(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024117392
(43)【公開日】2024-08-29
(54)【発明の名称】土壌侵食防止用マット、斜面土壌保護構造および斜面土壌の土壌侵食を防止する方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
E02D17/20 103B
E02D17/20 102B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023464
(22)【出願日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000226747
【氏名又は名称】日新産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友人
(72)【発明者】
【氏名】石田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】長沼 寛
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA12
2D044DB07
(57)【要約】
【課題】より簡単且つ効果的に斜面土壌を保護することを可能とする土壌侵食防止用マットを提供する。
【解決手段】土壌侵食防止用マット100は、縦横に延在し、斜面土壌の傾斜方向に沿って縦方向が配置され、土壌表面の侵食を軽減するように構成された、可撓性のマット本体101と、該マット本体101の表面に装着され、斜面土壌の表面を流れる流水の流速を軽減するための1または複数の流速軽減材110とを、備える。流速軽減材110は、マット本体101の横方向全体に亘って延在する長筒状に形成され、マット本体101の表面から垂直方向に所定の高さを有する堰を成すように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌の侵食を軽減するために斜面土壌に設置される土壌侵食防止用マットであって、
縦横に延在し、前記斜面土壌の傾斜方向に沿って縦方向が配置され、土壌表面の侵食を軽減するように構成された、可撓性のマット本体と、
前記マット本体の表面に装着され、前記斜面土壌の表面を流れる流水の流速を軽減するための1または複数の流速軽減材とを、備え、
前記流速軽減材は、前記マット本体の横方向全体に亘って延在する長筒状に形成され、前記マット本体の表面から垂直方向に所定の高さを有する堰を成すように構成されていることを特徴とする土壌侵食防止用マット。
【請求項2】
前記流速軽減材は、袋体と、前記袋体に充填された、少なくとも10mm以下の粒度または粒径の粒状体を含む充填材とを備えることを特徴とする請求項1に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項3】
前記流速軽減材は、袋体と、前記袋体に充填された、少なくとも木材チップを含む充填材とを備えることを特徴とする請求項1に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項4】
前記流速軽減材は、前記マット本体の表面から垂直方向に5~13cmの高さで隆起していることを特徴とする請求項3に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項5】
前記流速軽減材と前記マット本体の表面との連結部は、前記流速軽減材の長手方向に一直線状または点状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項6】
前記流速軽減材は、前記袋体から前記流速軽減材の長手方向に直交する幅方向に延在する帯状の接続代を備え、前記接続代は、前記マット本体の表面に平行に延在する面を連結部として、前記マット本体の表面に連結されていることを特徴とする請求項4に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項7】
前記流速軽減材は、長手方向の少なくとも一方の端部において、第1の長さで前記マット本体と重合するとともに、第2の長さで前記マット本体の横方向の端縁から突出し、前記マット本体表面から離間するように撓み変形可能である可撓変形部を備えることを特徴とする請求項4に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項8】
前記マット本体は、所定厚のわた状シートから形成されることを特徴とする請求項4に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項9】
前記マット本体に装着された緑化材をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の土壌侵食防止用マット。
【請求項10】
複数の請求項1から9のいずれか一項に記載の土壌侵食防止用マットが斜面土壌の保護領域に設置された斜面土壌保護構造であって、
複数の流速軽減材が前記斜面土壌の等高線方向に途切れることなく連続して配置され、複数のマット本体が前記保護領域の土壌表面を露出させることなく覆っていることを特徴とする斜面土壌保護構造。
