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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117383
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240822BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L29/78 657F
H01L29/78 657G
H01L29/78 656A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 656C
H01L29/78 652S
H01L29/78 652R
H01L29/78 652N
H01L29/78 653C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023451
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大隅 悠史
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰詔
(57)【要約】
【課題】耐圧の低下を抑制しつつ、精度よく電流を監視することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】メイントランジスタ8と、モニタトランジスタ11と、隣り合うトレンチ構造61に挟まれたゲートスペースに選択的に形成された一対の分離部161とを含み、ボディ領域は、一対の分離部161に挟まれたモニタボディ領域164と、分離部161を隔ててモニタボディ領域164の反対側のメインボディ領域163とに分離されており、トレンチ構造61は、第1方向Xにおいてモニタボディ領域164およびメインボディ領域163に隣接する第1ゲート構造167と、分離部161に隣接する第2ゲート構造168とを含み、第1ゲート構造167はマルチ電極構造であり、第2ゲート構造168はシングル電極構造である、半導体装置を提供する。
【選択図】図28
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1デバイス領域が区画された第1主面を有する半導体チップと、
前記第1デバイス領域の表層部に形成された第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の表層部に形成された第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に至るように形成され、第1方向に沿って延びる複数のトレンチゲート構造と、
前記トレンチゲート構造の制御により、出力電流を前記ボディ領域に生成するメイントランジスタと、
前記トレンチゲート構造の制御により、前記出力電流に対応したモニタ電流を前記ボディ領域に生成するモニタトランジスタと、
隣り合う前記トレンチゲート構造に挟まれたゲートスペースに選択的に形成された第1導電型の不純物領域からなり、前記第1方向において離れている一対の分離部とを含み、
前記ボディ領域は、前記一対の分離部により、前記一対の分離部に挟まれた前記モニタトランジスタ用のモニタボディ領域と、前記分離部を隔てて前記モニタボディ領域の反対側の前記メイントランジスタ用のメインボディ領域とに分離されており、
前記トレンチゲート構造は、前記第1方向に交差する第2方向において、前記モニタボディ領域および前記メインボディ領域に隣接する第1ゲート構造と、前記分離部に隣接する第2ゲート構造とを含み、
前記第1ゲート構造は、絶縁体によって上下方向に絶縁分離されるようにゲートトレンチ内に埋設された上電極および下電極を含み、前記上電極が前記出力電流を制御するマルチ電極構造であり、
前記第2ゲート構造は、前記ゲートトレンチの底部から上部まで、前記下電極に導通する単一電極が埋設されたシングル電極構造である、半導体装置。
【請求項2】
前記第1主面を被覆する層間絶縁層と、
前記層間絶縁層内に形成され、前記第1方向において前記分離部を横切っており、前記メインボディ領域側の前記第1ゲート構造の前記上電極と、前記モニタボディ領域側の前記第1ゲート構造の前記上電極とを接続するブリッジゲート配線層とを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記層間絶縁層内に形成され、前記メインボディ領域に接続されたメインソース配線層、および前記モニタボディ領域に接続されたモニタソース配線層とを含み、
前記メインソース配線層および前記モニタソース配線層は、前記分離部の上方に、前記ブリッジゲート配線層用の配線層形成領域を区画している、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1ゲート構造は、前記モニタボディ領域および前記メインボディ領域の少なくとも一方と前記分離部との境界部を横切り、前記境界部の近傍にもさらに形成されており、
前記境界部に対して前記分離部側の前記上電極は、前記境界部に対して前記モニタボディ領域および前記メインボディ領域の少なくとも一方側の前記上電極よりも薄く形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1ゲート構造の前記上電極は、前記第1方向において、前記モニタボディ領域および前記メインボディ領域の少なくとも一方から前記分離部に向かうにしたがって連続的に薄くなる、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ゲート構造は、前記上電極と前記ボディ領域との間に形成された上絶縁膜と、前記下電極と前記第1半導体領域との間に形成された下絶縁膜とを含み、
前記第2ゲート構造は、前記単一電極と前記ボディ領域および前記第1半導体領域との間に形成された内壁絶縁膜とを含み、
前記下絶縁膜および前記内壁絶縁膜は、前記上絶縁膜の厚さを超える厚さを有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記内壁絶縁膜において、前記ゲートトレンチの側壁上部を被覆する部分の厚さは、前記ゲートトレンチの底壁を被覆する部分の厚さを超えている、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1主面に形成され、前記一対の分離部を選択的に被覆するフィールド絶縁膜を含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記フィールド絶縁膜および前記内壁絶縁膜は、前記ゲートスペースを形成するメサ部の頂部の角部を被覆する一体的な耐圧絶縁膜を形成している、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記分離部は、前記第1半導体領域の一部により形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記分離部は、前記第1半導体領域よりも高い第1導電型不純物濃度を有する高濃度領域を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記分離部は、前記ボディ領域に接する前記第1半導体領域の一部により形成されたベース領域と、前記ベース領域に選択的に形成され、前記ベース領域を介して前記ボディ領域から離れており、前記ベース領域よりも高い第1導電型不純物濃度を有する高濃度領域とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記分離部は、前記第1半導体領域よりも高い第1導電型不純物濃度を有する高濃度領域により形成され、前記第1方向および前記第2方向の少なくとも一方において前記ボディ領域に接している、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1主面において前記第1デバイス領域を区画するトレンチ分離構造をさらに含み、
前記トレンチ分離構造は、分離トレンチの底部から上部まで単一分離電極が埋設されたシングル電極構造である、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記メイントランジスタは、前記出力電流の一部として第1系統電流を生成する第1系統トランジスタ、および、前記第1系統トランジスタから独立した前記出力電流の一部として第2系統電流を生成する第2系統トランジスタを含み、
前記モニタトランジスタは、前記第1系統電流に対応した第1系統モニタ電流を生成する第1系統モニタトランジスタ、および、前記第2系統電流に対応した第2系統モニタ電流を生成する第2系統モニタトランジスタを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1は、半導体層と、電気的に独立した複数の制御信号が個別的に入力されるように半導体層に電気的に独立して形成され、アクティブクランプ動作時のオン抵抗が通常動作時のオン抵抗とは異なるように個別的にオンオフ制御される絶縁ゲート型の複数のトランジスタとを含む、半導体装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-97649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一実施形態は、耐圧の低下を抑制しつつ、精度よく電流を監視することができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る半導体装置は、第1デバイス領域が区画された第1主面を有する半導体チップと、前記第1デバイス領域の表層部に形成された第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の表層部に形成された第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に至るように形成され、第1方向に沿って延びる複数のトレンチゲート構造と、前記トレンチゲート構造の制御により、出力電流を前記ボディ領域に生成するメイントランジスタと、前記トレンチゲート構造の制御により、前記出力電流に対応したモニタ電流を前記ボディ領域に生成するモニタトランジスタと、隣り合う前記トレンチゲート構造に挟まれたゲートスペースに選択的に形成された第1導電型の不純物領域からなり、前記第1方向において離れている一対の分離部とを含み、前記ボディ領域は、前記一対の分離部により、前記一対の分離部に挟まれた前記モニタトランジスタ用のモニタボディ領域と、前記分離部を隔てて前記モニタボディ領域の反対側の前記メイントランジスタ用のメインボディ領域とに分離されており、前記トレンチゲート構造は、前記第1方向に交差する第2方向において、前記モニタボディ領域および前記メインボディ領域に隣接する第1ゲート構造と、前記分離部に隣接する第2ゲート構造とを含み、前記第1ゲート構造は、絶縁体によって上下方向に絶縁分離されるようにゲートトレンチ内に埋設された上電極および下電極を含み、前記上電極が前記出力電流を制御するマルチ電極構造であり、前記第2ゲート構造は、前記ゲートトレンチの底部から上部まで、前記下電極に導通する単一電極が埋設されたシングル電極構造である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態に係る半導体装置によれば、耐圧の低下を抑制しつつ、精度よく電流を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図2図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、図1に示す半導体チップ内のレイアウト例を示す平面図である。
図4図4は、図1に示す半導体装置の電気的構造例を示すブロック回路図である。
図5図5は、図4に示すメイントランジスタおよびモニタトランジスタの等価回路図である。
図6図6は、図5に示すメイントランジスタおよびモニタトランジスタの更なる等価回路図である。
図7A図7Aは、メイントランジスタおよびモニタトランジスタの動作例を示す回路図である。
図7B図7Bは、メイントランジスタおよびモニタトランジスタの動作例を示す回路図である。
図7C図7Cは、メイントランジスタおよびモニタトランジスタの動作例を示す回路図である。
図8図8は、図1に示す半導体装置の電気的構造の構成例(=2系統のメイントランジスタおよび2系統のモニタトランジスタが適用された構成例)を示すブロック回路図である。
図9図9は、図8に示すブロック回路図の構成例を示す回路図である。
図10図10は、図3に示す領域Xの拡大図であって、図8に示すメイントランジスタおよびモニタトランジスタのレイアウト例を示す平面図である。
図11図11は、図10に示す領域XIの拡大図である。
図12図12は、図10に示す領域XIIの拡大図である。
図13図13は、図11に示すXIII-XIII線に沿う断面図である。
図14図14は、図11に示すXIV-XIV線に沿う断面図である。
図15図15は、図11に示すXV-XV線に沿う断面図である。
図16図16は、図11に示すXVI-XVI線に沿う断面図である。
図17図17は、メイントランジスタの要部を第1チャネル領域および第2チャネル領域の第1構成例と共に示す断面斜視図である。
図18図18は、メイントランジスタの要部を第1チャネル領域および第2チャネル領域の第2構成例と共に示す断面斜視図である。
図19図19は、メイントランジスタの要部を第1チャネル領域および第2チャネル領域の第3構成例と共に示す断面斜視図である。
図20図20は、メイントランジスタの要部を第1チャネル領域および第2チャネル領域の第4構成例と共に示す断面斜視図である。
図21図21は、メイントランジスタとモニタトランジスタとを分離するための分離部の近傍を示す、前記半導体装置の断面斜視図である。
図22図22は、前記分離部の近傍の平面構造を示す模式的な平面図である。
図23図23は、前記分離部の近傍の平面構造を示す模式的な平面図である。
図24図24は、前記分離部の近傍の平面構造を示す模式的な平面図である。
図25図25は、図24に示すXXV-XXV線に沿う断面図である。
図26図26は、図24に示すXXVI-XXVI線に沿う断面図である。
図27図27は、図24に示すXXVII-XXVII線に沿う断面図である。
図28図28は、図24に示すXXVIII-XXVIII線に沿う断面図である。
図29図29は、図24に示すXXIX-XXIX線に沿う断面図である。
図30図30は、サンプル1~3の耐圧性能を比較するためのグラフである。
図31図31は、前記分離部の第1変形例を示す模式的な平面図である。
図32図32は、前記分離部の第1変形例を示す模式的な断面図である。
図33図33は、前記分離部の第2変形例を示す模式的な平面図である。
図34図34は、前記分離部の第2変形例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施形態が詳細に説明される。添付図面は、模式図であり、厳密に図示されたものではなく、縮尺等は必ずしも一致しない。また、添付図面の間で対応する構造に同一の参照符号が付され、重複する説明は省略または簡略化される。
【0009】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す平面図である。図2は、図1に示すII-II線に沿う断面図である。図3は、図1に示す半導体チップ2内のレイアウト例を示す平面図である。図4は、図1に示す半導体装置1の電気的構造例を示すブロック回路図である。図5は、図4に示すメイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11の等価回路図である。図6は、図5に示すメイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11の更なる等価回路図である。図4では、出力端に誘導性負荷Lが外部接続された例が示されている。
【0010】
図1および図2を参照して、半導体装置1は、この形態(this embodiment)では、直方体形状に形成された半導体チップ2を含む。半導体チップ2は、Si(シリコン)を含むチップからなる。半導体チップ2は、Si単結晶またはSiC単結晶を含むチップからなっていてもよい。半導体チップ2は、一方側の第1主面3、他方側の第2主面4、ならびに、第1主面3および第2主面4を接続する第1~第4側面5A~5Dを有している。第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向Zから見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において四角形状に形成されている。
【0011】
第1主面3は、機能デバイスが形成されたデバイス面である。第2主面4は、実装面であり、研削痕を有する研削面からなっていてもよい。第1~第4側面5A~5Dは、第1側面5A、第2側面5B、第3側面5Cおよび第4側面5Dを含む。第1側面5Aおよび第2側面5Bは、第1主面3に沿う第1方向Xに延び、第1方向Xに交差(具体的には直交)する第2方向Yに対向している。第3側面5Cおよび第4側面5Dは、第2方向Yに延び、第1方向Xに対向している。
【0012】
図3を参照して、半導体装置1は、第1主面3に設けられた第1デバイス領域6を含む。第1デバイス領域6は、外部に出力される出力信号が生成される出力領域である。第1デバイス領域6は、この形態では、第1主面3において第1側面5A側の領域に区画されている。第1デバイス領域6は、平面視において四角形状に区画されていてもよいし、四角形状以外の多角形状に区画されていてもよい。第1デバイス領域6の配置および平面形状は任意であり、特定の形態に限定されない。
【0013】
半導体装置1は、第1主面3において第1デバイス領域6とは異なる領域に設けられた第2デバイス領域7を含む。第2デバイス領域7は、外部からの電気信号が入力される入力領域である。第2デバイス領域7は、この形態では、第1デバイス領域6に対して第2側面5B側の領域に区画されている。第2デバイス領域7は、平面視において四角形状に区画されていてもよいし、四角形状以外の多角形状に区画されていてもよい。第2デバイス領域7の配置および平面形状は任意であり、特定の形態に限定されない。
【0014】
第2デバイス領域7は、第1デバイス領域6の平面積以下の平面積を有していることが好ましい。第2デバイス領域7は、第1デバイス領域6に対して0.1以上1以下の面積比で形成されていることが好ましい。面積比は、第1デバイス領域6の平面積に対する第2デバイス領域7の平面積の比である。面積比は、1未満であることが好ましい。むろん、第1デバイス領域6の平面積を超える平面積を有する第2デバイス領域7が採用されてもよい。
【0015】
図4を参照して、半導体装置1は、第1デバイス領域6に形成されたn系統(n≧2)の絶縁ゲート型のメイントランジスタ8を含む。メイントランジスタ8は、「ゲート分割トランジスタ」、「パワートランジスタ」または「パワーMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)」と称されてもよい。メイントランジスタ8は、n個の第1ゲートFG、1つの第1ドレインFDおよび1つの第1ソースFSを含む。第1ゲートFG、第1ドレインFDおよび第1ソースFSは、それぞれ、「メインゲート」、「メインドレイン」および「メインソース」と称されてもよい。
【0016】
n個の第1ゲートFGには、同一のまたは異なるn個のゲート信号G(ゲート電圧)が任意のタイミングで入力される。各ゲート信号Gは、メイントランジスタ8の一部をオン状態に制御するオン信号、および、メイントランジスタ8の一部をオフ状態に制御するオフ信号を含む。メイントランジスタ8は、n個のゲート信号Gに応答して単一の出力電流IO(出力信号)を生成し、第1ドレインFDおよび第1ソースFSから出力する。つまり、メイントランジスタ8は、マルチ入力シングル出力型のスイッチングデバイスからなる。出力電流IOは、具体的には、第1ドレインFDおよび第1ソースFSの間を流れるドレイン・ソース電流である。出力電流IOは、第1デバイス領域6外に出力される。
【0017】
図5を参照して、メイントランジスタ8は、n個の系統トランジスタ9を含む。n個の系統トランジスタ9は、単一の第1デバイス領域6に集約して形成され、互いに電気的に独立してオン状態およびオフ状態に制御されるように構成されている。n個の系統トランジスタ9は、具体的には、n個のゲート信号Gが個別入力されるように互いに並列接続され、1つの系統並列回路(=メイントランジスタ8)を構成している。つまり、n系統のメイントランジスタ8は、オン状態の系統トランジスタ9およびオフ状態の系統トランジスタ9が任意のタイミングで併存するように構成されている。
【0018】
n個の系統トランジスタ9は、第2ゲートSG、第2ドレインSDおよび第2ソースSSをそれぞれ含む。第2ゲートSG、第2ドレインSDおよび第2ソースSSは、それぞれ、「システムゲート」、「システムドレイン」および「システムソース」と称されてもよい。n個の第2ゲートSGは、一対一の対応関係でn個の第1ゲートFGにそれぞれ接続されている。n個の第2ドレインSDは、1つの第1ドレインFDにそれぞれ接続されている。n個の第2ソースSSは、1つの第1ソースFSにそれぞれ接続されている。
