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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117388
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】燃料噴射装置および往復動内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 43/00 20060101AFI20240822BHJP
   F02D 19/08 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
F02M43/00
F02D19/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023457
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】村田 聡
(72)【発明者】
【氏名】柿元 泰
(72)【発明者】
【氏名】大場 啓道
【テーマコード(参考)】
3G066
3G092
【Fターム(参考)】
3G066AA16
3G066AB02
3G066AB04
3G066AB05
3G066BA01
3G092AA02
3G092AB03
3G092AB05
3G092AB07
3G092AC10
3G092FA24
(57)【要約】
【課題】燃料噴射装置および往復動内燃機関において、第1燃料と第2燃料との混合を抑制することで高精度な燃料噴射を可能として排ガスに含まれる有害物質の低減を図る。
【解決手段】所定の着火性を有する第1燃料を供給する第1燃料供給経路と、第1燃料より着火性の低い第2燃料を供給する第2燃料供給経路と、第1燃料供給経路および第2燃料供給経路が接続される燃料噴射弁と、第1燃料供給経路と第2燃料供給経路との間に設けられて第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧により移動するピストンを有するピストン機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の着火性を有する第1燃料を供給する第1燃料供給経路と、
前記第1燃料より着火性の低い第2燃料を供給する第2燃料供給経路と、
前記第1燃料供給経路および前記第2燃料供給経路が接続される燃料噴射弁と、
前記第1燃料供給経路と前記第2燃料供給経路との間に設けられて前記第1燃料の第1供給圧力と前記第2燃料の第2供給圧力との差圧により移動するピストンを有するピストン機構と、
を備える燃料噴射装置。
【請求項2】
前記ピストン機構は、前記第1燃料供給経路に連通して前記第1燃料を貯留する第1貯留部と、前記第2燃料供給経路に連通して前記第2燃料を貯留する第2貯留部とを有する、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記燃料噴射弁は、針弁を有し、前記ピストン機構は、前記第2供給圧力が前記第1供給圧力より高いときに、所定量の前記第2燃料を前記第2貯留部に貯留可能であり、前記第1供給圧力が前記第2供給圧力より高いときに、前記第1燃料を前記第1燃料供給経路から前記針弁に供給可能であると共に、前記第2貯留部の前記第2燃料を前記針弁に供給可能である、
請求項2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記第1燃料を加圧して前記第1燃料供給経路に供給する第1供給ポンプと、前記第2燃料を加圧して前記第2燃料供給経路に供給する第2供給ポンプとを有し、前記第2供給ポンプの作動時に前記第2燃料を前記第2貯留部に貯留し、前記第1供給ポンプの作動時に前記第1燃料を前記第1燃料供給経路から前記針弁に供給すると共に、前記第2貯留部の前記第2燃料を前記針弁に供給する、
請求項3に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記第1燃料の前記第1供給ポンプ側への逆流を阻止する逆止弁が前記第1燃料供給経路に設けられると共に、前記第2供給圧力が前記第1供給圧力より高いときに、前記第1燃料が前記逆止弁を迂回して前記第1供給ポンプ側に返送される返送経路が設けられる、
請求項4に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
前記第1供給圧力が前記第2供給圧力より高いときに、前記第2貯留部に貯留された前記第2燃料の前記第2供給ポンプ側への逆流を阻止する逆止弁が前記第2燃料供給経路に設けられる、
請求項4に記載の燃料噴射装置。
【請求項7】
前記ピストン機構は、前記第1燃料供給経路と前記第2燃料供給経路との間に設けられるシリンダと、前記シリンダに移動自在に支持されるピストンとを有し、前記シリンダまたは前記ピストンは、ロッド部を有し、前記ピストンは、前記ロッド部が位置する一端部に前記第1供給圧力が作用する第1受圧面が形成され、他端部に前記第2供給圧力が作用する第2受圧面が形成され、第1受圧面の面積が第2受圧面の面積より小さい、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項8】
前記燃料噴射弁は、前記第1燃料供給経路が接続される第1針弁と、前記第2燃料供給経路が接続される第2針弁とを有する、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項9】
前記ピストンは、移動方向の一端部に前記第1供給圧力が作用する第1受圧面が形成され、移動方向の他端部に前記第2供給圧力が作用する第2受圧面が形成され、第1受圧面の面積が第2受圧面の面積より小さく、前記第1供給圧力を前記第2針弁の摺動シール部に作用させるシール経路が設けられる、
請求項8に記載の燃料噴射装置。
【請求項10】
前記ピストン機構と前記第1針弁との間の前記第1燃料供給経路に前記第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタが設けられる、
請求項8に記載の燃料噴射装置。
【請求項11】
前記ピストンが前記第2燃料供給経路側に移動する移動終期に、前記第1燃料供給経路における前記第1フローリミッタの下流側と上流側とを連通する連通経路が設けられる、
請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項12】
前記第1フローリミッタの作動時期を調整する第1フローリミッタ調整弁が設けられる、
請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項13】
前記ピストンは、移動方向の一端部に前記第1供給圧力が作用する第1受圧面が形成され、第1受圧面は、前記ピストンの径方向に対して傾斜する傾斜面をなすと共に、前記ピストンを回動する駆動部が設けられる、
請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項14】
前記第1燃料供給経路から前記ピストン機構を迂回して前記第1燃料を供給する第3燃料供給経路が設けられ、前記燃料噴射弁は、前記第3燃料供給経路が接続される第3針弁を有し、前記ピストン機構に供給される前記第1燃料の供給量と前記第3燃料供給経路に供給される前記第1燃料の供給量とを調整する分配弁が設けられる、
請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項15】
前記第1燃料供給経路から前記ピストン機構を迂回して前記第1燃料を供給する第3燃料供給経路が設けられ、前記燃料噴射弁は、前記第3燃料供給経路が接続される第3針弁を有し、前記第3燃料供給経路に前記第1燃料の供給を制限する第2フローリミッタが設けられると共に、前記第2フローリミッタの作動時期を調整する第2フローリミッタ調整弁が設けられる、
請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項16】
前記燃料噴射弁は、針弁を有し、前記第1燃料供給経路と前記第2燃料供給経路は、前記ピストン機構より下流側で合流してから前記針弁に接続され、前記ピストン機構は、前記ピストンが前記第2燃料供給経路側に移動する移動終期に前記第1燃料供給経路が前記針弁に連通され、前記第1燃料供給経路は、前記ピストン機構と前記針弁との間に前記第1燃料の逆流を防止する逆止弁が設けられる、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項17】
前記燃料噴射弁は、針弁を有し、前記第1燃料供給経路と前記第2燃料供給経路は、前記ピストン機構より下流側で合流してから前記針弁に接続され、前記ピストンは、移動方向の一端部に前記第1供給圧力が作用する第1受圧面が形成され、移動方向の他端部に前記第2供給圧力が作用する第2受圧面が形成され、第1受圧面の面積が第2受圧面の面積より小さい、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項18】
前記第1燃料供給経路に前記ピストン機構を迂回する迂回経路が設けられ、前記迂回経路に前記第1燃料の供給量を調整する流量調整弁が設けられる、
請求項16または請求項17に記載の燃料噴射装置。
【請求項19】
前記第1燃料供給経路に前記ピストン機構を迂回する迂回経路が設けられ、前記迂回経路にフローリミッタが設けられる、
請求項16または請求項17に記載の燃料噴射装置。
【請求項20】
前記第1燃料を加圧して前記第1燃料供給経路に供給する第1供給ポンプを有し、前記第1燃料供給経路は、前記第1燃料の前記第1供給ポンプ側への逆流を阻止する逆止弁が設けられると共に、前記逆止弁より下流側の前記第1燃料を排出して前記第1供給圧力を低下させる残圧調整弁が設けられる、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項21】
前記第1燃料を加圧して前記第1燃料供給経路に供給する第1供給ポンプを有し、前記第1燃料供給経路は、前記第1燃料の前記第1供給ポンプ側への逆流を阻止する第1逆止弁が設けられ、前記第2燃料供給経路は、前記第2燃料の第2燃料供給源側への逆流を阻止する第2逆止弁が設けられ、前記第2逆止弁の開放圧が前記第1逆止弁の開放圧より低く設定される、
請求項7に記載の燃料噴射装置。
【請求項22】
前記ピストン機構は、前記ピストンにおける前記ロッド部の基端部に膨出部が設けられ、前記シリンダにおける前記第1燃料供給経路側にシート部が設けられ、前記ピストンが前記第1燃料供給経路側に移動して前記膨出部がシート部に当接することで、前記第1燃料供給経路との連通を遮断する、
請求項21に記載の燃料噴射装置。
【請求項23】
前記第2燃料供給経路は、前記第2逆止弁より上流側に前記第2燃料より低圧の掃徐用ガスを供給するガス供給源が接続されると共に、前記逆止弁より上流側の圧力が閉止方向に作用する受圧面積が、前記逆止弁より下流の圧力が開放方向に作用する受圧面積よりも大きいドレン弁が設けられる、
請求項21に記載の燃料噴射装置。
【請求項24】
燃焼室を有する内燃機関本体と、
前記燃焼室に燃料を噴射する請求項1に記載の燃料噴射装置と、
を備える往復動内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料噴射装置および往復動内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
往復動内燃機関は、燃料噴射装置が搭載される。往復動内燃機関は、燃料噴射装置が燃焼室の高圧空気に燃料を噴射することで燃焼し、発生した燃焼エネルギにより駆動する。近年、燃料噴射装置に適用される燃料として、有害物質(例えば、二酸化炭素など)の発生量が少ないカーボンフリーの燃料を使用することが考えられている。ところが、カーボンフリーの燃料には、着火性や燃焼性が悪いものがあり、着火性や燃焼性の良い燃料と併用することが提案されている。複数種類の燃料を噴射する燃料噴射装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された燃料噴射装置は、第1燃料としての化石燃料と第2燃料としての代替燃料を層状に噴射するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-180567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の燃料噴射装置は、第1燃料を圧送する燃料ポンプが燃料噴射管を介して燃料噴射弁に接続され、第2燃料を圧送する注入ポンプが注入管を介して燃料噴射弁に接続される。従来の燃料噴射装置は、このような構成により、燃料の切替え時に第1燃料と第2燃料とが混合しやすく、第1燃料と第2燃料の噴射割合を高精度に調整することが困難であるという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、第1燃料と第2燃料との混合を抑制することで高精度な燃料噴射を可能として排ガスに含まれる有害物質の低減を図る燃料噴射装置および往復動内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の燃料噴射装置は、所定の着火性を有する第1燃料を供給する第1燃料供給経路と、前記第1燃料より着火性の低い第2燃料を供給する第2燃料供給経路と、前記第1燃料供給経路および前記第2燃料供給経路が接続される燃料噴射弁と、前記第1燃料供給経路と前記第2燃料供給経路との間に設けられて前記第1燃料の第1供給圧力と前記第2燃料の第2供給圧力との差圧により移動するピストンを有するピストン機構と、を備える。
【0007】
また、本開示の往復動内燃機関は、燃焼室を有する内燃機関本体と、前記燃焼室に燃料を噴射する請求項1に記載の燃料噴射装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃料噴射装置および往復動内燃機関によれば、第1燃料と第2燃料との混合を抑制することで、高精度な燃料噴射を可能として排ガスに含まれる有害物質の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の舶用ディーゼルエンジンを表す概略図である。
図2図2は、第1実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図3図3は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図4図4は、第2実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図5図5は、第3実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図6図6は、第4実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図7図7は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図8図8は、第5実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図9図9は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図10図10は、第6実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図11図11は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図12図12は、第7実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図13図13は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図14図14は、第8実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図15図15は、第9実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図16図16は、第10実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図17図17は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図18図18は、第11実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図19図19は、第12実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図20図20は、第13実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図21図21は、第14実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図22図22は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図23図23は、第15実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図24図24は、第16実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図25図25は、ピストン機構の変形例を表す概略図である。
図26図26は、第17実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図27図27は、第18実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
図28図28は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
図29図29は、第19実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
<舶用ディーゼルエンジン>
図1は、第1実施形態の舶用ディーゼルエンジンを表す概略図である。なお、第1実施形態では、往復動内燃機関として舶用ディーゼルエンジンを適用して説明する。但し、往復動内燃機関は、舶用ディーゼルエンジンに限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン10は、例えば、船舶推進用の主機関として用いられ、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式のクロスヘッド式内燃機関である。
【0013】
舶用ディーゼルエンジン10は、ディーゼルエンジン本体(内燃機関本体)11を有する。ディーゼルエンジン本体11は、シリンダライナ12と、ピストン13と、掃気トランク14と、排気マニホールド15と、排気弁16とを備える。
【0014】