【請求項11】
斜面土壌の保護領域に請求項1から9のいずれか一項に記載の土壌侵食防止用マットを複数設置して、土壌侵食を防止するように斜面土壌を保護する方法であって、
横方向に隣接する土壌侵食防止用マットの流速軽減材を前記斜面土壌の等高線方向に途切れることなく連続するように配置し、
隣接する土壌侵食防止用マットのマット本体の端縁同士を重合させて配置することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面土壌に設置され、斜面土壌の土壌侵食を軽減するための土壌侵食防止用マット、該土壌侵食防止用マットによる斜面土壌保護構造、および、土壌侵食防止用マットによって斜面土壌を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、断続的な降雨や集中豪雨によって、法面などの斜面土壌の土壌表層の侵食害が発生し、土砂崩れなどの災害が発生することが問題となっている。そして、斜面土壌の土壌侵食を軽減または防止するために、従来より様々な対策が行われている。
【0003】
特許文献1は、土壌地面に対して密着して土壌侵食防止を行う土壌侵食防止用シート状物を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。土壌侵食防止用の長尺シート状物(1)は、合成樹脂又は/及び天然繊維で形成され、厚さ5乃至20mmの嵩高,柔軟性を有する。所定幅の長尺シート状物(1)の上側表面の実質的に全面が補強ネット(2)で被覆され、該の長さ方向の左右両端近傍部分のみにおいて該補強ネット(2)と長尺シート状物(1)とが繋止されている。長尺シート状物(1)に繋止された補強ネット(2)を利用して適宜間隔をおいてアンカーピン(4)を打設することにより、長尺シート状物(1)が補強ネット(2)を介してアンカーピン(4)によって土壌(5)に繋止される。柔軟性に富む長尺シート状物(1)は自重で垂れ下がり、不陸、凹凸のある土壌(5)にも良好に密着する。加えて、降雨があれば長尺シート状物(1)は、含水して一層重量を増し、不陸、凹凸のある土壌でもその地面に沿って密着する。すなわち、不陸、凹凸のある地面に対しても容易に土壌に密着し、効果的に土壌侵食防止を図ることができる。
【0004】
特許文献2は、丸太材を用いて傾斜面の表層土の流出防止する丸太構造体を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献2の符号を示す。丸太構造体(1)は、丸太筋工として傾斜地に設けられ、表層土の流出を防止するとともに植生を保護するために形成されたものである。そして、傾斜地の地盤(15)の上でほぼ水平となる方向に配置された丸太材(11)と、この丸太材の上に積み上げられた複数の上積丸太材(12)と、これらの丸太材(11)及び上積丸太材(12)を上下方向に貫通し、地盤中に貫入された全ねじ棒鋼(13)と、全ねじ棒鋼(13)の上部にねじり合わされ、最上層の上積丸太材(12)の上に締め付けられたナット(14)と、によって主要部が構成されている。このような丸太筋工は、一般的に、傾斜面を流れる表面水を堰止めて、流速軽減効果や雨水分散効果を高めるために施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-60901
【特許文献2】特開2021-25314
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような侵食防止用のマットを斜面土壌の表面に密着させて被覆することによって、雨滴衝撃を緩和し、土砂流出を軽減することが可能であるが、マットによる被覆のみでは、表面水の流速を軽減する効果が低いので、斜面土壌の保護を十分に行うことができない。そこで、特に山間部等では、特許文献2のような丸太筋工をマットと併用することによって、丸太筋工による表面水の流速軽減効果を付与することが行われ得る。しかしながら、丸太筋工が形成された斜面土壌に対してマットが敷設される場合、マットが途切れて、表面保護できない箇所が生じることが避けられない。このようなマットが途切れた箇所から集中的に侵食害が増長し、地中に水道などが形成されて、かえって、より大規模な土砂災害につながるおそれがあることが問題であった。また、斜面土壌に丸太筋工を構築する手間や労力も問題の1つとして上げられる。したがって、発明者らは、上記不具合を生じさせることなく、表面水の流速軽減効果および土砂流出軽減効果を発揮して、斜面土壌を保護することができる土壌侵食防止用マットを提供することを本発明の課題とした。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より簡単且つ効果的に斜面土壌を保護することを可能とする土壌侵食防止用マット、該土壌侵食防止用マットによる斜面土壌保護構造、および、土壌侵食防止用マットによって斜面土壌を保護する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態の土壌侵食防止用マットは、土壌の侵食を軽減するために斜面土壌に設置される土壌侵食防止用マットであって、