【0019】
つまり、n個の系統トランジスタ9のn個の第2ゲートSG、n個の第2ドレインSDおよびn個の第2ソースSSは、メイントランジスタ8のn個の第1ゲートFG、1個の第1ドレインFDおよび1個の第1ソースFSをそれぞれ構成している。n個の第1ゲートFGは、実質的にはn個の第2ゲートSGからなる。
【0020】
n個の系統トランジスタ9は、対応するゲート信号Gに応答して系統電流ISをそれぞれ生成し、当該系統電流ISを第1ドレインFDおよび第1ソースFSからそれぞれ出力する。n個の系統電流ISは、具体的には、n個の系統トランジスタ9の第2ドレインSDおよび第2ソースSSの間を流れるドレイン・ソース電流である。n個の系統電流ISは、互いに異なる値であってもよいし、互いに等しい値であってもよい。n個の系統電流ISは、第1ドレインFDおよび第1ソースFSの間で加算される。これにより、n個の系統電流ISの加算値からなる単一の出力電流IOが生成される。
【0021】
図6を参照して、n個の系統トランジスタ9は、個別制御対象として系統化(グループ化)された単一のまたは複数の単位トランジスタ10をそれぞれ含む。複数の単位トランジスタ10は、この形態では、トレンチゲート型からそれぞれなる。n個の系統トランジスタ9は、具体的には、単一のまたは複数の単位トランジスタ10によって構成された単位並列回路をそれぞれ有している。
【0022】
系統トランジスタ9が単一の単位トランジスタ10からなる場合も、ここに言う「単位並列回路」に含まれる。各系統トランジスタ9に含まれる単位トランジスタ10の個数は任意であるが、少なくとも1つの系統トランジスタ9は複数の単位トランジスタ10を含むことが好ましい。n個の系統トランジスタ9は、同一個数のまたは異なる個数の単位トランジスタ10によって構成されていてもよい。
【0023】
各単位トランジスタ10は、第3ゲートTG、第3ドレインTDおよび第3ソースTSを含む。第3ゲートTG、第3ドレインTDおよび第3ソースTSは、それぞれ、「ユニットゲート」、「ユニットドレイン」および「ユニットソース」と称されてもよい。各系統トランジスタ9において、単一のまたは複数の単位トランジスタ10の全ての第3ゲートTGは第2ゲートSGに電気的に接続され、全ての第3ドレインTDは第2ドレインSDに電気的に接続され、全ての第3ソースTSは第2ソースSSに電気的に接続されている。つまり、系統化された単一のまたは複数の単位トランジスタ10の第3ゲートTG、第3ドレインTDおよび第3ソースTSは、各系統トランジスタ9の第2ゲートSG、第2ドレインSDおよび第2ソースSSをそれぞれ構成している。
【0024】
各系統トランジスタ9の電気的特性は、達成すべきメイントランジスタ8の電気的仕様に応じて調整される。メイントランジスタ8の電気的仕様としては、チャネル利用率、オン抵抗、スイッチング波形等が例示される。以下、この明細書に係る「ほぼ等しい」の文言は、測定対象の数値が比較対象の数値と完全に一致している場合を含む他、測定対象の数値が比較対象の数値の0.9倍以上1.1倍以下の範囲に収まっている場合も含む。
【0025】
n個の系統トランジスタ9は、ほぼ等しいゲート閾値電圧を有していてもよいし、異なるゲート閾値電圧を有していてもよい。n個の系統トランジスタ9は、単位面積当たりにおいてほぼ等しいチャネル面積を有していてもよいし、異なるチャネル面積を有していてもよい。つまり、n個の系統トランジスタ9は、ほぼ等しいオン抵抗特性を有していてもよいし、異なるオン抵抗特性を有していてもよい。
【0026】
複数の単位トランジスタ10は、ほぼ等しいゲート閾値電圧を有していてもよいし、異なるゲート閾値電圧を有していてもよい。複数の単位トランジスタ10は、単位面積当たりにおいてほぼ等しいチャネル面積を有していてもよいし、異なるチャネル面積を有していてもよい。つまり、複数の単位トランジスタ10は、ほぼ等しいオン抵抗特性を有していてもよいし、異なるオン抵抗特性を有していてもよい。各系統トランジスタ9の電気的特性は、複数の単位トランジスタ10の個数、ゲート閾値電圧、チャネル面積等を調整することによって精密に調整される。
【0027】
図4を参照して、半導体装置1は、第1デバイス領域6に形成されたm系統(m≧1)の絶縁ゲート型のモニタトランジスタ11を含む。つまり、モニタトランジスタ11は、メイントランジスタ8と共に単一の第1デバイス領域6に集約して形成されている。モニタトランジスタ11は、この形態では、第1デバイス領域6の周縁から間隔を空けて第1デバイス領域6の内方部に形成され、メイントランジスタ8に隣り合って配置されている。モニタトランジスタ11は、この形態では、メイントランジスタ8によって取り囲まれた領域に形成されている。
【0028】
モニタトランジスタ11は、少なくとも1つの系統トランジスタ9に並列接続され、少なくとも1つの系統電流ISを監視するように構成されていてもよい。モニタトランジスタ11は、複数の系統トランジスタ9に並列接続され、複数の系統電流ISを監視するように構成されたm系統(m≧2)のモニタトランジスタ11からなることが好ましい。
【0029】
モニタトランジスタ11は、この形態では、n個の系統トランジスタ9に並列接続され、n個の系統電流ISを監視するように構成されたn系統(m=n)のモニタトランジスタ11からなる。以下では、必要に応じて、「m系統」または「m個」が「n系統」または「m系統」に置き換えられて、モニタトランジスタ11の構成が説明される。
【0030】
モニタトランジスタ11は、この形態では、n個の第1モニタゲートFMG、1つの第1モニタドレインFMDおよび1つの第1モニタソースFMSを含む。第1モニタゲートFMG、第1モニタドレインFMDおよび第1モニタソースFMSは、それぞれ、「メインモニタゲート」「メインモニタドレイン」および「メインモニタソース」と称されてもよい。
【0031】
n個の第1モニタゲートFMGは、n個のモニタゲート信号MGがそれぞれ個別的に入力されるように構成されている。第1モニタドレインFMDは、第1ドレインFDに電気的に接続されている。第1モニタソースFMSは、第1ソースFSから電気的に分離されている。n個の第1モニタゲートFMGには、同一のまたは異なるn個のモニタゲート信号MG(モニタゲート電圧)が任意のタイミングで入力される。各モニタゲート信号MGは、モニタトランジスタ11の一部をオン状態に制御するオン信号、および、モニタトランジスタ11の一部をオフ状態に制御するオフ信号を含む。
【0032】
モニタトランジスタ11は、この形態では、n個のモニタゲート信号MGに応答してn個の系統電流IS(出力電流IO)を監視する単一の出力モニタ電流IOM(出力モニタ信号)を生成し、第1モニタドレインFMDおよび第1モニタソースFMSから出力する。つまり、モニタトランジスタ11は、この形態では、マルチ入力シングル出力型のスイッチングデバイスからなる。出力モニタ電流IOMは、具体的には、第1モニタドレインFMDおよび第1モニタソースFMSの間を流れるドレイン・ソース電流である。
【0033】
n個の第1モニタゲートFMGは、この形態では、一対一の対応関係で対応するn個の第1ゲートFGにそれぞれ電気的に接続されている。したがって、n個の第1モニタゲートFMGは、ゲート信号Gからなるモニタゲート信号MGがそれぞれ個別的に入力されるように構成されている。つまり、モニタトランジスタ11はn個の系統トランジスタ9と同じタイミングでオンオフ制御され、出力電流IOの増減に連動して増減する出力モニタ電流IOMを生成する。出力モニタ電流IOMは、出力電流IOの電流経路から電気的に独立した電流経路に出力される。出力モニタ電流IOMは、出力電流IOから電気的に独立して第1デバイス領域6外に出力される。
【0034】
出力モニタ電流IOMは、出力電流IO以下(IOM≦IO)である。出力モニタ電流IOMは、出力電流IO未満(IOM<IO)であることが好ましい。出力モニタ電流IOMは、出力電流IOに比例していることが好ましい。出力電流IOに対する出力モニタ電流IOMの電流比IOM/IOは任意である。電流比IOM/IOは、1/10000以上1以下(好ましくは1未満)であってもよい。
【0035】
図5を参照して、モニタトランジスタ11は、m個(この形態ではn個)の系統モニタトランジスタ12を含む。モニタトランジスタ11の系統数は、系統モニタトランジスタ12の個数によって調整される。つまり、m系統(m≧1)のモニタトランジスタ11が少なくとも1つの系統電流ISを監視する場合、少なくとも1つの系統モニタトランジスタ12が少なくとも1つの系統トランジスタ9に電気的に接続(具体的には並列接続)される。また、m系統(m≧2)のモニタトランジスタ11が複数の系統電流ISを監視する場合、複数の系統モニタトランジスタ12が複数の系統トランジスタ9に電気的に接続される。この形態では、n個の系統モニタトランジスタ12がn個の系統トランジスタ9に電気的に接続されている。
【0036】
n個の系統モニタトランジスタ12は、単一の第1デバイス領域6に集約して形成され、互いに電気的に独立してオン状態およびオフ状態に制御されるように構成されている。n個の系統モニタトランジスタ12は、具体的には、n個のモニタゲート信号MGが個別入力されるように互いに並列接続され、1つの系統モニタ並列回路(=モニタトランジスタ11)を構成している。つまり、モニタトランジスタ11は、オン状態の系統モニタトランジスタ12およびオフ状態の系統モニタトランジスタ12が任意のタイミングで併存するように構成されている。
【0037】
n個の系統モニタトランジスタ12は、第2モニタゲートSMG、第2モニタドレインSMDおよび第2モニタソースSMSをそれぞれ含む。第2モニタゲートSMG、第2モニタドレインSMDおよび第2モニタソースSMSは、それぞれ、「システムモニタゲート」、「システムモニタドレイン」および「システムモニタソース」と称されてもよい。n個の第2モニタゲートSMGは、一対一の対応関係でn個の第1モニタゲートFMGにそれぞれ接続されている。n個の第2モニタドレインSMDは、1つの第1モニタドレインFMDにそれぞれ接続されている。n個の第2モニタソースSMSは、1つの第1モニタソースFMSにそれぞれ接続されている。
【0038】
n個の系統モニタトランジスタ12のn個の第2モニタゲートSMG、n個の第2モニタドレインSMDおよびn個の第2モニタソースSMSは、モニタトランジスタ11のn個の第1モニタゲートFMG、1個の第1モニタドレインFMDおよび1個の第1モニタソースFMSをそれぞれ構成している。n個の第1モニタゲートFMGは、実質的にはn個の第2モニタゲートSMGからなる。
【0039】
n個の第2モニタゲートSMGには、同一のまたは異なるn個のモニタゲート信号MGが任意のタイミングで入力される。n個の系統モニタトランジスタ12は、対応するモニタゲート信号MGに応答して、対応する系統トランジスタ9の系統電流ISを監視する系統モニタ電流ISM(系統モニタ信号)をそれぞれ生成し、第2モニタドレインSMDおよび第2モニタソースSMSからそれぞれ出力する。
【0040】
各系統モニタ電流ISMは、具体的には、各系統モニタトランジスタ12の第2モニタドレインSMDおよび第2モニタソースSMSの間を流れるドレイン・ソース電流である。n個の系統モニタ電流ISMは、第1モニタドレインFMDおよび第1モニタソースFMSの間で加算される。これにより、n個の系統モニタ電流ISMの加算値からなる単一の出力モニタ電流IOMが生成される。
【0041】
n個の系統モニタトランジスタ12は、この形態では、対応する系統トランジスタ9に一対一の対応関係で電気的に接続され、対応する系統トランジスタ9と連動して制御されるようにそれぞれ構成されている。n個の系統モニタトランジスタ12は、具体的には、系統電流ISの電流経路から電気的に独立した電流経路に系統モニタ電流ISMが出力されるように対応する系統トランジスタ9にそれぞれ並列接続されている。n個の第2モニタゲートSMGは、一対一の対応関係で対応する第1ゲートFGにそれぞれ電気的に接続されている。第2モニタドレインSMDは、第1ドレインFDに電気的に接続されている。第2モニタソースSMSは、第1ソースFSから電気的に分離されている。
【0042】
つまり、この形態では、ゲート信号Gからなるモニタゲート信号MGが、n個の第2モニタゲートSMGにそれぞれ入力される。これにより、n個の系統モニタトランジスタ12は、対応する系統トランジスタ9と同じタイミングでオンオフ制御され、対応する系統電流ISの増減に連動して増減する系統モニタ電流ISMをそれぞれ生成する。系統モニタ電流ISMは、系統電流ISから電気的に独立して、第2モニタドレインSMDおよび第2モニタソースSMSから取り出される。
【0043】
各系統モニタ電流ISMは、対応する系統電流IS以下(ISM≦IS)である。各系統モニタ電流ISMは、対応する系統電流IS未満(ISM<IS)であることが好ましい。各系統モニタ電流ISMは、対応する系統電流ISに比例していることが好ましい。系統電流ISに対する系統モニタ電流ISMの電流比ISM/ISは任意である。電流比ISM/ISは、1/10000以上1以下(好ましくは1未満)であってもよい。
【0044】
図6を参照して、n個の系統モニタトランジスタ12は、個別制御対象として系統化(グループ化)された単一のまたは複数の単位モニタトランジスタ13をそれぞれ含む。複数の単位モニタトランジスタ13は、この形態では、トレンチゲート型からそれぞれなる。n個の系統モニタトランジスタ12は、具体的には、単一のまたは複数の単位モニタトランジスタ13によって構成された単位モニタ並列回路をそれぞれ有している。
【0045】
系統モニタトランジスタ12が単一の単位モニタトランジスタ13からなる場合も、ここに言う「単位モニタ並列回路」に含まれる。各系統モニタトランジスタ12に含まれる単位モニタトランジスタ13の個数は任意である。n個の系統モニタトランジスタ12は、同一個数のまたは異なる個数の単位モニタトランジスタ13によって構成されていてもよい。各系統モニタトランジスタ12に含まれる単位モニタトランジスタ13の個数は、対応する系統トランジスタ9に含まれる単位トランジスタ10の個数未満であることが好ましい。この場合、系統電流IS以下の系統モニタ電流ISMを容易に生成できる。
【0046】
各単位モニタトランジスタ13は、第3モニタゲートTMG、第3モニタドレインTMDおよび第3モニタソースTMSを含む。第3モニタゲートTMG、第3モニタドレインTMDおよび第3モニタソースTMSは、それぞれ、「ユニットモニタゲート」、「ユニットモニタドレイン」および「ユニットモニタソース」と称されてもよい。各系統モニタトランジスタ12において、単一のまたは複数の単位モニタトランジスタ13の全ての第3モニタゲートTMGは第2モニタゲートSMGに電気的に接続され、全ての第3モニタドレインTMDは第2モニタドレインSMDに電気的に接続され、全ての第3モニタソースTMSは第2モニタソースSMSに電気的に接続されている。
【0047】
つまり、系統化された単一のまたは複数の単位モニタトランジスタ13の第3モニタゲートTMG、第3モニタドレインTMDおよび第3モニタソースTMSは、各系統モニタトランジスタ12の第2モニタゲートSMG、第2モニタドレインSMDおよび第2モニタソースSMSをそれぞれ構成している。
【0048】
n個の系統モニタトランジスタ12の電気的特性は、達成すべきモニタトランジスタ11の電気的仕様に応じて調整される。モニタトランジスタ11の電気的仕様としては、チャネル利用率、オン抵抗、スイッチング波形等が例示される。n個の系統モニタトランジスタ12は、ほぼ等しいゲート閾値電圧を有していてもよいし、異なるゲート閾値電圧を有していてもよい。n個の系統モニタトランジスタ12は、単位面積当たりにおいてほぼ等しいチャネル面積を有していてもよいし、異なるチャネル面積を有していてもよい。
【0049】
つまり、n個の系統モニタトランジスタ12は、ほぼ等しいオン抵抗特性を有していてもよいし、異なるオン抵抗特性を有していてもよい。n個の系統モニタトランジスタ12のゲート閾値電圧、チャネル面積、オン抵抗特性等は、対応する系統トランジスタ9のゲート閾値電圧、チャネル面積、オン抵抗特性等とほぼ等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
複数の単位モニタトランジスタ13は、ほぼ等しいゲート閾値電圧を有していてもよいし、異なるゲート閾値電圧を有していてもよい。複数の単位モニタトランジスタ13は、単位面積当たりにおいてほぼ等しいチャネル面積を有していてもよいし、異なるチャネル面積を有していてもよい。つまり、複数の単位モニタトランジスタ13は、ほぼ等しいオン抵抗特性を有していてもよいし、異なるオン抵抗特性を有していてもよい。
【0051】
各系統モニタトランジスタ12に含まれる単位モニタトランジスタ13のゲート閾値電圧、チャネル面積、オン抵抗特性等は、対応する系統トランジスタ9に含まれる単位トランジスタ10のゲート閾値電圧、チャネル面積、オン抵抗特性等とほぼ等しくてもよいし、異なっていてもよい。各系統モニタトランジスタ12に含まれる単位モニタトランジスタ13のチャネル面積は、対応する系統トランジスタ9に含まれる単位トランジスタ10のチャネル面積未満であることが好ましい。各系統モニタトランジスタ12の電気的特性は、複数の単位モニタトランジスタ13の個数、ゲート閾値電圧、チャネル面積等を調整することによって精密に調整される。
【0052】
図3および図4を参照して、半導体装置1は、第2デバイス領域7に形成された制御回路の一例としてのコントロールIC14(Control Integrated Circuit)を含む。コントロールIC14は、メイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11と共にIPD(Intelligent Power Device)を構成している。IPDは、「IPM(Intelligent Power Module)」と称されてもよい。
【0053】
コントロールIC14は、外部から入力された電気信号に応答して種々の機能を実現する複数種の機能回路を含む。複数種の機能回路は、ゲート制御回路15、アクティブクランプ回路16および過電流保護回路17を含む。過電流保護回路17は、「OCP(Over Current Protection)回路」と称されてもよい。図示は省略されるが、コントロールIC14は、メイントランジスタ8、モニタトランジスタ11、機能回路等の異常(たとえば過電圧や過熱等)を検出する複数種の異常検出回路を含んでいてもよい。ゲート制御回路15は、メイントランジスタ8の第1ゲートFGおよびモニタトランジスタ11の第1モニタゲートFMGに電気的に接続され、外部からの電気信号に応答してメイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11を駆動制御する。
【0054】
ゲート制御回路15は、具体的には、メイントランジスタ8のn個の第1ゲートFG(n個の系統トランジスタ9の第2ゲートSG)に電気的に接続され、n個の第1ゲートFG(n個の系統トランジスタ9)を個別制御するように構成されている。ゲート制御回路15は、さらに、モニタトランジスタ11のn個の第1モニタゲートFMG(n個の第2モニタゲートSMG)に電気的に接続され、n個の第1モニタゲートFMG(n個の系統モニタトランジスタ12)を個別制御するように構成されている。モニタトランジスタ11のn個の第1モニタゲートFMG(n個の第2モニタゲートSMG)は、この形態では、対応する第1ゲートFGにそれぞれ電気的に接続されている。したがって、ゲート制御回路15は、n個の第1ゲートFGと連動するようにn個の第1モニタゲートFMGを個別制御する。
【0055】
アクティブクランプ回路16は、メイントランジスタ8およびゲート制御回路15に電気的に接続されている。アクティブクランプ回路16は、誘導性負荷Lに蓄積されたエネルギに起因してメイントランジスタ8に逆起電力が入力された際に出力電圧VOを制限(クランプ)することによって、逆起電力からメイントランジスタ8を保護するように構成されている。つまり、アクティブクランプ回路16は、逆起電力の入力時にメイントランジスタ8をアクティブクランプ動作させることにより、逆起電力が消費されるまで出力電圧VOを制限する。
【0056】
アクティブクランプ回路16は、具体的には、メイントランジスタ8の一部(全部ではない)の第1ゲートFGおよび第1ドレインFDに電気的に接続されている。アクティブクランプ回路16は、アクティブクランプ動作時に、一部の系統トランジスタ9をオン状態に制御し、他の系統トランジスタ9をオフ状態に制御する。つまり、アクティブクランプ回路16は、アクティブクランプ動作時にメイントランジスタ8のオン抵抗を引き上げ、メイントランジスタ8を逆起電力から保護する。
【0057】
アクティブクランプ回路16は、さらに、モニタトランジスタ11およびゲート制御回路15に電気的に接続されている。アクティブクランプ回路16は、誘導性負荷Lに蓄積されたエネルギに起因してモニタトランジスタ11に逆起電力が入力された際に出力電圧VOを制限(クランプ)することによって、逆起電力からモニタトランジスタ11を保護するように構成されている。つまり、アクティブクランプ回路16は、逆起電力の入力時にモニタトランジスタ11をアクティブクランプ動作させることにより、逆起電力が消費されるまで出力電圧VOを制限する。