シリンダライナ12は、円筒形状をなし、シリンダジャケット(図示略)の内部に配置され、上部にシリンダカバー21が固定される。ピストン13は、円柱形状をなし、シリンダライナ12の内部に配置され、軸方向に沿って移動自在に支持される。ピストン13は、下端部にピストン棒22の上端部が連結される。図示しないが、クランクシャフトは、ディーゼルエンジン本体11の下部に回転自在に支持され、クランクを介して連接棒の下端部が回動自在に連結される。ディーゼルエンジン本体11は、クロスヘッドが上下方向に沿って移動自在に支持され、クロスヘッドは、ピストン棒22の下端部と連接棒の上端部が回動自在に連結される。
【0015】
掃気トランク14は、シリンダライナ12の下部に連結される。シリンダライナ12は、複数の掃気ポート23を介して掃気トランク14の内部に連通する。掃気トランク14は、吸気管24を介して空気が供給される。
【0016】
シリンダライナ12は、シリンダカバー21が固定された上空間部がピストン13の上面により区画されることで、燃焼室25が形成される。排気マニホールド15は、排気管26を介してシリンダカバー21が連結される。すなわち、燃焼室25は、排気管26を介して排気マニホールド15に連通する。シリンダカバー21は、排気弁16が設けられる。排気弁16は、動弁装置27により駆動することで、排気管26を開閉可能である。排気弁16が排気管26を開放すると、燃焼室25は、排気管26を介して排気マニホールド15に連通する。
【0017】
また、舶用ディーゼルエンジン10は、燃料噴射装置17を備える。燃料噴射装置17は、燃料供給装置31と、燃料供給経路32と、燃料噴射弁33とを有する。燃料噴射弁33は、シリンダカバー21に装着される。燃料噴射弁33は、燃焼室25に燃料を噴射することができる。燃料噴射弁33は、燃料供給経路32を介して燃料供給装置31が連結される。燃料供給装置31は、燃料タンク(図示略)に貯留された燃料を燃料供給経路32により燃料噴射弁33に供給可能である。
【0018】
まず、ピストン13が下死点(図1の実線位置)に移動すると、掃気ポート23が開いて掃気トランク14の空気が掃気ポート23から燃焼室25に導入される。次に、ピストン13が上昇すると、掃気ポート23と燃焼室25との導通がピストン13により遮断される。このとき、動弁装置27により排気弁16が上昇し、排気管26が閉止されており、ピストン13の上昇により燃焼室25の空気が圧縮される。そして、ピストン13が上死点(図1の二点鎖線位置)まで移動すると、燃焼室25の圧力が所定の圧縮圧力になり、燃料噴射弁33が作動して燃焼室25に燃料を噴射する。すると、燃焼室25で空気と燃料が混合して燃焼し、燃焼エネルギによりピストン13が下降する。このとき、動弁装置27により排気弁16が下降することで、排気管26が開放される。すると、燃焼によって生じた排ガスが燃焼室25から排気管26を通して排気マニホールド15に押し出されて排出される。
【0019】
<燃料噴射装置の構成>
図2は、第1実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。
【0020】
図2に示すように、燃料噴射装置17は、燃料供給装置31と、燃料供給経路32と、燃料噴射弁33とを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32は、第1燃料供給経路43と、第2燃料供給経路44とを有する。燃料噴射弁33は、第1針弁45と、第2針弁46とを有する。また、燃料噴射装置17は、ピストン機構47を備える。
【0021】
燃料噴射装置17は、所定の着火性を有する第1燃料を噴射することができると共に、第1燃料より着火性の低い(悪い)第2燃料を噴射することができる。ここで、着火性とは、第1燃料や第2燃料の着火し易さであり、燃焼性と称することもできる。そして、第1燃料は、化石燃料(例えば、ディーゼル燃料としての軽油や重油など)であり、第2燃料は、例えば、アンモニア、メタノール、液化石油ガス(LPG)などである。但し、第1燃料と第2燃料は、上述した燃料に限定されるものではない。
【0022】
第1燃料供給経路43は、第1燃料の供給方向の上流側端部に第1燃料供給源50が接続される。第1燃料供給源50は、例えば、第1燃料の蓄圧部と、第1燃料を加圧する加圧ポンプとから構成される。第1燃料供給源50は、例えば、1MPaの第1燃料を第1燃料供給経路43の上流側に供給する。第1供給ポンプ41は、第1燃料供給源50より下流側の第1燃料供給経路43に接続される。第1供給ポンプ41は、第1燃料供給経路43の上流側の第1燃料を所定圧(例えば、80MPa)に加圧し、第1燃料供給経路43の下流側に供給する。
【0023】
第1供給ポンプ41は、ピストン51と、プランジャ52とを有する。ピストン51とプランジャ52は、互いに接続され、プランジャ52が第1燃料供給経路43に接続される。ピストン51は、第1作動油供給経路53により作動流体源54が接続され、第1作動油供給経路53は、第1電磁弁55が設けられる。作動流体源54は、所定圧(例えば、30MPa)の作動流体を第1作動油供給経路53に供給する。第1供給ポンプ41は、ピストン51の受圧面積に対して、プランジャ52の受圧面積が小さく設定されており、増圧ポンプとして機能する。また、第1電磁弁55は、制御部56が接続され、制御部56からの指令により開閉動作する。
【0024】
第1電磁弁55が開放されると、作動流体源54の作動流体が第1作動油供給経路53を通してピストン51に供給される。ピストン51は、作動流体の供給を受けて作動し、プランジャ52を作動する。すると、第1供給ポンプ41は、第1燃料供給経路43の第1燃料を加圧する。このとき、第1供給ポンプ41は、作動流体の加圧力を増圧して作動することから、第1燃料を所定圧(例えば、80MPa)に加圧する。
【0025】
第2燃料供給経路44は、第2燃料の供給方向の上流側端部に第2燃料供給源60が接続される。第2燃料供給源60は、例えば、第2燃料の蓄圧部と、第2燃料を加圧する加圧ポンプとから構成される。第2燃料供給源60は、例えば、10MPaの第2燃料を第2燃料供給経路44の上流側に供給する。第2供給ポンプ42は、第2燃料供給源60より下流側の第2燃料供給経路44に接続される。第2供給ポンプ42は、第2燃料供給経路44の上流側の第2燃料を所定圧(例えば、15MPa)に加圧し、第2燃料供給経路44の下流側に供給する。
【0026】
第2供給ポンプ42は、ピストン61と、プランジャ62とを有する。ピストン61とプランジャ62は、互いに接続され、プランジャ62が第2燃料供給経路44に接続される。ピストン61は、第2作動油供給経路63により作動流体源54が接続され、第2作動油供給経路63は、第2電磁弁65が設けられる。なお、作動流体源54は、第1供給ポンプ41と兼用しているが、専用のものとしてもよい。第2供給ポンプ42は、第2燃料特性(例えば、飽和蒸気圧力など)に合わせて決められる所定の供給圧力となるように、ピストン61の受圧面積に対してプランジャ62の受圧面積が設定されており、増圧ポンプまたは減圧ポンプとして機能する。また、第2電磁弁65は、制御部56が接続され、制御部56からの指令により開閉動作する。
【0027】
第2電磁弁65が開放されると、作動流体源54の作動流体が第2作動油供給経路63を通してピストン61に供給される。ピストン61は、作動流体の供給を受けて作動し、プランジャ62を作動する。すると、第2供給ポンプ42は、第2燃料供給経路44の第2燃料を加圧する。このとき、第2供給ポンプ42は、作動流体の加圧力を減圧して作動することから、第2燃料を所定圧(例えば、15MPa)に加圧する。
【0028】
第1燃料供給経路43は、下流側端部が第1針弁45に接続される。第1針弁45は、弁体45aと、付勢ばね45bと、チャンバ45cと、燃料供給路45dと、噴孔45eとを有する。第1燃料供給経路43は、チャンバ45cに接続される。チャンバ45cは、燃料供給路45dに連通し、燃料供給路45dは、先端部に噴孔45eが形成される。弁体45aは、付勢ばね45bの付勢力により着座することで、チャンバ45cと燃料供給路45dとの連通を遮断する。第1針弁45は、所定の第1噴射圧力(例えば、40MPa)が設定されている。そのため、第1針弁45は、第1燃料供給経路43から第1噴射圧力より高圧の第1燃料がチャンバ45cに供給されると、弁体45aが付勢ばね45bの付勢力に抗して上昇し、チャンバ45cと燃料供給路45dとを連通する。すると、チャンバ45cに供給された第1燃料は、燃料供給路45dに流動し、噴孔45eから噴射される。
【0029】
第2燃料供給経路44は、下流側端部が第2針弁46に接続される。第2針弁46は、弁体46aと、付勢ばね46bと、チャンバ46cと、燃料供給路46dと、噴孔46eとを有する。第2燃料供給経路44は、チャンバ46cに接続される。チャンバ46cは、燃料供給路46dに連通し、燃料供給路46dは、先端部に噴孔46eが形成される。弁体46aは、付勢ばね46bの付勢力により着座することで、チャンバ46cと燃料供給路46dとの連通を遮断する。第2針弁46は、所定の第2噴射圧力(例えば、40MPa)が設定されている。そのため、第2針弁46は、第2燃料供給経路44から第2噴射圧力より高圧の第2燃料がチャンバ46cに供給されると、弁体46aが付勢ばね46bの付勢力に抗して上昇し、チャンバ46cと燃料供給路46dとを連通する。すると、チャンバ46cに供給された第2燃料は、燃料供給路46dに流動し、噴孔46eから噴射される。
【0030】
ピストン機構47は、第1燃料供給経路43と第2燃料供給経路44との間に設けられる。ピストン機構47は、円筒形状をなすシリンダ71と、円柱形状をなすピストン72とを有する。ピストン72は、シリンダ71の内部に配置され、軸方向に沿って移動自在に支持される。シリンダ71は、ピストン72の移動方向の一端部が第1燃料供給経路43に連通し、ピストン72の移動方向の他端部が第2燃料供給経路44に連通する。ピストン72は、第1燃料供給経路43側に第1受圧面72aが形成され、第2燃料供給経路44側に第2受圧面72bが形成される。ピストン72は、第1受圧面72aに第1燃料供給経路43の第1供給圧力が作用し、第2受圧面72bに第2燃料供給経路44の第2供給圧力が作用する。ピストン機構47は、第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧によりピストン72が往復移動する。
【0031】
ピストン機構47は、ピストン72の軸方向の長さがシリンダ71の軸方向の長さより短い。そのため、ピストン機構47は、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43に連通して第1燃料を貯留する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44に連通して第2燃料を貯留する第2貯留部74が設けられる。ピストン72は、シリンダ71の内部で移動自在であるが、図示しないストッパにより往復移動量が制限される。すなわち、ピストン72は、最も第1燃料供給経路43側に移動したとき、第1受圧面72aとシリンダ71の一端部との間に隙間が確保され、この隙間を含む第1貯留部73が確保される。一方、ピストン72は、最も第2燃料供給経路44側に移動したとき、第2受圧面72bとシリンダ71の他端部との間に隙間が確保され、この隙間を含む第2貯留部74が確保される。
【0032】
第2供給ポンプ42が作動し、第1供給ポンプ41が停止状態にあると、第2燃料供給経路44の第2燃料の第2供給圧力が、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力より高くなる。このとき、ピストン機構47は、ピストン72が第1燃料供給経路43側に移動し、所定量の第2燃料を第2貯留部74に貯留する。一方、第1供給ポンプ41が作動し、第2供給ポンプ42が停止状態にあると、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力が、第2燃料供給経路44の第2燃料の第2供給圧力より高くなる。このとき、ピストン機構47は、ピストン72が第2燃料供給経路44側に移動し、第1燃料を第1燃料供給経路43から第1針弁45に供給すると共に、第2貯留部74の第2燃料を第2針弁46に供給する。そして、第1針弁45は、第1供給圧力が第1噴射圧力を超えると第1燃料を噴射し、第2針弁46は、第2供給圧力が第2噴射圧力を超えると第2燃料を噴射する。
【0033】
第1燃料供給経路43は、第1供給ポンプ41の接続部とピストン機構47の接続部との間に逆止弁81が設けられる。逆止弁81は、ピストン機構47側から第1供給ポンプ41側への第1燃料の逆流を阻止する。なお、逆止弁81は、第1供給ポンプ41側からピストン機構47側への開放圧(例えば、15MPa)が設定される。また、第1燃料供給経路43は、第1供給ポンプ41の接続部より上流側に逆止弁87が設けられる。逆止弁87は、第1供給ポンプ41の接続部側から第1燃料供給源50側への第1燃料の逆流を阻止する。なお、逆止弁87は、第1燃料供給源50側から第1供給ポンプ41側への開放圧(例えば、10MPa)が設定される。また、第1燃料供給経路43は、逆止弁81,87および第1供給ポンプ41を迂回する返送経路82が設けられ、返送経路82は、逆止弁83が設けられる。逆止弁83は、第1供給ポンプ41が停止し、逆止弁81より下流側の圧力(例えば、第2燃料供給経路44の第2燃料の第2供給圧力)が、逆止弁81より上流側の圧力に逆止弁83のばね力を加えた圧力より開放され、ピストン機構47側の第1燃料供給経路43の第1燃料が逆止弁81を迂回して返送される。なお、逆止弁83は、ピストン機構47側から第1供給ポンプ41側への開放圧(例えば、20MPa)が設定される。
【0034】
第2燃料供給経路44は、第2供給ポンプ42の接続部とピストン機構47の接続部との間に逆止弁84,85が設けられる。逆止弁84,85は、ピストン機構47側から第2供給ポンプ42側への第2燃料の逆流を阻止する。つまり、逆止弁84,85は、第1供給圧力が第2供給圧力より高いときに閉止し、第2貯留部74に貯留された第2燃料の第2供給ポンプ42側への逆流を阻止する。なお、逆止弁84,85は、第2供給ポンプ42側からピストン機構47側への開放圧(例えば、15MPa)が設定される。また、第2燃料供給経路44は、第2供給ポンプ42の接続部と第2燃料供給源60との間に逆止弁86が設けられる。逆止弁86は、第2供給ポンプ42側から第2燃料供給源60側への第2燃料の逆流を阻止する。なお、逆止弁86は、第2燃料供給源60側から第2供給ポンプ42側への開放圧(例えば、10MPa)が設定される。
【0035】
<燃料噴射装置の作動>
図3は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。
【0036】
図2および図3に示すように、クランク角度a1にて、第2供給ポンプ42の作動を開始する。第2供給ポンプ42が作動すると、第2供給ポンプ42のリフト量が増加し、第2燃料が加圧されて第2燃料供給経路44に供給される。すると、クランク角度a2にて、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力が上昇する。このとき、第2燃料供給経路44における第2燃料の第2供給圧力が第2受圧面72bに作用し、ピストン72のリフト量が増加してピストン72が第1燃料供給経路43側に移動する。そのため、ピストン機構47は、第2貯留部74の容積が増大し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。
【0037】
また、ピストン72が第1燃料供給経路43側に移動するため、クランク角度a2にて、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。そして、クランク角度a3にて、第2供給ポンプ42の作動を停止し、第2供給ポンプ42のリフト量が低下する。第2供給ポンプ42が停止すると、クランク角度a4にて、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力が低下する。また、第1燃料供給経路43の圧力が上昇すると、逆止弁83が開放されて第1燃料が返送され、クランク角度a4にて、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が低下する。
【0038】
クランク角度a5にて、第1供給ポンプ41の作動を開始する。第1供給ポンプ41が作動すると、第1供給ポンプ41のリフト量が増加し、第1燃料が加圧されて第1燃料供給経路43に供給される。すると、クランク角度a6にて、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。そして、第1燃料供給経路43における第1燃料の第1供給圧力が第1受圧面72aに作用し、ピストン72のリフト量が減少してピストン72が第2燃料供給経路44側に移動する。
【0039】
ピストン72が第2燃料供給経路44側に移動すると、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力も上昇する。そして、クランク角度a7にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、開放状態となって第1燃料の噴射を開始する。また、第2燃料供給経路44の圧力が上昇し、クランク角度a7にて、第2燃料供給経路44の第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力を超えると、第2針弁46は、開放状態となって第2燃料の噴射を開始する。
【0040】
その後、クランク角度a9にて、第1供給ポンプ41の作動を停止する。第1供給ポンプ41が停止すると、第1供給ポンプ41のリフト量が減少し、第1燃料の第1燃料供給経路43への供給が停止する。すると、第1燃料供給経路43における第1燃料の第1供給圧力が低下し、ピストン72の移動が停止する。
【0041】
第1供給ポンプ41が停止すると、逆止弁81,83より上流側の第1燃料供給経路43の圧力が低下し、逆止弁83が開放されて第1燃料が返送され、クランク角度a12にて、第1針弁45の上流側圧力、つまり、第1燃料供給経路43の圧力が低下する。このとき、クランク角度a11にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力より低くなり、第1針弁45は、閉止状態となって第1燃料の噴射を停止する。また、ピストン72が第2燃料供給経路44側に到達すると、第2針弁46への第2燃料の供給が停止し、クランク角度a10にて、第2燃料供給経路44の第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力より低くなり、第2針弁46は、閉止状態となって第2燃料の噴射を停止する。
【0042】