縦横に延在し、前記斜面土壌の傾斜方向に沿って縦方向が配置され、土壌表面の侵食を軽減するように構成された、可撓性のマット本体と、
前記マット本体の表面に装着され、前記斜面土壌の表面を流れる流水の流速を軽減するための1または複数の流速軽減材とを、備え、
前記流速軽減材は、前記マット本体の横方向全体に亘って延在する長筒状に形成され、前記マット本体の表面から垂直方向に所定の高さを有する堰を成すように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の一形態の土壌侵食防止用マットによれば、可撓性のマット本体が斜面土壌を被覆することによって、土砂の流出軽減効果を発揮することが可能である。また、マット本体の横方向全体に亘って延在する長筒状の流速軽減材が、マット本体の表面に装着されて、マット本体の表面から垂直方向に所定の高さを有する堰を成すことによって、マット本体に途切れた箇所を生じさせることなく、表面水の流速軽減効果を併せて発揮することが可能である。したがって、本発明の土壌侵食防止用マットは、表面水の流速軽減効果を発揮しつつ、斜面土壌の保護領域を途切れることなく被覆することを可能とするものである。さらに、本発明の土壌侵食防止用マットは、流速軽減材をマット本体表面に装着することで、丸太筋工と同様の表面水の流速軽減効果を発揮することが可能であり、従来と比べて、斜面土壌の保護の労力を改善することができる。
【0010】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記流速軽減材は、袋体と、前記袋体に充填された、少なくとも10mm以下の粒度または粒径の粒状体を含む充填材とを備えることを特徴とする。袋体に充填材を充填することによって流速軽減材を簡単に準備可能である。また、充填材を10mm以下の粒度または粒径の粒状体としたことにより、粒状体が袋体内部の隙間を密に埋めるとともに、袋体内部で比較的自由に移動できることから、流速軽減材の外形を設置環境に合わせて容易に変形することが可能となる。
【0011】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記流速軽減材は、袋体と、前記袋体に充填された、少なくとも木材チップを含む充填材とを備えることを特徴とする。袋体に木材チップを充填することによって流速軽減材を簡単に準備可能であり、且つ、丸太材と比べて比較的軽量であることから、より高い施工性を発揮することができる。
【0012】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記流速軽減材は、前記マット本体の表面から垂直方向に5~13cmの高さで隆起していることを特徴とする。すなわち、流速軽減材をマット本体表面に装着することで、斜面土壌の表面に適度な高さの堰を形成して、施工性を阻害することなく、表面水の流速軽減効果を効果的に発揮することが可能である。
【0013】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記流速軽減材と前記マット本体の表面との連結部は、前記流速軽減材の長手方向に一直線状または点状に形成されていることを特徴とする。すなわち、流速軽減材とマット本体表面との連結部を縦幅方向の1点としたことで、流速軽減材にマット本体の縦方向の力が加わったときに、流速軽減材が連結部を支点として縦方向に遊動できることで、マット本体が流速軽減材に引っ張られて、土壌表面から浮き上がったり、マット本体が破れたりすることが抑えられる。
【0014】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記流速軽減材は、前記袋体から前記流速軽減材の長手方向に直交する幅方向に延在する帯状の接続代を備え、前記接続代は、前記マット本体の表面に平行に延在する面を連結部として、前記マット本体の表面に連結されていることを特徴とする。すなわち、袋体から延び出る帯状の接続代の面を連結部としてマット本体表面に連結することによって、より強固に流速軽減材をマット本体表面に連結することができる。さらに、袋体が接続代を介してマット本体表面に連結されていることから、流速軽減材にマット本体の縦方向の力が加わったときに、流速軽減材が接続代に対して縦方向に遊動できることで、マット本体が流速軽減材に引っ張られて、土壌表面から浮き上がったり、マット本体が破れたりすることが抑えられる。
【0015】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記流速軽減材は、長手方向の少なくとも一方の端部において、第1の長さで前記マット本体と重合するとともに、第2の長さで前記マット本体の横方向の端縁から突出し、前記マット本体表面から離間するように撓み変形可能である可撓変形部を備えることを特徴とする。すなわち、流速軽減材の端部は、可撓変形部を介して、マット本体の端縁においてマット本体表面から浮き上がるように変形することが可能である。これにより、複数の土壌侵食防止用マットを横方向に隣接して配置した場合に、隣接する流速軽減材を斜面土壌の等高線方向に途切れることなく連続して配置するとともに、隣接するマット本体の端縁同士を等高線方向に重ね合わせて敷設することができる。特には、一方の土壌侵食防止用マットの流速軽減材を、可撓変形させた他方の土壌侵食防止用マットの流速軽減材とマット本体との間に差し込むことによって、隣接する流速軽減材同士を互いに干渉させることなく、斜面土壌の同じレベルに配置することができる。したがって、複数の土壌侵食防止用マットを用いて、斜面土壌の保護を効果的に行うことが可能である。
