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特開2024-117386原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造
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  • 特開-原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117386
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造
(51)【国際特許分類】
   G21C 13/028 20060101AFI20240822BHJP
   G21C 19/02 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
G21C13/028
G21C19/02 050
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023455
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】了戒 智文
(72)【発明者】
【氏名】和田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義紀
(57)【要約】      (修正有)
【課題】止水材の物量が増加することはなく、燃料デブリと止水材の分別を容易にし、廃棄物の物量を低減する。
【解決手段】原子炉圧力容器の底部における漏水箇所(開口)を、止水材を用いて閉塞する原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、遠隔装置に搭載されたカメラで前記漏水箇所の形状を前記原子炉圧力容器の外部から確認し、前記漏水箇所の形状が分かる場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルを前記漏水箇所に前記原子炉圧力容器の外部から挿入して固定することで前記漏水箇所を閉塞し、前記漏水箇所の形状は分からないが、前記漏水箇所の位置が特定できている場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材である堆積膨張して固化する流体が入っている袋を前記漏水箇所に前記原子炉圧力容器の外部から挿入し、その後、前記流体を堆積膨張させた前記袋で前記漏水箇所を閉塞することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の底部における漏水箇所(開口)を、止水材を用いて閉塞する原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
遠隔装置に搭載されたカメラで前記漏水箇所(開口)の形状を前記原子炉圧力容器の外部から確認し、前記漏水箇所(開口)の形状が分かる場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルを前記漏水箇所(開口)に前記原子炉圧力容器の外部から挿入して固定することで前記漏水箇所(開口)を閉塞し、
前記漏水箇所(開口)の形状は分からないが、前記漏水箇所(開口)の位置が特定できている場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材である堆積膨張して固化する流体が入っている袋を前記漏水箇所(開口)に前記原子炉圧力容器の外部から挿入し、その後、前記流体を堆積膨張させた前記袋で前記漏水箇所(開口)を閉塞することを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
前記プラグ又はパッチは、溶接によって前記原子炉圧力容器の前記漏水箇所(開口)に固定され、前記モルタルは、前記原子炉圧力容器の内部へ挿入されたホースを介して注入することで前記原子炉圧力容器の前記漏水箇所(開口)に固定されることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項3】
請求項1に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
前記堆積膨張して固化する流体は発砲ウレタンであると共に、前記袋はアラミド製であり、前記遠隔装置を用いて前記漏水箇所(開口)より前記アラミド製の前記袋を挿入し、その後、前記アラミド製の前記袋へ前記発砲ウレタンを注入し、前記発砲ウレタンが固化した後に、前記袋に装着されたホースを用いて前記原子炉圧力容器の内部へモルタルを注入して前記漏水箇所(開口)を閉塞することを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項4】
請求項3に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
前記袋に装着されたホースを用いて前記原子炉圧力容器の内部へ注入されたモルタルは、前記袋の前記原子炉圧力容器の内部に位置する部分を覆うように配置されていることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項5】