【0058】
アクティブクランプ回路16は、具体的には、モニタトランジスタ11の一部(全部ではない)の第1モニタゲートFMGおよび第1モニタドレインFMDに電気的に接続されている。アクティブクランプ回路16は、アクティブクランプ動作時に、一部の系統モニタトランジスタ12をオン状態に制御し、他の系統モニタトランジスタ12をオフ状態に制御する。
【0059】
アクティブクランプ回路16は、具体的には、アクティブクランプ動作時にn系統のメイントランジスタ8のオンオフに連動するようにn系統のモニタトランジスタ11をオンオフ制御する。アクティブクランプ回路16は、さらに具体的には、アクティブクランプ動作時に、オン状態の系統トランジスタ9に対応した系統モニタトランジスタ12をオン状態に制御し、オフ状態の系統トランジスタ9に対応した系統モニタトランジスタ12をオフ状態に制御する。
【0060】
つまり、アクティブクランプ回路16は、アクティブクランプ動作時にモニタトランジスタ11のオン抵抗を引き上げ、モニタトランジスタ11を逆起電力から保護する。アクティブクランプ回路16は、メイントランジスタ8の第1ソースFSが所定の電圧(たとえば所定の負電圧)以下になったとき、n個の系統トランジスタ9をオンオフ制御し、n個の系統モニタトランジスタ12をオンオフ制御するように構成されていてもよい。
【0061】
過電流保護回路17は、モニタトランジスタ11およびゲート制御回路15に電気的に接続されている。過電流保護回路17は、モニタトランジスタ11の第1モニタソースFMSに電気的に接続され、出力モニタ電流IOMの一部または全部(この形態では全部)を取得するように構成されている。過電流保護回路17は、出力モニタ電流IOMに応じてゲート制御回路15で生成されるゲート信号Gを制御し、出力電流IOを所定値以下に制限することによって、過電流からメイントランジスタ8を保護するように構成されている。
【0062】
過電流保護回路17は、複数の系統モニタ電流ISMのうちの少なくとも1つを取得するように構成されていてもよい。出力モニタ電流IOM(複数の系統モニタ電流ISM)のうち過電流保護回路17に入力される電流は、コントロールIC14の回路構成に応じて出力モニタ電流IOM(複数の系統モニタ電流ISM)の分流および非分流によって調節される。過電流保護回路17は、出力モニタ電流IOMによって出力電流IOを間接的に監視する。
【0063】
過電流保護回路17は、出力モニタ電流IOMが所定の閾値を超えた場合に過電流検出信号SODを生成し、ゲート制御回路15に過電流検出信号SODを出力するように構成されていてもよい。過電流検出信号SODは、ゲート制御回路15において生成されるn個のゲート信号Gの一部または全部を所定値以下(たとえばオフ)に制限するための信号である。ゲート制御回路15は、過電流検出信号SODに応答してn個のゲート信号Gの一部または全部を制限し、メイントランジスタ8を流れる過電流を抑制する。過電流保護回路17は、出力モニタ電流IOMが所定の閾値以下になると過電流検出信号SODの生成を停止し、ゲート制御回路15(メイントランジスタ8)を通常制御に移行させる。
【0064】
過電流保護回路17の前記構成(動作)は、一例に過ぎない。過電流保護回路17は、種々の電流電圧特性および種々の動作方式を有することができる。過電流保護回路17は、定電流電圧垂下型特性、フォールドバック電流制限特性および定電力制御電圧垂下型特性のうちの少なくとも1つの電流電圧特性を含む回路構成を有していてもよい。過電流保護回路17は、自動復帰型またはラッチ型(自動復帰しないシャットダウン型)の動作方式を含む回路構成を有していてもよい。
【0065】
図2を参照して、半導体装置1は、第1主面3を被覆する層間絶縁層19を含む。層間絶縁層19は、第1デバイス領域6および第2デバイス領域7を一括して被覆している。層間絶縁層19は、この形態では、複数の絶縁層および複数の配線層が交互に積層された積層構造を有する多層配線構造からなる。各絶縁層は、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜のうちの少なくとも1つを含む。各配線層は、純Al層(純度が99%以上のAl層)、Cu層(純度が99%以上のCu層)、AlCu合金層、AlSiCu合金層およびAlSi合金層のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0066】
図2図6を参照して、半導体装置1は、第1主面3の上(anywhere above)に配置された制御配線の一例としてのn個のメインゲート配線20を含む。n個のメインゲート配線20は、層間絶縁層19内に選択的に引き回されたn個の配線層からなる。n個のメインゲート配線20は、第1デバイス領域6において互いに電気的に独立した状態でメイントランジスタ8のn個の第1ゲートFGに一対一の対応関係で電気的に接続されている。n個のメインゲート配線20は、第2デバイス領域7においてコントロールIC14(ゲート制御回路15)にそれぞれ電気的に接続されている。n個のメインゲート配線20は、コントロールIC14(ゲート制御回路15)によって生成されたn個のゲート信号Gをメイントランジスタ8のn個の第1ゲートFGに個別的に伝達する。
【0067】
n個のメインゲート配線20は、複数の単位トランジスタ10からなる集合体の中から個別制御対象として系統化すべき1つまたは複数の単位トランジスタ10の第3ゲートTGにそれぞれ電気的に接続されている。n個のメインゲート配線20は、個別制御対象として系統化すべき1つの単位トランジスタ10に電気的に接続された1つまたは複数のメインゲート配線20を含んでいてもよい。また、n個のメインゲート配線20は、個別制御対象として系統化すべき複数の単位トランジスタ10を並列接続させる1つまたは複数のメインゲート配線20を含んでいてもよい。
【0068】
半導体装置1は、第1主面3の上(anywhere above)に配置されたモニタ制御配線の一例としてのn個のモニタゲート配線21を含む。n個のモニタゲート配線21は、層間絶縁層19内に選択的に引き回されたn個の配線層からなる。n個のモニタゲート配線21は、第1デバイス領域6において互いに電気的に独立した状態でモニタトランジスタ11のn個の第1モニタゲートFMGに一対一の対応関係で電気的に接続されている。n個のモニタゲート配線21は、第2デバイス領域7においてコントロールIC14(ゲート制御回路15)にそれぞれ電気的に接続されている。n個のモニタゲート配線21は、コントロールIC14(ゲート制御回路15)によって生成されたn個のモニタゲート信号MGをモニタトランジスタ11のn個の第1モニタゲートFMGに個別的に伝達する。
【0069】
n個のモニタゲート配線21は、複数の単位モニタトランジスタ13からなる集合体の中から個別制御対象として系統化すべき1つまたは複数の単位モニタトランジスタ13の第3モニタゲートTMGにそれぞれ電気的に接続されている。n個のモニタゲート配線21は、個別制御対象として系統化すべき1つの単位モニタトランジスタ13に電気的に接続された1つまたは複数のモニタゲート配線21を含んでいてもよい。また、n個のモニタゲート配線21は、個別制御対象として系統化すべき複数の単位モニタトランジスタ13を並列接続させる1つまたは複数のモニタゲート配線21を含んでいてもよい。
【0070】
n個のモニタゲート配線21は、この形態では、対応するメインゲート配線20に一対一の対応関係でそれぞれ電気的に接続されている。n個のモニタゲート配線21は、対応するメインゲート配線20と一体的にそれぞれ形成されていてもよい。n個のモニタゲート配線21は、対応するメインゲート配線20を介してコントロールIC14(ゲート制御回路15)にそれぞれ電気的に接続されている。n個のモニタゲート配線21は、コントロールIC14(ゲート制御回路15)によって生成されたn個のゲート信号G(n個のモニタゲート信号MG)をモニタトランジスタ11のn個の第1モニタゲートFMGに個別的に伝達する。
【0071】
図1および図2を参照して、半導体装置1は、複数の端子電極22~27を含む。図1では、複数の端子電極22~27がハッチングによって示されている。複数の端子電極22~27の個数、配置および平面形状は、メイントランジスタ8の仕様やコントロールIC14の仕様に応じて任意の形態に調整され、図1および図2に示される形態に限定されない。複数の端子電極22~27は、この形態では、ドレイン端子22(電源端子VBB)、ソース端子23(出力端子OUT)、入力端子24、グランド端子25、イネーブル端子26およびセンス端子27を含む。
【0072】
ドレイン端子22は、メイントランジスタ8の第1ドレインFD、モニタトランジスタ11の第1モニタドレインFMD、および、コントロールIC14に電気的に接続されている。ドレイン端子22は、メイントランジスタ8の第1ドレインFD、モニタトランジスタ11の第1モニタドレインFMD、コントロールIC14等の各種回路に電源電圧VBを伝達する。ソース端子23は、メイントランジスタ8の第1ソースFS、および、コントロールIC14に電気的に接続されている。ソース端子23は、メイントランジスタ8によって生成された出力電流IOを外部に伝達する。
【0073】
入力端子24は、コントロールIC14を駆動する入力電圧を伝達する。グランド端子25は、グランド電圧GNDを伝達する。イネーブル端子26は、コントロールIC14の一部または全部の機能を有効または無効にするための電気信号を伝達する。センス端子27は、メイントランジスタ8、モニタトランジスタ11、コントロールIC14等の異常を検出するための電気信号を伝達する。
【0074】
ドレイン端子22は、半導体チップ2の第2主面4を直接被覆し、第2主面4に電気的に接続されている。ドレイン端子22は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層およびAl層のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。ドレイン端子22は、Ti層、Ni層、Au層、Ag層およびAl層のうちの少なくとも2つを任意の態様で積層させた積層構造を有していてもよい。
【0075】
ソース端子23、入力端子24、グランド端子25、イネーブル端子26およびセンス端子27は、層間絶縁層19の上に配置されている。ソース端子23は、第1主面3において第1デバイス領域6の上(above)に形成されている。入力端子24、グランド端子25、イネーブル端子26およびセンス端子27は、第1主面3において第1デバイス領域6外の領域(具体的には第2デバイス領域7)の上(above)にそれぞれ配置されている。端子電極23~27は、純Al層、純Cu層、AlCu合金層、AlSiCu合金層およびAlSi合金層のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。端子電極23~27の外面には、めっき層がそれぞれ形成されていてもよい。めっき層は、Ni層、Pd層およびAu層のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0076】
図7A図7Cは、図5にそれぞれ対応し、メイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11の動作例を説明するための回路図である。図7Aを参照して、n個のメインゲート配線20の全てにゲート閾値電圧未満のゲート信号G(つまりオフ信号)が入力される。このような制御は、メイントランジスタ8のオフ動作時に適用される。これにより、メイントランジスタ8では、全ての系統トランジスタ9がオフ状態になる結果、メイントランジスタ8がオフ状態になる。モニタトランジスタ11では、n個の系統トランジスタ9に連動してn個の系統モニタトランジスタ12がオフ状態になる。これにより、モニタトランジスタ11がメイントランジスタ8に連動してオフ状態になる。
【0077】
図7Bを参照して、n個のメインゲート配線20の全てにゲート閾値電圧以上のゲート信号G(つまりオン信号)が入力される。このような制御は、メイントランジスタ8の通常動作時に適用される。これにより、n個の系統トランジスタ9がオン状態になる結果、メイントランジスタ8がオン状態になる。メイントランジスタ8は、n個の系統トランジスタ9によって生成されたn個の系統電流ISを含む出力電流IOを生成する。この場合、メイントランジスタ8のチャネル利用率が相対的に増加し、オン抵抗が相対的に減少する。
【0078】
モニタトランジスタ11では、n個の系統トランジスタ9に連動してn個の系統モニタトランジスタ12がオン状態になる。これにより、モニタトランジスタ11が、メイントランジスタ8に連動してオン状態になる。モニタトランジスタ11は、n個の系統モニタトランジスタ12によって生成されたn個の系統モニタ電流ISMを含み、出力電流IOを監視する出力モニタ電流IOMを生成する。この場合、モニタトランジスタ11のチャネル利用率が相対的に増加し、オン抵抗が相対的に減少する。
【0079】
図7Cを参照して、x個(1≦x<n)のメインゲート配線20にゲート閾値電圧以上のゲート信号G(つまりオン信号)が入力され、(n-x)個のメインゲート配線20にゲート閾値電圧未満のゲート信号G(つまりオフ信号)が入力される。このような制御は、メイントランジスタ8のアクティブクランプ動作時に適用される。これにより、x個の系統トランジスタ9がオン状態になり、(n-x)個の系統トランジスタ9がオフ状態になる結果、メイントランジスタ8が一部の電流経路が導通し、一部の電流経路が遮断された状態でオン状態になる。
【0080】
メイントランジスタ8は、x個の系統トランジスタ9によって生成されたx個の系統電流ISを含む出力電流IOを生成する。換言すると、メイントランジスタ8は、0Aを超える絶対値からなるx個の系統電流IS、および、0Aからなる(n-x)個の系統電流ISを含む出力電流IOを生成する。この場合、メイントランジスタ8のチャネル利用率が相対的に減少し、オン抵抗が相対的に増加する。
【0081】
モニタトランジスタ11では、x個の系統トランジスタ9に連動してx個の系統モニタトランジスタ12がオン状態になり、(n-x)個の系統トランジスタ9に連動して(n-x)個の系統モニタトランジスタ12がオフ状態になる。これにより、モニタトランジスタ11が、メイントランジスタ8に連動して一部の電流経路が導通し、一部の電流経路が遮断された状態でオン状態になる。
【0082】
モニタトランジスタ11は、x個の系統モニタトランジスタ12によって生成されたx個の系統モニタ電流ISMを含み、出力電流IOを監視する出力モニタ電流IOMを生成する。換言すると、モニタトランジスタ11は、0Aを超える絶対値からなるx個の系統モニタ電流ISM、および、0Aからなる(n-x)個の系統モニタ電流ISMを含む出力モニタ電流IOMを生成する。この場合、モニタトランジスタ11のチャネル利用率が相対的に減少し、オン抵抗が相対的に増加する。
【0083】
図7A図7Cにおいて、モニタトランジスタ11によって生成された出力モニタ電流IOMの一部または全部(この形態では全部)は、過電流保護回路17に入力される(図4参照)。過電流保護回路17は、出力モニタ電流IOMが所定の閾値を超えた場合に過電流検出信号SODを生成し、ゲート制御回路15に過電流検出信号SODを出力する。ゲート制御回路15は、過電流検出信号SODに応答してn個のゲート信号Gの一部または全部を制限し、n個の系統トランジスタ9で生成されるn個の系統電流ISの一部または全部を制限する。過電流保護回路17は、出力モニタ電流IOMが所定の閾値以下になると過電流検出信号SODの生成を停止し、ゲート制御回路15(メイントランジスタ8)を通常制御に移行させる。
【0084】
このように、半導体装置1では、n系統のメイントランジスタ8が、n個の系統トランジスタ9の個別制御によってオン抵抗(チャネル利用率)が変化するように構成されている。メイントランジスタ8は、具体的には、n個の系統トランジスタ9の個別制御によってアクティブクランプ動作時のオン抵抗が通常動作時のオン抵抗と異なるように制御される。メイントランジスタ8は、さらに具体的には、n個の系統トランジスタ9の個別制御によってアクティブクランプ動作時のオン抵抗が通常動作時のオン抵抗を超えるように制御される。
【0085】
一方、モニタトランジスタ11は、m個(この形態ではm=n)の系統モニタトランジスタ12の個別制御によってオン抵抗(チャネル利用率)が変化するように構成されている。モニタトランジスタ11は、具体的には、メイントランジスタ8に連動してオン抵抗が変化するように構成されている。モニタトランジスタ11は、具体的には、メイントランジスタ8に連動してアクティブクランプ動作時のオン抵抗が通常動作時のオン抵抗と異なるように制御される。モニタトランジスタ11は、さらに具体的には、メイントランジスタ8に連動してアクティブクランプ動作時のオン抵抗が通常動作時のオン抵抗を超えるように制御される。
【0086】
図8は、図1に示す半導体装置1の電気的構造の構成例(=2系統のメイントランジスタ8および2系統のモニタトランジスタ11が適用された構成例)を示すブロック回路図である。図9は、図8に示すブロック回路図の構成例を示す回路図である。図8および図9は、コントロールIC14の要部を示す回路図でもある。図8および図9には、誘導性負荷Lがソース端子23に接続された例が示されている。
【0087】
半導体装置1は、2系統(n=2)のメイントランジスタ8、2系統(m=n=2)のモニタトランジスタ11、2個(n=2)のメインゲート配線20、2個(m=n=2)のモニタゲート配線21、ゲート制御回路15、アクティブクランプ回路16および過電流保護回路17を含む。
【0088】
2系統のメイントランジスタ8は、第1系統トランジスタ9Aおよび第2系統トランジスタ9Bを含む。2個の第2ゲートSGは、2個の第1ゲートFGを構成している。2個の第2ドレインSDは、ドレイン端子22にそれぞれ電気的に接続されている。2個の第2ソースSSは、ソース端子23にそれぞれ電気的に接続されている。
【0089】
第1系統トランジスタ9Aは第1系統電流IS1を生成し、第2系統トランジスタ9Bは第2系統電流IS2を生成する。2系統のメイントランジスタ8は、第1系統電流IS1および第2系統電流IS2を含む出力電流IOを生成する。第2系統電流IS2は、前述の説明からも明らかなように第1系統電流IS1と異なっていてもよいし、第1系統電流IS1と等しくてもよい。以下では、第1系統電流IS1および第2系統電流IS2が区別されずに単に系統電流ISと記載される。
【0090】
2系統のメイントランジスタ8は、第1動作モード、第2動作モードおよび第3動作モードで制御される。第1動作モードでは、第1~第2系統トランジスタ9A~9Bが同時にオフ状態に制御される。第2動作モードでは、第1~第2系統トランジスタ9A~9Bが同時にオン状態に制御される。第3動作モードでは、第1~第2系統トランジスタ9A~9Bのいずれか一方のみがオン状態に制御される。第3動作モードでは、この形態では、第1系統トランジスタ9Aがオン状態に制御され、第2系統トランジスタ9Bがオフ状態に制御される。
【0091】
2系統のモニタトランジスタ11は、第1系統モニタトランジスタ12Aおよび第2系統モニタトランジスタ12Bを含む。2個の第2モニタゲートSMGは、2個の第1モニタゲートFMGを構成している。2個の第2モニタドレインSMDは、ドレイン端子22にそれぞれ電気的に接続されている。2個の第2モニタソースSMSは、ソース端子23(第1~第2系統トランジスタ9A~9Bの第2ソースSS)から電気的に分離されている。
【0092】
第1系統モニタトランジスタ12Aは第1系統モニタ電流ISM1を生成し、第2系統モニタトランジスタ12Bは第2系統モニタ電流ISM2を生成する。2系統のモニタトランジスタ11は、第1系統モニタ電流ISM1および第2系統モニタ電流ISM2を含む出力モニタ電流IOMを生成する。第2系統モニタ電流ISM2は、前述の説明からも明らかなように第1系統モニタ電流ISM1異なっていてもよいし、第1系統モニタ電流ISM1と等しくてもよい。以下では、第1系統モニタ電流ISM1および第2系統モニタ電流ISM2が、区別されずに単に系統モニタ電流ISMと記載される。
【0093】
2系統のモニタトランジスタ11は、第1動作モード、第2動作モードおよび第3動作モードで制御される。第1動作モードでは、第1~第2系統モニタトランジスタ12A~12Bが同時にオフ状態に制御される。第2動作モードでは、第1~第2系統モニタトランジスタ12A~12Bが同時にオン状態に制御される。第3動作モードでは、第1~第2系統モニタトランジスタ12A~12Bのいずれか一方のみがオン状態に制御される。第3動作モードでは、この形態では、第1系統モニタトランジスタ12Aがオン状態に制御され、第2系統モニタトランジスタ12Bがオフ状態に制御される。モニタトランジスタ11の第1~第3動作モードは、この形態では、メイントランジスタ8の第1~第3動作モードに連動して実行される。
【0094】
2個のメインゲート配線20は、第1メインゲート配線20Aおよび第2メインゲート配線20Bを含む。第1メインゲート配線20Aは、第1系統トランジスタ9Aの第2ゲートSGに電気的に接続されている。第2メインゲート配線20Bは、第2系統トランジスタ9Bの第2ゲートSGに電気的に接続されている。
【0095】