第1実施形態にて、燃料噴射装置17は、第1針弁45が所定のクランク角度範囲T1に第1燃料を噴射し、第2針弁46が所定のクランク角度範囲T2に第2燃料を噴射する。この場合、第1針弁45のクランク角度範囲T1と、第2針弁46のクランク角度範囲T2は、燃料噴射の開始時期が同じであるが、燃料噴射の終了時期が異なる。すなわち、第2針弁46による第2燃料の噴射終了時期が、第1針弁45による第1燃料の噴射終了時期より早い。但し、燃料噴射の開始時期や終了時期は、上述したものに限定されない。なお、第1針弁45および第2針弁46の燃料噴射の開始時期と終了時期は、任意に設定することができる。例えば、第2針弁46の第2噴射圧力を第1針弁45の第1噴射圧力より高く設定することで、第2針弁46による第2燃料の噴射開始時期を、第1針弁45による第1燃料の噴射開始時期より遅くすることができる。
【0043】
そのため、燃料噴射装置17は、着火性の良い第1燃料の噴射中に、着火性の悪い第2燃料を噴射することとなる。すなわち、燃料噴射装置17は、第1燃料の噴射量を低減して第2燃料の噴射量を増加させる。第2燃料は、着火性の悪いものの、二酸化炭素が発生しないカーボンフリーの燃料であり、有害物質(例えば、二酸化炭素など)の発生を抑制することができる。そして、着火性の悪い第2燃料と共に、着火性の良い第1燃料を噴射する。その結果、燃料噴射装置17は、第1燃料の着火が火種となって第2燃料が着火して燃焼するため、燃焼性の低下が抑制される。
【0044】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
図4に示すように、燃料噴射装置17Aは、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42と、第1燃料供給経路43および第2燃料供給経路44と、第1針弁45および第2針弁46と、ピストン機構47Aとを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第1針弁45、第2針弁46は、第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0046】
ピストン機構47Aは、第1燃料供給経路43と第2燃料供給経路44との間に設けられる。ピストン機構47Aは、円筒形状をなすシリンダ71Aと、円柱形状をなすピストン72Aとを有する。シリンダ71Aは、段付きシリンダであって、細径部91と、大径部92とを有する。ピストン72Aは、段付きピストンであって、細径部93と、大径部94とを有する。ピストン72Aは、シリンダ71Aの内部に配置され、軸方向に沿って移動自在に支持される。ピストン72Aは、細径部93がシリンダ71Aの細径部91に支持され、大径部94が大径部92に支持される。そして、ピストン機構47Aは、シリンダ71Aとピストン72Aとの軸方向の中間部に円筒形状をなす空間部95が形成される。そして、ドレン経路96の一端部が空間部95に連通する。空間部95は、ピストン72Aの移動時、第1貯留部73と第2貯留部74が連通することから、第1燃料と第2燃料が流入して混ざる。ドレン経路96は、空間部95で混ざった第1燃料と第2燃料を外部に排出して回収する。
【0047】
シリンダ71Aは、ピストン72Aの移動方向の一端部が第1燃料供給経路43に連通し、ピストン72Aの移動方向の他端部が第2燃料供給経路44に連通する。ピストン72Aは、第1燃料供給経路43側に第1受圧面72aが形成され、第2燃料供給経路44側に第2受圧面72bが形成される。ピストン72Aは、第1受圧面72aに第1燃料供給経路43の第1供給圧力が作用し、第2受圧面72bに第2燃料供給経路44の第2供給圧力が作用する。ピストン機構47Aは、第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧によりピストン72Aが往復移動する。
【0048】
ピストン72Aは、段付きピストンであり、細径部93側に第1受圧面72aが形成され、大径部94側に第2受圧面72bが形成される。そのため、ピストン72Aは、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。ピストン機構47Aは、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43に連通する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44に連通する第2貯留部74が設けられる。ピストン機構47Aは、第1受圧面72aと第2受圧面72bとの面積差により、第1貯留部73を介して第1燃料供給経路43に作用する第1供給圧力が、第2貯留部74を介して第2燃料供給経路44に作用する第2供給圧力より高くなる。
【0049】
第2針弁46は、弁体46aがシリンダ(図示略)に移動自在に支持される。第2針弁46は、弁体46aの外周面とシリンダの内周面との間に移動用のクリアランスが確保され、クリアランスに第2燃料が漏れる。第2針弁46から漏れた第2燃料は、回収することが好ましいが、第2燃料がアンモニアであった場合、気化して有毒ガスになるため、回収が困難となる。そのため、第1燃料供給経路43の第1燃料を弁体46aとシリンダとの摺動シール部46fに供給するシール経路97を設ける。摺動シール部46fは、シール経路97により第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力が作用する。ここで、第2針弁46は、弁体46aに第2燃料供給経路44の第2燃料の第2供給圧力が作用するが、第1供給圧力が第2供給圧力より高いことから、第2燃料の漏れが抑制される。
【0050】
なお、燃料噴射装置17Aの作動は、第1実施形態の燃料噴射装置17とほぼ同様であり、説明は省略する。
【0051】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図5に示すように、燃料噴射装置17Bは、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42と、第1燃料供給経路43および第2燃料供給経路44と、第1針弁45および第2針弁46と、ピストン機構47Bとを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第1針弁45、第2針弁46は、第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0053】
ピストン機構47Bは、第1燃料供給経路43と第2燃料供給経路44との間に設けられる。ピストン機構47Bは、円筒形状をなすシリンダ71と、円柱形状をなすピストン72Bとを有する。ピストン72Bは、ロッド付きピストンであって、細径のロッド部101と、大径の本体部102とを有する。ピストン72Bは、シリンダ71の内部に配置され、軸方向に沿って移動自在に支持される。ピストン72Bは、本体部102がシリンダ71に支持され、ロッド部101の端部がシリンダの外部に延出する。そして、ピストン機構47Bは、シリンダ71とピストン72Bのロッド部101との間に摺動部103が形成される。そして、ドレン経路104の一端部が摺動部103に連通する。摺動部103は、第1貯留部73が連通することから、第1燃料が漏れる。ドレン経路104は、摺動部103で漏れた第1燃料を外部に排出して回収する。ここで、第1燃料供給経路43の第1燃料の圧力が第2燃料供給経路44の第2燃料の圧力より高いことから、第2燃料供給経路44の第2燃料が第1燃料供給経路43側に流れて第1燃料に混入することがない。そのため、ドレン経路104から回収された第1燃料は、第2燃料を含まず、処理が容易になる。
【0054】
シリンダ71は、ピストン72Bの移動方向の一端部が第1燃料供給経路43に連通し、ピストン72Bの移動方向の他端部が第2燃料供給経路44に連通する。ピストン72Bは、本体部102の第1燃料供給経路43側に第1受圧面72aが形成され、第2燃料供給経路44側に第2受圧面72bが形成される。ピストン72Bは、第1受圧面72aに第1燃料供給経路43の第1供給圧力が作用し、第2受圧面72bに第2燃料供給経路44の第2供給圧力が作用する。ピストン機構47Bは、第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧によりピストン72Bが往復移動する。
【0055】
ピストン72Bは、ロッド付きピストンであり、本体部102の一方側に第1受圧面72aが形成され、他方側に第2受圧面72bが形成される。そのため、ピストン72Bは、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。ピストン機構47Bは、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43に連通する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44に連通する第2貯留部74が設けられる。ピストン機構47Bは、第1受圧面72aと第2受圧面72bとの面積差により、第1貯留部73を介して第1燃料供給経路43に作用する第1供給圧力が、第2貯留部74を介して第2燃料供給経路44に作用する第2供給圧力より高くなる。
【0056】
第1燃料供給経路43の第1燃料を弁体46aの摺動シール部46fに供給するシール経路97を設ける。シール経路97は、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力が作用する。第2針弁46は、弁体46aに第2燃料供給経路44の第2燃料の第2供給圧力が作用するが、第1供給圧力が第2供給圧力より高いことから、第2燃料の漏れが抑制される。
【0057】
なお、燃料噴射装置17Bの作動は、第1実施形態の燃料噴射装置17とほぼ同様であり、説明は省略する。
【0058】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図、図7は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。なお、上述した第3実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
図6に示すように、燃料噴射装置17Cは、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42と、第1燃料供給経路43および第2燃料供給経路44と、第1針弁45および第2針弁46と、ピストン機構47Bと、第1フローリミッタ110とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第1針弁45、第2針弁46、ピストン機構47Bは、第3実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0060】
第1燃料供給経路43は、ピストン機構47Bと第1針弁45との間に第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタ110が設けられる。第1フローリミッタ110は、ハウジング111と、弁体112と、供給流路113と、排出流路114と、連結流路115と、オリフィス116と、圧縮ばね117とを有する。
【0061】
ハウジング111は、中空形状をなす。弁体112は、ハウジング111の内部に配置され、軸方向(図6の上下方向)に沿って移動自在に支持される。供給流路113は、ハウジング111における上部に設けられ、ピストン機構47Bに連通された第1燃料供給経路43の下流側が連通する。排出流路114は、ハウジング111における下部に設けられ、第1針弁45に連通する第1燃料供給経路43の上流側が連通する。連結流路115は、弁体112の内部に設けられる。連結流路115は、供給流路113と排出流路114を連通可能である。オリフィス116は、連結流路115の中途部に設けられる。圧縮ばね117は、排出流路114に配置され、弁体112を上方に付勢し、供給流路113と連結流路115とが連通する位置に付勢支持する。
【0062】
第1フローリミッタ110は、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力が供給流路113を通して弁体112の上部に作用する。第1供給ポンプ41の作動が停止しているとき、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力は、低圧(例えば、20MPa)である。そのため、第1フローリミッタ110は、圧縮ばね117の付勢力が第1供給圧力に抗して弁体112を押し上げ、弁体112を供給流路113と連結流路115とが連通する位置に位置決めする。このとき、第1燃料の第1供給圧力は、第1針弁45に作用する。
【0063】
第1供給ポンプ41が作動すると、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力は、高圧(例えば、80MPa)になる。第1燃料は、第1フローリミッタ110の供給流路113から連結流路115、オリフィス116、排出流路114を介して第1針弁45に供給され、第1供給圧力が作用する。そして、第1供給圧力が第1噴射圧を超えると、第1針弁45は、第1燃料を噴射する。このとき、第1燃料は、オリフィス116を通ることから流量が制限され、供給流路113の圧力が増加する。そして、供給流路113における第1燃料の圧力が排出流路114における第1燃料の圧力より高くなると、両者の差圧により弁体112が圧縮ばね117の付勢力に抗して下方に押し下げられ、供給流路113と連結流路115との連通が遮断される。すると、供給流路113の第1燃料は、第1針弁45に供給されず、第1針弁45に作用する第1供給圧力が第1噴射圧より低くなり、第1針弁45による第1燃料の噴射が停止する。
【0064】
図6および図7に示すように、まず、第2供給ポンプ42が作動すると、第2燃料供給経路44の第2燃料が加圧され、高圧になった第2燃料の第2供給圧力が第2受圧面72bに作用し、ピストン72Bが第1燃料供給経路43側に移動する。そのため、ピストン機構47Bは、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。次に、第1供給ポンプ41が作動すると、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。そして、第1燃料供給経路43における第1燃料の第1供給圧力が第1受圧面72aに作用し、ピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動する。すると、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力も上昇する。
【0065】
そして、クランク角度a21にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、第1燃料の噴射を開始する。このとき、第2燃料供給経路44の第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力を超えると、第2針弁46は、第2燃料の噴射を開始する。そして、前述したように、第1フローリミッタ110が作動し、第1燃料が第1針弁45に供給されなくなると、クランク角度a22にて、第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力より低くなり、第1針弁45は、第1燃料の噴射を終了する。その後、第1供給ポンプ41が停止してピストン72Bの移動が停止すると、クランク角度a23にて、第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力より低くなり、第2針弁46は、第2燃料の噴射を終了する。
【0066】
第4実施形態にて、燃料噴射装置17Cは、第1針弁45が所定のクランク角度範囲T1に第1燃料を噴射し、第2針弁46が所定のクランク角度範囲T2に第2燃料を噴射する。この場合、第1針弁45のクランク角度範囲T1と、第2針弁46のクランク角度範囲T2は、燃料噴射の開始時期が同じであるが、燃料噴射の終了時期が異なる。すなわち、第1針弁45による第1燃料の噴射時期(クランク角度範囲T1)は、第2針弁46による第2燃料の噴射時期(クランク角度範囲T2)の初期だけである。
【0067】
そのため、燃料噴射装置17Cは、着火性の良い第1燃料と着火性の悪い第2燃料を同時に噴射し、着火性の良い第1燃料が着火した火炎が火種となって着火性の悪い第2燃料が着火すると、着火性の良い第1燃料の噴射を終了する。その結果、燃料噴射装置17Cは、第1燃料の噴射量を減少させることができる。
【0068】
[第5実施形態]
図8は、第5実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図、図9は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。なお、上述した第4実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
図8に示すように、燃料噴射装置17Dは、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42と、第1燃料供給経路43および第2燃料供給経路44と、第1針弁45および第2針弁46と、ピストン機構47Bと、第1フローリミッタ110と、連通経路120とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第1針弁45、第2針弁46、ピストン機構47B、第1フローリミッタ110は、第4実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0070】
第1燃料供給経路43は、ピストン機構47Bと第1針弁45との間に第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタ110が設けられる。第1フローリミッタ110は、ハウジング111と、弁体112と、供給流路113と、排出流路114と、連結流路115と、オリフィス116と、圧縮ばね117とを有する。
【0071】
連通経路120は、ピストン機構47Bのピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動する移動終期に、第1燃料供給経路43における第1フローリミッタ110の下流側と上流側とを連通する。連通経路120は、一端部が第1フローリミッタ110の排出流路114に連通し、他端部が第1貯留部73に連通可能である。すなわち、連通経路120は、他端部が第1貯留部73におけるシリンダ71の一端部から最も離間する位置に連結される。ピストン機構47Bは、ピストン72Bが第1燃料供給経路43側から第2燃料供給経路44側に移動する。連通経路120の他端部は、ピストン72Bが第1燃料供給経路43側に位置するときには第1貯留部73に連通しない。連通経路120の他端部は、ピストン72Bが第1燃料供給経路43側から第2燃料供給経路44側に移動し、最も第2燃料供給経路44側に到達したときに第1貯留部73に連通する。