請求項4に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
前記漏水箇所(開口)の形状は分からないが前記漏水箇所(開口)の位置が特定できており、かつ、前記袋及び前記モルタルでは前記原子炉圧力容器の内部への注水時の差圧に前記止水材が耐えられない場合には、前記原子炉圧力容器の内部に挿入した後に補強材となる強度部材を事前に前記袋に内包させるか、又は前記止水材を設置した後に、前記原子炉圧力容器の外部から支持材を挿入して補強することを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項6】
原子炉圧力容器の底部における漏水箇所(開口)を、止水材を用いて閉塞する原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
遠隔装置を原子炉格納容器の内部へ入れ、前記遠隔装置を前記原子炉圧力容器の支持スカート内部まで侵入させる第1の工程と、
前記遠隔装置で、前記原子炉圧力容器の底部の前記漏水箇所(開口)を前記原子炉圧力容器の外部から特定する第2の工程と、
前記原子炉圧力容器の前記支持スカート内部で、前記遠隔装置は、水が無い状態の前記原子炉圧力容器の下鏡に開いた前記漏水箇所(開口)に対し錆取りを実施する共に、前記漏水箇所(開口)を閉塞する前記止水材の形状に合うように前記漏水箇所(開口)を加工する第3の工程と、
前記第3の工程の後に、前記漏水箇所(開口)の形状が分かる場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルを前記漏水箇所(開口)に、前記原子炉圧力容器の外部から挿入して固定することで前記漏水箇所(開口)を閉塞し、
前記漏水箇所(開口)の形状は分からないが、前記漏水箇所(開口)の位置が特定できている場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材である堆積膨張して固化する流体が入っている袋を前記漏水箇所(開口)に前記原子炉圧力容器の外部から挿入し、その後、前記流体を堆積膨張させた前記袋で前記漏水箇所(開口)を閉塞する第4の工程と、を実行することを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項7】
請求項6に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
前記プラグ又はパッチは、溶接によって前記原子炉圧力容器の前記漏水箇所(開口)に固定され、前記モルタルは、前記原子炉圧力容器の内部へ挿入されたホースを介して注入することで前記原子炉圧力容器の前記漏水箇所(開口)に固定されることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項8】
請求項6に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
前記堆積膨張して固化する流体は発砲ウレタンであると共に、前記袋はアラミド製であり、前記遠隔装置を用いて前記漏水箇所(開口)より前記アラミド製の前記袋を挿入し、その後、前記アラミド製の前記袋へ前記発砲ウレタンを注入し、前記発砲ウレタンが固化した後に、前記袋に装着されたホースを用いて前記原子炉圧力容器の内部へモルタルを注入して前記漏水箇所(開口)を閉塞することを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項9】
請求項8に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、
前記袋に装着されたホースを用いて前記原子炉圧力容器の内部へ注入されたモルタルは、前記袋の前記原子炉圧力容器の内部に位置する部分を覆うように配置されていることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法。
【請求項10】
原子炉圧力容器の底部における漏水箇所(開口)が、止水材により閉塞されている原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造であって、
前記止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルが前記漏水箇所(開口)に固定されていることで前記漏水箇所(開口)が閉塞されているか、
又は、前記止水材である堆積膨張して固化する流体が入っている袋の前記流体が堆積膨張することで前記漏水箇所(開口)が閉塞されていることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造。
【請求項11】
請求項10に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造であって、
前記プラグ又はパッチは、溶接によって前記原子炉圧力容器の前記漏水箇所(開口)に固定され、前記モルタルは、前記原子炉圧力容器の内部へ挿入されたホースを介して注入することで前記原子炉圧力容器の前記漏水箇所(開口)に固定されていることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造。
