種情報が格納されている。
【0018】
主電源電圧取得部110は、電力保護制御システム1に供給される主電源電圧を取得する。主電源電圧は、計測部16により計測されてもよく、制御装置100に計測部を設けて取得してもよい。
【0019】
動作情報取得部120は、ガス絶縁開閉装置10の計測部16により検出された動作情報を取得する。
【0020】
速度取得部130は、動作情報取得部120により取得された動作情報に基づいて、開閉機構12の開閉速度を取得する。比較部140は、速度取得部130によって取得された開閉速度と、記憶部170の基準データ172に格納された基準開閉速度とを比較する。
【0021】
電圧制御部150は、比較部140による比較結果に基づいて、電動機14へ供給される電圧を変動させる。例えば、電圧制御部150は、比較部140において、速度取得部130で取得した開閉速度が基準データに含まれる速度範囲に含まれていない場合(条件を満たさない場合)に電動機14の電圧を変動させる制御を行う。
【0022】
出力制御部160は、ガス絶縁開閉装置の制御に関する所定情報を出力装置20に出力させる制御を行う。例えば、出力制御部160は、電圧制御部150により電動機14の電圧を変動させる制御を行った場合に、電圧変動制御の実施を示す警告情報を生成し、生成した警告情報を出力装置20に出力させる。なお、出力制御部160は、一連の開閉動作が終了した時点で警告情報を出力させてもよく、電圧変動制御が実施されたタイミングで警告情報を出力させてもよい。また、出力制御部160は、電圧変動量の大きさに応じて警告する内容(警告態様)を変更してもよい。この場合、出力制御部160は、例えば、変更が大きいほど、通常時よりも緊急度合の大きい警告を行う。緊急度合の大きい警告とは、例えば、通常時に画像を出力装置20に表示させる場合に、音声情報を出力させる等である。これにより、電圧変動制御が行われたことや変動量を管理者等に通知することができるため、点検実施の目安としても活用させることができる。
【0023】
また、出力制御部160は、電圧変動制御を実施しない場合であってもガス絶縁開閉装置10の動作状況(ログ情報)等を出力装置20に出力させてもよい。動作状況には、例えば計測部16により計測された動作情報等が含まれる。これにより、管理者等にガス絶縁開閉装置10の稼働状況を詳細に把握させることができる。
【0024】
[ガス絶縁開閉装置の開閉動作制御]
次に、第1の実施形態のガス絶縁開閉装置10の開閉動作制御の具体例について説明する。図2は、第1の実施形態の開閉機構12の概略構成を含むガス絶縁開閉装置10の一例を示す図である。なお、図2に示す構成は、あくまでも一例であり、他の構成が含まれてもよく、図中の配置や大きさレイアウトについてもこれに限定されない。
【0025】
図2において、ガス絶縁開閉装置10の開閉機構12は、SFガスが封入されている断路器ケース12a内に、スペーサ12b-1によって支持された断路部の固定側導体(固定側接触子)12dと、固定側導体12dに接続された導体12c-1と、固定側導体12dと対向して配設された可動側導体12eとが収納されている。可動側導体12eは、スペーサ12b-2によって支持された導体12c-2と接続されている。また、可動側導体12eの内部には、可動導体(可動側接触子)12fが、固定側導体12dに近づく方向または離れる方向(図中のX軸方向)に摺動自在に設けられ、絶縁ロッド12gを介して電動機14に連結されている。なお、第1の実施形態における主接点とは、例えば固定側導体12dと可動側導体12eとで構成されるが、後述する「主接点位置」とは、主に可動側導体12eの内部の可動導体12fの摺動方向における位置を示すものとする。固定側導体12dと可動導体12fとは「主接点接触子」の一例である。可動導体12fが固定側導体12dと接触することにより、可動側導体12eと固定側導体12dとが通電状態(電路の通電状態、閉極状態)となり、非接触の場合に遮断状態(電路の遮断状態、開極状態)となる。
【0026】