【0072】
図8および図9に示すように、クランク角度a1にて、第2供給ポンプ42の作動を開始する。第2供給ポンプ42が作動すると、第2供給ポンプ42のリフト量が増加し、第2燃料が加圧されて第2燃料供給経路44に供給される。すると、クランク角度a2にて、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力が上昇すると共に、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。このとき、第2燃料供給経路44における第2燃料の第2供給圧力が第2受圧面72bに作用し、ピストン72Bのリフト量が増加してピストン72Bが第1燃料供給経路43側に移動する。そのため、ピストン機構47Bは、第2貯留部74の容積が増大し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。
【0073】
また、ピストン72Bが第1燃料供給経路43側に移動するため、クランク角度a2にて、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。そして、クランク角度a3にて、第2供給ポンプ42の作動を停止し、第2供給ポンプ42のリフト量が低下する。第2供給ポンプ42が停止すると、クランク角度a4にて、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力が低下する。また、第1燃料供給経路43の圧力が上昇すると、逆止弁83が開放されて第1燃料が返送され、クランク角度a4にて、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が低下する。
【0074】
クランク角度a5にて、第1供給ポンプ41の作動を開始する。第1供給ポンプ41が作動すると、第1供給ポンプ41のリフト量が増加し、第1燃料が加圧されて第1燃料供給経路43に供給される。すると、クランク角度a6にて、第1フローリミッタ110の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇すると共に、第1針弁45の上流側圧力、つまり、第1フローリミッタ110より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。そして、第1燃料供給経路43における第1燃料の第1供給圧力が第1受圧面72aに作用し、ピストン72Bのリフト量が減少してピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動する。
【0075】
ピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動すると、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力も上昇する。そして、クランク角度a7にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、開放状態となって第1燃料の噴射を開始する。また、第2燃料供給経路44の圧力が上昇し、クランク角度a7にて、第2燃料供給経路44の第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力を超えると、第2針弁46は、開放状態となって第2燃料の噴射を開始する。
【0076】
また、クランク角度a6にて、第1燃料供給経路43の圧力が上昇すると、第1フローリミッタ110が作動を開始してリフト量が低下する。そして、クランク角度a8にて、第1フローリミッタ110の上流側圧力および第1針弁45の上流側圧力が最大となり、その後、第1針弁45の上流側圧力が低下する。すなわち、第1フローリミッタ110が作動し、第1燃料が第1針弁45に供給されなくなることで、第1針弁45の上流側圧力が低下する。そして、クランク角度a9にて、第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力より低くなり、第1針弁45は、第1燃料の噴射を終了する。
【0077】
ピストン72Bは、第1燃料供給経路43側から第2燃料供給経路44側に移動し、クランク角度a10にて、ピストン72Bは、最も第2燃料供給経路44側に到達し、連通経路120により第1フローリミッタ110の排出流路114と第1貯留部73が連通する。すると、第1貯留部73の第1燃料がオリフィス116(第1フローリミッタ110)を迂回して第1針弁45に供給される。そのため、第1針弁45の上流側圧力、つまり、第1フローリミッタ110より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇し、第1フローリミッタ110のリフト量が上昇する。そして、クランク角度a11にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、開放状態となって第1燃料の噴射を再び開始する。
【0078】
その後、クランク角度a12にて、第1供給ポンプ41の作動を停止する。第1供給ポンプ41が停止すると、第1供給ポンプ41のリフト量が減少し、第1燃料の第1燃料供給経路43への供給が停止する。すると、第1燃料供給経路43における第1燃料の第1供給圧力が低下し、ピストン72Bの移動が停止する。第1供給ポンプ41が停止すると、クランク角度a13にて、第1針弁45の上流側圧力が最大となるが、逆止弁81,83より上流側の第1燃料供給経路43の圧力が低下し、逆止弁83が開放されて第1燃料が返送され、クランク角度a15にて、第1針弁45の上流側圧力、つまり、第1燃料供給経路43の圧力が低下する。このとき、クランク角度a14にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力より低くなり、第1針弁45は、閉止状態となって第1燃料の噴射を停止する。また、ピストン72Bが第2燃料供給経路44側に到達すると、第2針弁46への第2燃料の供給が停止し、クランク角度a13にて、第2針弁46の上流側圧力、つまり、第2燃料供給経路44の圧力が低下する。そのため、第2燃料供給経路44の第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力より低くなり、第2針弁46は、閉止状態となって第2燃料の噴射を停止する。
【0079】
第5実施形態にて、燃料噴射装置17Dは、第1針弁45が所定のクランク角度範囲T11,T12に第1燃料を噴射し、第2針弁46が所定のクランク角度範囲T2に第2燃料を噴射する。すなわち、第1針弁45による第1燃料の噴射時期(クランク角度範囲T11,T12)は、第2針弁46による第2燃料の噴射時期(クランク角度範囲T2)の初期と終期だけである。そのため、燃料噴射装置17Dは、着火性の良い第1燃料と着火性の悪い第2燃料を同時に噴射し、着火性の良い第1燃料が着火した火炎が火種となって着火性の悪い第2燃料が着火すると、着火性の良い第1燃料の噴射を終了する。また、燃料噴射装置17Dは、着火性の悪い第2燃料の燃焼終盤に、着火性の良い第1燃料を噴射することで、着火性の悪い第2燃料を完全燃焼させる。その結果、燃料噴射装置17Dは、第1燃料の噴射量を減少させることができると共に、燃焼性を向上することができる。
【0080】
[第6実施形態]
図10は、第6実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図、図11は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。なお、上述した第3実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0081】
図10に示すように、燃料噴射装置17Eは、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42と、第1燃料供給経路43および第2燃料供給経路44と、第1針弁45および第2針弁46と、ピストン機構47Bと、第1フローリミッタ130と、連通経路120とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第1針弁45、第2針弁46、ピストン機構47Bは、第3実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0082】
第1燃料供給経路43は、ピストン機構47Bと第1針弁45との間に第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタ130が設けられる。第1フローリミッタ130は、ハウジング131と、弁体132と、供給流路133と、排出流路134と、連結流路135と、可変絞り弁(第1フローリミッタ調整弁)136と、圧縮ばね137とを有する。
【0083】
ハウジング131は、中空形状をなす。弁体132は、ハウジング131の内部に配置され、軸方向(図10の上下方向)に沿って移動自在に支持される。供給流路133は、ハウジング131における上部に設けられ、ピストン機構47Bに連通された第1燃料供給経路43の下流側が連通する。排出流路134は、ハウジング131における下部に設けられ、第1燃料供給経路43により第1針弁45に連通する。連結流路135は、弁体132の外部に設けられる。連結流路135は、供給流路133の下流側、つまり、弁体132の着座シート部よりも下流の空間と、排出流路134の上流側を連通可能である。可変絞り弁136は、連結流路135の中途部に設けられる。圧縮ばね137は、排出流路134に配置され、弁体132を上方に付勢し、供給流路133と連結流路135とが連通する位置に付勢支持する。なお、連結流路135と可変絞り弁136は、弁体132の内部に設けられていてもよい。そして、可変絞り弁136は、制御部56より制御され、連結流路135の流路面積を調整可能である。
【0084】
連通経路120は、ピストン機構47Bのピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動する移動終期に、第1燃料供給経路43における第1フローリミッタ130の下流側と上流側とを連通する。連通経路120は、一端部が第1フローリミッタ130の排出流路134に連通し、他端部が第1貯留部73に連通可能である。
【0085】
第1フローリミッタ130は、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力が供給流路133を通して弁体132の上部に作用する。第1供給ポンプ41の作動が停止しているとき、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力は、低圧であり、逆止弁83により決まる(例えば、20MPa)。そのため、第1フローリミッタ130は、圧縮ばね137の付勢力が第1供給圧力に抗して弁体132を押し上げて着座する位置、つまり、供給流路133と連結流路135とが連通する位置に位置決めする。
【0086】
第1供給ポンプ41が作動すると、第1燃料供給経路43の第1燃料の第1供給圧力は、高圧(例えば、80MPa)になる。第1燃料は、第1フローリミッタ130の供給流路133から連結流路135、可変絞り弁136、排出流路134を介して第1針弁45に供給され、第1供給圧力が作用する。そして、第1供給圧力が第1噴射圧を超えると、第1針弁45は、第1燃料を噴射する。このとき、第1燃料は、可変絞り弁136を通ることから流量が制限され、供給流路133の圧力が増加する。そして、供給流路133における第1燃料の圧力が排出流路134における第1燃料の圧力より高くなると、両者の差圧により弁体132が圧縮ばね137の付勢力に抗して下方に押し下げられ、供給流路133と連結流路135との連通が遮断される。すると、供給流路133の第1燃料は、第1針弁45に供給されず、第1針弁45に作用する第1供給圧力が第1噴射圧より低くなり、第1針弁45による第1燃料の噴射が停止する。このとき、可変絞り弁136の開度(連結流路135の流路面積)を調整することで、第1針弁45による第1燃料の噴射停止時期を調整することができる。
【0087】
図10および図11に示すように、まず、第2供給ポンプ42が作動すると、第2燃料供給経路44の第2燃料が加圧され、高圧になった第2燃料の第2供給圧力が第2受圧面72bに作用し、ピストン72Bが第1燃料供給経路43側に移動する。そのため、ピストン機構47Bは、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。次に、第1供給ポンプ41が作動すると、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。そして、第1燃料供給経路43における第1燃料の第1供給圧力が第1受圧面72aに作用し、ピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動する。すると、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力も上昇する。
【0088】
そして、クランク角度a21にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、第1燃料の噴射を開始する。このとき、第2燃料供給経路44の第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力を超えると、第2針弁46は、第2燃料の噴射を開始する。そして、前述したように、第1フローリミッタ130が作動し、第1燃料が第1針弁45に供給されなくなると、クランク角度a22にて、第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力より低くなり、第1針弁45は、第1燃料の噴射を終了する。
【0089】
このとき、可変絞り弁136の開度が大きく調整されると、第1フローリミッタ130の作動が遅れ、第1針弁45による第1燃料の噴射停止時期が遅くなる。一方、可変絞り弁136の開度が小さく調整されると、第1フローリミッタ130の作動が早まり、第1針弁45による第1燃料の噴射停止時期が早くなる。
【0090】
そして、クランク角度a23にて、ピストン72Bが最も第2燃料供給経路44側に到達すると、連通経路120により第1フローリミッタ130の排出流路134と第1貯留部73が連通する。すると、第1貯留部73の第1燃料が可変絞り弁136(第1フローリミッタ130)を迂回して第1針弁45に供給される。ここで、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、第1燃料の噴射を再び開始する。その後、クランク角度a24にて、第1供給ポンプ41が停止すると、第1針弁45は、第1燃料の噴射を停止する。また、第1供給ポンプ41が停止してピストン72Bの移動が停止すると、第2針弁46は、第2燃料の噴射を終了する。
【0091】
第6実施形態にて、燃料噴射装置17Eは、第1針弁45による第1燃料の噴射時期(クランク角度範囲T11,T12)が、第2針弁46による第2燃料の噴射時期(クランク角度範囲T2)の初期と終期だけである。そして、第1針弁45による第1燃料の初期噴射時期(クランク角度範囲T11)の噴射終了時期を調整可能である。そのため、燃料噴射装置17Eは、第2燃料の着火性に応じて、第1燃料の初期噴射時期(クランク角度範囲T11)の噴射終了時期を調整することで、着火性の悪い第2燃料の燃焼性を向上することができる。
【0092】
[第7実施形態]
図12は、第7実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図、図13は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。なお、上述した第5実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0093】
図12に示すように、燃料噴射装置17Fは、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42と、第1燃料供給経路43および第2燃料供給経路44と、第1針弁45および第2針弁46と、ピストン機構47Fと、第1フローリミッタ110と、連通経路120とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第1針弁45、第2針弁46、第1フローリミッタ110、連通経路120は、第5実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0094】
ピストン機構47Fは、第3実施形態のピストン機構47Bとほぼ同様である。すなわち、ピストン機構47Fは、第1燃料供給経路43と第2燃料供給経路44との間に設けられ、シリンダ71と、ピストン72Bとを有する。ピストン72Bは、ロッド部101と、本体部102とを有する。ピストン72Bは、本体部102の第1燃料供給経路43側に第1受圧面72aが形成され、第2燃料供給経路44側に第2受圧面72bが形成される。そして、ピストン72Bは、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。
【0095】
そして、ピストン機構47Fは、ピストン72Bの第1受圧面72aが傾斜面(好ましくは、ヘリカル形状)をなす。すなわち、第1受圧面72aは、ピストン72Bの径方向に対して傾斜する傾斜面である。また、ピストン72Bは、シリンダ71の内部で、周方向に回転自在に支持される。ピストン72Bは、ロッド部101の先端部に駆動部140が駆動連結される。駆動部140は、制御部56により駆動制御可能である。駆動部140は、ロッド部101を介してピストン72Bを回転し、回転位相を調整可能である。
【0096】
第1燃料供給経路43は、ピストン機構47Fと第1針弁45との間に第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタ110が設けられる。また、連通経路120は、ピストン機構47Fのピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動する移動終期に、第1燃料供給経路43における第1フローリミッタ110の下流側と上流側とを連通する。連通経路120は、一端部が第1フローリミッタ110の排出流路114に連通し、他端部が第1貯留部73に連通可能である。
【0097】