2個のモニタゲート配線21は、第1モニタゲート配線21Aおよび第2モニタゲート配線21Bを含む。第1モニタゲート配線21Aは、第1メインゲート配線20Aおよび第1系統モニタトランジスタ12Aの第2モニタゲートSMGに電気的に接続されている。第2モニタゲート配線21Bは、第2メインゲート配線20Bおよび第2系統モニタトランジスタ12Bの第2モニタゲートSMGに電気的に接続されている。
【0096】
以下の説明において「第1メインゲート配線20Aに電気的に接続された状態」は、「第1系統トランジスタ9Aの第2ゲートSGに電気的に接続された状態」および「第1系統モニタトランジスタ12Aの第2モニタゲートSMGに電気的に接続された状態」を含む。また、「第2メインゲート配線20Bに電気的に接続された状態」は、「第2系統トランジスタ9Bの第2ゲートSGに電気的に接続された状態」および「第2系統モニタトランジスタ12Bの第2モニタゲートSMGに電気的に接続された状態」を含む。
【0097】
ゲート制御回路15は、第1~第2メインゲート配線20A~20Bに電気的に接続されている。ゲート制御回路15は、イネーブル信号ENに応答して、第1~第2ゲート信号G1~G2を生成し、第1~第2ゲート信号G1~G2を第1~第2メインゲート配線20A~20Bに個別的に出力する。第1~第2系統モニタトランジスタ12A~12Bに入力される第1~第2モニタゲート信号MG1~MG2は、第1~第2ゲート信号G1~G2からそれぞれなる。
【0098】
ゲート制御回路15は、具体的には、イネーブル信号ENがハイレベル(EN=H)となるイネーブル状態において、第1~第2系統トランジスタ9A~9Bの双方および第1~第2系統モニタトランジスタ12A~12Bの双方をオン状態に制御する第1~第2ゲート信号G1~G2を生成する。ゲート制御回路15は、イネーブル信号ENがローレベル(EN=L)となるディセーブル状態において、第1~第2系統トランジスタ9A~9Bの双方および第1~第2系統モニタトランジスタ12A~12Bの双方をオフ状態に制御する第1~第2ゲート信号G1~G2を生成する。
【0099】
ゲート制御回路15は、この形態では、第1電流源31、第2電流源32、第3電流源33、第4電流源34、コントローラ35およびnチャネル型のドライブMISFET36を含む。具体的な図示は省略されるが、第1電流源31、第2電流源32、第3電流源33、第4電流源34、コントローラ35およびドライブMISFET36は、第2デバイス領域7にそれぞれ形成されている。
【0100】
第1電流源31は、第1ソース電流IH1を生成する。第1電流源31は、昇圧電圧VG(=チャージポンプ出力)の印加端および第1メインゲート配線20Aに電気的に接続されている。第2電流源32は、第2ソース電流IH2を生成する。第2電流源32は、昇圧電圧VGの印加端および第2メインゲート配線20Bに電気的に接続されている。第3電流源33は、第1シンク電流IL1を生成する。第3電流源33は、第1メインゲート配線20Aおよびソース端子23に電気的に接続されている。第4電流源34は、第2シンク電流IL2を生成する。第4電流源34は、第2メインゲート配線20Bおよびソース端子23に電気的に接続されている。
【0101】
コントローラ35は、第1~第4電流源31~34に電気的に接続されている。コントローラ35は、イネーブル状態(EN=H)において、第1~第2電流源31~32をオン状態に制御する一方、第3~第4電流源33~34をオフ状態に制御する。これにより、第1ソース電流IH1が第1メインゲート配線20Aに出力され、第2ソース電流IH2が第2メインゲート配線20Bに出力される。コントローラ35は、ディセーブル状態(EN=L)において、第1~第2電流源31~32をオフ状態に制御する一方、第3~第4電流源33~34をオン状態に制御する。これにより、第1シンク電流IL1が第1メインゲート配線20Aから引き抜かれ、第2シンク電流IL2が第2メインゲート配線20Bから引き抜かれる。
【0102】
ドライブMISFET36は、第2メインゲート配線20Bおよびソース端子23に電気的に接続されている。ドライブMISFET36は、ドレイン、ソース、ゲートおよびバックゲートを含む。ドライブMISFET36のドレインは、第2メインゲート配線20Bに電気的に接続されている。ドライブMISFET36のソースは、ソース端子23に電気的に接続されている。ドライブMISFET36のバックゲートは、ソース端子23に電気的に接続されている。
【0103】
アクティブクランプ回路16は、第1系統トランジスタ9Aのドレイン・ゲート間に接続されている。また、アクティブクランプ回路16は、第1系統モニタトランジスタ12Aのドレイン・ゲート間に接続されている。アクティブクランプ回路16は、メイントランジスタ8の第1ソースFS(ソース端子23)が負電圧になったとき、ゲート制御回路15と協働して第1系統トランジスタ9Aおよび第1系統モニタトランジスタ12Aの双方をオン状態に制御し、第2系統トランジスタ9Bおよび第2系統モニタトランジスタ12Bの双方をオフ状態に制御するように構成されている。
【0104】
アクティブクランプ回路16は、具体的には、ゲート制御回路15に電気的に接続された内部ノード電圧Vxを有している。アクティブクランプ回路16は、内部ノード電圧Vxを介してゲート制御回路15を制御することによって、第1系統トランジスタ9Aおよび第1系統モニタトランジスタ12Aの双方をオン状態に制御する一方、第2系統トランジスタ9Bおよび第2系統モニタトランジスタ12Bの双方をオフ状態に制御する第1~第2ゲート信号G1~G2を生成させる。
【0105】
アクティブクランプ回路16は、さらに具体的には、イネーブル状態(EN=H)からディセーブル状態(EN=L)への遷移後、メイントランジスタ8がアクティブクランプ動作に移行する前に、内部ノード電圧Vxを介してゲート制御回路15を制御することによって、第1系統トランジスタ9Aおよび第1系統モニタトランジスタ12Aの双方をオン状態に制御する一方、第2系統トランジスタ9Bおよび第2系統モニタトランジスタ12Bの双方をオフ状態に制御する第1~第2ゲート信号G1~G2を生成させる。
【0106】
メイントランジスタ8がアクティブクランプ動作に移行する前とは、具体的には、出力電圧VOがクランプされる前である。第2系統トランジスタ9Bおよび第2系統モニタトランジスタ12Bの双方は、第2ゲート信号G2が出力電圧VOに固定されることによってオフ状態に制御される。つまり、第2系統トランジスタ9Bのゲート・ソース間がショートされ、第2系統モニタトランジスタ12Bのゲート・ソース間がショートされる。
【0107】
アクティブクランプ回路16は、メイントランジスタ8のドレイン・ソース電圧(=VBB-VOUT)をクランプ電圧Vclp以下に制限する。第2系統トランジスタ9Bおよび第2系統モニタトランジスタ12Bは、この形態では、アクティブクランプ動作に寄与しない。したがって、アクティブクランプ回路16は、第2系統トランジスタ9Bおよび第2系統モニタトランジスタ12Bに接続されていない。
【0108】
アクティブクランプ回路16は、この形態では、ツェナダイオード列37、ダイオード列38、および、nチャネル型のクランプMISFET39を含む。具体的な図示は省略されるが、ツェナダイオード列37、ダイオード列38およびクランプMISFET39は、第2デバイス領域7にそれぞれ形成されている。
【0109】
ツェナダイオード列37は、順方向直列接続された複数(たとえば8個)のツェナダイオードを含む直列回路からなる。ツェナダイオードの個数は任意であり、1個であってもよい。ツェナダイオード列37は、カソードおよびアノードを含む。ツェナダイオード列37のカソードは、ドレイン端子22、および、第1~第2系統トランジスタ9A~9Bの第2ドレインSDに電気的に接続されている。
【0110】
ダイオード列38は、順方向直列接続された複数(たとえば3個)のpn接合ダイオードを含む直列回路からなる。pn接合ダイオードの個数は任意であり、1個であってもよい。ダイオード列38は、カソードおよびアノードを含む。ダイオード列38のアノードは、ツェナダイオード列37のアノードに逆バイアス接続されている。
【0111】
クランプMISFET39は、ドレイン、ソース、ゲートおよびバックゲートを含む。クランプMISFET39のドレインは、ドレイン端子22、および、第1~第2系統トランジスタ9A~9Bの第2ドレインSDに電気的に接続されている。クランプMISFET39のソースは、第1メインゲート配線20Aに電気的に接続されている。クランプMISFET39のゲートは、ダイオード列38のカソードに電気的に接続されている。クランプMISFET39のバックゲートは、ソース端子23に電気的に接続されている。
【0112】
アクティブクランプ回路16の内部ノード電圧Vxは、ドライブMISFET36のゲートに電気的に接続されている。アクティブクランプ回路16は、内部ノード電圧Vxに応じてドライブMISFET36をオン状態またはオフ状態に制御する。内部ノード電圧Vxは、アクティブクランプ回路16内の任意の電圧であってもよい。内部ノード電圧Vxは、クランプMISFET39のゲート電圧であってもよいし、ダイオード列38のいずれか1つのpn接合ダイオードのアノード電圧であってもよい。
【0113】
図10は、図3に示す領域Xの拡大図であって、図8に示すメイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11のレイアウト例を示す平面図である。図11は、図10に示す領域XIの拡大図である。図12は、図10に示す領域XIIの拡大図である。図13は、図11に示すXIII-XIII線に沿う断面図である。図14は、図11に示すXIV-XIV線に沿う断面図である。図15は、図11に示すXV-XV線に沿う断面図である。図16は、図11に示すXVI-XVI線に沿う断面図である。
【0114】
図10図16を参照して、半導体装置1は、半導体チップ2の第2主面4の表層部に形成されたn型(第1導電型)の第1半導体領域51を含む。第1半導体領域51は、メイントランジスタ8の第1ドレインFDおよびモニタトランジスタ11の第1モニタドレインFMDを形成している。第1半導体領域51は、「ドレイン領域」と称されてもよい。第1半導体領域51は、第2主面4の表層部の全域に形成され、第2主面4および第1~第4側面5A~5Dから露出している。
【0115】
第1半導体領域51のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。第1半導体領域51の厚さは、10μm以上450μm以下であってもよい。第1半導体領域51の厚さは、50μm以上150μm以下であることが好ましい。第1半導体領域51は、この形態では、n型の半導体基板(Si基板)によって形成されている。
【0116】
半導体装置1は、半導体チップ2の第1主面3の表層部に形成されたn型の第2半導体領域52を含む。第2半導体領域52は、第1半導体領域51と共にメイントランジスタ8の第1ドレインFDおよびモニタトランジスタ11の第1モニタドレインFMDを形成している。第2半導体領域52は、「ドリフト領域」と称されてもよい。第2半導体領域52は、第1半導体領域51に電気的に接続されるように第1主面3の表層部の全域に形成され、第1主面3および第1~第4側面5A~5Dから露出している。
【0117】
第2半導体領域52は、第1半導体領域51のn型不純物濃度未満のn型不純物濃度を有している。第2半導体領域52のn型不純物濃度は、1×1015cm-3以上1×1018cm-3以下であってもよい。第2半導体領域52は、第1半導体領域51の厚さ未満の厚さを有している。第2半導体領域52の厚さは、1μm以上25μm以下であってもよい。第2半導体領域52の厚さは、5μm以上15μm以下であることが好ましい。第2半導体領域52は、この形態では、n型のエピタキシャル層(Siエピタキシャル層)によって形成されている。
【0118】
半導体装置1は、第1主面3において第1デバイス領域6を区画する領域分離構造の一例としてのトレンチ分離構造53(trench separation structure)を含む。トレンチ分離構造53は、「DTI(deep trench isolation)構造」と称されてもよい。トレンチ分離構造53は、平面視において第1主面3の一部の領域を取り囲む環状に形成され、所定形状の第1デバイス領域6を区画している。
【0119】
トレンチ分離構造53は、この形態では、平面視において第1~第4側面5A~5Dに平行な4辺を有する四角環状に形成され、四角形状の第1デバイス領域6を区画している。トレンチ分離構造53の平面形状は任意であり、多角環状に形成されていてもよい。第1デバイス領域6は、トレンチ分離構造53の平面形状に応じて多角形状に区画されていてもよい。
【0120】
トレンチ分離構造53は、分離幅WIおよび分離深さDIを有している。分離幅WIは、平面視においてトレンチ分離構造53が延びる方向に直交する方向の幅である。分離幅WIは、0.5μm以上2.5μm以下であってもよい。分離幅WIは、1.2μm以上2μm以下であることが好ましい。分離深さDIは、1μm以上10μm以下であってもよい。分離深さDIは、2μm以上6μm以下であることが好ましい。
【0121】
トレンチ分離構造53のアスペクト比DI/WIは、1を超えて5以下であってもよい。アスペクト比DI/WIは、分離幅WIに対する分離深さDIの比である。アスペクト比DI/WIは、2以上であることが好ましい。トレンチ分離構造53の底壁は、第2半導体領域52の底部から1μm以上5μm以下の間隔を空けていることが好ましい。
【0122】
トレンチ分離構造53は、第1方向Xに延びる部分および第2方向Yに延びる部分を円弧状(湾曲状)に接続する角部を有している。この形態では、トレンチ分離構造53の四隅が、円弧状に形成されている。つまり、第1デバイス領域6は、円弧状にそれぞれ延びる四隅を有する四角形状に区画されている。トレンチ分離構造53の角部は、円弧方向に沿って一定の分離幅WIを有していることが好ましい。
【0123】
トレンチ分離構造53は、分離トレンチ54、分離絶縁膜55(分離絶縁体)、分離電極56、分離キャップ絶縁膜57を含むシングル電極構造を有している。分離トレンチ54は、第1主面3から第2主面4に向けて掘り下がっている。分離トレンチ54は、第2半導体領域52の底部から第1主面3側に間隔を空けて形成されている。
【0124】
分離トレンチ54は、側壁および底壁を含む。分離トレンチ54の側壁が半導体チップ2内において第1主面3との間で成す角度は、90°以上92°以下であってもよい。分離トレンチ54は、開口から底壁に向けて開口幅が狭まる先細り形状に形成されていてもよい。分離トレンチ54の底壁角部は、湾曲状に形成されていることが好ましい。分離トレンチ54の底壁の全体が、第2主面4に向かう湾曲状に形成されていてもよい。
【0125】
分離絶縁膜55は、分離トレンチ54の壁面に形成されている。分離絶縁膜55は、具体的には、分離トレンチ54の壁面の全域に膜状に形成され、分離トレンチ54内においてリセス空間を区画している。分離絶縁膜55は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。分離絶縁膜55は、半導体チップ2の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。
【0126】
分離絶縁膜55は、分離厚さTIを有している。分離厚さTIは、分離トレンチ54の壁面の法線方向に沿う厚さである。分離厚さTIは、0.1μm以上1μm以下であってもよい。分離厚さTIは、0.15μm以上0.65μm以下であることが好ましい。分離絶縁膜55において、分離トレンチ54の底壁を被覆する部分の厚さは、分離トレンチ54の側壁を被覆する部分の厚さ未満であってもよい。
【0127】
分離電極56は、分離絶縁膜55を挟んで分離トレンチ54に一体物(integrated member)として埋設されている。分離電極56は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。分離電極56には、ソース電位が印加される。分離電極56は、分離トレンチ54から露出する電極面(分離電極面)を有している。分離電極56の電極面は、分離トレンチ54の底壁に向けて湾曲状に窪んでいてもよい。分離電極56の電極面は、分離トレンチ54の深さ方向に関して、第1主面3から分離トレンチ54の底壁に0Å以上2000Å未満の間隔を空けていることが好ましい。分離電極56の電極面は、第1主面3から分離トレンチ54の底壁に1000Å未満の間隔を空けていることが特に好ましい。
【0128】
なお、図13図16では、分離電極56の電極面の全体が第1主面3よりも下方に位置しているが、分離電極56の電極面は、第1主面3よりも上方に位置する部分を有していてもよい。たとえば、分離電極56が第1主面3よりも上方に延びる突出部を有しており、当該突出部に前述の湾曲状に窪んだ電極面を有していてよい。
【0129】
分離キャップ絶縁膜57は、分離トレンチ54内において分離電極56の電極面を膜状に被覆している。分離キャップ絶縁膜57は、分離電極56が他の電極と短絡することを抑制する。分離キャップ絶縁膜57は、分離絶縁膜55に連なっている。分離キャップ絶縁膜57は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。分離キャップ絶縁膜57は、分離電極56の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。つまり、分離キャップ絶縁膜57はポリシリコンの酸化物を含み、分離絶縁膜55はシリコン単結晶の酸化物を含むことが好ましい。
【0130】
半導体装置1は、第1デバイス領域6において第1主面3の表層部に形成されたp型(第2導電型)のボディ領域58を含む。ボディ領域58のp型不純物濃度は、1×1016cm-3以上1×1018cm-3以下であってもよい。ボディ領域58は、第1デバイス領域6において第1主面3の表層部の全域に形成され、トレンチ分離構造53の側壁に接している。ボディ領域58は、トレンチ分離構造53の底壁に対して第1主面3側の領域に形成されている。ボディ領域58は、トレンチ分離構造53の中間部に対して第1主面3側の領域に形成されていることが好ましい。
【0131】
半導体装置1は、第1デバイス領域6において第1主面3に形成された2系統(n=2)のメイントランジスタ8を含む。メイントランジスタ8は、平面視においてトレンチ分離構造53から間隔を空けて第1主面3に形成されている。メイントランジスタ8は、第1デバイス領域6の第1主面3に集約して形成された複数の単位トランジスタ10を含む。
【0132】
単位トランジスタ10の個数は任意である。図10では、44個の単位トランジスタ10が形成された例が示されている。単位トランジスタ10の個数は、偶数個であることが好ましい。複数の単位トランジスタ10は、平面視において第1方向Xに一列に並んで配列され、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。複数の単位トランジスタ10は、平面視において第2方向Yに延びるストライプ状に形成されている。
【0133】
複数の単位トランジスタ10は、具体的には、単位セル60によってそれぞれ構成されている。各単位セル60は、1つのトレンチ構造61、および、当該トレンチ構造61によって制御されるチャネルセル62を含む。トレンチ構造61は、「ゲート構造」または「トレンチゲート構造」と称されてもよい。各トレンチ構造61は、各単位トランジスタ10の第3ゲートTGを構成している。チャネルセル62は、電流経路の開閉がトレンチ構造61によって制御される領域である。単位セル60は、この形態では、1つのトレンチ構造61の両サイドに形成された一対のチャネルセル62を含む。
【0134】
複数のトレンチ構造61は、平面視において第1方向Xに間隔を空けて配列され、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。つまり、複数のトレンチ構造61は、平面視において第2方向Yに延びるストライプ状に形成されている。複数のトレンチ構造61は、長手方向(第2方向Y)に関して、一方側の第1端部63および他方側の第2端部64をそれぞれ有している。
【0135】
各トレンチ構造61は、トレンチ幅Wおよびトレンチ深さDを有している。トレンチ幅Wは、トレンチ構造61が延びる方向に直交する方向(第1方向X)の幅である。トレンチ幅Wは、トレンチ分離構造53の分離幅WI未満(W<WI)であることが好ましい。トレンチ幅Wは、0.5μm以上2μm以下であってもよい。トレンチ幅Wは、0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましい。むろん、トレンチ幅Wは、分離幅WIとほぼ等しくてもよい(W≒WI)。
【0136】
トレンチ深さDは、トレンチ分離構造53の分離深さDI未満(D<DI)であることが好ましい。トレンチ深さDは、1μm以上10μm以下であってもよい。トレンチ深さDは、2μm以上6μm以下であることが好ましい。むろん、トレンチ深さDは、分離深さDIとほぼ等しくてもよい(D≒DI)。トレンチ構造61のアスペクト比D/Wは、1を超えて5以下であってもよい。アスペクト比D/Wは、トレンチ幅Wに対するトレンチ深さDの比である。アスペクト比D/Wは、2以上であることが特に好ましい。トレンチ構造61の底壁は、第2半導体領域52の底部から1μm以上5μm以下の間隔を空けていることが好ましい。