電動機14は、例えば、制御部18からの制御によりモータを回転させて絶縁ロッド12gを回転駆動させることで、端部に設けられた可動導体12fを摺動させ、主接点における開閉動作が行われる。なお、絶縁ロッド12gとモータの間にギアを設けてモータの回転により絶縁ロッド12gをX軸方向に摺動させてもよい。なお、電動機14の電圧が大きくなるほどモータの回転速度や早くなるため、可動導体12fの摺動速度、すなわち開閉速度が速くなる。
【0027】
また、図2に示すガス絶縁開閉装置10には、主接点の可動側導体12eの動作情報を検出するために、電動機14の電圧を検出する電動機用電圧センサ16-1や、電動機14のモータ回転角を検出するロータリーセンサ16-2、可動側導体12eの位置を検出する光センサ16-3等の計測部16が設けられている。光センサ16-3は、例えば、図2に示すように、可動側導体12eの動作位置を横断するように所定間隔で数カ所に配列して設けられており、光センサ16-3のそれぞれの設置位置および物体検知結果に基づいて可動側導体12eの位置を検出する。なお、ガス絶縁開閉装置10は、電動機用電圧センサ16-1、ロータリーセンサ16-2、および光センサ16-3のうち、少なくとも一つが設けられていればよい。
【0028】
ここで、ガス絶縁開閉装置10は、周囲温度や動作頻度等の外的要因、ガス絶縁開閉装置の製造ばらつき等の様々な要因により開閉速度のばらつきが発生する可能性がある。そのため、制御装置100は、実際の開閉速度をリアルタイムで計測し、計測した結果が基準の速度範囲に収まるように制御を行う。
【0029】
例えば、ガス絶縁開閉装置10は、制御装置100等から開閉動作指令を受け付けると、電動機14に電流が流れて、開閉機構12の動作を開始する。電動機用電流センサ等により電動機14に電流が流れたことを検知すると、計測部16(電動機用電圧センサ16-1、ロータリーセンサ16-2、および光センサ16-3のうち、少なくとも一つ)は動作情報を検出する。制御部18は、検出した動作情報を制御装置100に出力する。
【0030】
速度取得部130は、取得した動作情報に基づいて主接点位置を取得し、取得した主接点位置に基づいて主接点の開閉速度を算出する。例えば、速度取得部130は、一定の時間間隔tで取得された動作情報から、ガス絶縁開閉装置10の動作開始から動作終了までの時間間隔tごとの主接点位置を取得する。この場合、動作情報から開閉機構12の所定部位(例えば主接点)の位置情報を取得するための変数kが設定されてもよい。
【0031】
例えば、開閉動作の開始から終了までの動作情報の伝達タイミングをT0,T1,T2,…,Tnとし、各タイミングで検出された動作情報をM0,M1,M2,…,Mnとし、各タイミングにおける主接点位置をX0,X1,X2,…,Xnとする。この場合、速度取得部130は、T0~T1間(T0からT1まで)の開閉速度V1を以下の式(1)等を用いて算出する。
V1=(X1-X0)/(T1-T0)=k(M1-M0)/t …(1)
【0032】
例えば、動作情報が電動機用電圧センサ16-1により検出された電動機14の電圧である場合、速度取得部130は、時間間隔tにおける電圧値の差分(M1-M0)に、電圧から主接点(例えば、可動導体12f)の位置情報に変換する変数k1を乗算することで、時間間隔tにおける主接点の移動距離(X1-X0)を算出し、算出した移動距離をtで除算することで、開閉速度v1を算出する。また、動作情報がロータリーセンサ16-2により検出された電動機14のモータ回転角である場合、速度取得部130は、時間間隔tにおける回転角の差分(M1-M0)に、回転角から主接点の位置情報(直線上の位置)に変換する変数k2を乗算することで、同様に移動距離(X1-X0)を算出する。また、動作情報が光センサ16-3の検出結果である場合、速度取得部130は、配列された光センサ16-3の位置および物体の検出に基づいて、距離(X1-X0)を導出する。この場合、速度取得部130は、光センサ16-3の配列される間隔(距離)や検出結果から主接点の位置情報に変換する変数kを乗算して移動距離(X1-X0)を導出してもよい。