第1供給ポンプ41が作動すると、高圧の第1燃料が第1フローリミッタ110を通して第1針弁45に供給され、第1燃料の第1供給圧力が第1噴射圧を超えると、第1針弁45は、第1燃料を噴射する。そして、第1フローリミッタ110が作動すると、第1燃料は、第1針弁45に供給されず、第1針弁45に作用する第1供給圧力が第1噴射圧より低くなり、第1針弁45による第1燃料の噴射が停止する。その後、ピストン72Bが最も第2燃料供給経路44側に到達すると、連通経路120が第1貯留部73に連通する。すると、高圧の第1燃料が連通経路120を通して第1針弁45に供給され、第1燃料の第1供給圧力が第1噴射圧を超えると、第1針弁45は、再び第1燃料を噴射する。このとき、駆動部140によりピストン72Bの回転位相を変更し、傾斜する第1受圧面72aの位置を調整することで、第1針弁45による第1燃料の再噴射開始時期を調整することができる。
【0098】
図12および図13に示すように、まず、第2供給ポンプ42が作動すると、第2燃料供給経路44の第2燃料が加圧され、高圧になった第2燃料の第2供給圧力が第2受圧面72bに作用し、ピストン72Bが第1燃料供給経路43側に移動する。そのため、ピストン機構47Fは、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。次に、第1供給ポンプ41が作動すると、第1針弁45の上流側圧力、つまり、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43の圧力が上昇する。そして、第1燃料供給経路43における第1燃料の第1供給圧力が第1受圧面72aに作用し、ピストン72Bが第2燃料供給経路44側に移動する。すると、第2針弁46の上流側圧力、つまり、逆止弁84より下流側の第2燃料供給経路44の圧力も上昇する。
【0099】
そして、クランク角度a21にて、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、第1燃料の噴射を開始する。このとき、第2燃料供給経路44の第2供給圧力が第2針弁46の第2噴射圧力を超えると、第2針弁46は、第2燃料の噴射を開始する。そして、前述したように、第1フローリミッタ110が作動し、第1燃料が第1針弁45に供給されなくなると、クランク角度a22にて、第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力より低くなり、第1針弁45は、第1燃料の噴射を終了する。
【0100】
そして、クランク角度a23にて、ピストン72Bが最も第2燃料供給経路44側に到達すると、連通経路120により第1フローリミッタ110の排出流路114と第1貯留部73が連通する。すると、第1貯留部73の第1燃料がオリフィス116(第1フローリミッタ110)を迂回して第1針弁45に供給される。ここで、第1燃料供給経路43の第1供給圧力が第1針弁45の第1噴射圧力を超えると、第1針弁45は、第1燃料の噴射を再び開始する。その後、クランク角度a24にて、第1供給ポンプ41が停止すると、第1針弁45は、第1燃料の噴射を停止する。また、第1供給ポンプ41が停止してピストン72Bの移動が停止すると、第2針弁46は、第2燃料の噴射を終了する。
【0101】
このとき、ピストン72Bの回転位相が変更され、傾斜する第1受圧面72aの位置が調整されると、第1針弁45による第1燃料の再噴射開始時期を調整できる。つまり、ピストン72Bの回転位相が変更され、第1受圧面72aの角度が図12の実線位置にあるとき、ピストン72Bが最も第2燃料供給経路44側に到達しても、連通経路120が第1貯留部73に連通しない。一方、ピストン72Bの回転位相が変更され、第1受圧面72aの角度が図12の二点鎖線位置にあるとき、ピストン72Bが最も第2燃料供給経路44側に到達すると、連通経路120が第1貯留部73に連通する。そして、ピストン72Bの回転位相を変更し、第1受圧面72aの角度を図12の実線位置と図12の二点鎖線位置との間で調整することで、ピストン72Bが最も第2燃料供給経路44側に到達したとき、連通経路120が第1貯留部73に連通する時期を調整することができる。
【0102】
第7実施形態にて、燃料噴射装置17Fは、第1針弁45による第1燃料の噴射時期(クランク角度範囲T11,T12)が、第2針弁46による第2燃料の噴射時期(クランク角度範囲T2)の初期と終期だけである。そして、第1針弁45による第1燃料の終期噴射時期(クランク角度範囲T12)の噴射開始時期を調整可能である。そのため、燃料噴射装置17Eは、第2燃料の燃焼性に応じて、第1燃料の終期噴射時期(クランク角度範囲T12)の噴射開始時期を調整することで、着火性の悪い第2燃料の燃焼性を向上することができる。
【0103】
[第8実施形態]
図14は、第8実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第5実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0104】
図14に示すように、燃料噴射装置17Gは、燃料供給装置31と、燃料供給経路32Gと、燃料噴射弁33Gとを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32Gは、第1燃料供給経路43と、第2燃料供給経路44と、第3燃料供給経路141とを有する。燃料噴射弁33Gは、第1針弁45と、第2針弁46と、第3針弁142とを有する。また、燃料噴射装置17Gは、ピストン機構47Bと、第1フローリミッタ110と、連通経路120と、分配弁143とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第1針弁45、第2針弁46、ピストン機構47B、第1フローリミッタ110、連通経路120は、第5実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0105】
第3燃料供給経路141は、第1燃料供給経路43からピストン機構47Bを迂回して第1燃料を供給する。第3針弁142は、第3燃料供給経路141が接続される。分配弁143は、ピストン機構47Bに供給される第1燃料の供給量と第3燃料供給経路141に供給される第1燃料の供給量とを調整する。分配弁143は、制御部56により開度が制御される。
【0106】
すなわち、第3燃料供給経路141は、上流側端部が第1燃料供給経路43における逆止弁81,83とピストン機構47Bとの間に接続される。第3燃料供給経路141は、下流側端部が第3針弁142に接続される。第3針弁142は、第1針弁45とほぼ同様の構成をなし、弁体142aと、付勢ばね142bと、チャンバ142cと、燃料供給路142dと、噴孔142eとを有する。第3燃料供給経路141は、下流側端部が第3針弁142のチャンバ142cに接続される。
【0107】
分配弁143は、第1燃料供給経路43と第3燃料供給経路141との接続部に設けられる。第1供給ポンプ41が第1燃料を加圧すると、分配弁143は、加圧された第1燃料における第1燃料供給経路43を通したピストン機構47Bへの供給量と、第3燃料供給経路141への供給量を調整する。
【0108】
例えば、燃料噴射装置17Gは、分配弁143により、第1燃料供給経路43を通したピストン機構47Bへの第1燃料の供給量を100%とし、第3燃料供給経路141への第1燃料の供給量を0%とする。このとき、第1燃料は、第3燃料供給経路141から第3針弁142に供給されないことから、本実施形態の燃料噴射装置17Gは、第5実施形態の燃料噴射装置17Dと同様の作動になる。
【0109】
一方、燃料噴射装置17Gは、分配弁143により、第1燃料供給経路43を通したピストン機構47Bへの第1燃料の供給量を0%とし、第3燃料供給経路141への第1燃料の供給量を100%とする。このとき、第1燃料は、第1燃料供給経路43からピストン機構47Bを通して第1針弁45に供給されず、第3燃料供給経路141から第3針弁142に供給される。そのため、燃料噴射装置17Gは、第3針弁142から第1燃料を噴射し、第1針弁45から第1燃料を噴射せず、第2針弁46から第2燃料を噴射しない。
【0110】
また、燃料噴射装置17Gは、分配弁143により、第1燃料供給経路43を通したピストン機構47Bへの第1燃料の供給量を50%とし、第3燃料供給経路141への第1燃料の供給量を50%とする。このとき、第1燃料は、第1燃料供給経路43からピストン機構47Bを通して第1針弁45に供給されると共に、第3燃料供給経路141から第3針弁142に供給される。そのため、燃料噴射装置17Gは、第1針弁45と第3針弁142から第1燃料を噴射すると共に、第2針弁46から第2燃料を噴射する。
【0111】
第8実施形態にて、燃料噴射装置17Gは、分配弁143により、第1燃料供給経路43を通したピストン機構47Bへの第1燃料の供給量と、第3燃料供給経路141への第1燃料の供給量との割合を連続して変化させることができる。そのため、燃料噴射装置17Gは、第1燃料だけを噴射する運転状態と、第1燃料と第2燃料の両方を噴射する運転状態との間で、運転状態を連続して徐々に移行することができる。
【0112】
[第9実施形態]
図15は、第9実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第8実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0113】
図15に示すように、燃料噴射装置17Hは、燃料供給装置31と、燃料供給経路32Gと、燃料噴射弁33Gとを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32Gは、第1燃料供給経路43と、第2燃料供給経路44と、第3燃料供給経路141とを有する。燃料噴射弁33Gは、第1針弁45と、第2針弁46と、第3針弁142とを有する。また、燃料噴射装置17Hは、ピストン機構47Bと、第1フローリミッタ130と、連通経路120と、第2フローリミッタ150とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43、第2燃料供給経路44、第3燃料供給経路141、第1針弁45、第2針弁46、第3針弁142、ピストン機構47B、第1フローリミッタ130、連通経路120は、第8実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0114】
第1燃料供給経路43は、ピストン機構47Bと第1針弁45との間に第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタ130が設けられる。第1フローリミッタ130は、ハウジング131と、弁体132と、供給流路133と、排出流路134と、連結流路135と、可変絞り弁(第1フローリミッタ調整弁)136と、圧縮ばね137とを有する。
【0115】
第3燃料供給経路141は、第1燃料供給経路43からピストン機構47Bを迂回して第1燃料を供給する。第3針弁142は、第3燃料供給経路141が接続される。第3燃料供給経路141は、第1フローリミッタ130と第3針弁142との間に第1燃料の供給を制限する第2フローリミッタ150が設けられる。第2フローリミッタ150は、ハウジング151と、弁体152と、供給流路153と、排出流路154と、連結流路155と、可変絞り弁(第2フローリミッタ調整弁)156と、圧縮ばね157とを有する。第2フローリミッタ150は、第1フローリミッタ130とほぼ同様の構成である。なお、第2フローリミッタ150は、第1フローリミッタ130の閉止にかかわらず、独立して作動することができる。すなわち、第1フローリミッタ130の供給流路133と、第2フローリミッタ150の供給流路153は、共に第1燃料供給経路43に連結可能となる。
【0116】
第9実施形態にて、燃料噴射装置17Hは、第2フローリミッタ150における可変絞り弁156の開度(流路面積)を調整することで、第3針弁142からの第1燃料の噴射量を調整することができる。すなわち、第1フローリミッタ130の可変絞り弁136の開度と、第2フローリミッタ150の可変絞り弁156の開度を調整することにより、第8実施形態の燃料噴射装置17Gと同様に、第1燃料供給経路43を通したピストン機構47Bへの第1燃料の供給量と、第3燃料供給経路141への第1燃料の供給量との割合を連続して変化させることができる。そのため、燃料噴射装置17Gは、第1燃料だけを噴射する運転状態と、第1燃料と第2燃料の両方を噴射する運転状態との間で、運転状態を連続して徐々に移行することができる。
【0117】
[第10実施形態]
図16は、第10実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図、図17は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0118】
図16に示すように、燃料噴射装置17Jは、燃料供給装置31と、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Jは、ピストン機構47を備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、ピストン機構47は、第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0119】
第1燃料供給経路43Jは、下流側端部が針弁160に接続される。また、第2燃料供給経路44Jは、下流側端部が針弁160に接続される。第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jは、ピストン機構47より下流側で合流してから針弁160に接続される。ピストン機構47は、シリンダ71と、ピストン72とを有する。ピストン機構47は、第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jとの間に設けられる。ピストン機構47は、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43Jに連通して第1燃料を貯留する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44Jに連通して第2燃料を貯留する第2貯留部74が設けられる。
【0120】
第1燃料供給経路43Jは、上流側経路43aと、下流側経路43bとを有する。第2燃料供給経路44Jは、上流側経路44aと、下流側経路44bとを有する。上流側経路43aは、下流側が第1貯留部73に連通し、下流側経路43bは、上流側が第1貯留部73に連通し、下流側が下流側経路44bに連通する。また、上流側経路44aは、下流側が第2貯留部74に連通し、下流側経路44bは、上流側が第2貯留部74に連通し、下流側が針弁160に連通する。すなわち、下流側経路43bと下流側経路44bは、合流してから針弁160に連通する。針弁160は、弁体160aと、付勢ばね160bと、チャンバ160cと、燃料供給路160dと、噴孔160eとを有する。針弁160は、第1針弁45および第2針弁46とほぼ同様の構成である。
【0121】
ピストン機構47は、ピストン72が第2燃料供給経路44J側に移動する移動終期に針弁160に連通される。すなわち、第1燃料供給経路43Jの下流側経路43bは、上流側端部が第1貯留部73におけるシリンダ71の一端部から最も離間する位置に連結される。ピストン機構47は、ピストン72が第1燃料供給経路43J側から第2燃料供給経路44J側に移動する。下流側経路43bの上流側端部は、ピストン72が一端部側に位置するときには第1貯留部73に連通しない。下流側経路43bの他端部は、ピストン72が第1燃料供給経路43J側から第2燃料供給経路44J側に移動し、最も一端部から離間し、最も第2燃料供給経路44J側に到達したときに第1貯留部73に連通する。
【0122】
第1燃料供給経路43Jは、ピストン機構47と針弁160との間に配置される下流側経路43bに逆止弁161が設けられる。逆止弁161は、針弁160からピストン機構47側への第1燃料の逆流を防止する。
【0123】
図16および図17に示すように、まず、第2供給ポンプ42が作動すると、第2燃料供給経路44Jの第2燃料が加圧され、高圧になった第2燃料の第2供給圧力が第2受圧面72bに作用し、ピストン72が第1燃料供給経路43J側に移動する。そのため、ピストン機構47は、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。但し、第2燃料供給経路44Jは、下流側経路44bに前回の噴射時における第1燃料が残留している。このとき、第1貯留部73は、下流側経路43bに連通していない。また、下流側経路43bにおける針弁160からピストン機構47側への第1燃料の逆流が逆止弁161により防止される。次に、第1供給ポンプ41が作動すると、第1燃料供給経路43Jの上流側経路43aの第1燃料が加圧され、高圧になった第1燃料の第1供給圧力が第1受圧面72aに作用し、ピストン72が第2燃料供給経路44J側に移動する。すると、第2燃料供給経路44Jの下流側経路44bの圧力が上昇する。
【0124】
そして、クランク角度a21にて、第2燃料供給経路44Jの第2供給圧力が針弁160の噴射圧力を超えると、針弁160は、下流側経路43bの合流部より下流側の下流側経路44bに残留する第1燃料を噴射する。クランク角度a22にて、針弁160は、下流側経路44bに残留する第1燃料の噴射が終了すると、第2燃料の噴射を開始する。そして、クランク角度a23にて、ピストン72が最も第2燃料供給経路44J側に到達すると、針弁160は、第2燃料の噴射を終了する。このとき、第1燃料供給経路43Jは、下流側経路43bが第1貯留部73に連通する。すると、第1貯留部73の第1燃料が下流側経路43b,44bを通って針弁160に供給され、針弁160は、第1燃料の噴射を再び開始する。その後、クランク角度a24にて、第1供給ポンプ41が停止すると、針弁160は、第1燃料の噴射を停止する。このとき、第2燃料供給経路44Jは、下流側経路43bの合流部より下流側の下流側経路44bに第1燃料が残留される。
【0125】
第10実施形態にて、燃料噴射装置17Jは、一つの針弁160が所定のクランク角度範囲T11に第1燃料を噴射し、所定のクランク角度範囲T2に第2燃料を噴射し、所定のクランク角度範囲T12に第1燃料を噴射する。すなわち、第1燃料の噴射時期(クランク角度範囲T11,T12)は、針弁160による第2燃料の噴射時期(クランク角度範囲T2)の初期と終期だけである。そのため、燃料噴射装置17Jは、着火性の良い第1燃料を着火性の悪い第2燃料より先に噴射し、着火性の良い第1燃料が着火した火炎が火種となって着火性の悪い第2燃料が着火すると、着火性の良い第1燃料の噴射を終了する。また、燃料噴射装置17Jは、着火性の悪い第2燃料が燃焼し終わるときに、着火性の良い第1燃料を噴射することで、着火性の悪い第2燃料を完全燃焼させる。その結果、燃料噴射装置17Jは、第1燃料の噴射量を減少させることができると共に、燃焼性を向上することができる。
【0126】
[第11実施形態]
図18は、第11実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第3実施形態および第10実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0127】