【0137】
複数のトレンチ構造61は、第1方向Xにトレンチ間隔ITを空けて配列されている。トレンチ間隔ITは、複数のトレンチ構造61から拡がる空乏層が、複数のトレンチ構造61の底壁よりも下方で一体化する値に設定されることが好ましい。トレンチ間隔ITは、トレンチ幅Wの0.25倍以上、かつ、トレンチ幅Wの1.5倍以下であってもよい。トレンチ間隔ITは、トレンチ幅W以下(IT≦W)であることが好ましい。トレンチ間隔ITは、0.5μm以上2μm以下であってもよい。
【0138】
以下、1つのトレンチ構造61の構成が説明される。トレンチ構造61は、トレンチ71、上絶縁膜72、下絶縁膜73、上電極74、下電極75および中間絶縁膜76を含むマルチ電極構造を有している。トレンチ71は、「ゲートトレンチ」と称されてもよい。トレンチ構造61は、埋設絶縁体を挟んでトレンチ71に埋設された埋設電極(ゲート電極)を含む。埋設絶縁体は、上絶縁膜72、下絶縁膜73および中間絶縁膜76によって構成されている。埋設電極は、上電極74および下電極75によって構成されている。
【0139】
トレンチ71は、第1主面3から第2主面4に向けて掘り下がっている。トレンチ71は、ボディ領域58を貫通し、第2半導体領域52の底部から第1主面3側に間隔を空けて形成されている。トレンチ71は、側壁および底壁を含む。トレンチ71の側壁が半導体チップ2内において第1主面3との間で成す角度は、90°以上92°以下であってもよい。トレンチ71は、開口から底壁に向けて開口幅が狭まる先細り形状に形成されていてもよい。トレンチ71の底壁角部は、湾曲状に形成されていることが好ましい。トレンチ71の底壁の全体が、第2主面4に向かう湾曲状に形成されていてもよい。
【0140】
上絶縁膜72は、トレンチ71の上壁面を被覆している。上絶縁膜72は、具体的には、ボディ領域58の底部に対してトレンチ71の開口側の領域に位置する上壁面を被覆している。上絶縁膜72は、第2半導体領域52およびボディ領域58の境界を横切っている。上絶縁膜72は、ボディ領域58を被覆する部分、および、第2半導体領域52を被覆する部分を有している。ボディ領域58に対する上絶縁膜72の被覆面積は、第2半導体領域52に対する上絶縁膜72の被覆面積よりも大きい。上絶縁膜72は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。上絶縁膜72は、半導体チップ2の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。上絶縁膜72は、ゲート絶縁膜として形成されている。
【0141】
上絶縁膜72は、第1厚さT1を有している。第1厚さT1は、トレンチ71の壁面の法線方向に沿う厚さである。第1厚さT1は、分離絶縁膜55の分離厚さTI未満(T1<TI)である。第1厚さT1は、0.01μm以上0.05μm以下であってもよい。第1厚さT1は、0.02μm以上0.04μm以下であることが好ましい。
【0142】
下絶縁膜73は、トレンチ71の下壁面を被覆している。下絶縁膜73は、具体的には、ボディ領域58の底部に対してトレンチ71の底壁側の領域に位置する下壁面を被覆している。下絶縁膜73は、トレンチ71の底壁側の領域においてリセス空間を区画している。下絶縁膜73は、第2半導体領域52に接している。下絶縁膜73は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。下絶縁膜73は、半導体チップ2の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。
【0143】
下絶縁膜73は、第2厚さT2を有している。第2厚さT2は、トレンチ71の壁面の法線方向に沿う厚さである。第2厚さT2は、上絶縁膜72の第1厚さT1を超えている(T1<T2)。第2厚さT2は、分離絶縁膜55の分離厚さTIとほぼ等しくてもよい(T2≒TI)。第2厚さT2は、0.1μm以上1μm以下であってもよい。第2厚さT2は、0.15μm以上0.65μm以下であることが好ましい。下絶縁膜73において、トレンチ71の底壁を被覆する部分の厚さは、トレンチ71の側壁を被覆する部分の厚さ未満であってもよい。
【0144】
上電極74は、上絶縁膜72を挟んでトレンチ71内の上側(開口側)に埋設されている。上電極74は、平面視において第2方向Yに延びる帯状に埋設されている。上電極74は、上絶縁膜72を挟んでボディ領域58および第2半導体領域52に対向している。ボディ領域58に対する上電極74の対向面積は、第2半導体領域52に対する上電極74の対向面積よりも大きい。上電極74は、導電性ポリシリコンを含む。上電極74は、ゲート電極として形成されている。上電極74には、ゲート信号Gが入力される。
【0145】
上電極74は、トレンチ71から露出する電極面(埋設電極面)を有している。上電極74の電極面は、トレンチ71の底壁に向けて湾曲状に窪んでいてもよい。上電極74の電極面は、トレンチ71の深さ方向に関して、分離電極56の電極面の深さ位置よりもトレンチ71の底壁側に位置していることが好ましい。上電極74の電極面は、トレンチ71の深さ方向に関して、第1主面3からトレンチ71の底壁に2000Å以上の間隔を空けていることが好ましい。上電極74の電極面は、第1主面3からトレンチ71の底壁に2500Å以上4500Å以下の間隔を空けていることが特に好ましい。
【0146】
下電極75は、下絶縁膜73を挟んでトレンチ71内の下側(底壁側)に埋設されている。下電極75は、平面視において第2方向Yに延びる帯状に埋設されている。下電極75は、トレンチ71の深さ方向に関して上電極74の厚さ(長さ)を超える厚さ(長さ)を有している。下電極75は、下絶縁膜73を挟んで第2半導体領域52に対向している。下電極75は、下絶縁膜73から第1主面3側に突出した上端部を有している。下電極75の上端部は、上電極74の底部に咬合し、第1主面3に沿う横方向に上電極74の底部を挟んで上絶縁膜72に対向している。
【0147】
下電極75は、導電性ポリシリコンを含む。下電極75は、この形態では、ゲート電極として形成されている。下電極75は、上電極74と同電位に固定されている。なお、下電極75は、ソース電位であってもよい。つまり、同一のゲート信号Gが、上電極74と同時に下電極75に印加される。これにより、上電極74および下電極75の間の電圧降下を抑制できるから、上電極74および下電極75の間の電界集中を抑制できる。また、半導体チップ2(特に第2半導体領域52)のオン抵抗を削減できる。
【0148】
中間絶縁膜76は、上電極74および下電極75の間に介在し、上電極74および下電極75を電気的に絶縁させている。中間絶縁膜76は、具体的には、上電極74および下電極75の間の領域において下絶縁膜73から露出する下電極75を被覆している。中間絶縁膜76は、上絶縁膜72および下絶縁膜73に連なっている。中間絶縁膜76は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。中間絶縁膜76は、下電極75の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。
【0149】
中間絶縁膜76は、法線方向Zに関して中間厚さTMを有している。中間厚さTMは、下絶縁膜73の第2厚さT2未満(TM<T2)である。中間厚さTMは、0.01μm以上0.05μm以下であってもよい。中間厚さTMは、0.02μm以上0.04μm以下であることが好ましい。
【0150】
一対のチャネルセル62は、各トレンチ構造61の両サイドにおいて、第2方向Yに延びる帯状にそれぞれ形成されている。一対のチャネルセル62は、第2方向Yに関してトレンチ構造61の長さ未満の長さを有している。一対のチャネルセル62の全域は、上絶縁膜72を挟んで上電極74に対向している。一対のチャネルセル62は、トレンチ間隔ITを1/2倍した値に相当するチャネル幅をそれぞれ有している。
【0151】
一対のチャネルセル62は、ボディ領域58の表層部に形成された少なくとも1つのn型のソース領域77を含む。一対のチャネルセル62に含まれるソース領域77の個数は任意である。一対のチャネルセル62は、この形態では、複数のソース領域77をそれぞれ含む。各単位セル60に含まれる全てのソース領域77は、各単位トランジスタ10の第3ソースTSを形成している。
【0152】
ソース領域77のn型不純物濃度は、第2半導体領域52のn型不純物濃度を超えている。ソース領域77のn型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。複数のソース領域77は、ボディ領域58の底部から間隔を空けて第1主面3側の領域に形成され、上絶縁膜72を挟んで上電極74に対向している。複数のソース領域77は、各チャネルセル62において第2方向Yに間隔を空けて配列されている。つまり、複数のソース領域77は、対応するトレンチ構造61の両サイドにおいて当該トレンチ構造61に沿って間隔を空けて配列されている。
【0153】
一対のチャネルセル62は、ボディ領域58の表層部においてソース領域77とは異なる領域に形成された少なくとも1つのp型のコンタクト領域78を含む。一対のチャネルセル62に含まれるコンタクト領域78の個数は任意である。一対のチャネルセル62は、この形態では、複数のコンタクト領域78をそれぞれ含む。コンタクト領域78のp型不純物濃度は、ボディ領域58のp型不純物濃度を超えている。コンタクト領域78のp型不純物濃度は、1×1018cm-3以上1×1021cm-3以下であってもよい。
【0154】
複数のコンタクト領域78は、ボディ領域58の底部から間隔を空けて第1主面3側の領域に形成され、上絶縁膜72を挟んで上電極74に対向している。複数のコンタクト領域78は、1つのソース領域77を挟み込む態様で、第2方向Yに複数のソース領域77と交互に形成されている。つまり、複数のコンタクト領域78は、対応するトレンチ構造61の両サイドにおいて当該トレンチ構造61に沿って間隔を空けて配列されている。
【0155】
一対のチャネルセル62は、ボディ領域58内において複数のソース領域77および第2半導体領域52の間に形成される複数のチャネル領域79を含む。一対のチャネルセル62における複数のチャネル領域79のオンオフは、1つのトレンチ構造61によって制御される。一対のチャネルセル62に含まれる複数のチャネル領域79は、単位トランジスタ10の1つのチャネルを形成している。これにより、1つの単位セル60が、1つの単位トランジスタ10として機能している。
【0156】
第1デバイス領域6内において第1方向Xの両サイドに配置された2つの単位セル60は、この形態では、トレンチ分離構造53側のチャネルセル62においてソース領域77を含まない。このような構造によれば、トレンチ構造61およびトレンチ分離構造53の間におけるリーク電流を抑制できる。両サイドに配置された2つの単位セル60は、この形態では、トレンチ分離構造53側のチャネルセル62においてコンタクト領域78(以下、「最外のコンタクト領域78」という。)のみを含む。最外のコンタクト領域78は、トレンチ分離構造53からトレンチ構造61側に間隔を空けて形成され、対応するトレンチ構造61の側壁に接続されている。最外のコンタクト領域78は、対応するトレンチ構造61の側壁に沿って延びる帯状に形成されていてもよい。
【0157】
メイントランジスタ8は、第1デバイス領域6に集約して形成された2個(n=2)の系統トランジスタ9を含む。2個の系統トランジスタ9は、第1系統トランジスタ9Aおよび第2系統トランジスタ9Bを含む。第1系統トランジスタ9Aは、複数の単位トランジスタ10から個別制御対象として選択的に系統化された複数(この形態では22個)の第1単位トランジスタ10Aを含む。
【0158】
第2系統トランジスタ9Bは、第1単位トランジスタ10Aを除く複数の単位トランジスタ10から個別制御対象として選択的に系統化された複数(この形態では22個)の第2単位トランジスタ10Bを含む。第2単位トランジスタ10Bの個数は、第1単位トランジスタ10Aの個数と異なっていてもよい。第2単位トランジスタ10Bの個数は、第1単位トランジスタ10Aの個数と等しいことが好ましい。
【0159】
以下、第1単位トランジスタ10Aの「単位セル60」、「トレンチ構造61」、「チャネルセル62」、「トレンチ71」、「上絶縁膜72」、「下絶縁膜73」、「上電極74」、「下電極75」、「中間絶縁膜76」、「ソース領域77」、「コンタクト領域78」および「チャネル領域79」は、「第1単位セル60A」、「第1トレンチ構造61A」、「第1チャネルセル62A」、「第1トレンチ71A」、「第1上絶縁膜72A」、「第1下絶縁膜73A」、「第1上電極74A」、「第1下電極75A」、「第1中間絶縁膜76A」、「第1ソース領域77A」、「第1コンタクト領域78A」および「第1チャネル領域79A」とそれぞれ称される。第1上電極74Aおよび第1下電極75Aには、第1ゲート信号G1が入力される。
【0160】
以下、第2単位トランジスタ10Bの「単位セル60」、「トレンチ構造61」、「チャネルセル62」、「トレンチ71」、「上絶縁膜72」、「下絶縁膜73」、「上電極74」、「下電極75」、「中間絶縁膜76」、「ソース領域77」、「コンタクト領域78」および「チャネル領域79」は、「第2単位セル60B」、「第2トレンチ構造61B」、「第2チャネルセル62B」、「第2トレンチ71B」、「第2上絶縁膜72B」、「第2下絶縁膜73B」、「第2上電極74B」、「第2下電極75B」、「第2中間絶縁膜76B」、「第2ソース領域77B」、「第2コンタクト領域78B」および「第2チャネル領域79B」とそれぞれ称される。第2上電極74Bおよび第2下電極75Bには、第1ゲート信号G1から電気的に独立した第2ゲート信号G2が入力される。
【0161】
第1系統トランジスタ9Aは、少なくとも1つの第1複合セル81を含む。第1複合セル81の個数は任意であり、第1デバイス領域6のサイズ(単位トランジスタ10の総数)に応じて調整される。第1系統トランジスタ9Aは、この形態では、複数(この形態では11個)の第1複合セル81を含む。複数の第1複合セル81は、平面視において第1主面3に隣り合って配列されたα(α≧2)個の第1単位トランジスタ10A(第1単位セル60A)によってそれぞれ構成されている。複数の第1複合セル81は、平面視において第1方向Xに間隔を空けて配列されている。
【0162】
第2系統トランジスタ9Bは、少なくとも1つの第2複合セル82を含む。第2複合セル82の個数は任意であり、第1デバイス領域6のサイズ(単位トランジスタ10の総数)に応じて調整される。第2複合セル82の個数は、第1複合セル81の個数と異なっていてもよい。第2複合セル82の個数は、第1複合セル81の個数と等しいことが好ましい。第2系統トランジスタ9Bは、この形態では、複数(この形態では11個)の第2複合セル82を含む。複数の第2複合セル82は、平面視において第1主面3に隣り合って配列されたβ(β≧2)個の第2単位トランジスタ10B(第2単位セル60B)によってそれぞれ構成されている。
【0163】
複数の第2複合セル82は、平面視において複数の第1複合セル81に隣り合ってそれぞれ配置されている。複数の第2複合セル82は、具体的には、平面視において近接する複数の第1複合セル81の間の領域にそれぞれ配置されている。複数の第2複合セル82は、さらに具体的には、平面視において1つの第1複合セル81を挟み込む態様で、第1方向Xに沿って複数の第1複合セル81と交互に配列されている。
【0164】
1つの第1複合セル81に含まれる第1単位トランジスタ10Aの個数を1個(α=1)とし、1つの第2複合セル82に含まれる第2単位トランジスタ10Bの個数を1個(β=1)としてもよい。つまり、複数の第2単位トランジスタ10Bは、平面視において1つの単位トランジスタ10を挟み込む態様で、複数の第1単位トランジスタ10Aと交互に配列されていてもよい。
【0165】
ただし、この場合、複数の第1単位トランジスタ10Aおよび複数の第2単位トランジスタ10Bの対向数が増加する。その結果、プロセス誤差等に起因して、近接する第1単位トランジスタ10Aおよび第2単位トランジスタ10Bの間における短絡リスクが増加する。ここでいう「短絡」とは、第1単位トランジスタ10Aの第1トレンチ構造61A(第3ゲートTG)および第2単位トランジスタ10Bの第2トレンチ構造61B(第3ゲートTG)の間の短絡のことをいう(図6の回路図も併せて参照)。
【0166】
たとえば、1つの第1単位トランジスタ10Aが近接する1つの第2単位トランジスタ10Bに短絡した場合、全ての第1単位トランジスタ10Aが全ての第2単位トランジスタ10Bに短絡される。つまり、第1系統トランジスタ9Aおよび第2系統トランジスタ9Bが1つの系統トランジスタ9として機能する結果、第1系統トランジスタ9Aおよび第2系統トランジスタ9Bは、2系統のメイントランジスタ8を構成しない(図6の回路図も併せて参照)。
【0167】
したがって、1つの第1複合セル81に含まれる第1単位トランジスタ10Aの個数は2個以上(α≧2)であることが好ましく、1つの第2複合セル82に含まれる第2単位トランジスタ10Bの個数は2個以上(β≧2)であることが好ましい。この構造によれば、複数の第1単位トランジスタ10Aおよび複数の第2単位トランジスタ10Bの対向数を削減できる。その結果、近接する第1単位トランジスタ10Aおよび第2単位トランジスタ10Bの間における短絡リスクを低減できる。
【0168】
この場合、第1系統トランジスタ9Aに係る第1上電極74Aの電極面は、第1トレンチ71Aの深さ方向に関して、第1主面3から第1トレンチ71Aの底壁に2000Å以上(好ましくは2500Å以上4500Å以下)の間隔を空けていることが好ましい。第1上電極74Aの電極面の深さ位置は、第1単位トランジスタ10Aのゲート閾値電圧の特性が低下しない深さ位置に調整される。
【0169】
同様に、第2系統トランジスタ9Bに係る第2上電極74Bの電極面は、第2トレンチ71Bの深さ方向に関して、第1主面3から第2トレンチ71Bの底壁に2000Å以上(好ましくは2500Å以上4500Å以下)の間隔を空けていることが好ましい。第2上電極74Bの電極面の深さ位置は、第2単位トランジスタ10Bのゲート閾値電圧の特性が低下しない深さ位置に調整される。
【0170】
これらの構造によれば、第1上電極74Aを第2上電極74Bから適切に分離して第1トレンチ71Aに埋設でき、第2上電極74Bを第1上電極74Aから適切に分離して第2トレンチ71Bに埋設できる。これにより、第1上電極74Aおよび第2上電極74Bの短絡リスクを適切に低減できる。また、第1ソース領域77A(第1チャネル領域79A)を第1上電極74Aに適切に対向させることができ、第2ソース領域77B(第2チャネル領域79B)を第2上電極74Bに適切に対向させることができる。
【0171】
第1単位トランジスタ10A(具体的には第1チャネル領域79A)は、第1デバイス領域6において発熱源となる。したがって、第1単位トランジスタ10Aの個数は1つの第1複合セル81の発熱量を規定し、複数の第1複合セル81の配置は第1デバイス領域6での発熱箇所を規定する。すなわち、1つの第1複合セル81を構成する第1単位トランジスタ10Aの個数を増加させると1つの第1複合セル81内での発熱量が増加する。また、複数の第1複合セル81を隣り合わせで配置した場合、第1デバイス領域6の発熱箇所が局所的になる。
【0172】
したがって、第1単位トランジスタ10Aの個数は、4個以下(α≦4)であることが好ましい。この構造によれば、1つの第1複合セル81における局所的な温度上昇を抑制できる。前記短絡リスクおよび前記発熱量を鑑みると、第1単位トランジスタ10Aの個数は、2個(α=2)であることが特に好ましい。複数の第1複合セル81は、第1デバイス領域6の一端部および他端部の間の領域に等間隔に配列されていることが好ましい。この構造によれば、第1デバイス領域6において複数の第1複合セル81に起因する発熱箇所を間引くことができ、第1デバイス領域6における局所的な温度上昇を抑制できる。
【0173】
各第1複合セル81において、一方の第1トレンチ構造61A側に配列された複数の第1チャネル領域79A(第1ソース領域77A)は、第1方向Xに他方の第1トレンチ構造61A側に配列された複数の第1チャネル領域79A(第1ソース領域77A)の間の領域に対向していることが好ましい。この構造によれば、各第1複合セル81における発熱起点を間引くことができる。これにより、各第1複合セル81における局所的な温度上昇を抑制できる。
【0174】
この場合、各第1単位セル60Aにおいて、一方の第1チャネルセル62Aに形成された複数の第1チャネル領域79Aは、対応する第1トレンチ構造61Aを挟んで他方の第1チャネルセル62Aに形成された複数の第1チャネル領域79Aに対向していることが好ましい。各第1複合セル81において、一対の第1トレンチ構造61Aの間の領域に形成された複数の第1チャネル領域79Aは、平面視において第2方向Yに互いにずれて配列されていることが好ましい。むろん、各第1単位セル60Aにおいて、一方の第1チャネルセル62Aに形成された複数の第1チャネル領域79Aは、対応する第1トレンチ構造61Aを挟んで他方の第1チャネルセル62Aに形成された複数の第1チャネル領域79Aの間の領域に対向していてもよい。