【0033】
また、速度取得部130は、T1~T2間、…、Tn-1~Tn間のそれぞれの時間間隔における開閉速度V2,…,Vnを算出する。速度取得部130は、取得した開閉速度(以下、必要に応じて「実速度」ともいう)を比較部140に出力する。
【0034】
比較部140は、速度取得部130によって取得されたT0~T1間,T1~T2間,…,Tn-1~Tn間の開閉速度と、基準データの速度との比較を行う。図3は、基準データ172の内容の一例を示す図である。図3に示す基準データ172には、基準開閉速度の一例として、ガス絶縁開閉装置10の開閉の開始から終了までの時間経過に伴う時間間隔ごとに最低速度Vminと最高速度Vmaxとが設定されている。これらの速度は、ガス絶縁開閉装置10ごとに個別に設定されてもよく、ガス絶縁開閉装置10の種類ごとに設定されてもよい。
【0035】
例えば、比較部140は、T0~T1間の場合には、速度取得部130により取得された実速度V1と、基準データに含まれる最低速度V1min、最高速度V1maxとを比較し、T1~T2間の場合には、速度取得部130により取得された実速度V2と、基準データに含まれる最低速度V2min、最高速度V2maxと比較する。比較部140は、上記のような比較をTn-1~Tn間まで繰り返し行う。
【0036】
例えば、開閉動作の開始直後(開始時刻から所定時刻までの間)や終了直前(終了時刻より所定時刻前から終了時刻までの間)では、他の時刻と比較して開閉速度が遅くなることが予測される。そのため、各時刻で同一の基準データ(最低速度、最高速度)が設定されていると、適切な速度制御が行われない場合がある。そこで、比較部140は、開閉動作の開始から終了までの所定時間間隔ごとに設定された最低速度および最高速度と、実速度を比較することで、電圧変動の要否判定をより適切に行うことができる。
【0037】
電圧制御部150は、比較部140の比較結果に基づいて、電動機14に対する制御を行う。例えば、T0~T1間において、実速度V1が最低速度V1minより小さい場合(V1<V1min)、電圧制御部150は、電動機14の電圧を昇圧させる動作指令(制御情報)を生成し、生成した動作指令をガス絶縁開閉装置10の制御部18に出力する。また、実速度V1が最高速度V1maxより大きい場合(V1>V1max)、電圧制御部150は、電動機14の電圧を降圧(減圧)させる動作指令を生成し、生成した動作指令を制御部18に出力する。また、実速度V1が最低速度V1min以上且つ最高速度V1max以下である場合(V1min≦V1≦V1max)、電圧制御部150は、実速度V1が基準の速度範囲内(所定範囲内)であるため、昇圧または降圧を行う動作指令の生成および出力を行わない。
【0038】
ここで、電圧制御部150によって制御される電動機14の電圧変動量は、固定値(例えば、±5~10%程度)でもよく、ガス絶縁開閉装置10に対する過去の電圧変動制御の実績(履歴情報)等から設定されてもよく、実速度と基準データ172の速度との乖離度合に応じて変動量を決定してもよい。この場合、電圧制御部150は、乖離度合が大きいほど変動量が大きくなるように設定する。
【0039】
また、電圧制御部150は、変動量や昇圧後の電圧値に上限値を設定し、設定した上限値を超えないように制御してもよい。これにより、電動機14の過電圧による損傷等を抑制することができる。なお、上限値を超える電圧制御が必要となった場合、電圧制御部150は、上限値の状態を継続させる制御を行ってもよく、継続させる制御に代えて(または加えて)、電力保護制御システム1に何等かの異常が生じているものとして、出力制御部160に警告情報等を出力させる制御を行ってもよい。
【0040】
ガス絶縁開閉装置10の制御部18は、実速度V1が最低速度V1minより小さい場合、または、実速度V1が最高速度V1maxより大きい場合に、電圧制御部150から電動機14への電圧を昇圧または降圧させる動作指令を受け付け、次の期間(T1~T2間)の動作において、指定された電圧の変動を完了させる。
【0041】