【請求項12】
請求項10に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造であって、
前記堆積膨張して固化する流体は発砲ウレタンであると共に、前記袋はアラミド製であり、前記発砲ウレタンが固化し、前記袋に装着されたホースを用いて前記原子炉圧力容器の内部へモルタルを注入して前記漏水箇所(開口)が閉塞されることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造。
【請求項13】
請求項12に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造であって、
前記袋に装着されたホースを用いて前記原子炉圧力容器の内部の注入されたモルタルは、前記袋の前記原子炉圧力容器の内部に位置する部分を覆うように配置されていることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造。
【請求項14】
請求項13に記載の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造であって、
前記原子炉圧力容器の内部に挿入した後に補強材となる強度部材が、事前に前記袋に内包されているか、又は前記止水材が、前記原子炉圧力容器の外部から挿入された支持材で補強されていることを特徴とする原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造に係り、特に、原子炉圧力容器底部の外部からアクセスして原子炉圧力容器の漏洩箇所を閉塞するものに好適な原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子カプラントが大地震や大津波により万一供給電源が全て失われると、原子炉の給水が停止して炉心燃料の溶融ならびに原子炉圧力容器の部分的損傷が発生する可能性がある。炉心燃料の溶融ならびに原子炉圧力容器の部分的損傷が発生するような過酷事故が万一生じた場合にも、炉心燃料の崩壊熱を安定的に冷却するため、原子炉圧力容器は外部から冷却水を供給させる必要がある。
【0003】
このとき、原子炉圧力容器が部分的に損傷していると、その損傷部位から原子炉圧力容器に供給された冷却水が漏洩する恐れがある。
【0004】
このようなことから、原子炉圧力容器内に冷却水を張った状態で燃料デブリを搬出するために、原子炉圧力容器の漏洩箇所(開口)へ原子炉圧力容器の底部外側からアクセスし、水漏れを止水又は最小限にする技術が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、原子炉圧力容器の内部まで接続している配管に注入孔を設け、この注入孔より止水材を注入することが記載されている。
【0006】
具体的には、炉心まで直接接続されている高圧注水系又は低圧注水系のいずれか一方のCS系注水配管を使って、炉心内部まで止水材(例えば、鉄粉やボロンカーボナイト又はセメント等)を注入し、これにより、原子炉格納容器や原子炉圧力容器の上蓋を開放することなく、原子炉圧力容器底部に生じた穴やき裂を封止して、原子炉圧力容器からの水の漏洩を止めるか又は極力少なくすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-235009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている原子炉圧力容器の内部に止水材を注入する技術では、原子炉圧力容器の内部に止水材を注入することから、止水材が炉内構造物に堆積し物量が増加してしまうし、止水材を散布する場合は、止水材が炉底部全体に堆積するため、注入する止水材の物量が増加する恐れがある。また、燃料デブリと止水材が混在している場合には、両者の分別が困難となり廃棄物の物量が増加するという課題があった。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、止水材の物量が増加することはなく、燃料デブリと止水材の分別を容易にし、廃棄物の物量を低減することが可能な原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法は、上記目的を達成するために、原子炉圧力容器の底部における漏水箇所(開口)を、止水材を用いて閉塞する原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、遠隔装置に搭載されたカメラで前記漏水箇所(開口)の形状を前記原子炉圧力容器の外部から確認し、前記漏水箇所(開口)の形状が分かる場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルを前記漏水箇所(開口)に前記原子炉圧力容器の外部から挿入して固定することで前記漏水箇所(開口)を閉塞し、前記漏水箇所(開口)の形状は分からないが、前記漏水箇所(開口)の位置が特定できている場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材である堆積膨張して固化する流体が入っている袋を前記漏水箇所(開口)に前記原子炉圧力容器の外部から挿入し、その