【0175】
各第1単位セル60Aにおいて、一方の第1チャネルセル62Aに形成された複数の第1コンタクト領域78Aは、対応する第1トレンチ構造61Aを挟んで他方の第1チャネルセル62Aに形成された複数の第1コンタクト領域78Aに対向していてもよい。各第1複合セル81において、一方の第1トレンチ構造61A側に配列された複数の第1コンタクト領域78Aは、第1方向Xに他方の第1トレンチ構造61A側に配列された複数の第1コンタクト領域78Aの間の領域に対向していてもよい。
【0176】
各第1複合セル81において、一対の第1トレンチ構造61Aの間の領域に形成された複数の第1コンタクト領域78Aは、平面視において第2方向Yに互いにずれて配列されていてもよい。また、複数の第1コンタクト領域78Aは、平面視において第1方向Xに複数の第1ソース領域77Aに対向していてもよい。
【0177】
複数の第2複合セル82は、第1デバイス領域6の一端部および他端部の間の領域に等間隔に配列されていることが好ましい。この構造によれば、第1デバイス領域6において複数の第2複合セル82に起因する発熱箇所を間引くことができ、第1デバイス領域6における局所的な温度上昇を抑制できる。この場合、少なくとも1つの第2複合セル82が少なくとも1つの第1複合セル81に近接配置されていることが好ましい。この構造によれば、互いに近接する第1複合セル81および第2複合セル82において、いずれか一方のセルがオン状態であり、他方のセルがオフ状態である状況を作り出すことができる。これにより、第1複合セル81および第2複合セル82に起因する局所的な温度上昇を抑制できる。
【0178】
この場合、少なくとも1つの第2複合セル82は、隣り合う2つの第1複合セル81の間の領域に配置されていることが好ましい。さらにこの場合、複数の第2複合セル82が、1つの第1複合セル81を挟み込む態様で、複数の第1複合セル81と交互に配列されていることが特に好ましい。これらの構造によれば、近接する2つの第1複合セル81を第2複合セル82の分だけ離間させることができる。これにより、複数の第1複合セル81および複数の第2複合セル82に起因する発熱箇所を適切に間引くことができ、第1デバイス領域6における局所的な温度上昇を適切に抑制できる。
【0179】
各第2複合セル82において、一方の第2トレンチ構造61B側に配列された複数の第2チャネル領域79B(第2ソース領域77B)は、第1方向Xに他方の第2トレンチ構造61B側に配列された複数の第2チャネル領域79B(第2ソース領域77B)の間の領域に対向していることが好ましい。この構造によれば、各第2複合セル82における発熱起点を間引くことができる。これにより、各第2複合セル82における局所的な温度上昇を抑制できる。
【0180】
この場合、各第2単位セル60Bにおいて、一方の第2チャネルセル62Bに形成された複数の第2チャネル領域79Bは、対応する第2トレンチ構造61Bを挟んで他方の第2チャネルセル62Bに形成された複数の第2チャネル領域79Bに対向していることが好ましい。各第2複合セル82において、一対の第2トレンチ構造61Bの間の領域に形成された複数の第2チャネル領域79Bは、平面視において第2方向Yに互いにずれて配列されていることが好ましい。
【0181】
複数の第2チャネル領域79Bは、各第1トレンチ構造61Aおよび各第2トレンチ構造61Bのトレンチ間領域において、複数の第1チャネル領域79Aに対して第2方向Yにずれて配列されていることが好ましい。つまり、複数の第2チャネル領域79Bは、トレンチ間領域において、第1方向Xに複数の第1コンタクト領域78Aの間の領域に対向していることが好ましい。これらの構造によれば、トレンチ間領域における発熱起点を間引くことができる。これにより、トレンチ間領域における局所的な温度上昇を抑制できる。
【0182】
各第2単位セル60Bにおいて、一方の第2チャネルセル62Bに形成された複数の第2コンタクト領域78Bは、対応する第2トレンチ構造61Bを挟んで他方の第2チャネルセル62Bに形成された複数の第2コンタクト領域78Bに対向していてもよい。各第2複合セル82において、一方の第2トレンチ構造61B側に配列された複数の第2コンタクト領域78Bは、第1方向Xに他方の第2トレンチ構造61B側に配列された複数の第2コンタクト領域78Bの間の領域に対向していてもよい。むろん、各第2単位セル60Bにおいて、一方の第2チャネルセル62Bに形成された複数の第2チャネル領域79Bは、対応する第2トレンチ構造61Bを挟んで他方の第2チャネルセル62Bに形成された複数の第2チャネル領域79Bの間の領域に対向していてもよい。
【0183】
各第2複合セル82において、一対の第2トレンチ構造61Bの間の領域に形成された複数の第2コンタクト領域78Bは、平面視において第2方向Yに互いにずれて配列されていてもよい。複数の第2コンタクト領域78Bは、平面視において第1方向Xに複数の第2ソース領域77Bに対向していてもよい。
【0184】
n系統のメイントランジスタ8は、総チャネル割合RTを有している。総チャネル割合RTは、全てのチャネルセル62の平面積に占める全てのチャネル領域79の総平面積の割合である。各チャネル領域79の平面積は、各ソース領域77の平面積によって定義される。総チャネル割合RTは、0%を超えて100%未満の範囲で調整される。総チャネル割合RTは、25%以上75%以下の範囲で調整されることが好ましい。
【0185】
総チャネル割合RTは、n個の系統トランジスタ9によってn個の系統チャネル割合RSに分割される。2系統のメイントランジスタ8の総チャネル割合RTは、第1系統トランジスタ9Aの第1系統チャネル割合RSAおよび第2系統トランジスタ9Bの第2系統チャネル割合RSBの加算値(RT=RSA+RSB)からなる。第1系統チャネル割合RSAは、全てのチャネルセル62の総平面積に占める全ての第1チャネル領域79Aの総平面積の割合である。第2系統チャネル割合RSBは、全てのチャネルセル62の総平面積に占める全ての第2チャネル領域79Bの総平面積の割合である。
【0186】
各第1チャネル領域79Aの平面積は各第1ソース領域77Aの平面積によって定義され、各第2チャネル領域79Bの平面積は各第2ソース領域77Bの平面積によって定義される。第1系統チャネル割合RSAは、第1ソース領域77Aおよび第1コンタクト領域78Aの配列パターンによって調整される。第2系統チャネル割合RSBは、第2ソース領域77Bおよび第2コンタクト領域78Bの配列パターンによって調整される。
【0187】
第1系統チャネル割合RSAは、複数の第1複合セル81によって複数の第1チャネル割合RCAに分割される。第1チャネル割合RCAは、各第1複合セル81において全てのチャネルセル62の総平面積に占める複数の第1チャネル領域79Aの総平面積の割合である。第1系統チャネル割合RSAは、複数の第1チャネル割合RCAの加算値からなる。複数の第1複合セル81は、互いに等しい第1チャネル割合RCAを有していることが好ましい。各第1単位トランジスタ10Aにおいて、複数の第1チャネル領域79Aは、単位面積当たりに互いに異なるまたは互いに等しい第1面積で形成されていてもよい。
【0188】
第2系統チャネル割合RSBは、複数の第2複合セル82によって複数の第2チャネル割合RCBに分割される。第2チャネル割合RCBは、各第2複合セル82において全てのチャネルセル62の総平面積に占める複数の第2チャネル領域79Bの総平面積の割合である。複数の第2複合セル82は、複数の第2チャネル割合RCBの加算値からなる。複数の第2複合セル82は、互いに等しい第2チャネル割合RCBを有していることが好ましい。各第2単位トランジスタ10Bにおいて、複数の第2チャネル領域79Bは、単位面積当たりに互いに異なるまたは互いに等しい第2面積で形成されていてもよい。第2面積は、単位面積当たりに複数の第1チャネル領域79Aの第1面積と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0189】
第2系統チャネル割合RSBは、第1系統チャネル割合RSAとほぼ等しくてもよい(RSA≒RSB)。第2系統チャネル割合RSBは、第1系統チャネル割合RSAを超えていてもよい(RSA<RSB)。第2系統チャネル割合RSBは、第1系統チャネル割合RSA未満(RSB<RSA)であってもよい。以下、図17図20に第1チャネル領域79Aおよび第2チャネル領域79Bの構成例を示す。
【0190】
図17は、メイントランジスタ8の要部を第1チャネル領域79Aおよび第2チャネル領域79Bの第1構成例と共に示す断面斜視図である。この構成例では、総チャネル割合RTが50%であり、第1系統チャネル割合RSAが25%であり、第2系統チャネル割合RSBが25%である。
【0191】
図18は、メイントランジスタ8の要部を第1チャネル領域79Aおよび第2チャネル領域79Bの第2構成例と共に示す断面斜視図である。この構成例では、総チャネル割合RTが50%であり、第1系統チャネル割合RSAが37.5%であり、第2系統チャネル割合RSBが12.5%である。
【0192】
図19は、メイントランジスタ8の要部を第1チャネル領域79Aおよび第2チャネル領域79Bの第3構成例と共に示す断面斜視図である。この構成例では、総チャネル割合RTが33%であり、第1系統チャネル割合RSAが24.7%であり、第2系統チャネル割合RSBが8.3%である。
【0193】
図20は、メイントランジスタ8の要部を第1チャネル領域79Aおよび第2チャネル領域79Bの第4構成例と共に示す断面斜視図である。この構成例では、総チャネル割合RTが25%であり、第1系統チャネル割合RSAが18.7%であり、第2系統チャネル割合RSBが6.3%である。
【0194】
図10図16を再度参照して、メイントランジスタ8は、第1デバイス領域6において第1主面3に形成された複数対(この形態では11対、計22個)の第1トレンチ接続構造90を含む。複数対の第1トレンチ接続構造90は、第2方向Yに関して、対応する1つの第1複合セル81を挟んで互いに対向する一方側(第1側面5A側)の第1トレンチ接続構造90および他方側(第2側面5B側)の第1トレンチ接続構造90をそれぞれ含む。
【0195】
一方側の第1トレンチ接続構造90は、平面視において複数(この形態では一対)の第1トレンチ構造61Aの第1端部63同士をアーチ状に接続している。他方側の第1トレンチ接続構造90は、平面視において複数(この形態では一対)の第1トレンチ構造61Aの第2端部64同士をアーチ状に接続している。一対の第1トレンチ接続構造90は、1つの第1複合セル81を構成する複数(この形態では一対)の第1トレンチ構造61Aと1つの環状トレンチ構造を構成している。
【0196】
他方側の第1トレンチ接続構造90は、第1トレンチ構造61Aの第2端部64に接続されている点を除き、一方側の第1トレンチ接続構造90と同様の構造を有している。以下、1つの一方側の第1トレンチ接続構造90の構成について説明し、他方側の第1トレンチ接続構造90の構成についての説明は省略される。
【0197】
一方側の第1トレンチ接続構造90は、第1方向Xに延びる第1部分90Aおよび第2方向Yに延びる複数(この形態では一対)の第2部分90Bを有している。第1部分90Aは、平面視において複数の第1端部63に対向している。複数の第2部分90Bは、第1部分90Aから複数の第1端部63に向けて延び、当該複数の第1端部63に接続されている。
【0198】
一方側の第1トレンチ接続構造90は、接続幅WCおよび接続深さDCを有している。接続幅WCは、第1トレンチ接続構造90が延びる方向に直交する方向の幅である。接続幅WCは、トレンチ構造61のトレンチ幅Wとほぼ等しい(WC≒W)ことが好ましい。接続深さDCは、トレンチ構造61のトレンチ深さDとほぼ等しい(DC≒D)ことが好ましい。第1トレンチ接続構造90のアスペクト比DC/WCは、トレンチ構造61のアスペクト比D/Wとほぼ等しい(DC/WC≒D/W)ことが好ましい。第1トレンチ接続構造90の底壁は、第2半導体領域52の底部から1μm以上5μm以下の間隔を空けていることが好ましい。なお、接続幅WCおよび接続深さDCは、後述するプラグ電極195のスペースを確保する目的で、それぞれ、トレンチ幅Wおよびトレンチ深さDよりも大きくてもよい。つまり、WC>WかつDC>Dであってもよい。
【0199】
一方側の第1トレンチ接続構造90は、第1接続トレンチ91、第1接続絶縁膜92、第1接続電極93および第1キャップ絶縁膜94を含むシングル電極構造を有している。第1接続トレンチ91は、平面視において複数の第1トレンチ71Aの第1端部63に連通するようにアーチ状に延び、第1主面3から第2主面4に向けて掘り下がっている。第1接続トレンチ91は、第1トレンチ接続構造90の第1部分90Aおよび第2部分90Bを区画している。第1接続トレンチ91は、第2半導体領域52の底部から第1主面3側に間隔を空けて形成されている。
【0200】
第1接続トレンチ91は、側壁および底壁を含む。第1接続トレンチ91の側壁が半導体チップ2内において第1主面3との間で成す角度は、90°以上92°以下であってもよい。第1接続トレンチ91は、開口から底壁に向けて開口幅が狭まる先細り形状に形成されていてもよい。第1接続トレンチ91の底壁角部は、湾曲状に形成されていることが好ましい。第1接続トレンチ91の底壁の全体が、第2主面4に向かう湾曲状に形成されていてもよい。第1接続トレンチ91の側壁および底壁は、第1トレンチ71Aの側壁および底壁に滑らかに接続されている。
【0201】
第1接続絶縁膜92は、第1接続トレンチ91の壁面に形成されている。第1接続絶縁膜92は、具体的には、第1接続トレンチ91の壁面の全域に膜状に形成され、第1接続トレンチ91内においてリセス空間を区画している。第1接続絶縁膜92は、第1接続トレンチ91の第1部分90Aにおいて第1方向Xに延びている。第1接続絶縁膜92は、第1接続トレンチ91の第2部分90Bにおいて第2方向Yに延びている。第1接続絶縁膜92は、第1接続トレンチ91および第1トレンチ71Aの連通部において第1上絶縁膜72Aおよび第1下絶縁膜73Aに接続されている。第1接続絶縁膜92は、酸化シリコン膜を含む。第1接続絶縁膜92は、半導体チップ2の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。
【0202】
第1接続絶縁膜92は、第3厚さT3を有している。第3厚さT3は、第1接続トレンチ91の壁面の法線方向に沿う厚さである。第3厚さT3は、第1上絶縁膜72Aの第1厚さT1を超えている(T1<T3)。第3厚さT3は、下絶縁膜73の第2厚さT2とほぼ等しくてもよい(T2≒T3)。第3厚さT3は、分離絶縁膜55の分離厚さTIとほぼ等しくてもよい(T3≒TI)。第3厚さT3は、0.1μm以上1μm以下であってもよい。第3厚さT3は、0.15μm以上0.65μm以下であることが好ましい。第1接続絶縁膜92において、第1接続トレンチ91の底壁を被覆する部分の厚さは、第1接続トレンチ91の側壁を被覆する部分の厚さ未満であってもよい。
【0203】
第1接続電極93は、第1接続絶縁膜92を挟んで第1接続トレンチ91に一体物として埋設されている。第1接続電極93は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。第1接続電極93は、第1接続トレンチ91の第1部分90Aにおいて第1方向Xに延びている。第1接続電極93は、第1接続トレンチ91の第2部分90Bにおいて第2方向Yに延びている。第1接続電極93は、第1接続トレンチ91および第1トレンチ71Aの連通部において第1下電極75Aに接続されている。
【0204】
第1接続電極93は、第1中間絶縁膜76Aを挟んで第1上電極74Aから電気的に絶縁されている。つまり、第1接続電極93は、第1下電極75Aにおいて第1接続絶縁膜92および第1中間絶縁膜76Aを挟んで第1トレンチ71Aから第1接続トレンチ91に引き出された引き出し部からなる。第1ゲート信号G1は、第1接続電極93を介して第1下電極75Aに伝達される。つまり、同一の第1ゲート信号G1が、第1上電極74Aと同時に第1接続電極93に印加される。
【0205】
第1接続電極93は、第1接続トレンチ91から露出する電極面(第1接続電極面)を有している。第1接続電極93の電極面は、第1接続トレンチ91の底壁に向けて湾曲状に窪んでいてもよい。第1接続電極93の電極面は、第1接続トレンチ91の深さ方向に関して、トレンチ構造61の上電極74の電極面の深さ位置よりも第1主面3側に位置(突出)していることが好ましい。第1接続電極93の電極面は、第1主面3から第1接続トレンチ91の底壁に0Å以上2000Å未満の間隔を空けていることが好ましい。第1接続電極93の電極面は、第1主面3から第1接続トレンチ91の底壁に1000Å未満の間隔を空けていることが特に好ましい。
【0206】
なお、図14および図15では、第1接続電極93の電極面の全体が第1主面3よりも下方に位置しているが、第1接続電極93の電極面は、第1主面3よりも上方に位置する部分を有していてもよい。たとえば、第1接続電極93が第1主面3よりも上方に延びる突出部を有しており、当該突出部に前述の湾曲状に窪んだ電極面を有していてよい。
【0207】
第1キャップ絶縁膜94は、第1接続トレンチ91内において第1接続電極93の電極面を膜状に被覆している。第1キャップ絶縁膜94は、第1接続電極93が他の電極と短絡することを抑制する。第1キャップ絶縁膜94は、第1接続絶縁膜92に連なっている。第1キャップ絶縁膜94は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。第1キャップ絶縁膜94は、第1接続電極93の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。つまり、第1キャップ絶縁膜94はポリシリコンの酸化物を含み、第1接続絶縁膜92はシリコン単結晶の酸化物を含むことが好ましい。
【0208】
メイントランジスタ8は、第1デバイス領域6において第1主面3に形成された複数対(この形態では11対、計22個)の第2トレンチ接続構造100を含む。複数対の第2トレンチ接続構造100は、第2方向Yに関して、対応する1つの第2複合セル82を挟んで互いに対向する一方側(第1側面5A側)の第2トレンチ接続構造100および他方側(第2側面5B側)の第2トレンチ接続構造100をそれぞれ含む。
【0209】
一方側の第2トレンチ接続構造100は、平面視において複数(この形態では一対)の第2トレンチ構造61Bの第1端部63同士をアーチ状に接続している。他方側の第2トレンチ接続構造100は、平面視において複数(この形態では一対)の第2トレンチ構造61Bの第2端部64同士をアーチ状に接続している。一対の第2トレンチ接続構造100は、1つの第2複合セル82を構成する複数(この形態では一対)の第2トレンチ構造61Bと1つの環状トレンチ構造を構成している。
【0210】
他方側の第2トレンチ接続構造100は、第2トレンチ構造61Bの第2端部64に接続されている点を除き、一方側の第2トレンチ接続構造100と同様の構造を有している。以下、1つの一方側の第2トレンチ接続構造100の構成について説明し、他方側の第2トレンチ接続構造100の構成についての説明は省略される。
【0211】
一方側の第2トレンチ接続構造100は、第1方向Xに延びる第1部分100Aおよび第2方向Yに延びる複数(この形態では一対)の第2部分100Bを有している。第1部分100Aは、平面視において複数の第1端部63に対向している。複数の第2部分100Bは、第1部分100Aから複数の第1端部63に向けて延び、当該複数の第1端部63に接続されている。一方側の第2トレンチ接続構造100は、各第1トレンチ接続構造90と同様に、接続幅WCおよび接続深さDCを有している。
【0212】
一方側の第2トレンチ接続構造100は、第2接続トレンチ101、第2接続絶縁膜102、第2接続電極103および第2キャップ絶縁膜104を含むシングル電極構造を有している。第2接続トレンチ101は、平面視において一対の第2トレンチ71Bの第1端部63に連通するようにアーチ状に延び、第1主面3から第2主面4に向けて掘り下がっている。第2接続トレンチ101は、第2トレンチ接続構造100の第1部分100Aおよび第2部分100Bを区画している。第2接続トレンチ101は、第2半導体領域52の底部から第1主面3側に間隔を空けて形成されている。
【0213】
第2接続トレンチ101は、側壁および底壁を含む。第2接続トレンチ101の側壁が半導体チップ2内において第1主面3との間で成す角度は、90°以上92°以下であってもよい。第2接続トレンチ101は、開口から底壁に向けて開口幅が狭まる先細り形状に形成されていてもよい。第2接続トレンチ101の底壁角部は、湾曲状に形成されていることが好ましい。第2接続トレンチ101の底壁の全体が、第2主面4に向かう湾曲状に形成されていてもよい。第2接続トレンチ101の側壁および底壁は、第2トレンチ71Bの側壁および底壁に滑らかに接続されている。
【0214】