図18に示すように、燃料噴射装置17Kは、燃料供給装置31と、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Jは、ピストン機構47Bを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43J、第2燃料供給経路44J、針弁160は、第10実施形態と同様であり、ピストン機構47Bは、第3実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0128】
第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jは、ピストン機構47Bより下流側で合流してから針弁160に接続される。ピストン機構47Bは、シリンダ71と、ピストン72Bとを有し、第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jとの間に設けられる。ピストン機構47Bは、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43Jに連通して第1燃料を貯留する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44Jに連通して第2燃料を貯留する第2貯留部74が設けられる。ピストン機構47Bは、第1受圧面72aと第2受圧面72bとの面積差により、第1貯留部73を介して第1燃料供給経路43Jに作用する第1供給圧力が、第2貯留部74を介して第2燃料供給経路44Jに作用する第2供給圧力より高くなる。
【0129】
ピストン機構47Bは、ピストン72Bが第2燃料供給経路44J側に移動する移動終期に針弁160に連通される。すなわち、第1燃料供給経路43Jの下流側経路43bは、上流側端部が第1貯留部73におけるシリンダ71の一端部から最も離間する位置に連結される。ピストン機構47Bは、ピストン72Bが第1燃料供給経路43J側から第2燃料供給経路44J側に移動する。下流側経路43bの上流側端部は、ピストン72Bが一端部側に位置するときには第1貯留部73に連通しない。下流側経路43bの他端部は、ピストン72Bが第1燃料供給経路43J側から第2燃料供給経路44J側に移動し、最も一端部から離間し、最も第2燃料供給経路44J側に到達したときに第1貯留部73に連通する。また、シール経路97は、第1燃料供給経路43Jと針弁160を連通する。シール経路97は、第1燃料供給経路43Jの第1燃料を弁体160aの摺動シール部160fに供給する。シール経路97は、第1燃料供給経路43Jの第1燃料の第1供給圧力が作用する。
【0130】
なお、燃料噴射装置17Kの作動は、第10実施形態の燃料噴射装置17Jとほぼ同様であり、説明は省略する。但し、第11実施形態の燃料噴射装置17Kは、ピストン機構47Bにより、第1燃料供給経路43Jに作用する第1供給圧力が、第2燃料供給経路44Jに作用する第2供給圧力より高くなる。そのため、下流側経路43bに設けられる逆止弁161が不要となる。
【0131】
[第12実施形態]
図19は、第12実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0132】
図19に示すように、燃料噴射装置17Lは、燃料供給装置31と、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Lは、ピストン機構47を備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43J、第2燃料供給経路44J、針弁160、ピストン機構47は、第10実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0133】
第1燃料供給経路43Jは、ピストン機構47を迂回する迂回経路170が設けられる。迂回経路170は、上流側端部が上流側経路43aに接続され、下流側端部が下流側経路43bに接続される。迂回経路170は、第1燃料の供給量を調整する絞り弁(流量調整弁)171が設けられる。なお、絞り弁171は、可変絞り弁であってもよい。
【0134】
第2供給ポンプ42が作動すると、ピストン72が第1燃料供給経路43J側に移動し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。第1供給ポンプ41が作動すると、ピストン72が第2燃料供給経路44J側に移動する。そして、第2燃料供給経路44Jの第2供給圧力が針弁160の噴射圧力を超えると、針弁160は、下流側経路43bの合流部より下流側の下流側経路44bに残留する第1燃料を噴射する。そして、針弁160は、下流側経路44bに残留する第1燃料の噴射が終了すると、第2燃料の噴射を開始する。このとき、第1燃料供給経路43Jの第1燃料は、迂回経路170の絞り弁171を通って下流側経路43bに流れ、針弁160に供給される。そのため、針弁160は、第2燃料と少量の第1燃料を同時に噴射する。そして、ピストン72が最も第2燃料供給経路44J側に到達すると、針弁160は、第2燃料の噴射を終了し、第1燃料の噴射を再び開始する。その後、第1供給ポンプ41が停止すると、針弁160は、第1燃料の噴射を停止する。
【0135】
第12実施形態にて、燃料噴射装置17Lは、針弁160が第2燃料を噴射しているとき、少量の第1燃料を噴射する。そのため、着火性の悪い第2燃料を噴射しているときに、着火性の良い第1燃料を少量噴射することで、着火性の悪い第2燃料を完全燃焼させる。
【0136】
[第13実施形態]
図20は、第13実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0137】
図20に示すように、燃料噴射装置17Mは、燃料供給装置31と、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Mは、ピストン機構47と、第1フローリミッタ110とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43J、第2燃料供給経路44J、針弁160、ピストン機構47は、第10実施形態と同様であり、第1フローリミッタ110は、第4実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0138】
第1燃料供給経路43Jは、ピストン機構47を迂回する迂回経路170が設けられる。迂回経路170は、上流側端部が上流側経路43aに接続され、下流側端部が下流側経路43bに接続される。迂回経路170は、第1燃料の供給量を調整する第1フローリミッタ110が設けられる。
【0139】
第2供給ポンプ42が作動すると、ピストン72が第1燃料供給経路43J側に移動し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。第1供給ポンプ41が作動すると、ピストン72が第2燃料供給経路44J側に移動する。そして、第2燃料供給経路44Jの第2供給圧力が針弁160の噴射圧力を超えると、針弁160は、下流側経路43bの合流部より下流側の下流側経路44bに残留する第1燃料を噴射する。そして、針弁160は、下流側経路44bに残留する第1燃料の噴射が終了すると、第2燃料の噴射を開始する。このとき、第1燃料供給経路43Jの第1燃料は、迂回経路170の第1フローリミッタ110を通って下流側経路43bに流れ、針弁160に供給される。そのため、針弁160は、第2燃料と少量の第1燃料を同時に噴射する。そして、ピストン72が最も第2燃料供給経路44J側に到達すると、針弁160は、第2燃料の噴射を終了し、第1燃料の噴射を再び開始する。その後、第1供給ポンプ41が停止すると、針弁160は、第1燃料の噴射を停止する。
【0140】
第13実施形態にて、燃料噴射装置17Lは、針弁160が第2燃料を噴射しているとき、少量の第1燃料を噴射する。そのため、着火性の悪い第2燃料を噴射しているときに、着火性の良い第1燃料を噴射することで、着火性の悪い第2燃料を完全燃焼させる。
【0141】
[第14実施形態]
図21は、第14実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図、図22は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0142】
図21に示すように、燃料噴射装置17Nは、燃料供給装置31Nと、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31Nは、第1供給ポンプ41と、残圧調整弁180とを有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Nは、ピストン機構47を備える。第1供給ポンプ41、第1燃料供給経路43J、第2燃料供給経路44J、ピストン機構47は、第1実施形態と同様であり、針弁160は、第10実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0143】
第1供給ポンプ41は、第1実施形態と同様であり、第1燃料供給経路43Jの第1燃料を所定圧(例えば、80MPa)に加圧する。第1燃料供給経路43Jは、第1供給ポンプ41の接続部とピストン機構47の接続部との間に逆止弁81が設けられる。第1燃料供給経路43Jは、逆止弁81を迂回する返送経路82が設けられ、返送経路82は、逆止弁83が設けられる。逆止弁83は、等圧弁として機能する。また、第1燃料供給経路43Jは、逆止弁81および返送経路82(逆止弁83)を迂回する調圧経路181が設けられ、調圧経路181は、残圧調整弁180が設けられる。残圧調整弁180は、制御部56により開閉制御可能である。残圧調整弁180は、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43Jにおける第1燃料を逆止弁81,83より上流側の第1燃料供給経路43Jに排出することで、ピストン機構47に作用する第1燃料の第1供給圧力を低下させる。
【0144】
図21および図22に示すように、第1供給ポンプ41が作動することで、第1燃料の第1供給圧力が上昇し、クランク角a31からクランク角a32のクランク角度範囲で噴射圧を超えることで、針弁160は、第1燃料および第2燃料を噴射する。第1供給ポンプ41が停止すると、クランク角a32にて、第1燃料の第1供給圧力が低下し、クランク角度a33まで一定となる。このとき、逆止弁81より下流側の第1燃料の第1供給圧は、例えば、20MPaであり、逆止弁81より上流側の第1燃料の第1供給圧は、例えば、1MPaであり、逆止弁85より下流側の第2燃料の第2供給圧は、例えば、15MPaである。
【0145】
クランク角度a33からクランク角度a34のクランク角度範囲T31にて、残圧調整弁180が開放される。すると、逆止弁81,83より下流側の第1燃料供給経路43Jの第1燃料が調圧経路181を通って逆止弁81,83より上流側の第1燃料供給経路43Jに排出される。ここで、ピストン機構47は、第2供給圧力に対して第1供給圧力が低下するため、ピストン72が第2燃料供給経路44J側から第1燃料供給経路43J側に移動し、第2貯留部74の容積が増大し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。そのため、その後、第1供給ポンプ41が作動したとき、針弁160は、第1燃料および第2燃料を噴射することができる。
【0146】
第14実施形態の燃料噴射装置17Nは、燃料供給装置31Nが第1供給ポンプ41と残圧調整弁180とを有することで、第2燃料を加圧する第2供給ポンプをなくしている。そのため、燃料供給装置31Nの簡素化が図れる。
【0147】
[第15実施形態]
図23は、第15実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第5実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0148】
図23に示すように、燃料噴射装置17Pは、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42と、第1燃料供給経路43Jおよび第2燃料供給経路44Jと、第1針弁45および第2針弁46と、ピストン機構47Bと、第1フローリミッタ110と、第2フローリミッタ190と、連通経路121,122とを備える。第1供給ポンプ41、第2供給ポンプ42、第1燃料供給経路43J、第2燃料供給経路44J、第1針弁45、第2針弁46、ピストン機構47B、第1フローリミッタ110は、第5実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0149】
第1燃料供給経路43Jは、ピストン機構47Bと第1針弁45との間に第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタ110と第2フローリミッタ190が設けられる。第1フローリミッタ110は、ハウジング111と、弁体112と、供給流路113と、排出流路114と、連結流路115と、オリフィス116と、圧縮ばね117とを有する。第2フローリミッタ190は、ハウジング191と、弁体192と、供給流路193と、排出流路194と、連結流路195と、オリフィス196と、圧縮ばね197とを有する。
【0150】
連通経路121は、ピストン機構47Bのピストン72Bが第2燃料供給経路44J側に移動する移動終期に、第1貯留部73と、第2フローリミッタ190の供給流路193とを連通する。連通経路122は、第2フローリミッタ190の排出流路194と、第1燃料供給経路43Jにおける第1フローリミッタ110と第1針弁45との間に連通する。ピストン機構47Bは、ピストン72Bが第1燃料供給経路43J側から第2燃料供給経路44J側に移動する。連通経路121の一端部は、ピストン72Bが第1燃料供給経路43J側に位置するときには第1貯留部73に連通しない。また、連通経路121の一端部は、ピストン72Bが第1燃料供給経路43J側から第2燃料供給経路44J側に移動し、最も第2燃料供給経路44J側に到達したときに第1貯留部73に連通する。
【0151】
第15実施形態にて、燃料噴射装置17Pは、基本的な燃料噴射時の動作は、第5実施形態の燃料噴射装置17Dと同様であるが、第15実施形態では、ピストン72Bが第2燃料供給経路44J側へ移動し、連通経路121が第1針弁45へ連通する経路に第2フローリミッタ190を設けることで、第1燃料の2回目の噴射も噴射量の制約を受ける。そのため、燃料噴射装置17Pは、第1燃料の噴射量を減少させることができると共に、燃焼性を向上することができる。また、第1燃料と第2燃料とを合わせた燃料の噴射量を、第2供給ポンプ42の作動量に応じて調整することができる。
【0152】
[第16実施形態]
図24は、第16実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第14実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0153】
図24に示すように、燃料噴射装置17Qは、燃料供給装置31Qと、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31Qは、第1供給ポンプ41を有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Qは、ピストン機構47Bを備える。第1供給ポンプ41、第1燃料供給経路43J、第2燃料供給経路44J、針弁160は、第14実施形態と同様であり、ピストン機構47Bは、第3実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0154】
第1供給ポンプ41は、第1実施形態と同様であり、第1燃料供給経路43Jの第1燃料を所定圧(例えば、80MPa)に加圧する。第1燃料供給経路43Jは、第1供給ポンプ41の接続部とピストン機構47Bの接続部との間に逆止弁81が設けられる。第1燃料供給経路43Jは、逆止弁81を迂回する返送経路82が設けられ、返送経路82は、逆止弁83が設けられる。逆止弁83は、等圧弁として機能する。逆止弁83は、ピストン機構47B側から第1供給ポンプ41側への開放圧(例えば、16MPa)が設定される。
【0155】
第2燃料供給経路44Jは、第2燃料供給源60とピストン機構47Bの接続部との間に逆止弁85が設けられる。逆止弁85は、ピストン機構47B側から第2燃料供給源60側への第2燃料の逆流を阻止する。逆止弁85は、第2燃料供給源60側からピストン機構47B側への開放圧(例えば、15MPa)が設定される。つまり、逆止弁85の開放圧は、第1燃料供給経路43Jの逆止弁83の開放圧より低く設定される。ピストン機構47Bは、シリンダ71と、ピストン72Bとを有する。ピストン72Bは、ロッド付きピストンであって、細径のロッド部101と、大径の本体部102とを有する。ピストン72Bは、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。
【0156】
第1供給ポンプ41が作動することで、第1燃料の第1供給圧力が上昇し、噴射圧を超えることで、針弁160は、第1燃料および第2燃料を噴射する。第1供給ポンプ41が停止すると、第1燃料の第1供給圧力が低下する。このとき、逆止弁83より下流側の第1燃料の残圧は、例えば、16MPaであり、逆止弁85より下流側の第2燃料の第2供給圧は、例えば、15MPaである。そして、ピストン機構47Bは、第2貯留部74に第2燃料の第2供給圧力(15MPa)が作用し、第2受圧面72bと第1受圧面72aとの面積差により第1燃料供給経路43Jの第1燃料が増圧され、逆止弁83の開放圧(16MPa)以上となる。そのため、第1燃料供給経路43Jの第1燃料は、逆止弁83を通して戻され、ピストン72Bが第1燃料供給経路43J側に移動する。
【0157】
ピストン機構47Bにて、ピストン72Bが第2燃料供給経路44J側から第1燃料供給経路43J側に移動すると、第2貯留部74の容積が増大し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。このとき、第1燃料供給経路43Jの第1燃料は、加圧され、逆止弁83が開放されて戻される。そのため、その後、第1供給ポンプ41が作動したとき、針弁160は、第1燃料および第2燃料を噴射することができる。
【0158】
第16実施形態の燃料噴射装置17Qは、ピストン72Bにおける第1燃料供給経路43J側の第1受圧面72aの面積を小さくすることにより、燃料噴射が行われていない期間に、第2燃料が自ら第2貯留部74に流入することができるため、第14実施形態で適用した残圧調整弁180が不要となる。そのため、燃料供給装置31Nの簡素化が図れる。
【0159】