続いて同様に、速度取得部130は、T1~T2間での実速度V2を取得する。実速度V2は、例えば、以下の式(2)を用いて算出される。
V2=(X2-X1)/(T2-T1)=k(M2-M1)/t …(2)
【0042】
比較部140は、実速度V2と、最低速度V2minおよび最高速度V2maxとの比較を行う。T1~T2間において、実速度V2が最低速度V2minより小さい場合(V2<V2min)、電圧制御部150は、電動機14の電圧を昇圧させる動作指令を生成して制御部18に出力する。また、実速度V2が最高速度V2maxより大きい場合(V2>V2max)、電圧制御部150は、電動機14の電圧を降圧させる動作指令を生成して制御部18に出力する。また、実速度V2が最低速度V2min以上且つ最高速度V2max以下である場合(V2min≦V2≦V2max)、電圧制御部150は、実速度V2が基準の範囲内であるため、昇圧または降圧を行う動作指令の生成および出力を行わない。
【0043】
ガス絶縁開閉装置10の制御部18は、実速度V2が最低速度V2minより小さい場合、または、実速度V2が最高速度V2maxより大きい場合に、電圧制御部150から電動機14への電圧を昇圧または降圧させる動作指令を受け付け、次の期間(T2~T3間)の動作において、指定された電圧の変動を完了させる。上述した制御を、ガス絶縁開閉装置10の動作の終了まで連続して行うことで、開閉動作の開始から終了までの間で開閉速度(実速度)が基準となる速度範囲内に収まるように開閉速度を制御することができる。
【0044】
なお、ガス絶縁開閉装置10における開閉動作が終了すると電動機14に流れていた電流が遮断され、電動機用電流センサで電流値が計測できなくなるため、制御装置100は、電動機用電流センサの値に応じて動作の終了を検出し、電圧制御を終了する。
【0045】
出力制御部160は、ガス絶縁開閉装置10における開閉動作が終了した後、開閉動作に関する処理結果を出力装置20に出力させる。例えば、出力制御部160は、実速度が最低速度より小さい場合には、電動機14の電圧を昇圧させたことを示す警告情報を出力装置20に出力させ、実速度が最高速度より大きい場合には、電動機14の電圧を降圧させたことを示す警告情報を出力装置20に出力させる。また、出力制御部160は、上記の警告情報を出力する場合に、実速度Vと最低速度、または、実速度と最高速度との差分を抽出し、抽出した差分に応じて警告態様を異ならせてもよい。例えば、出力制御部160は、差分が閾値未満の場合には、出力装置20のディスプレイに表示のみを行い、閾値より大きい場合は緊急度の高いアラーム(音声)等を出力させる。これにより、緊急度に応じて管理者により早く状況を伝えることができる。
【0046】
また、出力制御部160は、各期間(T0~T1間,T1~T2間,…,Tn-1~Tn間)において、電圧変動制御を行ったタイミングで出力装置20に出力させてもよく、開閉動作の終了後に開始から終了までの間で電圧変動制御を行ったタイミング(期間)と制御内容を列挙し、纏めて出力させてもよい。出力制御部160によって出力される情報および出力態様は、予め固定に設定されていてもよく、管理者等により任意に設定されてもよい。
【0047】
なお、電圧制御部150による電動機14の電圧変動制御が少なくとも1回行われた場合には、ガス絶縁開閉装置10の動作終了時における主電源電圧と、電動機電圧との間に差が生じていることになる。したがって、電圧制御部150は、電動機14の電圧を、電圧変動制御を行う前の電圧(主電源電圧取得部110により取得された電圧)に戻す制御を行ってもよい。また、電動機14を、電圧変動制御を行う前の電圧に戻す制御を行った場合、出力制御部160は、電圧を戻したことを示す情報を出力装置20に出力させてもよい。
【0048】
上述したように、所定時間間隔における開閉動作の実速度が基準の速度範囲に含まれないように次の期間(時間間隔)の電動機14の電圧を変動させることで開閉速度を適切に調整することができる。したがって、ガス絶縁開閉装置10の周囲温度が異なっていたり、動作頻度が異なる場合、更にはガス絶縁開閉装置10の製造上のばらつきがある等の様々な状況であっても装置に応じて適切な速度範囲内に収まるように制御することができる。