第2接続絶縁膜102は、第2接続トレンチ101の壁面に形成されている。第2接続絶縁膜102は、具体的には、第2接続トレンチ101の壁面の全域に膜状に形成され、第2接続トレンチ101内においてリセス空間を区画している。第2接続絶縁膜102は、第2接続トレンチ101の第1部分100Aにおいて第1方向Xに延びている。第2接続絶縁膜102は、第2接続トレンチ101の第2部分100Bにおいて第2方向Yに延びている。第2接続絶縁膜102は、酸化シリコン膜を含む。第2接続絶縁膜102は、半導体チップ2の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。第2接続絶縁膜102は、第1接続絶縁膜92と同様に、第3厚さT3を有している。
【0215】
第2接続電極103は、第2接続絶縁膜102を挟んで第2接続トレンチ101に一体物として埋設されている。第2接続電極103は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。第2接続電極103は、第2接続トレンチ101の第1部分100Aにおいて第1方向Xに延びている。第2接続電極103は、第2接続トレンチ101の第2部分100Bにおいて第2方向Yに延びている。第2接続電極103は、第2接続トレンチ101および第2トレンチ71Bの連通部において第2下電極75Bに接続されている。
【0216】
第2接続電極103は、第2中間絶縁膜76Bを挟んで第2上電極74Bから電気的に絶縁されている。つまり、第2接続電極103は、第2下電極75Bにおいて第2接続絶縁膜102および第2中間絶縁膜76Bを挟んで第2トレンチ71Bから第2接続トレンチ101に引き出された引き出し部からなる。第2ゲート信号G2は、第2接続電極103を介して第2下電極75Bに伝達される。つまり、同一の第2ゲート信号G2が、第2上電極74Bと同時に第2接続電極103に印加される。
【0217】
第2接続電極103は、第2接続トレンチ101から露出する電極面(第2接続電極面)を有している。第2接続電極103の電極面は、第2接続トレンチ101の底壁に向けて湾曲状に窪んでいてもよい。第2接続電極103の電極面は、第2接続トレンチ101の深さ方向に関して、トレンチ構造61の上電極74の電極面の深さ位置よりも第1主面3側に位置(突出)していることが好ましい。第2接続電極103の電極面は、第1主面3から第2接続トレンチ101の底壁に0Å以上2000Å未満の間隔を空けていることが好ましい。第2接続電極103の電極面は、第1主面3から第2接続トレンチ101の底壁に1000Å未満の間隔を空けていることが特に好ましい。
【0218】
第2キャップ絶縁膜104は、第2接続トレンチ101内において第2接続電極103の電極面(第2接続電極面)を膜状に被覆している。第2キャップ絶縁膜104は、第2接続電極103が他の電極と短絡することを抑制する。第2キャップ絶縁膜104は、第2接続絶縁膜102に連なっている。第2キャップ絶縁膜104は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。第2キャップ絶縁膜104は、第2接続電極103の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。つまり、第2キャップ絶縁膜104はポリシリコンの酸化物を含み、第2接続絶縁膜102はシリコン単結晶の酸化物を含むことが好ましい。
【0219】
半導体装置1は、層間絶縁層19内に配置されたメインソース配線198を含む。メインソース配線198は、ソース端子23、トレンチ分離構造53および複数のチャネルセル62に電気的に接続されている。具体的には、図13図15および図16を参照して、メインソース配線198は、層間絶縁層19内に配置された複数のプラグ電極191を介してトレンチ分離構造53の分離電極53に接続されている。図13を参照して、メインソース配線198は、層間絶縁層19内に配置されたプラグ電極193を介してチャネルセル62のソース領域77およびコンタクト領域78に接続されている。
【0220】
半導体装置1は、層間絶縁層19内に配置された第1メインゲート配線20Aを含む。第1メインゲート配線20Aは、第1トレンチ構造61Aに電気的に接続されている。具体的には、図15を参照して、第1メインゲート配線20Aは、層間絶縁層19内に配置されたプラグ電極192およびプラグ電極195を介して、第1トレンチ構造61Aの第1上電極74Aおよび第1下電極75Aにそれぞれ接続されている。
【0221】
半導体装置1は、層間絶縁層19内に配置された第2メインゲート配線20Bを含む。第2メインゲート配線20Bは、第2トレンチ構造61Bに電気的に接続されている。具体的には、図16を参照して、第2メインゲート配線20Bは、層間絶縁層19内に配置されたプラグ電極192およびプラグ電極195を介して、第2トレンチ構造61Bの第2上電極74Bおよび第2下電極75Bにそれぞれ接続されている。
【0222】
図21は、メイントランジスタ8とモニタトランジスタ11とを分離するための分離部161の近傍を示す、半導体装置1の断面斜視図である。明瞭化のため、図21では、モニタトランジスタ11の領域にクロスハッチングを付している。
【0223】
図21を参照して、半導体装置1は、第1デバイス領域6の第1主面3に形成されたモニタトランジスタ11を含む。モニタトランジスタ11は、第1デバイス領域6の第1主面3においてメイントランジスタ8と集約して形成されている。モニタトランジスタ11は、トレンチ分離構造53(図10を参照)から間隔を空けて第1デバイス領域6の内方部に形成されている。モニタトランジスタ11は、平面視において複数の単位トランジスタ10によって第1方向Xから挟み込まれるように配置されていることが好ましい。
【0224】
メイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11は、この形態では、前述した同じ構造のチャネルセル62を有している。たとえば、メイントランジスタ8のチャネルセル62が「メイン側チャネルセル」と称され、モニタトランジスタ11のチャネルセル62が「モニタ側チャネルセル」と称されてもよい。さらに、図21では省略するが、メイントランジスタ8のソース領域77およびコンタクト領域78は、それぞれ、「メイン側ソース領域」および「メイン側コンタクト領域」と称されてもよい。モニタトランジスタ11のソース領域77およびコンタクト領域78は、それぞれ、「モニタ側ソース領域」および「モニタ側コンタクト領域」と称されてもよい。
【0225】
メイントランジスタ8とモニタトランジスタ11とは、分離部161により電気的に分離されている。分離部161は、隣り合うトレンチ構造61に挟まれたゲートスペース162に選択的に形成されたn型の不純物領域からなる。第2方向Yに沿って延びる帯状のゲートスペース162の途中部が、n型不純物領域(分離部161)により分断されている。これにより、ゲートスペース162に形成されたp型のボディ領域58が、メインボディ領域163と、モニタボディ領域164とに分離されている。メインボディ領域163およびモニタボディ領域164の表層部にはそれぞれ、前述のソース領域77およびコンタクト領域78が形成されているが、図21では省略している。
【0226】
ここで図10を参照して、分離部161は、第2方向Yにおいて離れた一対の分離部161を含む。一対の分離部161で挟まれたボディ領域58が、モニタトランジスタ11用のモニタボディ領域164である。各分離部161を隔ててモニタボディ領域164の反対側のボディ領域58が、メイントランジスタ8用のメインボディ領域163である。
【0227】
図21を参照して、分離部161上には、フィールド絶縁膜181が形成されている。フィールド絶縁膜181は、分離部161を被覆している。フィールド絶縁膜181が、ボディ領域58を被覆する主面絶縁膜183よりも厚いので、分離部161の上方領域には、法線方向Zにおいてボディ領域58の上方領域に対して選択的に隆起した絶縁構造165(この形態では、フィールド絶縁膜181)が形成されている。この形態では、絶縁構造165は、第2方向Yに沿って延びる帯状のゲートスペース162において、互いに間隔を空けて一対形成されている。
【0228】
次に、図22図29を参照して、分離部161の近傍の構造を詳細に説明する。
【0229】
図22は、分離部161の近傍の平面構造を示す模式的な平面図であって、図10の一点鎖線XXIIで囲まれた部分を示している。図22では、図10の一対の分離部161のうちの一方の分離部161の構造が示されているが、他方の分離部161の構造も同じ構造である。図22では、分離部161の占有領域が、グレー領域で示されている。
【0230】
図22を参照して、分離部161は、所定の幾何学形状を有する分離パターン166の領域内に形成されている。分離パターン166は、第1方向Yにおいて、複数の単位トランジスタ10A,10Bに跨って形成されている。たとえば、平面視において、分離パターン166が複数の単位トランジスタ10A,10Bを横切って形成されている。分離パターン166の形状は特に制限されず、三角形状、四角形状、円形状等のいずれであってもよい。
【0231】
この形態では、分離パターン166は、四角形状の仮想線により形成されている。分離パターン166が四角形状であれば、第2方向Yにおいてストライプ状に配列された複数の分離部161の長さを統一できるので、複数のモニタトランジスタ11の単位セルの長さを統一することができる。その結果、複数のモニタトランジスタ11に特性のばらつきが生じることを抑制することができる。四角形状の分離パターン166は、第1~第4周縁166A~166Dを有している。第1~第4周縁166A~166Dは、第1周縁166A、第2周縁166B、第3周縁166Cおよび第4周縁166Dを含む。第1周縁166Aおよび第2周縁166Bは、第1方向Xに延び、第2方向Yに対向している。第3周縁166Cおよび第4周縁166Dは、第2方向Yに延び、第1方向Xに対向している。
【0232】
分離部161は、分離パターン166で囲まれた領域のゲートスペース162に選択的に形成されている。この形態では、一対の第1トレンチ構造61Aで挟まれたゲートスペース162、および一対の第2トレンチ構造61Bで挟まれたゲートスペース162のそれぞれに分離部161が形成されている。これにより、モニタトランジスタ11は、第1系統トランジスタ9A(第1単位トランジスタ10A)に対応する第1系統モニタトランジスタ12Aと、第2系統トランジスタ9B(第2単位トランジスタ10B)に対応する第2系統モニタトランジスタ12Bとを含む。
【0233】
分離部161は、第1系統トランジスタ9Aと第1系統モニタトランジスタ12Aとを電気的に分離する第1分離部161Aと、第2系統トランジスタ9Bと第2系統モニタトランジスタ12Bとを電気的に分離する第2分離部161Bとを含んでいてもよい。これにより、第1系統トランジスタ9Aの第1単位トランジスタ10Aの一部が、第1系統モニタトランジスタ12Aの第1単位トランジスタ10Aとして絶縁分離され、第2系統トランジスタ9Bの第2単位トランジスタ10Bの一部が、第2系統モニタトランジスタ12Bの第2単位トランジスタ10Bとして絶縁分離されている。
【0234】
トレンチ構造61は、第1ゲート構造167と、第2ゲート構造168とを含む。第1ゲート構造167および第2ゲート構造168は、それぞれ、図22の紙面右側に示すように、互いに独立したトレンチ構造61の所定区間である。第1ゲート構造167が、第1方向Xにおいてメインボディ領域163およびモニタボディ領域164に隣接する区間である。第2ゲート構造168が、第1方向Xにおいて分離部161に隣接する区間である。言い換えれば、第1方向Xにおいて一対の第1ゲート構造167で挟まれた領域が、メインボディ領域163またはモニタボディ領域164であり、第1方向Xにおいて一対の第2ゲート構造168で挟まれた領域が、分離部161であってもよい。
【0235】
図23は、分離部161の近傍の平面構造を示す模式的な平面図であって、メイントランジスタ8およびモニタトランジスタ11用の配線層185の平面形状を示している。図24は、図23の配線層185を透視して示す図である。図24では、配線層185で覆われた半導体装置1の内部構造が破線で示されている。図23および図24では、分離部161の占有領域が、グレー領域で示されている。
【0236】
図25は、図24に示すXXV-XXV線に沿う断面図である。図26は、図24に示すXXVI-XXVI線に沿う断面図である。図27は、図24に示すXXVII-XXVII線に沿う断面図である。図28は、図24に示すXXVIII-XXVIII線に沿う断面図である。図29は、図24に示すXXIX-XXIX線に沿う断面図である。
【0237】
図25図26および図29を参照して、分離部161は、第2半導体領域52の一部により形成されている。この形態では、分離部161は、ゲートスペース162を形成するメサ部169において、第2主面4側から第1主面3に向かってボディ領域58を選択的に貫通している。メサ部169は、隣り合うトレンチ構造61により挟まれて区画された、半導体チップ2のストライプ状の凸構造である。
【0238】
分離部161は、たとえば、第2半導体領域52にイオン注入によりボディ領域58を形成する際、分離部161を形成すべき領域をレジストで被覆することにより形成することができる。レジストで被覆されていた領域が第2半導体領域52として残るため、当該第2半導体領域52を分離部161として利用することができる。
【0239】
図29を参照して、たとえば、第2半導体領域52は、半導体チップ2の全体にわたって形成され、ボディ領域58の底部よりも第2主面4側のベース領域170と、メサ部169においてベース領域170から第1主面3まで選択的に突出した突出部171とを一体的に含んでいてもよい。この場合、第2半導体領域52の突出部171が、分離部161であってもよい。
【0240】
図25図28を参照して、第1ゲート構造167は、前述のトレンチ71、上絶縁膜72、下絶縁膜73、上電極74、下電極75および中間絶縁膜76を含むマルチ電極構造を有している。メイントランジスタ8側の第1ゲート構造167の上電極74が、出力電流IOを制御する。モニタトランジスタ11側の第1ゲート構造167の上電極74が、出力モニタ電流IOMを制御する。
【0241】
図22図24および図28に示すように、メイントランジスタ8側の第1ゲート構造167の上電極74は、第2ゲート構造168の介在により、モニタトランジスタ11側の第1ゲート構造167の上電極74から電気的に分離されている。
【0242】
第1ゲート構造167は、大部分において第1方向Xにおいてメインボディ領域163およびモニタボディ領域164に隣接しているが、部分的に分離部161に隣接していてもよい。この形態では、図22および図28を参照して、第1ゲート構造167は、メインボディ領域163およびモニタボディ領域164と分離部161との境界部172を第2方向Yに沿って横切り、境界部172の近傍にもさらに形成されていてもよい。境界部172は、分離パターン166の第1周縁166Aおよび第2周縁166Bから第1方向X沿って延びる延長部であってもよい。
【0243】
図28を参照して、第1ゲート構造167の上電極74は、境界部172を横切って第2ゲート構造168に向かうにしたがって、連続的に減少する厚さを有している。たとえば、上電極74の底部173は、境界部172の近傍の端部において、第2ゲート構造168に向かって上り傾斜する傾斜部174を有していてもよい。傾斜部174は、第2主面4側に向かって膨らむ断面円弧状であってもよい。
【0244】
図28を参照して、この形態では、第1ゲート構造167の上電極74は、境界部172に対してメインボディ領域163側およびモニタボディ領域164側の上電極175と、境界部172に対して分離部161側の上電極176とを一体的に含んでいてもよい。分離部161側の上電極176は、メインボディ領域163側およびモニタボディ領域164側の上電極175よりも薄く形成されている。たとえば、上電極175の厚さTE1が5000Å以上20000Å以下であることが好ましく、具体的には、11000Å程度が好ましい。
【0245】
図25図28を参照して、第2ゲート構造168は、内壁絶縁膜177と、単一電極178とを含むシングル電極構造を有している。
【0246】
内壁絶縁膜177は、トレンチ71の内壁に形成されている。内壁絶縁膜177は、具体的には、トレンチ71の内壁の全域に膜状に形成され、トレンチ71内においてリセス空間を区画している。内壁絶縁膜177は、酸化シリコン膜を含むことが好ましい。内壁絶縁膜177は、半導体チップ2の酸化物からなる酸化シリコン膜を含むことが特に好ましい。
【0247】
内壁絶縁膜177は、図13図16に示す分離絶縁膜55と同じ厚さTIを有している。厚さTIは、0.1μm以上1μm以下であってもよい。厚さTIは、0.15μm以上0.65μm以下であることが好ましい。内壁絶縁膜177において、トレンチ71の底壁を被覆する部分の厚さは、トレンチ71の側壁を被覆する部分の厚さ未満であってもよい。
【0248】
図25および図26を参照して、内壁絶縁膜177は、第1主面3においてフィールド絶縁膜181と一体的に形成されている。これにより、内壁絶縁膜177およびフィールド絶縁膜181は、メサ部169の頂部の角部を被覆する一体的な耐圧絶縁膜を形成している。この形態では、分離部161が第1半導体領域51と同電位に固定され、比較的高電位になる。そのため、分離部161が形成されたメサ部169の頂部の角部を内壁絶縁膜177およびフィールド絶縁膜181のような厚い絶縁膜で被覆することにより、耐圧を向上させることができる。
【0249】
単一電極178は、内壁絶縁膜177を挟んでトレンチ71に一体物(integrated member)として埋設されている。単一電極178は、この形態では、導電性ポリシリコンを含む。単一電極178は、トレンチ71の底部から上部まで埋設されており、トレンチ71の下部において、第1ゲート構造167の下電極75に導通している。
【0250】
この形態では、図28に示すように、単一電極178は、第2方向Yに沿って第1ゲート構造167および第2ゲート構造168に跨って埋設された下電極75の一部として形成されていてもよい。たとえば、下電極75は、第2方向Yに沿ってトレンチ71の全体に埋設されたベース電極部179、分離部161に隣接する区間において、ベース電極部179から第1主面3まで選択的に突出した電極突出部180とを一体的に含んでいてもよい。この場合、ベース電極部179および電極突出部180の一体構造物が、単一電極178であってもよい。
【0251】
内壁絶縁膜177の厚さTI(図25参照)が上絶縁膜72の第1厚さT1(図27参照)よりも厚いので、単一電極178は、図22に示すように、第1ゲート構造167の上電極74よりも狭く形成されている。
【0252】
このように、第2ゲート構造168が、トレンチ分離構造53と同じシングル電極構造であるため、トレンチ分離構造53の形成工程に倣って、第2ゲート構造168を安定的に形成することができる。
【0253】
たとえば、第1ゲート構造167のマルチ電極構造は、トレンチ71に満たされたポリシリコンを途中まで掘り下げた後、中間絶縁膜76および上電極74を形成することにより得られる。この際、第2ゲート構造168がマルチ電極構造であると、第1ゲート構造167の上絶縁膜72の形成前のエッチング時に、レジストと第2ゲート構造168の内壁絶縁膜177およびフィールド絶縁膜181との密着性が低下する場合がある。前述のポリシリコンを掘り下げるエッチングの際に、内壁絶縁膜177およびフィールド絶縁膜181の表面の状態が変化するためである。その結果、エッチング液が第2ゲート構造168のトレンチ71に浸入し、内壁絶縁膜177およびフィールド絶縁膜181が部分的に削られる場合がある。
【0254】
これに対し、第2ゲート構造168がシングル電極構造であれば、分離パターン166周辺で表面状態の変化は起きないため、レジストの密着性の低下を抑制することできる。よって、第2ゲート構造168を安定的に形成することができる。
【0255】
図22を参照して、第1ゲート構造167は、境界部172の近傍に幅縮小部184を有していてもよい。幅縮小部184は、平面視において、第2方向Yにおける分離パターン166の内側に向かって、第1ゲート構造167の幅が減少するテーパ形状を有している。幅縮小部184により、相対的に広い幅を有する第1ゲート構造167の上電極74から、上電極74よりも相対的に狭い幅を有する第2ゲート構造168の単一電極178へ向かって、ゲート電極の幅は連続的に減少する。これにより、第1ゲート構造167から第2ゲート構造168に向かってゲート電極の幅が段階的に減少する場合に比べて、第1ゲート構造167から第2ゲート構造168へと緩やかな傾斜面で移行させることができる。その結果、第1ゲート構造167と第2ゲート構造168との境界部での電界集中を抑制することができる。
【0256】
図23図29を参照して、層間絶縁層19内には、配線層185が形成されている。配線層185は、前述のメインソース配線198の他に、モニタソース配線186と、ブリッジゲート配線187とを含んでいてもよい。
【0257】
モニタソース配線186は、層間絶縁層19に埋設されたモニタプラグ電極188を介して、モニタトランジスタ11のソース領域77およびコンタクト領域78に接続されている。モニタソース配線186は、前述の過電流保護回路17に電気的に接続されている。
【0258】