後、前記流体を堆積膨張させた前記袋で前記漏水箇所(開口)を閉塞することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法は、上記目的を達成するために、原子炉圧力容器の底部における漏水箇所(開口)を、止水材を用いて閉塞する原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法であって、遠隔装置を原子炉格納容器の内部へ入れ、前記遠隔装置を前記原子炉圧力容器の支持スカート内部まで侵入させる第1の工程と、前記遠隔装置で、前記原子炉圧力容器の底部の前記漏水箇所(開口)を前記原子炉圧力容器の外部から特定する第2の工程と、前記原子炉圧力容器の前記支持スカート内部で、前記遠隔装置は、水が無い状態の前記原子炉圧力容器の下鏡に開いた前記漏水箇所(開口)に対し錆取りを実施する共に、前記漏水箇所(開口)を閉塞する前記止水材の形状に合うように前記漏水箇所(開口)を加工する第3の工程と、前記第3の工程の後に、前記漏水箇所(開口)の形状が分かる場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルを前記漏水箇所(開口)に、前記原子炉圧力容器の外部から挿入して固定することで前記漏水箇所(開口)を閉塞し、前記漏水箇所(開口)の形状は分からないが、前記漏水箇所(開口)の位置が特定できている場合には、前記遠隔装置を操作して前記止水材である堆積膨張して固化する流体が入っている袋を前記漏水箇所(開口)に前記原子炉圧力容器の外部から挿入し、その後、前記流体を堆積膨張させた前記袋で前記漏水箇所(開口)を閉塞する第4の工程と、を実行することを特徴とする。
【0012】
本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造は、上記目的を達成するために、原子炉圧力容器の底部における漏水箇所(開口)が、止水材により閉塞されている原子炉圧力容器の漏洩部閉塞構造であって、前記止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルが前記漏水箇所(開口)に固定されていることで前記漏水箇所(開口)が閉塞されているか、又は前記止水材である堆積膨張して固化する流体が入っている袋の前記流体が堆積膨張することで前記漏水箇所(開口)が閉塞されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、止水材の物量が増加することはなく、燃料デブリと止水材の分別を容易にし、廃棄物の物量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造が適用される沸騰水型原子カプラントの概略構造を示す図である。
図2】本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法における漏水箇所(開口)の形状が分かる場合の閉塞作業を示す図である。
図3】本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法における漏水箇所(開口)の形状は分からないが、漏水箇所(開口)の位置が特定できている場合の閉塞作業を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例0016】
図1に、本発明の原子炉圧力容器の漏洩部閉塞方法及びその漏洩部閉塞構造が適用される沸騰水型原子カプラントの概略構造を示す。
【0017】
該図に示す如く、本実施例での沸騰水型原子カプラントは、原子炉及び原子炉格納容器2を備えている。この原子炉格納容器2は、原子炉建屋1内に設置されて、上端部に上蓋2Aが取り付けられて密封されている。原子炉格納容器2は、内部に形成されたドライウェル9、及び冷却水23が充填された圧力抑制プールが内部に形成された環状の圧力抑制室24を有する。ドライウェル9に連絡されるベント通路の一端が、圧力抑制室24内の圧力抑制プールの冷却水23中に浸漬されている。圧力抑制室24は、原子炉建屋1内に形成された環状のトーラス室26内に配置されている。
【0018】
原子炉は、上蓋3Aが取り付けられて構成される原子炉圧力容器3、核燃料物質を含む複数の燃料集合体が装荷された炉心27、気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)等を備えている。炉心27、気水分離器及び蒸気乾燥器は原子炉圧力容器3内に配置される。炉心27内に装荷された各燃料集合体は、下端部が炉心支持板28によって支持され、上端部が上部格子板29によって保持される。気水分離器は上部格子板29よりも上方に配置され、蒸気乾燥器が気水分離器の上方に配置される。
【0019】
複数の制御棒案内管30が炉心支持板28の下方に配置されている。炉心27内の燃料集合体間に出し入れされて原子炉出力を制御する制御棒(図示せず)が、各制御棒案内管30内に配置されている。複数の制御棒駆動機構ハウジング31が、原子炉圧力容器3の下鏡に取り付けられている。制御棒駆動機構(図示せず)が、それぞれの制御棒駆動機構ハウジング31内に設置され、制御棒案内管30内の制御棒と連結されている。
【0020】