【0049】
[処理フロー]
図4は、第1の実施形態の制御装置100の処理の一例を示す図である。なお、図4の例では、ガス絶縁開閉装置10における開閉動作が開始された後の処理の流れを示している。図4の例において、動作情報取得部120は、所定間隔ごとに電動機14に関する動作情報を取得する(ステップS100)。次に、速度取得部130は、所定時間間隔における動作情報と変数kとを用いた主接点位置の移動量に基づく開閉速度(実速度)を算出する(ステップS110)。次に、比較部140は、算出された開閉速度(実速度)が予め設定された基準速度範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS120)。開閉速度が基準速度範囲に含まれない場合、速度範囲に含まれるように電動機14の電圧を変動させる(ステップS130)。
【0050】
ステップS130の処理後またはステップS120の処理において開閉速度が基準となる速度範囲に含まれると判定された場合、開閉動作が終了したか否かを判定する(ステップS140)。開閉動作が終了していないと判定された場合、ステップS100の処理に戻る。また、ステップS140の処理において、開閉動作が終了したと判定した場合、電圧制御部150は、電動機14に対する電圧変動制御を行ったか否かを判定する(ステップS150)。電圧変動制御を行ったと判定した場合、電圧制御部150は、電動機14の電圧を変動制御前の電圧に戻す制御を行う(ステップS160)。次に、出力制御部160は、電動機14の電圧を変動させたことを示す警告情報を出力装置20に出力させる(ステップS170)。これにより、本フローチャートの処理を終了する。また、ステップS150の処理において、電圧変動制御を行っていないと判定された場合、本フローチャートの処理は、終了する。
【0051】
以上説明した第1の実施形態によれば、ガス絶縁開閉装置10の制御装置100は、ガス絶縁開閉装置10の開閉速度を取得する速度取得部130と、速度取得部130により取得された開閉速度と基準開閉速度とを比較する比較部140と、比較部140の比較結果に応じてガス絶縁開閉装置10に設けられる開閉機構を駆動させる電動機(駆動部の一例)14への電圧を変動させる電圧制御部150とを備え、電圧制御部150は、ガス絶縁開閉装置10の開閉速度が所定範囲内となるように電圧を変動させることにより、ガス絶縁開閉装置の開閉速度をより適切な速度に制御することができる。
【0052】
また、第1の実施形態によれば、電動機14の操作によるガス絶縁開閉装置の開閉速度は、電動機14の電圧によって変化させることが可能であるため、開閉動作中に電動機14の電圧を変動させることで、開閉速度を基準となる速度範囲に含まれるように制御することができる。また、第1の実施形態によれば、開閉動作の開始から終了までの間で、所定時間間隔ごとに開閉速度の比較や比較結果に基づく電圧変動を行うため、周囲温度が変化する場合や動作頻度が異なる場合等の様々な状況においても、より適切な開閉速度を維持することができる。そのため、電流が遮断不能となることを抑制することができると共に、短絡事故や地絡事故等の発生を抑制することができる。
【0053】
また、第1の実施形態によれば、電圧変動制御を行った場合に出力装置20に出力させて管理者等に通知することで、管理者等にガス絶縁開閉装置10の状態を把握させ易くすることができ、点検実施の目安として活用させることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と比較して電圧制御部150による電動機14の電圧変動制御を行った場合に、電力保護制御システム1(ガス絶縁開閉装置10)における異常内容(どのような異常が生じているか)を推定する機能を備えている。以下では、主に上述した機能を中心として説明する。
【0055】