【0016】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記マット本体は、所定厚のわた状の層から形成されることを特徴とする。すなわち、マット本体のわた状シートの層が、雨滴衝撃を効果的に緩和し、かつ、わた状の繊維が土粒子を捕捉してその移動を抑えることができる。さらに、表面水がわた状の層を移動することで、表面水が土壌に流れる量を軽減し、マット内での排水処理を効果的に促進することができる。
【0017】
本発明のさらなる形態の土壌侵食防止用マットは、上記形態の土壌侵食防止用マットにおいて、前記マット本体に装着された緑化材をさらに備えることを特徴とする。すなわち、土壌侵食防止用マットを斜面土壌に設置することによって、斜面土壌の侵食を軽減しつつ、植物による土壌緑化も同時に促進することが可能である。
【0018】
本発明の一形態の斜面土壌保護構造は、複数の上記形態の土壌侵食防止用マットが斜面土壌の保護領域に設置された斜面土壌保護構造であって、
複数の流速軽減材が前記斜面土壌の等高線方向に途切れることなく連続して配置され、複数のマット本体が前記保護領域の土壌表面を露出させることなく覆っていることを特徴とする。
【0019】
本発明の一形態の方法は、斜面土壌の保護領域に上記形態の土壌侵食防止用マットを複数設置して、土壌侵食を防止するように斜面土壌を保護する方法であって、
横方向に隣接する土壌侵食防止用マットの流速軽減材を前記斜面土壌の等高線方向に途切れることなく連続するように配置し、
隣接する土壌侵食防止用マットのマット本体の端縁同士を重合させて配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の土壌侵食防止用マット、斜面土壌保護構造および斜面土壌を保護する方法は、表面水の流速軽減効果および土砂流出軽減効果を発揮して、より簡単且つ効果的に斜面土壌を保護することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態の土壌侵食防止用マットの概略斜視図。
【
図2】
図1の土壌侵食防止用マットの部分拡大斜視図。
【
図3】
図2の土壌侵食防止用マットのA-A断面図。
【
図5】
図2の土壌侵食防止用マットのB-B断面図。
【
図6】本発明の一実施形態の斜面土壌保護構造の全体概略斜視図。
【
図10】本発明の土壌侵食防止用マットの変形例を示す模式図。
【
図11】本発明の別実施形態の土壌侵食防止用マットを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0023】
本発明の一実施形態の土壌侵食防止用マット100は、法面などの斜面土壌に設置されることで、土壌表面を被覆して、土壌の侵食を防止するものである。また、本実施形態の土壌侵食防止用マット100は、斜面土壌に設置されるように構成されたが、傾斜しない平坦面に設置されてもよいことは言うまでもない。なお、本明細書では、土壌侵食防止用マット100が斜面土壌に敷設されたときに、斜面の傾斜方向に沿う方向を「縦」方向とし、斜面の等高線方向に沿う方向を「横」方向として定義する。さらに、土壌侵食防止用マット100が斜面土壌に敷設されたときに法肩側(上方または高所側)に配置される側を「上」位置とし、法尻側(下方または低所側)に配置される側を「下」位置として定義する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態の土壌侵食防止用マット100の概略斜視図である。
図2は、土壌侵食防止用マット100の部分拡大斜視図である。
図3は、土壌侵食防止用マット100のA-A断面図である。
図4は、土壌侵食防止用マット100の分解図である。
図5は、土壌侵食防止用マット100のB-B断面図である。
図1乃至
図5に示すとおり、土壌侵食防止用マット100は、縦横に延在し、斜面土壌の傾斜方向に沿って縦方向が配置され、土壌表面の侵食を軽減するように構成された、可撓性のマット本体101と、該マット本体101の表面に装着され、斜面土壌の表面を流れる流水の流速を軽減するための流速軽減材110とを、備える。なお、本実施形態では、複数の流速軽減材110が、縦方向に長尺の1枚のマット本体101に装着されているが、1つのマット本体101につき1つの流速軽減材110が装着されてもよい。
【0025】