原子炉圧力容器3は、原子炉格納容器2内の底部に設けられたコンクリートマット32上に設けられた筒状のペデスタル5上に据え付けられている。筒状のγ線遮薇体33が、ペデスタル5の上端に設置され、原子炉圧力容器3を取り囲んでいる。ペデスタル開口34が、ペデスタル5に形成されており、原子炉格納容器2内のドライウェル9とペデスタル5内に形成された内部空間35を連通している。複数の制御棒駆動機構ハウジング31が、原子炉圧力容器3の下鏡から内部空間35に向かつて伸びている。
【0021】
原子炉建屋1の一部であるコンクリート製の筒状の生体遮蔽体6が、原子炉格納容器2の周囲を取り囲んでいる。沸騰水型原子カプラントの運転が停止された後に実施される保守点検時に作業員が原子炉格納容器2内に入れるように、エアロックドアを備えたアクセス通路が設けられており、このアクセス通路は、生体遮蔽体6及び原子炉格納容器2を貫通している。アクセス通路以外に、制御棒駆動機構ハッチ36及び機器ハッチが生体遮蔽体6及び原子炉格納容器2を貫通して設けられている。制御棒駆動機構ハッチ36は、原子炉建屋1の放射性廃棄物処理建屋37に面する側壁に向かつて伸びている。
【0022】
アクセス通路はエアロックドアを開くことによって、また、機器ハッチ及び制御棒駆動機構ハッチ36は各ハッチを開くことによって、原子炉建屋1内で原子炉格納容器2の外側の領域38と原子炉格納容器2内のドライウェル9が連絡される。沸騰水型原子カプラントの運転時では、エアロックドア及びそれらのハッチは閉じられている。
【0023】
運転床39が、原子炉建屋1内で原子炉格納容器2の上方に形成される。燃料貯蔵プール40が運転床39に囲まれて形成されており、冷却水が燃料貯蔵プール40内に充填されている。炉心27から取り出された複数の使用済燃料集合体が、燃料貯蔵プール40内の冷却水中に保管されている。
【0024】
原子炉建屋1は横断面が正方形をしており、四つの側壁を有している。放射性廃棄物処理建屋37が、原子炉建屋1に隣接して配置され、原子炉建屋1の一つの側壁と平行に伸びている。タービン建屋(図示せず)が、放射性廃棄物処理建屋37と隣接する側壁と直交している原子炉建屋1の他の側壁に隣接して配置される。
【0025】
そして、本実施例では、図2に示すように、原子炉圧力容器3の底部における漏水箇所(開口)3aを(図2のL1が漏水箇所(開口)3aの大きさ)、止水材(例えばプラグ8)を用いて閉塞する際に、遠隔装置(例えばロボット7)に搭載されたカメラ(図示せず)で漏水箇所(開口)3aの形状を原子炉圧力容器3の外部から確認し、漏水箇所(開口)3aの形状が分かる場合(穴や亀裂が分かる場合で、例えば、丸い穴なのか、四角い穴なのか、が分かる場合)には、ロボット7を操作して止水材であるプラグ8又はパッチ(図示せず)或いはモルタル(図示せず)を漏水箇所(開口)3aに、原子炉圧力容器3の外部から挿入して溶接10で固定することで漏水箇所(開口)3aを閉塞する(図2のL1が漏水箇所(開口)3aの大きさであり、漏水箇所(開口)3aの大きさL1に合う止水材(例えばプラグ8)を用いて閉塞する)ものである。
【0026】
一方、漏水箇所(開口)3aの形状は分からないが、漏水箇所(開口)3aの位置が特定できている場合(穴の一部は見えるが、物陰に隠れていて穴の全体が見えない等)には図3に示すように、、ロボット7を操作して止水材である堆積膨張して固化する流体(例えば発砲ウレタン13)が入っている袋11を漏水箇所(開口)3aに原子炉圧力容器3の外部から挿入し、その後、発砲ウレタン13を堆積膨張させた袋11で漏水箇所(開口)3aを閉塞する(図3のL2が漏水箇所(開口)3aの大きさであり、漏水箇所(開口)3aの大きさL2を塞ぐように堆積膨張して固化する流体(例えば発砲ウレタン13)が入っている袋11を用いて閉塞する)ものである。
【0027】
上記した止水材であるプラグ8又はパッチは、溶接によって原子炉圧力容器3の漏水箇所(開口)3aに固定され、モルタルは、原子炉圧力容器3の内部へ挿入されたホースを介して注入することで原子炉圧力容器3の漏水箇所(開口)3aに固定されている。
【0028】
上述した如く、図3に示す堆積膨張して固化する流体は発砲ウレタン13であるが、袋11はアラミド製であり、ロボット7を用いて漏水箇所(開口)3aよりアラミド製の袋11を挿入し、その後、アラミド製の袋11へ発砲ウレタン13を注入し、この発砲ウレタン13が固化した後に、袋11に装着されたホース12を用いて原子炉圧力容器3の内部へモルタル14を注入して漏水箇所(開口)3aを閉塞する。
【0029】
上記した袋11に装着されたホース12を用いて原子炉圧力容器3の内部へ注入されたモルタル14は、袋11の原子炉圧力容器3の内部に位置する部分を覆うように配置されている。
【0030】
また、本実施例では、漏水箇所(開口)3aの形状は分からないが漏水箇所(開口)3aの位置が特定できており、かつ、袋11及びモルタル14では原子炉圧力容器3の内部への注水時の水圧に耐えられない場合には、原子炉圧力容器3の内部に挿入した後に補強材となる強度部材を事前に袋11に内包させるか、又は止水材を設置した後に、原子炉圧力容器3の外部から支持材を挿入して補強すれば良い。
【0031】