[ピストン機構の変形例]
図25は、ピストン機構の変形例を表す概略図である。
【0160】
図25に示すように、ピストン機構47Cは、第1燃料供給経路43と第2燃料供給経路44(図5参照)との間に設けられる。ピストン機構47Cは、円筒形状をなすシリンダ71Cと、円柱形状をなすピストン72Cとを有する。シリンダ71Cは、第1燃料供給経路43側(図25の上方側)に内側(図25の下方側)に延出するロッド部106を有する。ピストン72Cは、本体部107を有し、第1燃料供給経路43側(図25の上方側)に孔部107aが形成される。ピストン72Cは、シリンダ71Cの内部に配置され、軸方向に沿って移動自在に支持される。ピストン72Cは、本体部107がシリンダ71Cに支持され、孔部107aにシリンダ71Cのロッド部106が軸方向に移動自在に嵌合する。そして、ピストン機構47Cは、シリンダ71Cのロッド部106とピストン72Cの孔部107aとの間に摺動部108が形成される。そして、ドレン経路109の一端部が摺動部108に連通する。摺動部108は、第1貯留部73が連通することから、第1燃料が漏れる。ドレン経路109は、摺動部108で漏れた第1燃料を外部に排出して回収する。
【0161】
ピストン72Cは、本体部107の第1燃料供給経路43側に第1受圧面72aが形成され、第2燃料供給経路44側に第2受圧面72bが形成される。ピストン72Cは、第1受圧面72aに第1燃料供給経路43の第1供給圧力が作用し、第2受圧面72bに第2燃料供給経路44の第2供給圧力が作用する。ピストン機構47Cは、第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧によりピストン72Cが往復移動する。ピストン72Cは、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。ピストン機構47Cは、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43に連通する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44に連通する第2貯留部74が設けられる。ピストン機構47Cは、第1受圧面72aと第2受圧面72bとの面積差により、第1貯留部73を介して第1燃料供給経路43に作用する第1供給圧力が、第2貯留部74を介して第2燃料供給経路44に作用する第2供給圧力より高くなる。
【0162】
ピストン機構47Cにおけるその他の構成並びに作用は、第3実施形態のピストン機構47Bと同様であることから説明は省略する。
【0163】
[第17実施形態]
図26は、第17実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第11実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0164】
図26に示すように、燃料噴射装置17Rは、燃料供給装置31と、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31は、第1供給ポンプ41と、第2供給ポンプ42とを有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Rは、ピストン機構47Bを備える。
【0165】
第1燃料供給経路43Jは、第1供給ポンプ41の接続部とピストン機構47Bの接続部との間に逆止弁81が設けられ、第1供給ポンプ41の接続部より上流側に逆止弁87が設けられる。また、第1燃料供給経路43Jは、逆止弁81,87および第1供給ポンプ41を迂回する返送経路82が設けられ、返送経路82は、カット弁88と等圧弁89とが設けられる。カット弁88は、逆止弁81の作動に連携するカット機能を有し、逆止弁81の閉止時に開放され、逆止弁81の開放時に閉止される。等圧弁89は、カット弁88より上流側に配置され、第1燃料供給経路43Jの上流側の圧力と下流側の圧力が等圧するように開閉する。
【0166】
第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jは、ピストン機構47Bより下流側で合流してから針弁160に接続される。ピストン機構47Bは、第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jとの間に設けられる。ピストン機構47Bは、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43Jに連通して第1燃料を貯留する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44Jに連通して第2燃料を貯留する第2貯留部74が設けられる。ピストン機構47Bは、第1受圧面72aと第2受圧面72bとの面積差により、第1貯留部73を介して第1燃料供給経路43Jに作用する第1供給圧力が、第2貯留部74を介して第2燃料供給経路44Jに作用する第2供給圧力より高くなる。
【0167】
なお、燃料噴射装置17Rの作動は、第11実施形態の燃料噴射装置17Kとほぼ同様であり、説明は省略する。但し、第17実施形態の燃料噴射装置17Rは、逆止弁81の作動に連携するカット機能を有するカット弁88を返送経路82に設けていることから、ピストン機構47Bに対する第1燃料の供給と返送を適切に行うことができる。
【0168】
[第18実施形態]
図27は、第18実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図、図28は、燃料噴射装置の作動を表すタイムチャートである。なお、上述した第16実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0169】
図27に示すように、燃料噴射装置17Sは、燃料供給装置31Qと、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31Qは、第1供給ポンプ41を有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Sは、ピストン機構47Sを備える。
【0170】
第1供給ポンプ41は、第1実施形態と同様である。第1燃料供給経路43Jは、第1供給ポンプ41の接続部とピストン機構47Sの接続部との間に逆止弁81が設けられ、第1供給ポンプ41の接続部より上流側に逆止弁87が設けられる。また、第1燃料供給経路43Jは、逆止弁81,87および第1供給ポンプ41を迂回する返送経路82が設けられ、返送経路82は、カット弁88と調圧弁211とが設けられる。そして、返送経路82は、カット弁88と調圧弁211との間に他気筒の第1燃料供給経路201,202が接続される。カット弁88は、逆止弁81の作動に連携するカット機能を有し、逆止弁81の閉止時に開放され、逆止弁81の開放時に閉止される。調圧弁211は、全ての気筒における返送経路82の圧力が第2燃料供給経路44Jの第2燃料の圧力と同圧、または、第2燃料の圧力より高い圧力になるように調圧する。
【0171】
ピストン機構47Sは、シリンダ71Sと、ピストン72Sとを有する。ピストン72Sは、ロッド付きピストンであって、細径のロッド部101と、本体部102とを有する。ピストン機構47Sは、ロッド部101と本体部102との間に膨出部102aが設けられる。一方、シリンダ71Sは、上端部に内径が縮小されてシート部102bが設けられる。ピストン機構47Sは、ピストン72Sがシリンダ71Sの内部を上方に移動したとき、膨出部102aがシート部102bに当接することで、第1燃料供給経路43Jと第1貯留部73との連通が遮断される。
【0172】
シリンダ71Sは、ピストン72Sの移動方向の一端部が第1燃料供給経路43Jに連通し、ピストン72Sの移動方向の他端部が第2燃料供給経路44Jに連通する。ピストン72Sは、本体部102の第1燃料供給経路43J側に第1受圧面72aが形成され、第2燃料供給経路44J側に第2受圧面72bが形成される。ピストン72Sは、第1受圧面72aに第1燃料供給経路43Jの第1供給圧力が作用し、第2受圧面72bに第2燃料供給経路44Jの第2供給圧力が作用する。ピストン機構47Sは、第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧によりピストン72Sが往復移動する。
【0173】
ピストン72Sは、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。ピストン機構47Sは、第1受圧面72a側に第1燃料供給経路43Jに連通する第1貯留部73が設けられ、第2受圧面72b側に第2燃料供給経路44Jに連通する第2貯留部74が設けられる。ピストン機構47Sは、第1受圧面72aと第2受圧面72bとの面積差により、第1貯留部73を介して第1燃料供給経路43Jに作用する第1供給圧力が、第2貯留部74を介して第2燃料供給経路44Jに作用する第2供給圧力より高くなる。
【0174】
シール経路97は、第1燃料供給経路43Jと針弁160を連通する。シール経路97は、第1燃料供給経路43Jの第1燃料を弁体160aの摺動シール部160fに供給する。シール経路97は、第1燃料供給経路43Jの第1燃料の第1供給圧力が作用する。また、シール経路97は、逆止弁212と、蓄圧容器213とが設けられる。逆止弁212は、針弁160から第1燃料供給経路43J側への第1燃料の逆流を阻止する。蓄圧容器213は、第1燃料供給経路43Jの第1燃料の圧力が高くなり、逆止弁212が開放されたときに第1燃料が貯留され、第1燃料を蓄圧する。
【0175】
図27および図28に示すように、クランク角a41にて、第1供給ポンプ41が作動すると、第1燃料供給経路43Jの第1燃料の第1供給圧力が上昇し、第1供給圧力がピストン72Sに作用し、ピストン72Sを下降してリフト量(図28の上部実線)が減少する。すると、ピストン72Sの膨出部102aがシート部102bから離間して第1燃料供給経路43Jが第1貯留部73に連通する。第1燃料供給経路43Jの第1燃料が第1貯留部73に供給されて圧力P1(図28の中部実線)が上昇(図28の実線)し、ピストン72Sがさらに下降し、第2貯留部74の第2燃料が加圧されて圧力P2(図28の上部点線)が上昇する。このとき、圧力が高くなった第1燃料供給経路43Jの第1燃料が、シール経路97から逆止弁212を開放して蓄圧容器213に蓄圧され、圧力P3(図28の二点鎖線)が上昇する。
【0176】
クランク角a42からクランク角a43にかけて、針弁160のリフト量(図28の下部実線)が増加し、第2貯留部74の第2燃料の第2供給圧力P2が針弁160の噴射圧を超えると開放され、第2燃料が針弁160の噴孔160eから噴出される。その後、第1供給ポンプ41が停止すると、圧力P1、圧力P2が低下し、クランク角a44からクランク角a45にかけて、針弁が閉止して噴射が終了する。その後、クランク角a45からクランク角a46にかけて、ピストン機構47Sにおける第2受圧面72bと第1受圧面72aとの面積差により第1燃料供給経路43Jの第1燃料が増圧され、逆止弁81が閉止してカット弁88が開放され、第1燃料供給経路43Jの第1燃料は、調圧弁211を通して戻され、ピストン72Sが第1燃料供給経路43J側に移動する。なお、蓄圧容器213で蓄圧された第1燃料の圧力P3は、第2燃料の圧力よりも常に高い圧力に保持されており、針弁160の摺動シール部160fに供給されることで、弁体160aの摺動部の潤滑性を保ちつつ、第2燃料がドレンに流出することを防いでいる。
【0177】
ピストン機構47Sにて、ピストン72Sが第2燃料供給経路44J側から第1燃料供給経路43J側に移動すると、第2貯留部74の容積が増大し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。クランク角a46にて、ピストン72Sが第1燃料供給経路43J側に到達すると、ピストン72Sの膨出部102aがシート部102bに当接し、第1燃料供給経路43Jと第1貯留部73との連通が遮断される。すると、第1燃料供給経路43Jの第1燃料の第1燃料圧力P4(図28の一点鎖線)に対して、第1貯留部73の第1燃料の第1燃料圧力P1(図28の中部実線)と第2貯留部74の第2燃料の第2圧力P2(図28の中部点線)が若干高く維持される。
【0178】
第18実施形態の燃料噴射装置17Sは、ピストン72Bにおける第1燃料供給経路43J側の第1受圧面72aの面積を小さくすることにより、燃料噴射が行われていない期間に、第2燃料が自ら第2貯留部74に流入することができるため、燃料供給装置31Qの簡素化が図れる。
【0179】
[第19実施形態]
図29は、第19実施形態の燃料噴射装置を表す概略構成図である。なお、上述した第18実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0180】
図29に示すように、燃料噴射装置17Tは、燃料供給装置31Qと、燃料供給経路32Jと、燃料噴射弁33Jとを備える。燃料供給装置31Qは、第1供給ポンプ41を有する。燃料供給経路32Jは、第1燃料供給経路43Jと、第2燃料供給経路44Jとを有する。燃料噴射弁33Jは、一つの針弁160を有する。また、燃料噴射装置17Qは、ピストン機構47Sを備える。
【0181】
第1供給ポンプ41は、第1実施形態と同様である。第1燃料供給経路43Jは、第1供給ポンプ41の接続部とピストン機構47Sの接続部との間に逆止弁81が設けられ、第1供給ポンプ41の接続部より上流側に逆止弁87が設けられる。また、第1燃料供給経路43Jは、逆止弁81,87および第1供給ポンプ41を迂回する返送経路82が設けられ、返送経路82は、カット弁88と調圧弁211とが設けられる。そして、返送経路82は、カット弁88と調圧弁211との間に他気筒の第1燃料供給経路201,202が連結される。また、返送経路82は、加圧経路214を介してブーストポンプ215が連結される。ブーストポンプ215は、モータにより駆動することで、第1燃料を加圧経路214から返送経路82に供給することができる。
【0182】
第2燃料供給経路44Jは、第2燃料供給源60とピストン機構47Sとの接続部との間に逆止弁85が設けられる。また、第2燃料供給経路44Jは、第2燃料供給源60と逆止弁85との間に切替弁216を介して窒素供給源217が接続される。切替弁216は、第2燃料供給経路44Jに対して、第2燃料供給源60からの第2燃料の供給と、窒素供給源217からの窒素(N2)の供給を切り替えるものである。この場合、窒素供給源217の窒素の圧力は、第2燃料供給源60の第2燃料の圧力より低い圧力である。
【0183】
さらに、第2燃料供給経路44Jは、ピストン機構47Sと逆止弁85との間にドレン通路218を介してドレン弁219が接続される。第2燃料供給経路44Jにおける逆止弁85より上流側の圧力がドレン弁219を閉止する方向に作用する受圧面積は、逆止弁85より下流のドレン通路218からドレン弁219を開放する方向に作用する受圧面積よりも十分大きい。そのため、ドレン弁219は、針弁160が第2燃料を噴射中の高い圧力が開放方向にかかっても開くことがない。また、ドレン弁219は、第2燃料供給経路44Jに窒素が供給されたとき、第2燃料供給経路44Jの圧力が低下して開放される。
【0184】
ブーストポンプ215が駆動すると、第1燃料が加圧経路214および返送経路82に供給され、調圧弁211により調整された圧力(例えば、8MPa)の第1燃料が第1燃料供給経路43Jに供給される。ここで、所定圧力(例えば、8MPa)の第2燃料が第2燃料供給経路44Jに供給されると、ドレン弁219が閉止する。すると、ピストン機構47Sにおける第2受圧面72bと第1受圧面72aとの面積差によりピストン72Sが第1燃料供給経路43J側に移動し、第2貯留部74に所定量の第2燃料が貯留される。なお、ブーストポンプ215の代わりに、第1供給ポンプ41を作動してもよい。
【0185】
また、ブーストポンプ215や第1供給ポンプ41が作動していない状態で、ピストン機構47Sにおけるピストン72Sの第1受圧面72aに第1燃料の高圧が作用していない。ここで、切替弁216を作動し、窒素供給源217の窒素を第2燃料供給経路44Jに供給する。窒素供給源217の窒素は、第2燃料供給経路44Jの第2燃料の圧力より低い。そのため、ドレン弁219が開放され、第2貯留部74の第2燃料がドレン弁219から外部に排出されて掃除される。このとき、第1燃料供給経路43Jにおける第1燃料の圧力がまだ高いことから、ピストン72Sが第2燃料供給経路44J側の死点まで移動し、第2貯留部74に残った第2燃料が押し出される。第1貯留部73の圧力が第2貯留部74の圧力より高いことから、ピストン72Sの摺動部を通って第2貯留部74に漏れた第1燃料も第2燃料ともに外部に排出される。その後、第2貯留部74の第2燃料が排出されると、調圧弁211を開放し、切替弁216からの窒素の供給を停止する。
【0186】
第19実施形態の燃料噴射装置17Tは、第2燃料供給経路44Jに切替弁216を介して窒素供給源217を接続すると共に、ドレン通路218を介してドレン弁219を接続する。そのため、第2貯留部74に貯留された第2燃料を外部に排出することができ、第2貯留部74の掃徐を容易に行うことができる。
【0187】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る燃料噴射装置は、所定の着火性を有する第1燃料を供給する第1燃料供給経路43,43Jと、第1燃料より着火性の低い第2燃料を供給する第2燃料供給経路44,44Jと、第1燃料供給経路43,43Jおよび第2燃料供給経路44,44Jが接続される燃料噴射弁33,33G,33Jと、第1燃料供給経路43,43Jと第2燃料供給経路44,44Jとの間に設けられて第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧により移動するピストン72,72A,72B,72C,72Sを有するピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sとを備える。
【0188】
第1の態様に係る燃料噴射装置によれば、第1燃料の第1供給圧力と第2燃料の第2供給圧力との差圧によりピストン72,72A,72B,72C,72Sが移動することで、第2燃料の貯留行程と、燃料噴射弁33,33G,33Jによる第1燃料と第2燃料の噴射行程を交互に行うことができる。すなわち、第1燃料と第2燃料は、途中で混在することがなく、加圧されてピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sに供給される。その結果、第1燃料と第2燃料との混合を抑制することで、高精度な燃料噴射を可能として排ガスに含まれる有害物質の低減を図ることができる。
【0189】