マット本体101は、斜面土壌の保護領域を被覆し、斜面土壌を保護し得るように縦横に延在する可撓性のシートである。マット本体101は、その可撓性または柔軟性により、敷設されたときに、凹凸や起伏を有する斜面土壌の表面に密着し得るように構成されている。本実施形態では、マット本体101は、所定厚のわた状シート102と、該わた状シート102の表面側に貼り付けられた網状シート103とから構成されている。本実施形態では、わた状シート102は、好適には20mm以下の厚みを有するように、合成樹脂繊維または天然繊維をわた(綿)状に成形したものである。より具体的には、わた状シート102の厚みが3~20mmであることが好ましい。また、本実施形態のわた状シート102は、好ましくは、植物の出芽を阻害しないように、繊維目付量が約80g/m2以下となるように加工された。より具体的には、繊維目付量が20~80g/m2であることが好ましい。わた状シート102は、豪雨などによる雨滴の衝撃を効果的に緩和し、かつ、わた状の繊維によって土粒子を捕捉してその移動を効果的に抑えることができる。さらに、わた状シート102は、表面水がわた状シート102の層を移動することで、表面水が土壌に流れる量を軽減し、土壌侵食防止用マット100内での排水処理を効果的に促進することを可能とする。そして、網状シート103は、所定の目合いで合成樹脂繊維または天然繊維を縦横に編み込んで形成されたものであり、わた状シート102を表面側から補強するものである。
【0026】
流速軽減材110は、斜面土壌の表面を流れる流水(表面水)の流速を軽減するようにマット本体101の表面に装着されるものである。流速軽減材110は、マット本体101の横方向全体に亘って延在する長筒状に形成され、マット本体101の表面から垂直方向に所定の高さを有する堰を成すように構成されている。本実施形態では、複数の流速軽減材110が、1枚のマット本体101に縦方向に間隔を空けて配置されている。この間隔は、約0.5~5mであることが好ましい。また、流速軽減材110の長手方向の長さは、マット本体101の横幅よりも大きい。つまり、流速軽減材110は、マット本体101の横方向の両縁から突出するように延伸している。また、流速軽減材110は、堰として機能すべく、マット本体101の表面から垂直方向に5~13cmの高さで隆起していることが好ましい。さらに具体的には、本実施形態の流速軽減材110は、
図3に示す断面視において、円または長円形状を有し、円周約25~40cmの大きさを有することが好ましい。流速軽減材110が、上述したサイズよりも小さいと、流速軽減効果が小さくなり、その反対に、上述したサイズよりも大きいと、施工性が悪くなる。
【0027】
流速軽減材110は、
図3に示すように、袋体111と、該袋体111に充填された充填材112と、該流速軽減材110とマット本体101の表面との連結部115を有する接続代114とを備えてなる。また、流速軽減材110は、袋体111内部で充填材112を移動させることで、丸太材などとは異なり、その外形をある程度変形可能である。つまり、流速軽減材110は、設置された斜面土壌の凹凸や起伏に合わせるように変形可能である。
【0028】
袋体111は、長筒状の不織布袋と、当該不織布袋を覆う樹脂製ネットとから構成されている。この樹脂製ネットは、可撓性および弾性を有する合成樹脂で一体成形されてなる。このような樹脂製ネットは、合成樹脂で一体成形された所謂「編まないネット」として形成されているため、線材を編んで形成したネットよりも強度及び耐久性が高い。
【0029】
また、充填材112は、少なくとも木材チップを含むように構成された。木材チップは、間伐材や廃材を破砕することで、容易に且つ経済的に入手可能である。本実施形態では、充填材112は、木材チップのみから構成された。木材チップは、一般的にランダムな形状を有するが、約10mm以下の粒度または粒径を有する粒状体(小片、破片)であることが好ましい。しかしながら、充填材112は、木材チップに加えて、土壌、土壌改良材、ウレタン破砕物、古紙廃材、樹脂片、砂利などの粒状体を含んでもよい。あるいは、充填材112は、木材チップの代わりに、ウレタン破砕物、古紙廃材、樹脂片、砂利などの粒状体を含んでもよい。すなわち、充填材112は、流速軽減が可能な素材から任意に選択され得る。粒状体は、10mm以下の粒度または粒径を有するとともに、水に溶解することなく、袋体111内部に安定的に維持可能である素材または大きさであることが好ましい。粒状体が10mm以下であると、袋体111内部の隙間を密に埋めるとともに、袋体111内部で比較的自由に移動可能であることから、充填材112の外形を設置環境に合わせて変形し易い。さらに、充填材112は、10mm以下の粒度または粒径を有する粒状体に加えて、それよりも大きい粒度または粒径の木片などの塊体を含んでもよい。
【0030】
接続代114は、袋体111から流速軽減材110の長手方向に直交する幅方向に帯状に延在している。
図3に示すように、接続代114は、マット本体101の表面に平行に延在する面を連結部115として、マット本体101の表面に連結されている。本実施形態では、接続代114は、樹脂製ネットの綴じ代として形成された。この接続代114は、袋体111に対して自由に折り曲げ変形可能である。
図4に示すように、袋体111から垂れ下がる接続代114をマット本体101表面に平行になるように折り曲げた後、接続代114の一面(連結部115)をマット本体101表面に宛がって連結することで、流速軽減材110をマット本体101表面に装着することができる。具体的には、連結部115は、Cリング、ステープル、接着剤などを用いて、その全体または一部において、マット本体101に接続される。また、接続代114および連結部115は、流速軽減材110の長手方向の中央側領域をマット本体101表面に接続するものであるが、端部側領域をマット本体101表面に接続しないように構成されている。