更に、本実施例の原子炉圧力容器3の漏洩部閉塞方法を具体的に説明すると、本実施例の原子炉圧力容器3の漏洩部閉塞方法は、遠隔装置(ロボット7)を原子炉格納容器3の内部へ入れ、ロボット7を原子炉圧力容器3の支持スカート内部まで侵入させる第1の工程と、ロボット7で、原子炉圧力容器3の底部の漏水箇所(開口)3aを原子炉圧力容器3の外部から特定する第2の工程と、原子炉圧力容器3の支持スカート内部で、ロボット7は、水が無い状態の原子炉圧力容器3の下鏡に開いた漏水箇所(開口)3aに対しサンダー等で錆取りを実施する共に、漏水箇所(開口)3aを閉塞する止水材の形状に合うように漏水箇所(開口)3aをレーザ等で加工する第3の工程と、第3の工程の後に、漏水箇所(開口)3aの形状が分かる場合(穴や亀裂が分かる場合で、例えば、丸い穴なのか、四角い穴なのか、が分かる場合)には、ロボット7を操作して止水材であるプラグ8又はパッチ(図示せず)或いはモルタル(図示せず)を漏水箇所(開口)3aに、原子炉圧力容器3の外部から挿入して溶接10で固定することで漏水箇所(開口)3aを閉塞し(図2のL1が漏水箇所(開口)3aの大きさであり、漏水箇所(開口)3aの大きさL1に合う止水材(例えばプラグ8)を用いて閉塞する)、漏水箇所(開口)3aの形状は分からないが、漏水箇所(開口)3aの位置が特定できている場合(穴の一部は見えるが、物陰に隠れていて穴の全体が見えない等)には図3に示すように、、ロボット7を操作して止水材である堆積膨張して固化する流体(例えば発砲ウレタン13)が入っている袋11を漏水箇所(開口)3aに原子炉圧力容器3の外部から挿入し、その後、発砲ウレタン13を堆積膨張させた袋11で漏水箇所(開口)3aを閉塞する第4の工程と、を実行する。
【0032】
上記した本実施例の原子炉圧力容器3の漏洩部閉塞方法では、プラグ8又はパッチは、溶接によって原子炉圧力容器8の漏水箇所(開口)3aに固定され、モルタルは、原子炉圧力容器3の内部へ挿入されたホースを介して注入することで原子炉圧力容器3の漏水箇所(開口)3aに固定される。
【0033】
また、上記した堆積膨張して固化する流体は発砲ウレタン13で、袋11はアラミド製であり、ロボット7を用いて漏水箇所(開口)3aよりアラミド製の袋11を挿入し、その後、アラミド製の袋11へ発砲ウレタン13を注入し、この発砲ウレタン13が固化した後に、袋11に装着されたホースを用いて原子炉圧力容器3内部へモルタル14入して漏水箇所(開口)3aを閉塞する。袋11に装着されたホース12を用いて原子炉圧力容器3の内部へ注入されたモルタル14は、袋11の原子炉圧力容器3の内部に位置する部分を覆うように配置されている。
【0034】
なお、本実施例でのロボット7は、作業員が制御室(コントロール室)でモニタを見ながら遠隔操作されている。
【0035】
上記した本実施例の原子炉圧力容器3の漏洩部閉塞方法で行なわれた原子炉圧力容器3の漏洩部閉塞構造は、止水材であるプラグ又はパッチ或いはモルタルが漏水箇所(開口)3aに固定されていることで漏水箇所(開口)3aが閉塞されているか、又は止水材である堆積膨張して固化する発砲ウレタン13が入っているアラミド製の袋11の発砲ウレタン13が堆積膨張することで漏水箇所(開口)3aが閉塞されているものである。
【0036】
また、プラグ8又はパッチは、溶接10によって原子炉圧力容器3の漏水箇所(開口)3aに固定され、モルタルは、原子炉圧力容器3の内部へ挿入されたホースを介して注入することで原子炉圧力容器3の漏水箇所(開口)3aに固定されている。この際に、アラミド製の袋11に装着されたホース12を用いて原子炉圧力容器3の内部の注入されたモルタル14は、アラミド製の袋の原子炉圧力容器3の内部に位置する部分を覆うように配置されている。
【0037】
また、本実施例での原子炉圧力容器3の漏洩部閉塞構造は、原子炉圧力容器3の内部に挿入した後に補強材となる強度部材が、事前アラミド製の袋11に内包されているか、又は止水材が、原子炉圧力容器3の外部から挿入された支持材で補強されている。
【0038】
このような本実施例によれば、原子炉圧力容器3を開放することなく、また、原子炉圧力容器3の内部の状況によらず止水作業を行うことができると共に、原子炉圧力容器3の内部からの止水作業と比較して、止水材の使用量を低減でき、また、原子炉圧力容器3の漏水箇所(開口)3aごとに止水材の形状変更が不要となる。従って、本実施例では、止水材の物量が増加することはなく、燃料デブリと止水材の分別を容易にし、廃棄物の物量を低減することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…原子炉建屋、2…原子炉格納容器、2A…原子炉格納容器の上蓋、3…原子炉圧力容器、3a…原子炉圧力容器3の漏水箇所(開口)、3A…原子炉圧力容器の上蓋、、5…ペデスタル、6…生体遮蔽体、7…ロボット、8…プラグ、9…ドライウェル、10…溶接、11…袋、12…ホース、13…発砲ウレタン、14…モルタル、23…冷却水、24…圧力抑制室、26…トーラス室、27…炉心、28…炉心支持板、29…上部格子板、30…制御棒案内管、31…制御棒駆動機構ハウジング、32…コンクリートマット、33…γ線遮蔽体、34…ペデスタル開口、35…内部空間、36…制御棒駆動機構ハッチ、37…放射性廃棄物処理建屋、38…原子炉格納容器外側の領域、39…運転床、40…燃料貯蔵プール。
図1
図2
図3