第2の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sは、第1燃料供給経路43,43Jに連通して第1燃料を貯留する第1貯留部73と、第2燃料供給経路44,44Jに連通して第2燃料を貯留する第2貯留部74とを有する。これにより、ピストン72,72A,72B,72C,72Sが第2燃料供給経路44,44J側から第1燃料供給経路43,43J側に移動するとき、第2貯留部74の容積が拡大し、次の行程で噴射する所定量の第2燃料を貯留することができる。
【0190】
第3の態様に係る燃料噴射装置は、第2態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、燃料噴射弁33,33G,33Jは、針弁45,46,142を有し、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F47Sは、第2供給圧力が第1供給圧力より高いときに、所定量の第2燃料を第2貯留部74に貯留可能であり、第1供給圧力が第2供給圧力より高いときに、第1燃料を第1燃料供給経路43,43Jから針弁45,142に供給可能であると共に、第2貯留部74の第2燃料を針弁46に供給可能である。これにより、第2燃料の貯留行程と、燃料噴射弁33,33G,33Jによる第1燃料と第2燃料の噴射行程を第1供給圧力と第2供給圧力との差圧に応じて行うことで、第1燃料と第2燃料は、途中で混在することがなく、第1燃料と第2燃料を適切な時期に噴射させることができる。
【0191】
第4の態様に係る燃料噴射装置は、第3の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料を加圧して第1燃料供給経路43,43Jに供給する第1供給ポンプ41と、第2燃料を加圧して第2燃料供給経路44,44Jに供給する第2供給ポンプ42とを有し、第2供給ポンプ42の作動時に第2燃料を第2貯留部74に貯留し、第1供給ポンプ41の作動時に第1燃料を第1燃料供給経路43,43Jから針弁45,142に供給すると共に、第2貯留部74の第2燃料を針弁46に供給する。これにより、第1供給ポンプ41と第2供給ポンプ42を交互に作動させることで、第2燃料を貯留行程と、第1燃料および第2燃料の噴射行程を行うことができ、第1供給ポンプ41および第2供給ポンプ42の制御の簡素化を図ることができる。
【0192】
第5の態様に係る燃料噴射装置は、第4の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料の第1供給ポンプ41側への逆流を阻止する逆止弁81が第1燃料供給経路43,43Jに設けられると共に、第2供給圧力が第1供給圧力より高いときに、第1燃料が逆止弁81を迂回して第1供給ポンプ41側に返送される返送経路82が設けられる。これにより、ピストン72,72A,72B,72C,72Sが第2燃料供給経路44,44J側から第1燃料供給経路43,43J側に移動して第2貯留部74に第2燃料が貯留されるとき、第1貯留部73に貯留されている第1燃料が返送経路82により返送されることとなり、ピストン72,72A,72B,72C,72Sを円滑に作動させることができる。
【0193】
第6の態様に係る燃料噴射装置は、第4の態様または第5の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、第1供給圧力が第2供給圧力より高いときに、第2貯留部74に貯留された第2燃料の第2供給ポンプ42側への逆流を阻止する逆止弁84,85,86が第2燃料供給経路44,44Jに設けられる。これにより、第2供給圧力により第2貯留部74に貯留された第2燃料を第2供給ポンプ42側へ逆流させずに、第2針弁46に適切に供給することができる。
【0194】
第7の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、ピストン機構47B,47C,47F,47Sは、第1燃料供給経路43と第2燃料供給経路44との間に設けられるシリンダ71,71C,71Sと、シリンダ71,71C,71Sに移動自在に支持されるピストン72B,72C,72Sとを有し、シリンダ71,71C,71Sまたはピストン72B,72C,72Sは、ロッド部101,106を有し、ピストン72B,72C,72Sは、ロッド部101,106が位置する一端部に第1供給圧力が作用する第1受圧面72aが形成され、他端部に第2供給圧力が作用する第2受圧面72bが形成され、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。これにより、第1燃料供給経路43の第1燃料の圧力が第2燃料供給経路44の第2燃料の圧力より高くなることから、第2燃料供給経路44の第2燃料が第1燃料供給経路43側に流れて第1燃料に混入することがなく、回収された第1燃料は、第2燃料を含まず、処理を容易とすることができる。
【0195】
第8の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、燃料噴射弁33は、第1燃料供給経路43が接続される第1針弁45と、第2燃料供給経路44が接続される第2針弁46とを有する。これにより、第1燃料と第2燃料を異なる時期に噴射することができると共に、第1燃料と第2燃料を同時期に噴射することができる。
【0196】
第9の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、ピストン72A,72B,72C,72Sは、移動方向の一端部に第1供給圧力が作用する第1受圧面72aが形成され、移動方向の他端部に第2供給圧力が作用する第2受圧面72bが形成され、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さく、第1供給圧力を第2針弁46の摺動シール部46fに作用させるシール経路97が設けられる。これにより、第2針弁46の摺動シール部46fからの第2燃料の漏れを抑制することができ、第2燃料の回収作業を不要とすることができる。
【0197】
第10の態様に係る燃料噴射装置は、第8の態様または第9の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sと第1針弁45との間の第1燃料供給経路43に第1燃料の供給を制限する第1フローリミッタ110,130が設けられる。これにより、第2燃料の噴射期間の初期だけ第1燃料を噴射することとなり、着火性の良い第1燃料が着火した火炎を火種として着火性の悪い第2燃料を着火させることができ、第2燃料の着火性を確保することができると共に、第1燃料の噴射量を減少させることができる。
【0198】
第11の態様に係る燃料噴射装置は、第10の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、ピストン72,72A,72B,72Cが第2燃料供給経路44側に移動する移動終期に、第1燃料供給経路43における第1フローリミッタ110,130の下流側と上流側とを連通する連通経路120が設けられる。これにより、第2燃料の噴射期間の初期と終期だけ第1燃料を噴射することとなり、着火性の良い第1燃料が着火した火炎を火種として着火性の悪い第2燃料を着火させることができると共に、着火性の悪い第2燃料を完全燃焼させることができる。
【0199】
第12の態様に係る燃料噴射装置は、第10の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、第1フローリミッタ130の作動時期を調整する可変絞り弁(第1フローリミッタ調整弁)136が設けられる。これにより、可変絞り弁136が第1燃料の初期噴射の噴射終了時期を調整することで、着火性の悪い第2燃料の燃焼性を向上することができる。
【0200】
第13の態様に係る燃料噴射装置は、第10の態様から第12の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、ピストン72Bは、移動方向の一端部に第1供給圧力が作用する第1受圧面72aが形成され、第1受圧面72aは、ピストン72Bの径方向に対して傾斜する傾斜面をなすと共に、ピストン72Bを回動する駆動部140が設けられる。これにより、傾斜する第1受圧面72aを回動することで、第1燃料の終期噴射の噴射開始時期を調整することができ、着火性の悪い第2燃料の燃焼性を向上することができる。
【0201】
第14の態様に係る燃料噴射装置は、第10の態様から第13の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料供給経路43からピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sを迂回して第1燃料を供給する第3燃料供給経路141が設けられ、燃料噴射弁33Gは、第3燃料供給経路141が接続される第3針弁142を有し、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sに供給される第1燃料の供給量と第3燃料供給経路141に供給される第1燃料の供給量とを調整する分配弁143が設けられる。これにより、分配弁143がピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sに第1燃料を供給せずに、第3燃料供給経路141に全ての第1燃料を供給することで、第2燃料を噴射せずに第1燃料だけを噴射することができる。また、分配弁143による分配量を徐々に変更することで、第1燃料だけを噴射する噴射形態と、第1燃料および第2燃料を噴射する噴射形態との間の移行を円滑に行うことができる。
【0202】
第15の態様に係る燃料噴射装置は、第10の態様から第14の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料供給経路43からピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sを迂回して第1燃料を供給する第3燃料供給経路141が設けられ、燃料噴射弁33Gは、第3燃料供給経路141が接続される第3針弁142を有し、第3燃料供給経路141に第1燃料の供給を制限する第2フローリミッタ150が設けられると共に、第2フローリミッタ150の作動時期を調整する可変絞り弁(第2フローリミッタ調整弁)156が設けられる。これにより、第2フローリミッタ150の作動時期を徐々に変更することで、第1燃料だけを噴射する噴射形態と、第1燃料および第2燃料を噴射する噴射形態との間の移行を円滑に行うことができる。
【0203】
第16の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jは、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sより下流側で合流してから針弁160に接続され、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sは、ピストン72,72A,72B,72Cが第2燃料供給経路44J側に移動する移動終期に、第1燃料供給経路43Jが針弁160に連通され、第1燃料供給経路43Jは、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sと針弁160との間に第1燃料の逆流を防止する逆止弁161が設けられる。これにより、一つの針弁160を用いて第1燃料と第2燃料を異なる時期に噴射することができると共に、第1燃料と第2燃料との混合を抑制することができる。
【0204】
第17の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料供給経路43Jと第2燃料供給経路44Jは、ピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sより下流側で合流してから針弁160に接続され、ピストン72,72A,72B,72C,72Sは、移動方向の一端部に第1供給圧力が作用する第1受圧面72aが形成され、移動方向の他端部に第2供給圧力が作用する第2受圧面72bが形成され、第1受圧面72aの面積が第2受圧面72bの面積より小さい。これにより、針弁160からピストン機構47,47A,47B,47C,47Fへの第1燃料および第2燃料の逆流を抑制することができる。
【0205】
第18の態様に係る燃料噴射装置は、第16の態様または第17の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料供給経路43Jにピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sを迂回する迂回経路170が設けられ、迂回経路170に第1燃料の供給量を調整する絞り弁(流量調整弁)171が設けられる。これにより、針弁160は、着火性の悪い第2燃料を噴射しているときに、着火性の良い第1燃料を少量噴射することで、着火性の悪い第2燃料の燃焼性を向上することができる。
【0206】
第19の態様に係る燃料噴射装置は、第16の態様から第18の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料供給経路43Jにピストン機構47,47A,47B,47C,47F,47Sを迂回する迂回経路170が設けられ、迂回経路170に第1フローリミッタ110が設けられる。これにより、針弁160は、着火性の悪い第2燃料を噴射しているときに、着火性の良い第1燃料を少量噴射することで、着火性の悪い第2燃料の燃焼性を向上することができる。
【0207】
第20の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料を加圧して第1燃料供給経路43,43Jに供給する第1供給ポンプ41を有し、第1燃料供給経路43,43Jは、第1燃料の第1供給ポンプ41側への逆流を阻止する逆止弁81が設けられると共に、逆止弁81より下流側の第1燃料を排出して第1供給圧力を低下させる残圧調整弁180が設けられる。これにより、第1供給ポンプ41と残圧調整弁180とを作動させることで、第2燃料の貯留行程と、第1燃料および第2燃料の噴射行程を行うことができ、第2燃料を加圧する第2供給ポンプをなくすことで、装置の簡素化を図ることができる。
【0208】
第21の態様に係る燃料噴射装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置であって、さらに、第1燃料を加圧して第1燃料供給経路43,43Jに供給する第1供給ポンプ41を有し、第1燃料供給経路43,43Jは、第1燃料の第1供給ポンプ41側への逆流を阻止する逆止弁(第1逆止弁)81が設けられ、第2燃料供給経路44,44Jは、第2燃料の第2燃料供給源60側への逆流を阻止する逆止弁(第2逆止弁)85が設けられ、第2逆止弁85の開放圧が逆止弁81の開放圧より低く設定される。これにより、第1供給ポンプ41を作動させることで、第2燃料の貯留行程と、第1燃料および第2燃料の噴射行程を行うことができ、第2燃料を加圧する第2供給ポンプをなくすことで、装置の簡素化を図ることができる。
【0209】
第22の態様に係る燃料噴射装置は、第21の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、ピストン機構47Sは、ピストン72Sにおけるロッド部106の基端部に膨出部102aが設けられ、シリンダ71Sにおける第1燃料供給経路43J側にシート部102bが設けられ、ピストン72Sが第1燃料供給経路43J側に移動して膨出部102aがシート部102bに当接することで、第1燃料供給経路43Jとの連通を遮断する。これにより、第1燃料供給経路43Jと第1貯留部73との連通および遮断を適切に行うことができる。
【0210】
第23の態様に係る燃料噴射装置は、第21の態様に係る燃料噴射装置であって、さらに、第2燃料供給経路44Jは、逆止弁85より上流側に第2燃料より低圧の窒素(掃徐用ガス)を供給する窒素供給源(ガス供給源)217が接続されると共に、逆止弁85より上流側の圧力が閉止方向に作用する受圧面積が、逆止弁85より下流の圧力が開放方向に作用する受圧面積よりも大きいドレン弁219が設けられる。これにより、第2貯留部74に貯留された第2燃料を外部に排出することができ、第2貯留部74の掃徐を容易に行うことができる。
【0211】
第24の態様に係る往復動内燃機関は、燃焼室25を有するディーゼルエンジン本体11と、燃焼室25に燃料を噴射する第1の態様から第23の態様のいずれか一つに係る燃料噴射装置17,17A,17B,17C,17D,17E,17F,17G,17H,17J,17K,17L,17M,17N,17P,17Q,17R,17S,17Tとを備える。これにより、第1燃料と第2燃料との混合を抑制することで、高精度な燃料噴射を可能として排ガスに含まれる有害物質の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0212】
10 舶用ディーゼルエンジン(往復動内燃機関)
11 ディーゼルエンジン本体(内燃機関本体)
12 シリンダライナ
13 ピストン
14 掃気トランク
15 排気マニホールド
16 排気弁
17,17A,17B,17C,17D,17E,17F,17G,17H,17J,17K,17L,17M,17N,17P,17Q,17R,17S,17T 燃料噴射装置
31,31N,31Q 燃料供給装置
32,32G,32J 燃料供給経路
33,33G,33J 燃料噴射弁
41 第1供給ポンプ
42 第2供給ポンプ
43,43J 第1燃料供給経路
44,44J 第2燃料供給経路
45 第1針弁
46 第2針弁
47,47A,47B,47C,47F,47S ピストン機構
50 第1燃料供給源
51 ピストン
52 プランジャ
53 第1作動油供給経路
54 作動流体源
55 第1電磁弁
56 制御部
60 第2燃料供給源
61 ピストン
62 プランジャ
63 第2作動油供給経路
65 第2電磁弁
71,71A,71C,71S シリンダ
72,72A,72B,72C,72S ピストン
72a 第1受圧面
72b 第2受圧面
73 第1貯留部
74 第2貯留部
81,83,84,85,86,87 逆止弁
88 カット弁
89 等圧弁
82 返送経路
95 空間部
96 ドレン経路
101,106 ロッド部
102,107 本体部
103,108 摺動部
104,109 ドレン経路
110,130 第1フローリミッタ
120,121,122 連通経路
136 可変絞り弁(第1フローリミッタ調整弁)
141 第3燃料供給経路
142 第3針弁
143 分配弁
150,190 第2フローリミッタ
156 可変絞り弁(第2フローリミッタ調整弁)
160 針弁
161 逆止弁
170 迂回経路
171 絞り弁(流量調整弁)
180 残圧調整弁
181 調圧経路
211 調圧弁
212 逆止弁
213 蓄圧容器
214 加圧経路
215 ブーストポンプ
216 切替弁
217 窒素供給源
218 ドレン通路
219 ドレン弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29