【0031】
そして、流速軽減材110は、長手方向の端部において、第1の長さでマット本体101と重合するとともに、第2の長さでマット本体101の横方向の端縁から突出し、マット本体101表面から離間するように撓み変形可能である可撓変形部116を備える。
図5において、可撓変形部116のマット本体101と重合する部位を重合部位116aと示し、可撓変形部116のマット本体101の端縁から突出する部位を突出部位116bと示した。
図5の仮想線に示すように、可撓変形部116は、その横方向の内側の連結部115を固定端として、マット本体101から浮き上がって、マット本体101表面との間に隙間を形成するように変形可能である。好ましくは、可撓変形部116の長さ(第1の長さと第2の長さの和)は、20~40cmとなるように設定され得る。また、第1の長さ(重合長さ)の方が、第2の長さ(突出長さ)よりも大きい。
【0032】
すなわち、流速軽減材110の端部は、可撓変形部116を介して、マット本体101の端縁近傍においてマット本体101表面から浮き上がるように変形することが可能である。これにより、(
図7および
図8で後述するとおり、)複数の土壌侵食防止用マット100を横方向に隣接して配置した場合に、隣接する流速軽減材110、110を斜面土壌の等高線方向に途切れることなく連続して配置するとともに、隣接するマット本体101、101の端縁同士を等高線方向に重ね合わせて敷設することができる。特には、一方の土壌侵食防止用マット100の流速軽減材110を、可撓変形させた他方の土壌侵食防止用マット100の流速軽減材110とマット本体101との間に差し込むことによって、隣接する流速軽減材110、110同士を互いに干渉させることなく、斜面土壌の同じレベルに配置することができる。
【0033】
次に、
図6乃至
図9を参照して、本実施形態の土壌侵食防止用マット100を斜面土壌Gの所定の保護領域に複数設置した斜面土壌保護構造10について説明する。
図6および
図7は、斜面土壌保護構造10の概略斜視図である。
図8および
図9は、斜面土壌保護構造10の横断面図および縦断面図である。
【0034】
本実施形態の斜面土壌保護構造10では、
図6に示すように、各土壌侵食防止用マット100の縦方向が斜面土壌Gの傾斜方向に沿うようにして、複数の土壌侵食防止用マット100が斜面土壌Gに設置されている。各土壌侵食防止用マット100は、複数のアンカーピン107、108によって斜面土壌Gに固定されている。アンカーピン107、108は、流速軽減材110およびマット本体101を貫通するように打設されている。第1のアンカーピン107は、流速軽減材110の可撓変形部116の内側(基端側)に位置し、これもまた流速軽減材110およびマット本体101を連結する連結部となり得る。他方、第2のアンカーピン108は、隣接する土壌侵食防止用マット100、100(つまり、マット本体101、101および流速軽減材110、110)の重合箇所に打設されたものであり、隣接する土壌侵食防止用マット100、100の連結を強固にするように機能するものである。
【0035】
また、本実施形態の斜面土壌保護構造10では、隣接する土壌侵食防止用マット100において、マット本体101の端縁同士が互いに重なり合うように敷設されることで、斜面土壌Gが露出しないように覆われている。すなわち、複数のマット本体101が途切れることなく斜面土壌Gを被覆していることで、斜面土壌Gの保護領域全体で土砂流出軽減効果が発揮されている。また、等高線方向に隣接する土壌侵食防止用マット100において、複数の流速軽減材110が斜面土壌Gの等高線方向に連続して配置されている。すなわち、複数の流速軽減材110が等高線方向に途切れることなく配置されていることで、斜面土壌Gの保護領域全体で流速軽減効果が発揮されている。
【0036】
図7および
図8に示すように、横方向に隣接する流速軽減材110、110は、互いに横方向に重なり合うことで、同じレベルの等高線上で連続して配置されている。より具体的には、隣接するマット本体101、101が重合した状態で、一方の流速軽減材110が上方に浮き上がるように変形し、他方の流速軽減材110が一方の流速軽減材110とマット本体101との間の隙間に差し込まれている。流速軽減材110は、連結部115または第1のアンカーピン107を固定端または支点として変形し得る。また、可撓変形部116の重合部位116aの長さの方が、突出部位116bの長さよりも大きいことから、マット本体101、101同士の重合幅が十分に確保されている。そして、一方の流速軽減材110が、他方の流速軽減材110の上に積み重なることで、等高線方向に途切れることがない堰が形成されている。このとき、隣接する流速軽減材110、110において、袋体111内部で充填材112が移動して変形することで、流速軽減材110、110が土嚢のように重なり合って、流速軽減材110、110の間に大きな隙間が形成されることが抑えられる。さらに、固定部材としての第2のアンカーピン108が、最終的に、流速軽減材110、110、および、マット本体101、101の重合箇所を貫通して斜面土壌Gに打設されたことで、斜面土壌保護構造10の当該形態が安定的に維持されている。