図5は、第2の実施形態の制御装置100Aの構成図である。制御装置100Aは、図1に示す電力保護制御システム1において制御装置100と置き換えて構成されるものである。図4に示す制御装置100Aは、制御装置100と比較して、異常推定部180を追加されている点で相違する。したがって、以下では異常推定部180の機能を中心として説明し、他の構成の説明は省略する。
【0056】
異常推定部180は、電圧制御部150により電動機14に対する電圧変動制御を行ったタイミングや電圧変動制御を行ったときの主接点位置等に基づいて、異常の内容を推定する。例えば、異常推定部180は、主接点が閉極(導通)または開極(遮断)したタイミングで電圧変動が生じた場合に、ガス絶縁開閉装置10内の主接点接触子(固定側導体12d、可動導体12f)の異常であると推定する。また、異常推定部180は、開閉動作の開始直後から継続して電圧変動制御を行っている場合に、ガス絶縁開閉装置10の周囲温度の変化や動作頻度が少ないことによる摺動部のグリースの粘度変化や固着等による異常が生じていると推定する。また、異常推定部180は、電圧の変動量や昇圧後の電圧値が上限値に近い場合に、電動機14に損傷等の異常が生じる可能性があると推定してもよい。また、異常推定部180は、電圧変動の制御量が閾値以下である場合に、ガス絶縁開閉装置10に異常がないと推定してもよい。
【0057】
異常推定部180は、推定結果を出力制御部160に出力する。出力制御部160は、電圧変動制御に関する情報に加えて(または代えて)、異常推定部180による推定結果を示す情報を出力装置20に出力させる。この場合、推定結果の内容に応じて出力内容を異ならせてもよい。また、異常推定部180における処理は、例えば、図4に示す処理のうち、ステップS160の処理の前または後に実行される。
【0058】
以上説明した第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏する他、ガス絶縁開閉装置10の異常の内容や、異常の有無を管理者等に把握させることができる。
【0059】
[変形例]
上述した第1および第2の実施形態において、制御装置100は、ガス絶縁開閉装置10と一体に構成されていてもよい。この場合、制御部18の機能は、制御装置100内に含まれてもよい。また、出力装置20は、制御装置100と一体に構成されてもよく、ガス絶縁開閉装置10と一体に構成されていてもよい。
【0060】
また、上述した第1および第2の実施形態では、開閉機構12を駆動させる駆動部の一例として電動機14を用いたが、実施形態のガス絶縁開閉装置10の開閉操作方式は、上述した電動機操作方式に代えて、操作力の大きいばね操作方式や油圧操作方式を用いてもよい。なお、電動機操作方式は、ばね操作方式や油圧操作方式に比べて、小型かつ低コストである。また、これらの操作方式はそれぞれが異なった要因により開閉速度のばらつきが発生するため、それぞれに応じて基準開閉速度に応じて比較を行ったり、駆動部の電圧変動量を調整する。これにより、操作方式に応じた調整ミスや試験時間のロス等によって品質や作業効率が低下することを抑制することができる。
【0061】
また、実施形態では、例えば、工場内で得られた実験データや実測データ等に基づいて、装置ごとに、または装置の種類ごとに基準開閉速度を設定し、様々な状況において所定速度範囲でガス絶縁開閉装置を動作させることで、安定した電流遮断を実行しているが、この技術を適用して、新製品開発や互換性の確認のために独自の基準開閉速度を設定し、実速度との比較を行ってもよい。これにより、電動機の選定や電流を遮断するために必要な開閉速度を把握する等の目的で使用することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…電力保護制御システム、10…ガス絶縁開閉装置、20…出力装置、100、100A…制御装置、110…主電源電圧取得部、120…動作情報取得部、130…速度取得部、140…比較部、150…電圧制御部、160…出力制御部、170…記憶部、180…異常推定部
図1
図2
図3
図4
図5