図23および図24を参照して、メインソース配線198およびモニタソース配線186は、分離部161の上方に、ブリッジゲート配線187用の配線層形成領域190を区画している。平面視において、分離部161は、メインソース配線198およびモニタソース配線186により四方を取り囲まれている。
【0259】
ブリッジゲート配線187は、配線層形成領域190に配置されている。ブリッジゲート配線187は、第2方向Yにおいて分離部161を横切り、メインボディ領域163側の第1ゲート構造167の上電極74と、モニタボディ領域164側の第1ゲート構造167の上電極74とを接続している。
【0260】
図28を参照して、ブリッジゲート配線187は、層間絶縁層19に埋設されたゲートプラグ電極189を介して、各上電極74に接続されている。ブリッジゲート配線187は、分離部161の上方領域を横切るように、メイン側のゲートプラグ電極189からモニタ側のゲートプラグ電極189まで第2方向Yに沿って延びている。これにより、第2ゲート構造168によりメイン側の上電極74から電気的に分離されたモニタ側の上電極74へも、ブリッジゲート配線187を介して電圧を印加することができる。
【0261】
ブリッジゲート配線187は、この形態では、第1ゲート配線187Aと、第2ゲート配線187Bとを含む。第1ゲート配線187Aは、第1トレンチ構造61Aの上電極74Aのメイン側とモニタ側とを接続する。第2ゲート配線187Bは、第2トレンチ構造61Bの上電極74Bのメイン側とモニタ側とを接続する。
【0262】
第1ゲート配線187Aおよび第2ゲート配線187Bは、それぞれ、一対の第1トレンチ構造61Aおよび一対の第2トレンチ構造61Bに1つずつ独立して形成されている。これにより、第1系統モニタトランジスタ12Aおよび第2系統モニタトランジスタ12Bのモニタ電流を互いに独立して制御することができる。
【0263】
図30は、サンプル1、サンプル2およびサンプル3の耐圧性能を比較するためのグラフである。図30において、横軸はソース-ドレイン間電圧Vdを示し、縦軸はソース-ドレイン間電流Idを示している。
【0264】
サンプル1およびサンプル2は、メイントランジスタ8とモニタトランジスタ11との分離方法が互いに異なっている。サンプル1は、前述と同様に、n型不純物領域からなる分離部161によって分離する方式を採用している。サンプル2は、分離部161の代わりに、ストライプ状のトレンチ構造61を横切る梯子状のトレンチを形成することによって分離する方式を採用している。また、サンプル3は、モニタトランジスタ11に限らず、メイントランジスタ8の電流を監視する素子自体を備えていない半導体装置である。
【0265】
図30のサンプル1のグラフとサンプル2のグラフとを比較すると、サンプル2に比べてサンプル1の方が、より高い電圧でブレイクダウンしていることが分かる。したがって、前述の分離部161によりモニタトランジスタ11を分離する方式により、耐圧の低下を抑制することができる。また、サンプル2では、サンプル3に比べて耐圧が低下しているが、サンプル1では、サンプル3からの耐圧を抑制でき、サンプル3と同等の耐圧を達成することができる。
【0266】
モニタトランジスタ11は、メイントランジスタ8と共に単一の第1デバイス領域6に集約して形成されている。これにより、モニタ精度を向上させることができる。たとえば、第1デバイス領域6の外側にメイントランジスタ8から独立した構造を有するモニタトランジスタでは、モニタ精度に影響を与える様々な構造が組み込まれる。これに対し、この形態では、モニタトランジスタ11と同じトランジスタ構造を採用されているので、モニタ精度を改善することができる。また、第1デバイス領域6の一部を使用するので、素子面積の縮小化に貢献することもできる。
【0267】
図31は、分離部161の第1変形例を示す模式的な平面図である。図32は、分離部161の第1変形例を示す模式的な断面図である。図31および図32は、それぞれ、図22および図29に対応する図である。
【0268】
図31および図32では、分離部161は、第2半導体領域52よりも高いn型不純物濃度を有する高濃度領域199を含む。より具体的には、分離部161は、ボディ領域58に接する第2半導体領域52の一部により形成されたベース領域200と、ベース領域200に選択的に形成された高濃度領域199とを含む。高濃度領域199は、ボディ領域58から離れていてもよい。高濃度領域199は、たとえば、ベース領域200をボディ領域58に形成した後、ベース領域200にn型不純物を選択的に注入することにより形成できる。
【0269】
この形態によれば、メインボディ領域163とモニタボディ領域164との間に高濃度領域199が介在することにより、メインボディ領域163とモニタボディ領域164との間を、より確実に電気的に分離することができる。これにより、メイントランジスタ8とモニタトランジスタ11との間に高い耐圧を確保することができる。
【0270】
図33は、分離部161の第2変形例を示す模式的な平面図である。図34は、分離部161の第2変形例を示す模式的な断面図である。図33および図34は、それぞれ、図22および図29に対応する図である。
【0271】
図33および図34では、分離部161は、分離パターン166の内側全体が高濃度領域201により形成されている。高濃度領域201は、第2半導体領域52よりも高いn型不純物濃度を有する領域である。高濃度領域201は、周囲全体にわたってボディ領域58に接している。
【0272】
高濃度領域201は、たとえば、半導体チップ2の第1主面3の全体にボディ領域58を形成した後、高濃度領域201を形成すべき領域のみに開口を有するレジストを介して当該ボディ領域58にn型不純物を選択的に注入することにより形成できる。高濃度領域201の濃度がボディ領域58よりも高いので、アニール処理により、ボディ領域58のp型がn型に置き換えられて分離部161(高濃度領域201)が形成される。
【0273】
この形態によれば、ラフレイヤーとして扱われるボディ領域58のパターン制御によって分離部161が形成されるのではなく、クリティカルレイヤーとして扱われるn型不純物領域のパターン制御によって、分離部161(高濃度領域201)が形成される。そのため、分離部161(高濃度領域201)のプロセスマージンを向上させることができる。
【0274】
また、メインボディ領域163とモニタボディ領域164との間に高濃度領域201が介在することにより、メインボディ領域163とモニタボディ領域164との間を、より確実に電気的に分離することができる。これにより、メイントランジスタ8とモニタトランジスタ11との間に高い耐圧を確保することができる。
【0275】
以上、本開示の実施形態について説明したが、さらに他の形態で実施できる。前述の各実施形態では、2系統のメイントランジスタ8および2系統のモニタトランジスタ11の具体的な構造について説明した。n系統のメイントランジスタ8が採用される場合、n個の系統トランジスタ9は、少なくとも1つの単位セル60をそれぞれ含む。また、m系統(n系統)のモニタトランジスタ11が採用される場合、m個(n個)の系統モニタトランジスタ12は、少なくとも1つの単位モニタセルをそれぞれ含む。n個の系統トランジスタ9およびm個(n個)の系統モニタトランジスタ12の電気的な接続形態は、複数のメインソース配線198、複数のモニタソース配線186、複数のメインゲート配線20等の個数や引き回し態様によって調整される。
【0276】
前述の実施形態では、第1導電型がn型、第2導電型がp型の例について説明したが、第1導電型がp型、第2導電型がn型であってもよい。この場合の具体的な構成は、前述の説明および添付図面において、n型領域をp型領域に置き換え、p型領域をn型領域に置き換えることによって得られる。
【0277】
以上、本開示の実施形態は、すべての点において例示であり限定的に解釈されるべきではなく、すべての点において変更が含まれることが意図される。この明細書および図面の記載から以下に付記する特徴が抽出され得る。以下、括弧内の英数字は前述の実施形態における対応構成要素等を表すが、各項目(Clause)の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。
【0278】
[付記1-1]
第1デバイス領域(6)が区画された第1主面(3)を有する半導体チップ(2)と、
前記第1デバイス領域(6)の表層部に形成された第1導電型の第1半導体領域(52)と、
前記第1半導体領域(52)の表層部に形成された第2導電型のボディ領域(58)と、
前記ボディ領域(58)を貫通して前記第1半導体領域(52)に至るように形成され、第1方向(Y)に沿って延びる複数のトレンチゲート構造(61)と、
前記トレンチゲート構造(61)の制御により、出力電流を前記ボディ領域(58)に生成するメイントランジスタ(8)と、
前記トレンチゲート構造(61)の制御により、前記出力電流に対応したモニタ電流を前記ボディ領域(58)に生成するモニタトランジスタ(11)と、
隣り合う前記トレンチゲート構造(61)に挟まれたゲートスペース(162)に選択的に形成された第1導電型の不純物領域からなり、前記第1方向(Y)において離れている一対の分離部(161)とを含み、
前記ボディ領域(58)は、前記一対の分離部(161)により、前記一対の分離部(161)に挟まれた前記モニタトランジスタ(11)用のモニタボディ領域(164)と、前記分離部(161)を隔てて前記モニタボディ領域(164)の反対側の前記メイントランジスタ(8)用のメインボディ領域(163)とに分離されており、
前記トレンチゲート構造(61)は、前記第1方向(Y)に交差する第2方向(X)において、前記モニタボディ領域(164)および前記メインボディ領域(163)に隣接する第1ゲート構造(167)と、前記分離部(161)に隣接する第2ゲート構造(168)とを含み、
前記第1ゲート構造(167)は、絶縁体(76)によって上下方向に絶縁分離されるようにゲートトレンチ(71)内に埋設された上電極(74)および下電極(75)を含み、前記上電極(74)が前記出力電流を制御するマルチ電極構造であり、
前記第2ゲート構造(168)は、前記ゲートトレンチ(71)の底部から上部まで、前記下電極(75)に導通する単一電極(178)が埋設されたシングル電極構造である、半導体装置(1)。
【0279】
[付記1-2]
前記第1主面(3)を被覆する層間絶縁層(19)と、
前記層間絶縁層(19)内に形成され、前記第1方向(Y)において前記分離部(161)を横切っており、前記メインボディ領域(163)側の前記第1ゲート構造(167)の前記上電極(74)と、前記モニタボディ領域(164)側の前記第1ゲート構造(167)の前記上電極(74)とを接続するブリッジゲート配線層(187)とを含む、付記1-1に記載の半導体装置(1)。
【0280】
[付記1-3]
前記層間絶縁層(19)内に形成され、前記メインボディ領域(163)に接続されたメインソース配線層(198)、および前記モニタボディ領域(164)に接続されたモニタソース配線層(186)とを含み、
前記メインソース配線層(198)および前記モニタソース配線層(186)は、前記分離部(161)の上方に、前記ブリッジゲート配線層(187)用の配線層形成領域(190)を区画している、付記1-2に記載の半導体装置(1)。
【0281】
[付記1-4]
前記第1ゲート構造(167)は、前記モニタボディ領域(164)および前記メインボディ領域(163)の少なくとも一方と前記分離部(161)との境界部(172)を横切り、前記境界部(172)の近傍にもさらに形成されており、
前記境界部(172)に対して前記分離部(161)側の前記上電極(74)は、前記境界部(172)に対して前記モニタボディ領域(164)および前記メインボディ領域(163)の少なくとも一方側の前記上電極(74)よりも薄く形成されている、付記1-1~付記1-3のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【0282】
[付記1-5]
前記第1ゲート構造(167)の前記上電極(74)は、前記第1方向(Y)において、前記モニタボディ領域(164)および前記メインボディ領域(163)の少なくとも一方から前記分離部(161)に向かうにしたがって連続的に薄くなる、付記1-4に記載の半導体装置(1)。
【0283】
[付記1-6]
前記第1ゲート構造(167)は、前記上電極(74)と前記ボディ領域(58)との間に形成された上絶縁膜(72)と、前記下電極(75)と前記第1半導体領域(52)との間に形成された下絶縁膜(73)とを含み、
前記第2ゲート構造(168)は、前記単一電極(178)と前記ボディ領域(58)および前記第1半導体領域(52)との間に形成された内壁絶縁膜(177)とを含み、
前記下絶縁膜(73)および前記内壁絶縁膜(177)は、前記上絶縁膜(72)の厚さ(T1)を超える厚さ(TI)を有している、付記1-1~付記1-5のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【0284】
[付記1-7]
前記内壁絶縁膜(177)において、前記ゲートトレンチ(71)の側壁上部を被覆する部分の厚さは、前記ゲートトレンチ(71)の底壁を被覆する部分の厚さを超えている、付記1-6に記載の半導体装置(1)。
【0285】
[付記1-8]
前記第1主面(3)に形成され、前記一対の分離部(161)を選択的に被覆するフィールド絶縁膜(181)を含む、付記1-6または付記1-7に記載の半導体装置(1)。
【0286】
[付記1-9]
前記フィールド絶縁膜(181)および前記内壁絶縁膜(177)は、前記ゲートスペース(162)を形成するメサ部(169)の頂部の角部を被覆する一体的な耐圧絶縁膜を形成している、付記1-8に記載の半導体装置(1)。
【0287】
[付記1-10]
前記分離部(161)は、前記第1半導体領域(52)の一部により形成されている、付記1-1~付記1-9のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【0288】
[付記1-11]
前記分離部(161)は、前記第1半導体領域(52)よりも高い第1導電型不純物濃度を有する高濃度領域(199,201)を含む、付記1-1~付記1-9のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【0289】
[付記1-12]
前記分離部(161)は、前記ボディ領域(58)に接する前記第1半導体領域(52)の一部により形成されたベース領域(200)と、前記ベース領域(200)に選択的に形成され、前記ベース領域(200)を介して前記ボディ領域(58)から離れており、前記ベース領域(200)よりも高い第1導電型不純物濃度を有する高濃度領域(199)とを含む、付記1-1~付記1-9のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【0290】
[付記1-13]
前記分離部(161)は、前記第1半導体領域(52)よりも高い第1導電型不純物濃度を有する高濃度領域(201)により形成され、前記第1方向(Y)および前記第2方向(X)の少なくとも一方において前記ボディ領域(58)に接している、付記1-1~付記1-9のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【0291】
[付記1-14]
前記第1主面(3)において前記第1デバイス領域(6)を区画するトレンチ分離構造(53)をさらに含み、
前記トレンチ分離構造(53)は、分離トレンチ(54)の底部から上部まで単一分離電極(56)が埋設されたシングル電極構造である、付記1-1~付記1-13のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【0292】
[付記1-15]
前記メイントランジスタ(8)は、前記出力電流の一部として第1系統電流を生成する第1系統トランジスタ(9A)、および、前記第1系統トランジスタ(9A)から独立した前記出力電流の一部として第2系統電流を生成する第2系統トランジスタ(9B)を含み、
前記モニタトランジスタ(11)は、前記第1系統電流に対応した第1系統モニタ電流を生成する第1系統モニタトランジスタ(12A)、および、前記第2系統電流に対応した第2系統モニタ電流を生成する第2系統モニタトランジスタ(12B)を含む、付記1-1~付記1-14のいずれか一項に記載の半導体装置(1)。
【符号の説明】
【0293】
1 :半導体装置
2 :半導体チップ
3 :第1主面
4 :第2主面
5A :第1側面
5B :第2側面
5C :第3側面
5D :第4側面
6 :第1デバイス領域
7 :第2デバイス領域
8 :メイントランジスタ
9 :系統トランジスタ
9A :第1系統トランジスタ
9B :第2系統トランジスタ
10 :単位トランジスタ
10A :第1単位トランジスタ
10B :第2単位トランジスタ
11 :モニタトランジスタ
12 :系統モニタトランジスタ
12A :第1系統モニタトランジスタ
12B :第2系統モニタトランジスタ
13 :単位モニタトランジスタ
14 :コントロールIC
15 :ゲート制御回路
16 :アクティブクランプ回路
17 :過電流保護回路
18 :フィールド絶縁膜
19 :層間絶縁層
20 :メインゲート配線
20A :第1メインゲート配線
20B :第2メインゲート配線
21 :モニタゲート配線
21A :第1モニタゲート配線
21B :第2モニタゲート配線
22 :ドレイン端子
23 :ソース端子
24 :入力端子
25 :グランド端子
26 :イネーブル端子
27 :センス端子
31 :第1電流源
32 :第2電流源
33 :第3電流源
34 :第4電流源
35 :コントローラ
37 :ツェナダイオード列
38 :ダイオード列
51 :第1半導体領域
52 :第2半導体領域
53 :トレンチ分離構造
54 :分離トレンチ
55 :分離絶縁膜
56 :分離電極
57 :分離キャップ絶縁膜
58 :ボディ領域
60 :単位セル
60A :第1単位セル
60B :第2単位セル
61 :トレンチ構造
61A :第1トレンチ構造
61B :第2トレンチ構造
62 :チャネルセル
62A :第1チャネルセル
62B :第2チャネルセル
63 :第1端部
64 :第2端部
71 :トレンチ
71A :第1トレンチ
71B :第2トレンチ
72 :上絶縁膜
72A :第1上絶縁膜
72B :第2上絶縁膜
73 :下絶縁膜
73A :第1下絶縁膜
73B :第2下絶縁膜
74 :上電極
74A :第1上電極
74B :第2上電極
75 :下電極
75A :第1下電極
75B :第2下電極
76 :中間絶縁膜
76A :第1中間絶縁膜
76B :第2中間絶縁膜
77 :ソース領域
77A :第1ソース領域
77B :第2ソース領域
78 :コンタクト領域
78A :第1コンタクト領域
78B :第2コンタクト領域
79 :チャネル領域
79A :第1チャネル領域
79B :第2チャネル領域
81 :第1複合セル
82 :第2複合セル
90 :第1トレンチ接続構造
90A :第1部分
90B :第2部分
91 :第1接続トレンチ
92 :第1接続絶縁膜
93 :第1接続電極
94 :第1キャップ絶縁膜
100 :第2トレンチ接続構造
100A :第1部分
100B :第2部分
101 :第2接続トレンチ
102 :第2接続絶縁膜
103 :第2接続電極
104 :第2キャップ絶縁膜
161 :分離部
161A :第1分離部
161B :第2分離部
162 :ゲートスペース
163 :メインボディ領域
164 :モニタボディ領域
165 :絶縁構造
166 :分離パターン
166A :第1周縁
166B :第2周縁
166C :第3周縁
166D :第4周縁
167 :第1ゲート構造
168 :第2ゲート構造
169 :メサ部
170 :ベース領域
171 :突出部
172 :境界部
173 :底部
174 :傾斜部
175 :上電極
176 :上電極
177 :内壁絶縁膜
178 :単一電極
179 :ベース電極部
180 :電極突出部
181 :フィールド絶縁膜
183 :主面絶縁膜
184 :幅縮小部
185 :配線層
186 :モニタソース配線
187 :ブリッジゲート配線
187A :第1ゲート配線
187B :第2ゲート配線
188 :モニタプラグ電極
189 :ゲートプラグ電極
190 :配線層形成領域
191 :プラグ電極
192 :プラグ電極
193 :プラグ電極
195 :プラグ電極
198 :メインソース配線
199 :高濃度領域
200 :ベース領域
201 :高濃度領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
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図12
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図14
図15
図16
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図18
図19
図20
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図30
図31
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図34