【0037】
図9に示すように、マット本体101のわた状シート102が斜面土壌Gの表面に密着して土壌を保護しているとともに、マット本体101の表面に装着された流速軽減材110が、マット本体101の表面から垂直方向に所定の高さを有する堰を成している。ここで、
図9において、斜面土壌Gを流れる表面水を矢印で示している。
図9に示すように、豪雨等によって表面水が発生すると、流速軽減材110がその傾斜方向上側に水を堰止めるように機能する。流速軽減材110は、表面水がそのままの流速で通過することを規制する。すなわち、表面水の一部が流速軽減材110内部を通過し、表面水の一部が流速軽減材110の傾斜方向上側に溜まって流速軽減材110の頂部を越えて傾斜方向下側へと流れ落ちる。さらに、表面水の一部は、マット本体101のわた状シート102によっても排水される。このように、表面水が、流速軽減材110およびわた状シート102によって分散されることによって、その流速が効果的に軽減される。
【0038】
また、
図9に示すように、流速軽減材110は、接続代114の連結部115を介してマット本体101に連結されているとともに、袋体111が接続代114に対して遊動可能である。すなわち、流速軽減材110に力がかかって動いたとしても、接続代114に対して袋体111が傾動または遊動することで、マット本体101に引っ張り力が直接的にかかることが抑えられる。これにより、マット本体101が斜面土壌G表面から浮き上がったり、破れたりすることが効果的に抑えられる。
【0039】
なお、本実施形態では、斜面土壌Gを傾斜方向が一方向である理想的な斜面として示したが、複数の土壌侵食防止用マット100が、複雑な傾斜を有する自然地形に適用されてよいことは言うまでもない。このような場合、隣接する土壌侵食防止用マット100の流速軽減材110同士が、V字状に折れ曲がるように配列され、または、交差するように配列されることで、隣接する流速軽減材110が途切れることが防止され得る。
【0040】
続いて、複数の土壌侵食防止用マット100を斜面土壌Gの所定の保護領域に設置して斜面土壌保護構造10を構築する方法について説明する。まず、所定の保護領域の面積に合わせて、所定の数の土壌侵食防止用マット100を準備する。土壌侵食防止用マット100の縦方向が斜面土壌Gの傾斜方向に沿うように、複数の土壌侵食防止用マット100を斜面土壌Gに設置する。横方向に隣接する土壌侵食防止用マット100の流速軽減材110を斜面土壌Gの等高線方向に途切れることなく同じレベルで連続するように位置合わせし、且つ、縦横両方向に隣接する土壌侵食防止用マット100のマット本体101の端縁同士を重合させるように位置合わせする。そして、アンカーピン107、108を打設することによって、各土壌侵食防止用マット100を斜面土壌Gに固定する。すなわち、本方法によれば、複数の土壌侵食防止用マット100を位置合わせして斜面土壌Gに設置することで、表面水の流速軽減効果および土砂流出軽減効果を有する斜面土壌保護構造10を構築することが可能であり、従来の丸太筋工の工法と比べて、より簡単かつ効率的に斜面土壌Gの保護を可能とする。
【0041】
以上を踏まえ、本発明の一実施形態の土壌侵食防止用マット100の作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態の土壌侵食防止用マット100によれば、可撓性のマット本体101が斜面土壌Gを被覆することによって、土砂の流出軽減効果を発揮することが可能である。また、マット本体101の横方向全体に亘って延在する長筒状の流速軽減材110が、マット本体101の表面に装着されて、マット本体101の表面から垂直方向に所定の高さを有する堰を成すことによって、マット本体101に途切れた箇所を生じさせることなく、表面水の流速軽減効果を併せて発揮することが可能である。したがって、本実施形態の土壌侵食防止用マット100は、表面水の流速軽減効果を発揮しつつ、斜面土壌Gの保護領域を途切れることなく被覆することを可能とするものである。さらに、本実施形態の土壌侵食防止用マット100は、流速軽減材110をマット本体101表面に装着することで、丸太筋工と同様の表面水の流速軽減効果を発揮することが可能であり、従来と比べて、斜面土壌Gの保護の労力を改善することができる。
【0043】
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0044】
(1)本発明の土壌侵食防止用マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。すなわち、上記実施形態では、流速軽減材が、接続代の裏面を連結部として、マット本体表面に装着されたが、本発明はこれに限定されない。
図10(a)、(b)は、変形例の土壌侵食防止用マット200、300を示している。
図10(a)に示す土壌侵食防止用マット200では、接続代が省略され、流速軽減材210とマット本体201表面との連結部215は、流速軽減材210の長手方向に一直線状に形成されている。この連結部215は、接着剤や熱融着などの手段によって形成されてもよい。
図10(b)に示す土壌侵食防止用マット300では、流速軽減材310とマット本体301表面との連結部315は、流速軽減材210の長手方向に点状に形成されている。この連結部315は、Cリング、ステープル、接着剤によるものであってもよく、あるいは、マット本体301および流速軽減材310を貫通して地面に打設されるアンカーピンであってもよい。
【0045】
図10(a)、(b)に示す土壌侵食防止用マット200、300において、流速軽減材210、310とマット本体201、301との連結部215、315を縦幅方向の1点としたことで、流速軽減材210、310に縦方向の力が加わったときに、流速軽減材210、310が連結部215、315を支点として縦方向に遊動することで、マット本体201、301が流速軽減材210、310に引っ張られて、土壌表面から浮き上がったり、マット本体201、301が破れたりすることが抑えられる。
【0046】
(2)本発明の土壌侵食防止用マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。本発明の土壌侵食防止用マットは、マット本体に装着された緑化材をさらに備えるように構成されてもよい。
図11は、緑化材として植生袋421および種子付シート422を備える土壌侵食防止用マット400を示している。土壌侵食防止用マット400は、土壌表面の侵食を軽減するように構成された、可撓性のマット本体401と、マット本体401の表面に装着され、斜面土壌の表面を流れる流水の流速を軽減するための複数の流速軽減材410とを、備える。本実施形態では、マット本体401が、植生袋421および種子付シート422を装着するように構成されている。
【0047】
具体的には、マット本体401は、所定厚のわた状シート402と、該わた状シート402の表面側に貼り付けられた網状シート403と、わた状シート402の裏面側に貼り付けられた種子付シート422とを備える。
図12に示すように、網状シート403は、網状体が2重となる複数の箇所を有し、当該箇所に横方向に長筒状に延びる複数の収容部403aが設けられている。収容部403aは、網状の長筒体から構成され、緑化材を内包する植生袋421を保持可能に構成されている。なお、緑化材は、緑化に用いられる植生材料であって、種子、肥料、土壌改良材、保水材、撥水抑制材、土砂、生育基盤材などを少なくとも1つ含むものである。各収容部403aは、マット本体401の横方向に亘って長手状に延在している。また、種子付シート422は、表面に植物の種子を散布した不織布シートである。すなわち、土壌侵食防止用マット400を斜面土壌に設置することによって、斜面土壌の侵食を軽減しつつ、植物による土壌緑化も同時に促進することが可能である。
【0048】
(3)本発明の土壌侵食防止用マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、マット本体は、所定厚のわた状シートに網状シートを積層したものであるが、土壌流出軽減効果を有する素材であれば任意に選択され得る。例えば、マット本体は、所定厚のわた状シートのみで形成されてもよい。あるいは、マット本体は、比較的分厚い不織布やウレタンシートなどであってもよい。
【0049】
(4)本発明の土壌侵食防止用マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、流速軽減材の両端部が、マット本体の両縁から突出するように構成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、流速軽減材の片方の端部のみが、マット本体の両縁から突出するように構成されてもよい。あるいは、1枚の土壌侵食防止用マットで、斜面土壌の保護領域を被覆するような場合には、流速軽減材の端部を、マット本体の端縁から突出させなくてもよい。
【0050】
(5)本発明の土壌侵食防止用マットは、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、流速軽減材が、マット本体の横方向に平行に装着されているが、流速軽減材は、マット本体の横方向全体に亘って延在すればよく、横方向に対して傾斜して延在してもよい。また、流速軽減材は、一体の長筒体でなくてもよく、横方向に連結された複数の袋体の集合体から構成されてもよい。
【0051】
なお、本発明は上述した複数の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0052】
10 斜面土壌保護構造
100 侵食防止用マット
101 マット本体
102 わた状シート
103 網状シート
107 第1のアンカーピン(連結部)
108 第2のアンカーピン(固定部材)
110 流速軽減材
111 袋体
112 充填材
113 ネット材
114 接続代
115 連結部
116 可撓変形部
116a 重合部位
116b 突出部位
421 植生袋
422 種子付シート
G 斜面土壌(保護領域)